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三重県木本で虐殺された朝鮮人労働者の追悼碑を建立する会と紀州鉱山の真実を明らかにする会

三重県木本で虐殺された朝鮮人労働者の追悼碑を建立する会と紀州鉱山の真実を明らかにする会

「世界が驚いた韓国の「民主主義の情熱」、新たな跳躍の火種に」

2025年04月08日 | 韓国で
「The Hankyoreh」 2025-04-07 10:01
■世界が驚いた韓国の「民主主義の情熱」、新たな跳躍の火種に【コラム】
 韓国を危機から救ったのは、裁判官ではなく国民 
 反動と退行の時代に「民主主義の回復力」を示し 
 戒厳を阻止し、憲法裁を動かした市民たちの願いを実現させるべき 
 弾劾賛成の政治・市民勢力による「多数派連合」の構築を

 尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領が罷免された。2022年5月10日の就任からわずか2年11カ月。昨年12月3日の内乱失敗以降、事実上国政が麻痺していたことを考慮すると、5年の任期の半分だけを終えて追い出されたわけだ。8年前に弾劾された朴槿恵(パク・クネ)大統領(任期を11カ月残して退任)と比較しても、あまりにも早い退場だ。あらゆる人の想像を超えた非常戒厳が直接のきっかけになったが、根本的な理由は別のところにある。すなわち、国政運営の惨憺たる失敗だ。
 尹前大統領が政権に就いた3年近い時間、大韓民国は立ち止まっていた。現状維持どころか、むしろ墜落した。経済は沈滞し、国民生活は困窮するようになり、朝鮮半島の平和と安定は崖っぷちの状況に追い込まれた。進歩・保守を問わず歴代すべての政権は、社会福祉を拡大し、成長のための研究開発投資に力を入れた。尹前大統領はそのような基本的な任務にあっさり目をつぶった。今年の韓国の経済成長率は0%台に低下する可能性があると、ある世界的な投資銀行は予測した。ウクライナ戦争をはじめとする外的変数が作用したとはいえ、状況に機敏に対応できない政府の責任が大きい。
 大統領は国民には関心を持たず、ひたすら「左派清算」ばかりを叫んだ。「破廉恥な従北反国家勢力を一挙に清算するために」非常戒厳を宣布すると述べた。国政運営の最高責任者が理念戦争に没頭するのだから、政権が正常に回るわけがない。セマングム世界ジャンボリー大会での惨事や、釜山(プサン)博覧会誘致の失敗は端的な事例だ。「目覚めてみれば後進国」というハンギョレのコラムの題名は誇張ではない。
 大統領制のもとで大統領ひとりを間違って選んだ結果がいかに重いのかを、われわれは尹前大統領を通じて実感した。法執行機関に抵抗して「最後まで戦おう」と支持者を扇動する姿は、国民が抱いてきた「大統領の望ましい像」とはかけ離れていた。憲法裁の罷免決定はだからこそ幸いだ。戒厳と弾劾という無残な過程を経たが、無能のみならず邪悪ですらあった統治者に、さらに2年間を任せることなく新政権発足の機会を得ることになったのは、逆説的に機会だと考えられる。
 これからは弾劾を越えて新たな跳躍を始めなければならないときだ。憲法裁の尹大統領弾劾で意義があるのは、韓国の驚くべき民主主義の回復力を全世界に示したことだけでなく、流血の事態なしに平和に民主主義をよみがえらせたことだ。昨年12月3日夜に尹大統領が非常戒厳を宣布したとき、欧米は「最も躍動的に発展する国の一つ」である韓国で、どうしてこのようなことが繰り広げられるのかと驚いた。しかし、韓国国民がみせた民主主義の情熱と回復の過程は、全世界に響きを与えるのに十分だった。
 「尹錫悦逮捕」を求め、ソウルの漢南洞(ハンナムドン)にある大統領官邸の前で、大雪のなかでも夜を徹したデモ隊の写真は象徴的だ。憲法裁の決定が遅れ、心配と怒りが強まったが、最後まで既存の制度を信じて平和的手段で待ち続けたことも、評価に値する。憲法裁は、誰も反論できないよう、「大統領尹錫悦を罷免しなければならない理由」を一つひとつ説得力をもって提示することで、国民が長く待ち望んでいたことに応えた。
 世界的に反動の時代だ。1990年代の東欧民主化後、オレンジ革命、ジャスミン革命、アラブの春につながり、民主主義は逆らうことができない流れとして地位を確立した。韓国はいつも先鋒だった。1987年の6月抗争で軍事独裁政権を終わらせ、10年後に憲政史上初めて平和的な政権交替を実現した。2017年には数百万人が広場でろうそくを灯し、権威主義統治を復活させた大統領を退陣させた。しかし最近になり、アジアや南米だけでなく欧州や米国でも、選挙で政権に就いた後に民主主義に逆行する権威主義的な指導者がますます増加している。米国のドナルド・トランプ大統領やハンガリーのビクトル・オルバン首相がそうだ。
 尹錫悦前大統領も同じだ。選挙でかろうじて勝利したにもかかわらず。民主主義の手続きを無視し、国会との妥協を拒否し、検察権を乱用した。最後には、歴史の裏側に消えたと信じられていた非常戒厳を持ち出し、軍を動員して国会を制圧しようとした。アジアや南米では、民主主義が崩壊したとき、いかなる流血事態もなしに平和な方法で再び完璧に回復した事例は容易に見いだすことができない。長期間の軍事独裁時代を経て、誰よりも権力の退行に敏感である韓国国民の感受性と情熱が、今の時代に「生きている民主主義の見本」として世界の多くの人々にインスピレーションを与えている理由だ。
 民主主義を復活させる過程で、制度や手続きが一つも損なわれなかったことにも意義がある。2017年に朴槿恵弾劾を引き出したろうそく集会は、香港の民主化運動を経て、ミャンマーの軍事クーデター反対デモにつながった。2025年の韓国の極悪非道な権力者の追放が、米国や欧州で可視化する民主主義の後退の流れに対して、一つの警鐘になることを希望する。
 しかし、民主主義を守っただけでは不十分だ。尹前大統領の内乱の試みと、その後に生じた保守陣営の「尹錫悦守護」の動きは、もはや極右政治勢力をそのまま放置することは許されず、極右勢力を孤立させることが韓国政治の当面の課題として浮上したことを示している。尹錫悦前大統領の非常戒厳は、軍の指揮官と将兵の支持をほとんど得られなかったほど、名目のない行動だった。しかし、彼の偽りの主張を支持する極右集団はむしろ勢力を拡大した。
 チョン・グァンフン牧師が率いる「アスファルト極右」(街頭で行動する極右)が主軸となった自由統一党は、昨年4月の総選挙では2.26%の支持率にすぎなかったが、数日前に行われたソウル市九老(クロ)区庁長補欠選挙では、32%の支持を獲得した。もちろん、与党「国民の力」の候補が出馬せず、「保守唯一の候補」という反射利益を得たことが大きかった。しかし、ユン・サンヒョン議員が公然と応援演説を行うなど、与党内部の支持が少なからぬ役割を果たしたこともまた事実だ。
 健全な政党であれば、過激主義を制御できるバランス感覚と力量を持たなければならない。現在の与党「国民の力」はそうではない。それどころか、共和国を破壊しようとした尹錫悦前大統領を擁護し、アスファルト極右勢力に引きずられている。党員たちの雰囲気では「尹錫悦支持、弾劾反対」を強く叫ぶ人物が次期大統領候補に選ばれる可能性が非常に高いとみられる。心配なのは、国民の力の極右化傾向が、短期間で消えるようなものではないことだ。デモ隊のスローガンが、単なる「弾劾反対」ではなく、中国人などの外国人嫌悪や、フェイクニュースである不正選挙反対に変質していることは、欧州の極右政党の成長背景と一定程度は軌を一にする。
 2017年の朴槿恵弾劾で、韓国国民が深く心に刻まなければならない教訓がこれだ。はるかに広範囲だった広場のろうそく、そして、進歩と合理的保守まで網羅した「弾劾連帯」は、新政権発足後、社会的大妥協の重要な基盤として作用する機会があった。しかし、当時の弾劾連帯はいとも簡単に崩れ、新政権と市民社会の協力も続かなかった。文在寅(ムン・ジェイン)政権が朝鮮半島の平和の増進や新型コロナウイルスへの対応などで大きな成果を上げた点は評価に値する。しかし、ろうそくの連帯を改革推進のエネルギーにできなかったことは、任期中を通じて困難に直面させ、2022年の大統領選で尹錫悦という何の準備もない検察官出身のポピュリストに国政を渡す最悪の結果としてあらわれた。これから2カ月後に憲政史上2回目の弾劾で誕生する新政権は、この点を正確に認識し、注意深く対応していかなければならない。
 弾劾裁判は終わったが、戒厳に反対して弾劾に賛成した政界と市民社会団体を一つにまとめ上げることが、課題として残っている。誰が大統領になったとしても、新政権は戒厳事態で激化した葛藤と対立の激流を渡らなければならない。一時的な連帯をさらに固め、持続力のある「多数派政治連合」に結びつけることが必要だと思われる。それでこそ、少子高齢化や地方消滅などの複合危機に対処し、経済再跳躍を成し遂げる国民的エネルギーをうまく集めることができる。
 1997年のIMF危機に劣らない総体的な危機だ。2025年4月4日に憲法裁は全員一致で「尹錫悦大統領罷免」を宣告したが、危機の瞬間に国を救ったのは裁判官ではない。まさに国民だ。12月3日夜の非常戒厳宣布のニュースを聞き、国会に駆けつけ、戒厳軍を阻止した平凡な市民たちだ。内乱の試み後、ほとんど一日も欠かさず、光化門(クァンファムン)、汝矣島(ヨイド)、漢南洞(ハンナムドン)、南泰嶺(ナムテリョン)で集会に参加した市民たちが民主主義を守った。この人々とともに進まなければ、これから訪れる無数の困難を乗り越えることはできない。

パク・チャンス|大記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2025-04-06 10:15


「The Hankyoreh」 2025-04-07 08:07
■祭りになったソウル都心の集会、「民主主義の勝利」を満喫…「新しい世界を迎えよう」

【写真】「尹錫悦即時退陣・社会大改革非常行動」(非常行動)が5日午後、ソウル鍾路区景福宮東十字閣で開いた「勝利の日汎市民大行進」で、参加者たちが民主主義の勝利を叫んでいる=キム・ギョンホ先任記者//ハンギョレ新聞社

 「非常戒厳宣言から123日目でようやく内乱首謀者の尹錫悦(ユン・ソクヨル)を倒しました。 私たちの人生がドラマチックに変わることはないかもしれません。だけど、広場で愛と連帯の力で勝利する方法を学んだ私たちは、きっと12月3日以前とは違う世界を作っていけるでしょう」
 尹錫悦前大統領が罷免された翌日の5日、ソウル景福宮(キョンボククン)の東十字閣(トンシプジャガク)で開かれた「尹錫悦即時退陣!社会大改革!第18回汎市民大行進」(汎市民大行進)に参加した市民たちが、司会者の話を聞きながら笑顔で互いを見つめた。毎週末「尹錫悦を罷免せよ」という叫びが鳴り響いていたソウル都心はこの日、「民主主義が勝利した」というスローガンで埋め尽くされた。そして市民たちはもう一つのスローガンを忘れずに叫んだ。「新しい世界を迎えよう!」
 大統領罷免後、これまで広場から溢れ出た様々な声をもとに、「再び巡りあう世界」(少女時代の歌「Into The New World」のタイトルから)を準備しなければならないという要求が噴出している。弾劾集会の演壇には労働者や農業者、青少年、女性など様々な人々が上がり、これまで経験した差別と苦しみを語り、これを解消する代案作りを要請した。広場の叫びを牽引してきた「尹錫悦即時退陣・社会大改革非常行動」(非常行動)では、127団体、189人の専門家と活動家が市民の要求を分析し、「社会大改革に向けての課題」としてまとめた。政界と新政権に「みんなのための民主主義」を本格的に求める計画だ。
 広場に集まった人々の底辺が広かったことで、要求も多彩になった。非常行動の社会大改革課題は、憲政秩序の回復、政治・司法改革、経済・暮らしの問題、性平等、気候危機、ケアワーク、労働、言論の自由、教育・少年、食糧主権など分野だけでも12項目で、それに伴う法律制定と改正、政策基調の転換など課題は118項目にのぼる。関連した細部課題は424項目だ。特に性平等と気候危機分野の課題が多い。非常行動のキム・ジュホ政策企画チーム長は、「朴槿恵(パク・クネ)元大統領の退陣の時より、社会的にジェンダーや気候変動問題をさらに敏感に受け止めるようになった」とし、「尹錫悦政権下でかなり後退したテーマであるだけに、(社会大改革の課題として)強調された」と説明した。非常行動は、これらの課題を野党と協議し、大統領選挙の議題にする計画だ。先月10日、「共に民主党」など6野党は共同文書を発表し「尹錫悦罷免後にも、市民参加が保障された中で社会大改革を成し遂げるために協力する」という立場を表明した。
 至難な4カ月の記憶を振り返り、罷免宣告の喜びを満喫する「週末の祭り」だった汎市民大行進で、市民たちは口を揃えて「罷免は終わりではなく始まり」だと語った。忠清南道牙山市(アサンシ)から来たチョ・ヒョンさん(45)は「過去の時間が報われた気がして胸が熱くなったが、また新たな始まりだと考えると、気が重くなったりもする」とし、「憲法の価値をきちんと守る社会になってほしい」と話した。
 車椅子に乗って演壇に上がったチン・ウンソンさんは「広場に集まった私たちは同じではないが、互いに異なるという違いの中でも似た点を探し出し、差別と抑圧を受けた経験をつなげてきた」とし、「この連帯の力を一瞬も逃さず、罷免以降の日常に持ち込みたい」と語った。この日の集会で、ガールズグループaespaの「Whiplash」とロックバンド無限軌道の「君に」の曲に合わせて鳴り響いたスローガンも、「罷免、罷免、尹錫悦罷免」を越えて「変えろ、変えろ、世界を変えろ」に変わっていた。

イム・ジェヒ、パク・ゴウン、イ・ジヘ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2025-04-07 00:18
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「韓国国民の81%「憲法裁の尹錫悦罷免決定を受け入れる」」

2025年04月07日 | 韓国で
「The Hankyoreh」 2025-04-07 07:12
■韓国国民の81%「憲法裁の尹錫悦罷免決定を受け入れる」【世論調査】
 保守層でも66%…中道層は85% 
 野党のイ・ジェミョン代表、与党の有力候補との2者対決で50%以上の支持獲得 

【写真】ムン・ヒョンベ憲法裁判所長職務代行が4日午前、ソウル鍾路区の憲法裁判所の大審判廷で、尹錫悦大統領弾劾審判の認容決定文を読み上げている=写真共同取材団//ハンギョレ新聞社

 韓国国民の10人中8人が、憲法裁判所が4日に言い渡した尹錫悦(ユン・ソクヨル)前大統領の罷免決定を受け入れると答えた世論調査結果が6日に公開された。 この日、韓国ギャラップが「ソウル経済新聞」の依頼で4~5日に全国の18歳以上1012人を対象に実施した緊急世論調査(信頼水準95%、誤差範囲±3.1ポイント、応答率9.5%)の結果によると、憲法裁の決定を「受け入れる」という回答は81%で、「受け入れられない」(17%)を大きく上回った。「分からない・回答拒否」は2%だった。今回の調査は、ランダムに抽出された有線・無線の電話番号に調査員が電話をかけ、インタビューを行う方式で行われた。
 特に、保守層(66%)で憲法裁の決定を受け入れるという回答が「受け入れられない」(33%)という回答の2倍に達した。中道層の場合は受け入れるとの回答が85%、革新(進歩)層では97%だった。
 与党「国民の力」の支持層でも、「受け入れる」という回答が52%で、「受け入れられない」(45%)という回答を7ポイント上回った。最大野党「共に民主党」と「祖国革新党」の支持層では、受け入れるとの回答がそれぞれ99%と100%だった。これに先立ち、強硬支持層を中心に弾劾認容決定を不服とするムードが高まり、暴力デモなどにつながるのではないかという懸念が高まったこととは異なる結果と言える。
 尹前大統領の罷免に伴い、早期大統領選挙が確定した中、民主党のイ・ジェミョン代表が国民の力の有力大統領選候補ら(キム・ムンス、ハン・ドンフン、ホン・ジュンピョ、オ・セフン)との仮想二者対決で、いずれも50%を越える支持率で大きく差をつけていることが分かった。イ代表は、キム・ムンス雇用労働部長官との仮想二者対決では53%でキム長官(35%)を上回り、ホン・ジュンピョ大邱(テグ)市長(38%)、オ・セフン・ソウル市長(37%)、ハン・ドンフン前国民の力代表(32%)との仮想二者対決でも50%以上の支持率で誤差範囲を超えてリードした。
 次期大統領の好感度調査でも、イ代表が40%で1位を占めた。キム長官(7%)、ハン前代表(4%)、ホン市長(4%)、オ市長(3%)の4人の支持率を合わせたもの(18%)の2倍以上となる。
 政党支持率は民主党が44%で、国民の力(33%)を誤差範囲を超えて上回った。祖国革新党と改革新党はそれぞれ2%だった。
 詳しい内容は、中央選挙世論調査審議委員会のホームページを参照。

イ・ユジン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/politics/politics_general/1190980.html
韓国語原文入力:2025-04-06 20:15


「聯合ニュース」 2025.04.04 17:40
■[尹大統領罷免]「重大な違反」判断根拠は? 国家緊急権の乱用
【ソウル聯合ニュース】韓国の憲法裁判所は4日、「非常戒厳」宣言を巡り弾劾訴追された尹錫悦(ユン・ソクヨル)前大統領を罷免する決定を言い渡した。憲法裁は戒厳宣言について、国家緊急権を乱用した重大な違反行為であると指摘した。

【写真】宣告の主文を読み上げる文炯培(ムン・ヒョンベ)憲法裁所長権限代行(写真共同取材団)=4日、ソウル(聯合ニュース)

 憲法裁はその根拠としてまず、尹氏が国会との対立状況を打開する目的で軍や警察を国会に派遣して国会の憲法上の権限行使を妨害した点を挙げた。
 また、兵力で中央選挙管理委員会を家宅捜索し、憲法が定める統治機構を無視し、布告令を発令して国民の基本権を広範囲に侵害したとも指摘した。
 憲法裁はこのような行為自体が法治国家、民主国家の原理の基本原則に反するものだったとし、「それ自体で憲法秩序を侵害し民主共和政の安定性に深刻な危害を及ぼした」と判断した。
 また、最も慎重に行使されるべき国家緊急権を憲法で定めた範囲を超えて行使することで、大統領の権限行使に対する不信を招いたとみなした。
 ただ、憲法裁は野党主導により異例の多さで弾劾訴追案が国会に提出され、2025年度(1~12月)予算案については、政府原案から野党が削減のみ行い野党単独で可決するなど、尹氏が国政運営において困難に直面していたことを認めた。
 憲法裁は「被請求人(尹氏)が策定した主要政策は野党の反対で実施できず、その過程で野党の専横により国益が顕著に阻害されていると認識し、これをどうにか打開しなければならないという重大な責任を感じることになったとみられる」と指摘した。
 また、尹氏のこのような認識が政治的に尊重されなければならないことも事実だと認めた。
 ただ憲法裁は尹氏と国会の対立が、どちらか一方の責任とはみなし難く、民主主義の原理によって対話と妥協を通じて解消されるべき政治的問題だったとし、戒厳宣言を正当化することはできないと判断した。
 また尹氏が「国家緊急権の乱用の歴史を再現し国民に衝撃を与え、社会、経済、政治、外交の全分野に混乱を引き起こした」と強調した。
 憲法裁は、尹氏が就任後、国会議員総選挙が行われるまでの2年間、自身が国政を主導するよう国民を説得する機会が十分にあり、たとえ望まない選挙結果が出たとしても、野党を支持した国民の意思を排除してはならなかったと指摘した。
 また国会を協議ではなく排除の対象にする行為自体が、民主政治の前提を崩すことだとも規定した。
 憲法裁は尹氏が社会共同体を統合しなければならない責務に違反し、軍と警察を動員して憲法機関の権限を毀損(きそん)することで、国民の信任を重大に裏切ったと判断した。
 そのうえで、尹氏を罷免することで得られる憲法守護の利益は大統領の罷免による国家損失を圧倒するほど大きいと結論付けた。


「The Hankyoreh」 2025-04-05 12:32
■「同志よ、お疲れ様」…広場で罷免を見守った韓国市民、互いに感謝

【写真】4日、尹錫悦大統領の弾劾が認容され、ソウル光化門の座り込み現場前の旗手たちが集まり、記念撮影している=パク・コウン記者//ハンギョレ新聞社

 「主文。被請求人大統領尹錫悦(ユン・ソクヨル)を罷免する」。4日午前11時22分、憲法裁判所が尹錫悦大統領に全員一致で「罷免」を言い渡した瞬間、ソウル安国(アングク)駅6番出口前は泣き声、笑い声、互いに対する感謝と慰労の言葉が入り混じった歓声であふれた。「主権者が勝利した」という叫び声が響く間、紫色のジャンパーを着た10・29梨泰院(イテウォン)惨事の被害者たちは、市民と抱き合いながら泣いた。労働組合のベストを着た労働者たちは拳を振り上げ、障害者たちは車いすで満面の笑みを浮かべた。12・3内乱から123日、突然の戒厳宣布で「自由の脅威」を懸念していた心は、春の日の暖かな日差しの中に一瞬にして溶けていった。
 この日午前、憲法裁判所の最寄りの安国駅6番出口前で開催された「尹錫悦8対0罷免のための決起大会」に集まった1万人あまりの市民(警察による非公式推計、午前10時30分現在)は、路上を埋めつくして共に罷免言い渡しを見守った。多くの人々が、ムン・ヒョンベ憲法裁所長権限代行の読み上げる弾劾宣告文を、内乱の夜以降の恐怖と挫折の瞬間に対する慰めだと考えた。特に「戒厳解除は市民の抵抗と軍警の消極的な任務遂行のおかげ」という部分では、「抵抗し、崩れなかった」市民たちは大きくうなずいて拳を振り上げた。

【写真】憲法裁による尹錫悦大統領の弾劾審判が認容された4日、市民がソウル鍾路区の憲法裁判所近くの安国駅から景福宮駅まで行進している=キム・テヒョン記者//ハンギョレ新聞社

 尹錫悦の罷免が確定した瞬間、路上に鳴り響いたバンド「DAY6」の歌「Time of Our Life(1ページになるように)」に合わせて、若者たちはみなで飛び跳ね、年配者は肩を揺らして踊った。歓喜する市民の間で、慶尚南道昌原(チャンウォン)からやって来たキム・ミヨンさん(52)も涙を流した。キムさんは「民主主義が生きているということを目撃し、とてもうれしい」と話した。やがて、弾劾広場の象徴になった歌、少女時代の「Into the new world(まためぐり会えた世界)」が流れた。
 「まためぐり会えた世界」を前にして何をなすべきか考えていきたいという決意表明も相次いだ。非現実的な大統領の戒厳宣布とその合理化以降、嫌悪にまみれた韓国社会を前にして、苦悩はいっそう深まった。大学生のイ・チェヒョンさん(20)は「尹錫悦を最後にして、今後は嫌悪政治によって勢力を結集する例が出てきてほしくない。広場で私たちが女性、労働者、障害者、農民、性的マイノリティーらの多様な弱者と共にあったように、これからはじまる新しい世の中も弱者が思う存分声をあげられる方向へと向かってほしい」と語った。
 全国各地の様々な場所でも歓喜する市民たちの姿があった。全羅南道長城(チャンソン)の白岩中学校での「弾劾審判契機教育」中に生中継を見た同校1年生のコ・ダユンさん(13)は、「私も母について行って、尹錫悦大統領(弾劾要求)集会に参加した甲斐がある」と感想を書いた。大邱市中区(テグシ・チュング)のCGV大邱ハニル劇場前で弾劾言い渡しを見守ったキム・ジョンテさん(24)は、「ついに憲法裁が国民の気持ちをきちんと受け止めたようだ」と言って涙ぐんだ。

【写真】尹錫悦大統領の弾劾が認容され、4日午前、ソウル鍾路区の安国駅一帯で市民たちが歓声をあげている=キム・ヨンウォン記者//ハンギョレ新聞社

 市民たちはソウル松ヒョン(ソンヒョン)広場の地面に市民集会の象徴となった色とりどりの旗を広げ、互いに「同志よ、お疲れ様。市民が最高だ!」と叫んで集会を締めくくった。広場の地面に「炎の男、チョン・デマン」と記された旗を広げたKさん(24)は、再び旗を手にし、「大統領は罷免されても旗は手放せない」と話した。「尹錫悦は罷免されたが、今も連帯すべき所は非常に多い。子どもの頃、約束してなくても公園に行けば友達がいたように、これからも数多くの広場で『旗の同志』たちと、市民たちとまた会えると信じています」。

パク・コウン、コ・ナリン、キム・ギュヒョン、チョン・デハ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2025-04-04 19:35


「The Hankyoreh」 2025-04-05 11:59
■罷免された尹錫悦前大統領、謝罪も承服もなし…「与党、大統領選で必ず勝利を」

【写真】尹錫悦大統領が昨年12月3日、ソウル市龍山の大統領室で、キルギス共和国との共同声明に署名した後、席を立っている=キム・テヒョン記者//ハンギョレ新聞社

 4日に大統領職を罷免された尹錫悦(ユン・ソクヨル)前大統領が「皆さんの期待に応えられず、非常に残念で申し訳ない」と述べた。憲法裁の決定に対する承服はなく、「12・3内乱事態」に対する反省も謝罪もなかった。
 尹前大統領はこの日、法律代理人団を通じて配布した立場表明文で、「愛する国民の皆様、これまで大韓民国のために働くことができて非常に光栄でした」としたうえで、「力量不足の私を支持して応援してくださった皆様に、深く感謝申し上げる」と述べた。「愛する大韓民国と国民の皆様のために、常に祈っている」とも述べた。空白を除いて123字の立場表明文は、憲法裁の決定の2時間30分後に出された。
 4日午前、憲法裁による尹錫悦大統領弾劾訴追の容認後、ソウル市龍山区の大統領室庁舎に揚げられていた「鳳凰旗」を大統領室の関係者たちが下げている=大統領室記者団//ハンギョレ新聞社
 罷免直後に出された最初のメッセージだが、尹前大統領は罷免には言及しなかった。露骨に不服従を宣言してはいないが、承服したり受け入れたりするという内容もなかった。憲法裁が12・3非常戒厳宣言を重大な法律違反行為だと判断し、「主権者である国民の信任を大きく裏切った」と断じたが、尹前大統領は謝罪も反省もしなかった。自身を支持した人たちに限定した「感謝」だけが目につく。
 この日午後、ソウル市漢南洞(ハンナムドン)にある大統領官邸を訪問した与党「国民の力」のクォン・ヨンセ非常対策委員長やクォン・ソンドン院内代表らには、「最善を尽くしてくれた党と指導部に感謝する」としたうえで、「時間が限られているため、党を中心に大統領選の準備を順調に進め、必ず勝つことを祈る」という意向を伝えた。早期大統領選を行うことになった原因が自身にあるのにもかかわらず、「政権維持」を注文し、「弾劾棄却・却下」を主張して自身をかばった党指導部を称賛したのだ。
 尹前大統領の法律代理人団は、憲法裁の決定に遺憾を表明した。ユン・ガプクン弁護士は、憲法裁の宣告直後に取材団の取材を受け、「弾劾審判は準備期日から進行過程自体が適法な手続きを守らず、不公正に進められたが、結果に至るまで法理的に納得できない決定」だと主張した。また、ユン弁護士は「完全に政治的な決定であり残念だ」としたうえで、「大韓民国と国民に(宣告結果が)どのように作用するのか、本当に惨憺たる思いであり心配だ」と述べた。公式の反応を示さなかった大統領室では、チョン・ジンソク秘書室長ら首席秘書官級以上の上層部15人がハン・ドクス大統領権限代行首相に一斉に辞意を表明したが、ハン権限代行はすべて差し戻した。
 尹前大統領と代理人団のこのような態度から、野党では、尹前大統領が内乱事態で結集した岩盤支持層を活用し、政治的影響力を維持しようとするのではないかという疑問が出ている。最大野党「共に民主党」のキム・ソンフェ報道担当は「国政破綻と憲政秩序蹂躪(じゅうりん)に対する謝罪も反省も、一言もなかった」として、「ひたすら岩盤支持層を感情的に刺激し、今でも本人が政局を主導できるという妄想を示した」と指摘した。さらに、「真摯な反省と謝罪が先」だとして、「国民の前で自身の罪を告白し、裁判所で内乱首謀の罰を謙虚に受け入れることだけが、尹錫悦が大韓民国にすべき最小限の道理」だと述べた。朴槿恵(パク・クネ)元大統領は2017年3月、罷免の2日後に「このすべての結果については私が負っていく」としながらも、「時間は要するだろうが、真実は必ず明らかになると信じている」と述べ、憲法裁の決定に承服せず、物議を醸した。

イ・スンジュン記者、ペ・ジヒョン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/politics/politics_general/1190812.html
韓国語原文入力:2025-04-05 08:34


「The Hankyoreh」 2025-04-05 09:54
■憲法守った韓国市民の勝利、これから新たな始まりだ【社説】

【写真】市民が4日午前、ソウル市鍾路区の安国駅近くで弾劾宣告を生中継する大型画面を通じて憲法裁が「主文、被請求人大統領尹錫悦を罷免する」と宣告すると、歓呼を上げている=キム・テヒョン記者//ハンギョレ新聞社

 不正と混沌のトンネルを抜け、ついに正義に到着した。12・3非常戒厳という超憲法的な暴挙によって自滅を早めた尹錫悦(ユン・ソクヨル)は、就任からわずか2年11カ月で前大統領になった。脅かされた憲法は主権者とともによみがえり、挑戦を受けた民主主義もふたたび立ち上がった。「主文、被請求人大統領尹錫悦を罷免する」。裁判官8人全員の一致だ。国民と憲法、民主主義の勝利だ。
 憲法裁は4日、非常戒厳宣言は実体的・手続き的要件に違反し、国会に対する軍警投入、国会・政党活動を禁止した布告令の発令、中央選挙管理委員会の押収捜索、法曹人の所在地の確認の試みなど、5つの弾劾訴追理由すべてが憲法・法律違反だと明言した。憲法裁は「被請求人の違憲・違法行為は、国民の信任を裏切ったものであり、憲法守護の観点から容認できない重大な法律違反に該当する」と厳しく判示した。
 急速な産業化と民主化を同時に達成した経済・文化強国である大韓民国が、尹錫悦という非民主的、反文明的、前近代的な統治者を保有したという事実は、恥ずべきことだ。彼の任期中は退行を続けた。経験も準備もなしに大統領職に就いた彼は、国政を検察組織のように運営した。市民社会、国会、野党、メディアなどの批判勢力は、共存・妥協ではなく排除・処断の対象だった。公正と常識を掲げたが、実状は不公正と非常識だった。「反国家勢力の一挙清算」と「不正選挙」という狂気と妄想から始まった12・3戒厳は、このような退行の結晶体だった。
 2017年の朴槿恵(パク・クネ)元大統領に続き、8年後に2回目の大統領罷免となったことは、国家的な不幸だ。しかし、2回の大統領弾劾は、市民の常識と憲法的熱望の勝利という点で、われわれの誇りであり希望でもある。反動を勝ち抜いた源泉は、主権者である国民だ。尹錫悦や極右勢力、与党政治家たちが詭弁と扇動で惑わしても、国民は揺らぐことなく、「憲法守護」の声を上げた。民主主義が危機に直面するたびに、これを救ったのは、いつも市民だった。
 独断と狂気の統治者尹錫悦の罷免は、終わりではなく、国家正常化に向かう新たな始まりだ。深刻化した社会分裂と対立から、まず収拾しなければならない。戒厳・弾劾局面を経て、「心理的内戦」と言えるほど政治二極化が深まった。憲法裁の決定後、物理的衝突に対する懸念も強い。全員の自制と包容が切実に求められる。敵対と嫌悪を活用して政治的利益を得ようとする邪悪な行為はあってはならない。尹錫悦は、憲法裁の決定に「承服」するという言及はせず、「期待に応えられず非常に残念で、申し訳ない」とだけ述べた。国家的混乱を引き起こしたことについて真摯に謝罪し、支持層にも自制を要請しなければならない。
 合理的保守を立て直すことも必須だ。戒厳・弾劾の過程で、陰謀論と嫌悪に陥った極右勢力の急浮上と巨大保守政党の極右化を目撃した。与党「国民の力」が尹錫悦と極右から決別し、立ち位置を再確立しないのであれば、保守全体の存立が揺らぎ、韓国政治は足を引っ張られるだろう。
 包容と統合は追求しても、内乱勢力の清算は徹底しなければならない。内乱首謀の被疑者である尹錫悦は、内乱罪の刑事裁判で、ふたたびあらゆる法的手段を動員しようとするだろう。司法当局は、内乱の中心的な加担者を一寸の寛容なしに断罪し、歴史に教訓を残さなければならない。尹錫悦と夫人のキム・ゴンヒ女史の不法選挙介入と国政壟断、キム・ゴンヒ女史による株価操作疑惑などにも、司法的審判を下さなければならない。検察や高級官僚などの内乱擁護行為についても、責任を問わなければならない。国会が選出した憲法裁判官3人の任命を拒否し、憲法裁の正常な運営を阻害したハン・ドクス大統領権限代行とチェ・サンモク経済副首相の違憲行為を、そのまま見過ごしてはならない。検察・司法システムの改革の必要性も忘れてはならない。
 さらに、米国のドナルド・トランプ政権の関税圧力など、内外の国民生活・通商・安全保障の危機にも力を入れなければならない。60日以内に早期大統領選が行われるだろうが、そのときまで、国政の空白を放置してはならない。政界と行政府が、「内乱事態」で疲弊した国民の生活を適切に見直すことこそ、これまで国民に犯した誤りを少しでも減らすことができる道だ。
 尹錫悦罷免は政治改革の機会を開いた。戒厳は尹錫悦個人の暴走だったが、帝王的大統領に対する国民的な疑問がよりいっそう強まった。大統領選とあわせて、多種多様な改憲議論が出てくるだろう。6月初めに行われる早期大統領選は、内乱清算と政治改革を通じて、新しい大韓民国を設計し、ビジョンを競う場にならなければならない。遅れても間違いなく春は来るように、われわれは苦痛と傷をいやし、明日へと進むだろう。

(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2025-04-04 18:35
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「極右勢力に道を開いた「尹錫悦の1375日」、その代償を払うのは韓国国民」

2025年04月05日 | 韓国で
「The Hankyoreh」 2025-04-05 10:04
■極右勢力に道を開いた「尹錫悦の1375日」、その代償を払うのは韓国国民

【写真】2019年12月2日、尹錫悦検察総長(当時)が元検察捜査官出身の大統領府特別監査班員の葬儀場を弔問した後、固い表情で葬儀場を後にしている/聯合ニュース

 1375日。元検察総長の尹錫悦(ユン・ソクヨル)が大統領選出馬を宣言し、政治に入門してから、憲法裁判所の罷免決定により内乱罪の刑事裁判を待つ「前大統領」になるまでかかった時間だ。4年足らずの「尹錫悦の時間」は、右往左往する国政運営、対話拒否と独善、夫婦による権力の私有化など、数々の汚点を残した。やがては12・3内乱で国民が血と涙で積み上げた大韓民国の民主的憲政秩序を根本から揺さぶった。
 尹錫悦の罷免は終わりではない。尹錫悦は弾劾審判の過程で「反国家勢力と戦おう」という扇動で岩盤支持層を動かし、極右が制度の中に乱入する道を開いた。尹錫悦が残した「啓蒙令」や「反国家勢力」、「中国スパイ論」、「不正選挙論」など、極右の世界観は広場に浸透し、共和国の民主主義を今も脅かしている。

◆不公正と非常識
 尹錫悦の政治的資産は、検察総長時代、文在寅(ムン・ジェイン)政権と対立することで築き上げた「公正」と「法治」のイメージだった。2019年8月のチョ・グク法務部長官候補に対する全面的な捜査と、2020年のチュ・ミエ法務部長官(当時)との極限に至る対峙で政治的存在感を高めた尹錫悦は、2021年3月、検察総長職を投げ出し、同年6月29日に大統領選挙への挑戦を宣言した。出馬宣言文で「常識を武器に、崩れた自由民主主義と法治、時代と世代を貫く公正の価値を必ず立て直す」ことを掲げた。

【写真】2024年10月21日午前、ソウル西大門区美近洞の警察庁で開かれた79周年警察の日記念式典で、祝辞を述べた尹錫悦大統領が壇上を降りている=キム・テヒョン記者//ハンギョレ新聞社

 当時野党の「国民の力」の大統領選候補になり、2022年3月9日の大統領選挙で0.73ポイント差で大統領に当選した尹錫悦は、5月10日に大統領に就任した後、大統領選挙のスローガンだった公正と常識をみずから投げ捨てた。特に、夫人のキム・ゴンヒ氏と関連した様々な疑惑の前で、公正と常識という物差しは紙切れに過ぎなかった。キム氏のブランドバッグ受け取りとドイツモーターズ株価操作疑惑は、検察の「特恵調査」への批判が高まる中でも起訴を免れた。真実を明らかにするための「キム・ゴンヒ特検法」には3回にわたり再議要求権(拒否権)を行使した。キム氏のブランドバッグ受け取りについては「(キム氏が)情に厚いため(断れなかった)」と述べるなど、大したことではないかのように対応した。政界では、キム・ゴンヒ氏の国政への影響力が夫の大統領(V1)を上回るという意味で、「V0」という呼び方が密かに広がった。
 尹錫悦は自分に向けられた疑惑にも同じ態度を示した。2023年7月「(海兵隊員)C上等兵死亡事件」の捜査結果と関連し、「VIP(=尹大統領)激怒説」が流れたが、最後まで否定した。昨年3月、C上等兵事件捜査への外圧疑惑の主要容疑者だったイ・ジョンソプ元国防部長官を駐オーストラリア大使に任命したことは、公正、常識、法治全てを投げ捨てた象徴的な場面だった。自分を狙った「C上等兵特検法」も繰り返し拒否した。
 政治ブローカーのミョン・テギュン氏の暴露で明らかになり始めた国政壟断疑惑も同じだ。昨年11月7日、尹錫悦は国民向け記者会見で「ミョン・テギュン氏と関連し、不適切なことや隠すべきことは何もしていない」と述べたが、最近公開された尹錫悦夫妻とミョン氏がやりとりしたカカオトーク、テレグラムのメッセンジャー対話内容を通じて、ほとんどが嘘であることが明らかになった。

◆対話拒否と独善
 尹錫悦は大統領の任期中、「与小野大」(野党が過半数の国会)のねじれ政局で国政を運営した。当然、国会との疎通と野党との協力で国政動力を確保することがカギだった。ところが、尹錫悦が真っ先に着手したのは、政権与党である「国民の力」の指導部を自分の側近で埋め尽くすことだった。このために党務に介入し、党代表のイ・ジュンソクを追い出した。その代わりとして側近のキム・ギヒョン議員を座らせ、総選挙敗北後、非常対策委員長を経て指導部入りを果たしたハン・ドンフン代表と対立を繰り返した。
 対話を拒否し、独善を貫いたことで野党とも極限の対峙を続けてきた。2023年4月の糧穀管理法を皮切りに、非常戒厳を宣布するまでの間に、野党主導で国会で可決された25件の法案に拒否権を行使した。野党と自分を批判する勢力をまとめて「反国家勢力」であり「共産全体主義勢力」だと攻撃した。自分の過ちによって政権与党が惨敗した昨年4月の総選挙については、一抹の反省もなかった。野党代表とは総選挙後、一度だけ1対1の会談を行っただけで、再び会うことはなかった。
 「バイデン-吹き飛ばせば(ナルリミョン)」の卑語使用問題(2022年9月)、梨泰院(イテウォン)雑踏惨事(2022年10月)などで高まった国民の疑念と怒りに対しても、知らぬ存ぜぬで通した。外交力を韓米日協力と韓日関係改善に注ぎ込んだが、「強制動員」に対する言及の抜けた佐渡鉱山追悼式などで象徴される「屈辱外交」問題だけが残った。昨年2月に進めた「医学部定員2000人拡大」は、医師数の増加による医療サービス改善という良い政策趣旨にもかかわらず、医療界との軋轢(あつれき)を解消できず、1年以上医療現場の混乱を引き起こした。

◆詭弁と扇動
 12・3非常戒厳令を宣布した後の昨年12月12日の国民向け談話で、尹錫悦は野党による国務委員弾劾、政府予算案の削減などを取り上げ、野党を「自由民主主義憲政秩序を破壊する怪物」であり「国憲を乱す勢力」だと攻撃し、不法非常戒厳令宣布の正当性を強弁した。ところが、韓国の憲法は非常戒厳宣布の要件を「戦時、事変またはこれに準ずる国家非常事態」と定めている。違憲・違法な戒厳宣布と国会の封鎖および中央選挙管理委員会の掌握の試み、政治家に対する逮捕指示などで国憲を乱す一方、妄想混じりの詭弁を並べる尹錫悦に対し、国会は昨年12月14日、弾劾訴追案を可決し、職務を停止させた。裁判所が昨年最後の日に内乱首謀の容疑で逮捕状を発付したことで、尹錫悦の暴走も収まるかのように思われた。
 しかし、尹錫悦はユーチューブにおける極右の論理と陰謀論に傾倒し、憲政秩序と民主主義の回復に向けた市民の努力と念願に最後まで水を差した。尹錫悦の極右的スタンスは、大統領就任当初から兆候を見せていた。12・3内乱の後に自分を積極的に庇護した「チョン・グァンフン牧師流」の極右ユーチューバーや「アスファルト右派」(街頭集会に出て主張する右派勢力)たちを、大統領就任式に招待していた事実が、それを予感させていた。その後、政界の外郭に留まっていた極右ユーチューバーや極右係の人々に公共機関と大統領室の肩書きを与え始めた。尹錫悦が極右ユーチューブチャンネルを好んで視聴し、不正選挙陰謀論を展開する動画をまわりの人々に送っているという噂は、大統領室と国会にまで広まった。
 危機に追い込まれると、尹錫悦は「極右の本色」をあらわにした。今年1月1日、官邸前に集まった支持者を「自由民主主義守護勢力」と呼び、「最後まで戦う」として、自分の逮捕を阻止してほしいと訴えた。「国内外の主権侵奪勢力と反国家勢力の蠢動(しゅんどう)で今の大韓民国が危うい」として、批判勢力と野党に向けた嫌悪をあらわにし、過激な支持層を煽った。1月15日に高位公職者犯罪捜査処(公捜処)と警察に逮捕・拘禁されるまで、「警護処忠誠派」を前面に出し、漢南洞(ハンナムドン)の官邸を「要塞化」した。1月26日に検察に拘束起訴された後、憲法裁判所の審判廷でも尹錫悦の詭弁と世論戦は続いた。
 2月25日の弾劾審判第11回弁論の「最終意見」陳述でも反省はなかった。自分の内乱行為を「戒厳の形を借りた国民への訴えかけ」だと主張し、「残りの任期にこだわらず、改憲と政治改革を最後の使命と考え、87年体制の改善に最善を尽くす」として職務復帰の希望を捨てなかった。

◆尹錫悦がもたらした費用の請求書
 これから内乱罪裁判と「ミョン・テギュン・ゲート」の捜査などが進められ、前大統領尹錫悦の犯罪容疑の追及が続くだろう。12・3内乱は韓国の政治、外交、経済、社会全般に深刻な亀裂と莫大な被害を残した。
 景気低迷が続き、民生経済は活力を失った。ドナルド・トランプ米大統領の25%相互関税賦課に経済全般に赤信号が灯ったが、代行体制の政府は無気力だ。昨年12月6日(現地時間)、米経済誌フォーブスが非常戒厳宣布に対して「尹錫悦は国内総生産(GDP)キラー」だとし、「結局、5100万人の国民が利己的な政治的賭博の代償を分割払いで支払うことになるだろう」と指摘したことが、ますます現実味を帯びている状況だ。
 何よりも広場の少数にとどまっていた極右勢力に発言権と影響力を高める政治的プラットフォームを提供した尹錫悦の行動によって、韓国の民主主義が正常性を取り戻すには莫大な努力と費用をかけなければならなくなった。
 「崩壊前に戻りましょう」 。1日に公開された「尹錫悦の罷免を求める映画人の映像声明書」で、パク・チャヌク監督の映画『別れる決心』に登場したこのセリフが多くの市民に注目された。尹錫悦が社会のあちこちに埋めこんで去った「内乱の地雷」を取り除き、崩れた憲政を建て直すため、市民一人ひとりの汗と情熱が切に求められる。

イ・スンジュン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2025-04-04 20:33


「The Hankyoreh」 2025-04-05 08:07
■【決定文分析】憲法裁判官の全会一致、罷免に異論はなかった

【写真】(左から)チョン・ヒョンシク、キム・ボクヒョン、チョ・ハンチャン憲法裁判官が、4日にソウル鍾路区の憲法裁判所の大審判廷で開かれた尹錫悦大統領弾劾審判の宣告に出席している=写真共同取材団//ハンギョレ新聞社

 尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領罷免決定において、保守系に分類される憲法裁判官3人全員が弾劾認容に署名したことで、いわゆる「裁判官5対3のデッドロック(膠着状態)」は実体のない極右・保守陣営の願いに過ぎなかったことが明らかになった。特に裁判官の個別判断が伺える「補足意見」でも、尹大統領の罷免を招いた非常戒厳宣布を違憲・違法とする判断をめぐり、異なる意見は全く現れなかった。

【写真】チョン・ヒョンシク憲法裁判官が4日にソウル鍾路区の憲法裁判所の大審判廷で開かれた尹錫悦大統領弾劾審判の宣告に出席している=写真共同取材団//ハンギョレ新聞社

 4日の弾劾宣告直後に公開された決定文は、A4用紙106ページにわたる。87ページまでは裁判官8人の共通した弾劾認容の意見が、88~105ページにはイ・ミソン裁判官とキム・ヒョンドゥ裁判官▽キム・ボクヒョン裁判官とチョ・ハンチャン裁判官▽チョン・ヒョンシク裁判官の5人による補足意見が順に載せられている。罷免決定には同意する一方、争点になった事案について追加意見を述べたのだ。
 それぞれ革新と中道に分類されるイ・ミソン裁判官とキム・ヒョンドゥ裁判官は、弁論過程で尹大統領側が反対した憲法裁の刑事訴訟法条項の緩和適用には問題がなく、これに伴い捜査機関の調書と国会会議録の証拠能力には問題がないという点を8ページにわたり強調した。

【写真】キム・ボクヒョン憲法裁判官が4日にソウル鍾路区の憲法裁判所の大審判廷で開かれた尹錫悦大統領弾劾審判の宣告に出席している=写真共同取材団//ハンギョレ新聞社

 最も関心を集めた保守系のキム・ボクヒョン裁判官とチョ・ハンチャン裁判官、チョン・ヒョンシク裁判官は、非常戒厳宣布の違憲・違法性▽軍と警察を動員した国会の封鎖▽布告令第1号の違憲性▽軍を動員した中央選管委の占拠・家宅捜索▽政治家や法曹人などに対する逮捕の指示など、尹大統領の罷免につながった核心争点ではまったく異論を唱えなかった。
 弾劾審判に先立ち、極右・保守陣営ではこれら裁判官3人が棄却または却下の意見を出すという「5対3デッドロック」を主張し、「共に民主党」をはじめとする野党では保守系裁判官が罷免には同意するものの、一部争点をめぐり意見を出すかもしれないという見通しを示した。一方、憲法学界では政治的スタンスにかかわらず、法律家ならとうてい棄却あるいは却下の意見を書けない事件なので、裁判官全会一致の罷免が大方の予想だった。
 キム・ボクヒョン裁判官とチョ・ハンチャン裁判官は、イ・ミソン裁判官とキム・ヒョンドゥ裁判官の補足意見とは逆に、捜査機関の調書と国会会議録の証拠能力を認めるのが難しいという補足意見を8ページにわたり書いた。弾劾審判の重大性を考えると、刑事訴訟法をできるだけ厳しく適用すべきであり、「これからは弾劾審判の迅速性と公正性、二つの衝突する価値をより調和させる案を模索すべき」だと指摘した。尹大統領の罷免決定においては問題にならないが、今後は弾劾審判の手続きと制度を補完しようということだ。
 一人で補足意見を出した同事件の主審チョン・ヒョンシク裁判官は、国会弾劾訴追制度を補完する立法を提案した。「国会で弾劾訴追案が否決された場合、他の会期中にも再び発議する回数を制限する立法が必要だ」ということだ。
 憲法裁は野党の「連続弾劾」などで非常戒厳を宣布したという尹大統領の主張を一蹴し、罷免を決めた。ただし、野党が「疑惑だけに基づき、政府に対する政治的圧迫手段として弾劾審判制度を利用したという懸念」などがあったことにも触れた。チョン裁判官はこれに対する補足意見も書いたものとみられる、3ページにわたる補足意見で、一事不再議の原則の適用▽無制限の連続発議による国家機能の低下▽弾劾制度の政争の道具化などを指摘したうえで、「弾劾訴追案の発議回数に関する規定作り」を提案した。

【写真】チョ・ハンチャン憲法裁判官が4日にソウル鍾路区の憲法裁判所の大審判廷で開かれた尹錫悦大統領弾劾審判の宣告に出席している=写真共同取材団//ハンギョレ新聞社

キム・ナミル記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力: 2025-04-04 21:15


「聯合ニュース」 2025-04-05 07:50
■「不訴追特権」失った尹錫悦…数多くの刑事法廷を回る立場に
 尹錫悦前大統領は、これからは自然人の身で、内乱首謀容疑で刑事裁判を受けることになる。また不訴追特権を失ったことで、彼にかけられている各種の犯罪容疑についての捜査も本格化するとみられる。
 今月14日には尹前大統領の刑事裁判の初公判が行われる。裁判所は、彼が職務に復帰して現職大統領の資格で出廷するという「最悪のシナリオ」にも備えていたが、憲法裁判所が罷免を決めたことで、裁判所は負担が軽くなった。尹前大統領は、高位公職者犯罪捜査処(公捜処)による内乱捜査は違法だとして、手続き上の問題点を集中的に攻略するものとみられる。不拘束の被告人となった尹大統領が「裁判遅延戦略」を用いることが懸念されているが、裁判所は迅速に審理を進める計画を立てているという。
 「不訴追特権」という盾を失った尹前大統領には、明らかにされるべき同時多発的な容疑が少なくない。まず警察非常戒厳特別捜査団は、尹前大統領の逮捕状の執行妨害容疑の捜査に本格的に着手するとみられる。警察特捜団は逮捕状の執行妨害を指示したのは尹大統領だとして、尹大統領をすでに特殊公務執行妨害の容疑者として立件している。12・3非常戒厳の直後の尹大統領と軍の司令官との通話の内訳を含む、盗聴防止機能付き電話のサーバの情報の削除を指示した容疑も捜査対象だ。大統領警護処はこのかん、「軍事上、公務上の秘密を要する場所」だとして警察による強制捜索令状の執行を拒否していたが、尹大統領の罷免後に盗聴防止機能付き電話のサーバが押収されることによって、捜査が急速に進む可能性がある。
 検察によって捜査が進められているミョン・テギュン事件の頂点にも尹前大統領がいる。尹前大統領は、大統領候補時代にミョン氏から非公表の世論調査の提供を無償で受けた疑い(政治資金法違反)も持たれている。2022年6月の国会議員再補欠選挙でのキム・ヨンソン前議員の公認への介入容疑も捜査対象だ。尹前大統領が自身の大統領就任式前日の2022年5月9日に、ミョン氏に「(公認管理委員会に)キム・ヨンソンを公認してやれと言った」と述べている肉声が早くから明らかになっている。
 2020年4月の総選挙を前に、検察が当時の与党政治家を告発しろとの告発状を未来統合党(現国民の力)に渡した「告発教唆」事件を主導したのが尹前大統領だったのかも、公捜処によって捜査が行われている。公捜処はソン・ジュンソン検事長(当時は最高検察庁捜査情報政策官)だけを先に起訴しているが、ソウル高裁は昨年12月、「ソン検事長に告発状の作成を指示した(尹錫悦)検察総長ら上級者が未来統合党を通じた告発を企画」した可能性があるとして、事件の首謀者として尹前大統領に目をつけている。これを受け、この事件を最初に通報したチョ・ソンウン氏が、尹前大統領や与党「国民の力」のハン・ドンフン前代表(当時は最高検察庁反腐敗部長)らを公捜処に追加告発している。尹前大統領の激怒からはじまったといわれるC上等兵事件の捜査外圧疑惑の捜査も、再開される可能性が高い。

チョン・ヘミン、ペ・ジヒョン、キム・ジウン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2025-04-04 14:27


「聯合ニュース」 2025.04.04 16:04
■[尹大統領罷免]大統領室高官らが一斉に辞意
【ソウル聯合ニュース】韓国の大統領室は4日、尹錫悦(ユン・ソクヨル)前大統領が罷免されたことを受け、鄭鎮碩(チョン・ジンソク)大統領秘書室長や申源湜(シン・ウォンシク)国家安保室長ら大統領室の首席秘書官以上の高官全員が辞意を表明したと明らかにした。
 大統領室の高官らは昨年12月4日、尹前大統領が宣言した「非常戒厳」が解除された後に一斉に辞意を示し、今年1月にも大統領の権限を代行していた崔相穆(チェ・サンモク)経済副首相兼企画財政部長官が憲法裁の裁判官2人を任命したことに反発し、再び辞意を表明した。


「聯合ニュース」 2025.04.04 12:47
■[尹大統領罷免]「国民が勝利」 賛成派市民は歓喜に沸く
【ソウル聯合ニュース】韓国の憲法裁判所が4日午前に非常戒厳宣言を巡り弾劾訴追された尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領の罷免を決定したことを受け、尹氏の弾劾を求めてきた市民団体「尹錫悦即刻退陣・社会大改革非常行動」の集会の参加者たちは互いに抱き合って歓声を上げた。

【写真】罷免決定を喜ぶ市民=4日、ソウル(聯合ニュース)

 集会は憲法裁から近い地下鉄・安国駅の前で前日から徹夜で開かれ、参加者たちは生中継された宣告を見守った。尹氏の罷免が言い渡されると一斉に太極旗(韓国国旗)や「尹錫悦を罷免せよ」と書かれたプラカードを振った。
 ソウル・竜山の大統領公邸付近で開かれた集会の参加者たちも憲法裁の決定に歓喜した。


【写真】大統領公邸付近で開かれた集会の参加者が歓声を上げながら罷免決定を喜んでいる=4日、ソウル(聯合ニュース)


「The Hankyoreh」 2025-04-04 15:24
■憲法裁「尹錫悦、国家緊急権を乱用し国民の基本権侵害」

【写真】ムン・ヒョンベ憲法裁判所長権限代行が4日、ソウル鍾路区の憲法裁判所の大審判廷に、尹錫悦大統領の弾劾審判の決定を言い渡すため入場している=写真共同取材団//ハンギョレ新聞社

 憲法裁判所が、尹錫悦大統領を裁判官の全員一致で罷免した。
 憲法裁は大審判廷で4日午前11時から行われた尹大統領の弾劾事件の決定言い渡しで、「被請求人大統領尹錫悦を罷免する」と述べた。12・3非常戒厳宣布から123日を経ての結論だ。
 憲法裁はまず、尹大統領による12・3非常戒厳宣布の当日、軍と警察による国会侵入、中央選挙管理委員会に対する強制捜査の試み、法曹人や政治家などの位置追跡と把握は実際に起きたことだとして、いずれも違法であるため、非常戒厳宣布は実体的要件が備わっていなかったと判断した。そして、そもそも布告令が違法だったと判断した。憲法裁は「被請求人はこの事件の布告令を通じて国会、地方議会、政党の活動を禁止することで、国会に戒厳解除要求権を与えている憲法の条項、政党制度を規定している憲法の条項、代議制民主主義、権力分立の原則などに違反した。非常戒厳下において基本権を制限するための要件を定めた憲法および戒厳法の条項、令状主義に違反することによって、国民の政治的基本権、団体行動権、職業の自由などを侵害した」と述べた。
 尹大統領は、12・3非常戒厳は国会が相次ぐ弾劾、予算削減などで国政をまひさせたから宣布したと主張したが、憲法裁は「国会による弾劾訴追、立法、予算案審議などの権限の行使が、この事件の戒厳宣布時に重大な危機状況を現実的に発生させていたとは見なせない。国会による権限行使が違法または不当であったとしても、憲法裁判所の弾劾審判、被請求人による法律案の再議要求などの平常時の権力行使方法で対処できるため、国家緊急権の行使を正当化することはできない」と述べた。
 憲法裁はまた「被請求人の主張する国会の権限行使による国政のまひ状態や不正選挙疑惑は、政治的、制度的、司法的手段によって解決すべき問題であって、兵力を動員して解決できるものではない」と付け加えた。「警告のための戒厳」または「訴えるための戒厳」だったとする尹大統領の主張に対しても、「戒厳法が定めた戒厳宣布の目的ではない」と一蹴した。
 尹大統領は、国会に軍と警察を投入をしたのは秩序維持の観点からのものだったと主張したが、憲法裁は国会議員の活動を阻止することが目的だったと判断した。憲法裁は「被請求人は軍と警察を投入して国会議員の国会への立ち入りを規制する一方、彼らを引きずり出せと指示することで国会の権限行使を妨害したため、国会に戒厳解除要求権を与えている憲法の条項に違反しており、国会議員の審議・表決権、不逮捕特権を侵害した」と述べた。国会に投入した軍と市民の対峙(たいじ)状況についても、憲法裁は「被請求人は国軍の政治的中立を侵害するとともに、憲法に規定されている国軍統帥義務に違反した」と述べた。
 国家情報院のホン・ジャンウォン第1次長にいわゆる「政治家の逮捕」を指示したことについて、少なくとも政治家の位置追跡と把握を指示したものだと判断した憲法裁は、「(被請求人は)各政党の代表らの位置確認の試みに関与することで、政党活動の自由を侵害した」と判断した。キム・ミョンス最高裁長官らの位置確認の試みも、司法権の独立の侵害だと判断した。
 不正選挙疑惑を解消するための戒厳宣布だったという主張に対しても、憲法の定める戒厳宣布要件である戦時・事変やこれに準ずる状況とは見なせないと判断した。選管に対して強制捜査を試みたことも、選管の独立の侵害であり違法だと判断した。
 尹大統領による戒厳宣布の前に行われたわずか5分間の国務会議について、憲法裁は適法な戒厳宣布手続きではなかったと判断した。憲法裁は「被請求人は戒厳司令官ら、この事件の戒厳の具体的な内容を説明していないこと、他の構成員に意見を述べる機会を与えていないこと、などを考慮すると、この事件の戒厳宣布に関する審議が行われたと考えることも難しい。被請求人は、首相と関係国務委員が非常戒厳宣布文に副署しなかったにもかかわらず、この事件の戒厳を宣布しており、その実施日時、実施地域および戒厳司令官を公告しておらず、遅滞なく国会に通告してもいないため、憲法および戒厳法の定める非常戒厳宣布の手続き的要件に違反した」と述べた。
 憲法裁は、これらの行為は重大な法律違反であるため、尹大統領の罷免が正当だと判断した。憲法裁は「このような行為は法治国家の原理と民主国家の原理の基本原則に違反したもので、それそのものが憲法秩序を侵害しており、民主共和政の安定性に深刻な危害を及ぼした」として、「国会が迅速に非常戒厳解除要求決議をあげることができたのは、市民の抵抗と軍と警察の消極的な任務遂行のおかげであるため、これは被請求人の法違反の重大さの判断に影響を及ぼさない」と述べた。
 憲法裁は「大統領の権限はあくまでも憲法によって与えられたものだ。被請求人は最も慎重に行使されるべき権限である国家緊急権を、憲法の定める限界を超えて行使したため、大統領としての権限行使に対する不信を招いた」とも述べた。
 そして「被請求人と国会との間に発生した対立は一方の責任に属するとは考え難く、それは民主主義の原理に則って解消されるべき政治の問題だ。これに関する政治的見解の表明や公的な意思決定は、憲法で保障される民主主義と調和する範囲で行われなければならない。国会は少数意見を尊重するとともに、政府との関係においては寛容と自制を前提として、対話と妥協を通じて結論を導き出すよう努めるべきだった。被請求人も、国民の代表である国会を協同統治の対象として尊重すべきだった。にもかかわらず、被請求人は国会を排除の対象にした。これは民主政治の前提を破壊するもので、民主主義と調和すると考えることは難しい」と述べた。
 憲法裁はまた「被請求人は憲法と法律に違反してこの事件の戒厳を宣布することにより、国家緊急権の乱用の歴史を再現して国民を衝撃に陥れ、社会、経済、政治、外交の全分野に混乱を生じさせた」と指摘した。
 憲法裁はさらに、「軍と警察を動員して国会などの憲法機関の権限を傷つけるとともに、国民の基本的人権を侵害することで憲法擁護の責務をかなぐり捨て、民主共和国の主権者である大韓国民の信任を重大に裏切った。結局、被請求人の違憲・違法行為は国民の信任を裏切ったもので、憲法擁護の観点から容認され得ない重大な法違反行為に当たる」と述べた。
 いっぽう憲法裁は、尹大統領側が主張した手続き上の問題点はいずれも認めなかった。国会側が尹大統領の弾劾訴追事由書で内乱罪などの刑法違反の部分を憲法違反行為に含めて判断を仰ぐとしたことについて、憲法裁は「基本的な事実関係は維持しながら適用法の条文を撤回・変更することは、訴追事由の撤回・変更に当たらないため、特別な手続きを経なくても許容される」と述べた。国会法制司法委員会が弾劾訴追案について調査しなかった、同じ会期に同じ案件を上程して一事不再議の原則に違反したという主張も、いずれも認めなかった。
 尹大統領の弾劾事件で検察の尋問調書を証拠として採用できるかをめぐっては、キム・ヒョンドゥ、イ・ミソンの2人の裁判官は、刑事訴訟法上の伝聞法則を緩和して適用できるとして、証拠採用できるとする補充意見を、キム・ボッキョン、チョ・ハンチャンの両裁判官は、今後はより厳格に適用する必要があるとする補充意見を表明した。
 非常戒厳宣布権は大統領の高度な政治行為であり、司法判断の対象とはならないという主張についても、憲法裁は「高位公職者の憲法違反および法律違反から憲法秩序を守るという弾劾審判の趣旨などを考慮すれば、この事件の戒厳宣布が高度な政治的決断を要する行為だとしても、それが憲法および法律に違反しているかどうかは審査できる」と述べた。
 ムン・ヒョンベ憲法裁判所長権限代行は、約22分にわたって決定の要旨を読み上げた。尹大統領は、ムン代行が主文を読み上げたこの日午前11時22分をもって、大統領の職位を剥奪された。

オ・ヨンソ、キム・ジウン、チャン・ヒョヌン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2025-04-04 12:13


「The Hankyoreh」 2025-04-04 14:03
■今日から次期韓国大統領予備候補の登録開始…大統領選は6月3日が有力

【写真】尹錫悦大統領が3日、ソウル市龍山の大統領室でキルギス共和国のサディル・ジャパロフ大統領と包括的パートナー関係の樹立に関する共同声明に署名した後、席を立っている=大統領室記者団//ハンギョレ新聞社

 4日の憲法裁判所による尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領弾劾訴追の容認を受け、第21代大統領選出のための早期大統領選挙が幕開けした。選挙日として6月3日が有力視されるなか、与野党は各党の大統領候補を選出するための選挙戦の準備に突入した。
 憲法第68条は、大統領の地位が空席の場合、60日以内に選挙を実施するよう定めている。各党の選挙戦や選挙運動の期間などを考慮すれば、60日目の6月3日火曜日が大統領選挙日として指定される可能性がある。ハン・ドクス大統領権限代行首相は「遅くとも選挙日の50日前」までに選挙日を公告する必要があるとする公職選挙法第35条にしたがい、4月14日までに大統領選挙日を確定して公告しなければならない。
 6月3日が大統領選挙日として確定すれば、5月10日~11日に大統領候補登録、5月20日~25日に在外国民投票、5月29日~30日に事前投票が行われ、公式の選挙運動期間として、5月12日から6月2日までの22日間が与えられる。
 中央選挙管理委員会は、今日から大統領選予備候補者の受付を始める。中央選挙管理委員会の関係者はハンギョレの電話取材で、「大統領罷免の宣告が出ると、ただちに選挙事由が発生するため、予備候補の受付が始まる」と述べた。与党「国民の力」や最大野党「共に民主党」などは、各党の大統領候補を選出する選挙戦の準備に突入するものとみられる。選挙管理委員会での候補登録日まで1カ月ほどしかないため、各党の選挙戦もその期間内で圧縮して進められるものとみられる。
 共に民主党では、各種の世論調査で30%を超える支持率を得て先頭を走る同党のイ・ジェミョン代表の独走のもと、キム・ギョンス元慶尚南道知事、キム・ドンヨン京畿道知事、キム・ドゥグァン元慶尚南道知事、キム・ブギョム元首相、キム・ヨンロク全羅南道知事、パク・ヨンジン前議員、イ・クァンジェ元江原道知事、チョン・ジェス議員(ハングル順)らが選挙戦に突入することになるとみられる。共に民主党指導部の関係者は「実務的な準備はできている。まもなく選挙戦の日程が発表されるものと思われる」としたうえで、「早期大統領選挙のための特別党規を準備し、候補と選挙人団の募集などを順に進めていくだろう」と述べた。圧倒的な支持を得ているイ代表の無難な選挙戦通過が予想されるため、選挙戦期間は2~3週程度の短さだろうとみる予想も党内外から出ている。
 「国民の力」で浮上している候補は10人を超える。国民の力では、支持率1位のキム・ムンス雇用労働部長官の出馬の可能性が論じられており、アン・チョルス議員、オ・セフン・ソウル市長、ユ・スンミン元議員、ハン・ドンフン前代表、ホン・ジュンピョ大邱(テグ)市長はすでに出馬の意向を明らかにしている。キム・テフム忠清南道知事、ユ・ジョンボク仁川市長、イ・チョルウ慶尚北道知事らも出馬を検討中だ。
 首相と広域市・道の首長が大統領選挙に出馬するためには、大統領選挙日の30日前の5月4日までに辞任しなければならない。国民の力の上層部の関係者は「共に民主党とは違い、われわれは誰が候補になるのか不明な状況であるため、選挙戦では4~5週間ほどの予備選挙を行い、関心を最大限集めるのが良いと思われる」と述べた。序盤の世論調査の成績に応じて、オ・セフン市長やホン・ジュンピョ市長などの現役の自治体首長の候補は、大統領選挙レースで早期離脱し、職にとどまる可能性があるという観測も出ている。
 祖国革新党は、大統領候補を選出するかどうか悩んでいる。改革新党は大統領候補として、早々にイ・ジュンソク議員を選出した。

コ・ハンソル記者、ソ・ヨンジ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/politics/assembly/1190674.html
韓国語原文入力:2025-04-04 12:00


2025-04-04 12:22
■尹、前大統領としての礼遇ほとんど剥奪…転居先は瑞草区の自宅か

【写真】尹錫悦大統領が3月8日午後、京畿道義王市のソウル拘置所から釈放され、支持者たちにあいさつしながら歩いている=キム・ヨンウォン記者//ハンギョレ新聞社

 4日の憲法裁判所による弾劾宣告で大統領職を罷免された尹錫悦大統領からは、前大統領に提供される各種の礼遇が、警護・警備を除いてほとんど剥奪される。現職大統領に保障される刑事上の不訴追特権もなくなる。
 尹大統領が5年の任期を正常に終えるか辞任していたなら、前大統領として年金、事務室の提供、運営経費、本人と家族に対する医療、秘書官3人と運転手1人などが保障された。年金は、現職時に受け取る年間報酬の95%で、尹大統領の今年の年俸は2億6258万ウォンだったため、通常であれば年間2億6000万ウォン(約2640万円)あまりが受け取れた。
 しかし「前職大統領の礼遇に関する法」は、在職中の弾劾による退任▽禁錮以上の刑の確定▽刑事処分を回避することを目的とした外国逃亡▽大韓民国国籍の喪失などに当てはまる場合は、ほとんどの礼遇を剥奪するとしている。
 前職大統領という象徴性を考慮して警護・警備は保障される。ただし、正常に退任した場合は最大15年間(10年+延長5年)警護が受けられるが、任期満了前に退任した場合は10年(5年+延長5年)に短縮される。前職大統領の警護人員は通常、夫婦で25人ほどが配される。
 尹大統領夫妻は官邸を離れ、ソウル瑞草区(ソチョグ)の自宅(アクロビスタ)に転居するとみられる。ただし、大統領の官邸退去時期についての規定がないため、数日は官邸にとどまる可能性が高い。2017年3月10日に罷免された朴槿恵(パク・クネ)元大統領は自宅の施設の補修、警護問題などを理由として、宣告の2日後に大統領府を退去している。警護処は尹大統領の就任から約6カ月間、瑞草区の自宅を警護した経験があるため、早期の警護準備に問題はないはずだという。

イ・スンジュン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2025-04-04 11:32


「The Hankyoreh」 2025-04-04 11:46
■【速報】韓国憲法裁判所、内乱首謀した尹錫悦大統領を全会一致で罷免
 憲法裁判所が尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領を罷免した。憲法裁は4日午前11時、大審判廷で、尹大統領弾劾事件についての決定を宣告し、「被請求人大統領尹錫悦を罷免する」と述べた。昨年12月3日、非常戒厳が宣布されてから123日後に下された結論だ。
 尹大統領は12・3内乱事態により昨年12月14日に国会で弾劾訴追案が可決された。憲法裁の今回の結論は弁論終結から38日後に出たもので、歴代の大統領弾劾事件の中で最長の審理を記録した。

オ・ヨンソ、キム・ジウン、チャン・ヒョヌン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力: 2025-04-04 11:26


「聯合ニュース」 2025.04.03 10:10
■尹氏弾劾判断控え賛否両派「座り込み」総力戦 警察は非常勤務体制に=韓国
【ソウル聯合ニュース】韓国の尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領の罷免の是非を判断する憲法裁判所の弾劾審判の宣告を翌日に控えた3日、罷免の賛成派と反対派は憲法裁付近で集会を開く。

【写真】憲法裁の周辺に作られた警察車両による壁=2日、ソウル(聯合ニュース)

 市民団体「尹錫悦即刻退陣・社会大改革非常行動」はこの日夕方、憲法裁付近で尹大統領の罷免を求める集会を開く。集会後は行進も行う計画だ。その後、夜を徹して座り込み、4日午前11時の宣告をテレビ中継で視聴する。
 尹大統領の罷免に反対する保守団体などもこの日、憲法裁近くなどで集会を開催する。反対派の約50人は2日から夜通しで座り込みを行った。この日も座り込みを続ける。反対派も4日午後、テレビ中継を視聴する計画だ。
 一方、警察はこの日午前9時、ソウルに非常勤務体制のうち上から2番目に高い「乙号非常」を発令した。4日には警察力100%の動員が可能な最高レベルの非常勤務体制「甲号非常」を全国に発令する。全国210の機動隊の隊員約1万4000人や刑事機動隊なども動員する。
 また、国会や大統領室、外国の大使館、主な報道機関などにも機動隊を配備する。


「The Hankyoreh」 2025-04-03 07:57
■尹錫悦大統領の運命を決める2つの基準「憲法守護の意志・国民の信任」
 違憲・違法に加えて重大性が判断のカギ 
 盧武鉉元大統領の弾劾裁判では政治中立違反を認めたが 
 憲法守護の観点から重大性は低く、「棄却」 
 国政壟断の朴槿恵元大統領の場合、基準をすべて満たし「罷免」

【写真】尹錫悦即時罷免・社会大転換ソウル非常行動、民主労組ソウル本部など、内乱首謀者尹錫悦罷免バスの参加者らが2日午前、ソウル市龍山区の大統領官邸に向かい弾劾を求めて行進し、警察に阻止されている=シン・ソヨン記者//ハンギョレ新聞社

 韓国憲法では、弾劾訴追議決の要件を「憲法や法律を違反したとき」と決めている。憲法裁判所は弾劾事件を進めるなかで、違憲・違法行為に加え「重大性」まで認められてこそ、罷免に至ることが可能となるという判例を確立した。法曹界では、尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領が宣言した12・3非常戒厳の違憲・違法性は明白であるため、憲法裁判官がその重大性をどう判断するかがカギだとみている。
 これに先立ち憲法裁判所は、盧武鉉(ノ・ムヒョン)元大統領と朴槿恵(パク・クネ)元大統領の弾劾裁判を通じて、違憲・違法行為の「重大性」を、「憲法守護」と「国民の信任」の観点で改めて分けて判断した。2004年に棄却された盧武鉉元大統領の弾劾事件の場合、憲法守護の観点での重大性が認められなかった。当時の憲法裁判所は、総選挙を控えた状況のもと、与党支持を訴えた盧大統領の行為が政治的中立性違反ではあるが、憲法守護の観点では重大性は低いと判断した。憲法裁判所は「具体的な法律違反行為に、憲法秩序に逆行しようという積極的な意志を認められないため、自由民主的な基本秩序に対する脅威とは評価できない」と明らかにした。
 朴槿恵元大統領は、2つの重大性の基準を両方とも満たしたケースだ。2017年の憲法裁判所は、「朴大統領がチェ・スンシル氏の国政介入を許容した行為は、法治主義の精神を損なうものであり、大統領としての公益実現の義務を重大に違反した」ものであり、「1回目の国民に向けての談話で行なった謝罪は、客観的事実と合わないなど真正性が足りず、(談話の内容とは違い)捜査に応じない行為などは、国民の信任を裏切った行為」だと判断した。憲法守護と国民の信任の観点で違法行為が重大だということだ。特に、朴元大統領弾劾事件において、捜査拒否が重大な違法行為と判断されたことを踏まえ、尹大統領の逮捕令状執行拒否や大統領室の押収捜索拒否などを、憲法裁判所がどのように判断するのかについて関心が集まっている。

【写真】尹錫悦大統領が2月6日、ソウル市鍾路区の憲法裁判所で開かれた弾劾審判の第6回弁論に出席して、物思いにふけっている=共同取材写真//ハンギョレ新聞社

 先月24日、憲法裁判所はハン・ドクス首相の事件で、マ・ウンヒョク裁判官の任命拒否は違憲であり、「憲法秩序に及ぼすことになった否定的な影響と波及効果は重大だ」として、憲法守護の観点で違憲行為の重大性があると判断した。それでも、憲法裁判所は「(ハン首相の違法行為が)任命権者である大統領を通じて間接的に付与された国民の信任を裏切ったケースに該当すると断定することはできない」として、棄却を決めた。首相として受ける国民の信任に背くとするには、違法行為が重大ではないという趣旨だった。国民の直接投票によって選出された大統領には、首相よりも国民の信任を裏切ったという要件を幅広く適用しうるという意味でもある。
 憲法研究官出身である建国大学法学専門大学院のスン・イド教授は2日、ハンギョレの電話取材で「尹大統領は非常戒厳という超憲法的な国家緊急権の行使を通じて権力を非正常的に掌握しようとし、国会に軍の兵力を投入し、民主主義憲法を後退させる行為に及んだ」として、「これは憲法守護の意志がなく、国民の信任に反する行動であり、罷免の理由になりうる」と述べた。

オ・ヨンソ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2025-04-02 23:25


「The Hankyoreh」 2025-04-03 07:38
■戒厳令、布告令、国会掌握…一つでも重大な違憲があれば尹大統領は罷免に
 主な証言を通じて見た5大争点

【写真】尹錫悦大統領が2月13日、ソウル鍾路区の憲法裁判所の大審判定で開かれた尹錫悦大統領弾劾審判の8回目の弁論に出席している=写真共同取材団//ハンギョレ新聞社

 4日に尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領弾劾事件の宣告を行う予定の憲法裁判所は、国会が弾劾訴追理由として提示した5大争点を基準に、違憲性と違法性に照らし合わせて最終判断を下す。非常戒厳宣布の違憲性▽戒厳令第1号▽軍と警察を動員した国会掌握の試み▽令状のない押収や逮捕など選挙管理委員会掌握の試み▽政治家や法曹人などに対する逮捕指示のうち一つでも重大な違憲・違法だと憲法裁で認められれば、尹大統領は罷免に至る可能性がある。第4〜10回弁論の過程で、16人の証人が憲法裁に出席し、尹大統領の非常戒厳宣布にともなう違憲・違法行為を具体的に証言した。
 最も基礎的な争点は、尹大統領の12・3非常戒厳宣布が、憲法と法律が定めている手続きと要件を満たしているかどうかだ。
 尹大統領は「非常戒厳宣布は高度の統治行為」だとし、野党が弾劾を乱発したことなどを名目に掲げ、正当性を主張してきた。一方、国会側は憲法が定めた戒厳発動状況(戦時・事変またはこれに準ずる国家非常事態)ではなかったため、戒厳の宣布そのものが違憲・違法だと反論した。非常戒厳宣言前に行われた「5分間の国務会議」の適法性も重要な判断基準になる。
 これについて、ハン・ドクス首相は2月20日、弾劾審判第10回弁論で、「戒厳宣布前の国務会議は通常の国務会議ではなく、形式的・実体的な欠陥があったのは事実」だと証言した。
 政治活動禁止、言論・出版の統制などの内容を盛り込んだ戒厳令第1号の違法性も主要争点だ。国会側は、国会活動と政党の政治活動を禁止する条項が含まれている違法な布告令だと指摘した。
 尹大統領側は、キム・ヨンヒョン前国防部長官が過去の布告令を誤ってそのまま写したと主張し、4回目の弁論ではキム前長官を尋問する際、「『(布告令は)上位法規にも違反し、内容が具体的でないため、執行の可能性もないが、そのままにしておきましょう』と(尹大統領が)言ったが、覚えているか」と尋ねた。布告令が上位法規である憲法に反するという点を認識していたと自ら認めたわけだ。
 戒厳軍と警察が国会を封鎖して国会活動を妨害しようとしたという疑惑は、弁論過程で様々な証言で裏付けられた。尹大統領側は「秩序維持」のためだったと主張したが、第6回弁論に証人として出席したクァク・チョングン前陸軍特殊戦司令官は、尹大統領に「議決定足数に至っていないようだ。早く国会の門を壊して入って、中にいる人たちを引きずり出せ」と指示されたと証言した。
 第5回弁論に証人として出席したヨ・インヒョン前防諜司令官は、「戒厳当日、兵力を出動するようキム・ヨンヒョン前国防部長官に命令された」と認めており、警察に特定の人物の位置を把握するよう要請した事実を認めた。イ・ジヌ前首都防衛司令官はほぼ答弁を拒否したが、チョ・ソンヒョン首都防衛司令部第1警備団長は第8回弁論で、イ前司令官から「国会内部に入って議員たちを引きずり出せ」と指示されたと証言した。
 軍を動員した選挙管理委員会の強制捜索も、弁論過程で違法行為が再確認された。尹大統領は第5回弁論で「選管委に戒厳軍を派遣するように言ったのは、私がキム・ヨンヒョン前長官に指示したこと」だと述べた。尹大統領が一貫して否定してきた違憲・違法行為の中で、ほとんど唯一認めた事実関係だった。さらに尹大統領は、「選管委に入り、(セキュリティ点検を行った)国情院がすべては確認できなかった選管委の電算システムにどのようなものがあり、どのように稼動するのか、スクリーン(点検)をしろという趣旨だった」と主張した。選管委のセキュリティがずさんで不正選挙の疑惑が持ち上がったため、自分が軍を送り、これを点検しようとしたという主張だ。
 しかし第7回弁論に証人として出席したキム・ヨンビン中央選管委事務総長は「不正選挙疑惑はまったくあり得ない」としたうえで、「果川(クァチョン)庁舎に入ってきた戒厳軍がひとまず『行動統制』をしながら(職員らの)携帯電話を押収した。それ自体が逮捕・監禁に当たる」と反論した。
 政治家や法曹人の逮捕指示をめぐる争点については、これを初めて暴露したホン・ジャンウォン国情院第1次長に対する尹大統領側の「揺さぶり」が激しく展開された。ホン前次長は第5回弁論に出席し「『全員捕まえろ』という尹大統領との通話内容を一言一句まで覚えている」とし、ヨ・インヒョン前防諜司令官との通話で「共に民主党」(最大野党)のイ・ジェミョン代表など、政治家や法曹人の逮捕リストを聞いてメモしたと述べた。
 尹大統領側が、ホン前次長が証言した非常戒厳当日の夜の動線に誤りがあると指摘したことを受け、ホン前次長は第10回弁論に再び出席し、非常戒厳当日に作成した逮捕関連メモを審判廷で提示し、作成場所は国情院長官邸の前ではなく、自分の執務室だと訂正した。
 同じ日に証人として出席したチョ・ジホ警察庁長は、「尹大統領から直接『国会議員を逮捕せよ』という指示を受けた」と検察に供述した内容と関連し、「事実関係に間違いはない」と証言し、尹大統領の逮捕指示があったという証言を後押しした。

チャン・ヒョヌン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2025-04-02 22:40


「The Hankyoreh」 2025-04-03 00:12
■「尹錫悦は国民の怖さを知らない」…市民、全員一致での罷免求める

【写真】尹錫悦即時退陣・社会大改革非常行動が2日夕刻、ソウル鍾路区の安国駅6番出口前で開催した内乱首魁尹錫悦即時罷免集会に、市民が集まっている=イム・ジェヒ記者//ハンギョレ新聞社

 「憲法が守られているという証拠が見たくて」、「市民に銃刀を向けた大統領に腹が立って」、「これからもっと連帯したくて」。
 2日夕刻、ソウル鍾路区(チョンノグ)の安国(アングク)駅6番出口前。市民は各自異なる理由をあげ、尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領罷免を叫んだ。そして「内乱勢力を制圧しよう」などと書かれた印刷物、自ら記した「主文、被請求人大統領尹錫悦を罷免する」などの様々なプラカードを振った。また、200メートルほど離れた憲法裁判所に向かって「憲法裁は尹錫悦を8対0で罷免せよ」、「内乱首魁(しゅかい)尹錫悦を全員一致で罷免せよ」と声を一つにして叫んだ。
 尹錫悦即時退陣・社会大改革非常行動(非常行動)はこの日午後7時、安国駅6番出口前で「内乱首魁尹錫悦即時罷免」集会を開催した。前日の夜9時から24時間にわたって続けられた徹夜集中行動の最後を飾る集会だ。市民は安国駅6番出口付近の6車線道路の、150メートルの区間を埋め尽くした。
 市民は、昨年の12・3内乱を繰り返さないために、憲法裁は全員一致で尹大統領に罷免を言い渡すべきだと口をそろえた。ムン・ナギョンさん(84)は「(尹大統領は)ソウル拘置所から出てきた時、頭を下げて国民に間違っていたと謝罪すべきだったが、笑いながら握り締めた拳を振り上げていた」とし、「国民を怖がっていないようだ」と話した。そして「国民の怖さを知らない大統領があんな非常戒厳をまた繰り返したらどうするのか」と、尹大統領が罷免されるべき理由を語った。休暇を取って京畿道金浦市(キンポシ)からやって来たという会社員のイ・スンミンさん(53)も、「国会を軍隊が襲ったということは、自分を止められるあらゆる方策を防ごうとしたということ。対話や妥協もなしに自分の意思ばかりを貫徹しようとした尹大統領は、再発の懸念もあるので絶対に罷免されるべきだ」と話した。
 済州4・3抗争とセウォル号惨事を記憶している4月の市民たちは、差別や嫌悪に別れを告げるために尹大統領を罷免しようと声を強めた。済州4・3汎国民委員会のペク・キョンジン理事長は、「内乱勢力は戒厳文書で済州4・3のことを『済州暴動』と言っており、極右勢力は(済州4・3抗争の象徴である)ツバキバッジを共産党バッジだと言っているが、彼らこそ暴動勢力。白骨団のような暴力団の蠢動(しゅんどう)がソウル西部地裁を侵奪するに至り、憲法裁判所などあちこちで恐怖の雰囲気を造成している」と述べた。京畿道安山(アンサン)からやって来たというチョン・ウランさんは舞台上で、「セウォル号惨事11周忌が2週間後に迫っているが、この社会はなぜこのように遅いのか、つらい時間でもあった。もう一度未来を夢見てみようと、迫りくる春に勝利する経験を共有しようと言いたくなった」と語った。

【写真】2日夕刻、尹錫悦即時退陣・社会大改革非常行動が開催した内乱首魁尹錫悦即時罷免集会の参加者が、自分で作ったプラカードを手にしている=イム・ジェヒ記者//ハンギョレ新聞社

 市民にとって、尹大統領の罷免は社会改革のはじまりでもあった。非常行動のパク・ソグン共同議長は「尹錫悦罷免は新たなはじまりに過ぎず、その後に私たちがなすべきことは非常に多い」として、「OECD(経済協力開発機構)自殺率1位の世の中を変え、庶民も人間らしく生きられる世の中を作らなければならないのではないか」と述べた。そして「内乱勢力の清算と社会大改革で、人間らしく生きられる世の中を共に作っていこう」と語った。
 非常行動はこの日、デモ行進は行わずに24時間にわたった徹夜集中行動を終えた。主催者は、尹大統領の支持者との接触を避けてほしいと訴えつつ、解散後は弾劾反対集会の会場に近い安国駅ではなく、光化門(クァンファムン)駅などを利用するよう要請した。徹夜座り込みは3日午後7時から翌日の憲法裁による決定言い渡しまで行われる予定だ。

イム・ジェヒ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2025-04-02 21:19


「The Hankyoreh」 2025-04-02 10:03
■韓国二大労総、4日の弾劾審判宣告前に「罷免要求」24時間集中行動

【写真】憲法裁判所が尹錫悦大統領の弾劾審判の宣告日を発表した1日、憲法裁判所のそばに警察のバスで壁が構築されている/聯合ニュース

 憲法裁判所による尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領の弾劾審判の宣告日が4日に決まった1日、労働界は憲法裁に罷免決定を要求する24時間徹夜集中行動に突入した。
 民主労総と韓国労総はこの日午後6時、ソウル光化門(クァンファムン)の東十字閣(トンシプチャガク)で共同集会を開催し、裁判官の全員一致による尹大統領の弾劾を憲法裁に求めた。韓国労総のキム・ドンミョン委員長は「憲法を踏みにじった尹錫悦が復帰すれば韓国社会は破滅し、共同体は徹底的に崩壊するだろう」とし、「尹錫悦審判闘争の長い冬を勝ち抜いた我々労働者の力で、今度は労働の春、ソウルの春を迎えよう」と述べた。民主労総もこの日の声明で、「すべての市民が見守った内乱行為を違憲、違法と言わないなら、憲法裁判所には存在価値がない。憲法裁判所は4日11時、全員一致で内乱首魁(しゅかい)尹錫悦を罷免せよ」と述べた。
 二大労総は集会後に行われた尹錫悦退陣非常行動の集会に合流。その後、鍾路区(チョンノグ)に位置する憲法裁判所まで行進した。続いて、憲法裁に全員一致による罷免決定を求める座り込みを開始した。座り込みは2日午前まで。

チョン・ジョンフィ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2025-04-01 18:07
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「検察総長の娘の採用、韓国外交部「特恵なかった」と主張するが…高まる批判」

2025年04月02日 | 韓国で
「The Hankyoreh」 2025-04-01 09:57
■検察総長の娘の採用、韓国外交部「特恵なかった」と主張するが…高まる批判
 受験資格は経済分野の修士学位以上 
 再公告時はS氏の専攻へと変更

【写真】シム・ウジョン検察総長が3月11日午前、ソウル瑞草区の最高検察庁に出勤している/聯合ニュース

 外交部がシム・ウジョン検察総長の娘(S氏)を公務職(非公務員)の研究員として採用した際に、「採用再公告時には受験者に不利に変更してはならない」とする採用手続き法とその関連規定に違反していたと指摘する声が31日にあがった。外交部は連日「特恵はなかった」と反論しているが、特恵採用批判は逆に拡大しつつある。
 この日、共に民主党のハン・ジョンエ議員室が国民権益委員会から提出を受けた「行政機関内の非公務員(公務職)公正採用のための方策(公正採用ガイドライン)」を確認したところ、権益委は、再公告時に「採用公告の内容を受験者に不利に変更してはならない」と明示している。政府機関が民間人を採用する際に必ず従わなければならない「採用手続きの公正化に関する法律(採用手続き法)」にも同じ規定がある。
 外交部は今年1月、公務職研究員の採用を公告した際に、「経済分野の修士学位所持者」を受験資格として掲げていた。ところが1カ月後に再公告した際には、受験資格をS氏の専攻である「国際政治分野の修士学位所持者」へと変更した。外交部は「受験可能対象を広げる」ことを意図したものだったと説明するが、結果的に1回目の公告時に志願できた人は2度目の公告の際には受験資格さえ得られないようにしたうえで、S氏に有利な環境を作っていた。
 外交部は採用公告を変更した際、人事企画官室と書面で協議するにとどまっているが、これも権益委の公正採用ガイドラインに反する。公正採用ガイドラインには「やむを得ず公告内容を変更する場合は、採用関連の審議機関などの内部統制手続き」を経るよう明示されている。この「審議機関」とは内部の決裁ラインではなく、公正さが確保された独立機関を意味する。人事企画官室は人事の実務部署であり、審議・議決権を持つ機関だとはみなし難い。
 外交部がS氏の大学院での研究補助員活動と国連傘下機関でのインターンシップ期間をすべて「経歴」と認めたことについても、やはり批判の声があがっている。公正採用ガイドラインは公務職採用時の経歴算定について、4大保険への加入履歴や所得金額の証明などで金銭的補償を受けていたことが立証されている場合も、勤務期間や時間が不明であれば審議会で認定範囲を決めることとしている。
 S氏が提出した「経歴」にあるソウル大学国際学研究所の研究補助員は、指導教授の学術行事などを支援するものであり、報酬や決まった出退勤時間もない助教役だった。また、国連傘下機関でのインターンシップ時代はコロナ禍中だったため、かなりの期間を在宅勤務で過ごしていたという。外交部は「書類選考試験委員会が経歴を認めるかどうかを審議したうえで決定を下した」と前日に明かしているが、公正採用ガイドラインどおりならS氏の経歴がすべて認められるかは疑問が残る。
 一方、国会外交統一委員会に所属する民主党の議員はこの日、国会で記者会見を行い、S氏の採用は特恵ではないとする外交部の主張は「釈明ではなく詭弁(きべん)」だと批判した。

シン・ヒョンチョル記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2025-03-31 17:52
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「憲法裁は4日の弾劾審判宣告で、憲法に基づき尹大統領を罷免せよ」

2025年04月02日 | 韓国で
「The Hankyoreh」 2025-04-02 07:06
■【社説】憲法裁は4日の弾劾審判宣告で、憲法に基づき尹大統領を罷免せよ

【写真】尹錫悦大統領弾劾審判の宣告期日を3日後に控えた1日午後、ソウル鍾路区の憲法裁判所の入り口の様子=キム・ヨンウォン記者//ハンギョレ新聞社

 憲法裁判所が4日午前11時、尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領の弾劾審判の決定を言い渡す。12・3非常戒厳以降4カ月が過ぎてから宣告が行われることになった。あまりにも長く待たされた。内乱の夜に驚き、憤った市民たちは、長い間日常を失い、内乱の影響で苦しんできた。内乱首謀者の尹錫悦大統領が逮捕状の執行を物理力で阻止した末に逮捕・拘束された後、法と常識に反して釈放される姿まで見守らなければならなかった。憲法裁の言い渡しがいつ出るかもわからず先送りされたことで、不眠の夜が深まり、亡国の不安と恐怖まで頭をもたげた。今からでも憲法裁が宣告期日を決めたのは不幸中の幸いだ。もはや全員一致の罷免言い渡しで憲政の危機を終わらせ、民主共和国、大韓民国の新たな出発を宣言することだけが残った。
 「12・3内乱」の違憲・違法性はあまりにも明らかだ。憲法と法律上の要件に合わない非常戒厳の宣布、違憲的内容の戒厳布告令第1号の発表、軍と警察を動員した国会と選挙管理委員会の侵奪、主要人物に対する不法逮捕の指示など、訴追理由一つ一つが大統領の罷免だけでは済まないほどの重大な憲政破壊行為だ。証拠もあふれている。戒厳宣布の場面と布告令を全国民が見守った。ヘリに乗った空輸部隊が国会を強襲する場面も生中継された。憲法裁弁論過程で「国会議員を引きずり出せ」という指示、政治家などの逮捕を指示したという肉声の証言も出てきた。尹大統領自ら「国防部長官に戒厳軍を選挙管理委員会に送るよう指示した」と自白した。もはや「法理」を問う段階ではない。
 憲法裁が弾劾の認容ではない他の選択をするとは、常識的にも論理的にも考えられない。だが、万が一そのようなことが起きれば、大韓民国という共同体が直面する状況は亡国的災いだ。軍を動員して民主的な政治過程を押さえつけた非常戒厳に免罪符が与えられ、第2の戒厳の可能性が常に存在することになる。英誌エコノミストの「2024民主主義指数」で、韓国は「完全な民主主義」から「欠陥のある民主主義」に転落した。尹大統領が復帰することになれば、「独裁国家」に墜落するのは時間の問題だ。その後は「指数の低下」にとどまらない。市民の平和な日常はもとより、命まで脅かされる凄惨な日々が繰り広げられるだろう。非常戒厳以降のきわどい経済状況も急速に危機局面に入るだろう。宣告期日の発表直後、証券市場が急騰し、ドルに対するウォンの価値が上昇傾向に転じたのはそれを物語っている。事あるごとに自由民主主義を叫んでおきながら、自ら民主主義を根こそぎ覆す親衛クーデターを起こした尹大統領が復帰すれば、外交舞台では後進国の独裁者のように扱われるだろう。
 憲政守護という至高な責務を与えられた憲法裁判官が、これらすべての事情を知らないはずがない。それでも合理的な説明が不可能なほど宣告が遅れてきたことには、常軌を逸した内部の意見の相違があったと見るほかはない。一部の裁判官が内乱勢力の政治的理解を代弁し、宣告をわざと遅延させたのではないかという疑念まで台頭した。事実かどうかは別として、憲法裁はその地位に致命的な損傷を与える事態を自ら招いた。もはや憲法裁が憲法の最後の砦という本分を守り、国民の信頼を回復するためには、全員一致で尹大統領の罷免を言い渡す道しかない。裁判官たちが皆、他でもなく憲法の命令に忠実に従っていることを、4日の決定文でみられるよう国民は願っている。

(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2025-04-01 18:37 


「The Hankyoreh」 2025-04-02 08:46
■憲法裁、弁論終結から38日後に終止符…法曹界の見通しでは「弾劾認容」が有力

【写真】尹錫悦大統領弾劾審判の宣告期日を3日後に控えた1日午後、ソウル鍾路区の憲法裁判所の入り口の様子=キム・ヨンウォン記者//ハンギョレ新聞社

 歴代の大統領弾劾事件の中で審理期間が最も長い尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領弾劾事件の結論が、4日午前11時に出ることになった。弁論終結から評議だけに1カ月以上費やした憲法裁判所が、長い間熟議を経て結論を出すわけだが、法曹界では「弾劾認容」が有力視されている。
 憲法裁判所は1日午前10時、裁判官評議を開いた。記者団に宣告日が通知されたのは午前10時40分頃。憲法裁は前日にも午前10時から一般事件と共に尹大統領弾劾事件の評議を進めたが、すでにある程度意見がまとまった状態でこの日評決を行い、結論を下したものとみられる。
 憲法裁は2月25日の尹大統領事件の最終弁論後、週末を除きほぼ毎日裁判官評議を行ってきた。当初は、以前の大統領たちの弾劾事件の結論が最後の弁論から2週間後に出たように、尹大統領事件も同様に3月の第2週には結論が出るものと予想された。12・3非常戒厳の違憲・違法性が明確で、憲法裁の弁論で関連証言も多数出てきたためだ。朴槿恵(パク・クネ)元大統領の事件より争点も簡単であるため、以前より遅くない時点で結論が出るだろうと法曹界は予測していた。
 ところが憲法裁は、尹大統領事件を審理する間に、チェ・ジェヘ監査院長、イ・チャンス・ソウル中央地検長、ハン・ドクス首相の弾劾事件の棄却決定を言い渡した。27日には一般事件の宣告も行われた。これを受け、裁判官らの意見が一致せず、尹大統領事件を憲法裁が最優先に処理できないのではという分析が出た。認容定足数の6人を満たせず、1〜2人が足りない状態という懸念も続いた。憲法裁の内部事情を知る元判事は1日、ハンギョレの電話インタビューで、「裁判官の意見がまとまらず、2人の裁判官(ムン・ヒョンベ憲法裁判所長権限代行とイ・ミソン裁判官)の退任日の4月18日まで、結論を出せないかもしれないという懸念とともに評議が進められたという」と伝えた。
 このような苦戦の末に裁判官たちはある程度意見をまとめ、2人の裁判官の退任日2週間前の4日に決定宣告をすることになったものとみられる。裁判官の意見がまとまっていない状況だったなら、両裁判官が退任して憲法裁が不能状態になる時期まで評議を続けた可能性が高い。朴元大統領弾劾事件当時、憲法研究官タスクフォース(TF)として働いた経験のある法曹人は、「朴元大統領事件の時も、研究官らは裁判官1~2人は棄却意見を書くと予想されたが、詰めの評決で全員一致認容の結論が出た」とし、「裁判官らが意見一致のために長い間評議を続け、終盤に意見を一致させられたのかもしれない」と語った。ある元裁判官は「認容か棄却かの結論はある程度出た状態で、一部の裁判官が別個・補充意見を書くために宣告が遅れた可能性もある」と伝えた。裁判官たちはこの日、評決を終えたが、決定文の文言の微調整などのため、2日も午前10時から評議を続けることにした。
 法曹界は大方「尹大統領罷免」を予想するとともに、求めている。元憲法研究官のノ・ヒボム弁護士は「憲法裁判所の存在理由と裁判官の憲法的責務・使命の観点からして、憲法秩序を破壊した犯罪者に罷免決定を宣告せざるをえない」と語った。「憲政回復のための憲法学者会議」は同日、声明を発表し、「裁判官は憲法と法律によってその良心に従い独立して審判しなければならない憲法的地位に立脚し、全員一致の決定で大統領尹錫悦を罷免すると信じて疑わない」とし、「万一、憲法裁がこのような重大な時代的使命に逆らい、憲政守護者の責務を放棄する結論に到達するなら、主権者国民の峻厳な審判の対象に転落しうることを肝に銘じなければならない」と述べた。

オ・ヨンソ記者loveletter@hani.co.kr(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/1190075.html
韓国語原文入力: 2025-04-02 01:12


「The Hankyoreh」 2025-04-02 10:09
■「権力型性暴力」容疑者の死、被害者にとってはさらに大きな苦痛=韓国

【写真】2023年12月14日午後、釜山鎮区の赤十字会館で開かれた釜山フォーラムで、チャン・ジェウォン国会議員が特別講演をしている/聯合ニュース

 韓国の与党「国民の力」のチャン・ジェウォン前議員が、釜山(プサン)のある大学の副総長だった頃、秘書に性的暴行を加えた容疑(準強姦致傷)で警察の捜査を受けていたところ、突然死亡した。権力型性暴力容疑者が自殺する事件が再び発生したのだ。このような状況が、公訴時効を控え苦渋の決断として告訴に踏み切った被害者の権利回復を難しくするという懸念の声が高まっている。
 チャン前議員は3月31日午後11時40分頃、ソウル江東区のあるオフィステルで遺体で発見された。元秘書のA氏の法律代理人であるキム・ジェリョン弁護士(法務法人オンセサン)が報道資料を通じて、2015年11月の事件発生当時の具体的な情況と、告訴をするまでの9年間にわたる被害者の苦痛を述べた直後だった。この資料によると、「被害者は事件後、精神科的症状により入院治療および心理相談を受けており、その過程でこのような症状が性暴力被害に起因することを知り、これ以上人生が疲弊することを防ぎ、加害者に対する厳重な法の審判を求めるため」告訴を決断したという。
 容疑者の死は、苦渋の決断として告訴した被害者に否定的な影響を及ぼす可能性が高い。性暴力被害者の相談を受けてきた心理カウンセラーのLさんは1日、ハンギョレに「(自分が相談を担当した3件のうち)いつでも被害者に暴力を行使できる親密な関係にあった被疑者が死亡した場合、1人は脅威から抜け出したことに安堵したが、他の2人は加害者の自殺でそれぞれあまりにも大きな罪悪感、怒りを感じるなど、性暴力によるトラウマがさらにひどくなった」と語った。似たような状況に置かれたパク・ウォンスン元ソウル市長の性暴力事件の被害者は著書『私は被害を訴える人ではありません』で、「骨が割られ、肉がずたずたに裂けられる気がした。私という存在が早くこの世から消えることだけが残ったようだった」と当時の心情を綴った。
 チャン前議員が死亡したことで、捜査も中断される見通しだ。通常、捜査機関は被疑者が死亡した時に捜査を進めず、公訴権なしを理由に不送致、または不起訴処分にするためだ。ソウル警察庁の関係者は、被疑者の死亡処理状況を考え、検討を経て、事件をどのように処理するかを判断する方針を示した。「民主社会のための弁護士会」(民弁)女性人権委員会所属のパク・スジン弁護士は「加害者は(死を)名誉を守るための最後の選択だと言うかもしれないが、被害者にとっては最後に勇気を振り絞って選んだ被害救済、真実究明の権利も再び加害者によって剥奪される結果」だと指摘した。
 キム・ジェリョン弁護士による報道資料によれば、告訴に至るまで9年がかかったことについて、「事件が発生した2015年、被害事実を打ち明けた教授から『通報すればチャン前議員が自殺するかもしれない』という趣旨の話を聞くなど我慢するように言われ、自暴自棄になり、2018年に記者に会った際には現職の国会議員を告訴した場合の(報復に対する)恐れから、2022年にキム弁護士を訪ねて相談をした際には釜山地域に住む家族まで被害を受けるかもしれないという恐れから、告訴できなかった」という。
 「女性現実研究所」のクォン・キム・ヒョニョン所長は「権力型性暴行の特徴は、権力を持つ個人が死んでもその権力を作った構造が維持され、引き続き影響を及ぼし、被害者に威力を行使する点」だと指摘する。捜査が終結してしまえば、犯罪事実を明確に明らかにすることが難しく、被害の回復に困難をきたすだけでなく、被害を疑われるなど2次被害にさらされやすい。
 このような理由から、被疑者の死亡後に捜査を終結する慣行を見直す必要があるという意見もある。2022年当時、ソウル瑞草警察署のチョン・ダヨン警部補と警察大学のハン・ミンギョン教授が発表した論文「被疑者の死亡を理由にした公訴権なし捜査終結慣行に対する考察」によると、「被害者だけが生存した状態で捜査を続けるのは被疑者の防御権が保障されないことから、公平性をめぐる議論は避けられないが、これによる損害が被害者に発生してはならない」とし、2次被害が予想される状況や、被害者あるいは被疑者側が捜査状況の公開を要請する制限的な状況で捜査を継続することを提案した。

パク・ヒョンジョン、イ・ジヘ、チョン・インソン、パク・コウン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力: 2025-04-01 20:15


「The Hankyoreh」 2025-04-02 07:41
■国会弾劾訴追から111日でついに言い渡し…与野党「憲法裁による期日指定」歓迎

【写真】尹錫悦大統領の弾劾審判の言い渡しを3日後に控えた1日午後、ソウル鍾路区の憲法裁判所の入り口が警察の車壁とバリケードで塞がれている=キム・ヨンウォン記者//ハンギョレ新聞社

 憲法裁判所が今月4日午前11時に尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領の弾劾審判の決定を言い渡す。12・3非常戒厳宣布から122日、昨年12月14日に国会で弾劾訴追案が可決されてから111日で、ついに結論が出る。言い渡しが遅れていたことで評議が難航しているという懸念が膨らんでいたが、言い渡し日の指定により、ムン・ヒョンベ憲法裁判所長権限代行とイ・ミソン裁判官が退任する今月18日になっても結論が出せないという最悪の状況は避けられることになった。
 憲法裁は1日、「2024年憲ナ8 大統領(尹錫悦)弾劾事件に対する宣告が4月4日金曜日午前11時、憲法裁の大審判廷で行われる予定」だとして、「宣告期日には放送局の生中継と一般人の傍聴が許される」と発表した。尹大統領の弾劾の言い渡しは、2月25日の弁論終結から数えても38日かかったことになる。憲法裁は弁論終結後、盧武鉉(ノ・ムヒョン)元大統領(14日)、朴槿恵(パク・クネ)元大統領(11日)の弾劾審判の2倍を超える時間を審理に費やし、その期間は過去最長となった。
 憲法裁は前日に続き、1日も午前10時から評議を行い、約40分後に言い渡し期日をメディアに公示した。憲法裁はこれに先立ち、尹大統領と国会にも言い渡し期日を通知した。この日の評議で言い渡し日程を確定したとみられる。憲法裁が4日の言い渡しで6人以上の裁判官が弾劾訴追案を認容すれば、尹大統領は直ちに罷免されるが、そうなった場合は言い渡し日から60日目の6月3日(火曜日)が早期大統領選挙の投票日となることが有力視される。しかし認容が6人に達しなければ、尹大統領は職務に復帰することになる。
 与野党はひとまず、憲法裁の言い渡し日指定を歓迎した。与党「国民の力」のクォン・ソンドン院内代表は1日、記者団に「憲法裁が早期に期日を定めたことについて幸いだと考え、歓迎する」として、「国民の力は憲法裁の判決に服する。憲法裁判決後、与野党など政界は国民の対立を緩和し、国民統合の先頭に立つべきだ」と述べた。野党「共に民主党」のチョ・スンネ首席報道担当はブリーフィングで、「憲法裁には主権者国民の意思を重く受け止めてもらいたい」として、「憲法裁は内乱首魁(しゅかい)尹錫悦の罷免を通じて民主共和国の国体と国憲を守るという断固たる意志を示すはずだと信じる」と述べた。
 市民社会団体は、全員一致による尹大統領の罷免を求めた。1700あまりの市民社会団体からなる尹錫悦即時退陣・社会大改革非常行動は、「憲政破壊の状況がこれ以上長引かないというのは不幸中の幸い」だとして、「今や残されているのは憲法裁による罷免宣告だけだ。憲法裁は内乱首魁尹錫悦を8:0の全員一致判決で罷免せよ」と述べた。

キム・ジウン、チョン・グァンジュン、キ・ミンド、イ・ジヘ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2025-04-01 18:32


「The Hankyoreh」 2025-04-01 10:03
■政治の両極化の真の主犯【コラム】
 ソーシャルメディアは、極右勢力の隆盛と政治の両極化の主犯とされてきた。ソーシャルメディアを通じて信念や関心事の類似する人同士が情報を共有し党派的見解を強めることで、政治の両極化が深刻化し、民主主義も揺らぐ。しかし、ソーシャルメディアとインターネットをほとんど使わない高齢層の方が両極化が深刻だったという研究などが紹介されたことで、政治の両極化は考えられているよりはるかに複雑な現象であることが明らかになりつつある。
 ソーシャルメディアと政治の両極化についての仮説は、大きく3つに分けられる。1つ目は、プラットフォームがソーシャルメディア利用者の関心事に合ったコンテンツを選び出して提供することで、利用者の情報受容に偏向が発生するという「フィルターバブル」仮説だ。利用者がプラットフォームに長くとどまればとどまるほど企業の利益は大きくなるため、関心をつかむために怒り、嫌悪、恐怖を誘発する極端なコンテンツが勢いを増すとともに、自分と同じ考えを持つ集団の意見やニュースばかりを見るようになるという「フィルターバブル」が生じるということで、プラットフォームの責任を強調するものだ。
 2つ目は、確証バイアスのような人間の認知能力の限界に注目するアプローチだ。人間は認知能力の限界のせいで真実そのものを把握することが難しい。また認知の過程では、資源を最小化するという特性のせいで確証バイアスに陥りやすい。実際に、アルゴリズムが変更され、相手陣営の主張などの多様なコンテンツにさらされた際にも、利用者の政治的態度は変わらなかったという研究結果もある。「エコーチェンバー効果」と呼ばれるこの理論によると、自身の意見が誤っている可能性があることを受け入れる、利用者の省察の態度が重要だ。
 近ごろは、他人の視線を意識し、認められたいと思う人間本来の欲望が、ソーシャルメディアで行われる政治判断の過程にどのような影響を及ぼすのかについての研究が注目を集めている。個人の政治的判断は真空状態では行われず、普遍的で一般的な視点を思い浮かべながら政治的意見をまとめていく。だが、フェイスブックのようなソーシャルメディアは「いいね」の数、「フォロワー」の数、「共有」の数などによって社会的に認められる過程をゲームのようにしている。より多くの「いいね」を得た時、社会的地位が上昇しているような錯覚に陥る。その結果、参加の質、共感、社会の深みのような価値観は消え去る。
 フェイスブックの「いいね」は、フェイスブックを世界最大のソーシャルメディア企業へと押し上げた。アルゴリズムの透明性に劣らず、「いいね」などのように社会的に認められることをゲーム化しているインターフェースの改善が求められている、という主張が力を得る理由はここにある。

ハン・グィヨン|人とデジタル研究所所長 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2025-03-31 16:04


「The Hankyoreh」 2025-03-31 07:48
■文前大統領「戒厳内乱の狂気の原型、済州4・3から見出せる」
 ハンギョレのホ・ホジュン記者が書いた  
 『4・3、19470301-19540921 長い沈黙の外へ』をSNSで推薦

【写真】文在寅前大統領が2月7日午後、慶尚南道梁山市平山村の自宅でハンギョレと単独インタビューに応じている=カン・チャングァン先任記者//ハンギョレ新聞社

 文在寅(ムン・ジェイン)前大統領が30日、「今回の戒厳内乱が赤裸々に示したような、軍事力で考え方の異なる人々を絶滅させようとする狂気と野蛮の原型を、済州4・3(事件)から見出せる」と述べた。
 文前大統領はこの日フェイスブックへの投稿で、「済州4・3の日を迎えるにあたり、歴史を教えてくれる本」として、ハンギョレのホ・ホジュン先任記者が書いた『4・3、19470301-19540921 長い沈黙の外へ』を推薦した。
文前大統領は「国がこのような状況だから、なかなか本を読む気にならない」としながらも、「しかし、私たちは4・3をきちんと知って記憶することを止めてはならない」と述べた。 それと共に「国家暴力が行った最も大きな悲劇であり、まだ清算されず続いている歴史であるため」とし、「清算されていない歴史は代々受け継がれるもの」だと強調した。
さらに「著者は7年間の取材と生存犠牲者、遺族、目撃者のインタビューをもとに、国際的冷戦体制と南北分断の産物である4・3の時代的背景と性格から、発生原因と展開、米軍政の役割、虐殺の責任者と生き残った人々の話、特に最も苦められた女性たちの話、済州全域とオルレギル(路地)に残っている悲劇の跡、これまで続いている真相究明と名誉回復、 特別再審と個別補償まで、私たちが知るべき4・3の真実を企画記事を書き上げるようにまとめた」とし、「済州4・3をきちんと知るのに最適な本」だと書いた。
 文前大統領は「この本を読んで、済州を訪れる時、いまだに残っているその痕跡を少しでも思い出すことができれば、4・3犠牲者たちと済州島民たちに大きな慰めになるだろう」と締めくくっている。

チョン・ギョンソク記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2025-03-3101:03


「ハンギョレ」 2025-03-31 07:59
■「憲法裁判官の任命遅延は『さらなる戒厳の画策』」韓国最大野党、任命期限を最終通告

【写真】共に民主党のパク・チャンデ院内代表が30日午前、国会で記者懇談会を開き、ハン・ドクス大統領権限代行首相にマ・ウンヒョク憲法裁判官候補の任命を求めている=ユン・ウンシク記者//ハンギョレ新聞社

韓国の最大野党「共に民主党」は、ハン・ドクス大統領権限代行首相のマ・ウンヒョク憲法裁判官候補の任命拒否について、「尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領の復帰に向けた陰謀」であり、「さらなる戒厳の画策」だとし、「重大な決断を下す」と述べた。 民主党がハン権限代行に示した「任命期限」は4月1日。
パク・チャンデ院内代表は30日、国会で記者懇談会を開き、「(ハン権限代行の)マ・ウンヒョク候補の任命拒否は、2人(ムン・ヒョンベ、イ・ミソン)の裁判官が退任した後、大統領が指名する2人の憲法裁判官を任命し、『弾劾棄却』決定に導こうとする工作だ」とし、「『尹錫悦の復帰に向けた陰謀』であり、『さらなる戒厳の画策』だ」と述べた。 さらに「ハン権限代行が4月1日までに憲法守護の責務を履行しなければ、民主党は重大な決断を下す」と語った。 再びハン権限代行に対する弾劾に乗り出すという意味だ。
民主党は4月第1週金曜日の4日を尹大統領罷免宣告の期限に設定している。 党関係者は「(この期限を越えたら)国会はあらゆる権限を使うことになるだろう」と語った。 その「権限」には後任者が指名されない状態で任期が満了する憲法裁判官の場合、任期を延長する案を法制化することも含まれている。 民主党はこのような内容を盛り込んだ憲法裁判所法改正案を31日の法制司法委員会法案審査小委員会と4月1日の法司委全体会議で議決する方針だ。
民主党指導部はただし、一部の初当選議員が主張しているような、マ候補者を任命するまで国務委員を次々と弾劾するという「国務委員連続全員弾劾」は否定した。 パク院内代表は「(連続全員弾核の)実行計画については検討していない」と述べた。 院内指導部関係者は「(全員弾劾は)状況を変えられる実益もなく、国民にも良い印象を与えない」と述べた。
民主党の「ツートップ」は相反するトーンで憲法裁に迅速な罷免決定を求めた。 パク院内代表は「(憲法裁判官が)尹錫悦の罷免ではなく、国を破滅に導く決定を下すなら、新乙巳五賊(1905年の第2次韓日協約に賛同した大韓帝国の5人の閣僚)として歴史に汚名を残すだろう」と主張した。 一方、イ・ジェミョン代表は同日、フェイスブックへの投稿で、「憲法裁判官の皆さんもまた大韓民国の運命を決めるこの重大な局面で、宇宙全体の重さほど重責を背負って不眠の夜を過ごし、苦心を重ねていると考えられる」としたうえで、「速かに国民皆のための賢明な決定をしてくださるよう求める」と述べた。 できるだけ穏健で落ち着いた表現で、憲法裁に「圧力」を加える形を避けながら、尹大統領の早急な罷免を求めたものとみられる。

キ・ミンド記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/politics/politics_general/1189698.html
韓国語原文入力:2025-03-30 20:37


「ハンギョレ」 2025-03-31 07:32
■審判官と刀を握る者に握られた保守政党が民主主義を殺す
 [ソン・ハニョン先任記者の政治舞台裏] 

 保守政党を掌握した法曹人、政治の司法化にアクセル 
 元裁判官イ・フェチャン「元検事の尹錫悦」民主主義を否定 
 キム・ギヒョン、ナ・ギョンウォン、チュ・ジヌ、破棄自判要求で「イ・ジェミョン殺し」

【写真】ハン・ドクス大統領権限代行首相が3月28日、国立大田顕忠院で開かれた第10回西海守護の日記念式で、共に民主党のパク・チャンデ院内代表とあいさつを交わしている=大統領室写真記者団//ハンギョレ新聞社

 人間は貪欲な動物です。ライバルを排除するためには手段と方法を選びません。解放直後、韓国では政治家の暗殺やテロ、暴力が横行しました。野蛮の時代でした。
 独裁者とクーデター勢力は政敵を殺害しました。李承晩(イ・スンマン)大統領は大統領選挙のライバルだった進歩党のチョ・ボンアム党首を死刑にしました。司法殺人でした。
 1961年にクーデターで政権を握った朴正煕(パク・チョンヒ)少将は、民族日報のチョ・ヨンス社長を軍事裁判にかけ、死刑にしました。司法殺人でした。朴正熙大統領は、1971年の大統領選の対立候補だった金大中(キム・デジュン)元議員を拉致して殺そうとしました。1974年に人革党再建委事件を発表し、最高裁判決からわずか18時間後に8人を死刑にしました。司法殺人でした。
 1980年に5・18で政権を握った全斗煥(チョン・ドゥファン)も、金大中元議員を内乱罪で逮捕し、死刑にしようとしました。1987年の民主化以降、ようやく野蛮の時代と司法殺人の時代は終わりました。いや、そう思っていました。違いました。
 軍人たちが退いた空間を法曹人たちが埋めたこどで問題が生じました。法曹人は過去を裁断する人間です。是非を判断して決めることにたけています。白黒論理や善悪二分法に陥りやすいのです。
 判事は審判官です。判事を長くやっていると、自分のことを無謬(むびゅう)の裁断者だと錯覚し、人をやたらと審判しだす傾向があります。検事は刀を握る者です。勝利欲が強い。検事を長くやっていると、人を潜在的な犯罪者と見なすようになる傾向があります。
 1996年4月11日の第15代総選挙を前に、金泳三(キム・ヨンサム)元大統領はイ・フェチャン元首相を新韓国党の選対委の議長に起用しました。1997年には代表に起用しています。自分の後継者にと考えていたのです。
 しかし、イ・フェチャン代表は法曹人の限界を超えられませんでした。大統領候補にはなったものの、息子の兵役問題で支持率が下がりました。焦った彼は「金大中秘密資金事件」を主張しました。当時は、政治資金については互いに触れないという不文律がありました。既成の政治家ではなかったイ・フェチャン候補は、政治資金を犯罪と認識しました。彼が後日まとめた回顧録には、このように書いてあります。
 「徹夜で悩んだ私は、結局、様々な利害打算をやめ、私が抱いてきた一つの原則、すなわち何が正義なのかをもって決断することにした。資料通りなら、金大中総裁のこのような秘密資金の造成と管理は正しいことではなかった」。
 「いくら政界とはいえ、このような偽りと偽善が通じないようにすることこそ正義だと判断した」。

【写真】イ・フェチャン回顧録//ハンギョレ新聞社

 イ・フェチャン候補なりの「正義の決断」は、金泳三大統領がキム・テジョン検察総長に捜査の留保を指示したことで制されました。そんなイ・フェチャン総裁自身は、2002年の大統領選挙を前に、大企業から巨額の現金を積んだ車を丸ごと供与されるという、いわゆる「トラック事件」を引き起こしました。「正義の決断」は偽善だったのです。
 いずれにせよ、イ・フェチャン候補によるDJ秘密資金事件の暴露は、はじまりに過ぎませんでした。1996年の第16代総選挙から主に保守政党を通じて国会に流れ込んだ法曹人たちは、政治に頻繁に司法的物差しを当てました。何かと検察に告訴告発し、裁判所に提訴しました。政治の司法化が急速に進みました。その分だけ政治の領域が狭くなるという、悪循環の沼に陥りました。
 このような流れに乗ってトップにまで上り詰めた人物こそ、まさに尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領です。彼は反政治主義者です。総選挙で惨敗すると、非常戒厳を選択しました。
 親衛クーデターを起こして失敗したなら、大統領職を辞すことこそ正しい道です。しかし、真っ赤なうそを並べ立てて粘っています。薄っぺらな法律の知識を用いて監獄から釈放され、今や憲法裁判所の棄却・却下決定を期待しています。良心のまったくない恥知らずのようです。
 このような中、民主党のイ・ジェミョン代表が選挙法違反事件の控訴審で無罪を言い渡されました。判決内容を見ればわかりますが、そもそも検察の起訴が無理なものでした。にもかかわらず、国民の力は控訴審の担当法廷に人身攻撃とイデオロギー的レッテル貼りをしています。国民の力は保守政党です。保守が裁判所を直接攻撃するのは自己否定です。
 それだけではありません。キム・ギヒョン議員とナ・ギョンウォン議員は3月28日に相次いで記者会見を行い、最高裁にイ・ジェミョン代表の選挙法違反事件を「破棄自判」するよう求めました。国民の力の法律諮問委員長を務めるチュ・ジヌ議員も、3月27日の非常対策委員会で同じことを主張しています。
 3月29日付の朝鮮日報は「最高裁はこの事件を自ら裁判し、有・無罪の確定を」と見出しを付けた社説を掲載し、彼らの主張を後押ししました。破棄自判とはどのようなものでしょうか。刑事訴訟法396条は次のように規定しています。
 「上告法廷は、原審判決を破棄した場合、その訴訟の記録と、原審法廷と第一審法廷が調査した証拠によって判決するに足ると認めた時は、被告事件について自ら判決することができる」
 一審と二審は事実審であり、最高裁判所の裁判は法律審です。原審判決が誤っていると判断すれば、最高裁は破棄して差し戻します。破棄自判することはほぼありません。
 イ・ジェミョン代表が無罪だと最高裁が判断すれば、上告を棄却すればそれで終わりです。有罪と判断したら破棄して差し戻し、裁判をやり直させればよいのです。国民の力と朝鮮日報による破棄自判要求は、イ・ジェミョン代表の有罪と被選挙権の剥奪を前提とするものです。
 一体どうしてこのようなことをしているのでしょうか。イ・ジェミョン代表の早期大統領選への出馬を阻止するためです。最も有力な大統領候補であるイ・ジェミョン代表の政治生命を絶ってほしいと最高裁に請うているのです。一種の殺人依頼です。法治を大義名分として主権在民、民主主義の原理を否定しているのです。成功するでしょうか。最高裁判所の判断にかかっています。
 キム・ギヒョン議員とナ・ギョンウォン議員は元判事です。チュ・ジヌ議員は検事時代に「尹錫悦師団」の一員でしたし、尹錫悦大統領の法律秘書官も務めました。
 国民の力には、彼ら以外にも法曹出身者が非常に多く存在します。クォン・ヨンセ非常対策委員長、クォン・ソンドン院内代表、大邱市(テグシ)のホン・ジュンピョ市長、ハン・ドンフン前代表が元検事です。
 法曹人が保守政党を掌握することの最大の弊害は、やはり政治の司法化を加速させるということです。
 政治の司法化はなぜいけないのでしょうか。民主主義を破壊するからです。国民の代表を選出する大統領選挙や国会議員選挙は民主主義の要です。にもかかわらず、イ・フェチャン総裁は検察による捜査で大統領選をひっくり返そうとしました。尹錫悦大統領は総選挙の結果を認めず、国会を解散しようとしました。

【写真】『民主主義の死に方』韓国版//ハンギョレ新聞社

 米国のスティーブン・レビツキーとダニエル・ジブラットの書いた『民主主義の死に方』という本があります。二人は、民主主義が崩壊した様々な国のケーススタディーから、民主主義崩壊の兆しを示すいくつかのシグナルを見つけました。「候補の選別という役割を投げ捨てた政党」、「ライバルを敵と見なす政治家」、「メディアを攻撃する選出された指導者」などです。
 結局のところ、民主主義を守るのは憲法や法律のような「制度」ではなく、相互寛容や制度的自制のような「規範」だというのが同書の結論です。尹錫悦大統領の非常戒厳とその後に起こる一連の事態を予想して書いたのかと思えるほどです。
 韓国のメディアも政治の司法化に警告を発しています。イ・ジェミョン代表の控訴審での無罪判決の翌朝、東亜日報の社説には「与野党は『政治の司法化』止揚し国政の混乱収拾に尽力を」という小見出しがついていました。中央日報もその翌日の社説に、「与野党、相手に承服要求しながら気に入らなければ不服」、「対立調整能力を失った政治の司法化が生んだ悲喜劇」という小見出しをつけました。

【写真】尹錫悦大統領が2024年12月3日夜、非常戒厳を宣布している=テレビ映像より//ハンギョレ新聞社

 まとめます。政治の司法化は、法曹出身者による法治を大義名分とする民主主義の破壊です。止めなければなりません。どうやって止めればよいのでしょうか。
 第一に、国民抵抗権の発動です。韓国には1960年の4・19革命、1987年の6月抗争、2016~2017年のろうそく革命という、誇るべき歴史があります。もし法曹人が民主主義を破壊したら、国民は立ち上がって彼らを追い出さなければなりません。
 第二に、「レクス・タリオニス(報復法)」です。目には目を、歯には歯をです。12・3非常戒厳は尹錫悦大統領が自身の権限を最大限に利用したクーデターでした。
 国会は野党が多数を占めています。ハン・ドクス首相をはじめとする国務委員を全員弾劾訴追し、行政府をまひさせることが可能です。大統領権限代行がいなければ、国会は法律を意のままに制定し、国会議長は法律を公布することができます。
 もちろん望ましい方策ではありません。今は憲法裁判所が速やかに尹錫悦大統領を罷免し、早期大統領選挙を行うのが最善です。あるいは、尹錫悦大統領が今すぐ大統領職を辞するという方法もあります。大韓民国を守るためです。みなさんはどうお考えですか。

ソン・ハニョン|政治部先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2025-03-30 09:35


「The Hankyoreh」 2025-03-29 07:04
■憲政堕落の時代を終わらせるためには【寄稿】=韓国
 キム・チョン・ヒウォン|米国アリゾナ州立大学教授

【写真】24日ソウル市鍾路区の憲法裁判所の前で、与党「国民の力」のキム・ジョンジェ議員らと最大野党「共に民主党」の関係者らがそれぞれ尹錫悦大統領弾劾反対と賛成のデモを行っている/聯合ニュース

 尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領の当選とともに心配事が増えていった。憲法裁判所の所長と裁判官の全員が彼の任期中に交替させられるとは。憲法裁判官の構成が及ぼす長期的な影響を考えれば、不安感は並大抵のものではなかった。いったいどうして、時計がこのように合わさってしまったのだろうか。国家人権委員会も人事の混乱によって性格が急変したが、憲法裁判所ははたして安全だろうか。9人の裁判官のうち3人は大統領が任命し、3人は最高裁長官が指名した後、大統領が任命する。これらの者たちは、国会の承認議決がなくても大統領が任命すれば、ただちに任期を始める。残りの3人は国会が選出する。手続きがこうであるため、天秤の重心が移ることは明白だった。
 もちろん、尹錫悦大統領が弾劾されれば、このようなことは起きないだろう。しかし、私たちの不安感は、より根本的な問題を意味している。米国の憲法学者ジャック・バルキンが「憲法的時間の周期」と呼んだ問題だ。もし、憲法がつねに一貫して解釈され、適用されるのであれば、憲法裁判官の構成は何か問題になるだろうか。誰が任命されようが中立的に解釈するはずだ。しかし、バルキンによると、憲法的時間の周期は保守と進歩のスペクトルに従って動く。絶望的なことに、彼は2つの周期が政権・政党の興亡と連動していると説明するが、つねにそうだとは限らないと信じている。
 バルキンは私たちに3つの質問を投げかける。「憲法裁判所」を代入してみることもできる。1つ目に、あなたは、司法府がその権力を活用して憲法を解釈して判決を下す方式に同意するか、あるいは、司法府の権力はより統制されるべきだと考えるか。2つ目は、あなたは、司法府は憲法に誠実に従う推論をもとに決定を下すと考えるか、あるいは、法の名のもとで論理を組み立てて政治的偏向を介入させていると考えるか。3つ目は、あなたは、憲法的原則を守るために、司法府は政治過剰を防ぐべきだと考えるか、あるいは、司法府はエリート的かつ非民主的であり、民意を反映できないため、意思決定は政治に任せるべきだと考えるか。
 あなたの答えはどうだろうか。もちろん正解はない。しかし、一つ明らかな点は、現時点では、人々の答えが明確に分かれるということだ。同じ事件をめぐり人々の答えは彼らの政治的立場によって両極端に向かうだろう。与党「国民の力」は弾劾棄却を主張し、最大野党「共に民主党」は弾劾容認を求めるように。戒厳が憲法的に正当な統治行為だと信じている人たちと、戒厳は当然違憲だと信じる人たちが、互いに一歩も引かないように。私たちははたして。激怒せずに対話することができるのだろうか。大韓民国の国民は現在、深刻に分裂している。
 このような分裂があるのは、韓国社会に政治が存在していないためだ。巨大両党が政治ではなく政争に没頭し、相互に暴力を扇動するのだから、人々の分裂と憎しみは当然ではないだろうか。国会は合意形成の能力を喪失したまま、力比べの場に転落し、各政党の支持者は極端な結果に感情的な刺激を受け、よりいっそう怒りをつのらせている。そして、政治的立場によって、事案の有利不利によって、司法府に対する態度も同様に変わる。これらの人たちは、自身の信念に反する宣告結果を決して認めないだろう。
 さらに重要なのは、政治の不在が司法府の機能自体に影響を与えていることだ。政治的交渉が消え、分極化が激化すれば、司法機関も憲法を守る意志と能力を失うからだ。憲法精神や法治よりも政治的利害が先行し、政治的対立が尖鋭なほど、負担はさらに重くなる。裁判官が政治的対立と党派争いをめぐり対立する可能性が高まり、政権の政策基調を意識することになる。法理と手続きに対する解釈も、政治指向によって変わることになりうる。つまり、私たちが憲法裁判官の構成を心配して不安に感じるのは、結局のところ、熟考と交渉を可能にする成熟した政治が存在していないためだ。
 各種の政治的要求を突きつける両党の暴走を制御できず、最小限の規範が軽く無視され、相反する結論を下したとして敵を罵倒する社会では、司法府はまともに機能できない。極端な対立が消え、様々な政党の声が尊重され、公益のために党派を越えた合意を引き出すべきだ。それでこそ、司法府が政治路線に振り回されることなく、権力の顔色をうかがわずにすむ。憲政堕落の時代を終わらせるためには、政治の回復が切実に求められる。憲法が政治を後押しするように、政治も憲法を守らなければならない。

キム・チョン・ヒウォン|米国アリゾナ州立大学教授 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2025-03-26 19:08


「The Hankyoreh」 2025-03-27 09:31
■【社説】韓国最大野党代表、選挙法違反裁判で無罪、「政治検察」の起訴が有罪だ

【写真】共に民主党のイ・ジェミョン代表が26日午前、ソウル瑞草区のソウル高等裁判所で開かれた公職選挙法違反の二審宣告公判のため、裁判所に移動している=写真共同取材団//ハンギョレ新聞社

 韓国の最大野党「共に民主党」のイ・ジェミョン代表が、公職選挙法違反事件の控訴審裁判で、無罪を言い渡された。懲役1年に執行猶予2年という一審の有罪判決が完全に覆された。尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権と一体となってイ代表を徹底的に捜査した検察は、異例にも落選した大統領選候補に狙いを定め、選挙法違反で起訴した。今回の判決で、このような検察の政治報復行為が有罪判決を受けたも同然だ。
 26日、ソウル高裁刑事6-2部(チェ・ウンジョン、イ・イェスル、チョン・ジェオ部長判事)は、イ・ジェミョン代表が大統領選挙当時、キム・ムンギ元城南(ソンナム)都市開発公社開発第1処長を「知らなかった」とした発言と、城南市柏ヒョン洞(ペクヒョンドン)の用途変更過程で「国土交通部から脅された」とした発言は、公職選挙法における虚偽事実の公表行為に該当しないと判決を下した。キム元処長関連発言はその人を知っているかどうかという「認識」に当たるものであり、「行為」に関する虚偽の発言を処罰するようにした公職選挙法の対象ではないとし、国土部関連発言は誇張されたものだが、虚偽とはみられないと判断した。検察の無理な起訴に、「自動販売機」のようにそれに応えた一審とは異なり、極めて常識的な判決だ。
 検察は一審裁判の過程で公職選挙法で「認識」を処罰できないという反論を受け、「交遊行為」という聞きなれない言葉を作り、公訴状を変更した。柏ヒョン洞関連の発言も、選挙運動期間ではなく、国政監査の途中に出た答弁を問題視したものだ。そもそも、検察が大統領選挙で落選した候補の選挙法違反の疑いをこのように執拗に捜査・起訴したこと自体が政治報復と言わざるを得ない。
 イ代表は現在、8件の事件で12件の容疑が持たれており、計5件の裁判にかけられている。イ代表の妻のキム・ヘギョン氏は法人カード10万4千ウォン(約1万645円)を使った容疑で起訴された。検察は捜査過程で数百回の家宅捜索を行い、別件のまた別件の捜査へとつなげた。柏ヒョン洞事件の場合、20年以上経った事件を掘り出したものだ。主要な証人に対する検察の司法取引疑惑まで持ち上がっている。イ代表に対する検察の捜査と起訴は膨大な規模と執拗さだけでも、類例のない政略的捜査・起訴として記録されるだろう。
 一方、検察は刑法上最も重大な犯罪である内乱首謀の被疑者を露骨に釈放し、(尹大統領夫人の)キム・ゴンヒ女史の明白な犯罪容疑には目をつぶっている。「国民の検察」ではなく、ひたすら「尹錫悦(ユン・ソクヨル)の検察」であることを自ら世界に暴露したわけだ。尹錫悦政権で克明に現れた検察の政治的・偏向的行動は、必ず応分の代償を払うことになるだろう。

(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力: 2025-03-26 18:37
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ノーベル賞受賞のハン・ガン「尹錫悦罷免せよ」414人の作家が異例の共同声明

2025年03月28日 | 韓国で
「The Hankyoreh」 2025-03-27 08:37
■ノーベル賞受賞のハン・ガン「尹錫悦罷免せよ」414人の作家が異例の共同声明
 キム・チョヨプ、キム・ヘスン、ナ・ヒドク、ペク・ヒナ、シン・ヒョンチョルら 
主導団体なし 共同声明に「一行声明」

【写真】作家のハン・ガンさん/聯合ニュース

 「傷つけられてはならない命、自由、平和の価値を信じています。罷免は普遍的価値を守るものです」(ハン・ガンさん)
 憲法裁判所による尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領の弾劾審判の決定言い渡しが遅れている中、ハン・ガンさんをはじめとする詩、小説、評論、児童青少年、演劇、漫画部門を網羅する414人の作家が「尹錫悦の即時罷免」を求める声明を発表した。
 彼らは25日の共同声明で「被訴追人の尹錫悦の大統領職罷免についての憲法裁判所の弾劾言い渡しが理由もなく遅れている。2024年12月3日の違法な非常戒厳から100日が過ぎる間に市民の日常は崩壊し、大韓民国の民主主義は危機を迎えている」として、「被訴追人尹錫悦の大統領職罷免は当然だ。これ以上遅れてはならず、罷免以外の決定はありえず、あってもならない」と述べた。
 かつて民主化運動の先頭に立った作家会議や同人・団体の主導もなしに、様々なジャンルにまたがって自分の創作世界の外に向かってこのように作家たちが結集して声をあげた例はこれまでなかった。作家のハン・ガンさんにとっては、ノーベル文学賞受賞後、初めての対外発言(国内)となる。414人の中には1990年代~2000年代生まれの作家も少なくない。
 彼らは共同声明以外にも、それぞれが一行声明を発表した。1970年代末に戒厳の蛮行を身をもって経験した詩人の金恵順(キム・ヘスン)さんは、「私たちに全世界の人々に対してこれ以上恥をかかせないで、お願いだから」と記している。韓国人として初めてアンデルセン賞を受賞(2022)した絵本作家のイ・スジさんは、「私たちはみなそれぞれの場でこの無道な時代を静かに耐えています。毎日繰り返しています。この状況で本が何だ、作業が何だ、芸術が何だ! 心から守ってきた民主主義、常識的な毎日の暮らし、そしてすべての私たちのために、被訴追人尹錫悦の大統領職罷免を直ちに求めます!」と述べている。

【写真】詩人の金恵順さん=資料写真//ハンギョレ新聞社

 414の個別声明は絶望、怒り、しかし希望をも表現している。詩人のナ・ヒドクさんは「無道な尹錫悦と検察権力にこれ以上この国を任せておくことはできない。憲法裁判所は内乱首魁(しゅかい)を直ちに罷免せよ!」、作家のキム・ヨンスさんは「遅くとも来週の今頃は、正義と平和に満ちた夜でありますように」、作家のキム・チョヨプさんは「どうか迅速な罷免を求めます。本当にストレスがたまってこの一行も書けそうにありません。早く罷免して!」、韓国の作家として初めてアストリッド・リンドグレーン記念文学賞(2020)を受賞した絵本作家のペク・ヒナさんは「憲法裁判所に要求します。『大統領尹錫悦を罷免せよ』」、漫画家のミカンさんは「憲法裁の言い渡し遅延で日ごと国民の不安は高まり、極右の暴力は深刻化している。今すぐ内乱首謀者尹錫悦を罷免して民主主義を守り抜こう!」、詩人のオ・ソンウンさんは「私たちが越えようとしているのは、つまらない権力などではなく、野蛮という名の色あせた塀である」と述べている。

【写真】絵本作家のイ・スジさん=ピリョンソ提供//ハンギョレ新聞社

 文学評論家のシン・ヒョンチョルさんは、ソポクレスの作品『アンティゴネー』を引用して「せめて友人の中でもあなたのことを耐えられる者たちの前で暴れなさい」と述べている。2000年代生まれの詩人のソン・ヒジさんは、「21世紀の大韓民国の民主主義精神が、憲法の重さと正しさが消えていないことを信じて、尹錫悦大統領の弾劾を求めます」と書いている。
 作家たちは、憲法裁の言い渡し遅延と連動した極右・暴力勢力の蠢動(しゅんどう)を懸念しつつ、「深刻な社会の混乱による精神的、経済的被害もまた、そっくりそのまま国民に覆いかぶさってきている」として、「ここに、民主主義の回復と内乱の終息を願う作家たちは、志をひとつにしてそれぞれの声をあげる。『尹錫悦の罷免を求める作家たち』という旗印の下、414人の作家が集った」と述べている。

【写真】25日、ソウル鍾路区の光化門座り込み村の韓国作家会議のテント前で、韓国作家会議と尹錫悦退陣芸術行動の共催する「全国文学人2487人緊急時局宣言」が行われている=キム・ミョンファンさん(ソウル大学名誉教授)提供//ハンギョレ新聞社

 一方、全国の2487人の文学者はこの日、韓国作家会議のソン・ギョンドン事務総長による尹錫悦罷免を求める断食座り込みの解除に際し、「今はスピードが正義だ! 憲法裁は尹錫悦を直ちに罷免せよ!」と題する緊急時局宣言を発表した。

イム・インテク記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2025-03-25 16:36


「The Hankyoreh」 2025-03-27 08:55
■「憲法裁、これ以上遅らせると危機」…尹錫悦弾劾の遅れで市民の不安が最高潮

【写真】「尹錫悦退陣全国大学生時局会議」などの大学生青年団体の会員たちが25日、ソウル光化門前での民主労総の27日のゼネストを支持する記者会見の終了後、「尹錫悦罷免」などと叫びながら憲法裁判所まで三歩一拝をおこなっている=ユン・ウンシク先任記者//ハンギョレ新聞社

 尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領の弾劾審判の弁論が終了して1カ月たった25日にも、憲法裁判所は尹大統領の弾劾事件の言い渡しについて何ら公示しなかった。尹大統領の弾劾訴追日から100日が過ぎても結論が出ていないことで市民の不安は高まっており、迅速な言い渡しを求める声があがっている。憲法裁はこの日も、午後2時から裁判官評議をおこなった。別の事件の弁論や言い渡しがある日も、時間を割いて評議を続けている。盧武鉉(ノ・ムヒョン)元大統領、朴槿恵(パク・クネ)元大統領の弾劾言い渡しが最後の弁論から2週間以内に行われたことと比較すると、「過去最長級の評議」だ。非常戒厳の宣布など、尹大統領の行為の違憲性、違法性は明白なため、全員一致による結論が予想されたものの、実際には裁判官が意見をまとめるのに苦労している、との分析が出てくる理由はここにある。
 前日のハン・ドクス首相弾劾事件の決定で、裁判官の意見が罷免、棄却、却下と割れたことで、市民の不安も高まっている。特にキム・ボクヒョン裁判官が、ハン首相による裁判官不任命は違憲ではないと判断したことが、懸念を高めている。保守的だと評されるチョン・ヒョンシク、チョ・ハンチャンの両裁判官にキム裁判官まで加わると、尹大統領の弾劾事件は罷免のための定足数(6人)が満たせなくなる。大学生のシム・ギュウォンさん(24)はこの日、ハンギョレの電話取材に対し、「(キム裁判官がハン首相による)裁判官の不任命を違憲ではないと判断したのは、常識的に考えて理解できない」とし、「8対0で弾劾されてこそ、その後の社会統合が早期に実現するはずなのに、昨日の決定文を読むと8対0が出ないかもしれないという気がして、このまま『(尹大統領の弾劾事件が)棄却されたら、これからどうなるのか』という不安も感じる」と話した。会社員のパク・チヘさん(37)も、「尹大統領は朴槿恵元大統領以上の違法をやらかしたのに、なぜこのように(憲法裁が決定言い渡しを)引き延ばしているのか分からない。本当にこのままでは弾劾が棄却されるのではないかと心配だし、ストレスがたまる」と述べた。Yさん(27)は「ハン・ドクスの弾劾審判より尹錫悦の弾劾審判の方が急を要するのに、本来は急を要することから処理すべきなのではないか。尹大統領の弾劾が棄却されたら2度目の戒厳をすることもありうるという気がして不安だ」と話した。
 憲法裁がこの日も言い渡し期日を通知しなかったことで、今週の言い渡しが可能な日は27日と28日だけとなった。憲法裁は月例定期宣告日の27日に、40件の憲法訴願について決定を言い渡す予定で、時刻は午後2時から午前10時へと繰り上げた。同日も評議が行われる可能性が高い。28日にも言い渡されなければ、結論は4月に持ち越される。ムン・ヒョンベ憲法裁判所長権限代行とイ・ミソン裁判官の退任日は4月18日だ。
 法曹界は、12・3非常戒厳後に崩壊した憲政秩序を憲法裁は尹大統領の罷免によって回復させなければならないとして、早期の言い渡しを求めている。「憲政回復のための憲法学者会議」は今月20日の緊急声明で、「憲法裁がこれ以上遅らせれば危機がさらに高まるだけだ。石橋をたたいて渡ろうとして、たたき過ぎて壊れてしまうと渡ることさえできなくなる。果敢な決断が必要な時」だとして、「尹大統領を直ちに罷免し、憲政を早急に回復しなければならない」と述べた。元憲法研究官の建国大学法学専門大学院のスン・イド教授は、「政治的対立を憲政秩序の中で解消し、それによって分裂した社会を早期に統合することが憲法裁判の主な機能であることを考慮すれば、憲法裁は審理を早急にまとめる必要がある」と語った。

オ・ヨンソ、コ・ナリン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2025-03-26 05:00


「The Hankyoreh」 2025-03-25 13:49
■極右・右傾化時代の「福祉国家」の道【寄稿】=韓国
 ユン・ホンシク|仁荷大学社会福祉学科教授・福祉国家再構造化研究センター長

【写真】尹錫悦大統領がソウル拘置所から釈放された今月8日夜、尹大統領の支持者たちがソウル龍山区の官邸入り口で行われた集会で太極旗と星条旗を振っている=キム・ヨンウォン記者//ハンギョレ新聞社

 恐ろしい勢いで極右が拡散している。憲法裁判所は民主的憲政秩序を破壊しようと決心しない限り、全員一致で尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領の弾劾を認容すべきだ。異論の余地はない。しかし国民の40%近く、保守的有権者でいえば72%が、弾劾に反対している(ギャラップリポート)。さらに深刻なのは、政権与党である「国民の力」の国会議員の絶対多数が弾劾に反対していることだ。
 国民の力と保守主流は、自由民主主義の憲政秩序を暴力的にじゅうりんした尹錫悦の弾劾に反対することで、自由民主主義体制を否定する「極端な極右」への道を歩んでいる。ポピュリズムと極右を研究する専門家によると、この「極右」集団は自由民主主義を拒否し、権威主義または独裁体制を好むという特徴を持つ。自由民主主義体制を転覆するためには暴力を使うことをためらわないということも、「極右」の重要な特性だ。ソウル西部地方裁判所への乱入と憲法裁判官に対する威嚇を、少数の一時的な逸脱とみなすことができない理由はここにある。韓国の民主主義は絶体絶命の危機に直面しているのだ。
 しかし、脅かされているのは民主主義だけではない。民主主義が危機に瀕すると、民主化後にはじまった福祉国家への移行も深刻な挑戦に直面せざるを得ない。特に2010年の無償給食論争を機として韓国社会が暗黙のうちに合意してきた「普遍的福祉国家」の実現は、極右の拡散とは共存しえない。
 近ごろ欧州では、極右政党の急浮上が移民を公的福祉から排除する「福祉ショービニズム(Welfare Chauvinism)」現象として表れている。これは公的福祉の提供を自国民(自民族)に限定すべきだという主張を含んでおり、他者との民族的、文化的境界を明確に設定するというやり方で移民を排除する行為を拡散させている。極右政党はこのような「福祉ショービニズム」によって、既成政界のアイデンティティ・ポリティクスから疎外された肉体労働者やぜい弱階層などを結束させることで、政治的動力を高めている。
 このようにみると、公的福祉が十分に拡大されておらず、移民問題も中心的な政治議題ではない韓国社会における極右の浮上は、欧州とは異なり「福祉ショービニズム」としては表れない可能性もある。しかし極右の本質は、単に移民と外国人を排除するというところにあるのではない。極右の本質は、私たちと他者を区別するところにある。イスラム移民がほとんどいないポーランドでは、イスラム移民に対する極右の攻撃は一時的なもので、その対象は性的マイノリティーへと移った。社会的、歴史的脈絡によって極右が排除する他者の定義はいくらでも変わりうるということだ。自国民も例外ではない。
 極右と連動した「福祉ショービニズム」も同じだ。いくらでも様々なかたちで自国民が資格のない者とみなされ、公的福祉の対象から排除されうる。欧州の極右政党とその支持者たちが市民権にもとづく福祉よりも労働連係福祉などの条件付き福祉の方を好む理由はここにある。このことは、「福祉ショービニズム」がいつでも国民の特定集団の排除へと拡大しうることを示している。これこそ、「福祉ショービニズム」が外国人を排除する「福祉排他主義」であると同時に、特定の条件を満たせない社会的弱者や少数集団を排除する「福祉排除主義」の性格を帯びる理由だ。
 すなわち、「極右」が保守の主流となると、福祉の対象を資産や所得などのような厳格な条件を満たした「資格のある貧者」に限定することにより、福祉制度の普遍性を脅かす可能性が高い。福祉は経済成長を妨害し、モラルハザードを誘発するという認識が依然として強い韓国社会における極右の拡散は、韓国の福祉国家体制を厳格な選別主義へと再編し、社会的対立と不平等をさらに深める恐れがある。
 極右の拡散は一時的な逸脱ではない。尹錫悦が弾劾されたからといって終わるものではなおさらない。右傾化の時代だ。極右の時代だ。韓国はもちろん、全世界で極右が支配的なイデオロギーとして浮上している今、韓国の福祉国家体制はこれまで歩んできた道を歩んでゆけるのだろうか。政権掌握が有力な「共に民主党」は、自ら中道保守政党だと宣言した。国民の力は極右に捕らえられている。右傾化する政党と極右に捕らえられた政党が、金融投資所得税の廃止にとどまらず、相続税はもちろん所得税すらも大規模減税を推進している。これが現実だ。韓国の福祉国家体制は存立基盤そのものを失う危機に瀕している。福祉国家を目指す市民的連帯を拡大する政治的戦略が切に求められている。

ユン・ホンシク|仁荷大学社会福祉学科教授・福祉国家再構造化研究センター長 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2025-03-23 18:51


「The Hankyoreh」 2025-03-25 08:55
■尹錫悦支持者と友人になれるだろうか【寄稿】
 パク・クォニル|メディア社会学者

【写真】尹錫悦大統領がソウル拘置所から釈放された8日夕方、尹大統領の支持者たちがソウル市龍山区にある大統領官邸の入口近くで開かれた集会に参加し、太極旗と星条旗を振っている=キム・ヨンウォン記者//ハンギョレ新聞社

 尹錫悦(ユン・ソクヨル)支持者と友人になれるだろうか。これは、内乱犯と友人になろうという話ではない。尹錫悦一味には見せかけだけでも「改悛の情」は見られず、法廷の最高刑で手本を示すべきだ。しかし、彼らを支持した人たちは数百万人おり、私たちは彼らと同じ国でずっと生きていかなければならない。ここで言う「友人になる」とは、「親友」になれということではなく、最小限の信頼を共有する対話相手を意味する。
 「尹錫悦支持者」は一種の隠喩でもある。彼らは「私たち」とはまったく違う考え方で生きている存在、すなわち「他者」だ。他者には2種類ある。「抽象的他者」と「具体的他者」だ。抽象的他者は歓待の対象だが、具体的他者は忌まわしい存在だ。私は今、「具体的他者」と友人になれるかを問うている。2025年3月に私たちが目撃している類似内戦は、具体的他者を排除し、「私たち」だけの正義と部族的な真理だけを同語反復してきた結果だ。したがって、この問いは「私たち」だけでなく「彼ら」、すなわち「尹錫悦支持者」にも適用される。「あなたは尹錫悦大統領に反対する人と友人になれるか?」
 「他者」という言葉には、「歓待」という言葉がほとんど自動的に付いてくる。人類学者のキム・ヒョンギョンは、ジャック・デリダがかつて問題化した「絶対的な歓待」、すなわち、私的空間の無条件な開放が実現不可能であることを認める。それでも、「自分の存在を否認されている人々に『絶対的に』席を与えること、つまり社会の中に奪われることのない席/場所を準備すること」(『人、場所、歓待』)は必要かつ可能だと述べている。要するに歓待とは、他者の公的な席をまるごと保障することだ。
 ただし、「尹錫悦支持者」という他者は、「自分の存在を否認される人」、たとえば難民や移住民、性的マイノリティなどではない。むしろ、そのような弱者やマイノリティに対する歓待に反対する主流の市民に近い。一方、弱者やマイノリティに限定したとしても、存在を否認された他者の公的な席を「絶対的に」保障することは、単に法的・制度的条件を準備するだけに留まらない。それは、主流市民の日常では見慣れない形状・声・臭いが侵入してくる身体の経験だ。歓待という概念だけでは、このような他者の問題を適切に扱うことは難しい。このとき他者は、人類学者のジェームズ・ファーガソンの言う「現存」(presence)の問題になる。現存とは、簡単に言えば「ここに共にいる」、すなわち、他人と物理的に隣接する状態だ。現存は狩猟採集社会から存在してきた分配原理だ。それは、崇高な倫理的責務のようなものではなく、出勤途中の満員のバスや、「夜遅くに酒に酔って自宅に押しかけてきた弟分」が作り出した、仕方のない、しかし不便でいらいらさせられる共存に対する現実的な義務だ。
 現存の原理が持つ長所は、高潔な道徳を要求しないことだ。自分のスペースを譲歩したり、軽く目礼をしたりする理由は、ただその人がそこにいるからだ。歓待が倫理的決断だとすれば、現存は日常における少しの不便や苛立ちに耐えることに近い。しかし、その日常を一つひとつ積み上げていくこと、それを当然とみなす社会の雰囲気こそ、共存の近道だ。まさにそのような日常のもとで、とても友人になれそうにない人が友人になることが起きる。米国の黒人音楽家のダリル・デイヴィスは、30年間、白人優越主義のテロ組織「KKK」のメンバーに会って友人になり、彼と友人になった200人近くの人たちは、後に組織を脱退した。ドイツのジャーナリストのバスティアン・ベルブナーの著書『180度:憎悪に反対する物語』(未邦訳)には、ネオナチと左派のパンクが「親友」になり、難民を憎む人と難民が「後天的家族」になったエピソードが出てくる。彼らの友情のほとんどは大きな歓待ではなく、違和感や不便さを我慢して相手の話を聞くことから始まった。もちろん、人も世界もそんなに簡単には変わらず、「友人になる」ことの効果を過度に期待しては困る。明らかなのは、深い接触(deep contact)と豊富な感情的交流は、人間を変えることができるということだ。
 引き裂かれた共同体は癒されることができ、より良い社会は可能だ。このために私たちは、権力者にこれまでよりはるかに残酷になる必要があり、仲間の市民には、これまでよりはるかに寛大にならなければならない。歴史を省みると、敵対的集団との衝突は、時には身震いするほどのおぞましい虐殺(ジェノサイド)につながった。部族主義が極端になるとき、人間という種は底が見え、最も醜悪な存在になる。敵対の圧力を弱めることが急がれる理由だ。

パク・クォニル|メディア社会学者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2025-03-14 14:51


「The Hankyoreh」 2025-03-25 09:58
■極右ポピュリズムの社会心理学【寄稿】
 シン・ヨンジョン|漢陽大学医学部教授

【写真】内乱罪の疑いが持たれている尹錫悦大統領の令状実質審査が開かれた1月18日午後、ソウル麻浦区のソウル西部地裁周辺で、尹大統領擁護デモ隊がスローガンを叫んでいる=キム・ヨンウォン記者//ハンギョレ新聞社

 先週の土曜日、集会に参加するために光化門(クァンファムン)に行ったところ、偶然太極旗と星条旗を振っている人たちの間を横切ることになった。以前の「太極旗部隊」より規模と声が大きくなり、まれに若者たちの姿も見えた。極右ポピュリズムの登場が世界を騒がしている時代を迎えている。韓国も例外ではない。大統領弾劾の是非にかかわらず、私たちは長い間、彼らと共に生きていくことになるだろう。
 女性学・平和学研究社のチョン・ヒジンは、極右と共に生きていく方法は「断固たる対処」ではなく、「共存」だと主張する。もちろんその共存は彼らに同意するのではなく、「『私』を消すという人々、『私』の死を願うという彼らの意見を尊重し、彼らと共に生きていくという覚悟を持ち合わせた共存」だ。数多くのコメントで賛否が分かれたが、その共存が勝つことを願う。
 しかし、共存だけでは足りない。尹錫悦(ユン・ソクヨル)と彼を取り巻く集団が増幅させた極右ポピュリズムの攻勢は過去にもあったし、今後も続くだろうが、その規模と弊害を減らさなければならない。そのためには、まず発生の原因と作動原理を理解しなければならない。
 社会心理学者のセラ・ジェイと同僚たちは、近年世界で猛威を振るっている極右ポピュリズムが、不平等という燃料の供給を受けて作動しているという研究結果を発表した。不平等は社会の凝集力と信頼を弱めるが、これは貧しい人々に相対的剥奪感を抱かせるだけでなく、富裕層にも自分が低所得層に墜落するかもしれないという不安を抱かせるという。極右が貧困層だけでなく富裕層を含む多様な所得集団でも現れるのもそのような理由だ。これは不平等な社会を描いたエドワード・ベラミーの小説に登場する馬車と同じだ。人々は馬車に乗るためにもがき、馬車に乗った人たちはその席を子孫に受け継がせることを生涯最高の目標にしながらも、馬車がガタガタと揺れるたびに馬車から落ちるのではないかと不安に思う。
 この不安は、北朝鮮だけでなく移住者、中国人、同性愛者のような「外部者」に対する非難とヘイト(嫌悪)へと発展し、「自分が神より上と主張する牧師」のように、カリスマのある集団に合流するよう導く。一方では、自分が道徳的だと信じたいがため、彼らは「愛国者」のように振る舞う。彼らが太極旗を持って行進するのはそのためだ。この「道徳感」は人々を集める役割を果たし、違法行為をも正当化する。また、貧しい人々でさえ、国の財政が厳しくなることを懸念して不平等を減らす福祉政策に反対し、緊縮政策に賛成する。これは再び不平等を強固にする悪循環を生む。
 この過程で、大衆の不安と脅威感をむしろ増幅させ、自分たちの政治的利益のため活用する極右政治家の役割は欠かせない。彼らは過去の郷愁を再び呼び起こし、不平等の拡大と政治、経済政策の失敗をむしろ相手の政治集団のせいにし、「敵」に対して過激な措置が必要だと主張する。極右政治家たちは不平等を減らすことにも関心を示さない。それが彼らにとって政治の動力であるからだ。
 極右の影響力の拡大は逆説的に、従来の民主政治勢力が市民の不安を静め、希望を作り出すことに失敗したことの裏返しであるとともに、不平等を減らすために施行したこれまでの累進税や相続税のような租税制度、社会保障制度が十分でなかったことを示すものだ。
 不平等は金持ちと貧乏人を問わず、全員に破壊的な問題をもたらす。韓国も上位1%が全体の富の22.3%を占める代表的な不平等国家になった。様々な理由があるだろうが、以前は労働でお金を稼いでいたが、今やお金で金を稼ぐ世の中になり、新自由主義は極めて巧妙に不平等を当たり前のものにすることに成功したためだ。この状況を打開するためには、個人の所得と資産を貧しい人の10倍以下に制限するような画期的な政策が必要だ。とんでもない話だと思われるかもしれないが、経済学者のイングリッド・ロベインズも富の制限線を設けることを提案している。具体的には「政治的制限線」として資産基準1千万ドル、「倫理的制限線」として資産基準100万ドルを上限に設定する。極端な富は不正な金であり、貧しい人々を引き続き貧困に縛り付け、民主主義を蚕食し、環境危機の主な原因であるためだ。そのような点で、極右勢力は不平等が作り出した終末論的危機の信号弾であるわけだ。私たちが極右との共存だけを語ることができない理由だ。
 「人類が将来生き残れるかどうかは、私たちがどれだけ互いに平等に関係を結ぶことができるかにかかっている」。黒人のクィア人権活動家であり、詩人、図書館司書、教授、戦士、2人の子どもの母親だったオードリー・ロードの言葉だ。私は彼女の言うことが真実だと信じている。

シン・ヨンジョン|漢陽大学医学部教授(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2025-03-24 08:56


「The Hankyoreh」 2025-03-18 09:26
■「憲法違反の重大性」と「国民の信任に背いたか」が尹大統領弾劾審判の結果を分ける

【写真】朴槿恵元大統領弾劾審判第11回弁論期日の2017年2月7日午前、当時のイ・ジョンミ憲法裁判所長権限代行がソウル鍾路区の憲法裁判所審判廷で裁判を主宰している=写真共同取材団//ハンギョレ新聞社

 「これに対し、裁判官全会一致の意見で主文を宣告します。主文。被請求人の大統領朴槿恵(パク・クネ)を罷免する」
 2017年3月10日、憲法裁判所はこのように朴元大統領の罷免を決めた。過去の大統領弾劾事件は、尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領弾劾裁判の見通しを立てる判例になる。憲法裁は2回にわたる大統領弾劾事件で、大統領が憲法・法律に違反したか▽違反行為が憲法守護の観点から重大な意味を持つか▽国民の信任に背いたかを判断し、弾劾の可否を決めた。
 2004年の盧武鉉(ノ・ムヒョン)元大統領と2017年の朴槿恵元大統領弾劾裁判で認容の可否を分けたのは「憲法違反の重大性」だった。
 憲法裁は盧元大統領の弾劾裁判で、職務執行における憲法・法律違反があり▽法律違反が罷免を正当化するほど重大でなければならないという要件を示した。当時、憲法裁は「(当時与党の)開かれたウリ党に票を与えられる道があるなら、法律に反しない限り尽力したい」という盧元大統領の発言が公職選挙法における公務員の中立義務に違反したが、記者の質問に対する受動的かつ非計画的答弁だったとし、自由民主的な基本秩序に対する積極的な違反行為には当たらないと判断した。
 憲法裁は「罷免決定を通じて憲法を守護し、損傷した憲法秩序を再び回復することが求められるほど、大統領の法律違反行為が憲法守護の観点から重大な意味を持つとみることはできない」とし、「国民の信任を任期中に再び剥奪しなければならないほど、国民の信任に背いた場合に該当するともみられず、大統領に対する罷免決定を正当化する理由は存在しない」と判断した。
 2017年の朴元大統領弾劾は、憲法裁が提示した「重大性の基準」を越える初めての事例だった。憲法裁は朴元大統領の訴追事由4種類のうち「私人の国政介入を許したことと、大統領権限の乱用」が法律違反であり大統領職を罷免するほど重大と判断した。
 憲法裁は「国民から委任された権限を私的用途で乱用し、国家機関と組織を動員した点で、法違反の程度が非常に厳重だ」とし、「代議民主制の原理と法治主義の精神を損ねた行為で、大統領としての公益実現の義務に対する重大な違反」だと指摘した。
 憲法裁は大統領の真摯さが見られない国民向け謝罪や非協力的態度も、「憲法守護の意志」がないという判断の根拠として挙げた。憲法裁は「(国民向け謝罪が)客観的事実と一致せず、真摯さが足りなかった」とし、「検察や特別検察官の調査に応じず、大統領府に対する強制捜査も拒否し、被請求人に対する取り調べが行われなかった」と指摘した。憲法裁は「この事件の憲法と法律違反行為は国民の信任に背いた行為であり、憲法守護の観点から容認できない重大な法律違反行為」だとし、「罷免によって得られる憲法守護の利益が、大統領罷免にともなう国家的損失を圧倒するほど大きい」とみた。
 今回の尹大統領の弾劾審判でも憲法裁は12・3非常戒厳が憲法と法律に違反したのか、違反したとすれば、憲法守護の観点で重大な意味を持つのか、国民の信任に背いたのかなどを判断することになる。
 先月18日の9回目の弁論で、国会代理人団のキム・ジンハン弁護士は、「状況に合わない非常戒厳宣布は独裁政治であり、これだけでも罷免を正当化できる重大な違憲行為」だとし、「国会侵奪、国会妨害の試み、非常立法機構の設立計画は全面的に憲法違反行為であり、民主主義を解体しようとする試み」だと指摘した。また「一連の重大な憲法違反行為は明らかに憲法守護の責任に背き、違反した行為であるだけでなく、国民の信頼を重大に損ねた行為」だとし、「『何の被害も与えなかった戒厳』という主張は、憲法守護の意志が全く見られないもの」だと述べた。尹大統領の非常戒厳宣布は重大な憲法違反であり、国民の信任に背く行為ということだ。

チャン・ヒョンウン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2025-03-17 19:51


「The Hankyoreh」 2025-03-18 07:17
■韓国の政権与党「国民の力」はいかに極右政党となったのか
 朴槿恵弾劾後、ファン・ギョアン体制で極右と結託 
 2020年の総選挙敗北で「一時的に距離置く」 
 「尹錫悦ポピュリズム」失敗で極右再活性化 
 2024年の総選挙惨敗、内乱と弾劾を経て暴走

【写真】ソウル汝矣島の「国民の力」本部=資料写真//ハンギョレ新聞社

 与党「国民の力」は、自由民主主義を政体の基本原理とする大韓民国の政権与党だ。軍事政権をルーツとする権威主義勢力と嶺南(ヨンナム=慶尚道)を基盤とする自由主義勢力が連合した民主自由党(1990~1995年)を継承している。理念的には反共・国家主義的傾向を帯びつつ、経済的には大企業親和路線を歩んできた。北朝鮮という変数の影響でマッカーシズム的傾向が際立つ時期もあったが、この党を「極右」と規定する人はごく少数だった。権力分立と法治、個人の自由の保障を核とする現行の憲政秩序を否定したり、そこからの離脱を試みたりしたことはないからだ。
 状況は12・3内乱を経て急変した。多くの人々が国民の力を「極右政党」と呼ぶことをためらわない。軍を動員した憲政破壊の試みを擁護し、憲法裁判所と裁判所の権威を揺さぶりつつ代議制民主主義の根幹である選挙システムに対する不信を助長し、潜伏していた排外主義(反中国)とマイノリティー嫌悪をあおるという、典型的な極右政党の態度を示しているからだ。

◆前兆
 すべてを12・3内乱という「政治的急変事態」のせいにできるだろうか。それはできない。専門家たちは概して、「国民の力の極右化」の機運は文在寅(ムン・ジェイン)政権の発足(2017年)を前後して芽生えたと考えている。2016年の総選挙での敗北と朴槿恵(パク・クネ)大統領の弾劾、セヌリ党の分裂を経て保守政党が院内で少数派となったこと、南北関係の急速な雪解けと市民社会での差別禁止法制定の動きなどに刺激された反共・反北朝鮮、極右プロテスタント集団が、「広場に結集した力」を背景として政治勢力化を図っていた時期だ。
 転換点は2019年、自由韓国党のファン・ギョアン体制の登場だった。この体制は、文在寅政権時代の中盤における「保守の没落」という危機意識の中で、周辺部にとどまっていた過激主義勢力が、規模と影響力を育みつつ、主流保守政党を圧迫していく流れの中で誕生した。実際に、自由韓国党が場外闘争に本格突入した2019~2020年は、韓国キリスト教総連合会の代表会長に就任したチョン・グァンフン牧師が太極旗部隊と共に全国組織を作り、「文在寅下野署名」を集めはじめた時期と重なる。2019年10月からは自由韓国党の元・現職議員たちもこの流れに合流する。当時、チョン・グァンフン牧師の集会でマイクを握った政治家の中には、江原道のキム・ジンテ知事やソウル市のオ・セフン市長もいた。
 同月25日には、チョン・グァンフン勢力の光化門(クァンファムン)集会にファン・ギョアン代表が議員たちを率いて参加した。その年の12月16日、自由韓国党が国会で主催した「ファストトラック法案阻止集会」には極右プロテスタント勢力が大挙して参加し、「命をかけて自由大韓民国を守ろう」というファン・ギョアン代表の発言に「アーメン」と「ハレルヤ」で応えた。太極旗、星条旗、イスラエル国旗がはためく中、一部の参加者が国会本館への乱入を試み、国会警備隊と衝突した。

【写真】大邱市のホン・ジュンピョ市長が、自由韓国党(国民の力)の候補として大統領選に出馬した2017年5月2日午後、ソウル汝矣島の党本部で行われたキリスト自由党・汎キリスト教界支持宣言記者会見に出席し、チョン・グァンフン牧師と手を組んでいる/聯合ニュース

◆距離置きと再結合
 ファン・ギョアン体制からはじまった「極右との同居」の結果は散々なものだった。未来統合党へと党名を変更して臨んだ2020年の総選挙では、103議席を獲得するにとどまった。保守政党史上、最悪の惨敗だった。ファン・ギョアン体制は1年2カ月で幕を下ろし、キム・ジョンイン非常対策委員会が設置された。キム・ジョンイン非対委員長は「チョン・グァンフン牧師と私たちは何の関係もない」と述べて「極右切り」に着手し、チュ・ホヨン院内代表(当時)は「社会におけるいわゆる『極右』といわれる方々や党は私たちとは異なる」と強調した。だがそれは「決別」ではなく、「一時的な距離置き」に過ぎなかった。
 「極右化」の新たな局面は、尹錫悦(ユン・ソクヨル)の大統領選挙への挑戦と共にはじまった。チョン・グァンフン牧師は2022年1月の教会での説教で、「尹錫悦を通じて政権交代する以外の方法があれば持ってきてみよ」と熱弁した。この時期、尹錫悦候補もやはり「右派ポピュリズム」の表情を見せはじめる。当時、尹錫悦が最も注力した作業は、「公正と常識の回復」というスローガンの下、社会を「略奪勢力」と「国民」に分断することだった。
 尹錫悦式ポピュリズムにおける「略奪勢力」とは、リベラル指向の86世代の政治家、民主労総に象徴される正社員労組、フェミニスト、革新派市民団体、性的マイノリティー、移住労働者など、普段から尹錫悦とその周辺勢力が強い敵意を表出してきた集団だった。そして、この略奪勢力を除くすべての人々を「国民」と呼び、自分たちの側に引き寄せた。「国民」の核をなすのは総合不動産税と高額の財産税の納付者、極右の高齢層、大規模教会の信者、20~30代の男性、伝統的保守有権者、両極化の直撃を受けたぜい弱階層だった。結果は0.73ポイント差という超薄氷の勝利だった。

【写真】2022年2月15日、第20代大統領選挙に「国民の力」から出馬した尹錫悦候補が釜山西面で支持者の歓声にアッパーカットのポーズで応えている=共同取材写真//ハンギョレ新聞社

【写真】2023年3月12日、与党「国民の力」のキム・ジェウォン最高委員がサラン第一教会で行われた日曜礼拝に参加し、チョン・グァンフン牧師、保守ユーチューバーのシン・ヘシク氏と言葉を交わしている=チョン・グァンフン牧師のユーチューブチャンネル「ノアラTV」より//ハンギョレ新聞社

◆潜伏と再活性化
 問題は、右派ポピュリズムは「政権獲得戦略」としては効果的だったが、「統治」では大きな力を発揮することが難しかったということにあった。既存の秩序を批判して対抗勢力を結集させることと、国家共同体を運営することは、まったく異なる領域に属するからだ。したがって与党「国民の力」の極右化は、政権1年目ははっきりとは可視化しなかった。さらには、この時期、国民の力はチョン・グァンフン勢力を警戒し、彼らと党内部の癒着の動きを果敢に遮断する姿勢すら示していた。2023年3月のチョン・グァンフン牧師の集会に参加したキム・ジェウォン最高委員が「5・18(光州民主化運動)精神の憲法前文への収録に反対する」と発言し、党の倫理委員会から懲戒されたのが代表的な例だ。同時期、ファン・ギョアン元代表は、チョン・グァンフン牧師が候補公認を依頼していたことを暴露しつつ、「(チョン・グァンフン勢力を)党から放逐しなければならない」とまで述べている。
 だが、キム・ジェウォン前議員は国民の力の第1~3期の指導部選挙で相次いで最高委員に選ばれ、党の懲戒を無意味なものにした。ここには2017年の朴槿恵弾劾反対集会、2019年の極右と自由韓国党との密着、2022年の大統領選挙を経て国民の力に大挙して入党した極右プロテスタントと太極旗勢力の組織化された動きが作用した、というのが定説だ。
 それだけに、潜伏期間は1年を越せなかった。2023年の尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領の8・15(光復節)の祝辞は、「戦争の言語」で満たされていた。野党、市民社会団体、労働界を「共産全体主義に盲従し、社会をかく乱する反国家勢力」と規定した。その年の祝辞で用いられた言葉は「一挙に清算」、「処断する」などの、1年3カ月後の非常戒厳談話と布告文に登場する「絶滅の言語」の予告編だった。慶熙大学フマニタスカレッジのキム・ユンチョル教授は、「政権初期には公正を強調しつつ、民生に気を配ると言っていたかと思えば、統治が思うようにいかないことを野党のせいにして、イデオロギー的内戦を宣布したもの」だと述べた。支持率の下落と巨大野党との対立、それによる国政のこう着が長期化したことで、潜伏していた極右ウイルスが再び活性化したのだ。

◆惨敗と混とん
 極右化は尹錫悦大統領だけのせいではなかった。極端に走る大統領の考えと行動を政権与党が制御できなかったのが痛かった。国民の力はむしろ極右化に積極的に歩調を合わせることを選んだ。「自由大韓民国を脅かすすべての勢力を断固として排撃することこそ、私たちの義務」だと述べた2023年の8・15祝辞に対する国民の力の論評は、それを示している。
 このような雰囲気が作られたのには、大統領選挙と党執行部選挙を経て、党全体が親尹錫悦系一色に塗りかえられたことも影響している。尹大統領と対立していたイ・ジュンソク代表が2022年7月に党代表の座から追われた。2023年3月の党大会では、支持率で1位を走っていたナ・ギョンウォン議員が、大統領室と親尹系の圧力の中で党の主導権争いから強制的に排除された。このような異常な「政府与党一体」システムの下、党のすべての意思決定は尹錫悦と大統領夫人キム・ゴンヒの「夫婦の意志」に左右された。
 結果は総選挙での再度の惨敗だった。昨年の4・10総選挙で国民の力は108議席を得るにとどまった。内訳は釜山(プサン)・蔚山(ウルサン)・慶尚南道が34議席、大邱(テグ)・慶尚北道が25議席で、嶺南(ヨンナム=慶尚道)地域の選挙区から選出された議員が党全体の議席の54.6%を占めた。朝鮮大学政治外交学科のチ・ビョングン教授は「国会入りした議員が嶺南圏に偏ったことは、政治的に深刻な結果を生んだ」と語る。国民の平均的な要求ではなく慶尚道地域の強硬支持層の声が過剰に代表されることで、党の極右化を制御する力そのものが失われてしまったというのだ。

【写真】2月3日、「国民の力」のナ・ギョンウォン議員がクォン・ヨンセ非常対策委員長とクォン・ソンドン院内代表と共に京畿道義王市のソウル拘置所での尹錫悦大統領との面会後、取材陣にブリーフィングしている=キム・ヨンウォン記者//ハンギョレ新聞社

◆内乱と暴走
 国民の力の極右化は、日本の政治思想家、丸山真男(1914~1996)の分析した「戦前日本の統治メカニズム」と類似する。ここで権力は、「天皇」という絶対的権威を中心として同心円を描いて分け与えられている。このシステムの特徴は、権力を分け与えられて行使する諸主体が、権力行使の正当性を「自身の内部」に持っているのではなく、「中心(天皇)との距離(近接性)」に依存しているというところにあった。
 国民の力も、各主体の行使する権力の大きさは、中心(尹錫悦夫妻)との近接度に比例していた。問題は、このシステムにおいては中心が消えたり弱まったりした場合、各段階の権力が、中心に追従してきた下部からの圧力になす術なく振り回されるというところにある。12・3内乱後の国民の力がそうだ。「尹錫悦なき親尹系」は、消え去った権威と権力を内部から新たに作りあげて埋めていくのではなく、暴民化した尹錫悦追従勢力に便乗して崩壊の危機にある統治レジームを守っていこうとした。その結果は「極右の主流化」だった。
 一連の過程は、12・3内乱以降の政局の展開状況を見ればはっきりする。中央大学のシン・ジヌク教授は、12・3内乱事態の展開を5つの局面にまとめている。第一の局面は、12月3日の政権勢力による親衛クーデターの試みと国会・市民の防衛行動が繰り広げられた時期。第二の局面は、戒厳解除後、民主主義の回復についての最大の合意が一時的に形成された時期。第三の局面は、国会による弾劾で制度的権力資源を失った尹錫悦が戒厳の正当性を強弁して支持層を結集するとともに、憲法機関への攻撃を扇動する段階。第四の局面は、極右の大規模な結集と裁判所での暴動などの極右テロが本格化する時期。第五の局面は、国民の力が極右勢力の暴力扇動に同調することでファシズム傾向を強める段階だ。

【写真】今月1日、「国民の力」のキム・ギヒョン、チュ・ギョンホ議員らがソウルの汝矣大路で行われたセーブコリア主催の「三一節国家非常祈とう会」に参加している/聯合ニュース

◆破局か再生か
 12・3内乱は、韓国の民主主義が強固でないだけでなく、民主主義と多元主義を圧殺しようとする集団が韓国社会にかなりの規模で存在するということをあらわにした。何よりも、極右社会勢力と保守政治勢力の同盟が深刻な段階にまで至っているということに誰もが衝撃を抱いたが、逆説的にそれは韓国の保守政党の構造的、理念的なぜい弱性を立証する事例でもあった。
 問題は、今のように保守政治勢力と極右社会勢力の同盟が維持され、政権獲得にまで至った場合、韓国社会はかつて経験したことのない「大破局」に直面することになるということだ。それを防ぐ道は、保守政治勢力を極右社会集団から隔離すること、国民の力の「保守政党化」だ。この目標を国民の力の意志のみで達成するのは無謀だ。政党の体質の革新は内部の自助努力、ライバル政治勢力から受ける衝撃、社会の執ような圧力が合わさった時に成し遂げられることを、世界の政党史は示しているからだ。

イ・セヨン、シン・ミンジョン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2025-03-17 05:00


「The Hankyoreh」 2025-03-14 09:13
■「来週末に結婚、気軽に旅立ちたい」…今日も「尹錫悦罷免」デモに立ち上がる市民
 「尹錫悦罷免、再拘束」叫ぶ市民たち 

【写真】尹錫悦大統領の即時罷免を求める野党5党の共同事前集会がソウル鍾路区の光化門一帯で行われた13日夜、参加者がスローガンを叫んでいる=キム・ヘユン記者//ハンギョレ新聞社

 「安らかな夜を放棄して広場で共に悲しみを乗り越えることを決心したあなたに。混乱したこの世の中で私たちが断言できることは何もありませんが、希望を抱いている限り、どんなこともあなたを不幸にすることはできないでしょう。共に闘いましょう!」。
 ギターを担いで舞台に立ったシンガーソングライターのジョンウさんが低い声で市民に送る手紙を朗読した。ジョンウさんが続いて自身の歌「鉄の人生」を歌うと、闇の中でペンライトの波が静かに揺れた。しばらくすると、「尹錫悦(ユン・ソクヨル)を直ちに罷免せよ」というスローガンの叫びが再び街頭を揺らした。
 依然として霧の中にある憲法裁による弾劾宣告日程、尹大統領の釈放に直面して不安を抱いた15万人の市民(主催者推計、延べ人数)は、13日夜にも景福宮東十字閣(キョンボックン・トンシプチャガク)前に集まった。この日夜、尹錫悦即時退陣・社会大改革非常行動(非常行動)は「内乱首魁(しゅかい)尹錫悦即時罷免毎日緊急集会(緊急集会)」をおこなった。尹大統領の釈放の翌日から5日間連続だ。市民は「不安にならないようにしよう」と励まし合いながら検察を糾弾し、憲法裁判所に尹錫悦大統領の罷免を求めた。
 舞台に立った市民は、尹大統領の拘束取り消しに対し裁判所事務総長が事実上「即時抗告を勧告」したにも関わらず抗告放棄の立場を維持した検察を、集中的に批判した。民主社会のための弁護士会のファン・ホジュン事務処長は、「最高検察庁が即時抗告しないという最終的な立場を表明したことに対し、一人の法曹人として悲惨さを感じる」とし、「最高検察庁が尹錫悦大統領に有利になるよう拘束期間を時間で計算し、その他の人間にはこのような基準を適用しないことを決めたのは、法律解釈ではなく権力の正当化のためのごり押し」だと批判した。
 怒りの中で希望を失わないよう努める姿も見られた。ソウル蘆原区(ノウォング)からやって来たノ・ヨンスさんは、「この機会に韓国社会の明暗に目を向けてみた。極右勢力が裁判所をたたき壊すのを見たし、彼らを愛国青年として擁護する与党『国民の力』を見たし、拘束取り消し判決を下す判事を見たが、戒厳軍の銃口の前で退かなかった市民と国会の補佐官がいるので希望がある。未来世代に公正な大韓民国を残そう」と述べた。
 政界は市民に対して、へこたれないようにしようと相次いで語りかけた。基本所得党のヨン・ヘイン代表は「私たちには独裁者が決して国民に勝てなかった歴史がある。内乱首魁尹錫悦も例外たりえない。私たちはあと一歩のところまで来ている。へこたれないようにしよう」と励ましを送った。共に民主党のパク・スヒョン議員(国会議員弾劾連帯共同代表)も、「1948年の政府樹立以来、憲法の規範性を確保するまで、大韓民国最高のとりでは憲法裁判所だった。私たちは憲法裁判所を固く信じている」とし、「民主主義が壊れるのを誰もがはっきりと見た。尹錫悦が阻みうる法技術はこの世には存在しない。確信を持って言う。尹錫悦は8対0で民主主義と市民の力によって罷免されるだろう」と述べた。
 集会に参加したキム・アセルさん(34)は、「来週の土曜日に結婚式が予定されている。軽やかな気持ちで結婚式をおこなってロンドンへ旅立てると信じている」と話した。ムン・スンジャさん(73)は「弾劾集会に一度も参加していなかったが、尹大統領の拘束取り消し決定から集会に毎日来ている。尹錫悦大統領は釈放され、自分は勝機をつかんだと思っているだろうが、とんでもない。大韓民国が生きている限り、私たちには勝てない」と話した。

コ・ギョンテ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2025-03-13 21:19


「The Hankyoreh」 2025-03-08 07:34
■「釈放なんてとんでもない」韓国市民ら「尹大統領の拘束取り消し」で再び街頭へ

【写真】尹錫悦大統領の拘束が取り消された7日夜、尹錫悦即時退陣・社会大改革非常行動(非常行動)が開いた「内乱首謀者尹錫悦の釈放決定に対する緊急糾弾大会」に参加した市民たちがスローガンを叫んでいる=パク・コウン記者//ハンギョレ新聞社

 「尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領はすでに証拠隠滅を何度も試みてきました。拘束されたのも、まさにそのような理由が認められたからです。ソウル中央地裁は一体何を根拠に拘束の取り消しという決定を下したのですか」(恩平区住民のシン・ミンソプさん)
 7日午後7時30分頃、ソウル光化門(クァンファムン)の西十字閣跡地。裁判所が尹大統領の拘束を取り消したというニュースに憤った市民約1万人(主催側推算)が集まった。予期せぬ決定に市民たちは裁判所を糾弾し、検察に即時抗告を求めた。
 尹錫悦即時退陣・社会大改革非常行動(非常行動)は同日、「内乱首謀者尹錫悦の釈放決定に対する緊急糾弾大会」を開き、「裁判所の決定通り尹大統領が釈放されると、証拠隠滅をはじめとして捜査および裁判を歪曲させるための扇動が続く恐れが大きい」とし、「検察は即時抗告すべきだ」と主張した。光化門西十字閣跡約300メートルの歩道を埋め尽くした市民たちは「釈放なんてとんでもない」、「検察は即時抗告せよ」、「尹錫悦釈放決定を糾弾する」などのスローガンを一斉に叫んだ。
 集会に参加した市民たちは口を揃えて裁判所の決定を理解できないと語った。会社員のSさん(27)は、「初めてニュースを聞いた時、実感が湧かなかった」とし、「尹大統領が拘束されてから、一息ついて罷免されることだけを待っていたのに、青天の霹靂だ」と話した。「引きこもり妖精権利運動本部韓国支部」という旗を持ってきた大学生のAさん(26)も「授業後、友人たちと遊びに行くつもりだったが、拘束取り消しのニュースを聞いて、みんな家に帰り旗を持参して再び光化門に集まった」とし、「弾劾認容までは気を緩めず集会に参加する予定」だと語った。
 尹大統領支持者たちの勢いが増すだろうという懸念の声もあがっている。出版業界にいるユン・ヨジュンさん(33)は「仕事帰りに駆けつけたため、体を温めるものを用意できなかった」とし、「尹大統領は拘束されている時も弁護人を通じて扇動するメッセージを発し続けてきた。釈放されたらどれほど支持者を煽るか懸念される。内乱以降、ただでさえ政治的二極化が深刻になっているのに、釈放されれば極右勢力に誤ったメッセージを与えるだろう」と指摘した。就活中のパク・サンミンさん(28)も「尹大統領のこれまでの動きを見る限り、釈放されたらどんな行動を取るか分からない」とし、「極右ユーチューブを通じて直接声を上げるのではないかという懸念もある」と語った。
 主催側は憲法裁判所に尹大統領の罷免も求めた。彼らは「大統領職を維持したまま釈放されると、深刻な捜査の支障と国政混乱をもたらしかねない」とし、「憲法が、法律が、そして社会正義が、私たちの声と同じだと信じている」と述べた。

パク・コウン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2025-03-07 22:09
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「尹大統領、2度目の戒厳に言及していた」

2025年03月25日 | 韓国で
「The Hankyoreh」 2025-03-24 09:55
■【独自】尹大統領、2度目の戒厳に言及していた
 「まず議員捕らえよと…再宣布すればよい」 
 「解除決議後、合参の決心室で 
 キム国防部長官を叱責、戒厳再宣布発言」 
 防諜司の団体チャットルームで内容共有

【写真】尹錫悦大統領が1月21日、憲法裁判所で行われた弾劾審判の第3回弁論に出席し、チャ・ギファン弁護士と言葉を交わしている=写真共同取材団//ハンギョレ新聞社

 尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領が国会による戒厳解除要求の議決後に「まず国会議員を捕らえろと言ったではないか」とキム・ヨンヒョン前国防部長官を叱責しつつ、「非常戒厳を再宣布すればよい」と述べ、戒厳を改めて宣布する意思も明らかにしていたことが、軍関係者らの供述で明らかになった。2度目の戒厳の試みや国会議員の逮捕、国会による戒厳解除の阻止の試みはなかったという尹大統領の主張に真っ向から反する供述だ。
 高位公職者犯罪捜査処(公捜処)非常戒厳捜査タスクフォース(チーム長:イ・デファン捜査第3部長)は昨年12月12日、国軍防諜司令部の幹部のA氏に、非常戒厳時に盗聴防止機能付き電話(秘話フォン)で防諜司の主要幹部らと対話していた団体チャットルームを削除した理由を追及した。これに対しA氏は「国会による戒厳解除の議決後、本当に恐ろしいほど鳥肌が立つことが龍山(ヨンサン)の合参(合同参謀本部)であったのだが、その時、盗聴防止機能付き電話の団体メッセージルームでそのことが共有」されたとして、メッセージ流出を恐れて団体チャットルームを削除したと供述した。
 A氏によると、防諜司の団体チャットルームには、国会で非常戒厳が解除された直後の昨年12月4日未明、尹大統領が合同参謀本部の決心支援室(軍の首脳部が安保などについての事案を決意するための会議場)を訪ねてきて、キム前長官に「(大声で)まず国会議員を捕らえろと言ったではないか」と言ったという内容が書かれていたという。キム前長官が「人員が足りなさ過ぎた」と答えると、尹大統領は繰り返し大声で「それは言い訳に過ぎない」、「国会が議決しても明け方に非常戒厳を再宣布すればよい」と述べたことが共有されたという。A氏は公捜処で「合参に派遣された防諜司の要員がパク・アンス前戒厳司令官(陸軍参謀総長)のそばで状況を見守りながら(団体チャットルームに)伝えた内容」だと供述したという。
 公捜処は、このことを裏付ける合参関係者のB氏の供述も確保した。B氏は、尹大統領が合参の決心支援室にやって来て、キム前長官に何か言われて尹大統領が「言い訳」、「そう、捕らえろと言ったじゃないですか」、「またやればよい」と言うのを直に聞いたと公捜処に供述した。B氏は、尹大統領の「捕らえろ」という発言は「国会議員らの逮捕指示」で、「またやればよい」は「第二の戒厳宣布を言ったものだと思った」と供述した。
 尹大統領のこれらの発言は、決心支援室で尹大統領、キム前長官、パク前戒厳司令官が国会の非常戒厳解除要求議決後の状況を議論した「3者会合」の直前になされたものとみられる。検察の捜査によると、尹大統領は国会が非常戒厳解除要求決議案を可決した後の昨年12月4日午前1時16分ごろ、合参の地下にある決心支援室を訪れた。その時、そこにはキム前長官、パク・アンス陸軍参謀総長、イン・ソンファン国家安保室第2次長、チェ・ビョンオク国防秘書官ら、合参および大統領室の関係者、大統領警護処の職員らがいた。その後、尹大統領はキム前長官、パク総長以外の人物に外に出ろと言っているが、その前に決心支援室の中または周囲にいた軍関係者たちが尹大統領の発言を聞き、その状況を伝えたとみられる。
 尹大統領が決心支援室でキム前長官を叱責した後に法令集をあたったのも、2度目の戒厳のためであったことが疑われる。すでにキム・チョルジン国防部軍事補佐官(当時)が検察の取り調べで、尹大統領がキム前長官から国会に500人ほどの軍人が投入されたという報告を聞き、「だから、1千人は必要だと言ったじゃないですか」と言っていたと供述している。キム前長官が答えに窮していると、尹大統領は「それで、これからどうすればいいんだ? 国会法が出ているものがどこかにないか、法令集はあるか」と述べて法令集を探したという。キム補佐官は実務者を通じて法令集を入手して尹大統領に渡し、その後、尹大統領の指示どおりキム前長官とパク総長以外は決心支援室を出た。
 国会による非常戒厳解除を阻止する構想もあったという情況もあらわになった。B氏は、国会が非常戒厳解除要求決議案を可決する前の12月3日夜に、パク総長が「国会議員の定足数」と記された文書を持っていたと公捜処に供述した。B氏は「内容をすべて見たわけではないので、どのような意味なのかは分からない」としながらも、「国会の非常戒厳解除決議が定足数に達しないよう検討する方策が書かれていたのではないかと推測する」と供述したという。

チョン・ファンボン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2025-03-24 05:00


「The Hankyoreh」 2025-03-24 08:36
【社説】大統領警護処次長に対する令状棄却、納得できない

【写真】キム・ソンフン大統領警護処次長が21日、ソウル麻浦区のソウル西部地裁で、尹錫悦大統領の逮捕を妨害した容疑で拘束前被疑者尋問(令状実質審査)を受けた後、裁判所を後にしている=チョン・ヨンイル先任記者//ハンギョレ新聞社

 大統領警護処のキム・ソンフン次長とイ・グァンウ警護本部長に対する拘束令状が棄却された。理解しがたい。裁判所が発付した尹大統領に対する逮捕状の執行を阻止した彼らの拘束令状を裁判所が棄却したことは、自ら司法府の権威を崩したも同然だ。しかし、今回の令状棄却が無罪を意味するわけではないのは言うまでもない。警察は捜査にさらに万全を期して、彼らが相応の処罰を受けるよう最善を尽くさなければならない。それが「12・3内乱」事態以来、100日が過ぎたにもかかわらず、内乱首謀の容疑者が依然として大統領官邸に留まる奇異な状況に終止符を打ち、すべてを元に戻す第一歩になるだろう。
 ソウル西部地裁のホ・ジュンソ令状専担部長判事は21日、キム次長とイ本部長に対する拘束前被疑者尋問(令状実質審査)を行った後、警察の拘束令状を棄却した。容疑の成立に争いの余地があり、証拠隠滅や逃走の恐れもないというのが裁判所の判断だ。ホ部長判事は「今の段階での拘束は防御権を過度に制限すること」だと棄却の理由を説明した。
 キム次長とイ本部長は1月3日、尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領に対する警察と高位公職者犯罪捜査処の1回目の逮捕作戦の妨害(特殊公務執行妨害)、逮捕阻止の指示に従わなかった警護処幹部に対する不当な人事措置、盗聴防止機能つき電話(秘話フォン)の記録削除指示(職権乱用)などの疑いが持たれている。裁判所が発行した逮捕状を無視して頑なに阻止したのを、全国民が(テレビを通じて)目撃した。裁判所の令状をこのように露骨に無視したケースがあっただろうか。どんな「争いの余地」があるというのか。キム次長はその後も大統領室と警護処の家宅捜索を阻止している。「12・3内乱」の捜査のためにも警護処内の「秘話フォン」のサーバー確保が欠かせない。どうして証拠隠滅の恐れがないと言い切れるのか。被疑者の人権を守るために、在宅起訴の捜査原則が強調されるのは事実だ。しかし、その「人権と防御権」はなぜ「力のある者」たちに、何よりも「内乱関連者」たちにだけ最大限に保障されるのか。
 検察の対応も理解できない。警察はこれに先立ち、キム次長に対して3度も拘束令状を申請したが、検察はその度に突き返した。ソウル高等検察庁令状審議委員会から指摘を受けてから、ようやく令状を請求した。にもかかわらず、検察は令状実質審査に出席すらしなかった。やむを得ず令状を請求したが、何の意志もなかったのだ。検察は以前にもこのようなことがあったのか。このような検察がきちんと起訴を維持するかも疑問だ。「12・3内乱」捜査全般に対する特検の必要性が高まる理由だ。

(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2025-03-23 18:42
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「韓国、「荒波の一週間」…24日ハン首相、26日最大野党代表、尹大統領の宣告まで」

2025年03月25日 | 韓国で
「The Hankyoreh」 2025-03-24 07:46
■韓国、「荒波の一週間」…24日ハン首相、26日最大野党代表、尹大統領の宣告まで
 ハン首相弾劾審判の宣告で憲法裁の「戒厳の違憲性めぐる判断」が示されるか 
 イ代表、二審で有罪が確定すれば、早期大統領選で険しい道のりが予想される 

【写真】(左から)先月19日に憲法裁判所に出席したハン・ドクス首相、20日に出席した尹錫悦大統領=写真共同取材団、(右端)14日、国会で開かれた党最高委員会に出席した共に民主党のイ・ジェミョン代表=キム・ギョンホ先任記者//ハンギョレ新聞社

 今週、憲法裁判所と裁判所では、ハン・ドクス首相弾劾事件と最大野党「共に民主党」のイ・ジェミョン代表の公職選挙法違反控訴審の判決が予定されている。週の後半には、尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領弾劾事件の結論が出る可能性もある。今後の政局の行方を分ける運命の一週間になるとみられる。
 憲法裁は24日午前10時、ハン首相弾劾審判の決定を言い渡す。昨年12月27日に国会で弾劾訴追案が可決されてから87日目。ハン首相弾劾裁判の決定で、12・3非常戒厳の違憲性と訴追理由において内乱罪を撤回したことに対する憲法裁の判断が出るかどうかに注目が集まっている。
 ハン首相の弾劾訴追が認容された場合は、チェ・サンモク大統領権限代行体制が維持される一方、棄却または却下された場合は、ハン首相が職務に復帰し、大統領権限代行を務めることになる。ハン首相弾劾審判の宣告日、ソウル中央地裁は尹大統領に対する内乱首謀者容疑関連裁判の2回目の公判準備期日を迎える。尹大統領代理人団は、尹大統領が2回目の準備期日には出席しないと発表した。この日は尹大統領側の代理人団が内乱罪の公訴事実に対する立場を明らかにし、裁判の争点の整理と証人の採択などが行われる予定だ。
 2日後の26日には、ソウル高裁刑事6-2部(チェ・ウンジョン裁判長)がイ・ジェミョン代表の選挙法違反事件の控訴審に対する判断を下す。イ代表は先の大統領選挙の過程で、キム・ムンギ前城南(ソンナム)都市開発公社開発第1処長のことを知っていたにもかかわらず「知らない」という趣旨で発言していること、さらに、京畿道城南市の韓国食品研究院の柏ヒョン洞(ペクヒョンドン)敷地の用途変更の過程で「国土部の脅迫があった」としたことで、虚偽発言の疑いが持たれている。イ代表は昨年11月、一審で懲役1年に執行猶予2年を言い渡された。控訴審でもこの量刑が維持されれば、今回の早期大統領選挙の日程が確定しても、イ代表にとっては険しい道のりが予想される。選挙法違反事件で懲役刑が確定した場合、議員職を失い、今後10年間は被選挙権が剥奪されるためだ。「裁判を受ける大統領候補」として与党の集中砲火を浴びると予想され、党内の非主流派が大統領選での競争力を問題視する恐れがあるためだ。これについて、親イ・ジェミョン派のヤン・ブナム民主党議員は、「すでに(イ代表の)有罪が出る可能性を念頭においているにもかかわらず、(世論調査の)支持率は依然として1位だ」とし、控訴審の判決結果が大きな流れには影響を及ぼさないという見通しを示した。
 イ代表の判決後の週後半には、尹大統領の弾劾審判の決定が下される可能性もある。慣例上、宣告の2〜3日前に事前公示が出ることを考えると、26日以後の宣告が予想される。民主党は24日から憲法裁判所が尹大統領の罷免決定を下すまで、ソウル光化門(クァンファムン)広場に「テント党本部」を設置する予定だ。ここで党公式会議を開き、議員たちの座り込みも続けていく予定だ。さらに、民主党は尹大統領の弾劾審判宣告を求める国会決議案と、これを処理する全員委員会の開催も進めることにした。
チャン・ヒョヌン、キム・チェウン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力: 2025-03-2400:01


「The Hankyoreh」 2025-03-24 11:21
■尹大統領が復活すれば保守与党「国民の力」が生き延びるという「誤った判断」
 [ソン・ハニョン先任記者の政治舞台裏] 

 2016~2017離脱・分裂、2022年政権返り咲き 
 尹大統領の弾劾が却下・棄却されたら国民の力は壊滅 
 弾劾訴追後、保守結集して極右化は「毒薬」

【写真】与党「国民の力」のキム・ギヒョン、ナ・ギョンウォン、パク・テチュル、ユン・サンヒョン、チュ・ギョンホの各議員らが3月21日、ソウル鍾路区の憲法裁判所前で行われた尹錫悦大統領の弾劾の却下を求める記者会見でスローガンを叫んでいる/聯合ニュース

 ドイツの文学者アントン・シュナックの作品に、「私たちを悲しませるものたち」という散文があります。長いのですが、私は特に次の部分に共感します。
 「動物園のおりに閉じ込められ、いら立ってうろつく1匹のトラも、私たちを悲しませる。いつ見ても鉄格子際を行ったり来たりするその動物のぎらついた目、恐ろしげな怒り、苦しみに満ちた咆哮(ほうこう)、前足に満ちた果てしない絶望、狂ったような循環、このすべてが私たちをこの上なく悲しませる」
 私たちを悲しませるものリストにもう一つ加えられるなら、「絶対に死にそうになかった巨人が死に際に叫ぶ場面」を追加しようと思います。まさに12・3非常戒厳以降の与党「国民の力」の姿です。
 私は12・3非常戒厳に大きな衝撃を受けましたが、12月7日に与党議員たちが本会議場に入ってこず、弾劾訴追案を否決させる場面を見て、さらに大きな衝撃を受けました。私がかつて知っていたハンナラ党、セヌリ党とあまりにも違っていたからです。
 国民の力は保守政党です。李承晩(イ・スンマン)の自由党、朴正煕(パク・チョンヒ)の共和党、全斗煥(チョン・ドゥファン)の民正党の後身です。1990年の3党合同で、金泳三(キム・ヨンサム)の統一民主党が保守政党に編入されました。3党合併は野合でしたが、保守に改革の遺伝子が加わったことで、保守は強固になりました。民自党は新韓国党-ハンナラ党-セヌリ党-自由韓国党-未来統合党-国民の力と変遷し、栄辱の歳月を送ってきました。
 国民の力の「全盛期」はいつだったのでしょうか。18年前の2007年でした。金大中(キム・デジュン)大統領、盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領と続いたことによる疲労感から、民主党の支持率が地に落ちていた時です。ハンナラ党には李明博(イ・ミョンバク)、朴槿恵(パク・クネ)、ソン・ハッキュの3人の大統領候補がいました。誰が候補になっても大統領に当選しえました。ソン・ハッキュ前京畿道知事が離党し、李明博-朴槿恵の二強構図が形成されました。ハンナラ党は親李明博勢力と親朴槿恵勢力に二分されました。まかり間違えば分裂しかねない危険な状況でした。
 しかし、ハンナラ党には有能な「実務陣」がいました。彼らは勢力争いを路線対決に仕立てあげました。李明博は「実用保守」、朴槿恵は「正統保守」でした。ハンナラ党は、2両の機関車がけん引する列車のようなものでした。
 党内予備選挙では「実用保守」が薄氷の勝利を収めました。「正統保守」は結果に潔く従いました。良い勝負でした。2007年12月19日の第17代大統領選挙で李明博候補は、大統合民主新党のチョン・ドンヨン候補を48.67%対26.14%、実に22.53ポイントの差で破りました。
 2008年4月9日の第18代総選挙の結果は、ハンナラ党153議席、自由先進党18議席、親朴連帯14議席でした。統合民主党は81議席にとどまりました。日本の自民党のように保守が永久に政権を握り続ける可能性もあるとの観測も流れました。
 李明博大統領の失政で、ハンナラ党は5年で政権を譲りわたす危機に直面しました。しかし、ハンナラ党にはもう1両の機関車が残っていました。朴槿恵非常対策委員長はハンナラ党をセヌリ党に改造し、勝負に出ました。2012年4月11日の第19代総選挙で、セヌリ党は152議席を獲得する勢いを見せ、その余勢を駆って2012年12月19日の第18代大統領選挙でも勝利しました。
 そこまででした。2016年4月13日の第20代総選挙で、セヌリ党は122議席で共に民主党に第一党の座を奪われました。総選挙での敗北は朴槿恵大統領の弾劾へと続きました。2016年12月9日の国会による弾劾訴追では、セヌリ党の128人の議員の半数近くが賛成票を投じました。
 2017年5月9日の第19代大統領選挙は、保守にはとうてい勝ち目のない選挙でした。ホン・ジュンピョ、アン・チョルス、ユ・スンミンがいずれも出馬しました。保守の惨敗でした。
 しかし、2016年12月のセヌリ党議員の弾劾訴追賛成という「離脱」と2017年5月の大統領選挙における保守の「分裂」は、5年後に国民の力が政権を取り戻すうえで大切な礎となりました。朴槿恵大統領の国政壟断を批判し、弾劾訴追に賛成した「健全な保守」が存在したからです。
 2022年3月9日の第20代大統領選挙ではホン・ジュンピョ、アン・チョルス、ユ・スンミンの3人が手を組み、尹錫悦(ユン・ソクヨル)候補の当選を助けました。朴槿恵大統領が2012年の総選挙を前に世代交代の象徴として起用したイ・ジュンソク代表も、それに大きく貢献しました。
 団結は生、分裂は死。この言葉は政治においても真理です。尹錫悦大統領は自らの当選を助けた政治家たちを一人ずつ排除していきました。そして12・3非常戒厳を実行しました。滅びへの道でした。

【写真】「国民の力」のハン・ドンフン前代表が3月18日、大邱北区の慶北大学キョンハホールで「改憲、時代を変えよう」をテーマに、青年トークショーをおこなっている/聯合ニュース

 私は国民の力のハン・ドンフン代表(当時)が非常戒厳に反対し、国会本会議場に入って戒厳を解除する場面を見て、彼は「星の瞬間」をつかんだと思いました。彼が保守勢力の新たな大統領候補として浮上しうると思いました。そうはなりませんでした。
 国民の力全体がチョン・グァンフン、ソン・ヒョンボ、チョン・ハンギルらに引きずられ、極右化しています。なぜこのようなことが起こったのでしょうか。
 政治の二極化のせいです。2022年3月9日の大統領選挙で、保守系の有権者の大半は民主党とイ・ジェミョン候補が嫌いだから尹錫悦候補に投票しました。もちろん、イ・ジェミョン候補に入れた人たちも同様でした。
 今回もそうでした。尹錫悦大統領が罷免されてイ・ジェミョン代表が大統領になることを心配する人々が、弾劾反対の声を上げました。保守が結集しました。国民の力の支持率は上がりました。
 国民の力の議員や党員、支持者たちは喜々として尹錫悦大統領をさらに強く擁護しました。それがまさに「毒薬」でした。
 弾劾反対の世論は弾劾賛成を決して上回れませんでした。弾劾賛成と反対は6対4ほどで固定化しました。国民の力の支持率も同じでした。一時は民主党と同程度になり、しばし追い抜きもしましたが、続きませんでした。
 3月21日に発表された韓国ギャラップの定例調査で、弾劾賛成は58%、反対は36%でした。政党支持率は民主党40%、国民の力36%でした。「政権交代」は51%、「政権維持」は39%でした(中央選挙世論調査審議委員会のウェブサイト参照)。
 国民の力の破産の兆しは、次期政治指導者の選好度を見ればよく分かります。イ・ジェミョン民主党代表36%、キム・ムンス雇用労働部長官9%、ハン・ドンフン前代表4%、オ・セフン・ソウル市長4%、ホン・ジュンピョ大邱市長3%、イ・ジュンソク改革新党議員(元国民の力代表)1%でした。イ・ジェミョン代表を除いた5人を合わせても21%に過ぎません。国民の力で弾劾に確実に賛成するユ・スンミン、アン・チョルスの両候補は名前すらありません。
 キム・ムンス長官が国民の力の中で1位を走っているのはなぜでしょうか。彼は、非常戒厳の前は存在感がほとんどなかった政治家です。12月11日の国会本会議場で国務委員たちが立ち上がって謝罪した際、1人だけ席に座り続けたため、あっという間に極右のアイコンへと上りつめたのです。
 尹錫悦大統領の罷免後の早期大統領選挙でキム・ムンス長官が国民の力の候補として出馬したら、当選できるでしょうか。できないとみるべきです。しかし国民の力としては、早期大統領選挙での敗北はそれほど悪いことではありません。負け方に格好がつけば次のチャンスがある可能性もあるからです。
 国民の力が恐れるべき最悪のシナリオは、弾劾が却下または棄却され、尹錫悦大統領が職務に復帰することです。可能性はほとんどありませんが、もし尹錫悦大統領が戻ってきたらどうなるでしょうか。大統領職が遂行できるでしょうか。できません。
 弾劾審判の最終陳述で述べたように、尹錫悦大統領は任期短縮改憲を提案するでしょう。国民は受け入れないでしょう。市民革命が起こるでしょう。尹錫悦大統領はいずれにせよ退陣するしかありません。
 国民の力はどうなるでしょうか。壊滅的な状況に直面することになります。民意に逆らった政治集団は生存が不可能だからです。2004年の盧武鉉大統領の弾劾訴追後のハンナラ党がそうだったように、凄絶に没落するでしょう。早期大統領選挙はもちろん、2026年の地方選挙、2028年の国会議員総選挙、その次の大統領選挙すらも惨敗するでしょう。
 いわゆる保守論客の中には、尹錫悦大統領が戻ってきて、イ・ジェミョン代表の被選挙権が剥奪されるまで耐えていてくれれば、国民の力が大統領選挙で勝てると考えている人がいます。いえいえ。イ・ジェミョン代表さえいなければ民主党に勝てるのでしょうか。めっそうもない。イ・ジェミョン代表以外の候補が大統領選に出馬すれば、国民の力が民主党に勝つのはさらに難しくなります。
 だからです。国民の力が生き延びるためには、保守が生き延びるためには、尹錫悦大統領を捨てなければなりません。そうしてこそ国民の力は、保守は、再生の機会がつかめます。
 早期大統領選挙で敗北してイ・ジェミョン大統領が誕生したとしても、2026年の地方選挙と2028年の総選挙で再起が図れます。その次の大統領選挙で政権を奪還する可能性もあります。
 憲法裁判所の弾劾審判で尹錫悦大統領が罷免されるよう、国民の力の議員、党員、支持者が切に祈るべき理由はここにあります。みなさんはどうお考えですか。

ソン・ハニョン|政治部先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2025-03-23 09:00


「The Hankyoreh」 2025-03-22 11:08
■トランプの「共和党」、尹錫悦の「国民の力」【寄稿】
 ソ・ボクキョン | ザ・可能研究所代表

 憲法裁判所の尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領弾劾審判の言い渡しが遅れているが、まもなく認容判決が下されることに疑いはない。弾劾が認容されても、「12・3内乱」以降の韓国の民主政が進むべき道の峠の一つをやっと越えたに過ぎない。私たちは内乱が残した様々な後害と、今後長いこと対面しながら生きていかなければならない。
 内乱は憲法と法治に対する韓国の政治共同体の合意された信頼を傷つけ、適法な手続きにより作動すると信じていた検察、警察、軍隊、情報機関などの国家機関に対するあらゆる疑惑を積みあげ、選挙結果に対する承服や政治対立の非暴力的な解決原則など、民主政の基本原理を危険にさらした。最も深刻な後害は、今回の事態以降、憲法と民主政を脅かす勢力に変貌してしまった与党「国民の力」という政党とその支持層だ。「国民の力」は弾劾後の大統領選挙に参加し、2026年の地方選挙、2028年の国会議員選挙にも候補を出すだろう。同党で選出された公職候補者と党員たちは、不正選挙陰謀論と絶縁し、民主憲政体制を認めながら、選挙戦を繰り広げていくことができるだろうか。弾劾後に発足する新政権の路線と立場に対して、憲法秩序の枠内で表現の自由を行使しながら、政治暴力に断固として対処できるだろうか。次の政権5年以内に「12・3内乱」に関わった者に対する捜査と起訴、裁判が続くはずだが、現行憲法と法律の制度的手続きを尊重できるだろうか。そうなることを望むばかりだ。
 しかし、ドナルド・トランプ大統領以降の米国共和党を見ると、この問題がそれほど簡単ではないことが確認できる。2021年1月6日朝、トランプ大統領は自身の支持者らに「不正選挙で大統領の座を盗んだジョー・バイデンの当選の公式認定手続きを止めろ」と扇動し、彼らの暴動が始まった時、州防衛軍の派遣要請の承認を3時間以上拒否し、暴動に手を貸した。トランプ大統領が連邦議会に乱入した暴動に対して「米国史上最も偉大な運動」と擁護した時、共和党員たちはその発言を公の場でかばい、黙認した。米国下院が国会議事堂暴動調査委員会を構成した時、共和党の全国委員会は「適法な行動をした一般市民」を弾圧する処置だと反対し、連邦下院が暴動に対する責任を問いトランプを弾劾しようとした時、賛成した共和党議員は10人に過ぎなかった。
 その後、共和党はどうなっただろうか。不正選挙陰謀論を主張したトランプ大統領について「民主主義を崩そうとする十字軍」だと批判した共和党のリズ・チェイニー下院議員は、数百件の殺害脅迫を受け、所属州の共和党から追放された。トランプ大統領に反対した議員は全員、次の選挙の党内予備選挙で脱落した。その席をトランプ支持者たちが占めたことは言うまでもない。バイデン政権の間、連邦議会暴動で1500人余りが起訴され有罪判決を受けたが、共和党指導部を含むほとんどの議員は「2024年にトランプ前大統領が再び出馬するならば支持する」と公表し、トランプ支持者の歓心を買うのに余念がなかった。2020年の大統領選で敗北したトランプ氏は、敗北後に共和党を事実上支配し、4年後に共和党を上院と下院の多数党にし、自身も大統領の座に返り咲いた。
 尹錫悦大統領の「国民の力」は、トランプ大統領の共和党の道を進むことができるだろうか。容易ではないだろう。トランプ大統領は2009年のティーパーティー運動からあらわになった白人至上主義という根強い人種対立を重要な支持基盤としている一方、尹錫悦大統領は明確な社会的支持基盤を持っていない。トランプ大統領は莫大な財力と人材プールで共和党を掌握することができたが、尹錫悦大統領は政党という政治組織を維持できる人的・物的能力を持ち合わせていない。5年任期の1期限りの大統領制度を採択している韓国で、尹錫悦大統領にできるのは、後継者を立てることだけだ。トランプ大統領は運良くバイデン政権の弱い民主党と闘うことになったが、弾劾以降、国民の力にそのような幸運が訪れるかは不透明だ。何よりも、トランプとは違って尹錫悦大統領は、戒厳軍と全身で対抗し民主政を守っていく勇気を持った多数の市民と対面しなければならない。
 このすべての違いにもかかわらず、トランプ大統領の共和党は、尹錫悦大統領以降の「国民の力」の未来に重要な示唆点を投げかける。支持者を反体制極右に導くのは政治家たちだが、すでに反体制過激主義に傾倒した支持層を政治家たちがまた引き戻すのは非常に難しいという事実だ。尹錫悦大統領以降、誰が「国民の力」の支持層を民主主義者へと引き戻すことができるだろうか。

ソ・ボクキョン | ザ・可能研究所代表(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力: 2025-03-2008:09


「The Hankyoreh」 2025-03-22 09:51
■韓国野党5党、ハン首相弾劾審判宣告前に「チェ権限代行弾劾」訴追案発議へ
 尹大統領弾劾審判の宣告控えて「勢いで負けてはならない」と判断 
与党「国政麻痺を呼ぶ30回目の弾劾」と猛攻 

【写真】(右から)基本所得等のヨン・ヘイン議員、共に民主党のキム・ヨンミン議員、祖国革新党のチョン・チュンセン議員、進歩党のユン・ジョンオ議員が21日、国会議案課にチェ・サンモク大統領権限代行副首相兼企画財政部長官に対する弾劾訴追案を提出している=共同取材写真//ハンギョレ新聞社

 「共に民主党」など野党5党は21日、チェ・サンモク大統領権限代行副首相兼企画財政部長官に対する弾劾訴追案を発議した。前日、憲法裁判所がハン・ドクス首相弾劾審判の言い渡し期日を24日に指定した後、「弾劾の実益が消えた」という内外の評価にもかかわらず、公言した通りチェ代行の弾劾に踏み込んだのだ。ただし、ハン首相弾劾審判の結果と国会本会議の日程によっては、実際の弾劾表決までは進まない可能性もある。
 共に民主党、祖国革新党、進歩党、基本所得党、社会民主党などの議員188人がこの日発議した「企画財政部長官(チェ・サンモク)」弾劾訴追案によると、チェ権限代行の弾劾事由は、12・3内乱関連行為▽国会で選出したマ・ウンヒョク憲法裁判官候補者の任命拒否▽マ・ヨンジュ最高裁判事の任命拒否▽内乱常設特検任命手続きの不履行の4つ。弾劾訴追案は発議後最初に開かれる国会本会議に報告され、報告後24時間後から72時間以内に本会議で表決しなければならない。
 民主党が内外の批判と反発を押し切ってチェ代行の弾劾に踏み切ったのは、尹大統領の弾劾審判が遅延し、極右勢力の動きが激化する状況で、党の対応レベルをさらに引き上げる必要があると判断したためとみられる。民主党のイ・ジェミョン代表はこの日、ソウル光化門(クァンファムン)広場で行われている「尹錫悦即時退陣・社会大改革非常行動」のハンガーストライキの座り込み現場を訪ね、「チェ権限代行は人目もはばからず国法秩序を乱している」とし、「憲法裁の明確な判決さえ露骨に拒否している人自体が国憲紊乱行為だ。どうしても、チェ権限代行本人が今回の内乱行為の主要任務従事者ではないかという疑念を抱かせる」と述べた。
 院内指導部のある議員は「『憲政破壊勢力』との勢力争いで押されず、戦線を明確にしなければならない」と語った。また別の院内指導部関係者は「今後重要なのは『憲法守護』の価値を誰が先に占めるか」だとし、「憲法裁の決定に従わないチェ代行を放置しておけば、尹大統領弾劾審判の結果に承服しないだのの争いが生じたとき、民主党が掲げる主張の正当性や名目が行われる」と話した。
 ただし、チェ代行弾劾案が実際に表決まで進むかどうかは不透明だ。24日にハン首相弾劾案が棄却された場合、チェ権限代行は企財部長官に戻るため、弾劾案処理の動力を失う可能性がある。また、弾劾案の報告と上程のためには本会議の日程を追加で決めなければならないが、ウ・ウォンシク国会議長がこれに否定的な態度を示しているためだ。民主党はこのため、弾劾案の発議に踏み切ったものの、表決の時期とそれを強行するかどうかはまだ決めていない。指導部関係者は「発議はしたものの、表決処理を進めないこともありうる」とし、「弾劾するとすでに公表していたので、強行するかどうかが世論に及ぼす影響は大きくないだろう」と語った。
 しかし、党内部をはじめ政界内外では批判世論が強い。ある再選議員は「院内代表が数回公言したため、撤回できず、発議まで進んだ」とし、「尹大統領罷免言い渡しとは直接関連がなく、大衆もあえて(権限代行の)罷免を強行する理由を理解できないだろう」と語った。キム・ブギョム元首相もフェイスブックへの投稿で、「慎重でない決定」だとし「実益は少なく、国民の不安をさらに高めるだろう」と書いた。
 与党「国民の力」は猛攻を浴びせた。同党のクォン・ソンドン院内代表はこの日の記者会見で「チェ代行個人に対する脅迫を越え、国全体を滅ぼすという意図に他ならない」とし、「来週月曜日にはハン・ドクス首相が復帰するのが自明なのに、なんとしても経済副首相を弾劾するというのは、目的を失った感情的報復だ」と述べた。ハン・ドンフン前代表は「脅迫が通じないとなると、国民の暮らしを人質にして大韓民国を縛るイ・ジェミョン代表こそ『最も危険な人物』」だと語った。ホン・ジュンピョ大邱(テグ)市長は「(民主党は)本当に国を滅ぼそうとしている」とし「イ・ジェミョン(代表)も議会テロを利用して内乱を画策している」と述べた。

コ・ハンソル、キ・ミンド、チョン・グァンジュン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2025-03-21 22:08


「The Hankyoreh」 2025-03-21 10:04
■沈黙し続ける憲法裁に気が気でない韓国市民たち…「混乱広がり、極右だけが勢いづく」

 非常行動「憲法裁が応えなければ週末に200万人集まろう」 
 法律家1358人も「罷免決定が遅れてはならない」 
 大学生らも三歩一拝…「極右を後押しするような状況」

【写真】「尹錫悦即時退陣・社会大改革非常行動」が20日午後、ソウル鍾路区の景福宮西十字閣前で「今週を超えてはならない、主権者の命令だ」とのスローガンとともに尹大統領の即時罷免を求める記者会見を行っている=チョン・ヨンイル先任記者//ハンギョレ新聞社

 「今ごろは市民皆が待ちわびている尹錫悦(ユン・ソクヨル)罷免宣告がいつになるか、見当がついていなければなりません。弾劾訴追から100日が過ぎ、他の歴代事件と比べても最長期間を超えています」。
 尹錫悦大統領罷免のために13日間にわたりハンガーストライキを行っている「尹錫悦即時退陣・社会改革非常行動」(非常行動)のユン・ボクナム共同議長(民主社会のための弁護士会会長)の声が、景福宮(キョンボククン)の西十字閣跡の座り込み現場に響き渡った。憲法裁判所の弾劾裁判審理が長引くにつれ、法律家や大学生、労働者など多様な市民たちが不安と懸念を訴えている。彼らは憲法裁の早期罷免を求める一方、激しくなる分裂と混乱に対する憂慮を示した。
 非常行動は20日、景福宮西十字閣跡の座り込み現場で記者会見を行い、「国民の気持ちになって早期に罷免を決めるよう憲法裁に求める」とし、「金曜日までに憲法裁が結論を出さなかった場合は、今週土曜日に市民200万人が集まってほしい」と呼びかけた。ユン共同議長は「いつ言い渡されても弾劾さえ決まれば良いのではないか、と言うが、遅れた正義は正義にあらずという言葉もある」とし、「憲法と法律の違反は適時に是正しなければ、深刻な不義を容認することであり、これは結局憲法破壊を容認することに他ならない」と述べた。

【写真】「尹錫悦退陣全国大学生時局会議」のメンバーが20日、ソウルの景福宮で弾劾要求の三歩一拝を行っている/聯合ニュース

 労働者と法律家たちも憲法裁に早く罷免を決定するよう求めた。民主労総はこの日午後1時に民主労総12階の中会議室で記者会見を行い、「26日までに憲法裁が罷免言い渡し日を確定しなければ、27日に全面ストライキを行う」と発表した。民主労総のヤン・ギョンス委員長は「労働者・市民の日常が破壊され、1日に何度もメディアを通じて憲法裁判所の日程が確定したかどうかを確認する市民が多い」とし、「これ以上このような混乱と不安が続いてはならない」と述べた。全国の法学教授や弁護士、労務士、研究者など計1358人の法律家たちもこの日、時局宣言文を発表し、「尹錫悦の憲法違反と内乱の証拠はあふれるほどで、弾劾の名目は十分にある。にもかかわらず、尹錫悦の弾劾審判の決定まで多くの時間が費やされている」としたうえで、「分裂と混乱がより一層高まっている状況で、内乱犯罪者の罷免決定がこれ以上遅れてはならない」と述べた。
 大学生たちは判決が遅れていることによって尹大統領の支持者たちの言動が過激になっていることに懸念を示し、早い宣告を求める意味で、景福宮から安国(アングク)駅まで三歩一拝を行った。三歩一拝に参加した「大学生時局会議」のノ・ミニョン共同代表は「憲法裁の判決の遅れが極右支持者たちを勢いづけている」とし、「今や、『アカ(共産主義者)は殺しても良い』などとはばかりなく言う事態になった」と語った。

チョン・ボンビ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2025-03-2018:06


「The Hankyoreh」 2025-03-21 10:23
■韓国の保守政治家はいかにして極右牧師にへつらうようになったのか
 レインボーアクションと差別禁止法制定連帯「極右リポート」発表

【写真】サラン第一教会のチョン・グァンフン牧師が2月5日午前、ソウル永登浦区の自由統一党中央党本部で行われた西部地方裁判所暴動についての記者会見で、発言している/聯合ニュース

 「非主流だったチョン・グァンフン牧師はいかにして莫大な資金を動員し、有力政治家たちがへつらうようにさせ、何よりも数多くの人を彼の言うことに従わせることができたのか」。
 保守プロテスタントの極右化と教会による動員を主たる特徴とする韓国極右勢力の形成、成長、主流化の過程を記録した報告書が発表された。
 性的マイノリティー差別反対レインボーアクションと差別禁止法制定連帯は19日、「極右リポート」を発表した。両団体は「12・3内乱事態以降の極右勢力の結集は偶然または突発的な現象ではなく、長きにわたって放置されてきた嫌悪政治の必然的な帰結」だと断言した。
 保守プロテスタント集団はこの20年あまりの間、「同性愛反対」と差別禁止法制定反対運動を結集軸として全国の教会ネットワークを動員し、政治的影響力を拡大してきた。彼らの政治勢力化が放置されてきた結果、今の内乱擁護勢力へと成長したというのだ。
 報告書は、尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領弾劾反対集会を主導しているサラン第一教会のチョン・グァンフン牧師を中心に、保守プロテスタントの極右化の歴史を記述する。
 報告書の内容を総合すると、保守プロテスタントは韓国の特殊な脈絡である反共主義と政治化した同性愛嫌悪を結びつけた。彼らは差別禁止法制定が公論化された2006年に「同性愛差別禁止法案阻止議会宣教連合」を結成して反同性愛運動を開始。彼らの掲げた反北朝鮮・反同性愛戦略は、2013年に「従北ゲイ」という新造語を作り出してフレーム化された。

【写真】国民の力のユン・サンヒョン議員が今年1月5日、ソウル龍山区漢南洞の大統領官邸前でサラン第一教会のチョン・グァンフン牧師が開催した尹錫悦大統領弾劾反対集会に参加し、チョン牧師に腰を90度曲げてあいさつしている=ユーチューブ「チョン・グァンフンTV」より//ハンギョレ新聞社

 報告書は、チョン牧師が勢力を拡大する過程でも反同性愛戦略が功を奏したとしている。「以前から刺激的な扇動と暴言で悪名高かった」チョン牧師は、2007年の第17代大統領選挙の際にある集会で「李明博(イ・ミョンバク)に投票しない人は命の本から消してしまうつもり」だと述べており、極端な発言をはばからなかった。ソウルのソマン教会の長老でもあった李明博大統領候補(当時)は、ソウル市長時代の2004年に、ある祈祷会で「ソウルを神にささげる奉献書」を朗読している。
 チョン牧師は、2017年の第19代大統領選挙では「人類を荒廃させる同性愛と差別禁止が大韓民国を没落へと追い込んでいく」と述べて、ホン・ジュンピョ候補を支持した。ホン・ジュンピョ候補は当時のテレビ討論会で、「同性愛のせいで大韓民国にエイズ(AIDS:後天性免疫不全症候群)が1万4000人以上まん延している」というフェイクニュースを公然と語った。
 報告書は「チョン牧師の政治行動は2019年にファン・ギョアンと組んだことで絶頂を迎えた」と記している。ファン・ギョアン元首相は、首相時代にも自らが開拓した教会の伝道師の資格を維持していたほど熱烈な保守プロテスタントだ。

【写真】今月8日、ソウル鍾路区の東和免税店前で開催された弾劾反対光化門国民大会で、参加者たちが太極旗とプラカードを振っている/聯合ニュース

 報告書の分析によると、チョン・グァンフンとファン・ギョアンの連合はその後、2019年に光化門(クァンファムン)で行われた「チョ・グク長官退陣要求集会」や「文在寅(ムン・ジェイン)退陣徹夜国民大会」など、保守プロテスタントを中心として大規模動員を行う極右集会へとつながった。チョン・グァンフンは「ファン・ギョアンを立てたのは神」だとして、彼が大韓民国の次期指導者となるよう祈願した。彼らは2020年8月15日の「文在寅弾劾8・15国民大会」を主導することで極右集会を広げた。
 また報告書は、2010年代から性的マイノリティーに対する保守プロテスタント信者の暴力行為がまん延しはじめたと指摘する。2014年にソウル市が開催したソウル人権憲章公聴会は、「性的指向による差別を禁止する人権憲章の制定に反対する」として暴れた保守プロテスタント信者によって修羅場となった。それ以降、全国のクィアフェスティバルにも、保守プロテスタントによる組織的な妨害工作と集会がついて回った。
 報告書は、同性愛反対は保守プロテスタント全般に「最重要の動員手段」かつ「レトリック」として位置づけられたことで、次第に極右的傾向がプロテスタント界全般へと広がっていくという現象が起きたと分析する。多くの教会や教団がチョン牧師のような過激主義者の過激な発言と行動に内部的には反感を抱き、表面的には距離を取ろうとしたにもかかわらず、同性愛反対という共通基調の中、結果的に彼らの極右的な扇動のあり方を黙認したり、間接的に支持したりする様相を呈したということだ。近ごろチョン牧師と極右勢力の主導権をめぐって対立している釜山の(プサン)セゲロ教会のソン・ヒョンボ牧師も昨年10月、23万人(警察推計)が参加する差別禁止法反対集会を開催し、プロテスタント界の注目を集めている。

【写真】16日、ソウルの世宗路交差点そばで、サラン第一教会の光化門日曜礼拝が行われている/聯合ニュース

 報告書は「結局、韓国において極右政治が主流化する過程には、反共主義から出発し反差別、反マイノリティー議題を中心動力として成長してきた保守プロテスタントが存在する」として、「彼らは周辺部にとどまることに満足せず、民主主義制度への進出を試みつつ、同時に制度を脅かし破壊する」と警告している。そして「極右勢力化の流れと戦略を正確に理解し対応しなければ、性的マイノリティーをはじめとする社会的マイノリティーの権利だけでなく、自由と平等という民主主義の根幹が絶えず脅かされることになるだろう」と続けている。

シン・ユン・ドンウク記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2025-03-20 18:02


「The Hankyoreh」 2025-03-21 07:14
■「尹大統領罷免すべき」60%…「政権交代必要」51%【NBS世論調査】
 「弾劾棄却」35%、「政権再創出」36%

【写真】ソウル拘置所から釈放された尹錫悦大統領が今月8日、ソウル漢南洞の官邸前に到着し、車から降りて支持者にあいさつしている/聯合ニュース

 尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領の弾劾審判の決定言い渡しが遅れている中、国民の10人に6人は尹大統領を罷免すべきだと考えている。このような世論調査の結果が発表された。憲法裁判所を信頼しており、憲法裁は罷免を決定するだろうとする回答も同様だった。
 エムブレインパブリック、Kスタットリサーチ、コリアリサーチ、韓国リサーチは、今月17日から19日にかけて、全国の1003人の有権者に対して実施した定例全国指標調査(95%信頼水準、標本誤差±3.1ポイント、回答率21.1%、携帯電話仮想番号電話面接)の結果を20日に公開した。
 尹大統領の罷免については「弾劾を認容して罷免すべき」が60%、「弾劾を棄却して復帰させるべき」が35%。先週の調査から「罷免すべき」は5ポイント上昇(55%→60%)、「棄却すべき」は4ポイント下落(39%→35%)。罷免と棄却の回答差は16ポイントから25ポイントへと広がった。1月6~8日に実施された調査(罷免62%、棄却33%)より後の調査で最も大きな差だ。
 憲法裁による言い渡しが遅れている背景をめぐっては、さまざまな解釈が示されている。弾劾の賛否に対する個人の立場とは関係なしに、憲法裁がどのような決定を下すと予想するかを尋ねたところ、罷免を決定するだろうとの回答は57%(先週53%)、棄却するだろうとの回答は34%(先週38%)だった。
 与党「国民の力」と尹大統領の支持者は、理念的な基準を当てて憲法裁判官を攻撃している。にもかかわらず、憲法裁の弾劾審判の過程を信頼するとする回答は60%と高かった。先週の51%から9ポイントの上昇だ。一方、憲法裁を信頼しないとする回答は9ポイント下落の36%にとどまった。
 「憲法裁を信頼する」の回答率は上昇したものの、弾劾審判の結果を受け入れるかどうかに大きな変化はなかった。「自分の考えと異なっても受け入れる」55%(先週54%)、「自分の考えと異なれば受け入れない」42%(先週と同じ)だった。
 次期大統領選挙では政権交代(野党候補の当選)が必要だとする回答は51%だった。政権の再創出(与党候補の当選)が必要だとの回答は36%だった。政権交代は1週間で4ポイントの上昇、政権再創出は6ポイント下落。
 次期大統領にふさわしい人物は、野党「共に民主党」のイ・ジェミョン代表33%、キム・ムンス雇用労働部長官10%、ソウル市のオ・セフン市長と大邱市(テグシ)のホン・ジュンピョ市長が各5%、国民の力のハン・ドンフン前代表が4%。
 個人ではなく政党を基準にした大統領候補の支持率では、共に民主党の候補が40%、国民の力の候補が30%、祖国革新党の候補が2%、改革新党と進歩党の候補が各1%だった。民主党候補の支持率は4ポイントの上昇、国民の力の候補の支持率は5ポイントの下落だった。
 政党支持率も同様の動きを示した。民主党38%、国民の力32%、祖国革新党7%、改革新党と進歩党が各1%だった。民主党の支持率は先週より2ポイント上昇、国民の力の支持率は6ポイントの下落だった。
 今回の調査の詳細は、全国指標調査または中央選挙世論調査審議委員会のウェブサイトを参照。

キム・ナミル記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2025-03-20 11:53


「The Hankyoreh」 2025-03-20 09:23

【写真】尹錫悦大統領の弾劾審判事件が憲法裁判所に提出されて95日目の19日午前、宣告日の決定を控えて警備が強化されているソウル鍾路区の憲法裁判所周辺=シン・ソヨン記者//ハンギョレ新聞社

 憲法裁判所は19日にも尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領の弾劾事件の評議をおこなったが、判決の言い渡し期日を指定できず、来週に持ち越される可能性が高まった。判決が遅れるにつれ、与党では「却下」決定を主張する声が高まっているが、法曹界からは「棄却を主張できないことから出てきている苦肉の策」だとの分析が示されている。
 「却下」とは、訴訟手続きに明らかに欠陥があり、本案を検討する必要もないと判断された際に下される決定だ。与党「国民の力」の議員はここのところ、却下を主張して憲法裁の前でリレーデモをおこなってもいる。しかし、尹大統領の弾劾は憲法裁判の手続き上、却下されるほどの問題点は見当たらないというのが法曹界の大方の見方だ。
 与党と尹大統領の支持者たちは、弾劾訴追事由から内乱罪が撤回されたことで弾劾訴追の同一性が失われたため、それが却下事由になると主張する。だが朴槿恵(パク・クネ)元大統領のケースでも、国会は収賄罪や強要罪も事由に含めて弾劾訴追案を可決したが、弾劾裁判はそれを除外して行われている。現在は国民の力の院内代表を務めるクォン・ソンドン議員が、当時は国会の弾劾訴追委員長を務めており、朴元大統領の弾劾を主導した。
 また憲法裁は、訴追事由を議決書体系に拘束されずに職権で判断する。「憲政回復のための憲法学者会議」も先月、憲法裁に提出した意見書で、「憲法裁は請求人(国会)が主張した法規定以外の関連法の規定に則って、弾劾の原因となった事実関係を判断できる」と説明している。
 非常戒厳の宣布は大統領の統治行為であるため、司法審査の対象ではないということも、却下主張の根拠とされる。尹大統領が非常戒厳の直後から強弁してきた内容だ。しかし、統治行為だという理由で違憲的行為が免責されるわけではない、というのが確固たる判例だ。憲法裁は1996年、金融実名制緊急命令の違憲確認事件で、「いわゆる統治行為を含め、すべての国家作用は国民の基本権的価値を実現するための手段だという限界を必ず守らなければならない」として、「この事件の緊急命令は統治行為であるため憲法裁判の対象にはなり得ないとの主張は受け入れられない」と判断を下している。
 元憲法研究官の成均館大学法学専門大学院のイ・ファンヒ教授は、「盧武鉉(ノ・ムヒョン)元大統領の2004年のイラク派兵事件で憲法裁は統治行為を唯一認めているが、憲法上、法律上の手続きを守らなければならないという但し書きがあった」と説明した。また「たとえ戒厳宣布が統治行為だとしても、国会と選挙管理委員会に戒厳軍を投入した行為はその後続行為であるため、統治行為とはみなしがたい」と指摘した。
 結局のところ却下を主張する流れは、尹大統領の弾劾が棄却される可能性が薄い中で与党が新たに取った戦略に過ぎない、というのが法曹界の見方だ。慶煕大法学専門大学院のチョン・テホ教授は、「すでに法曹界ですべて克服されている理論を引っ張りだしてきて却下を主張している」とし、「棄却理由が不十分だと考えられるものだから訴訟要件に言いがかりをつけよう、という意図があると読み取れる」と指摘した。

キム・ジウン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2025-03-20 05:00


「The Hankyoreh」 2025-03-20 09:16
■尹大統領弾劾審判の決定、来週に持ち越しか…野党代表「迅速に罷免、混乱終わらせよ」

【写真】共に民主党のイ・ジェミョン代表とパク・チャンデ院内代表が19日、ソウル鍾路区の景福宮駅そばの民主党の光化門テント座り込み現場で行われた現場最高委員会議で、「尹錫悦を罷免せよ!」と記されたプラカードを手にしてスローガンを叫んでいる=国会写真記者団//ハンギョレ新聞社

 憲法裁判所による尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領の弾劾審判の判決言い渡しが予想より遅れていることで、憲法裁に迅速な言い渡しを求める野党「共に民主党」の声も強まっている。憲法裁が19日にも言い渡し期日を公示しなかったため、尹大統領を罷免するかどうかの決定が来週に持ち越される可能性があるとの見通しが示され、民主党では不安も広がっている。
 民主党のイ・ジェミョン代表はこの日午前、ソウルの光化門(クァンファムン)広場で行われた最高委員会議で、「12・3戒厳が国全体を破壊している。このすべての危機の本質は『国政混乱の持続』にある」とし、「今は大韓民国の正常化に誰もが力を合わせるべき時であり、憲法裁の迅速な判決を改めて求める」と述べた。民主党の「路上最高委員会議」は14日に続き2度目だが、イ代表は「テロの恐れがある」との情報提供があったため、この日が初めての出席となった。この日、イ代表はジャケットの中に防弾服を着用し、警察の身辺警護も受けた。
 この日の会議に出席したイ代表以外の党指導部メンバーも、一斉に憲法裁に対して「一日も早く尹大統領に罷免を言い渡してほしい」と述べた。パク・チャンデ院内代表は、「(弾劾審判が)これほど引きずるべきことなのか、納得できる国民がどれほどいるのか非常に疑問だ。争点が複雑なわけでもなく、証拠も十分で、全国民が直に目撃し、事案も非常に重大だ」と指摘した。キム・ミンソク首席最高委員は「民主憲政を踏みにじった権力による親衛クーデターを審判するのに左顧右眄(さこうべん)し、国民の苦しみと不安の終息に断固とした態度が取れないなら、憲法裁判所に何の存在理由があるのか」と述べた。
 早急な尹大統領の罷免を求める民主党の国会~光化門徒歩行進は、この日で8日連続となった。市民社会団体の主催する夕刻の光化門集会への参加後は、深夜に国会で非常議員総会が開催され、憲法裁の判決の遅れへの対応策などをめぐって激論が交わされた。
 民主党などの野党5党はこの日、憲法裁に尹大統領の迅速な罷免言い渡しを求める書簡を手渡した。
 民主党が憲法裁に総力戦で罷免を迫っているのは、言い渡しがいつになるかも分からずに遅れるにつれ、尹大統領弾劾の棄却の可能性まで取り沙汰されるなど、不安が高まっているからだ。尹大統領の弾劾審判の言い渡しが、今月26日に予定されているイ・ジェミョン代表の公職選挙法違反事件の控訴審判決より遅れる可能性もある、との懸念も高まっている。それぞれ早期大統領選挙の実施と、早期大統領選挙への対応策と関連しているため、敏感にならざるを得ない状況だ。首都圏のある再選議員は、「守旧・保守勢力は、尹大統領の弾劾訴追は認容されるにしても26日より後になるべきと考えているが、それを考慮して憲法裁が政務的判断を下す可能性がよりいっそう排除できなくなっている」と語った。

コ・ハンソル、コ・ギョンジュ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2025-03-20 05:00


「The Hankyoreh」 2025-03-19 09:58
■元判事の教授「警護処の報復解任、尹大統領の釈放が原因…再拘束すべき」=韓国

【写真】ソウル市立大学法科大学院のチャ・ソンアン教授(中央)らが1月13日午後、ソウル龍山区漢南洞の官邸前で警護処関係者に不当指示拒否疎明書を渡そうとしている/聯合ニュース

 「尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領が大統領官邸に戻らなかったとしてもこのような報復性の解任が行われたでしょうか」
 ソウル市立大学法科大学院のチャ・ソンアン教授は、17日のハンギョレの電話インタビューでこう述べた。尹大統領に対する逮捕状執行の阻止に反対した警護処幹部が、13日の警護処懲戒委で解任が議決されたのは、尹大統領が釈放されたからこそ可能だったという指摘だ。警護処幹部のA氏は、尹大統領の1回目の逮捕状執行が失敗に終わった後、警察国家捜査本部の関係者と面談したとの理由で1月12日に職務から排除され、懲戒委に付された。解任が議決されたのは、それから2カ月が過ぎた尹大統領の拘束取り消しの直後のことだ。
 チャ教授はこのような決定に尹大統領の意中が反映されていると指摘した。尹大統領に対する逮捕状が執行された1月当時、警護処関係者のための「不当な指示を拒否する方法」を作成してシェアしたチャ教授は、18日に「不当な指示を拒否した警護処職員の不当懲戒に関する10問10答」をフェイスブックに投稿した。チャ教授はこの投稿で、「不当な指示の拒否を理由にした懲戒は明白な報復人事」だとし、行政訴訟の手続き▽不法行為による損害賠償請求▽懲戒権乱用による職権乱用罪の告訴・告発など、法的救済の方法を詳しく書いた。
 チャ教授は、尹大統領の拘束取り消しに続く検察の即時抗告放棄の決定を強く批判し、「検察は今からでも裁判所に裁判所による職権拘束意見書を提出すべきだ」と述べた。さらに「すべての人に同等であるべき法律が大統領という特定の人だけに適用されなかった時、検察が越えてはならない線を越えたのではないかと思った」とし、「検察は今からでも裁判所の職権再拘束を求める意見書を提出すべきだ」と語った。
 チャ教授は、裁判所の拘束取り消しに検察が即時抗告で対応してきた先例は12件にのぼるとし、「裁判所事務総長(最高裁判事)も上級審の判断を仰ぐべきと発言しており、最高裁の判例まであるのに、なぜ尹大統領にだけ違う判断を下すのか分からない。大統領を在宅起訴の状態で裁判にかけようとする意志が込められているとしか考えられない」と指摘した。ソウル中央地裁・ソウル南部地裁判事、最高裁司法政策研究院研究委員などを務めたチャ教授は、裁判所の拘束取り消し決定についても「拘束取り消し自体もその重さに合わない理由を挙げており、道具的に使ったと思われる」とし、「責任という面で残念だ」と語った。
 チャ教授は、警護処幹部の報復人事など、内乱勢力の反動的行動にブレーキをかけるためにも、検察は裁判所に職権再拘束を求めなければならないと強調した。「検察は即時抗告制度を問題視したのであって、拘束理由が消滅したと判断したわけではないのでは」としたうえで、「今回の報復解任も根拠になりうるだろうし、再拘束の必要性はさらに高まっている」と語った。

チャン・ヒョヌン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2025-03-18 16:59


「The Hankyoreh」 2025-03-19 09:02
■大統領警護処次長の拘束令状請求…盗聴防止機能付き電話押収の糸口となるか
 キム・ソンフン4回目、イ・グァンウ3回目の申請が認められる

【写真】キム・ソンフン大統領警護処次長とイ・グァンウ警護本部長/聯合ニュース

 検察がキム・ソンフン警護処次長とイ・グァンウ警護本部長の拘束令状を裁判所に請求した。これで、今年1月に尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領の逮捕状の執行を妨害した疑いで逮捕され、後に釈放されたキム次長らは、2カ月をへて初めて裁判所の拘束前被疑者尋問を受けることになった。
 ソウル西部地検は18日、キム・ソンフン次長とイ・グァンウ本部長の拘束令状を請求したことを明らかにした。検察による拘束令状棄却を不服として、ソウル高等検察庁令状審議委員会から(令状の)発付勧告決定を引き出した警察庁非常戒厳特別捜査団(特捜団)は前日、キム次長については4度目、イ本部長については3度目の拘束令状申請をおこなっていた。
 警察は当初、尹大統領の指示を受けて今年1月3日に高位公職者犯罪捜査処と警察による逮捕状執行を阻止した疑い(特殊公務執行妨害)で、キム次長の拘束令状を申請した。しかしソウル西部地検は「尹大統領が拘束されたため、再犯の懸念はない」としてこれを棄却した。続いて警察は、警護処の実務者に盗聴防止機能付き電話(秘話フォン)の情報の削除を指示した疑い(大統領警護法の職権乱用)を追加してキム次長の拘束令状を再申請したが、検察は補強捜査を要求しつつ差し戻した。さらに、キム次長らの事務所や自宅の家宅捜索を経て3回目の令状申請が行われたが、検察はまたも「犯罪に故意があったのか争いがある」との理由で棄却した。令状請求権を持つ検察が、拘束に対する裁判所の判断そのものを阻んだ格好だ。
 これに対し、ソウル高等検察庁令状審議委員会(審議委)は今月6日、キム次長らの拘束令状を請求すべきとする判断を下した。西部地検は、容疑の疎明が成り立つか、拘束理由があるかなどを総合的に検討し、この日、拘束令状を請求した。
 ソウル西部地裁は近く、キム次長に対する拘束前被疑者尋問(令状実質審査)を行い、拘束するかどうかを決定する。キム次長は、釈放された尹大統領に密着随行しなければならないとして「不拘束捜査」を主張するものとみられる。裁判所が拘束令状を発行すれば、「盗聴防止機能付き電話のサーバ」の確保などによって内乱事件の捜査にも突破口が開けるとの見通しが示されている。検察による令状棄却でこれまで職位を維持してきたキム次長は、刑事訴訟法の条項(軍事上の秘密を要する場所は、その責任者の承諾なしには押収または捜索できない)を根拠として、警察特捜団によるサーバ押収も拒否してきた。尹大統領は非常戒厳宣布時に軍の司令官たちと盗聴防止機能付き電話でやりとりしていたため、警察がサーバを確保すれば、通話の内訳から当時の状況を再構成できるとみられる。

キム・ガユン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2025-03-18 18:35


「The Hankyoreh」 2025-03-19 07:08
■ハンファグループ、豪の防産企業オースタルの持分買収へ…米艦艇市場進出の布石=韓国

【写真】オースタルの米国内造船所の全景=ハンファ提供//ハンギョレ新聞社

 ハンファグループがオーストラリアの造船・防衛産業企業であるオースタルの持分を買収した。米国に造船所を保有しているオースタルの筆頭株主になり、米国の艦艇市場に進出する戦略だ。
 ハンファは17日にオーストラリア証券取引所の場外取引を通じてオースタルの持分9.9%を直接買収したと明らかにした。また、オーストラリア現地の証券会社を通じてさらに9.9%の持分に対しても総収益スワップ(TRS・株式を直接保有せずに資産に連動した収益・損失だけを受け取る)契約を締結したと明らかにした。ハンファはこの二つの取引でオースタルに対して直接・間接的に19.8%の持分を確保することになった。現在、筆頭株主のタッタラン・ベンチャーズ(Tattarang ventures 17.09%)より多い持分だ。
 ただし、オーストラリアでは国外投資家が10%以上の持分を確保するためには、外国人投資審議委員会(FIRB)の承認を受けなければならない。これを受けてハンファは同日、豪州の外国人投資審議委員会に持分買収に関する承認を要請した。
 ハンファのオースタル持分買収は、豪州現地法人(AA No.1 PTY LTD)を通じて行われた。前日、ハンファシステムとハンファ・エアロスペースは、オーストラリア現地法人の第3者割当有償増資に参加し、それぞれ2027億ウォン(約209億円)、642億ウォン(約66億円)の資金を投入すると公示した。オーストラリア現地法人は、調達された資金を全てオースタル持分の買収に投入する計画だ。
 ハンファのオースタル買収は再挑戦だ。昨年4月、オースタルに約8千億ウォン台の買収価格を提案したが、オースタルの理事会が買収提案を断った経緯がある。これを受けて場外株式市場で持分を集めた。
 オースタルは、米海軍に艦艇を供給する4大主要企業のうちの1社だ。米アラバマ州モービルとカリフォルニア州サンディエゴに造船所を持ち、米国内の小型水上艦と軍需支援艦市場でシェア1位を占めている。オーストラリアは2021年に米国・英国とオーカス(AUKUS)を結成するなど重要な安保同盟国だ。
 ハンファは、オースタルの買収を通じて米艦艇市場への進出を狙っている。トランプ政権が米国艦艇維持・保守・整備(MRO)や艦艇建造などと関連して韓国との協力を言及しているためだ。現在、米国艦艇は自国内の造船所でのみ建造が可能だ。米議会が同盟国でも建造できるように法改正を推進しているが、それまでは米国内に造船所があることが有利にならざるを得ない。

チョン・スルギ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2025-03-18 18:57
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「ノービザで韓国に入国した中国人、骨壺まで盗んで脅迫」

2025年03月18日 | 韓国で
「中央日報日本語版」 2025.03.18 14:55
■ノービザで韓国に入国した中国人、骨壺まで盗んで脅迫

【写真】中国人一党が先月24日午前1時ごろ、済州道(チェチュド)内の寺の納骨堂に侵入して6基の骨壺を盗み出した。[写真 済州東部警察署]

 相次ぐ外国人の犯罪に済州(チェジュ)警察がノービザ制度の改善を中心に「外国人犯罪特別治安対策」を用意・施行する。済州道では今年に入ってノービザで訪れた中国人が骨壺を盗んで逃走したり、中国人同士の殺人事件などが起きたりするなど外国人が関与する犯罪が相次いで発生した。

【写真】中国人グループが隠した遺骨の入った箱を掘り起こす警察

 済州警察庁は「済州警察庁のチョン・ソンス次長を団長とする特別班(タスクフォース・TF)を構成し、6月末まで100日間『外国人犯罪特別治安対策』を展開する」と18日、明らかにした。

◇済州警察「ノービザ制度セキュリティ方案を強く求める」
 済州警察庁は最近次長の主管で第1回TF会議を開いてノービザ制度の補完方案要求、関連機関との協力および広報強化、治安人員の拡充・専門化、警察力の集中を通した予防・取り締まり活動など4種類の方案について話し合った。
 警察はまず「過怠金未納」などノービザ悪用事例を防ぐために、済州道自治警察委員会と検察出入国外国人庁などの関連機関と協力し、デポジット(Deposit、保証金)制度の導入などを講じることにした。デポジット制度は外国人が済州でレンタカーを利用する場合、その後課されるかもしれない過怠金の支払いのために一定の保証金を先に受け取り、後日精算する制度だ。その他にも済州道、領事館、済州観光協会、外国人コミュニティなどと協力関係を構築し、不法滞在などの予防活動を強化することにした。また、警察内部では起動巡察隊を100日間外国人犯罪対応を基本業とする専門担当部隊として運営して外国人関連の業務機能を強化する。

◇コロナ禍が落ち着くと…外国人犯罪、度を越えた
 済州では、コロナ禍後に海外旅行が再開されて以降、外国人の犯罪が横行している。特に済州はノービザ入国が可能な点を狙った計画犯罪に模倣・新型犯罪が増加する懸念が高まっている。済州は観光活性化のためにテロ支援国家を除く111カ国の外国人がビザなく30日間滞在することができるようにするノービザ入国制度を施行中だ。この制度で入国した外国人は1カ月まで済州に滞在できるが、国内の他地域には移動できない。
 だが、この制度を悪用して済州に入国した後、こっそりと他の地域に無断離脱を試みたり、各種犯罪に手を染める事例が相次いで問題になっている。実際、先月24日午前1時10分ごろ、道内のある寺の納骨堂から40代中国人2人が安置されていた骨壺6基を盗んで逃走した。警察の努力によって骨壺は取り戻したが、これら中国人は該当の寺に合計200万ドル(約3億円相当)を要求するなど度を越した行為に及んだ。この中国人2人は該当の寺を三度に渡って下見していた。遺骨を奉安するかのように見せかけて犯行場所を物色し、犯行後は海外に逃走した。

◇全体外国人被疑者の67.5%が中国人
 済州警察庁によると、昨年済州で発生した外国人の主要犯罪被疑者は608人(暫定)だった。このうち中国人被疑者が412人で60.6%を占めた。数値が確定した2020年から2023年までの4年間の中国人被疑者は1465人だった。この期間、全体外国人被疑者2185人の67.5%だった。済州警察庁TF関係者は「最近の外国人犯罪様相が道民の不安を高めている」とし「すべての法律違反行為に対しては内・外国人不問非寛容原則で各種犯罪に対応する」と強調した。
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「K造船の実力がこれぐらい? 6カ月間で米艦艇の整備完了へ…米海軍「また依頼したい」」

2025年03月14日 | 韓国で
「中央日報日本語版」 2025.03.14 06:50
■K造船の実力がこれぐらい? 6カ月間で米艦艇の整備完了へ…米海軍「また依頼したい」

【写真】ハンファオーシャンが昨年6月から今年3月まで維持・補修・整備(MRO)の作業をした米海軍第7艦隊所属のウォリー・シラー号が整備を終え、13日慶南巨済(キョンナム・コジェ)のハンファオーシャン事業場を出港している。右下は昨年9月の入港当時の様子。[写真 ハンファオーシャン]

 ハンファオーシャンが韓国造船会社の中で初めて米国海軍艦艇維持・補修・整備(MRO)事業を完了した。米国が海軍力強化のため、老朽化した軍艦の整備に拍車をかけており、韓国造船会社の追加受注への期待感が高まっている。
 ハンファオーシャンは13日、米海軍軍需支援艦「ウォリー・シラー(Wally Schirra)号」が整備を終え、この日慶尚南道巨済(キョンサンナムド・コジェ)造船所から出港したと明らかにした。ウォリー・シラー号が昨年9月2日に入港して193日、約6カ月ぶりのことだ。ウォリー・シラー号は貨物・弾薬・燃料などを戦闘艦に供給する非戦闘艦で、排水量約4万トン(t)級、全長・全幅がそれぞれ210メートル、32.3メートルに達する大型艦艇だ。
 ハンファオーシャンは今回の「窓整備(創整備)」で船体などの外観を整備し、フレームなどの内部構造物を分解して整備した後、再度組み立てした。当初約3カ月がかかると予想したが、整備の途中に船体内の損傷部位を発見し、今年初めに米海軍に知らせ、追加契約で整備を3カ月延長した。ハンファオーシャンの関係者は「米海軍側が『日本の造船会社はこのようにしないのに韓国は違う』と驚いた」と伝えた。業界ではハンファオーシャンが従来の契約(約200億ウォン)に追加整備契約(約300億ウォン)まで計500億ウォン(約50億7000万円)以上を稼いだとみられる。
 米軍事海上輸送司令部のパトリック・ムーア韓国派遣隊長はこの日の出港式で「今後も協力関係を強化する多くの機会があるだろう」と述べた。大慶(テギョン)大学軍事学科のキム・ギウォン教授は「艦艇整備中にも作戦にすぐ投入できる韓国の地政学的位置も受注可能性を高めるだろう」と説明した。ハンファオーシャンは今年5~6件、HD現代は2~3件のMRO事業受注を目指す。
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