三重県木本で虐殺された朝鮮人労働者の追悼碑を建立する会と紀州鉱山の真実を明らかにする会

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「WP「韓国がウクライナに与えた砲弾、欧州全体の支援量より多い」

2023年12月06日 | 韓国で
「The Hankyoreh」 2023-12-06 07:12
■WP「韓国がウクライナに与えた砲弾、欧州全体の支援量より多い」
 「殺傷兵器支援はない」との尹政権の公式立場に背馳

【写真】ウクライナ軍兵士が先月8日、ドネツク戦線でロシア軍陣営に向けて迫撃砲を発射している/ロイター・聯合ニュース

 韓国政府は表向きにはウクライナに殺傷兵器を支援しないという立場を維持しているが、韓国が米国を通じて「迂回支援」した砲弾の規模は、欧州全体が支援した物量の合計より多いと米国メディアが報道した。
 米ワシントン・ポスト紙は4日(現地時間)、昨年2月末以降1年10カ月にわたり続いているウクライナ戦争の状況を点検する特集記事で、「韓国は究極的に欧州諸国全体の合計よりも多くの砲弾をウクライナに供給した」と報じた。
 同紙によると、戦争が長期化するにつれ、ウクライナ軍が必要とする兵器と弾薬を適時に供給することが米国など西側諸国の主要課題として浮上した。2月3日、ホワイトハウスのジェイク・サリバン米大統領補佐官(国家安全保障担当)主宰で開かれた対応会議で浮上した問題は、ウクライナがロシアの防衛線を突破するのに必ず必要な155ミリ砲弾だった。
 ホワイトハウスは、ウクライナが望む軍事的目的を達成するためには月9万発以上の砲弾が必要と計算したが、米国が増産しても必要量の10分の1程度しか供給できなかった。米軍がすでに保有している155ミリ砲弾を追加する方法もあったが、ロイド・オースティン国防長官はそれについて、国際的禁止対象となっている砲弾一発に小さな爆弾数十個が入ったクラスター弾であるとして供給に反対した。
 結局、サリバン補佐官は米国が提供した砲弾を多く保有している韓国に支援を求める計画を立てた。米国防総省の計算によると、韓国はその気になれば保有する155ミリ砲弾33万発を41日以内にウクライナに供給できた。ただ、韓国には戦争地域に対する殺傷兵器の供給を制限する法律があるということが問題だった。米国高官らは、ウクライナに直接韓国が砲弾を供給しない「間接的方式」であれば米国の提案を受け入れる意思を明らかにした韓国政府と具体的な方法を議論した。
 こうした過程を経て「今年初めから砲弾供給が始まり、結果的に韓国は全欧州諸国の合計より多くの砲弾をウクライナに提供した」とワシントン・ポストは伝えた。ただ、同紙は韓国が送った砲弾がウクライナに直接提供されたのか、米国を経由したのか、米国が自国保有分をウクライナに送り、韓国が提供したもので在庫を満たしたのか、など具体的な内容については言及しなかった。
 このような内容は、今年4月に米マサチューセッツ州防衛軍空軍所属のジャック・テセイラ一等兵(21)を通じて流出した米国防総省の「盗聴文書」を通じてある程度公開されている。当時の文書を見ると、当時韓国大統領室のキム・ソンハン国家安保室長らは2月末頃、砲弾33万発をポーランドを通じて迂回支援する案を議論したという内容が出ている。
 キム元室長は「ウクライナに弾薬を早く供給することが米国の究極的目標」だとし、ウクライナと国境を接するポーランドに砲弾を販売する案を提示した。この直後、韓国メディアも韓国が米国に最大50万発の砲弾を貸与することで合意したと報じた。さらにウォール・ストリート・ジャーナルは5月、「韓国がウクライナ向けの砲弾数十万発を移送中であり、これは殺傷兵器を支援しないという韓国政府の政策が変わったものだ」と伝えた。
 しかし、韓国政府は今のところウクライナに殺傷兵器を支援しないという立場を維持している。韓国政府は、米国に砲弾を輸出しても、最終使用者は米国という条件をつけると明らかにした。韓国のチョ・テヨン国家安保室長は5月、国会運営委員会に出席し「ウクライナに直接支援するものではない。ポーランドを通じて迂回支援するということも事実ではない」と明らかにした。ただし今後は砲弾を支援するのかという質問に「戦況を見て他の状況を考慮して今後検討する予定」とだけ答えた。

ワシントン/イ・ボニョン特派員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2023-12-05 18:10


「The Hankyoreh」 2023-12-06 07:12
■尹政権がウクライナに供与した砲弾、朝鮮半島危機の「ブーメラン」に

【写真】昨年4月29日、米デラウェア州のドーバー空軍基地で、米空軍がウクライナに向かう155ミリ砲弾を点検している/AP・聯合ニュース

 ウクライナへの砲弾支援を求める米国の要求を尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権が受け入れてから、 朝鮮半島情勢を決定的に悪化させた朝ロの「戦略的接近」が行われたという情況がますます明らかになっている。尹錫悦政権の無謀な選択が、韓国の安全保障に「災い」をもたらす北朝鮮の弾道ミサイル技術の向上につながったものとみられる。
 6月初めに始まったウクライナの「大反撃」の顛末を取り上げたワシントン・ポスト紙の4日(現地時間)付の特集記事で、最も注目を集めているのは、今年2~4月頃に行われたウクライナ砲弾支援をめぐる攻防だ。記事によると、ジェイク・サリバン米大統領補佐官(国家安全保障担当)の主宰で開かれた会議で、米国は友好国の中でウクライナ軍に155ミリ砲弾を供与できる能力を備えた唯一の国は「(その気になれば)41日以内に航空と船舶で33万発」を提供できる韓国だけだという結論を下した。
 その後、米国が韓国に砲弾の供与を執拗に要求した情況はすでに公開されている。4月に流出し大きな衝撃を残した韓国大統領室国家安保室に対する米国の「傍受文書」には、当時のキム・ソンハン室長らが2月末頃、ポーランドを通じて砲弾33万発を供与する案を話し合った内容が含まれている。キム前室長は「ウクライナに弾薬を早く供与するのが米国の究極的な目標」だとし、ウクライナと国境を接するポーランドに砲弾を販売する案を示した。
 同案は実際進められたものとみられる。この頃、米国を訪問したポーランドのマテウシュ・モラウィエツキ首相は4月11日、ニューヨーク・タイムズ紙とのインタビューで、自身が数カ月間にわたり韓国との砲弾供与協議に参加したことを明らかにし、「米国の介入がなければ、これは不可能だと思う」と述べた。また、ロシアの報復を予想したかのように「ジョー・バイデン米大統領が韓国に提供できる一種の安全保障がなければ、これは実現しないだろう」という意味深長な言葉も残した。
 尹錫悦大統領の米国国賓訪問を控えていた韓国の最終的な選択は「砲弾供与」だった。 尹大統領は4月19日、ロイター通信とのインタビューで、ウクライナに対する韓国の支援が「人道支援や財政支援にとどまっており、それらだけを固執することは難しい」と述べた。武器供与もあり得るという事実上の宣言だった。
 すると、1990年の国交正常化以後、友好関係を維持してきたロシアが激しく反発した。インタビューの翌日、ロシア外務省のマリヤ・ザハロワ報道官は「韓国がこのような行動を取るなら、朝鮮半島に対する我々のアプローチに影響を及ぼしかねない」と警告した。ウォール・ストリート・ジャーナル紙は約1カ月後の5月24日付記事で、米国政府当局者の話として「韓国がウクライナに数十万発の砲弾を移送する手続きを進めている」と報じた。
 急変した韓国と対照を成しているのは日本の動きだ。日本は口ではロシアの侵略を強く非難しながらも、武器供与はおろか、液化天然ガス(LNG)供給の10%を占めるサハリンの天然ガス開発利権を手放さずにいる。
 報復を公言したロシアが行動に出たのは7月末だった。ロシアのセルゲイ・ショイグ国防相は、北朝鮮の戦勝節70周年を機に平壌(ピョンヤン)を訪れ、金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長と会談した。約2カ月後の9月13日には、ウラジーミル・プーチン大統領がロシア宇宙開発の象徴であるボストーチヌイ宇宙基地で金委員長に会った。プーチン大統領は、北朝鮮の人工衛星開発を支援するのかという現地メディアの質問に、「そのために我々がここに来たのだ」と答えた。
 ロシアの警告が「虚言」ではないことがある程度実証されたのは11月21日だった。北朝鮮の国家航空宇宙技術総局は同日夜、西海(ソヘ)衛星発射場で、偵察衛星「万里鏡1号」をロケット「千里馬1型」に搭載して打ち上げ、成功裏に宇宙軌道に安着させたと発表した。国家情報院は2日後の23日、国会情報委員会非公開全体会議で、「打ち上げの成功にはロシアの助けがあったと判断する」と明らかにした。ウクライナに「迂回供与」したとみられる砲弾が、ブーメランとなって韓国に災いを招いたのだ。

キル・ユンヒョン記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2023-12-06 02:44
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「国連「韓国政府、人身売買被害女性を犯罪者扱い…決定分を翻訳して公表せよ」勧告」

2023年12月06日 | 韓国で
「The Hankyoreh」 2023-12-05 14:40
■国連「韓国政府、人身売買被害女性を犯罪者扱い…決定分を翻訳して公表せよ」勧告
 韓国の人権委員長、政府に国連勧告の履行を求め 
 歌手として入国した後、犯罪者扱いされた外国人3人が陳情

【写真】国家人権委員会のソン・ドゥファン委員長=ペク・ソア記者//ハンギョレ新聞社

 韓国の国家人権委員会(人権委)のソン・ドゥファン委員長は4日、委員長名義の声明を発表し、韓国で人身売買被害に遭った3人の外国国籍者が11月24日、国連の女子差別撤廃委員会に提出した陳情と関連し、大韓民国に対して女子差別撤廃委の勧告を忠実に履行することを韓国政府に求めた。
 この事件は、外国国籍の女性3人が2014年に歌手として韓国に入国した後、勤労契約とは異なり風俗店の従業員として働かされたことから始まった。女性らは、客を相手に性的接待の提供を強要され、身体的・精神的暴力被害があったにもかかわらず、韓国政府は女性らを被害者として保護せず性売買の疑いで取り調べただけでなく、外国人保護所に拘禁したため、(女子差別撤廃)条約上の権利を侵害されたと主張し、国連の女子差別撤廃委員会に陳情を提出した。
 女子差別撤廃委は陳情人が提出した資料、大韓民国政府が出した意見などを検討した後、当事国(韓国)が条約上の権利を侵害したと結論を下し、陳情人に対する完全な賠償提供と人身売買加害者に対する捜査および起訴、被害者中心主義と人権に基づいたアプローチ方法の採択などを勧告した。
 女子差別撤廃委は、陳情人が被害者ではなく犯罪者扱いを受けたと判断し、「パスポート押収、事業主に対する恐怖、E-6-2ビザ(ホテル・遊興ビザ)など人身売買とみられる要素が多く、警察官と出入国管理の公務員はこれらの内容を認知していたため、被害事実に気づくべきだった」と指摘した。
 特に女子差別撤廃委は「警察の捜査は、被害者の脆弱性と彼らに加えられた人権侵害よりも性売買にかかわった事実だけに焦点を合わせ、裁判所は非常に強圧的で威嚇的な環境を示唆する情況証拠を分析するよりも完全な物理的監禁がなかったという点を強調した」という陳情人の主張に注目した。さらに「警察と裁判所の人身売買に関する固定観念が、彼らを被害者と識別することの妨げになった」と強調した。
 女子差別撤廃委は当該事件の決定文を韓国語に翻訳して公表・配布することと、大韓民国政府が勧告事項を履行するために取ったすべての措置の情報を6カ月以内に書面で提出することを要請した。
 人権委は、「このような女子差別撤廃委の勧告事項は、国家人権委員会がこれまで人身売買被害者を保護し人身売買を根絶するために政府に勧告・意見表明してきた内容とも合致する」とし「人身売買は深刻な人権侵害であり、政府はこのような犯罪を予防し、加害者を処罰し、被害者を保護・支援する責任がある」と述べた。

コ・ギョンテ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/1119039.html
韓国語原文入力:2023-12-04 18:41
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韓日市民が手を取り合い、100年越しの『関東犠牲者追悼文化祭』を開催

2023年12月05日 | 国民国家日本の侵略犯罪
「The Hankyoreh」 2023-12-05 14:35
■韓日市民が手を取り合い、100年越しの『関東犠牲者追悼文化祭』を開催
 京畿文化財団「関東、100年の沈黙」 
 今月9日、城南市の嘉泉大学イェウムホールで 
 平和の木合唱団・埼玉合唱団の合同公演 
 「真実を直視し、誤った歴史を繰り返さないように」 
 埼玉も虐殺の現場 
 「謝罪・反省の意を抱いて公演準備」

【写真】関東大震災から100年を迎え開かれる韓日合同追悼文化祭「関東、100年の沈黙」のポスター=企画会社ANTストーリー提供//ハンギョレ新聞社

 1923年9月1日、東京を含む関東地域で史上最悪の大地震が発生した。日本の歴史では関東大震災は過去最大級の自然災害の一つに過ぎない。しかし、いわゆる自警団の狂気で数千人が犠牲になった在日朝鮮人にとって、関東大震災時の虐殺は恐ろしい大災害として残っている。にもかかわらず、これまで韓日両政府の無視の中で関東大虐殺は忘れられてきた。今年、関東大震災朝鮮人虐殺100年を迎え、初めて「韓日市民合同追悼文化祭」公演が開かれる。
 京畿文化財団(代表ユ・インテク)は今月9日午後7時、京畿道城南市(ソンナムシ)の嘉泉大学イェウムホールで「2023韓日市民の合唱―関東、100年の沈黙」公演を行う。「いまここに鳴り響く韓日の平和と共生のハーモニー」を主題に、ハンギョレ平和の木合唱団と日本の埼玉合唱団、京畿少年少女合唱団、イ・エジュ伝統舞踊会、Mクラシックオーケストラ、そして在日コリアン2世の歌手イ・ジョンミなど、両国の芸術者たちが一緒に舞台を飾る。
 特に平和の木合唱団と埼玉合唱団は、2010年8月の「強制併合100年韓日市民大会」の時にソウルで「第1回韓日市民の合唱」合同公演を行って以来、これまでほぼ毎年両国を行き来しながら文化交流を行ってきた。
 「警官隊の警戒裡 哀の涙 怨の恨/悲しい弔辞と追悼歌で終わる/仁川で震災時惨死同胞追悼会―昨年9月1日の日本の関東地方震災時に惨死した同胞のために、仁川労働総同盟の主催で追悼会が開催された。同追悼会は1日午後8時半から市内の山手町の公会堂で開かれたが、定刻前から制服私服の巡査30人余りが警戒する中、定刻になり主催側である労働総同盟委員長のパク・チャンハン氏の開会で哀悼の辞が読まれた後、しばし黙想した。会衆は立錐の余地もなく1千人余りに達し、場内の空気は悲しき風が吹くように張り詰めた中……」。
 今回の追悼文化祭は、「1924年9月1日当時、京畿道仁川市の公会堂(現在の仁聖女子高校)で関東大震災1周忌追悼会が開かれた」という旧日刊紙の記事をきっかけに企画された。

【写真】1924年9月1日、京畿道仁川市で開かれた関東大震災1周忌追悼会を知らせた「警官隊の警官裡 哀の涙 怨の恨」という見出しの記事=「朝鮮日報」1924年9月3日付//ハンギョレ新聞社
【写真】1924年9月1日「関東大震災1周忌追悼会」が開かれた、日帝強占期の京畿道仁川府山手町の公会堂の全景。現在の仁聖女子高校の多目的ホールの位置。仁川市史に掲載された写真//ハンギョレ新聞社

 すでに知られている通り、1923年、関東一帯でマグニチュード7.9の大地震が起こり、数万人が死亡し、数百万人が家を失いさまよう混乱の中、「朝鮮人が井戸に毒を入れた」「朝鮮人が暴動を起こし、日本人を襲撃している」というデマがあっという間に広がり、日本の警察の庇護のもと自警団という市民組織によって朝鮮人大虐殺が行われた。第2の「3・1万歳運動」を警戒した日帝の統制にもかかわらず朝鮮人被害を調査した罹災同胞慰問班が1924年1月に発表した記録によると、少なくとも6661人の朝鮮人が犠牲になった。100年がたつ間、事件の真相と内幕は、さまざまな証拠と研究資料を通じて、日本政府によって捏造された扇動によって行われていたことが明らかになった。しかし、これまで日本政府はその責任を回避しており、一部の極右政治家は虐殺そのものを否定し、歴史歪曲論議を呼んでいる。歴代の韓国政府も公式に真相究明や謝罪を要求したことが一度もないほど「沈黙」を守ってきた。
 今回の追悼文化祭の総監督であり「関東犠牲者のための鎮魂曲」を作った平和の木合唱団の指揮者イ・ヨンジュ氏は「過去の歴史的事件をイメージあるいは音楽で表現することは、完全ではありえません。しかも、他人の記憶と記録に依存して組み合わせる方法では、事件を完全に記述することもできません。しかし、もどかしさを抱いたまま、一曲一曲作業をしなければなりません。今ここに生きている音楽家がしなければならない義務です。たとえ当時の目撃者ではないとしても、残された者として後代に証言を伝えなければならない責務があるのですから」と、「沈黙」を破る意味を明らかにした。
 埼玉合唱団の八反田誠(はったんだまこと)団長は、「犠牲者への追悼の気持ちとともに、関東(大震災虐殺)の真実を直視し、誤った歴史を絶対に繰り返さず、みんなで平和の未来に進むことを願う思いを伝えたい」とし、韓国側からの「初の韓日市民合同追悼文化祭」の提案を快く受け入れた趣旨を明らかにした。

【写真】2010年8月、ソウル成均館大学で平和の木合唱団と埼玉合唱団が「強制併合100年―第1回韓日市民の合唱」合同公演を行っている=ハンギョレ統一文化財団提供//ハンギョレ新聞社

 埼玉合唱団は、日本の埼玉県で1960年から活動してきた純粋な民間文化団体だ。東京都の北に位置する埼玉県は、関東大震災での朝鮮人虐殺の現場の一つでもある。ある団員は「2010年に『強制併合100年』合同公演で日本軍『慰安婦』被害者の方々に慰労と謝罪の気持ちを伝えたように、今回も心の中に韓国の人たちへの謝罪と反省を抱き、公演を準備した」と、個人的な感想を伝えた。
 追悼文化祭の第1部のテーマは「関東の記憶100年」。犠牲者の魂を呼び起こすイ・エジュ韓国伝統舞踊会のノクチョン(死者の魂を表す紙の人形)の舞いを皮切りに、大虐殺の惨状を平和の木合唱団と埼玉合唱団がオラトリオで観客に伝える。第2部は「懺悔と和解」の時空間を、歌手のイ・ジョンミ氏と京畿少年少女合唱団が両国の童謡などを通じて演出する。第3部では埼玉合唱団の単独舞台に続き、出演者全員が「平和と和合の大合唱」でフィナーレを飾る。
 今回の追悼文化祭は全席招待公演で、誰でも予約番号にショートメールを送り申し込める。

キム・ギョンエ先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr)
韓国語原文入力:2023-12-05 01:48
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虐殺者全斗煥が眠る場所はない」…坡州市、官民政一致で埋葬に反対

2023年12月04日 | 韓国で
「The Hankyoreh」 2023-12-04 07:13
■「虐殺者全斗煥が眠る場所はない」…坡州市、官民政一致で埋葬に反対
 坡州市長山里に墓を建てる動きに 
 市民団体や地方区議員も激しく反発 
 坡州市長も「断固反対」を表明

【写真】1996年8月26日、囚人服を着て判決公判を待つ2人の元大統領、全斗煥と盧泰愚=写真共同取材団//ハンギョレ新聞社

 全斗煥(チョン・ドゥファン)など新軍部が1979年12月12日に主導した軍事反乱を取り上げた映画「ソウルの春」が、封切りから12日目の3日、累積観客数400万人を突破した中、最近全氏の遺骨が埋葬されるという噂が流れた京畿坡州市(パジュシ)は、市長が先頭に立って「決死反対」の立場を表明するなど、激しく反発している。
 キム・ギョンイル坡州市長は1日、フェイスブックへの投稿で、「12・12軍事クーデターと5・18光州(クァンジュ)虐殺で大韓民国民主化の春を徹底的に踏みにじり、国民を虐殺した全斗煥の墓を坡州に建てようとする動きがある」と明らかにした。さらに「個人的に、また政治家として、全斗煥の遺骨を坡州に埋葬することに断固反対する」としたうえで、「これまで市に土地使用に対するいかなる問い合わせもなく、行政手続きも進められていないが、引き続き動向を調べ、厳正に措置していく」と付け加えた。

【写真】11月30日、京畿道坡州市衙洞洞の坡州市役所前で、キョレハナ坡州支会と民族問題研究所高陽坡州支部、DMZ生態平和学校など11の市民団体が記者会見を開き、全斗煥氏の遺骨埋葬に反対するプラカードを持っている/聯合ニュース

 2021年11月23日、ソウル延喜洞の自宅のトイレで倒れて死亡した全氏の遺体は、現在延喜洞(ヨンヒドン)の自宅に臨時保管されている。全氏は生前の回顧録で「北朝鮮の地を眺められる前方のある高地に白骨としてでも残り、統一のその日を迎えたい」と記した。全氏の遺族が仮契約した葬地は坡州市長山里(チャンサンリ)のある私有地だという。
 このようなニュースが伝えられると、坡州地域の11の市民団体は先月30日、坡州市庁前で記者会見を開き「坡州に虐殺者全斗煥が埋葬されることを必ず防ぐ」として反発した。彼らは「長山里は臨津江(イムジンガン)と北朝鮮の開城(ケソン)を見下ろす最高の眺望を備えた場所であり、各種平和統一行事を開いてきた南北和解の象徴的な場所で、坡州市民にとってその意味は特別な場所」だとし、「そのような長山里にクーデター、光州虐殺、軍部独裁、民衆弾圧の象徴である全斗煥が葬られる場所はない。さらに坡州のどこにも虐殺者全斗煥が安らかに眠る場所はない」と主張した。

【写真】11月21日、京畿道坡州市文山邑長山里で、全斗煥氏の埋葬に反対する垂れ幕がかかっている/聯合ニュース

 実際、最近葬地として名指しされた長山里一帯には全氏の埋葬に反対する垂れ幕がかかっていた。
 政界も埋葬の動きを阻止している。坡州を選挙区とするユン・フドク議員とパク・チョン議員(共に民主党)と同党の坡州市議員7人、京畿道議員2人など11人は1日、ソウル汝矣島の国会疎通館で記者会見を開き「(坡州に埋葬されることを)あらゆる方法でもって阻止する」と明らかにした。

【写真】1日、ソウル汝矣島の国会疎通館で京畿道坡州市を選挙区とするユン・フドク議員とパク・チョン議員(共に民主党)、同党の坡州市議員たちが記者会見を開き、全斗煥氏を埋葬しようとする試みを糾弾している=パク議員のブログよりキャプチャー//ハンギョレ新聞社

 特に彼らは「全斗煥は全財産が29万ウォン(約3万2800円)だと主張しながら、ゴルフ場に通い、追徴金1020億(約115億3200万円)と滞納税金30億(約3億3900万円)は結局納付しなかった」と指摘し、「今回(取り沙汰されている)墓地は1700坪で、地価だけで5億1000万ウォン(約5800万円)だというが、どの国民がそれを容認できるだろうか」と述べた。
 「北朝鮮の地が眺める前方のある高地に白骨としてでも残り、統一のその日を迎えたい」という回顧録の内容については、「北朝鮮と敵対的でなかったことは一度もなく、戦車と装甲車で権力を奪い取った独裁者が、統一を迎えたいということをどう理解できるだろうか」とし、「38度線を越える渡り鳥にも笑われるだろう」と指摘した。

【写真】元大統領全斗煥氏など新軍部が1979年12月12日主導した軍事反乱を取り上げた映画「ソウルの春」が封切りから12日目の3日、観客数400万人を越え、監督と俳優たちがこれを記念している=プラスエムエンターテインメントのインスタグラムよりキャプチャー//ハンギョレ新聞社

 一方、先月22日に封切りした映画「ソウルの春」は封切りから4日で観客数100万、6日で200万、10日で300万人を越え、封切り12日目の3日午前0時直後400万人を突破するなど、大ヒットしている。

イ・ユジン記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力: 2023-12-03 23:43
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太平洋戦争に強制動員された韓国人の遺骨 80年ぶり返還=4日に追悼式

2023年12月04日 | 国民国家日本の侵略犯罪
「聯合ニュース」 2023.12.03 17:08
■太平洋戦争に強制動員された韓国人の遺骨 80年ぶり返還=4日に追悼式
 鄭憙靖
【ソウル聯合ニュース】韓国の行政安全部は3日、日本による植民地時代に太平洋戦争に強制動員され亡くなったチェ・ビョンヨンさんの遺骨が同日返還され、4日に追悼式が執り行われると発表した。

【写真】タラワの韓国人強制動員被害者の遺骨発掘現場(行政安全部提供)=(聯合ニュース)

 チェさんは1943年に太平洋戦争の激戦地、キリバスのタラワでの日米の戦闘、タラワの戦いで犠牲となった。当時の戦死者は6000人を超える。米国防総省捕虜・行方不明者調査局(DPAA)の文書によると、強制動員された韓国人1000人余りが命を落とした。
 韓国政府は2019年、DPAAが収集したアジア人とみられる遺骨についてDNA鑑定を行い、遺骨がチェさんのものであることを確認した。太平洋戦争の激戦地で収集された遺骨のうち、身元が判明した韓国人の遺骨はチェさんが初のケースとなる。
 行政安全部はチェさんの遺骨の返還を進めたが、新型コロナウイルス感染症の世界的流行でキリバスの国境が封鎖され、4年が経過した今年に入り返還が可能となった。
 チェさんの遺骨は3日午後に仁川国際空港に到着する。4日にチェさんの故郷の全羅南道・霊光に移され、追悼式が営まれる。追悼式にはチェさんの遺族、李祥敏(イ・サンミン)行政安全部長官ら約200人が出席する。
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「負の歴史超えて友好へ…「耳地蔵」初の鎮魂供養式」

2023年12月03日 | 国民国家日本の侵略犯罪
「民団新聞」 2021.12.08  
■負の歴史超えて友好へ…「耳地蔵」初の鎮魂供養式

【写真】「耳地蔵」とその由来板 ]

【岡山】津山市東一宮に400年以上にわたって放置されていた「耳塚(耳地蔵)」で11月8日、初の鎮魂供養式が執り行われた。
 この塚は豊臣秀吉の朝鮮侵略(壬辰倭乱)に加担した中島孫左衛門なる武将が、戦功の証しとして持ち帰った同胞の耳たぶを葬ったもの。子孫で、津山市議会議員の中島完一さんがひっそりと管理してきた。
 その後、市民団体「一宮の遺産を見つける会」が2018年に由来板を設置し、地域に知られるようになった。NGO「京都から世界に平和を広める会」(京都平和の会、小椋正恵会長)は「日韓の不幸な歴史を共有し、真の友好関係の出発点にしたい」と鎮魂供養式に先がけてクラウドファンディングで諸経費を募り、新たに石碑と献花台も設置した。
 この日の式典は少数の関係者のみで行い、リアルタイムでライブ配信された。民団岡山本部からは金學事務局長が参列し、献花。来賓の鳩山由紀夫元首相が「アジアの平和を日本が主導していこう」と呼びかけた。


「朝日新聞デジタル」 礒部修作2022年8月25日 10時15分
■「外交は厳しくても平和を」 朝鮮出兵の耳そぎ取りで供養式

【写真】耳地蔵での鎮魂・供養式で焼香する参列者ら=2022年8月24日午後2時15分、岡山県津山市東一宮、礒部修作撮影

【岡山】豊臣秀吉による朝鮮出兵で武将らが持ち帰った朝鮮の人たちの耳を埋めたとされる津山市東一宮の「耳地蔵」で24日、鎮魂・供養式があった。地元の住民や在日韓国・朝鮮人の関係者ら計10人が参列した。
 秀吉軍は戦功の証しとして、打ち取った朝鮮人の耳と鼻をそぎ取って報告したと伝えられている。地元の庄屋が帰国後に塚をつくり、耳地蔵として霊を弔ったとされる。
 供養式は日本と朝鮮半島の人たちの真の友好関係を築こうと、天木直人・元駐レバノン大使らが2019年に設立したNGO「京都から世界に平和を広める会」が主催した。天木さんは日本と朝鮮半島、台湾をめぐる状況をめぐり「国の外交は厳しくても、私たち一般市民の平和を願う気持ちは変わりません」と訴えた。(礒部修作)
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「私たちが飲食するチョコレートとコーヒーには涙がしみ込んでいる」

2023年12月03日 | 国家・社会
「The Hankyoreh」 2023-12-02 08:13
■[レビュー]私たちが飲食するチョコレートとコーヒーには涙がしみ込んでいる
 児童労働と奴隷労働の横行 
 生産者を疎外させ環境破壊 
 嗜好食品の裏面に隠された矛盾 
 「少し高くてもフェアトレードで」 
 『嗜好と耽溺の食べ物から見た地理:祝福を受けた自然はいかにして呪いの歴史になったのか』 
 チョ・チョルギ著|タビ刊

【写真】貧困に苦しめられる西アフリカ諸国からコートジボワールやガーナのカカオ農場に売られてきた子どもたちは劣悪な環境下で長時間の強制労働に苦しめられている=ウィキメディア・コモンズ//ハンギョレ新聞社
【写真】『嗜好と耽溺の食べ物から見た地理:祝福を受けた自然はいかにして呪いの歴史になったのか』チョ・チョルギ著|タビ刊|2万5000ウォン//ハンギョレ新聞社

 世界で最も多く輸出される果物であるバナナ。消費者がバナナを購入するために支払う代金の約43%は小売り業者が持っていき、プランテーション農園の所有主が17%近くを取り、熟成業者と運送業者がそれぞれ約13%を、卸売および輸入業者が10%程度を確保する。バナナの栽培や収穫、洗浄、分類、包装に関与する労働者に渡る割合は3.3%に過ぎない。チョコレートの原料であるカカオを栽培する農民は、チョコレートの小売価格の6%を所得として得るだけであり、コーヒー1杯の価格のうち栽培農民の取り分は1%にも満たない。
 慶北大学地理教育科のチョ・チョルギ教授の著書『嗜好と耽溺の食べ物から見た地理』は、嗜好食品の裏面に隠された暗い実状を掘り起こす。茶の木と紅茶、サトウキビと砂糖、カカオとチョコレート、油ヤシとパーム油、バナナ、エビ、ブドウとワインなど7種類の食材と食品を選び、生産から消費にいたる全世界的な「商品鎖」(commodity chain)を暴き、食べ物をめぐる歴史と流れに注目することを求める。食べ物の世界では、私たちはみなつながっており、だからこそ、商品鎖にまつわる矛盾や不合理に目覚めた市民の意識で対抗しなければならないと助言する。

【写真】バナナ1本の小売価格に占める各主体の割合を数値で示した図。労働者の割合が1番少ない。左から小売業者、熟成業者、運送業者、卸売・輸入業者、プランテーション所有者、労働者=タビ提供//ハンギョレ新聞社

 新大陸アメリカで砂糖の原料であるサトウキビのプランテーションを経営した欧州人は、労働力不足の問題を解決するため、アフリカから奴隷を連れてきた。カカオ農場も同様にアフリカから奴隷を連れてきて使った。カカオの栽培地が西アフリカと東南アジアに拡大し、アフリカ諸国が欧州の植民地支配から脱すると、チョコレート生産における児童労働が問題として浮上する。コートジボワールやガーナのような国では、農村の子どもの50%以上が学校に行かずに働くが、そのうち25~50%がカカオ農場で働く。世界第1位のエビ輸出国であるタイのエビ養殖場では、ミャンマーをはじめとする近隣諸国から人身売買で連れられてきた児童や青少年、外国人労働者が、奴隷労働によって苦しめられている。

【写真】アメリカ独立戦争の引き金となった1773年のボストン茶会事件を描写したリトグラフ=ウィキメディア・コモンズ//ハンギョレ新聞社

 アフリカ南東部のマラウイの人たちの主食はとうもろこしであるにもかかわらず、輸出目的のサトウキビの栽培面積がとうもろこし畑を侵食したため、とうもろこしの価格が暴騰し、住民の多くが飢えている。「サトウキビ生産は、森林伐採、動植物の棲息地の破壊、水不足、水質汚染などを含む環境問題も引き起こす」。植物油のパーム油の原料という環境にやさしいイメージとは違い、油ヤシのプランテーションは熱帯雨林の破壊の主犯だ。「世界自然保護基金(WWF)によると、1時間ごとにサッカー場300カ所の面積に相当する熱帯雨林が油ヤシのプランテーションを作るために燃やされている」。その過程で発生する二酸化炭素は気候危機を加速化する。

【写真】キューバのサトウキビ農場を描写したはがき(1914)=ウィキメディア・コモンズ//ハンギョレ新聞社
 バナナを1本も生産しない米国がバナナの輸出で最大の利益を得て、カカオが生産されないオランダがカカオ輸出順位で5位になる反面、アフリカのカカオ栽培農民の大部分は死ぬ日までチョコレートを見ることさえできない。多国籍企業が支配する嗜好食品市場の恥ずべき素顔だ。「先進国の裕福な人たちが消費するコーヒーやお茶、チョコレートなどには、貧しい生産国の労働者たちの涙がしみ込んでいる」。

【写真】カリブ海のサトウキビのプランテーションで子どもたちを含む労働者たちがサトウキビの幹を切る様子を描いた19世紀の絵=ゲッティイメージバンク//ハンギョレ新聞社

 では、どうすればいいのか。著者の答えはフェアトレード(公正貿易)にある。「少し高い代金を支払ってでも、フェアトレードを通じて生産され流通する商品を選択することによって、開発途上国の農民と農業労働者の安定した生計を保障し、さらには環境を保全する持続可能な農法を支持することができる」。

チェ・ジェボン先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2023-12-01 11:13
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「黄色い封筒法は書くのに20年かかった反省文…尹大統領は非情」

2023年12月02日 | 韓国で
「The Hankyoreh」 2023-12-02 01:00
■「黄色い封筒法は書くのに20年かかった反省文…尹大統領は非情」

【写真】尹錫悦大統領が1日、ソウル龍山の大統領室でイ・ジョンソク憲法裁判所長任命状授与式を終え、移動している=大統領室写真記者団//ハンギョレ新聞社

 尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領は1日、「黄色い封筒法(労働組合および労働関係調整法2、3条)」と「放送3法(放送法、放送文化振興会法、韓国教育放送公社法)」に再議要求権(拒否権)を行使した。労働者に対する企業の無分別な損害賠償請求は防ぐべきという市民の「黄色い封筒キャンペーン」が開始されてから10年かかって国会の敷居を越えた黄色い封筒法は、尹大統領の拒否権に阻まれた。政権が交代する度に左右に揺れる公営放送の支配構造を改善し、独立性を確保すべきだとの言論界の長年の念願も、「次」を考えなければならなくなった。
 黄色い封筒法は使用者の範囲を元請け企業にまで拡大するとともに、ストライキをおこなった労働者に対する使用者の無分別な損害賠償請求を制限する内容を含んでいる。政府与党はこの間、黄色い封筒法は「違法ストライキを助長する」として反対してきた。
 この法案の別称である「黄色い封筒」は、双龍自動車のストに参加した労働者に47億ウォンの賠償を命じた2013年12月の判決に抗し、市民たちが労働者を支援するために黄色い封筒に4万7千ウォンを入れて寄付したことに由来する。黄色い封筒キャンペーンは、2003年の斗山重工業のペ・ダルホさん、韓進重工業のキム・ジュイクさんら、少なくない労働者が企業による苛酷な損害賠償請求や仮差押さえに勝てずに自ら命を絶ったことを想起させ、自然と労組法改正の動きへとつながった。
 国会での議論は遅々として進まなかった。第19代および第20代国会に提出された同法案は、議論もまともに行われることなく任期満了で廃案となった。第21代国会でも黄色い封筒法案は国民の力の強い反対にぶつかったが、先月9日に野党主導で国会本会議を通過した。だがこの日、尹大統領による拒否権行使によって、労働者と市民の願いはわずか22日でまたしても挫折することになった。法案の筆頭提出者を務めた正義党のイ・ウンジュ議員はこの日、「黄色い封筒法は苛酷な損害賠償請求や仮差押さえで命を絶ったり、家庭が破綻したりした労働者とその家族に、国会が送る最低限の反省文だった。この反省文を書くのに(ペ・ダルホ、キム・ジュイク両烈士が亡くなって)20年もかかった」とし、「実に非情で無責任な大統領」だと批判した。
 放送3法は、韓国放送(KBS)、文化放送(MBC)、教育放送(EBS)の理事陣を21人に増やす(現行はKBS11人、MBCとEBSは9人)とともに、理事の推薦権を学界・視聴者委員会など政界の外部へと拡大し、公共放送の政治的独立性を強化することを狙った法律だ。公営放送の社長などの理事陣に政権の好みに合う人物を据えて放送を掌握するのを防ぐためには、支配構造を改善しなければならないとし、第19代国会時代から法改正が議論されてきたが、与野党が入れ替わる度に互いに従来の態度を覆してきたため、結果が出せずにいた。
 国民の力は今回も、放送3法によって「公営放送の公正性と公益性が損なわれる」として反対してきたが、先月9日に野党は同法案を可決した。そして尹大統領は予想通り拒否権を行使した。民主党の議員はこの日、ソウル龍山(ヨンサン)の大統領室前で記者会見を行い、放送3法に対する拒否権行使について「尹錫悦政権による放送掌握、言論統制の企図は、結局はブーメランとなって帰ってくるだろう」と反発した。
 尹大統領による拒否権行使は今年4月の糧穀管理法改正案、5月の看護法案に続き、今回が3度目。任期開始から1年6カ月にして、拒否権を行使した法案は6件となった。糧穀法や看護法と同様に、黄色い封筒法と放送3法も廃棄されるとみられる。大統領が拒否権を行使した法案が国会本会議を改めて通過するためには、在籍議員の過半数の出席、出席議員の3分の2以上の賛成が必要となるが、野党の議席はそれに満たないからだ。妥協なき対峙(たいじ)局面が再確認されたことで、来年4月の総選挙までは「与党と野党」、「大統領室と野党」の対決構図がより一層強まる、というのが政界の大方の予想だ。
キム・ミナ、キム・ヘジョン、イ・ウヨン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2023-12-01 19:27


「聯合ニュース」 2023.12.01 18:34
■尹大統領が3たび可決法案に拒否権行使 野党「憲政秩序の毀損」
【ソウル聯合ニュース】韓国の尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領は1日、国会で野党の主導により先ごろ可決された労働組合および労働関係調整法改正案と放送関連3法の改正案について、拒否権(再議要求権)を行使した。大統領室が伝えた。尹大統領が再議要求権を行使したのは、穀物管理法改正案、看護法制定案に続き3回目。
 労働組合および労働関係調整法改正案と放送関連3法改正案は、先月9日の国会本会議で過半数の議席を握る最大野党「共に民主党」など野党主導で可決した。
 「黄色い封筒法」とも呼ばれる労働組合および労働関係調整法改正案は下請け労働者に対する元請けの責任強化、争議行為の範囲拡大、ストライキを行った労働者に対する企業の損害賠償請求の制限などが柱だ。
 野党は労働組合に対する損害賠償請求の乱発を防ぐことで労働権を保障できると主張するが、経営側と与党は違法なストライキを助長し、産業現場に混乱を招くことになると反対していた。 
 放送3法は放送法・放送文化振興会法・韓国教育放送公社法の改正案をまとめた通称。公営放送理事会の理事を増やし理事推薦権限を放送・メディア関連学会など外部に拡大することを骨子とする。
 尹大統領が拒否権を行使したことで、これらの法案は国会に再び戻された。再度可決するためには、「在籍議員の過半数出席と出席議員3分の2以上の賛成」が必要となる。
 共に民主党に所属する議員約100人はこの日、尹大統領の拒否権乱発を糾弾する集会を開き、「憲政秩序の毀損(きそん)」と非難した。
 同党の李在明(イ・ジェミョン)代表は、政権の無能を隠すために国会で可決された法をむやみに捨ててはならないとし、「今日は憲政秩序を損なった歴史的な日として記録されるだろう」などと非難した。
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「駐日韓国大使 佐渡金山を視察=「強制労働の歴史反映が重要」」

2023年12月02日 | 国民国家日本の侵略犯罪
「聯合ニュース」 2023.12.01 19:30
■駐日韓国大使 佐渡金山を視察=「強制労働の歴史反映が重要」
【東京聯合ニュース】韓国の尹徳敏(ユン・ドクミン)駐日大使が1日、日本政府が世界遺産登録を目指す「佐渡島の金山」(新潟)を訪問した。大使館が同日伝えた。

【写真】坑道に掲示された地図を見る尹大使(在日韓国大使館提供)=(聯合ニュース)

 大使館によると、駐日韓国大使が同地を訪れたのは初めて。
 尹氏は佐渡金山の主な坑道や、鉱石を選別する施設があった北沢地区、資料館などを視察した。
 また朝鮮半島出身者の寮や共同給食施設があった場所を訪問し、強制労働の犠牲者を追悼した。
 日本政府は佐渡金山の世界文化遺産登録を巡り、対象期間を16~19世紀に限定することで日本による植民地時代に朝鮮半島出身者が強制労働させられた歴史を意図的に排除することで、遺産が持つ「全体の歴史」から目を背けているなどの批判を受けている。
 大使館によると、これと関連して尹氏は、同じく朝鮮半島出身者の強制労働があった長崎市の端島炭坑(軍艦島)などを含む「明治日本の産業革命遺産」と類似し、戦時中の強制労働のつらい歴史がある場所であるため、歴史全体を反映することが重要と改めて認識したという。
 また両国間に存在するつらい歴史を直視することが未来志向の関係の礎になるという点を踏まえ、世界遺産に登録される際には強制労働を含めた全体の歴史が反映されるよう、日本側と対話を続ける方針も改めて示した。
 佐渡金山の世界遺産登録の可否は2024年の国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界遺産委員会で決まる見通しだ。
 このほど世界遺産委員会の委員国に選出された韓国は委員国として27年まで活動するため、日本をけん制し、韓国の立場を積極的に表明できるとの見方も出ている。
 一方、尹氏は前日、新潟県で日本人拉致被害者と面会し、別の被害者が北朝鮮に拉致されたと推定される場所を訪問したという。
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「「ガザ戦争は戦争犯罪」国際刑事裁判所が動くか…南アフリカ共和国などが捜査依頼」

2023年12月01日 | 国家・社会
「The Hankyoreh」 2023-11-20 08:45
■「ガザ戦争は戦争犯罪」国際刑事裁判所が動くか…南アフリカ共和国などが捜査依頼
 南アフリカ共和国を含む「グローバルサウス」5カ国が捜査を依頼 
 イスラエルは未加盟…パレスチナは加盟国

【写真】イスラエル軍が16日(現地時間)ガザ地区北部で作戦遂行中の軍人の姿を公開した=イスラエル軍提供/聯合ニュース

 軍人と民間人を区別しないイスラエル国防軍(IDF)の無差別攻撃でパレスチナの民間人の犠牲が増えているなか、米国や中国・ロシアなどの特定の陣営に属さない「グローバルサウス」諸国が、ガザ地区内で強行されている「戦争犯罪」をやめさせるよう、国際刑事裁判所(ICC)に捜査を依頼をした。
 ICCは18日、ソーシャルメディアのX(旧ツイッター)を通じて「カリム・カーン検事が、現在のパレスチナの状況について5カ国から捜査依頼書を提出された」と明らかにした。先月7日に始まった戦争の過程で発生した不法行為を調査するよう求める捜査依頼書を提出した国は、グローバルサウスの代表国である南アフリカ共和国をはじめ、バングラデシュ、ボリビア、コモロ、ジブチの5カ国。南アフリカ共和国はロイター通信に「パレスチナで繰り広げられている深刻な状況について、ICCの緊急の関心を要求」することが目的だと、今回の措置の意味を説明した。
 ICCは、2014年にイスラエルとハマスの間で発生した武力紛争についても、両者が犯した戦争犯罪関連の疑惑を調査中だ。9年前の事件についても結論を出せていないうえ、イスラエルはICCの加盟国でもなく、今回の捜査要請が実質的な影響力を発揮するのは難しいのが現実だ。ただし、ICC側では、パレスチナが2015年に加盟国として加わったため、ガザ地区内の戦争犯罪疑惑に対する調査権限はあるとする立場だ。カーン検事はこの日、「ICCのローマ規定により、起訴の可否を決める目的の関連調査をICCの検事に要請できる」と説明した。国連も先月、イスラエル軍のガザ地区への攻撃と民間人の強制待避が「集団処罰」「戦争犯罪」にあたる可能性があると批判し、犯罪の証拠を収集していると明らかにしている。
 ICCは、国際社会が関心を寄せる集団殺害罪▽人道に反する罪▽戦争犯罪▽侵略犯罪などを犯した「個人」を処罰するために、1998年に採択されたローマ規定によって2003年に設立された。今年3月には、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領がウクライナ侵攻後にその地域の子どもたちをロシアに不法移住させたとして戦争犯罪の容疑を適用し、逮捕令状を発行している。その後、プーチン大統領はICC加盟国への訪問を敬遠している。
 国交を断絶するなどの手段で、イスラエルの反人道的行為に対して抗議の意向を明らかにする国も増えている。先月31日には南米のボリビアが、今回の戦争が発生して一番最初にイスラエルとの国交を断絶し、14日には中米の人口40万人の国であるベリーズが後に続いた。アフリカのチャド、中東のバーレーンとヨルダン、南米のコロンビアとチリなども、イスラエル大使を呼び出したり、自国の大使を召還するなどのかたちで抗議した。

ホン・ソクチェ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2023-11-20 02:32
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「解雇ばかりか労働者の賃貸保証金まで仮差押えした日本企業の韓国子会社」

2023年11月30日 | 国民国家日本の侵略犯罪
「The Hankyoreh」 2023-11-21 07:54
■解雇ばかりか労働者の賃貸保証金まで仮差押えした日本企業の韓国子会社
 [ハンギョレ21]「黄色い封筒法」 
 日本企業の子会社・韓国オプティカルハイテック
 
【写真】金属労組の韓国オプティカルハイテック支会の組合員らが2023年11月13日、火事で焼けた亀尾工場の前に立っている=リュ・ウジョン記者//ハンギョレ新聞社

 自宅の保証金の仮差押えを確認した時のことを、パク・ジェジョンさんははっきりと覚えている。2023年9月1日、同僚がカカオトークのグループチャットにメッセージを送った。「会社が自宅を仮差押えしたらしいので、みんなも一度確認してほしい」。パク・ジェジョンさんは不安な気持ちを抑え、借家のオンライン登記を確認した。「金4000万ウォン(約460万円)、債権者:韓国オプティカルハイテック株式会社、債務者:パク・ジェジョン他4人」。自身の借家の登記書類にこのような文面が記されていた。彼が使用者側の解雇決定に対抗した代価だった。
 「大変なことになった、と思いました。口座を差し押さえられるのはまだわかるとしても、伝貰(チョンセ。契約時に高額の保証金を賃借人に預ける代わりに月々の家賃は発生しない不動産賃貸方式)の保証金を仮差押えするというのは、私は初めて聞きました。1月初めには今の家を引っ越さなければならないのに、保証金がなければ家を借りることもできません。その後は毎日のように眠れませんでした。心配のあまりに夜中に何度も目が覚めます」。
 別名「黄色い封筒法」と呼ばれる労働組合および労働関係調整法(労働組合法)第2条と第3条の改正案が11月9日、国会の本会議で可決された。ストライキを行った労組を相手に、企業側が無分別な損害賠償請求訴訟と仮差押えをすることに歯止めをかけるものだ。経済界はこの法律を「悪法」と呼び、大統領に再議要求権の行使を建議し、ハン・ドクス首相は「国民の生活からかけ離れた法律」だと非難した。実際に訴訟の矢面に立つことになった労働者たちの意見は違う。会社を相手に生存闘争を行ったという理由で、数億ウォンの「損賠爆弾」を受けるべきだというのであれば、それは「労働組合活動をするなと言うのと同じだ」と語った。

◆11年働いた会社に1日で切られる
 パク・ジェジョンさんは2011年、慶尚北道亀尾(クミ)にある韓国オプティカルハイテック(以下「韓国オプティカル」)に入社し、11年間勤務した。韓国オプティカルはLGにLCDの偏光フィルムを納品する日本の日東電工グループの韓国子会社だ。2017年まで年間売上額は7000億ウォン(約800億円)に達した。「あまりに忙しくて昼食も食べられず、菓子で間に合わせて仕事をする時も」パク・ジェジョンさんは大丈夫だと考えていた。
 2018年から韓国オプティカルの売上は3000億ウォン(約350億円)台に落ち込んだ。ディスプレイ業界の業況が悪化したことを契機に、会社側は2019~2020年に2回の構造調整を行った。運良く解雇を免れた人たちは残留した。2022年10月、亀尾工場で火災が発生すると、会社側は清算を決めた。亀尾で生産していた製品を平沢(ピョンテク)工場に移した後、労働者全員に希望退職を提示した。従業員210人中193人が退社し、17人が残った。パク・ジェジョンさんと同僚らは「平沢に生活根拠を移すから、平沢工場で働けるようにしてほしい」と要求した。会社側が平沢工場で新たに採用するという採用人員に、残った17人を加えてほしいということだった。
 会社側は拒否した。「亀尾韓国オプティカルと平沢日東オプティカルは、それぞれ別の法人であるため、雇用を継承する義務はない」とした。労働者らは雇用継承が受け入れられるまで闘うことにした。2023年2月から無給で10カ月、労組事務室に出勤した。会社側はこれらの人たちが工場撤去を妨害しているとして、退去拒絶と業務妨害罪で刑事告訴する一方、妨害禁止の仮処分と撤去遅延にともなう「損害額」4000万ウォンの仮差押えを裁判所に申し立てた。8月末に仮差押えが認められ、パク・ジェジョンさんと同僚たちの自宅の伝貰の保証金が差押えられた。
 「私は昨年から携帯電話の料金も2万ウォン(約2300円)台に減らし、労組事務室の無線LANを使っています。保険もいくつか解約しました。そんな状況で自宅の伝貰の保証金まで差押えられたので、妻に本当に申し訳なかったです」。
 実際、会社側が仮差押えを申し立てる際に主張した被害金額は4000万ウォンだ。会社側は労組の反対で労組事務室の撤去が遅れたとして、8月3日(撤去を最初に試みた日)から8月24日(仮差押え申立日)までの約3週間で8406万ウォン(約970万円)に達する損害を被ったと主張した。内訳を細かく見てみると、その期間中の工場敷地の賃貸料から撤去業者の人件費と通信費、事務室費に交通費にいたるまで、すべて被害額に合算した。会社側はその一部の4000万ウォンをまず仮差押えするよう裁判所に申し立てた。

【写真】金属労組の韓国オプティカルハイテック支会のチェ・ヒョンファン支会長が11月13日、ハンギョレ21のインタビューを受けている=リュ・ウジョン記者//ハンギョレ新聞社

◆工場撤去計画書はまだ審査中なのに…
 工場撤去は市庁の許可が出てから着手できる。それまでは業者の人件費などは当然のことながら支出される。亀尾市庁によると、工場撤去(解体)計画書はまだ審査中だ。許可が出るまでは、工場撤去の遅延費用は労組事務室の撤去とは関係なく発生するという意味だ。このような背景は仮差押えの申立書からは抜け落ちている。
 会社側が主張した被害額4000万ウォンは、仮差押え制度を経て、請求額4億ウォン(約4600万円)にまで膨れ上がった。原理は簡単だ。仮差押えは、訴訟が長引く間に債務者が財産を隠蔽する可能性などに備え、債権者が債務者の財産を事前に保全する制度だ。債務者が多数ならば誰かは返済できるとの理由から、企業は各人に仮差押えをすることができる。韓国オプティカルはこれを十分に活用し、組合員全員にそれぞれ4000万ウォンの仮差押えを行った。ストライキで損失を出したという額は4000万ウォンであるにもかかわらず、組合員に行った仮差押えを合計すると4億ウォンになった。大邱(テグ)地方裁判所の金泉(キムチョン)支部は、仮差押え申立てをそのまま受け入れた。
 「組合員一人ひとり全員を共同不法行為者とみなして仮差押えするというのは、労使関係の上下関係を考えれば過剰な側面がある。労組活動は、個々人の行為というよりも労働組合という団体の行為だ。特に個人の不法行為がなければ、損害賠償の仮差押えは個々人にではなく労働組合に対してのみ行うべきだ」と、高麗大学法学専門大学院のキム・ジェワン教授(民法)は述べた。
 労働法の枠組み内で労組と使用者側として向き合う関係が、民法の枠組み内に入ったとたんに債務者と債権者の関係に変わった。
 「私たちが会社に何の損害を与えたのでしょうか。工場に入って機材を壊したのであれば、当然損害賠償しなきゃなりませんが、ただ労組事務室に出勤しただけのことです」。
 韓国オプティカルで勤務18年目となる労働者のチェ・ヒョンファンさんはそう語った。チェさんは「使用者側の一方的な主張が裁判所で受け入れられたことは、もっと理解できない」と言い、「仮差押えがこのように簡単に認められるとは思わなかった。妻が『あなたは闘争してもいいから、私たちの貯金だけは被害が及ばないようにしてほしい』と言っていたのに、自宅が仮差押えされた」と語った。
 労組側は、現時点では不当解雇に関する裁判所の判断を受けていないのに、労組事務室から撤去することは受け入れられないとする立場だ。2015年に外国の投資企業の撤収によって整理解雇されたハイディスの労組支会も、裁判所から不当解雇勝訴の判決を得たが、工場はすでに撤去された状態だったため、希望退職を受け入れなければならなかった。韓国オプティカル支会が空っぽの工場の場所でも守ろうとするのもそのためだ。

【写真】2023年11月15日、カトリック・プロテスタント・仏教の3宗教の団体が集まり、ソウル光化門の東和免税店前で「黄色い封筒法」を祈願する宗教者断食祈祷会を行っている。団体は法の成立まで断食祈祷会を続けるとしている=リュ・ウジョン記者//ハンギョレ新聞社

◆機材を壊したわけでもなく、ただ労組事務室に出勤しただけ
 「黄色い封筒法」があったとすれば、状況が違ったのだろうか。国会を通過した労働組合法改正案第3条によると、裁判所が「団体交渉、争議行為、その他の労働組合活動」に対して損害賠償の責任を認める場合、組合員のそれぞれの帰責事由と寄与度に応じ、責任の範囲を個別に決めなければならない。会社側がストライキなどで損害を被ったとすれば、原則的には労働組合を相手に請求しなければならず、組合員全員を債務者とみなして賠償を求めることはできないということだ。これまではストライキなどによって営業に支障が生じた場合、企業が損害額を大きく膨らませて組合員全員に賠償責任を負わせたりした。ストライキに参加したという理由で数億ウォンの債務を負うことになった組合員は、深刻な圧力を感じ、労組が解体したりもした。
 キム・ジェワン教授は「黄色い封筒法が施行されれば、仮差押えをされても、組合員が損賠額を全額負担することにはならない」としたうえで、「会社側が主張する金額のうち、組合員が『実際にしたこと』に対してのみ責任を負うことになる」と述べた。
 韓国オプティカルの会社側が不動産と伝貰の保証金の仮差押えを申し立てた労組組合員は10人だ。現在、雇用継承を要求する12人のうち、財産がある10人を仮差押え対象とした。
 韓国オプティカルの労働者たちは、このようなことがこれ以上繰り返されてはならないと話す。「損害賠償の仮差押えがこれほど容易に行われるということを、私も今回初めて知りました。会社側が一方的に主張したことをもとに、供託金だけで私たちの不動産全体を押さえたということです。これまで闘ってきた労働者たちが、激しい弾圧のなかで、いかに不安のもとで生きてきたか、亡くなった方々も本当に圧力が激しかったのだろうということを思い知りました。こういったことをなくすために、国会議員が(黄色い封筒)法を作りましたが、(公布されるまで)見守らなければ」。チェ・ヒョンファンさんは語った。
 「早くこのような法律が成立すれば、私たちのような弱者が少しでも保護されるのではないでしょうか。労働者も国民であり、一緒に生きていくことで国がうまく回るのに、あまりにも企業側に法が傾いているようです。今も法で許されているからこそ会社側は強気で言うんですよ。仮に大統領が(拒否権を行使)したら、弱者はさらに困難に陥るのではないでしょうか…」。勤務17年目の労働者のイ・ヒウンさんが付け加えた。
 韓国オプティカルの労働者たちとって、2023年の年末は運命の時間だ。労使がそれぞれ行った仮処分申立を待っているからだ。11月17日は、会社側の仮処分申立の尋問期日だ。12月1日は、労組側が要請した仮差押えの異議申立ての尋問期日だ。会社側が勝てば会社側が主張する「損害額」が日々増えることになり、労組側が勝てば仮差押えの金額を減らすことができる。最終的に労組側が望むことは、12人に減ったメンバーが平沢工場に雇用継承され、働けるようになることだ。

◆2023年11月15日、カトリック・プロテスタント・仏教の3宗教の団体が集まり、ソウル光化門の東和免税店前で「黄色い封筒法」を祈願する宗教者断食祈祷会を行っている。団体は法の成立まで断食祈祷会を続けるとしている=リュ・ウジョン記者//ハンギョレ新聞社

◆90億、158億、15億、246億ウォン…損害賠償訴訟の懲罰の歴史
 ストライキを行った労組に対して企業側が損害賠償訴訟で「懲罰」するのは、歴史のなかで絶えず繰り返されてきた。2003年の斗山重工業の損害賠償訴訟で命を絶った労働者のペ・ダルホさんを皮切りに、2009年には双龍自動車労組の組合員と家族30人あまりが、暴力鎮圧のトラウマと損害賠償訴訟の圧迫に苦しめられ、自ら命を絶った。2010年、現代自動車が非正規職労組を相手に90億ウォンの損害賠償訴訟を起こして認められた。キム・ジュイク支会長が損害賠償訴訟の圧力で2003年に命を絶った韓進重工業では、2012年にふたたび158億ウォンの損害賠償訴訟が起こされ、労働者のチェ・ガンソさんが亡くなった。半導体企業KECの労組組合員は、2016年から3年にわたり賃金30億ウォンを差し押さえられた。2018年にはCJ大韓通運が宅配労組を相手に15億ウォン、2021年には現代製鉄が労組と組合員641人を相手に246億ウォン、2022年には大宇造船とハイト真露がそれぞれ下請けと特殊雇用労組を相手に470億ウォンと27億ウォンの損害賠償訴訟を起こした。
 「黄色い封筒法」の公布を求めて無期限のハンガーストライキに突入した韓国基督教教会協議会などの宗教団体は、11月13日に声明を出し、「数多くの労働者と市民の切実な願いのもとで国会を通過した労組法第2条・第3条の改正案が、大統領の拒否権によって消えることのないよう、ただちに公布されることを願う」と明らかにした。

◆[黄色い封筒法とは?]
→ 労使の団体交渉の範囲をこれまでより拡張し、ストライキに対して企業が起こす損害賠償訴訟にも制限を設けた労働組合および労働関係調整法(労働組合法)第2条・第3条の改正案。これまでは、労使の団体交渉は一つの事業所の内部だけで保障され、社内下請けの労組や特殊雇用職の労組は実質的な労働条件を決める元請けと交渉できなかった。これらの労組が10年にわたり叫び続けた「本当の社長出てこい」というスローガンは、労働組合法第2条の「使用者」の定義を拡大する条文の改正として現実となった。また、これまでは占拠ストライキなどが発生した場合、会社側がストライキに参加した個人まで債務者とみなし、数億ウォン台の損害賠償訴訟を起こす慣行が続いた。新法は、損害賠償の主体を労働組合団体と個人に分離し、個人には直接の行為に対してのみ損害を賠償するように制限した。

シン・ダウン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2023-11-18 11:58


「The Hankyoreh」 2023-11-21 08:17
■[寄稿]黄色い封筒法こそ「真の」労働改革です
 民生に取り組むという大統領へ 
 イ・ビョンフン|中央大学名誉教授(社会学)

【写真】労組法2、3条改正運動本部が今月9日、国会正門前で黄色い封筒法の制定を求めるパフォーマンスを繰り広げている=キム・ヘジョン記者//ハンギョレ新聞社

 「黄色い封筒法」が紆余曲折の末、国会本会議で可決された。政府与党と財界は「国を亡ぼす悪法の強行」と激しく非難し、大統領に拒否権行使を求めている一方、野党と労働社会団体は30年あまりかかった法制定であるだけに、直ちに公布・施行することを求めている。「黄色い封筒法」の運命は、尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領が拒否権を行使するか否かにかかっている。
 「黄色い封筒法」は、2014年に47億ウォンの損害賠償が請求された双龍自動車の労働組合を支援するために多くの市民が自発的な連帯活動として展開した「黄色い封筒キャンペーン」を起源とする。黄色い封筒運動の趣旨は、労働組合の争議行為が違法とみなされて命じられる莫大な損害賠償、仮差押さえによる労組破壊と労働者の生活の破滅を防ごうというものだった。実際に、黄色い封筒運動を主導してきた市民団体「手を取って」によれば、1990年から2023年にかけて197件の損害賠償・仮差押さえ事件で3160億ウォンが請求され、これらの事件の94.9%が労働者個人を標的にし、彼らの暮らしと家庭を深刻に破壊したことが確認できる。多くの企業が損害賠償・仮差押さえを武器に労組の無力化を試みる過程で、2003年の労働者ペ・ダルホさんをはじめ数十人の「労働者烈士」を生み出してもいる。
 企業による雇用関係の外部化とデジタルプラットフォームの商業化によって、急速に増えている間接雇用の非正規労働者と従属的事業者に対し、労働基本権を保障しようというのが黄色い封筒法のもう一つの制定趣旨だ。派遣、請負、用役、下請けなどの様々なかたちで働く間接雇用の非正規労働者、特殊雇用労働者、フリーランサー、プラットフォーム仲介労働者などの従属的事業契約に縛られて働く労働者は、労働組合を結成して彼らの労働条件を実質的に支配する「本当の社長」である元請け大企業、フランチャイズ本部、プラットフォーム事業者、仲介エージェンシー、親企業との交渉を保障するよう求めてきた。元請け企業のほとんどが現行の労働関係法における使用者ではないとの理由で交渉を拒否しているため、不安定な労働者たちが自身の権益を改善するために違法ストライキに打って出た、というニュースにもよく接する。大宇造船海洋の下請け労組は昨年、元請けとの交渉を引き出すためにストライキを打たざるを得なかったが、それによって彼らの組合費や賃金ではとてもまかなえない途方もない額の損害賠償訴訟が起こされている。
 現行の労働組合法の弱点の改善を目指す「黄色い封筒法」は、最高裁の判例、国際労働機関(ILO)条約(第87号と第98号)の批准、国家人権委員会の勧告などによって、その必要性に対する社会的コンセンサスは十分に形成されている。ところが財界と保守メディアは、「黄色い封筒法」の施行はストの急増、労使関係の不安定化、法治秩序の崩壊などを招くため、企業投資の萎縮と雇用の減少に帰結し、結局は韓国経済を駄目にしてしまうと主張している。労働争議を制限し、違法ストに対する過剰な損害賠償請求を認める現行の労組法体系こそが、労働基本権を形骸化させるだけでなく、制度による保護の死角地帯に追い込まれた不安定な労働者たちの極限の闘争と違法争議行為をあおり、産業現場の法治秩序をより困難にし、対立する労使慣行から抜け出せなくしているのではないか。また、元請け・プラットフォーム大企業にとっては、「黄色い封筒法」によってこの間の「亀裂職場」(企業がコスト削減のために業務を下請けに押し付けることで、働く場所がバラバラになるうえ、労働者の処遇が劣悪になる現象)の乱用で得た利益の一部を取られるというコスト負担は発生するだろう。だが長い目でみれば、法律の外に置かれた労使関係の死角地帯を解消することにより、共生的な産業環境が構築され、労働市場の二重構造の緩和という社会的実益が得られると期待する。
 近ごろ大統領が民生(国民の暮らし)問題に取り組むと語っているのは喜ばしいことだ。元請け、フランチャイズ、プラットフォーム大企業の利益を代弁するのではなく、間接雇用の非正規労働者や従属的事業者のような労働弱者の権利と安全を守るならば、大統領が民生を強調したのは本気だったことが認められるだろう。尹錫悦大統領にはぜひお願いしたい。働く国民の生活に責任を取ろうとするなら、「黄色い封筒法」に拒否権を行使するのではなく、真になすべき労働改革として直ちに同法を施行せよ!と。

イ・ビョンフン|中央大学名誉教授(社会学) (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国原文入力:2023-11-20 15:21
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「90年代にもハナ会によるクーデター説…全斗煥の反乱の種が取り除かれるまで」

2023年11月29日 | 韓国で
「The Hankyoreh」 2023-11-29 08:51
■90年代にもハナ会によるクーデター説… 全斗煥の反乱の種が取り除かれるまで
 「ソウルの春」を踏みにじった陸軍少将全斗煥はどうやってクーデターに成功したのか
 クォン・ヒョクチョルの見えない安保//ハンギョレ新聞社

【写真】映画『ソウルの春』の中の全斗煥保安司令官の姿=プラスエムエンターテインメント提供//ハンギョレ新聞社

 映画『ソウルの春』は全斗煥(チョン・ドゥファン)など新軍部が1979年12月12日主導した軍事反乱を題材にしている。 12月12日夕方から13日未明までクーデターを起こした新軍部とこれを阻止しようとする鎮圧軍の9時間にわたる死闘を取り上げた映画だ。
 当時、保安司令官として陸軍少将に過ぎなかった全斗煥は、どうやってクーデターに成功したのだろうか。 この疑問は「保安司令官」と「ハナ会」というキーワードでひも解くことができる。 韓国軍内部では1960年代からクーデターを防ぐための装置が二重三重に設けられていた。 朴正煕(パク・チョンヒ)元大統領自身が1961年5・16軍事クーデターで執権したため、クーデターの再発防止のための安全装置が張り巡らされていた。
 全斗煥が司令官を務めていた保安司令部の主な任務は対転覆任務だ。 「ひっくり返す」という意味の「転覆」はクーデターを指す。 対転覆任務は、簡単に言えば、クーデターを防ぐことだ。
 保安司令部の対転覆任務遂行は、脅威となる要素を見つけて取り除くのではなく、転覆の兆候を事前に捉えて取り除くか、転覆に繋がる要因が発生しうる条件を探し出して管理することで、脅威となる要素の発生自体の防止を目指す。 保安司令部はクーデターの芽を摘むために、主要軍指揮官の公式・非公式に接触した人物と動向をきめ細かくチェックする。 主要軍指揮官の有線・無線通話も24時間傍受する。
 朴正煕元大統領は、本当に信頼できる人を保安司令官に任命した。 陸軍第1師団長を務めていた全斗煥は1979年3月、保安司令官に任命された。 全斗煥大尉は1961年5・16軍事クーデター直後、朴正煕将軍に抜擢され国家再建最高会議議長室民願秘書官を務めるなど、早くも朴正煕の腹心だった。
 保安司令部のクーデター予防措置にもかかわらず、クーデターが起きれば、1979年当時ソウル忠武路(チュンムロ)に駐屯した首都警備司令部やソウル松坡区(ソンパグ)の特殊戦司令部がソウルに入ってきたクーデター軍を鎮圧する。 これらの部隊を対転覆任務部隊とも呼ぶ。
 このようなクーデターの予防・鎮圧システムは1979年12月12日にもあったが、新軍部の軍事反乱を防ぐことはできなかった。 クーデターを防ぐべき全斗煥保安司令官がクーデター「首魁」だったからだ。 『ソウルの春』では保安司令部が軍通信網を傍受し、鎮圧軍の動きを手に取るように把握し対応する。 クーデター防止のために保安司令部に与えた軍通信網の傍受権限を、新軍部が逆にクーデターに悪用したのだ。 猫に鰹節のようなものだった。
 対転覆部隊の任務を遂行すべき特殊戦司令部と首都防衛司令部の一部指揮官も軍事反乱に加担し、行動隊長を務めた。 軍事反乱を鎮圧しようとしたチョン・ビョンジュ特戦司令官の部下であるパク・ヒド第1空輸特戦旅団長とチェ・セチャン第3空輸特戦旅団長、チャン・ギオ第5空輸特戦旅団長が反乱軍に加わり、直属の上官に銃口を向けた。
 
【写真】1979年12月12日クーデターに成功した全斗煥(前列左から5番目)、盧泰愚(4番目)ら新軍部の主軸勢力は翌日、保安司令部で勝利を祝う記念写真を撮った=『第5共和国前史』より//ハンギョレ新聞社

 彼らが正常な指揮系統と任務を無視してクーデターを起こすことができたのは、「ハナ会」という私組織で堅く結ばれていたからだ。 1963年、全斗煥、チョン・ホヨン、盧泰愚、キム・ボクトンなど陸軍士官学校11期生の主導で軍隊内の私組織ハナ会が結成された。 1979年12・12軍事反乱当時、保安司令部、特戦司令部、首都警備政令部などの主要メンバーがハナ会所属だった。 ハナ会はもともと朴正煕大統領の親衛組織を標ぼうし、朴大統領の庇護の下で勢力を拡大した。 朴大統領とハナ会は宿主と寄生生物のような関係だった。 ところが、1979年10月26日に朴大統領が亡くなると、寄生生物だったハナ会が宿主の座を射止めようと12・12軍事反乱を起こしたのだ。
 金泳三(キム・ヨンサム)大統領は就任するやいなや、ハナ会を解体し始めた。 金大統領は就任11日後の1993年3月8日、陸軍参謀総長と機務司令官を更迭し、ハナ会の粛正に着手するとともに、栗谷不正、人事不正、12・12軍事クーデター関連者を軍から追い出すなど、電光石火のようにハナ会関連者たちを片付けていった。 このようなハナ会の清算過程は「政治的なパフォーマンス」とも皮肉られたが、金泳三政権の関係者たちは当時の状況では不可欠な措置だったと反論する。
 「1979年冬、全斗煥保安司令官を東海(トンヘ)警備司令官に左遷しようとする計画が漏れて12・12軍事反乱が起きた。この点を金泳三大統領は意識せざるを得なかった。 就任初期、盧泰愚政権時代に任命された軍将官の中で、金大統領が信頼できる人はほとんどいなかった。 ハナ会と妥協して同居するつもりがないなら、政権発足初期に息をつく暇もなく刀を突きつけるしかなかった」。
 金泳三大統領も退任後、1999年8月、あるメディアとのインタビューで、ハナ会の解体に一か八かの覚悟で臨んだと述べ、「それを行っていなかったら、政権は存続できなかっただろうし、次の金大中(キム・デジュン)政権も誕生しなかっただろう。再びクーデターを起こしたはずだ」と述べた。
 金泳三政権が発足した1993年夏、情報機関や軍、大統領府などにはクーデター説が広がり始めた。 閑職に追いやられたハナ会所属の一部の将軍たちが資金調達と兵力の動員などの役割を分担し、クーデターを準備しているという噂が流れたのだ。
 「ハナ会のクーデター謀議説」が広がったことを受け、韓国政府はクーデターを主導する可能性がある将軍とその周辺人物の電話を傍受するなど動向を密着監視し、クーデターの資金源を探るために銀行口座を隅々まで調べた。 結局、うわさにとどまったが、クーデター説は1993年末まで幽霊のようにソウル上空を漂っていた。
 1990年代半ばまで政局が不安になれば、軍部の介入する可能性が取り上げたりもした。 この頃、各種世論調査では、軍部が韓国政治で最も影響を及ぼす集団に挙げられていた。
 しかし、2000年以降、韓国社会でクーデターを起こすのは不可能だと思われている。 何より社会が変わったからだ。 韓国社会が政治・経済・社会的に多元化され成熟した。 軍が主導的な役割を果たす時代は過ぎ去った。

【写真】1996年8月26日、12・12軍事反乱を主導したなどの疑いで囚人服を着て1審宣告公判を待つ全斗煥と盧泰愚=ハンギョレ資料写真//ハンギョレ新聞社

 万が一、一部の政治的野望を持つ軍人がクーデターを起こし、一時的に政権獲得に成功したとしても、永久に政権を握り続けることはできないし、任期を終えた後には処罰を受けることになる。 金泳三政権時代、検察は12・12軍事反乱について「成功したクーデターは処罰できない」という見解を示した。 これに対する国民の抵抗が激しくなり、国会は1995年5・18民主化運動などに関する特別法を議決し、全斗煥と盧泰愚に対する起訴が行われた。 1997年4月、最高裁の確定判決で全斗煥には無期懲役、盧泰愚には懲役17年が言い渡された。 成功したクーデターも処罰されるという先例が作られた。 ハナ会のように公式指揮系統まで破り周到にクーデターを企画し実行できる軍内の私組織はもう存在しない。
 金泳三政権以降、軍に対する文民統制の原則は大きな流れとして定着した。 文民統制は国民が選出した政治権力(大統領)と文民の官僚(国防長官)が安全保障政策を主導・決定し、安全保障専門家集団である軍は軍事作戦でこれを後押しする方式だ。 民主軍隊は政治的中立を前提に軍本来の任務だけに専念する安全保障専門家集団だ。 『ソウルの春』は民主軍隊とクーデターは両立できないという事実を改めてもの語っている。

クォン・ヒョクチョル記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/politics/polibar/1118152.html
韓国語原文入力:2023-11-28 22:11
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「もう一つの戦争、招いてはならない…朝鮮半島危機の打開策を」

2023年11月28日 | 国家・社会
「The Hankyoreh」 2023-11-28 09:14
■[コラム]もう一つの戦争、招いてはならない…朝鮮半島危機の打開策を
 9・19南北軍事合意の白紙化で朝鮮半島危機が高まる 
 外交は消え、軍事だけが幅を利かす現実を直視すべき 
 6カ国協議の創意的再開を推進すべき時

【写真】2005年9月19日、6カ国協議の首席代表が北京の釣魚台で9・19共同声明に合意、採択した後、明るい表情で記念撮影している。左から米国のクリストファー・ヒル国務次官補(東アジア太平洋担当)、日本の佐々江賢一郎外務省アジア大洋州局長、中国の武大偉外務次官、韓国のソン・ミンスン外交通商部次官補、北朝鮮のキム・ゲグァン外務次官、ロシアのアレクサンドル・アレクセイエフ外務次官/聯合ニュース

 世界中の視線がロシア-ウクライナおよびイスラエル-パレスチナの戦争に注がれている。だから「2つの戦争」という言葉が流行している。しかし、現実はそうではない。国連は今年1月に、全世界の紛争の水準が第2次大戦終戦以降の最高値に達したと発表している。2022年の時点で全世界で55の武力衝突が起き、2020年前後の戦争の平均持続期間も以前の長さにその約3分の1がプラスされた8~11年を記録したとするスウェーデンのウプサラ大学とノルウェーのオスロ平和研究所の共同研究結果も、国連の発表を後押ししている。
 このような状況は何を意味するのだろうか。まず戦争がはじまると、休戦や終戦は非常に難しくなっている。また、国連や米国をはじめとする大国の仲裁努力も少なくなっており、その力量も大幅に落ちている。そのうえ大国が直接・間接的に戦争に介入していることで、状況はいっそうこじれている。「国際平和と安定」のために様々な特権を与えられている国連安保理の常任理事国が戦略競争に余念がないということが、大きく影響している。何よりも対立を仲裁・解決し、戦争を防止する外交がほば失われているのが、こんにちの世界の現在地だ。
 「戦争は始めるより終わらせる方が難しい」という教訓を遠くから探してくる必要もない。まさに朝鮮半島こそ、終戦も平和協定も70年以上ない「停戦状態」に置かれているからだ。そのような朝鮮半島において、再び戦争の可能性を懸念しなければならない状況が造成されつつある。2019年に朝鮮半島平和プロセスが座礁してから確実に積み重なってきていた危機の兆候は、先日南北が9・19軍事合意の無効化を宣言したことで、よりいっそうはっきりとしてきている。偶発的な衝突と拡大を防止する「ガードレール」の一つが除去されつつあるからだ。このような事情にもかかわらず、危機の収拾を目指す外交は失われた状態にある。
 2018年12月に中断された南北対話は、空転状態が1971年以降で最長となっている。2019年10月に中断された朝米対話も同じだ。北朝鮮は対話の扉を固く閉ざしており、韓米は「対話の扉は開かれている」と述べつつも、そのための実質的な努力はしていない。では、朝鮮半島危機を打開する代案はないのだろうか。私は、南北と米中日ロが参加する中で2003年から2008年まで行われた6カ国協議の創意的な復活が必要だと思う。いくつかの理由がある。
 第1に、危機管理の有用性だ。6カ国協議に対する評価は様々ありうるが、この多国間会議が2000年代前半に朝鮮半島危機の管理と防止に貢献したことだけは明らかだ。当時の米国のブッシュ政権は、北朝鮮をイラク、イランと共に「悪の枢軸」、かつ先制攻撃の対象と規定していた。朝米ジュネーブ合意も破棄され、北朝鮮は核兵器開発に本格的に乗り出していた。また米国は北朝鮮との2国間対話を強く拒否していた。6カ国協議は、このような状況の収拾に大きく貢献した。現在も南北・朝米関係は最悪へと突き進んでいるが、2国間対話の可能性は非常に低い。過去の例に照らし合わせ、対話は危機の防止と管理に寄与するという点を考えれば、そこに6カ国協議の有用性を見出すことができる。
 第2に、朝鮮半島問題の6カ国化だ。最近の朝中、朝ロ関係は、北朝鮮の不可逆的な核保有国宣言と核の高度化にもかかわらず、1990年代初頭以降で最も深まっている。特に朝ロ関係は軍事協力すら可視化している。韓米・日米同盟も日増しに強まっており、韓米日関係もやはり3カ国軍事同盟といえるほど癒着しつつある。そのため、朝鮮半島問題をめぐって「韓米日」対「朝中ロ」という対決構図が本格化するのではないかという懸念も高まっている。これは逆に、6カ国が集って6カ国が共に朝鮮半島の緊張緩和に努めなければならないということを意味する。
 第3に、実現の可能性だ。議長国である中国は6カ国協議の再開が必要だという原則的な立場と、「双中断」および「双軌並行」に代表される均衡的な解決策を維持してきた。また、中国は6カ国の中で他のすべての加盟国と意思疎通できる唯一の国だ。先日、激しい競争と対立を繰り広げてきた米国や日本と首脳会談をおこなったことからも、それが分かる。大きな注目は集められなかったが、ロシアの提案も注目に値する。ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相は10月19日、北朝鮮のチェ・ソンヒ外相との会談後の記者会見で、朝中ロは「前提条件なしに朝鮮半島の安保問題を話し合うための定期的な交渉プロセスを構築することを支持する」と述べた。6カ国協議という名称は使っていないものの、内容的にはそれを意識した発言だ。韓米日も北朝鮮との対話の必要性を絶えず提起してきた。これらを総合すると、6カ国協議の再開を通じて朝鮮半島の緊張緩和を図ることが最も現実的な選択となりうる。
 6カ国協議が実現したら、最大主義ではなく最小主義からはじめることが望ましい。6カ国協議は当初、朝鮮半島の非核化と平和体制の構築、南北関係の発展と朝米・日朝関係の正常化、北東アジア平和安保体制の構築を目指していた。しかし短期的には、このような目標を実現することは不可能だ。特に韓米日が強調してきた非核化や、北朝鮮が要求してきた米国の敵視政策の撤回がそうだ。このような状況で最大主義の目標を掲げれば、6カ国協議は口げんかに終わり、状況のさらなる悪化へとつながる公算が高まる。
 したがって最小主義の課題を設定し、まずはその実現を目指す必要がある。肝心なのは、朝鮮半島における偶発的な衝突とその拡大を防止するとともに、崩壊した軍事的信頼を回復する措置を講じることだ。これは、まず既存の合意を復活させることから始められる。崩壊した9・19軍事合意と南北ホットラインの復元、北朝鮮の核実験、および弾道ミサイル技術を用いたすべての発射の中止と、大規模な韓米合同演習の中止がそれに当たる。また、朝ロ軍事協力の中止と、米国の朝鮮半島戦略資産の展開および韓米日合同演習の中止も議論の対象にしておく必要がある。6カ国が武力の使用および威嚇をしないという消極的な安全保障を宣言することも同様だ。
 6カ国が「共同研究グループ」を作ることも考慮に値する。このグループでは中長期的かつ根本的なアプローチが必要不可欠な事案、すなわち朝鮮半島の核問題の解決、停戦体制の平和体制への転換、北東アジア平和安保体制の構築、朝米・日朝関係の正常化、北東アジアにおける軍備統制と軍縮の推進などの問題が扱えるだろう。もちろん、当事者の立場が鋭く対立する可能性はある。協議体をまず共同研究グループとして提案した理由もここにある。6カ国を含む国際社会の民間専門家たちが参加する集まりになれば、さらに良い。民間の専門家たちの方が、率直ながらも創意的でバランスの取れた意見を提示できるからだ。

チョン・ウクシク|ハンギョレ平和研究所所長 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2023-11-27 10:00
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「日本外相「慰安婦判決是正」迫る…韓国外相「合意を尊重」、的外れな返答」

2023年11月27日 | 日本軍隊性奴隷
「The Hankyoreh」2023-11-27 08:36
■日本外相「慰安婦判決是正」迫る…韓国外相「合意を尊重」、的外れな返答

【写真】パク・チン外交部長官(中央)と日本の上川陽子外相(左)、中国の王毅外相が26日午後、釜山海雲台区のヌリマルAPECハウスでの韓中日外相会談に先立ち、手を取り合って記念写真を撮っている=キム・ジョンヒョ記者//ハンギョレ新聞社

 韓中日外相が26日、釜山(プサン)で4年3カ月ぶりに会談した。しかし、韓中日首脳会談の開催日程を決めることはできなかった。パク・チン外交部長官はこの日、韓日、韓中2国間外相会談もおこなったが、日本は韓国司法による「慰安婦裁判の結果」について「国際法違反」だとして強く抗議し、中国は9・19南北軍事合意の無効宣言について韓国との意見の違いを示した。
 この日午前の韓日外相会談の直後、日本外務省は報道資料で、「上川陽子外相は23日、ソウル高裁で国際法上の『主権免除原則』が否定され、原告の訴えを認める判決が下されたことを非常に遺憾に思い、国際法違反を是正するために韓国政府に適切な措置を講じるよう再び求めた」と述べた。ソウル高裁民事33部(ク・フェグン裁判長)は23日、日本軍「慰安婦」被害者イ・ヨンスさん、故クァク・イェナムさん、キム・ボクトンさんの遺族ら16人が日本政府を相手取って起こした損害賠償請求訴訟の控訴審で、一審の却下判断を取り消し、請求金額の全額の賠償を日本政府に命じる判決を下した。
 外交部は報道資料でこのような内容を明らかにしていない。ただし外交部の関係者は「パク・チン長官は慰安婦判決についてどのような意見を日本に表明したのか」と記者団に問われ、「2015年の韓日慰安婦合意を両国の公式合意として尊重していると伝えた」と説明した。韓国司法の決定に対して日本が遺憾を表明したにもかかわらず、それについては直接答えず「的外れ」な返答をしたかたちだ。韓日は朴槿恵(パク・クネ)政権時代の2015年12月28日のこの合意で、日本軍慰安婦問題は「最終的かつ不可逆的に終結した」と宣言している。
 韓日外相会談に続いて行われた韓中外相会談では、両国は朝鮮半島に関する懸案をめぐって意見の食い違いをみせた。外交部の関係者によると、パク長官は、9・19南北軍事合意の一部の効力を停止したのは「国民の安全のための最小限の防衛的措置」だとし、「9・19軍事合意に拘束されず追加挑発で威嚇し、その責任を韓国に転嫁する北朝鮮の態度を明確に指摘した」と述べた。しかし中国の王毅外相は「各主体が冷静さを保ち、政治的解決の大きな方向性を維持していかなければならない」という中国側の従来の立場を繰り返したという。
 それに続く3国外相会談の終了後、パク長官は「3人の外相は、3国の協力を早期に復元し、正常化していくことで合意した」と述べた。しかし3国外相は、韓中日首脳会談については「3国がそれぞれ都合がよく、最も早い時期に開催しよう」との従来の立場を再確認しただけで、開催日を決めることはできなかった。
 よって韓中日首脳会談は、政府が当初は年内開催を予告していたのとは異なり、来年に先送りされるとみられる。チョ・テヨン国家安保室長はこの日、3国外相会談の直前に聯合ニュースTVに出演し、「(3国首脳会談の年内開催の)扉は閉じられてはいないが、今のところ年内開催は容易ではなさそうだ」と述べた。外交部の当局者も3国外相会談の直後、記者団に対し、「3国首脳会談の開催と協力の復元および正常化について、王毅外相も何度も強い支持を表明した」としつつも、「様々な考慮要因があるため、今回の会談で開催日が決められなかったのは事実」だと述べた。
シン・ヒョンチョル記者、北京/チェ・ヒョンジュン特派員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2023-11-26 19:43


「聯合ニュース」 2023.11.26 13:48
■韓日外相 慰安婦訴訟判決巡り議論=朴氏「尊厳回復へ努力を」
 張智彦
【釜山聯合ニュース】韓国の朴振(パク・ジン)外交部長官は26日午前、韓中日外相会談のため来韓した日本の上川陽子外相と釜山市内のホテルで1時間半近く会談した。両氏は23日に韓国の高裁が日本政府に対し旧日本軍の慰安婦被害者らへの損害賠償を命じた判決など両国間の懸案について話し合った。

【写真】韓国の朴振(パク・ジン)外交部長官(中央)は26日、韓中日外相会談のため来韓した日本の上川陽子外相と釜山で会談した。上川氏と会談会場に入る朴氏(共同取材)=(聯合ニュース)

 日本政府は、原告の訴えを却下した一審判決を破棄して賠償を命じた同判決について激しく反発。韓国政府に対し国際法違反の是正のため措置を取るよう求めている。この日の会談でも上川氏は朴氏に日本政府の立場を改めて伝達。これに対し朴氏は「2015年の(韓日の)慰安婦合意を両国の公式合意として尊重している」と政府のスタンスを改めて表明した。
 韓国外交部の当局者は会談での朴氏の発言について、「(慰安婦合意文にある)被害者たちの名誉と尊厳の回復のために両国が努力しなければならず、このような(状況の)なか韓日が建設的かつ未来志向的な関係を今後も模索するため努力しなければならないという趣旨で述べた」と説明した。
 韓日政府による15年末の慰安婦合意には、日本政府による謝罪や10億円の拠出のほか両国が協力して被害者の名誉と尊厳を回復するための事業を行うとの条件が含まれており、慰安婦問題を最終的かつ不可逆的に解決したとした。
 日本側は1965年の韓日請求権協定や同合意で慰安婦問題は解決しており、今回の高裁判断はこれに反する国際法違反と主張している。
 同当局者は「被害者が損害賠償を受ける法的権利がないと考えるのか」と報道陣の問いに明確に答えなかった。まだ今回の判決文が一般公開されていないなか、法的な論点に対する具体的な言及を避けたと受け止められる。
 また両外相はこの日の会談で韓日、韓米日による先端技術分野での協力、韓日領事当局の協力などを深めることで一致。国連など多国間外交の舞台で両国が一致した対応を取れるよう引き続き意思疎通することも確認した。約4年間開催されていない韓日中首脳会談の早期開催実現でも意見が一致した。
 この日の会談は1時間の予定だったが、約30分超過した。両外相が韓日協力に関する評価や今後の方向性について詳細に語ったため予定の時間をオーバーしたという。


「The Hankyoreh」 2023-11-24 08:46
■[フォト]「慰安婦」被害者、損害賠償請求訴訟で日本に勝訴…イ・ヨンスさん「万歳」

【写真】慰安婦被害者と遺族ら21人が日本国を相手取って起こした損害賠償請求訴訟の控訴審で、ソウル高裁が日本国に請求金額の全額の賠償を命じる判決を下した23日午後、被害者のイ・ヨンスさんがソウル瑞草区のソウル高裁から出てきて万歳している=ペク・ソア記者//ハンギョレ新聞社

 元日本軍「慰安婦」被害者が日本政府を相手取って起こした損害賠償請求訴訟の控訴審で、裁判所は原告の請求金額の支払いを命じる判決を下した。
 この日の判決公判に車椅子に乗って参加した日本軍「慰安婦」被害者のイ・ヨンスさんは、裁判所を出る際に明るく笑いながら「ありがとうございます」と盛んに述べた。
 ソウル高裁民事合議33部は23日、イ・ヨンスさん、故クァク・イェナムさん、キム・ボクトンさんの遺族ら21人が起こした損害賠償請求訴訟の控訴審で、却下判断を下した原審の判決について「一審判決を取り消し、原告の請求金額をすべて認める」と述べた。
 イさんら日本軍慰安婦被害者と遺族21人は、2016年12月に被害者1人当たり2億ウォン(約2300万円)の賠償を求めて、日本政府を相手取って訴訟を起こしていた。

【写真】慰安婦被害者と遺族ら21人が日本国を相手取って起こした損害賠償請求訴訟の控訴審で、ソウル高裁が日本国に請求金額の全額の賠償を命じる判決を下した23日午後、被害者のイ・ヨンスさんがソウル瑞草区のソウル高裁から出てきて万歳している=ペク・ソア記者//ハンギョレ新聞社
【写真】慰安婦被害者と遺族ら21人が日本国を相手取って起こした損害賠償請求訴訟の控訴審で、ソウル高裁が日本国に請求金額の全額の賠償を命じる判決を下した23日午後、被害者のイ・ヨンスさんがソウル瑞草区のソウル高裁から出てきて喜んでいる=ペク・ソア記者//ハンギョレ新聞社
【写真】慰安婦被害者と遺族ら21人が日本国を相手取って起こした損害賠償請求訴訟の控訴審で、ソウル高裁が日本国に請求金額の全額の賠償を命じる判決を下した23日午後、被害者のイ・ヨンスさんがソウル瑞草区のソウル高裁から出てきて喜んでいる=ペク・ソア記者//ハンギョレ新聞社
【写真】慰安婦被害者と遺族ら21人が日本国を相手取って起こした損害賠償請求訴訟の控訴審で、ソウル高裁が日本国に請求金額の全額の賠償を命じる判決を下した23日午後、被害者のイ・ヨンスさんがソウル瑞草区のソウル高裁から出てきて万歳している=ペク・ソア記者//ハンギョレ新聞社
【写真】イ・ヨンスさん(右)が23日午後、ソウル瑞草区の民主社会のための弁護士会(民弁)の事務所で行われた控訴審判決に対する立場発表記者会見に出席し、民弁のチョ・ヨンソン会長(左)から祝いの花束を受け取っている=ペク・ソア記者//ハンギョレ新聞社
【写真】イ・ヨンスさん(左から2番目)が23日午後、ソウル瑞草区の民弁事務所で行われた控訴審判決に対する立場発表記者会見に出席し、「(裁判部に対して)ありがたいのではない。当然のことだ」と語り、参加者たちが笑っている=ペク・ソア記者//ハンギョレ新聞社
【写真】23日午後、ソウル瑞草区の民弁事務所で行われた控訴審判決に対する立場発表記者会見で、イ・ヨンスさん(前列左から2番目)をはじめとする出席者が日本政府の公式謝罪を求めている=ペク・ソア記者//ハンギョレ新聞社
ペク・ソア記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2023-11-23 14:43


「The Hankyoreh」 2023-11-24 07:38
■日本軍「慰安婦」損害賠償請求訴訟で勝訴、今度は日本政府に直に問う
 ソウル高裁、一審の判断覆し原告勝訴判決 
 被害者側「これまで勝訴と却下が交錯し真相究明難しかった 
 障害は解消されたため、日本の責任ある謝罪を求める」

【写真】23日午後、日本軍「慰安婦」被害者と遺族が日本政府を相手取って起こした損害賠償請求訴訟で、ソウル瑞草区のソウル高等裁判所は原告の請求を却下した一審の判断を取り消した。イ・ヨンスさんが判決を聞いて喜んでいる/聯合ニュース

 「一審判決を取り消す。原告に請求金額の全額と遅延損害金を支払うよう命ずる」
 23日午後2時、ソウル中央地裁308号室。裁判官が勝訴判決を読み上げると、「慰安婦」被害者のイ・ヨンスさん(95)は車椅子からがばっと立ち上がった。両手を合わせて裁判長に向かってしきりに頭を下げ、涙を流した。
 2016年末に訴訟を起こした「慰安婦」被害者は11人だったが、今や残っているのはイさんただ一人。この日の判決が確定すれば、韓国国内の「慰安婦」被害者が日本政府を相手取って起こした損害賠償請求訴訟はすべて勝訴で終結する。被害者支援団体は「判決の食い違いが統一されたので、日本政府に謝罪と責任ある賠償を求める土台が確立された」と述べた。
 ソウル高裁民事33部(ク・フェグン裁判長)は23日午後、イさんと故クァク・イェナムさん、キム・ボクトンさんの遺族ら16人が日本政府を相手取って起こした損害賠償請求訴訟の控訴審で、一審の却下判断を取り消し、請求金額をすべて認めた。イさんら日本軍「慰安婦」被害者と遺族は2016年12月に、1人当たり2億ウォン(約2300万円)の賠償を求め、日本政府を相手取って訴訟を起こしていた。
 一審と二審の判断を分けたのは、「主権免除(国家免除)」の法理を認めるか否かだった。二審は「(最近の)国際慣習法によると、日本の行為は韓国領土で韓国国民に対して行われた不法行為であるため、日本の主権免除は認めず、韓国裁判所の裁判管轄権を認めるのが妥当だ」と述べた。
 主権免除とは、国内の裁判所が他国の政府とその財産に対して裁判管轄権を行使できないようにすることで、国を互いの裁判管轄権から保護しようという国際法の規則。一審は主権免除の法理を認め、訴訟を却下していた。
 二審は日本政府の行為の違法性も認めた。二審は「日本国の前身である日本帝国も日本国の現行憲法第98条2項に則り、日本国が締結した条約と国際法規を順守する義務がある」とし、「『陸戦の法規慣例に関する条約(ハーグ陸戦条約)』、『婦人及び児童の売買禁止に関する国際条約』、『奴隷条約』、『強制労働に関する条約』などに違反している」と述べた。続けて「日本帝国の公務員が過去に刑法第226条で禁止する『国外移送目的の略取・誘引・売買』行為をおこなっただけでなく、日本帝国政府はこれを積極的に助長したりほう助したりした」と説明した。
 1965年の韓日請求権協定と2015年の「慰安婦」合意によって被害者の損害賠償請求権が消滅したかどうかは判断を下さなかった。裁判所は「被告側の抗弁がないため、特に判断しなかった」と述べた。日本政府は韓国裁判所の判決に対応していないため、この日の判決はそのまま確定する可能性が高い。
 イさんを含む「慰安婦」被害者たちは韓国政府に対応を求めてきたが、2015年の韓日「慰安婦」合意以降は「韓国政府に期待することは困難」と判断し、わらをもつかむ思いで韓国裁判所で損害賠償請求訴訟を起こした。
 しかし、勝訴したにもかかわらず、実際に賠償を受けるのは容易ではないとみられる。日本政府の資産を強制的に売却して賠償金を調達しなければならないが、外交問題などが複雑に絡んでいるからだ。
 「慰安婦」被害者の日本政府を相手取った訴訟は、1次(ナヌムの家)と、この日判決が下された2次(正義記憶連帯・民弁)に分けられる。1次訴訟では2021年1月に、日本政府に被害者1人当たり1億ウォンの賠償を命じる原告勝訴の判決が下され、まもなく確定した。しかし1次訴訟の原告たちも、3年が経過したにもかかわらず実質的な賠償は受けられていない。
 1次訴訟の原告たちは賠償金と訴訟費用を受け取るため、財産明示決定と訴訟費用の取り立てを請求した。裁判所は主権免除の法理を引用し、訴訟費用は「取り立てられない」との決定を下した。日本政府の韓国国内の財産目録の公開を命じる財産明示決定は、別の裁判所によって認められた。原告はこの決定に則り、日本政府が「和解・治癒財団への拠出金」の返還請求権を持っていることを確認し、これを差し押さえることを検討中だ。
 この日勝訴した2次訴訟の原告たちは、「返還請求権の差し押さえ」ではなく日本政府に直に謝罪と賠償を求める、との立場だ。訴訟を率いたクォン・テユン弁護士は記者会見で「本日の判決までは勝訴・却下と判決が交錯していたため、真相究明運動をおこなったり日本政府に賠償義務の履行を求めたりするうえで困難があった」とし、「今や障害は解消され、裁判所で被害者の権利が確認されたため、日本政府の直接の謝罪と責任ある賠償を求める」と語った。
イ・ジェホ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2023-11-23 17:49


「The Hankyoreh」 2023-11-24 07:51
■[社説]日本政府の「慰安婦賠償責任」を再確認した歴史的判決

【写真】日本政府を相手取り、日本軍「慰安婦」被害に対する損害賠償訴訟を起こしたイ・ヨンスさんが23日午後、ソウル瑞草区のソウル高等裁判所で、控訴審の勝訴判決を言い渡された後、「ありがとうございます」と言いながら、両手を合わせている=ペク・ソア記者//ハンギョレ新聞社

 23日、日本政府に日本軍「慰安婦」被害者と遺族に損害を賠償する責任があることを再確認する韓国裁判所の判決が出た。2021年にソウル中央地裁で日本政府の損害賠償責任を認めた最初の判決が出たのに続き、今回は上級裁判所であるソウル高裁が同じ趣旨の判決を下した。戦時中に「軍慰安婦」のような反人道的な犯罪を犯した国は、その責任から逃れられないという原則を明らかにしたもので、歴史的・法的に意味が大きい判決だ。
 日本政府を相手にした「慰安婦」損害賠償訴訟は二つに分かれて進められてきた。「第1次訴訟」と呼ばれる故ペ・チュンヒさんなど被害者と遺族12人が起こした訴訟は、2021年の判決で勝訴し、日本政府が控訴しなかったため、原審が確定した。一方、イ・ヨンスさんや故クァク・イェナムさん、キム・ボクトンさんなど被害者と遺族16人が提起した「第2次訴訟」では「訴訟が成立しない」という却下判決が下された。互いに異なる裁判所の判決による混乱があったが、この日の第2次訴訟の控訴審で第1次訴訟と同じ結論が出たことで、司法府の判断に統一性が備わることになった。
 裁判の主な争点は「主権国家である外国政府に対しては裁判権を行使できない」という「主権免除」の法理を「慰安婦」問題にも適用すべきかどうかだった。同日、裁判所は国連協約と外国事例などを根拠に挙げ、「裁判が開かれる国の領土内で、その国民に対して発生した違法行為については、その行為が(外国の)主権的行為であるかどうかに関係なく、主権免除を認めない内容の国際慣習法が存在するとみるのが妥当だ」と明らかにした。2021年の判決と同様に、反人道的犯罪を犯して他国の個人に損害を与えた国家は主権免除の法理に頼ることはできないことを再確認したのだ。
 韓国司法府は、日本企業を相手取った強制動員訴訟ではこれに先立つ2018年に、最高裁(大法院)全員合議体判決で損害賠償責任を認めている。今回「慰安婦」訴訟でも一貫した司法府の見解が確立されたわけだ。しかし、尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権は対日低姿勢外交を展開する中で、司法府の判断まで歪曲し「歴史問題の封印」に躍起になり、強制動員関連の最高裁判決にもかかわらず「第三者弁済」という譲歩案を貫こうとしている。法治国家なら、政府は司法府の判断を尊重しなければならない。判決の趣旨に合わせて、歴史的正義の実現と国民の被害回復に努めなければならない。日本政府も、韓国政府の一方的な譲歩に喜ぶだけではなく、歴史問題の解決に向けた真摯な努力を示さなければならない。

(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2023-11-24 02:41
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「ソウルで発掘された朝鮮戦争の民間人犠牲者遺骨、布をかぶせ6年間放置されていた」

2023年11月26日 | 韓国で
「The Hankyoreh」 2023-11-23 07:27
■ソウルで発掘された朝鮮戦争の民間人犠牲者遺骨、布をかぶせ6年間放置されていた
 国防部「国軍の戦死者ではない」2017年に中断 
 一度さらされて再び埋められた遺骨は腐食が速い 
 ソウル牛耳洞の民間人犠牲者、初の公式発掘 

【写真】2017年に朝鮮戦争の民間人犠牲者の遺骨発掘作業が中断されたため、遺骨にかぶせられた不織布=三韓文化財研究院提供//ハンギョレ新聞社

 1950年の朝鮮戦争から73年を経て、朝鮮戦争の民間人犠牲者の9~10体の遺骨が、ソウル江北区牛耳洞(カンブック・ウイドン)で先月公式に発掘された。ソウルは朝鮮戦争期に民間人虐殺が最も多く発生した場所の一つとして知られているが、集団埋葬地が発掘されるのは今回が初めて。
 今回の発掘は、国防部の遺骨発掘鑑識団が存在を確認したにもかかわらず、国軍の戦死者ではなく民間人であるとの理由で発掘・収拾を中断し土で覆って以来、6年ぶりに実施された。発掘機関同士の情報共有、協力システムを構築する必要があると指摘する声があがっている。

◆箱の中に高齢女性、10歳に満たない子どもの遺骨
 ソウル江北区役所は、先月16~20日に江北区牛耳洞338番地一帯で朝鮮戦争期の民間人犠牲者と推定される9~10体の遺骨を発掘・収拾し、現在は鑑識をおこなっていることを21日に明かした。同区役所は真実・和解のための過去事整理委員会(真実和解委)からの2200万ウォン(約252万円)の補助金で遺骨発掘を実施した。

【写真】10月にソウル江北区牛耳洞338番地で発掘された遺体が最初にあらわになった時の様子=三韓文化財研究院提供//ハンギョレ新聞社

 そもそも牛耳洞の遺骨の存在が初めて確認されたのは、6年前の2017年11月16日。江北区を流れる仁寿川(インスチョン)の擁壁工事をしていた労働者たちが遺骨を発見し、彼らの通報を受けて江北警察署科学捜査隊が確認し、5~6体の遺骨、靴、装弾子(クリップ)などを発掘した。
 韓国軍の戦死者の遺骨と誤認した警察は、現場を国防部の遺骨発掘鑑識団に引き渡した。その後、同年12月6日までの発掘過程で、さらに女性と子どもの遺骨および遺品が確認された。国防部は民間人犠牲者だと推定し、発掘を中断した。6・25戦死者発掘法上、軍には民間人の遺骨を発掘する権限がない、というのがその理由だった。
 国防部から改めて現場を引き渡された江北警察署はその後、行政安全部過去事支援団および江北区役所と協議し、現場を保存するため不織布をかけ、その上から土をかぶせた。警察が「偶然」発掘・収拾した5~6体の遺体は、鑑識を経て現在は世宗(セジョン)追悼の家に安置されている。今回発掘された遺骨も合わせると、牛耳洞338番地で発掘された遺骨の数は15~16体分になる。

◆ソウルで軍と警察によって殺された民間人犠牲者は5千人あまり

【写真】10月19日、ソウル江北区牛耳洞338番地の現場で、調査員たちが遺骨発掘作業をおこなっている=三韓文化財研究院提供//ハンギョレ新聞社

 発掘作業を受託した三韓文化財研究院のハ・ヨンジュン責任調査員は、「面積70平方メートルの発掘地から出た骨片は200点で、太ももの骨が最も多く、頭骨は5~6個が割れた状態で出てきた」、「3体の子どもの遺骨と、箱に入った入れ歯と一緒に出てきた高齢女性が目についた」と語った。木箱に入れられた2体は、6年前に国防部の遺骨発掘鑑識団が土をかぶせていったものと推定される。
 江北警察署による2017年の現場鑑識の結果、1950年10月ごろに国軍に指揮された大韓青年団の団員と警察によって、人民軍の駐留時期の人民軍の協力者とその家族であるとの疑いをかけられて集団虐殺された犠牲者であることが確認された。真実和解委は、朝鮮戦争期にソウルで軍や警察によって殺された民間人犠牲者は5千人あまりにのぼるとみている。昨年に発表された釜慶大学産学協力団の報告書によれば、全国の遺体埋葬に関する調査の対象地となっている381カ所のうち、ソウルにあるのは「牛耳洞338番地」が唯一。

【写真】ソウル江北区牛耳洞338番地の遺骨発掘現場の10月の様子。掘削機で地面を掘っている=三韓文化財研究院提供//ハンギョレ新聞社

◆「トラックに人が乗せられてきて射殺されるのを見た」
 彼らはどのような人たちなのだろうか。朝鮮戦争前から牛耳洞で暮らしていたウォン・ヨンボンさん(89)はハンギョレに、「中学1年生くらいだった1950年10月ごろ、警察が朝鮮戦争の前に北から共産党を嫌ってやって来て暮らしていた情報提供者の音楽の先生(当時45~50歳)の一家5人を、仁寿川周辺で射殺するのを目撃した」と語った。遺骨には音楽の先生夫婦と先生の義母、7歳以下の2人の息子のものが含まれている可能性があるとみられる。
 事件当時9歳で、牛耳洞に住んでいたアン・サンウクさん(82)もハンギョレに「トラックに人が乗せられてきて、今の軽電鉄の事務所のある発掘現場で射殺されるのを目撃した。射殺される場面を密かに目撃したら見つかって、殴られ、地下室に夜遅くまで閉じ込められていた」と証言した。
 牛耳洞のような遺骨の放置や発掘の遅れなどの問題が再発しないよう、国軍の戦死者と民間人犠牲者の遺骨を発掘する機関同士の円滑な協力システムの構築が必要だと指摘する声もあがっている。国防部の遺骨発掘鑑識団は常設の独立部隊となっているが、民間人の遺骨発掘は一時的な機関である真実和解委、または遺族会や市民団体がおこなってきた。
 遺骨発掘の専門家である忠北大学のパク・ソンジュ名誉教授は「一度さらされて再び埋められた遺骨は、腐食がはるかに速く進む」とし、「遺骨を放置せずに収拾するコントロールタワーが必要だ」と述べた。実際に今回発掘された遺骨は、ひどく砕けたり割れたりしていたという。

【写真】入れ歯と高齢女性の遺骨が入っていた木箱。2017年11~12月に作業をおこなった国防部遺骨発掘鑑識団が、作業中断に際して箱に収めたものとみられる=三韓文化財研究院//ハンギョレ新聞社
【写真】ソウル江北区牛耳洞338の遺骨発掘現場。10月11日撮影。発掘前にドローンで撮影したもの=三韓文化財研究院提供//ハンギョレ新聞社
【写真】10月11日にソウル江北区牛耳洞338の遺骨発掘現場で執り行われた開土祭。朝鮮戦争戦後民間人犠牲者全国遺族会のキム・ボギョン会長が追悼の辞を読み上げている=三韓文化財研究院提供//ハンギョレ新聞社
【写真】10月、ソウル江北区牛耳洞338の現場から発掘された骨の整理作業が行われている=三韓文化財研究院提供//ハンギョレ新聞社

コ・ギョンテ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2023-11-22 03:00
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