「The Hankyoreh」 2024-01-29 12:43
■国際司法裁判所の「イスラエルへのジェノサイド防止命令」、安保理で論議へ
【写真】国際司法裁判所(ICJ)のジョアン・ドノヒュー裁判長が26日、オランダのハーグにあるICJで、イスラエルのガザにおける戦争犯罪に関する暫定措置を発表している/UPI・聯合ニュース
国連の国際司法裁判所(ICJ)がイスラエルに対し、パレスチナのガザ地区住民に対する集団虐殺(ジェノサイド)を防ぐすべての措置を講じるよう命じた暫定措置決定が波紋を広げている。
国連安全保障理事会は31日、ICJのこの暫定措置命令について議論する予定だと、ロイター通信などが27日付で報じた。今回の会議は、アルジェリアがICJの命令を安保理決議案を通じて執行するよう要求したことで開かれる。ICJは国連機関ではあるが執行能力がないため、アルジェリアが強制力のある国連安保理決議案を採択しようと主張したもの。
ICJは、イスラエルがガザ地区で「集団殺害罪の防止および処罰に関する条約(ジェノサイド条約)」を違反しているとして南アフリカ共和国が先月29日に提訴した件について、イスラエルは自国兵士の集団虐殺行為を防ぐすべての措置を取るよう、6項目に対する暫定措置を命じた。
ICJは特に、パレスチナ住民を殺害したり、肉体的・精神的に深刻な危害を加えたり、部分的あるいは全体的に物理的破壊を引き起こすために「生活の条件」を故意に破壊するなど、「集団としてパレスチナ住民を破壊しようとする意図を持った行動を取ってはならない」と命じた。ICJは、イスラエルが「ジェノサイドを犯しうる直接的で公開的な扇動」も防いで処罰し、ガザ地区に必要な援助をより緊急に支援しなければならないと命じた。ICJの暫定措置は、最終判決が出るまでさらなる被害を防ぐための一種の仮処分命令だ。ジェノサイドの疑いそのものに対する本案判決の結果が出るまでには、今後数年かかる可能性もある。
ただし、南アフリカは提訴当時、イスラエルの「ガザ地区への軍事作戦の即時停止」も要求したが、ICJはこれに対しては踏み込まなかった。
国連安保理決議は、常任理事国である米国が拒否権を持っているため、採択されるかどうかは不明だ。しかし、米国が拒否権を行使すればダブルスタンダードを適用しているという批判も避けられない。ロシアはウクライナ侵攻初期の2022年3月、「ウクライナ領土で始めた軍事作戦を直ちに停止せよ」というICJの暫定措置決定を無視しているが、これを米国は批判してきた。
イスラエルは反発した。イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相はICJの暫定措置命令後、「イスラエルがパレスチナでジェノサイドを行なっていることを議論するというICJの意志は、恥として残るだろう」と主張した。ただし、ICJが軍事作戦停止を暫定措置命令に含めなかった点は、イスラエルの自衛権を認めるものと解釈し安堵をみせた。
米国家安全保障会議のジョン・カービー戦略広報調整官は同日、「我々はその主張(ジェノサイド)には根拠がないと主張してきており、ICJもジェノサイドに対してイスラエルが有罪だと明らかにしなかった」と評した。
ICJの今回の命令が実際に執行されるのは容易ではないが、記念碑的命令だという評価が出ている。ホロコースト(ユダヤ人大量虐殺)のような悲劇を繰り返さないために作られたジェノサイド防止条約の違反者としてイスラエルが裁判を受けるという歴史的なアイロニーを指摘する声も少なくない。
イスラエルも、今回の事案の外交的影響を意識している。米メディアのアクシオスが12月に公開したイスラエルの秘密外交公電によると、今回の裁判について「法的な側面だけでなく、実質的な二国間、多国間、経済、安全保障で波紋を起こす恐れがある」と記されている。
チョン・ウィギル先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr)
韓国語原文入力:2024-01-28 19:20
「AFP」 2024年1月27日 14:53 発信地:エルサレム/中東・アフリカ
■国連機関職員がハマス奇襲関与か 複数人解雇
【写真】国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)のフィリップ・ラザリニ事務局長(2023年12月13日撮影)。(c)JEAN-GUY PYTHON / POOL / AFP
【1月27日 AFP】国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)は26日、昨年10月7日のイスラム組織ハマス(Hamas)によるイスラエル奇襲に関与した疑いがあるとして、複数の職員を解雇したと発表した。これを受け、米国はUNRWAへの資金拠出を一時停止した。
UNRWAのフィリップ・ラザリニ(Philippe Lazzarini)事務局長は、「人道支援を提供するUNRWAの能力を守るため」の決定だと説明し、「テロ行為に関与したUNRWA職員は、訴追を含めて責任を問われることになるだろう」と述べた。
関与を疑われる職員については、イスラエル当局から情報提供を受けたという。
国連(UN)のアントニオ・グテレス(Antonio Guterres)事務総長は報道官を通じて発表した声明で、疑惑に「大きなショックを受けている」とした上で、「UNRWAに対する独立調査を至急、実施する」と述べた。
米国務省は「極めて憂慮している」と表明し、疑惑と国連の対応について調査する間、UNRWAへの「資金拠出を一時停止」すると発表した。
同省によれば、UNRWAの職員12人が関与を疑われている。
「AFP」 2024年1月27日 10:39 発信地:ジュネーブ/スイス
【写真】世界保健機関(WHO)のテドロス・アダノム・ゲブレイェスス事務局長。WHO提供(2023年12月15日撮影、提供)。(c)AFP PHOTO / WHO / CHRISTOPHER BLACK
【1月27日 AFP】世界保健機関(WHO)は26日、同組織がパレスチナ自治区ガザ地区(Gaza Strip)で病院が「軍事利用」されている証拠を無視することでイスラム組織ハマス(Hamas)と「共謀」しているというイスラエルの主張に反論した。
WHOのテドロス・アダノム・ゲブレイェスス(Tedros Adhanom Ghebreyesus)事務局長はX(旧ツイッター)で、「WHOがハマスと『共謀』し、ガザで拘束されている人質の苦しみを『見て見ぬふり』しているとのイスラエルの主張を否定する」「このような虚偽の主張は有害であり、弱い立場に置かれている人々に命懸けで奉仕している職員を危険にさらしかねない」と主張。
「WHOは公平であり、万人の健康と福祉のために活動している」と強調した。
イスラエルのメイラブ・エイロン・シャハル(Meirav Eilon Shahar)駐ジュネーブ国連(UN)・国際機関常駐代表は25日、WHO執行理事会で、ハマスが「病院に潜伏し、人間の盾を利用」している限り、ガザに医療はあり得ないと主張。
「ガザでイスラエル国防軍が捜索したすべての病院で、ハマスが軍事利用していた証拠が見つかった」「これらは否定できない事実であるにもかかわらず、WHOは何度も無視することを選んだ。(WHOによるハマスとの)共謀だ」と主張した。
テドロス氏のコメントを受け、エイロン・シャハル氏26日夜、「ハマスが病院を利用していた明らかな証拠がある」とXで再反論。
「(昨年)10月7日の残忍な虐殺の後、人質が医療機関に移送された事実」を示す証拠もあるとした上で、「当事者本人による証言と防犯カメラの映像も含まれている。『虚偽の主張』ではなく事実だ」と主張した。
さらに、「ハマスを非難せず、ハマスが病院や民間地域に潜伏するのを阻止する行動を取らないことで、守るべき人々を危険にさらすことになる」とWHOに警告した。
「 AFP」 2024年1月27日 10:22 発信地:ハーグ/オランダ
■国際司法裁、イスラエルにジェノサイド防止命令
【写真】オランダ・ハーグの国際司法裁判所(ICJ)で、パレスチナ自治区ガザ地区でのイスラエルによるジェノサイド行為をめぐって開かれた裁判の様子(2024年1月26日撮影)。(c)Remko de Waal / ANP / AFP
【写真】オランダ・ハーグの国際司法裁判所(ICJ)で、パレスチナ自治区ガザ地区でのイスラエルによるジェノサイド行為をめぐって開かれた裁判の判事ら(2024年1月26日撮影)。(c)Remko de Waal / ANP / AFP
【写真】オランダ・ハーグの国際司法裁判所(ICJ)で、パレスチナ自治区ガザ地区でのイスラエルによるジェノサイド行為をめぐって開かれた法廷の様子(2024年1月26日撮影)。(c)Remko de Waal / ANP / AFP
【写真】パレスチナ自治区ガザ地区でのイスラエルによるジェノサイド行為をめぐって開かれた国際司法裁判所(ICJ)の裁判の動画配信を見るパレスチナ人。パレスチナ自治区ヨルダン川西岸ラマラで(2024年1月26日撮影)。(c)Zain JAAFAR / AFP
【1月27日 AFP】国際司法裁判所(ICJ)は26日、イスラエルに対し、イスラム組織ハマス(Hamas)との戦闘で「ジェノサイド(集団殺害)」行為を防ぐよう命じた。ただし、戦闘停止要請には踏み込まなかった。
ICJは「集団殺害罪の防止および処罰に関する条約(ジェノサイド条約)」で規定されている「すべての行為を防ぐ」ためにあらゆる措置を講じなければならないと命じた。また、「急務」とされるパレスチナ自治区ガザ地区(Gaza Strip)への人道支援を円滑に進めなければならないとした。
これに対してイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ(Benjamin Netanyahu)首相は、イスラエルがジェノサイドに関与しているというのは「虚偽であり、言語道断だ」と反発。ヨアブ・ガラント(Yoav Gallant)国防相も、「道徳を説かれるいわれはない」と非難した。
また、同盟国である米国も、イスラエルの行為がジェノサイドに当たるとの主張には「根拠がない」と改めて表明した。
一方、ハマスはICJの判断について、「イスラエルを孤立させ、ガザでの犯罪を明らかにすることにつながる」と歓迎した。
パレスチナ自治政府は、「あらゆる国は法の下に平等」であることを示していると評価。欧州連合(EU)は、ICJの命令を即時に履行するよう求めると表明した。
「The Hankyoreh」 2024-01-23 09:00
■[コラム]ジェノサイド、ホロコースト、イスラエル
通常「集団虐殺・殺害」と訳されるジェノサイドは、人を意味するギリシャ語「genos(ジェノス)」と、殺害を意味するラテン語「cide(カイド)」を合わせて作られた造語である。ポーランドの法律家ラファエル・レムキンが1944年にこの用語を作り、ナチスの組織的な人種虐殺の説明に用いた。ジェノサイドは1948年、国連ジェノサイド条約で国際法の地位を得た。同条約は「国民的、人種的、民族的又は宗教的集団を全部又は一部破壊する意図をもって行われた」行為をジェノサイドと定義しており、条約締結国に対してジェノサイドを防ぎ、犯罪者を処罰するよう求めている。
その後、国際社会では複数回にわたって恐ろしいジェノサイドが起こった。1994年にルワンダではフツ族がツチ族などを集団虐殺した。1995年にはボスニア・ヘルツェゴビナのスレブレニツァでセルビア系勢力がイスラム教徒を集団虐殺した。国連をはじめとする国際社会が対応に当たった。
今度はイスラエルのガザ攻撃がジェノサイドの審判に立たされた。ガザではこの3カ月間、イスラエルが武装組織ハマスの掃討を大義名分として爆撃を行い、民間人の死者が2万5千人を超えた。これに対し南アフリカ共和国が「イスラエルはパレスチナ住民を抹殺しようとしている」として国際司法裁判所(ICJ)に提訴したのだ。今月11日から2日間にわたって行われた審理で南アは「イスラエルはパレスチナ住民を無差別に殺害し、民間のインフラをすべて破壊している」、「イスラエルの攻撃は直ちに止められるべきだ」と主張した。これに対してイスラエルは「イスラエルは民間人の被害を減らそうと努力しており、国際法に則って行動している」と反論した。
今回の提訴が直ちにパレスチナ住民のひどい苦しみを和らげるかは疑問だ。何よりも判決までには何年もかかる。ジェノサイドは戦争犯罪や人道に対する罪とは異なり、容疑者の犯罪意図を立証しなければならないという困難もある。またICJの判決には法的拘束力があるが、実際に実行されるかは別の問題だ。ICJは昨年、ロシアにウクライナ侵略の中止を命じたが、ロシアは従っていない。
ユダヤ人は約80年前、ナチスによって絶滅の危機に直面した。ホロコーストは彼らが体験した恐ろしい苦しみを思い返す用語であり、二度とそのようなことが起きないようにしようという誓いだ。しかし今回、まさに彼らが逆に集団虐殺の法廷に加害者として立ったというのは歴史の皮肉だ。もはや過去を盾にして自らの行為を正当化することはできない時代となったことを意味するのではないか。
パク・ピョンス先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2024-01-22 15:50
「The Hankyoreh」 2024-01-06 10:36
■「イスラエルの民族浄化を制止しない米政府の共犯にはなれない」米教育省職員が辞任
【写真】先月28日、イスラエル軍の空襲で両親と自分の足を失ったパレスチナ人少女がガザ地区のラファの病院で水を飲んでいる=ラファ/ロイター・聯連合ニュース
米国教育省の上級職員が、ガザ地区のパレスチナ人を虐殺するイスラエルを支援するバイデン政権の共犯にはなれないとし、辞任した。
米教育省のタリク・ハバシュ政策補佐官は3日、ミゲル・カルドナ長官に宛てた公開書簡で「主な人権専門家がイスラエル政府の民族浄化作戦と呼ぶ、罪のないパレスチナ人に対する残虐行為に対して米政府が目をつぶっていることについて、私は黙っていることができない」と辞職の理由を明らかにした。
ハバシュ氏は「罪のない人々に対する暴力がおぞましいことは言うまでもなく、イスラエル人であれパレスチナ人であれ、すべての死を哀悼する」、「しかし、私はすべての人間の命を同等に大切にしない政府を代表することはできない」と述べた。バイデン政権がイスラエルの作戦を支援し休戦を要求せず、パレスチナ側の死亡者が2万人を超えた状況を見て、米国がイスラエル人とパレスチナ人の命を同等に考えていないと批判したのだ。ハバシュ氏は、バイデン大統領がパレスチナ側の死亡者統計を信頼できないと述べたことについて、その統計は米国務省と国連も引用してきたものだと反論した。
また、「私は、パレスチナ人に対する食糧、水、電気、燃料、医療品の供給を遮断し、病気と飢えをまん延させる暴力的で集団的な処罰に関して、最も強力な同盟者というテコを利用してイスラエルを制止するということをしない現政権の静かな共犯者にはなれない」と述べた。
パレスチナ系米国人であるハバシュ氏は4日、マスコミとのインタビューで「大統領からは、私が人間だということに共感し、認めていることが感じられない」という結論に達したとし、バイデン大統領を冷酷な人物だとも規定した。教育省の政策補佐官は指名職であり、ハバシュ氏は2020年の大統領選挙の際にバイデン候補陣営で働いた後、当職に指名された。
昨年10月には、国務省で外国兵器支援問題を担当していた高官のジョシュ・ポール氏が、国務省が兵器支援を検討する際に、通例とは異なって民間人に被害が出る可能性を考慮せず、イスラエルを無批判に支援していると抗議し、辞表を提出している。
ワシントン/イ・ボニョン特派員
韓国語原文入力:2024-01-05 14:38