「The Hankyoreh」 2025-04-05 10:04
■極右勢力に道を開いた「尹錫悦の1375日」、その代償を払うのは韓国国民
【写真】2019年12月2日、尹錫悦検察総長(当時)が元検察捜査官出身の大統領府特別監査班員の葬儀場を弔問した後、固い表情で葬儀場を後にしている/聯合ニュース
1375日。元検察総長の尹錫悦(ユン・ソクヨル)が大統領選出馬を宣言し、政治に入門してから、憲法裁判所の罷免決定により内乱罪の刑事裁判を待つ「前大統領」になるまでかかった時間だ。4年足らずの「尹錫悦の時間」は、右往左往する国政運営、対話拒否と独善、夫婦による権力の私有化など、数々の汚点を残した。やがては12・3内乱で国民が血と涙で積み上げた大韓民国の民主的憲政秩序を根本から揺さぶった。
尹錫悦の罷免は終わりではない。尹錫悦は弾劾審判の過程で「反国家勢力と戦おう」という扇動で岩盤支持層を動かし、極右が制度の中に乱入する道を開いた。尹錫悦が残した「啓蒙令」や「反国家勢力」、「中国スパイ論」、「不正選挙論」など、極右の世界観は広場に浸透し、共和国の民主主義を今も脅かしている。
◆不公正と非常識
尹錫悦の政治的資産は、検察総長時代、文在寅(ムン・ジェイン)政権と対立することで築き上げた「公正」と「法治」のイメージだった。2019年8月のチョ・グク法務部長官候補に対する全面的な捜査と、2020年のチュ・ミエ法務部長官(当時)との極限に至る対峙で政治的存在感を高めた尹錫悦は、2021年3月、検察総長職を投げ出し、同年6月29日に大統領選挙への挑戦を宣言した。出馬宣言文で「常識を武器に、崩れた自由民主主義と法治、時代と世代を貫く公正の価値を必ず立て直す」ことを掲げた。
【写真】2024年10月21日午前、ソウル西大門区美近洞の警察庁で開かれた79周年警察の日記念式典で、祝辞を述べた尹錫悦大統領が壇上を降りている=キム・テヒョン記者//ハンギョレ新聞社
当時野党の「国民の力」の大統領選候補になり、2022年3月9日の大統領選挙で0.73ポイント差で大統領に当選した尹錫悦は、5月10日に大統領に就任した後、大統領選挙のスローガンだった公正と常識をみずから投げ捨てた。特に、夫人のキム・ゴンヒ氏と関連した様々な疑惑の前で、公正と常識という物差しは紙切れに過ぎなかった。キム氏のブランドバッグ受け取りとドイツモーターズ株価操作疑惑は、検察の「特恵調査」への批判が高まる中でも起訴を免れた。真実を明らかにするための「キム・ゴンヒ特検法」には3回にわたり再議要求権(拒否権)を行使した。キム氏のブランドバッグ受け取りについては「(キム氏が)情に厚いため(断れなかった)」と述べるなど、大したことではないかのように対応した。政界では、キム・ゴンヒ氏の国政への影響力が夫の大統領(V1)を上回るという意味で、「V0」という呼び方が密かに広がった。
尹錫悦は自分に向けられた疑惑にも同じ態度を示した。2023年7月「(海兵隊員)C上等兵死亡事件」の捜査結果と関連し、「VIP(=尹大統領)激怒説」が流れたが、最後まで否定した。昨年3月、C上等兵事件捜査への外圧疑惑の主要容疑者だったイ・ジョンソプ元国防部長官を駐オーストラリア大使に任命したことは、公正、常識、法治全てを投げ捨てた象徴的な場面だった。自分を狙った「C上等兵特検法」も繰り返し拒否した。
政治ブローカーのミョン・テギュン氏の暴露で明らかになり始めた国政壟断疑惑も同じだ。昨年11月7日、尹錫悦は国民向け記者会見で「ミョン・テギュン氏と関連し、不適切なことや隠すべきことは何もしていない」と述べたが、最近公開された尹錫悦夫妻とミョン氏がやりとりしたカカオトーク、テレグラムのメッセンジャー対話内容を通じて、ほとんどが嘘であることが明らかになった。
◆対話拒否と独善
尹錫悦は大統領の任期中、「与小野大」(野党が過半数の国会)のねじれ政局で国政を運営した。当然、国会との疎通と野党との協力で国政動力を確保することがカギだった。ところが、尹錫悦が真っ先に着手したのは、政権与党である「国民の力」の指導部を自分の側近で埋め尽くすことだった。このために党務に介入し、党代表のイ・ジュンソクを追い出した。その代わりとして側近のキム・ギヒョン議員を座らせ、総選挙敗北後、非常対策委員長を経て指導部入りを果たしたハン・ドンフン代表と対立を繰り返した。
対話を拒否し、独善を貫いたことで野党とも極限の対峙を続けてきた。2023年4月の糧穀管理法を皮切りに、非常戒厳を宣布するまでの間に、野党主導で国会で可決された25件の法案に拒否権を行使した。野党と自分を批判する勢力をまとめて「反国家勢力」であり「共産全体主義勢力」だと攻撃した。自分の過ちによって政権与党が惨敗した昨年4月の総選挙については、一抹の反省もなかった。野党代表とは総選挙後、一度だけ1対1の会談を行っただけで、再び会うことはなかった。
「バイデン-吹き飛ばせば(ナルリミョン)」の卑語使用問題(2022年9月)、梨泰院(イテウォン)雑踏惨事(2022年10月)などで高まった国民の疑念と怒りに対しても、知らぬ存ぜぬで通した。外交力を韓米日協力と韓日関係改善に注ぎ込んだが、「強制動員」に対する言及の抜けた佐渡鉱山追悼式などで象徴される「屈辱外交」問題だけが残った。昨年2月に進めた「医学部定員2000人拡大」は、医師数の増加による医療サービス改善という良い政策趣旨にもかかわらず、医療界との軋轢(あつれき)を解消できず、1年以上医療現場の混乱を引き起こした。
◆詭弁と扇動
12・3非常戒厳令を宣布した後の昨年12月12日の国民向け談話で、尹錫悦は野党による国務委員弾劾、政府予算案の削減などを取り上げ、野党を「自由民主主義憲政秩序を破壊する怪物」であり「国憲を乱す勢力」だと攻撃し、不法非常戒厳令宣布の正当性を強弁した。ところが、韓国の憲法は非常戒厳宣布の要件を「戦時、事変またはこれに準ずる国家非常事態」と定めている。違憲・違法な戒厳宣布と国会の封鎖および中央選挙管理委員会の掌握の試み、政治家に対する逮捕指示などで国憲を乱す一方、妄想混じりの詭弁を並べる尹錫悦に対し、国会は昨年12月14日、弾劾訴追案を可決し、職務を停止させた。裁判所が昨年最後の日に内乱首謀の容疑で逮捕状を発付したことで、尹錫悦の暴走も収まるかのように思われた。
しかし、尹錫悦はユーチューブにおける極右の論理と陰謀論に傾倒し、憲政秩序と民主主義の回復に向けた市民の努力と念願に最後まで水を差した。尹錫悦の極右的スタンスは、大統領就任当初から兆候を見せていた。12・3内乱の後に自分を積極的に庇護した「チョン・グァンフン牧師流」の極右ユーチューバーや「アスファルト右派」(街頭集会に出て主張する右派勢力)たちを、大統領就任式に招待していた事実が、それを予感させていた。その後、政界の外郭に留まっていた極右ユーチューバーや極右係の人々に公共機関と大統領室の肩書きを与え始めた。尹錫悦が極右ユーチューブチャンネルを好んで視聴し、不正選挙陰謀論を展開する動画をまわりの人々に送っているという噂は、大統領室と国会にまで広まった。
危機に追い込まれると、尹錫悦は「極右の本色」をあらわにした。今年1月1日、官邸前に集まった支持者を「自由民主主義守護勢力」と呼び、「最後まで戦う」として、自分の逮捕を阻止してほしいと訴えた。「国内外の主権侵奪勢力と反国家勢力の蠢動(しゅんどう)で今の大韓民国が危うい」として、批判勢力と野党に向けた嫌悪をあらわにし、過激な支持層を煽った。1月15日に高位公職者犯罪捜査処(公捜処)と警察に逮捕・拘禁されるまで、「警護処忠誠派」を前面に出し、漢南洞(ハンナムドン)の官邸を「要塞化」した。1月26日に検察に拘束起訴された後、憲法裁判所の審判廷でも尹錫悦の詭弁と世論戦は続いた。
2月25日の弾劾審判第11回弁論の「最終意見」陳述でも反省はなかった。自分の内乱行為を「戒厳の形を借りた国民への訴えかけ」だと主張し、「残りの任期にこだわらず、改憲と政治改革を最後の使命と考え、87年体制の改善に最善を尽くす」として職務復帰の希望を捨てなかった。
◆尹錫悦がもたらした費用の請求書
これから内乱罪裁判と「ミョン・テギュン・ゲート」の捜査などが進められ、前大統領尹錫悦の犯罪容疑の追及が続くだろう。12・3内乱は韓国の政治、外交、経済、社会全般に深刻な亀裂と莫大な被害を残した。
景気低迷が続き、民生経済は活力を失った。ドナルド・トランプ米大統領の25%相互関税賦課に経済全般に赤信号が灯ったが、代行体制の政府は無気力だ。昨年12月6日(現地時間)、米経済誌フォーブスが非常戒厳宣布に対して「尹錫悦は国内総生産(GDP)キラー」だとし、「結局、5100万人の国民が利己的な政治的賭博の代償を分割払いで支払うことになるだろう」と指摘したことが、ますます現実味を帯びている状況だ。
何よりも広場の少数にとどまっていた極右勢力に発言権と影響力を高める政治的プラットフォームを提供した尹錫悦の行動によって、韓国の民主主義が正常性を取り戻すには莫大な努力と費用をかけなければならなくなった。
「崩壊前に戻りましょう」 。1日に公開された「尹錫悦の罷免を求める映画人の映像声明書」で、パク・チャヌク監督の映画『別れる決心』に登場したこのセリフが多くの市民に注目された。尹錫悦が社会のあちこちに埋めこんで去った「内乱の地雷」を取り除き、崩れた憲政を建て直すため、市民一人ひとりの汗と情熱が切に求められる。
イ・スンジュン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2025-04-04 20:33
「The Hankyoreh」 2025-04-05 08:07
■【決定文分析】憲法裁判官の全会一致、罷免に異論はなかった
【写真】(左から)チョン・ヒョンシク、キム・ボクヒョン、チョ・ハンチャン憲法裁判官が、4日にソウル鍾路区の憲法裁判所の大審判廷で開かれた尹錫悦大統領弾劾審判の宣告に出席している=写真共同取材団//ハンギョレ新聞社
尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領罷免決定において、保守系に分類される憲法裁判官3人全員が弾劾認容に署名したことで、いわゆる「裁判官5対3のデッドロック(膠着状態)」は実体のない極右・保守陣営の願いに過ぎなかったことが明らかになった。特に裁判官の個別判断が伺える「補足意見」でも、尹大統領の罷免を招いた非常戒厳宣布を違憲・違法とする判断をめぐり、異なる意見は全く現れなかった。
【写真】チョン・ヒョンシク憲法裁判官が4日にソウル鍾路区の憲法裁判所の大審判廷で開かれた尹錫悦大統領弾劾審判の宣告に出席している=写真共同取材団//ハンギョレ新聞社
4日の弾劾宣告直後に公開された決定文は、A4用紙106ページにわたる。87ページまでは裁判官8人の共通した弾劾認容の意見が、88~105ページにはイ・ミソン裁判官とキム・ヒョンドゥ裁判官▽キム・ボクヒョン裁判官とチョ・ハンチャン裁判官▽チョン・ヒョンシク裁判官の5人による補足意見が順に載せられている。罷免決定には同意する一方、争点になった事案について追加意見を述べたのだ。
それぞれ革新と中道に分類されるイ・ミソン裁判官とキム・ヒョンドゥ裁判官は、弁論過程で尹大統領側が反対した憲法裁の刑事訴訟法条項の緩和適用には問題がなく、これに伴い捜査機関の調書と国会会議録の証拠能力には問題がないという点を8ページにわたり強調した。
【写真】キム・ボクヒョン憲法裁判官が4日にソウル鍾路区の憲法裁判所の大審判廷で開かれた尹錫悦大統領弾劾審判の宣告に出席している=写真共同取材団//ハンギョレ新聞社
最も関心を集めた保守系のキム・ボクヒョン裁判官とチョ・ハンチャン裁判官、チョン・ヒョンシク裁判官は、非常戒厳宣布の違憲・違法性▽軍と警察を動員した国会の封鎖▽布告令第1号の違憲性▽軍を動員した中央選管委の占拠・家宅捜索▽政治家や法曹人などに対する逮捕の指示など、尹大統領の罷免につながった核心争点ではまったく異論を唱えなかった。
弾劾審判に先立ち、極右・保守陣営ではこれら裁判官3人が棄却または却下の意見を出すという「5対3デッドロック」を主張し、「共に民主党」をはじめとする野党では保守系裁判官が罷免には同意するものの、一部争点をめぐり意見を出すかもしれないという見通しを示した。一方、憲法学界では政治的スタンスにかかわらず、法律家ならとうてい棄却あるいは却下の意見を書けない事件なので、裁判官全会一致の罷免が大方の予想だった。
キム・ボクヒョン裁判官とチョ・ハンチャン裁判官は、イ・ミソン裁判官とキム・ヒョンドゥ裁判官の補足意見とは逆に、捜査機関の調書と国会会議録の証拠能力を認めるのが難しいという補足意見を8ページにわたり書いた。弾劾審判の重大性を考えると、刑事訴訟法をできるだけ厳しく適用すべきであり、「これからは弾劾審判の迅速性と公正性、二つの衝突する価値をより調和させる案を模索すべき」だと指摘した。尹大統領の罷免決定においては問題にならないが、今後は弾劾審判の手続きと制度を補完しようということだ。
一人で補足意見を出した同事件の主審チョン・ヒョンシク裁判官は、国会弾劾訴追制度を補完する立法を提案した。「国会で弾劾訴追案が否決された場合、他の会期中にも再び発議する回数を制限する立法が必要だ」ということだ。
憲法裁は野党の「連続弾劾」などで非常戒厳を宣布したという尹大統領の主張を一蹴し、罷免を決めた。ただし、野党が「疑惑だけに基づき、政府に対する政治的圧迫手段として弾劾審判制度を利用したという懸念」などがあったことにも触れた。チョン裁判官はこれに対する補足意見も書いたものとみられる、3ページにわたる補足意見で、一事不再議の原則の適用▽無制限の連続発議による国家機能の低下▽弾劾制度の政争の道具化などを指摘したうえで、「弾劾訴追案の発議回数に関する規定作り」を提案した。
【写真】チョ・ハンチャン憲法裁判官が4日にソウル鍾路区の憲法裁判所の大審判廷で開かれた尹錫悦大統領弾劾審判の宣告に出席している=写真共同取材団//ハンギョレ新聞社
キム・ナミル記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力: 2025-04-04 21:15
「聯合ニュース」 2025-04-05 07:50
■「不訴追特権」失った尹錫悦…数多くの刑事法廷を回る立場に
尹錫悦前大統領は、これからは自然人の身で、内乱首謀容疑で刑事裁判を受けることになる。また不訴追特権を失ったことで、彼にかけられている各種の犯罪容疑についての捜査も本格化するとみられる。
今月14日には尹前大統領の刑事裁判の初公判が行われる。裁判所は、彼が職務に復帰して現職大統領の資格で出廷するという「最悪のシナリオ」にも備えていたが、憲法裁判所が罷免を決めたことで、裁判所は負担が軽くなった。尹前大統領は、高位公職者犯罪捜査処(公捜処)による内乱捜査は違法だとして、手続き上の問題点を集中的に攻略するものとみられる。不拘束の被告人となった尹大統領が「裁判遅延戦略」を用いることが懸念されているが、裁判所は迅速に審理を進める計画を立てているという。
「不訴追特権」という盾を失った尹前大統領には、明らかにされるべき同時多発的な容疑が少なくない。まず警察非常戒厳特別捜査団は、尹前大統領の逮捕状の執行妨害容疑の捜査に本格的に着手するとみられる。警察特捜団は逮捕状の執行妨害を指示したのは尹大統領だとして、尹大統領をすでに特殊公務執行妨害の容疑者として立件している。12・3非常戒厳の直後の尹大統領と軍の司令官との通話の内訳を含む、盗聴防止機能付き電話のサーバの情報の削除を指示した容疑も捜査対象だ。大統領警護処はこのかん、「軍事上、公務上の秘密を要する場所」だとして警察による強制捜索令状の執行を拒否していたが、尹大統領の罷免後に盗聴防止機能付き電話のサーバが押収されることによって、捜査が急速に進む可能性がある。
検察によって捜査が進められているミョン・テギュン事件の頂点にも尹前大統領がいる。尹前大統領は、大統領候補時代にミョン氏から非公表の世論調査の提供を無償で受けた疑い(政治資金法違反)も持たれている。2022年6月の国会議員再補欠選挙でのキム・ヨンソン前議員の公認への介入容疑も捜査対象だ。尹前大統領が自身の大統領就任式前日の2022年5月9日に、ミョン氏に「(公認管理委員会に)キム・ヨンソンを公認してやれと言った」と述べている肉声が早くから明らかになっている。
2020年4月の総選挙を前に、検察が当時の与党政治家を告発しろとの告発状を未来統合党(現国民の力)に渡した「告発教唆」事件を主導したのが尹前大統領だったのかも、公捜処によって捜査が行われている。公捜処はソン・ジュンソン検事長(当時は最高検察庁捜査情報政策官)だけを先に起訴しているが、ソウル高裁は昨年12月、「ソン検事長に告発状の作成を指示した(尹錫悦)検察総長ら上級者が未来統合党を通じた告発を企画」した可能性があるとして、事件の首謀者として尹前大統領に目をつけている。これを受け、この事件を最初に通報したチョ・ソンウン氏が、尹前大統領や与党「国民の力」のハン・ドンフン前代表(当時は最高検察庁反腐敗部長)らを公捜処に追加告発している。尹前大統領の激怒からはじまったといわれるC上等兵事件の捜査外圧疑惑の捜査も、再開される可能性が高い。
チョン・ヘミン、ペ・ジヒョン、キム・ジウン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2025-04-04 14:27
「聯合ニュース」 2025.04.04 16:04
■[尹大統領罷免]大統領室高官らが一斉に辞意
【ソウル聯合ニュース】韓国の大統領室は4日、尹錫悦(ユン・ソクヨル)前大統領が罷免されたことを受け、鄭鎮碩(チョン・ジンソク)大統領秘書室長や申源湜(シン・ウォンシク)国家安保室長ら大統領室の首席秘書官以上の高官全員が辞意を表明したと明らかにした。
大統領室の高官らは昨年12月4日、尹前大統領が宣言した「非常戒厳」が解除された後に一斉に辞意を示し、今年1月にも大統領の権限を代行していた崔相穆(チェ・サンモク)経済副首相兼企画財政部長官が憲法裁の裁判官2人を任命したことに反発し、再び辞意を表明した。
「聯合ニュース」 2025.04.04 12:47
■[尹大統領罷免]「国民が勝利」 賛成派市民は歓喜に沸く
【ソウル聯合ニュース】韓国の憲法裁判所が4日午前に非常戒厳宣言を巡り弾劾訴追された尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領の罷免を決定したことを受け、尹氏の弾劾を求めてきた市民団体「尹錫悦即刻退陣・社会大改革非常行動」の集会の参加者たちは互いに抱き合って歓声を上げた。
【写真】罷免決定を喜ぶ市民=4日、ソウル(聯合ニュース)
集会は憲法裁から近い地下鉄・安国駅の前で前日から徹夜で開かれ、参加者たちは生中継された宣告を見守った。尹氏の罷免が言い渡されると一斉に太極旗(韓国国旗)や「尹錫悦を罷免せよ」と書かれたプラカードを振った。
ソウル・竜山の大統領公邸付近で開かれた集会の参加者たちも憲法裁の決定に歓喜した。
【写真】大統領公邸付近で開かれた集会の参加者が歓声を上げながら罷免決定を喜んでいる=4日、ソウル(聯合ニュース)
「The Hankyoreh」 2025-04-04 15:24
■憲法裁「尹錫悦、国家緊急権を乱用し国民の基本権侵害」
【写真】ムン・ヒョンベ憲法裁判所長権限代行が4日、ソウル鍾路区の憲法裁判所の大審判廷に、尹錫悦大統領の弾劾審判の決定を言い渡すため入場している=写真共同取材団//ハンギョレ新聞社
憲法裁判所が、尹錫悦大統領を裁判官の全員一致で罷免した。
憲法裁は大審判廷で4日午前11時から行われた尹大統領の弾劾事件の決定言い渡しで、「被請求人大統領尹錫悦を罷免する」と述べた。12・3非常戒厳宣布から123日を経ての結論だ。
憲法裁はまず、尹大統領による12・3非常戒厳宣布の当日、軍と警察による国会侵入、中央選挙管理委員会に対する強制捜査の試み、法曹人や政治家などの位置追跡と把握は実際に起きたことだとして、いずれも違法であるため、非常戒厳宣布は実体的要件が備わっていなかったと判断した。そして、そもそも布告令が違法だったと判断した。憲法裁は「被請求人はこの事件の布告令を通じて国会、地方議会、政党の活動を禁止することで、国会に戒厳解除要求権を与えている憲法の条項、政党制度を規定している憲法の条項、代議制民主主義、権力分立の原則などに違反した。非常戒厳下において基本権を制限するための要件を定めた憲法および戒厳法の条項、令状主義に違反することによって、国民の政治的基本権、団体行動権、職業の自由などを侵害した」と述べた。
尹大統領は、12・3非常戒厳は国会が相次ぐ弾劾、予算削減などで国政をまひさせたから宣布したと主張したが、憲法裁は「国会による弾劾訴追、立法、予算案審議などの権限の行使が、この事件の戒厳宣布時に重大な危機状況を現実的に発生させていたとは見なせない。国会による権限行使が違法または不当であったとしても、憲法裁判所の弾劾審判、被請求人による法律案の再議要求などの平常時の権力行使方法で対処できるため、国家緊急権の行使を正当化することはできない」と述べた。
憲法裁はまた「被請求人の主張する国会の権限行使による国政のまひ状態や不正選挙疑惑は、政治的、制度的、司法的手段によって解決すべき問題であって、兵力を動員して解決できるものではない」と付け加えた。「警告のための戒厳」または「訴えるための戒厳」だったとする尹大統領の主張に対しても、「戒厳法が定めた戒厳宣布の目的ではない」と一蹴した。
尹大統領は、国会に軍と警察を投入をしたのは秩序維持の観点からのものだったと主張したが、憲法裁は国会議員の活動を阻止することが目的だったと判断した。憲法裁は「被請求人は軍と警察を投入して国会議員の国会への立ち入りを規制する一方、彼らを引きずり出せと指示することで国会の権限行使を妨害したため、国会に戒厳解除要求権を与えている憲法の条項に違反しており、国会議員の審議・表決権、不逮捕特権を侵害した」と述べた。国会に投入した軍と市民の対峙(たいじ)状況についても、憲法裁は「被請求人は国軍の政治的中立を侵害するとともに、憲法に規定されている国軍統帥義務に違反した」と述べた。
国家情報院のホン・ジャンウォン第1次長にいわゆる「政治家の逮捕」を指示したことについて、少なくとも政治家の位置追跡と把握を指示したものだと判断した憲法裁は、「(被請求人は)各政党の代表らの位置確認の試みに関与することで、政党活動の自由を侵害した」と判断した。キム・ミョンス最高裁長官らの位置確認の試みも、司法権の独立の侵害だと判断した。
不正選挙疑惑を解消するための戒厳宣布だったという主張に対しても、憲法の定める戒厳宣布要件である戦時・事変やこれに準ずる状況とは見なせないと判断した。選管に対して強制捜査を試みたことも、選管の独立の侵害であり違法だと判断した。
尹大統領による戒厳宣布の前に行われたわずか5分間の国務会議について、憲法裁は適法な戒厳宣布手続きではなかったと判断した。憲法裁は「被請求人は戒厳司令官ら、この事件の戒厳の具体的な内容を説明していないこと、他の構成員に意見を述べる機会を与えていないこと、などを考慮すると、この事件の戒厳宣布に関する審議が行われたと考えることも難しい。被請求人は、首相と関係国務委員が非常戒厳宣布文に副署しなかったにもかかわらず、この事件の戒厳を宣布しており、その実施日時、実施地域および戒厳司令官を公告しておらず、遅滞なく国会に通告してもいないため、憲法および戒厳法の定める非常戒厳宣布の手続き的要件に違反した」と述べた。
憲法裁は、これらの行為は重大な法律違反であるため、尹大統領の罷免が正当だと判断した。憲法裁は「このような行為は法治国家の原理と民主国家の原理の基本原則に違反したもので、それそのものが憲法秩序を侵害しており、民主共和政の安定性に深刻な危害を及ぼした」として、「国会が迅速に非常戒厳解除要求決議をあげることができたのは、市民の抵抗と軍と警察の消極的な任務遂行のおかげであるため、これは被請求人の法違反の重大さの判断に影響を及ぼさない」と述べた。
憲法裁は「大統領の権限はあくまでも憲法によって与えられたものだ。被請求人は最も慎重に行使されるべき権限である国家緊急権を、憲法の定める限界を超えて行使したため、大統領としての権限行使に対する不信を招いた」とも述べた。
そして「被請求人と国会との間に発生した対立は一方の責任に属するとは考え難く、それは民主主義の原理に則って解消されるべき政治の問題だ。これに関する政治的見解の表明や公的な意思決定は、憲法で保障される民主主義と調和する範囲で行われなければならない。国会は少数意見を尊重するとともに、政府との関係においては寛容と自制を前提として、対話と妥協を通じて結論を導き出すよう努めるべきだった。被請求人も、国民の代表である国会を協同統治の対象として尊重すべきだった。にもかかわらず、被請求人は国会を排除の対象にした。これは民主政治の前提を破壊するもので、民主主義と調和すると考えることは難しい」と述べた。
憲法裁はまた「被請求人は憲法と法律に違反してこの事件の戒厳を宣布することにより、国家緊急権の乱用の歴史を再現して国民を衝撃に陥れ、社会、経済、政治、外交の全分野に混乱を生じさせた」と指摘した。
憲法裁はさらに、「軍と警察を動員して国会などの憲法機関の権限を傷つけるとともに、国民の基本的人権を侵害することで憲法擁護の責務をかなぐり捨て、民主共和国の主権者である大韓国民の信任を重大に裏切った。結局、被請求人の違憲・違法行為は国民の信任を裏切ったもので、憲法擁護の観点から容認され得ない重大な法違反行為に当たる」と述べた。
いっぽう憲法裁は、尹大統領側が主張した手続き上の問題点はいずれも認めなかった。国会側が尹大統領の弾劾訴追事由書で内乱罪などの刑法違反の部分を憲法違反行為に含めて判断を仰ぐとしたことについて、憲法裁は「基本的な事実関係は維持しながら適用法の条文を撤回・変更することは、訴追事由の撤回・変更に当たらないため、特別な手続きを経なくても許容される」と述べた。国会法制司法委員会が弾劾訴追案について調査しなかった、同じ会期に同じ案件を上程して一事不再議の原則に違反したという主張も、いずれも認めなかった。
尹大統領の弾劾事件で検察の尋問調書を証拠として採用できるかをめぐっては、キム・ヒョンドゥ、イ・ミソンの2人の裁判官は、刑事訴訟法上の伝聞法則を緩和して適用できるとして、証拠採用できるとする補充意見を、キム・ボッキョン、チョ・ハンチャンの両裁判官は、今後はより厳格に適用する必要があるとする補充意見を表明した。
非常戒厳宣布権は大統領の高度な政治行為であり、司法判断の対象とはならないという主張についても、憲法裁は「高位公職者の憲法違反および法律違反から憲法秩序を守るという弾劾審判の趣旨などを考慮すれば、この事件の戒厳宣布が高度な政治的決断を要する行為だとしても、それが憲法および法律に違反しているかどうかは審査できる」と述べた。
ムン・ヒョンベ憲法裁判所長権限代行は、約22分にわたって決定の要旨を読み上げた。尹大統領は、ムン代行が主文を読み上げたこの日午前11時22分をもって、大統領の職位を剥奪された。
オ・ヨンソ、キム・ジウン、チャン・ヒョヌン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2025-04-04 12:13
「The Hankyoreh」 2025-04-04 14:03
■今日から次期韓国大統領予備候補の登録開始…大統領選は6月3日が有力
【写真】尹錫悦大統領が3日、ソウル市龍山の大統領室でキルギス共和国のサディル・ジャパロフ大統領と包括的パートナー関係の樹立に関する共同声明に署名した後、席を立っている=大統領室記者団//ハンギョレ新聞社
4日の憲法裁判所による尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領弾劾訴追の容認を受け、第21代大統領選出のための早期大統領選挙が幕開けした。選挙日として6月3日が有力視されるなか、与野党は各党の大統領候補を選出するための選挙戦の準備に突入した。
憲法第68条は、大統領の地位が空席の場合、60日以内に選挙を実施するよう定めている。各党の選挙戦や選挙運動の期間などを考慮すれば、60日目の6月3日火曜日が大統領選挙日として指定される可能性がある。ハン・ドクス大統領権限代行首相は「遅くとも選挙日の50日前」までに選挙日を公告する必要があるとする公職選挙法第35条にしたがい、4月14日までに大統領選挙日を確定して公告しなければならない。
6月3日が大統領選挙日として確定すれば、5月10日~11日に大統領候補登録、5月20日~25日に在外国民投票、5月29日~30日に事前投票が行われ、公式の選挙運動期間として、5月12日から6月2日までの22日間が与えられる。
中央選挙管理委員会は、今日から大統領選予備候補者の受付を始める。中央選挙管理委員会の関係者はハンギョレの電話取材で、「大統領罷免の宣告が出ると、ただちに選挙事由が発生するため、予備候補の受付が始まる」と述べた。与党「国民の力」や最大野党「共に民主党」などは、各党の大統領候補を選出する選挙戦の準備に突入するものとみられる。選挙管理委員会での候補登録日まで1カ月ほどしかないため、各党の選挙戦もその期間内で圧縮して進められるものとみられる。
共に民主党では、各種の世論調査で30%を超える支持率を得て先頭を走る同党のイ・ジェミョン代表の独走のもと、キム・ギョンス元慶尚南道知事、キム・ドンヨン京畿道知事、キム・ドゥグァン元慶尚南道知事、キム・ブギョム元首相、キム・ヨンロク全羅南道知事、パク・ヨンジン前議員、イ・クァンジェ元江原道知事、チョン・ジェス議員(ハングル順)らが選挙戦に突入することになるとみられる。共に民主党指導部の関係者は「実務的な準備はできている。まもなく選挙戦の日程が発表されるものと思われる」としたうえで、「早期大統領選挙のための特別党規を準備し、候補と選挙人団の募集などを順に進めていくだろう」と述べた。圧倒的な支持を得ているイ代表の無難な選挙戦通過が予想されるため、選挙戦期間は2~3週程度の短さだろうとみる予想も党内外から出ている。
「国民の力」で浮上している候補は10人を超える。国民の力では、支持率1位のキム・ムンス雇用労働部長官の出馬の可能性が論じられており、アン・チョルス議員、オ・セフン・ソウル市長、ユ・スンミン元議員、ハン・ドンフン前代表、ホン・ジュンピョ大邱(テグ)市長はすでに出馬の意向を明らかにしている。キム・テフム忠清南道知事、ユ・ジョンボク仁川市長、イ・チョルウ慶尚北道知事らも出馬を検討中だ。
首相と広域市・道の首長が大統領選挙に出馬するためには、大統領選挙日の30日前の5月4日までに辞任しなければならない。国民の力の上層部の関係者は「共に民主党とは違い、われわれは誰が候補になるのか不明な状況であるため、選挙戦では4~5週間ほどの予備選挙を行い、関心を最大限集めるのが良いと思われる」と述べた。序盤の世論調査の成績に応じて、オ・セフン市長やホン・ジュンピョ市長などの現役の自治体首長の候補は、大統領選挙レースで早期離脱し、職にとどまる可能性があるという観測も出ている。
祖国革新党は、大統領候補を選出するかどうか悩んでいる。改革新党は大統領候補として、早々にイ・ジュンソク議員を選出した。
コ・ハンソル記者、ソ・ヨンジ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/politics/assembly/1190674.html
韓国語原文入力:2025-04-04 12:00
2025-04-04 12:22
■尹、前大統領としての礼遇ほとんど剥奪…転居先は瑞草区の自宅か
【写真】尹錫悦大統領が3月8日午後、京畿道義王市のソウル拘置所から釈放され、支持者たちにあいさつしながら歩いている=キム・ヨンウォン記者//ハンギョレ新聞社
4日の憲法裁判所による弾劾宣告で大統領職を罷免された尹錫悦大統領からは、前大統領に提供される各種の礼遇が、警護・警備を除いてほとんど剥奪される。現職大統領に保障される刑事上の不訴追特権もなくなる。
尹大統領が5年の任期を正常に終えるか辞任していたなら、前大統領として年金、事務室の提供、運営経費、本人と家族に対する医療、秘書官3人と運転手1人などが保障された。年金は、現職時に受け取る年間報酬の95%で、尹大統領の今年の年俸は2億6258万ウォンだったため、通常であれば年間2億6000万ウォン(約2640万円)あまりが受け取れた。
しかし「前職大統領の礼遇に関する法」は、在職中の弾劾による退任▽禁錮以上の刑の確定▽刑事処分を回避することを目的とした外国逃亡▽大韓民国国籍の喪失などに当てはまる場合は、ほとんどの礼遇を剥奪するとしている。
前職大統領という象徴性を考慮して警護・警備は保障される。ただし、正常に退任した場合は最大15年間(10年+延長5年)警護が受けられるが、任期満了前に退任した場合は10年(5年+延長5年)に短縮される。前職大統領の警護人員は通常、夫婦で25人ほどが配される。
尹大統領夫妻は官邸を離れ、ソウル瑞草区(ソチョグ)の自宅(アクロビスタ)に転居するとみられる。ただし、大統領の官邸退去時期についての規定がないため、数日は官邸にとどまる可能性が高い。2017年3月10日に罷免された朴槿恵(パク・クネ)元大統領は自宅の施設の補修、警護問題などを理由として、宣告の2日後に大統領府を退去している。警護処は尹大統領の就任から約6カ月間、瑞草区の自宅を警護した経験があるため、早期の警護準備に問題はないはずだという。
イ・スンジュン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2025-04-04 11:32
「The Hankyoreh」 2025-04-04 11:46
■【速報】韓国憲法裁判所、内乱首謀した尹錫悦大統領を全会一致で罷免
憲法裁判所が尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領を罷免した。憲法裁は4日午前11時、大審判廷で、尹大統領弾劾事件についての決定を宣告し、「被請求人大統領尹錫悦を罷免する」と述べた。昨年12月3日、非常戒厳が宣布されてから123日後に下された結論だ。
尹大統領は12・3内乱事態により昨年12月14日に国会で弾劾訴追案が可決された。憲法裁の今回の結論は弁論終結から38日後に出たもので、歴代の大統領弾劾事件の中で最長の審理を記録した。
オ・ヨンソ、キム・ジウン、チャン・ヒョヌン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力: 2025-04-04 11:26
「聯合ニュース」 2025.04.03 10:10
■尹氏弾劾判断控え賛否両派「座り込み」総力戦 警察は非常勤務体制に=韓国
【ソウル聯合ニュース】韓国の尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領の罷免の是非を判断する憲法裁判所の弾劾審判の宣告を翌日に控えた3日、罷免の賛成派と反対派は憲法裁付近で集会を開く。
【写真】憲法裁の周辺に作られた警察車両による壁=2日、ソウル(聯合ニュース)
市民団体「尹錫悦即刻退陣・社会大改革非常行動」はこの日夕方、憲法裁付近で尹大統領の罷免を求める集会を開く。集会後は行進も行う計画だ。その後、夜を徹して座り込み、4日午前11時の宣告をテレビ中継で視聴する。
尹大統領の罷免に反対する保守団体などもこの日、憲法裁近くなどで集会を開催する。反対派の約50人は2日から夜通しで座り込みを行った。この日も座り込みを続ける。反対派も4日午後、テレビ中継を視聴する計画だ。
一方、警察はこの日午前9時、ソウルに非常勤務体制のうち上から2番目に高い「乙号非常」を発令した。4日には警察力100%の動員が可能な最高レベルの非常勤務体制「甲号非常」を全国に発令する。全国210の機動隊の隊員約1万4000人や刑事機動隊なども動員する。
また、国会や大統領室、外国の大使館、主な報道機関などにも機動隊を配備する。
「The Hankyoreh」 2025-04-03 07:57
■尹錫悦大統領の運命を決める2つの基準「憲法守護の意志・国民の信任」
違憲・違法に加えて重大性が判断のカギ
盧武鉉元大統領の弾劾裁判では政治中立違反を認めたが
憲法守護の観点から重大性は低く、「棄却」
国政壟断の朴槿恵元大統領の場合、基準をすべて満たし「罷免」
【写真】尹錫悦即時罷免・社会大転換ソウル非常行動、民主労組ソウル本部など、内乱首謀者尹錫悦罷免バスの参加者らが2日午前、ソウル市龍山区の大統領官邸に向かい弾劾を求めて行進し、警察に阻止されている=シン・ソヨン記者//ハンギョレ新聞社
韓国憲法では、弾劾訴追議決の要件を「憲法や法律を違反したとき」と決めている。憲法裁判所は弾劾事件を進めるなかで、違憲・違法行為に加え「重大性」まで認められてこそ、罷免に至ることが可能となるという判例を確立した。法曹界では、尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領が宣言した12・3非常戒厳の違憲・違法性は明白であるため、憲法裁判官がその重大性をどう判断するかがカギだとみている。
これに先立ち憲法裁判所は、盧武鉉(ノ・ムヒョン)元大統領と朴槿恵(パク・クネ)元大統領の弾劾裁判を通じて、違憲・違法行為の「重大性」を、「憲法守護」と「国民の信任」の観点で改めて分けて判断した。2004年に棄却された盧武鉉元大統領の弾劾事件の場合、憲法守護の観点での重大性が認められなかった。当時の憲法裁判所は、総選挙を控えた状況のもと、与党支持を訴えた盧大統領の行為が政治的中立性違反ではあるが、憲法守護の観点では重大性は低いと判断した。憲法裁判所は「具体的な法律違反行為に、憲法秩序に逆行しようという積極的な意志を認められないため、自由民主的な基本秩序に対する脅威とは評価できない」と明らかにした。
朴槿恵元大統領は、2つの重大性の基準を両方とも満たしたケースだ。2017年の憲法裁判所は、「朴大統領がチェ・スンシル氏の国政介入を許容した行為は、法治主義の精神を損なうものであり、大統領としての公益実現の義務を重大に違反した」ものであり、「1回目の国民に向けての談話で行なった謝罪は、客観的事実と合わないなど真正性が足りず、(談話の内容とは違い)捜査に応じない行為などは、国民の信任を裏切った行為」だと判断した。憲法守護と国民の信任の観点で違法行為が重大だということだ。特に、朴元大統領弾劾事件において、捜査拒否が重大な違法行為と判断されたことを踏まえ、尹大統領の逮捕令状執行拒否や大統領室の押収捜索拒否などを、憲法裁判所がどのように判断するのかについて関心が集まっている。
【写真】尹錫悦大統領が2月6日、ソウル市鍾路区の憲法裁判所で開かれた弾劾審判の第6回弁論に出席して、物思いにふけっている=共同取材写真//ハンギョレ新聞社
先月24日、憲法裁判所はハン・ドクス首相の事件で、マ・ウンヒョク裁判官の任命拒否は違憲であり、「憲法秩序に及ぼすことになった否定的な影響と波及効果は重大だ」として、憲法守護の観点で違憲行為の重大性があると判断した。それでも、憲法裁判所は「(ハン首相の違法行為が)任命権者である大統領を通じて間接的に付与された国民の信任を裏切ったケースに該当すると断定することはできない」として、棄却を決めた。首相として受ける国民の信任に背くとするには、違法行為が重大ではないという趣旨だった。国民の直接投票によって選出された大統領には、首相よりも国民の信任を裏切ったという要件を幅広く適用しうるという意味でもある。
憲法研究官出身である建国大学法学専門大学院のスン・イド教授は2日、ハンギョレの電話取材で「尹大統領は非常戒厳という超憲法的な国家緊急権の行使を通じて権力を非正常的に掌握しようとし、国会に軍の兵力を投入し、民主主義憲法を後退させる行為に及んだ」として、「これは憲法守護の意志がなく、国民の信任に反する行動であり、罷免の理由になりうる」と述べた。
オ・ヨンソ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2025-04-02 23:25
「The Hankyoreh」 2025-04-03 07:38
■戒厳令、布告令、国会掌握…一つでも重大な違憲があれば尹大統領は罷免に
主な証言を通じて見た5大争点
【写真】尹錫悦大統領が2月13日、ソウル鍾路区の憲法裁判所の大審判定で開かれた尹錫悦大統領弾劾審判の8回目の弁論に出席している=写真共同取材団//ハンギョレ新聞社
4日に尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領弾劾事件の宣告を行う予定の憲法裁判所は、国会が弾劾訴追理由として提示した5大争点を基準に、違憲性と違法性に照らし合わせて最終判断を下す。非常戒厳宣布の違憲性▽戒厳令第1号▽軍と警察を動員した国会掌握の試み▽令状のない押収や逮捕など選挙管理委員会掌握の試み▽政治家や法曹人などに対する逮捕指示のうち一つでも重大な違憲・違法だと憲法裁で認められれば、尹大統領は罷免に至る可能性がある。第4〜10回弁論の過程で、16人の証人が憲法裁に出席し、尹大統領の非常戒厳宣布にともなう違憲・違法行為を具体的に証言した。
最も基礎的な争点は、尹大統領の12・3非常戒厳宣布が、憲法と法律が定めている手続きと要件を満たしているかどうかだ。
尹大統領は「非常戒厳宣布は高度の統治行為」だとし、野党が弾劾を乱発したことなどを名目に掲げ、正当性を主張してきた。一方、国会側は憲法が定めた戒厳発動状況(戦時・事変またはこれに準ずる国家非常事態)ではなかったため、戒厳の宣布そのものが違憲・違法だと反論した。非常戒厳宣言前に行われた「5分間の国務会議」の適法性も重要な判断基準になる。
これについて、ハン・ドクス首相は2月20日、弾劾審判第10回弁論で、「戒厳宣布前の国務会議は通常の国務会議ではなく、形式的・実体的な欠陥があったのは事実」だと証言した。
政治活動禁止、言論・出版の統制などの内容を盛り込んだ戒厳令第1号の違法性も主要争点だ。国会側は、国会活動と政党の政治活動を禁止する条項が含まれている違法な布告令だと指摘した。
尹大統領側は、キム・ヨンヒョン前国防部長官が過去の布告令を誤ってそのまま写したと主張し、4回目の弁論ではキム前長官を尋問する際、「『(布告令は)上位法規にも違反し、内容が具体的でないため、執行の可能性もないが、そのままにしておきましょう』と(尹大統領が)言ったが、覚えているか」と尋ねた。布告令が上位法規である憲法に反するという点を認識していたと自ら認めたわけだ。
戒厳軍と警察が国会を封鎖して国会活動を妨害しようとしたという疑惑は、弁論過程で様々な証言で裏付けられた。尹大統領側は「秩序維持」のためだったと主張したが、第6回弁論に証人として出席したクァク・チョングン前陸軍特殊戦司令官は、尹大統領に「議決定足数に至っていないようだ。早く国会の門を壊して入って、中にいる人たちを引きずり出せ」と指示されたと証言した。
第5回弁論に証人として出席したヨ・インヒョン前防諜司令官は、「戒厳当日、兵力を出動するようキム・ヨンヒョン前国防部長官に命令された」と認めており、警察に特定の人物の位置を把握するよう要請した事実を認めた。イ・ジヌ前首都防衛司令官はほぼ答弁を拒否したが、チョ・ソンヒョン首都防衛司令部第1警備団長は第8回弁論で、イ前司令官から「国会内部に入って議員たちを引きずり出せ」と指示されたと証言した。
軍を動員した選挙管理委員会の強制捜索も、弁論過程で違法行為が再確認された。尹大統領は第5回弁論で「選管委に戒厳軍を派遣するように言ったのは、私がキム・ヨンヒョン前長官に指示したこと」だと述べた。尹大統領が一貫して否定してきた違憲・違法行為の中で、ほとんど唯一認めた事実関係だった。さらに尹大統領は、「選管委に入り、(セキュリティ点検を行った)国情院がすべては確認できなかった選管委の電算システムにどのようなものがあり、どのように稼動するのか、スクリーン(点検)をしろという趣旨だった」と主張した。選管委のセキュリティがずさんで不正選挙の疑惑が持ち上がったため、自分が軍を送り、これを点検しようとしたという主張だ。
しかし第7回弁論に証人として出席したキム・ヨンビン中央選管委事務総長は「不正選挙疑惑はまったくあり得ない」としたうえで、「果川(クァチョン)庁舎に入ってきた戒厳軍がひとまず『行動統制』をしながら(職員らの)携帯電話を押収した。それ自体が逮捕・監禁に当たる」と反論した。
政治家や法曹人の逮捕指示をめぐる争点については、これを初めて暴露したホン・ジャンウォン国情院第1次長に対する尹大統領側の「揺さぶり」が激しく展開された。ホン前次長は第5回弁論に出席し「『全員捕まえろ』という尹大統領との通話内容を一言一句まで覚えている」とし、ヨ・インヒョン前防諜司令官との通話で「共に民主党」(最大野党)のイ・ジェミョン代表など、政治家や法曹人の逮捕リストを聞いてメモしたと述べた。
尹大統領側が、ホン前次長が証言した非常戒厳当日の夜の動線に誤りがあると指摘したことを受け、ホン前次長は第10回弁論に再び出席し、非常戒厳当日に作成した逮捕関連メモを審判廷で提示し、作成場所は国情院長官邸の前ではなく、自分の執務室だと訂正した。
同じ日に証人として出席したチョ・ジホ警察庁長は、「尹大統領から直接『国会議員を逮捕せよ』という指示を受けた」と検察に供述した内容と関連し、「事実関係に間違いはない」と証言し、尹大統領の逮捕指示があったという証言を後押しした。
チャン・ヒョヌン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2025-04-02 22:40
「The Hankyoreh」 2025-04-03 00:12
■「尹錫悦は国民の怖さを知らない」…市民、全員一致での罷免求める
【写真】尹錫悦即時退陣・社会大改革非常行動が2日夕刻、ソウル鍾路区の安国駅6番出口前で開催した内乱首魁尹錫悦即時罷免集会に、市民が集まっている=イム・ジェヒ記者//ハンギョレ新聞社
「憲法が守られているという証拠が見たくて」、「市民に銃刀を向けた大統領に腹が立って」、「これからもっと連帯したくて」。
2日夕刻、ソウル鍾路区(チョンノグ)の安国(アングク)駅6番出口前。市民は各自異なる理由をあげ、尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領罷免を叫んだ。そして「内乱勢力を制圧しよう」などと書かれた印刷物、自ら記した「主文、被請求人大統領尹錫悦を罷免する」などの様々なプラカードを振った。また、200メートルほど離れた憲法裁判所に向かって「憲法裁は尹錫悦を8対0で罷免せよ」、「内乱首魁(しゅかい)尹錫悦を全員一致で罷免せよ」と声を一つにして叫んだ。
尹錫悦即時退陣・社会大改革非常行動(非常行動)はこの日午後7時、安国駅6番出口前で「内乱首魁尹錫悦即時罷免」集会を開催した。前日の夜9時から24時間にわたって続けられた徹夜集中行動の最後を飾る集会だ。市民は安国駅6番出口付近の6車線道路の、150メートルの区間を埋め尽くした。
市民は、昨年の12・3内乱を繰り返さないために、憲法裁は全員一致で尹大統領に罷免を言い渡すべきだと口をそろえた。ムン・ナギョンさん(84)は「(尹大統領は)ソウル拘置所から出てきた時、頭を下げて国民に間違っていたと謝罪すべきだったが、笑いながら握り締めた拳を振り上げていた」とし、「国民を怖がっていないようだ」と話した。そして「国民の怖さを知らない大統領があんな非常戒厳をまた繰り返したらどうするのか」と、尹大統領が罷免されるべき理由を語った。休暇を取って京畿道金浦市(キンポシ)からやって来たという会社員のイ・スンミンさん(53)も、「国会を軍隊が襲ったということは、自分を止められるあらゆる方策を防ごうとしたということ。対話や妥協もなしに自分の意思ばかりを貫徹しようとした尹大統領は、再発の懸念もあるので絶対に罷免されるべきだ」と話した。
済州4・3抗争とセウォル号惨事を記憶している4月の市民たちは、差別や嫌悪に別れを告げるために尹大統領を罷免しようと声を強めた。済州4・3汎国民委員会のペク・キョンジン理事長は、「内乱勢力は戒厳文書で済州4・3のことを『済州暴動』と言っており、極右勢力は(済州4・3抗争の象徴である)ツバキバッジを共産党バッジだと言っているが、彼らこそ暴動勢力。白骨団のような暴力団の蠢動(しゅんどう)がソウル西部地裁を侵奪するに至り、憲法裁判所などあちこちで恐怖の雰囲気を造成している」と述べた。京畿道安山(アンサン)からやって来たというチョン・ウランさんは舞台上で、「セウォル号惨事11周忌が2週間後に迫っているが、この社会はなぜこのように遅いのか、つらい時間でもあった。もう一度未来を夢見てみようと、迫りくる春に勝利する経験を共有しようと言いたくなった」と語った。
【写真】2日夕刻、尹錫悦即時退陣・社会大改革非常行動が開催した内乱首魁尹錫悦即時罷免集会の参加者が、自分で作ったプラカードを手にしている=イム・ジェヒ記者//ハンギョレ新聞社
市民にとって、尹大統領の罷免は社会改革のはじまりでもあった。非常行動のパク・ソグン共同議長は「尹錫悦罷免は新たなはじまりに過ぎず、その後に私たちがなすべきことは非常に多い」として、「OECD(経済協力開発機構)自殺率1位の世の中を変え、庶民も人間らしく生きられる世の中を作らなければならないのではないか」と述べた。そして「内乱勢力の清算と社会大改革で、人間らしく生きられる世の中を共に作っていこう」と語った。
非常行動はこの日、デモ行進は行わずに24時間にわたった徹夜集中行動を終えた。主催者は、尹大統領の支持者との接触を避けてほしいと訴えつつ、解散後は弾劾反対集会の会場に近い安国駅ではなく、光化門(クァンファムン)駅などを利用するよう要請した。徹夜座り込みは3日午後7時から翌日の憲法裁による決定言い渡しまで行われる予定だ。
イム・ジェヒ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2025-04-02 21:19
「The Hankyoreh」 2025-04-02 10:03
■韓国二大労総、4日の弾劾審判宣告前に「罷免要求」24時間集中行動
【写真】憲法裁判所が尹錫悦大統領の弾劾審判の宣告日を発表した1日、憲法裁判所のそばに警察のバスで壁が構築されている/聯合ニュース
憲法裁判所による尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領の弾劾審判の宣告日が4日に決まった1日、労働界は憲法裁に罷免決定を要求する24時間徹夜集中行動に突入した。
民主労総と韓国労総はこの日午後6時、ソウル光化門(クァンファムン)の東十字閣(トンシプチャガク)で共同集会を開催し、裁判官の全員一致による尹大統領の弾劾を憲法裁に求めた。韓国労総のキム・ドンミョン委員長は「憲法を踏みにじった尹錫悦が復帰すれば韓国社会は破滅し、共同体は徹底的に崩壊するだろう」とし、「尹錫悦審判闘争の長い冬を勝ち抜いた我々労働者の力で、今度は労働の春、ソウルの春を迎えよう」と述べた。民主労総もこの日の声明で、「すべての市民が見守った内乱行為を違憲、違法と言わないなら、憲法裁判所には存在価値がない。憲法裁判所は4日11時、全員一致で内乱首魁(しゅかい)尹錫悦を罷免せよ」と述べた。
二大労総は集会後に行われた尹錫悦退陣非常行動の集会に合流。その後、鍾路区(チョンノグ)に位置する憲法裁判所まで行進した。続いて、憲法裁に全員一致による罷免決定を求める座り込みを開始した。座り込みは2日午前まで。
チョン・ジョンフィ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2025-04-01 18:07