「聯合ニュース」 2025.01.20 15:03
■韓国警察 大統領警護処と秘密施設の家宅捜索に再着手=戒厳関連の資料押収へ
【ソウル聯合ニュース】韓国の尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領の「非常戒厳」宣言について捜査する警察の特別捜査団は20日、ソウル・竜山の大統領警護処と三清洞にある大統領の秘密施設「安全家屋(安家)」に対する家宅捜索に再び乗り出した。
三清洞の安全家屋(資料写真)=(聯合ニュース)
警察関係者によると、特別捜査団の捜査官は同日午後1時35分ごろ、安全家屋の防犯カメラの映像を押収するため、三清洞に向かい令状を提示した。
また、大統領室庁舎にある警護処の家宅捜索にも着手した。同処には安全家屋の防犯カメラ関連サーバーがある。
当初、大統領室も家宅捜索の対象と伝えられたが、大統領室とは令状執行のための協議を行っているという。
特別捜査団は先月27日、安全家屋と大統領室に捜査官を送り、捜索令状を提示したが、警護処が敷地内への進入を認めず執行はできなかった。当時、同処は公務上・軍事上の機密などを理由に捜索を拒否した。
警察は防犯カメラの映像を入手し、非常戒厳宣言の前後に安全家屋に出入りした人や尹大統領からどのような指示を受けたかなどを確認する方針だ。全国警察組織トップの趙志浩(チョ・ジホ)警察庁長と金峰埴(キム・ボンシク)ソウル警察庁長は先月3日の戒厳宣言の約3時間前、安全家屋で尹大統領と面会し、戒厳関連の指示が記された文書を受け取った。戒厳が解除された同月4日には朴性載(パク・ソンジェ)法務部長官や李祥敏(イ・サンミン)前行政安全部長官ら4人が尹大統領と面会した。
「The Hankyoreh」 2025-01-20 12:24
■尹大統領「公捜処にこれ以上言うことはない」…取り調べ拒否
拘束後の最初の取り調べも拒否する見込み
高位公職者犯罪捜査処(公捜処)は19日、内乱首謀の容疑で拘束された尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領に出頭を要求したが、尹大統領は応じないものとみられる。
尹大統領の弁護団のユン・ガプクン弁護士はこの日、「公捜処には出頭できない」として、「公捜処ではこれ以上言うことはない」と述べた。弁護団はこの日、京畿道義王市(ウィワンシ)のソウル拘置所に収監されている尹大統領に接見し、本人の意思を反映してこの決定を下したという。公捜処は尹大統領側に「19日午後2時に出頭し取り調べを受けよ」と通告していた。
公捜処は、尹大統領が引き続き取り調べに応じない場合は、引致(連行)や拘置所での取り調べなどを検討する方針だ。公捜処の関係者はこの日、「引致は法の規定にはなく、判例で認められているだけであるため、精緻な検討が必要な問題」だとして、「まだ措置を取るかどうかを申し上げるのは難しい」と語った。
ソウル西部地裁はこの日午前2時50分ごろ、「証拠隠滅の恐れがある」との理由で、内乱首謀および職権乱用・権利行使妨害の容疑がかけられている尹大統領の拘束令状を発行した。これにより、未決収容者だった尹大統領は、ソウル拘置所の収容棟の10平米(3坪)あまりの独房に移動するなど、正式な拘置所入所手続きを踏んだものとされている。
ペ・ジヒョン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2025-01-19 13:21
「The Hankyoreh」 2025-01-20 12:27
■尹大統領、非常立法機関メモ「自分が書いたかはっきり覚えていない」
12・3戒厳時にチェ・サンモク副首相が受け取ったメモ
18日の拘束前被疑者審問で答える
尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領が18日の拘束前被疑者尋問で、12・3非常戒厳時にチェ・サンモク経済副首相が受け取ったという「非常立法機関設置」メモについて「自分が書いたのかキム・ヨンヒョン(前国防部長官)が書いたのか、はっきりと覚えていない」と答えたことが、19日に伝えられた。
【写真】ソウル麻浦区のソウル西部地裁は19日午前3時頃に尹錫悦大統領の拘束令状を発行した。写真は同日午前の同地裁の様子=チョン・ヨンイル先任記者//ハンギョレ新聞社
18日にソウル西部地裁で拘束前被疑者尋問を行った令状当直のチャ・ウンギョン部長判事は、尹大統領に「非常立法機関とは具体的に何なのか。戒厳宣布後に非常立法機関を創設する意図があったのか」を尋ねたという。調査によると、尹大統領は12・3非常戒厳宣布の直前に行われた国務会議で、チェ権限代行に「非常立法機関の関連予算を準備せよ」などの「非常戒厳宣布後の措置事項」が記されたメモを渡したという。検察はこのメモを根拠に、尹大統領には国会に代わる「非常立法機関を創設する意図」があると判断した。これは憲法機関である国会の権能を無力化しようとしていたことを示す、内乱の重要な証拠となる。
この質問に対して尹大統領は、「(メモは)キム・ヨンヒョンが書いたものか、私が書いたものか、はっきり覚えていない。非常立法機関をきちんとやるつもりはなかった」と答えたという。チャ部長判事は再度「非常立法機関とは正確にはどのような性格のものなのか」と問いつめたが、尹大統領は「正確には覚えていない」と述べて返答を避けたという。
チョン・ヘミン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2025-01-19 16:26
「The Hankyoreh」 2025-01-20 07:38
■「異常な目つきに恐怖を感じた」…尹大統領支持者が襲撃した韓国裁判所、混沌の3時間
警察の安易な対処に批判も
【写真】内乱首謀の疑いが持たれている尹錫悦大統領が拘束された中、19日午前、ソウル麻浦区のソウル西部地方裁判所の看板が落ちている/聯合ニュース
尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領に対する拘束令状が発行された直後、興奮した支持者たちがソウル西部地裁に乱入し、3時間にわたり乱暴を働いたのは、司法府を対象にした史上初の「白色テロ」だった。裁判所の窓と外壁を壊し、令状を発付した判事を探し出すために歩き回っていた支持者たちを避けて、裁判所の職員たちは屋上に待避した。
尹大統領の逮捕適否審が棄却された16日夕方からソウル麻浦区(マポグ)のソウル西部地裁前に集まり始めた尹大統領の支持者たちは、休日の18日には4万4千人(午後4時40分基準で警察非公式推算)まで膨れ上がった。尹大統領が方針を変え、同日午後2時から開かれる令状実質審査に出席するというニュースが流れると、支持者の数は急速に増えた。
尹錫悦大統領が内乱首謀の容疑で拘束されたことを受け、一部の尹大統領支持者たちがソウル西部地裁の内部に乱入し、違法の暴力事態を起こした19日午後、破損された西部地裁の内部の様子/聯合ニュース
支持者たちの望みとは異なり尹大統領の拘束令状が発付されたというニュースが19日午前3時ごろに流れると、興奮した支持者300人余りが暴徒と化した。数十人の支持者が先に裁判所の裏門で警察の阻止を突破し、「裏門が突破された」という叫び声と共に、自信を得た残りの支持者たちが裁判所の塀を乗り越えた。警察のバリケードは成すすべもなく崩れ、極度に興奮した彼らの襲撃を受けた裁判所はあっという間に修羅場となった。
午前3時21分頃、100人余りが裁判所の外壁とガラス窓を壊し、西部地裁本館に進入した。彼らは「尹錫悦大統領」と「令状棄却」を叫び、庁舎内部で消火器やモニター、植木鉢、案内板など、目につくものは何でも投げ捨てた。
傘や鉄パイプを持った人たちが、令状を発付した「チャ・ウンギョン判事を探し出す」と言いながら興奮した様子で判事室のある7〜9階まで上がった。彼らは法廷と判事室のドアを次々と蹴って開き、「どこにいる」、「いない」と大声を上げながら捜索した。
ソウル西部地裁が19日午前3時頃に尹錫悦大統領の拘束令状を発付した中、過激な支持者らによって壊された同日午前の西部地裁の様子=チョン・ヨンイル先任記者//ハンギョレ新聞社
幸い、チャ判事は拘束令状を発付した直後、車に乗って裁判所を後にしたという。
この日未明、ソウル西部地裁で万一の事態に備えて待機中だった保安管理隊は、最高裁・ソウル高裁の派遣人員まで合わせて計15人だった。しかし、1階で警察の阻止線が突破され、保安管理隊と総務課の職員など20人余りは8階と11階の屋上に急いで避難したという。
当時、裁判所内部で避難した職員は「目つきがあまりにも異常だったので、到底太刀打ちできないという恐怖を感じた」、「デモ隊の無法地帯のように歩き回るが姿があまりにも凄惨で、脳裏から離れない」と全国公務員労組を通じてハンギョレに伝えた。
暴徒らが裁判所を襲撃して11分後の午前3時32分頃、警察が大規模で投入され鎮圧が始まった。この時も裁判所の裏門側で塀を越える人々が続出し、警察に激しく抵抗する人も少なくなかった。
1時間後の4時30分まで、支持者たちは警察の盾や警光棒を奪って警察官に暴行を加えたり、レンガを投げたり、消火器を乱射しながら対峙を続けた。警察は5時30分になってようやく完全鎮圧服を着た機動隊1400人余りを投入した。30分で裁判所内外の支持者をほとんど鎮圧したが、すでに裁判所は荒れ果てた後だった。
警察の対応があまりにも安易だったという指摘もある。尹大統領の逮捕適否審が棄却された直後から、すでに集会の雰囲気は過熱していた。尹大統領の令状発付による騒乱も十分予想できる状況だったが、警察は同日未明、西部地裁近くに少数の警察官を配置しただけで、暴動を初期に阻止できなかった。
同日の鎮圧過程で支持者46人が建造物侵入、器物破損などの疑いで逮捕され、警察署に連行された。前日、高位公職者犯罪捜査処の車を妨害した容疑などで連行された40人を加えれば、2日間で計86人にのぼる。逮捕者数はさらに増える見通しだ。
警察の負傷者も出た。5人は軽傷、4人は額や指が切れ、指の骨が折れるなど重傷を負った。ソウル西部地裁はこの日午後「まだ被害額は推算ができない」としながらも、「明日は正常に業務が行われる」と述べた。
パク・コウン、パク・テウ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2025-01-19 22:36
「The Hankyoreh」 2025-01-20 03:14
■【社説】裁判所襲撃・乱暴、尹錫悦大統領の度重なる不服・扇動が引き起こした
法治の根幹を崩しており、背後まで処罰が必要
【写真】内乱罪被疑者である尹錫悦大統領に対する拘束令状が発付された19日早朝、ソウル市麻浦区のソウル西部地方裁判所に尹大統領の支持者たちが侵入し、ガラス窓や器物を破壊している=ユーチューブ「ロックTV」より//ハンギョレ新聞社
限度を超えた。尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領は軍を動員して国会(立法府)を侵略し、尹大統領を擁護する極右デモ隊は裁判所(司法府)を襲撃した。裁判所の決定が気に入らないからといって暴力を使うのは、韓国社会を支える「法治」と「民主主義」を完全に破壊する行為であり、反社会的だ。韓国社会を支えるためにも、絶対に容認してはならない。尹大統領や与党「国民の力」など、事態に責任のある者は深く反省し、自省しなければならない。「12・3内乱」以降、韓国社会は岐路に立っている。
19日午前3時ごろ、尹大統領に対する拘束令状が発付されたという一報が伝わると、ソウル西部地裁の前に集まっていた支持者数百人が裁判所に乱入した。支持者たちは窓を壊し、什器を投げて、令状を発付した裁判官をみつけようと、裁判所内を歩き回った。無法地帯の暴徒だ。デモ隊86人が公務執行妨害や器物破損などの容疑で連行された。チェ・サンモク大統領権限代行は「法と原則に従い、厳正に捜査せよ」と警察庁に指示し、イ・ホヨン警察庁長官職務代行も「暴力デモの背後まで徹底して捜査する」と明言した。これまでデモ隊がデモの過程で警察と衝突したことはあったが、このように裁判所を襲撃したことは、大韓民国の建国以来は初めてのことだ。適切に処罰しないならば、繰り返される可能性がある。韓国社会の根幹を守るためにも、徹底的に捜査し、厳罰に処さなければならない。
今回の事態に対する最大の責任が尹大統領側にあることは、当然のことだ。尹大統領は「12・3内乱」後も捜査機関の調査に応じず、裁判所の合法的な令状も「不法」だと言い張り、「官邸座り込み」を行うなど、「司法府無視」の戦略で一貫している。さらに極右デモ隊に対しては「ユーチューブでみている」と言って励まし、「最後まで戦う」として煽った。「法治」を無視する行為だ。
暴力事態で世論が悪化する兆しをみせると、尹大統領は遅ればせながら立場文を出し、「平和的な方法で意思を表現する」よう求める態度を示すことはあった。しかし、「悔しさと怒りの心情は十分に理解」「警察も寛容の姿勢で事態を解決していく」と言うなど、暴力デモ隊に肩入れする姿勢をみせた。何より、この事態が自身によって触発されたという責任感をまったく感じていない。国民の力も同様に、この日開かれた緊急非常対策委員会の会議で、「暴力はいけない」としながらも、逆に「警察の過剰対応を真相究明せよ」という荒唐無稽な主張を展開した。国民の力が極右暴力デモ隊と手を切ることができないのであれば、どのようにして、これ以上、民主的な大衆政党のふりをすることができるのだろうか。
加えて、極右ユーチューバーたちが、デモ隊の裁判所乱入に至るまで、主導的な役割を果たしてきた。「漢南洞(ハンナムドン)官邸前デモ」を中継放送して扇動し、発言内容が過激化していき、最終的には裁判所乱入にまで至った。極右ユーチューバーは、いまや韓国社会にとっての物理的脅威になっている。暴力扇動に対する捜査も厳正に行われなければならない。
(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2025-01-19 18:54
「The Hankyoreh」 2025-01-20 01:11
■尹大統領、現職として初の拘束…裁判所「証拠隠滅の恐れ」
裁判所「証拠隠滅の恐れあり」
【写真】内乱首謀容疑で逮捕された尹錫悦大統領の拘束前被疑者尋問(令状実質審査)が終了した18日、ソウル麻浦区のソウル西部地裁近く。尹大統領を乗せた法務部の護送車と警護車両がソウル拘置所に向かっている=共同取材写真//ハンギョレ新聞社
内乱の容疑がかけられている尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領が拘束された。現職大統領の拘束は憲政史上初。
ソウル西部地裁のチャ・ウンギョン令状当番部長判事は19日、内乱首謀および職権乱用・権利行使妨害の疑いが持たれている尹大統領の拘束令状を発行し、その際、「容疑者が証拠を隠滅する恐れがある」と述べた。尹大統領の拘束令状実質審査は、令状の当番となっていたチャ部長判事の審理で、前日午後2時から午後6時50分まで、休憩時間を除いて4時間30分間にわたって行われた。
尹大統領は当初、ソウル西部地裁に拘束令状が請求されたら令状実質審査に出席しないとの立場だったが、弁護団の説得で翻意して出席し、法廷で40分ほど自ら釈明したという。
令状実質審査では、公捜処の複数の検事がまず拘束の必要性を強調した。公捜処は拘束令状でも、尹大統領は「典型的な確信犯」だと指摘していた。公捜処の検事は令状実質審査でも、尹大統領は不正選挙疑惑に確信を持って非常戒厳を宣布したため、いつでも極端な行為を繰り返す可能性があると主張したという。また、尹大統領が釈放さた場合の、自らに不利な供述や行動をした人物に報復する危険性も懸念したという。公捜処のプレゼンテーションは70分間にわたって行われた。
尹大統領側はキム・ホンイル、ソン・ヘウンの2人の弁護士が弁護にあたった。尹大統領の弁護団は、非常戒厳宣布などは罪にならないだけでなく、公捜処には内乱罪の捜査権がないうえ、ソウル西部地裁には公捜処が請求した拘束令状を発行する管轄権がないと反論したという。また、15日の公捜処による尹大統領の逮捕は、軍事上の秘密を要する場所はその責任者の承諾なしには捜索できないと規定した刑事訴訟法110条に違反しているため違法だと主張したという。尹大統領側の反論も公捜処と同様、70分間にわたって行われた。
その後は、尹大統領が自ら釈明した。尹大統領は、非常戒厳を宣布せざるを得なかった理由と、非常大権の行使は内乱罪で処罰できないという主張を主に展開したという。尹大統領の発言後、20分間の休廷をはさんで再開された審査は、午後6時50分まで続いた。尹大統領は審査終了前にも5分間、最後の陳述をおこなったという。
公捜処側からは、15日の尹大統領の逮捕当日に取り調べを担当した捜査4部のチャ・ジョンヒョン部長検事ら6人の検事が出席した。尹大統領側の弁護人はキム・ホンイル、ユン・ガプクン、ソン・ヘウン、ソク・トンヒョン、チャ・ギファン、ペ・ジンハン、イ・ドンチャン、キム・ゲリの8人が出席した。
尹大統領の弁護団のユン・ガプクン弁護士は令状実質審査後、記者団に対し、「(尹大統領は)事実関係や証拠関係、法理の問題について誠実に説明し、答えた」とし、公捜処が主張する再犯の危険性については、「話にならないと明確に説明した」と述べた。公捜処の検事は、記者団の質問には何も答えなかった。
拘束期間は逮捕の時点から最長20日であるため、この期間内に起訴が実現する見通しだ。15日から20日目に当たるのは来月3日だが、逮捕適否審に要した期間を除かなければならず、尹大統領側が拘束の適切さを争う拘束適否審を申し立てる可能性もあるため、起訴日はそれより遅れる可能性もある。
公捜処は大統領の起訴権がないため、起訴のためには事件を検察に移牒しなければならない。検察と公捜処はすでに、裁判所に拘束期間の延長を申請しなければならない拘束10日目以前に、事件を検察に送付することで合意している。そのため、公捜処は旧正月連休前に尹大統領を検察に移牒するとみられる。
チョン・ヘミン、キム・ガユン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2025-01-19 03:03
「The Hankyoreh」 2025-01-20 01:10
■尹錫悦支持者の度を越した裁判官攻撃… 裁判所「法治主義を否定するもの」
【写真】チョン・デヨプ裁判所行政処長が19日午前、ソウル麻浦区の西部地裁で、尹錫悦大統領の支持者が同地裁で起こした集団暴力事態の現場点検を終え、取材陣の質問に答えている/聯合ニュース
ソウル西部地裁に尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領の支持者が乱入するという史上初の事態について、裁判所は「法治主義を全面否定する行為」だとして厳正な対応を強調した。 尹大統領の支持者たちの度を越した裁判官攻撃に対し、警察は身辺保護などに着手した。
チョン・デヨプ裁判所行政処長は19日午前、ソウル麻浦区(マポグ)のソウル西部地裁を訪れ、現場の状況を点検した。 チョン処長は「テレビで見たよりも10倍、20倍残酷な現場の状況を確認した」と語った。 続けて「(デモ隊のこのような行為は)法治主義を全面否定する行為であり、刑事上でみても深刻な重犯罪にあたる」として、「すべてのことは韓国憲法の定める司法手続きの中で解決されてはじめて、韓国を守ることができる」と強調した。
12・3内乱から47日を経てようやく尹錫悦大統領は拘束されたが、強制捜査の過程での司法府に対する尹大統領の支持者の攻撃はやんでいない。 すでに尹大統領の1回目の逮捕・捜索令状を発行したソウル西部地裁のイ・スンヒョン部長判事の個人情報がオンラインに公開され、中傷の標的になっている。 逮捕適否審を棄却したソウル中央地裁刑事32単独のソ・ジュンソプ判事に対しては、「逮捕適否審を棄却したソ・ジュンソプ、出退勤途中に捕まれば斬首する」という殺害予告がオンラインコミュニティーに投稿されている。
尹大統領の弾劾裁判を審理する憲法裁判官に対する攻撃も同様だ。 ソウル鍾路区(チョンノグ)の憲法裁判所の周辺には、「違法な証拠採択したイ・ミソン、アウト(OUT)」など、特定の裁判官を攻撃するステッカーが貼られている。 尹大統領弾劾反対集会では、内乱罪捜査記録謄本の送付を決めたイ・ミソン裁判官らに対する中傷が極に達している。
チョン・デヨプ処長はこの日、「判事が身辺に対する脅威なく裁判を信念に従って独立的に行うことができてはじめて、法治主義はまともに作動する。身辺に支障がないよう、様々な措置を講じている」と述べた。 ソウル西部地裁を管轄するソウル麻浦警察署も、身辺保護審査委員会の審査を経て、20日午前から尹大統領の拘束令状を発行したチャ・ウンギョン部長判事の身辺保護にあたることを決めている。
チャン・ヒョヌン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2025-01-19 18:17
「聯合ニュース」 2025.01.19 16:43
■地裁で暴動の尹氏支持者ら86人 厳しい刑事処罰の見通し
【ソウル聯合ニュース】韓国の尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領の逮捕に反発して、逮捕状の発付を決めたソウル西部地裁に押し入って暴動を起こした尹氏の支持者らは厳しい刑事処罰を受けることになりそうだ。 支持者らは同地裁が19日未明に逮捕状を発付したことを受け、敷地内に侵入しガラスを割るなどした。
ソウル西部地裁が19日未明に尹大統領に対する逮捕状を発付したことを受け、尹氏の支持者らが同地裁の敷地内に押し入り、ガラスを割るなどした=(聯合ニュース)
今回の事態で身柄を拘束されたのは86人。 法曹界はまず、刑法上の建造物侵入容疑と器物損壊容疑が適用されるとみる。
建造物侵入罪は3年以下の懲役または500万ウォン(約53万円)以下の罰金に処せられる。 器物損壊罪は7年以下の懲役または1000万ウォン以下の罰金刑となる。
団体や集団での威力などと認められれば、刑罰はさらに重くなる。
地裁に侵入した尹氏の支持者らは警察官と裁判所の職員を威嚇したため、公務執行妨害容疑なども適用される可能性がある。 さらに、警察官らにけがを負わせれば、公務執行妨害致傷容疑も成立する。
「聯合ニュース」 2025.01.19 11:19
■逮捕の尹大統領 2月に起訴・8月に一審判決の見通し
【ソウル聯合ニュース】内乱を首謀した容疑などで19日に逮捕された韓国の尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領は約20日間の取り調べを受けてから、来月初めに起訴される見通しだ。 逮捕状は独立捜査機関「高位公職者犯罪捜査処(公捜処)」が請求したものの、同機関は法令上、起訴する権限を持たないため検察の特別捜査本部が起訴するとみられる。 一審判決は、被告人を最大6カ月間拘束できることなどから、8月初めに出ると予想される。
捜査当局に出頭する尹大統領=(聯合ニュース)
同期間内に一審判決が出なければ、尹大統領は釈放された状態で裁判を受けることになる。
このため、裁判所も期間内に判決を出すとみられる。ただ尹大統領側が、捜査機関が確保した証拠に同意せず、証拠採用のため関連者すべての証言を聞くことになると、裁判は遅れることもあり得る。
裁判で内乱を首謀した罪に対し有罪が認められれば、尹大統領は無期懲役か死刑を言い渡される可能性がある。減刑の理由があれば、有期懲役刑か有期禁固刑になることもあり得る。
「The Hankyoreh」 2025-01-18 08:54
■【社説】内乱・逮捕後も詭弁、言いがかり…国民を愚弄するのはやめよ
【写真】内乱を首謀した容疑で高位公職者犯罪捜査処に逮捕された尹錫悦大統領が15日午後、京畿道果川市の公捜処での取り調べを終え、義王のソウル拘置所に移動している=共同取材写真//ハンギョレ新聞社
尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領が高位公職者犯罪捜査処(公捜処)による逮捕は不当だとしてソウル中央地裁に申し立てていた逮捕適否審が16日、棄却された。尹大統領は、ソウル西部地裁が発行した逮捕状は「違法な令状」であり、公捜処には内乱罪の捜査権がない、などと言いがかりをつけたが、裁判所はすべて適法と判断した。にもかかわらず尹大統領は公捜処の調査に応じず、逆にオ・ドンウン公捜処長とウ・ジョンス国家捜査本部長を内乱容疑で告発した。何とか司法の混乱を助長して支持者を最大限集結させることを意図したものとみられ、嘆かわしい。
尹大統領は、逮捕され、公捜処に護送された15日を除けばソウル拘置所にとどまっており、公捜処の取り調べに一切応じていない。公捜処においても、非常戒厳の正当性や内乱罪が成立しない理由などを一方的に述べ、その後、すべての供述を拒否したという。彼は自身の逮捕を指揮したオ処長らを「法治主義を破壊する公権力の行使であり、憲政秩序を乱す重大犯罪」だとして検察に告発した。「後にであっても違法行為が発見されれば、最後まで闘って責任を問う」と脅しをかけた。盗人猛々しいにもほどがある。名こそ「元検事総長の大統領」だが、このような無茶苦茶が許されるのか。
尹大統領も、このような態度が刑事裁判はもとより弾劾審判にも不利に働くことは、よく分かっていることだろう。にもかかわらずこのような態度を取っているのは、捜査と裁判、そして憲法裁判所の弾劾審判に至るまで、すべての司法手続きに対する不信を助長することを意図したものだと考えられる。法治主義の根幹を傷つけてでも、ひとまず危機を免れようというのだ。時代錯誤的な非常戒厳で国に恥をかかせておきながら、最後まで自分だけは生き残ろうという態度だ。尹大統領に同調して司法の混乱をあおる国民の力と保守メディアの態度も嘆かわしい。公捜処の捜査権と逮捕状に対する裁判所の一貫した判断にもかかわらず、やみくもに司法府を揺さぶっている。軍事独裁政権の非常戒厳に同調した彼らの恥にまみれた過去を想起させるほどだ。
このような扇動のせいで、極右勢力の蠢動(しゅんどう)はますます猛威を振るっている。漢南洞(ハンナムドン)の官邸前に集結し、尹大統領の逮捕状執行を妨害していた熱烈な支持者たちは、今度は公捜処とソウル拘置所に押しかけている。あげくの果てに17日には、尹大統領の逮捕適否審を棄却した判事の身辺を脅かす投稿がオンラインコミュニティに掲載され、警察が捜査に乗り出した。法を尊重する気持ちなどみじんもない内乱罪容疑者と同調勢力によって、法治主義が脅かされている。公捜処は尹大統領の拘束令状を請求した。司法府は、内乱勢力の法治主義に対する嘲笑を断固として処罰すべきだ。
(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2025-01-17 18:33
「中央日報日本語版」 2025.01.19 11:06
■韓国警察、ソウル西部地裁乱入の尹大統領支持者40人現行犯逮捕…2日間で86人
【写真】19日午前2時53分、尹錫悦大統領に対する拘束令状が発付されると、支持者がソウル西部地裁に乱入し暴れ回った。デモ隊が壊したソウル西部地裁の看板が踏みにじられている。イ・ヨングン記者
尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領に対する拘束令状が発付された19日明け方に支持者がソウル西部地裁に侵入し、窓を割って建物内に侵入するなど暴れ回った。警察は機動隊など1400人を投じてデモ隊を鎮圧した。この過程でデモ隊40人が現行犯で逮捕された。警察は今回の暴動と関連し捜査専従チームを設置する方針だ。
警察によると、この日午前5時基準でソウル西部地裁周辺の秩序は完全に回復した。ソウル西部地裁前の麻浦大路(マポデロ)の通行も一部再開された。
警察関係者は「現在まで建造物侵入容疑と公務執行妨害容疑などでデモ隊40人以上を現行犯で逮捕した」と明らかにした。デモ関連連行者は前日からの2日間で86人に達する。
18日にも拘束審査が行われたソウル西部地裁では尹大統領支持者のうち少なくとも40人が逮捕された。当時彼らは裁判所のフェンスを乗り越えたり、警察官に暴行したりして警察の統制に応じず逃走した容疑などを受けている。
ソウル西部地裁は19日午前3時ごろに内乱首謀、職権乱用などの容疑を受ける尹大統領に対し拘束前被疑者尋問(令状実質審査)をした後、「被疑者が証拠を隠滅する恐れがある」として拘束令状を発付した。
こうした知らせが伝えられると裁判所前に集まっていた数百人の尹大統領支持者は憤怒して裁判所内への進入を試みた。その後午前3時20分ごろに裁判所の裏門に集まっていた一部デモ隊はガラス窓とガラスドアを割り建物のシャッターを上げて裁判所内部に入った。彼らはテレビや現金自動預払機(ATM)などを壊し暴れ回った。
デモ隊は午前3時32分ごろから投入された警察により外部に連れ出され始めた。支持者らはソウル市内の警察署に分散して連行された。
「中央日報日本語版」 2025.01.19 09:21
■尹大統領支持者がソウル西部地裁に侵入し暴れる…「みんな殺す」警察に暴行も
【写真】ソウル西部地裁で18日、内乱首謀容疑を受ける尹錫悦大統領が拘束前被疑者尋問(令状実質審査)を受けている中で支持者が裁判所の塀を挟んでデモをしている。イム・ヒョンドン記者
尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領が19日明け方に内乱首謀容疑で拘束(逮捕)されると、支持者がソウル西部地裁に侵入して暴れ回った。
この日午前3時ごろ、尹大統領に対する拘束令状が発付されると、西部地裁を囲んでデモを行っていた支持者らは極度に興奮し裁判所の裏門で警察の阻止を突破した。彼らは「みんな殺してしまえ」と警察を威嚇し消火器も噴射した。
警察から盾などを奪い裁判所の正門とガラス窓を破壊して3時21分ごろに裁判所内部に乱入した後も什器破壊を継続した。令状を発付した判事を探すかと思えば、警察に向かってプラスチック製のいすや灰皿を投げつける支持者もいた。一部は「大統領が望んだのはこうしたことではない」「このようになってどうするのか」として口論したりもした。
警察は午前3時32分ごろに大規模人材を投じてデモ隊を鎮圧し始めた。彼らは全員現行犯で逮捕されている。警察は「建造物侵入、退去拒絶、未申告不法集会を継続している。ただちに退去せよ」と警告放送をし自主解散を要請している。
「The Hankyoreh」 2025-01-17 09:20
■尹大統領による43日間の「卑しい政治」【寄稿】
パク・ロクサム|ジャーナリスト
【写真】内乱首謀の容疑で高位公職者犯罪捜査処に逮捕された尹錫悦大統領が15日午後、京畿道果川市の公捜処での取り調べを終え、ソウル拘置所に移動している=写真共同取材//ハンギョレ新聞社
12月3日の大統領による非常戒厳令の宣布と内乱暴動は、43日後の1月15日午前の逮捕令状の執行で一段落した。扉を破壊して銃を撃ってでも封鎖しようとした国会で自身の弾劾訴追案が可決されてから見せた大統領の姿は、「目も当てられない」、それこそ目を開いて見ることすらできなかった。漢南洞(ハンナムドン)の家の中でとぐろを巻き、適法な法の執行を前にして三重四重に車壁を作り、有刺鉄線で遮り、警護処の公務員たちを盾にした。憲政史上類を見ない、法と秩序を形骸化させた大統領の姿であり、大韓民国は大きな混沌の渦から一歩も抜け出せずにいた。
振り返ってみると、このすべての混沌は、政治をすべき時に政治をせず、歪んだ法を強調してきたという過ちからはじまり、法秩序を正すべき時にむしろ卑しい政治をしたという過ちによって膨らんだ。
総選挙を通じて野党が議会の最大会派になったのは、政府与党に対する民意による審判だった。苦しかっただろうが、少数与党国会は大統領として彼が直面した現実だった。置かれた立場と実情に合わせて野党を説得し、協力を求めつつ、自身の国政目標と課題を履行するために政治的努力を尽くすことが、彼に与えられた責務だった。
にもかかわらず、彼は政治の責務を投げ捨てた。野党との対話そのものを拒否し、野党の有力な大統領候補を司法的に責め立て、自身の家族を守るために法案拒否権を乱発した。そして、第22代国会の開会式を欠席したかと思えば、国会での施政方針演説まで拒否した。代わりに選挙不正、「議会独裁」、反国家勢力という独善と妄想の世界を着々と構築しつつ、憲法と法律を破壊し、憲政秩序そのものを打倒するという計画を立てた。政治と政治家を冷笑し嘲笑する人は多いが、代議民主制政治には明確な役割がある。確執や対立を調整したり仲裁したりしつつ、多様な社会的利害が衝突する状況にあって妥協を作り出さなければならない。それにもとづいて政策を立案し、国家の究極的な課題を設定しなければならない。大統領はその中で最も大きな役割を果たす政治家であることは明らかだ。
しかし、憲法と法律が打ち捨てられた状況に至っているため、必要なのは中途半端な旧態依然の政治ではない。立法府、司法府、行政府をはじめとする社会全体が憲政秩序の回復に努めることが求められている。しかし皮肉だ。政治をしてはならない時に政治が横行した。それも政治家でもない首相と副首相、官僚たちが、司法システムを否定しつつ政治をした。大統領権限代行を任された首相は、憲法裁判官の任命において法にもない与野党合意を要求した末に弾劾訴追された。続いて権限代行を任された経済副首相は、無責任なけんか両成敗論を掲げ、法の執行を無力化する勢力に沈黙をもって同調した。ついに大統領は、逮捕される瞬間まで、一部の極右支持者に対して「法はすべて崩壊した」という詭弁(きべん)の映像メッセージを残し、滑稽で卑しい政治形態をやめなかった。
政治の役割を放棄し、やせ細った法治を掲げていた大統領が、今度は法秩序を真っ向から傷つけ、退行と反動の政治的役割の裏に隠れているのだから、韓国社会の対立と確執が泥沼へと転げ落ちていくのは当然のことだった。自らがばらまいた非常識と不公正、違憲と違法の痕跡の活躍を眺めながら、大統領は漢南洞の家を要塞化し、武装した警護員を私兵とし、一部の極右支持者を世論戦の使い走りにした。このようにして「南米の麻薬ギャング団」よろしく公権力に対抗した。このような袋小路の対立や確執の助長は戒厳令による内乱暴動よりも大きな傷を残し、韓国社会をたやすくは回復しないところにまで追い込んだことは明らかだ。
政治権力を私有化したまま酔生夢死の日々を送った人間の末路は、容易に見当がつく。逮捕後、拘束と弾劾を免れることはできないだろう。それによって憲法と法律の厳しさを確認することは、それほど難しくない。しかし、真の問題は現在進行形であり、今後も残る。崩壊した政治の役割と責任を回復し、韓国社会の構造的な確執と対立を解消するのは容易ではないが、決してあきらめてはならないことでもある。
先日見た映画「シビル・ウォー」のように、国内で互いに軍隊を作って戦争する場面が私たちの現実にならなくて幸いだ。ただし、銃を手に取らなかっただけで、漢南洞でペンライト、星条旗、太極旗を手に「弾劾の賛否」で対立した姿が今後も見られ、それに便乗する政治が続けば、韓国社会は依然として内乱の混沌の中にとどまるかもしれない。
パク・ロクサム|ジャーナリスト (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2025-01-16 18:57
「The Hankyoreh」 2025-01-17 08:56
■裁判所、尹錫悦大統領の逮捕適否審を棄却…逮捕状態維持
ソウル中央地裁「請求理由なし」
高位公職者犯罪捜査処、17日に拘束令状請求の方針
【写真】内乱首謀の容疑で高位公職者犯罪捜査処に逮捕された尹錫悦大統領が15日午後、京畿道果川市の公捜処での取り調べを終え、ソウル拘置所に移動している=写真共同取材//ハンギョレ新聞社
尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領がソウル中央地裁に請求していた逮捕適否審が棄却された。
ソウル中央地裁刑事32単独のソ・ジュンソプ判事は16日午後11時10分ごろ、「この事件の請求は理由がない」として、尹大統領の請求していた逮捕適否審を棄却した。逮捕適否審は、捜査機関の逮捕が適法か否かを裁判所が審査し、釈放するかどうかを決める制度。
ソ判事はこの日午後5時から約2時間にわたり、尹大統領に対する逮捕適否審の審問をおこなった。尹大統領は裁判所に来ず、尹大統領の弁護人を務めるペ・ジンハン、キム・ゲリ、ソク・トンヒョンの各弁護士が出席した。尹大統領側は「内乱罪の捜査権がない公捜処が違法に捜査をおこなっている」とする主張を展開した。いっぽう公捜処は、適法な手続きに則って尹大統領を捜査し、その後、裁判所から逮捕令状を取って執行したと反論した。
この日、逮捕適否審が棄却されたことで、尹大統領は逮捕状態で引き続き取り調べを受けることになった。逮捕適否審の審査が行われる時間は、最大48時間の逮捕時間に含まれない。公捜処は17日に尹大統領の拘束令状を請求する方針だという。
チャン・ヒョヌン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2025-01-16 23:14
「The Hankyoreh」 2025-01-17 09:39
■【社説】逮捕されても法を無視の尹錫悦、「布告令を誤って書き写した」と詭弁
【写真】内乱首魁容疑で逮捕された尹錫悦大統領が15日、調査を終えた後、公捜処を出てソウル拘置所に向かっている=共同取材写真//ハンギョレ新聞社
内乱首魁の容疑者である尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領が、逮捕後も変わることなく、捜査の正当性を否定する法の無視の態度を続けている。さらに、12・3非常戒厳布告令については「キム・ヨンヒョン国防部長官(当時)が間違って書き写した」という荒唐無稽な主張を展開している。民主・法治国家の市民とは言えない非常識さと強引さの連続だ。このような人物に大統領という国政の最高責任を任せていたことに、恐ろしさしか感じない。
尹大統領は15日の逮捕後、高位公職者犯罪捜査処(公捜処)で8時間20分間にわたり調査を受けたが、「非常戒厳は大統領の固有権限」という一方的な主張以外には、始終一貫して返答を拒否したという。16日には公捜処の調査自体を拒否して欠席した。憲法裁判所の弾劾審判の裁判にも出廷しなかった。一方、尹大統領は、逮捕は不当だとして、ソウル中央地裁に逮捕適法可否の審理を申請した。逮捕された被疑者が陳述を拒否し、逮捕適法可否審理を申請することは、法が保障した権利であり、責めるべきものではない。しかし、尹大統領は、公捜処の捜査や裁判所の令状発付など、捜査そのものの正当性を根本から否定している点が問題だ。憲法と法律を守護する最大の責任を持つ大統領が、自身の身の安全のために司法体系を全面否定し、国家全体に悪影響を及ぼしているのだ。
さらに、憲政を破壊した内乱罪を犯したことについて一抹の反省もないことには、あきれるしかない。尹大統領は14日に憲法裁判所に提出した答弁書で、12・3非常戒厳布告令1号について、「キム・ヨンヒョン前長官が、軍事政権時代の例文をそのまま書き写したものを見落とした」とする趣旨で弁解したという。布告令1号は、非常戒厳時でも国会活動を侵害できなくした憲法を正面から破るものだ。違憲判定を避けられないことをよく知っている尹大統領は、キム前長官に責任を転嫁する卑怯な策略を使っている。しかし、キム前長官の弁護人は16日、「キム前長官が草案を書き、大統領が検討した」と明らかにした。キム前長官が尹大統領の嘘に反論したわけだ。さらに、尹大統領は憲法裁判所への答弁書で、非常戒厳の際に戒厳軍が国会のガラス窓を破壊したのは、「興奮した群衆を防ぐためのもの」だとする主張までした。まったくもって、解読不可能な詭弁だ。
尹大統領はいまでも、法と常識をもてあそぶことができるという妄想に陥っているようだ。しかし、憲政史上初の現職大統領の逮捕で立証されたように、韓国の法治は堅固たるものだ。民主主義と法治を破壊した内乱犯は、法により断罪されるのが当然だ。
(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2025-01-16 18:43
「The Hankyoreh」 2025-01-17 08:24
■【独自】「威力を誇示せよ」…警護処の「短機関銃」武装警戒は尹錫悦大統領の指示
【写真】尹錫悦大統領に対する2回目の逮捕状の執行が迫った13日午後、ソウル龍山区漢南洞の大統領官邸区域で、ある警護要員がK1小銃を手に持って歩いている=ザ・ファクト提供//ハンギョレ新聞社
内乱を首謀した容疑で逮捕された尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領は、2回目の逮捕状執行を控え大統領警護処の幹部らに「対外的に威力を誇示せよ」と指示していたことが明らかになった。
警護処の現職幹部は16日、ハンギョレの電話インタビューで、「逮捕執行が近づくにつれ漢南洞(ハンナムドン)官邸前に短機関銃などを持った職員の姿が見えたのは、尹大統領の指示に従ったもの」だと語った。尹大統領が11日、キム・ソンフン警護処次長(処長職務代理)、イ・グァンウ警護本部長をはじめとする幹部らとの昼食会で、「高位公職者犯罪捜査処が逮捕を試みた場合、武力を使用することを検討せよ」と指示しただけでなく、外部にもそのような姿を見せて武力を誇示するよう指示したという。捜査機関と警護処の物理的衝突の可能性が提起された中、危機感を高めることで強制捜査の試みの阻止を試みたものとみられる。
【写真】尹錫悦大統領が逮捕された15日、ソウル漢南洞の官邸前の様子=キム・ヨンウォン記者//ハンギョレ新聞社
同幹部は「その場でイ・グァンウ本部長が(尹大統領の)指示を受け、職員たちに銃ケースも持ち歩いて威力を示すよう指示したという。 VIP(尹大統領)が直接指示したと聞いた」と話した。実際、尹大統領の逮捕が迫った13日、ソウル龍山区(ヨンサング)漢南洞の大統領官邸で、警護処の職員がK1短機関銃で武装した状態で警戒に当たる姿がカメラに捉えられた。これに先立ち、野党「共に民主党」のユン・ゴニョン議員は「キム・ソンフン次長が、マスコミに見られるよう巡察すること、戦術服・ヘルメットなどの服装を着用すること、実弾を含む火器はケースに入れて見えないように携帯すること」を指示したと言ったが、尹大統領本人の意中が反映された「誇示行為」であることが明らかになったわけだ。
「キム・ヨンヒョン(元警護処長で前国防長官)‐キム・ゴンヒ(尹大統領夫人)派」と呼ばれるこれら警護処首脳部が、職員たちの反発にもかかわらず、逮捕が予告された15日未明、叱咤と泣き落としを繰り返し、逮捕の妨害を強要した事実も明らかになった。当時、警護処の職員たちは一致した反対の動きはなかったが、心を一つにして公捜処に道を開けた。
その日の明け方、キム・ソンフン次長は国防部長官公館で待機し、現場出動を拒否する職員たちに「今に見てろ」と脅したり、「どうか出てきてバスの後ろにでも立っていてほしい」と訴えたという。同幹部は「尹大統領の目につく現場に出動してほしいという話だった」と語った。
その後、キム次長が状況室を訪れ、全職員の出勤を指示する非常同報(組織に属するすべての人の携帯電話に命令を下すシステム)を命令したりもした。しかしこの業務を担当する職員がこれを拒否したという。この職員は非常同報の実行を拒否したという理由で、待機発令が予告されたという。
同幹部は「キム次長とイ本部長に対する逮捕状執行が先送りされ、警護処内部は依然として混乱している状況だ。万が一にでも(尹大統領やキム次長らが)戻ってくるかもしれないという懸念もある」とし、「皆、尹大統領の拘束とキム次長らの逮捕状執行だけを待っている」と伝えた。
オム・ジウォン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2025-01-16 22:11
「The Hankyoreh」 2025-01-17 06:32
■一人の栄光と5千万人の恥【特派員コラム】
イ・ボニョン|ワシントン特派員
【写真】高位公職者犯罪捜査処と警察が、尹錫悦大統領に対する2回目の逮捕状の執行に乗り出した15日午前、ソウル駅で市民たちが関連ニュースを見ている/聯合ニュース
尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領は後日、大韓民国の最高指導者として忘れられない場面として何を思い浮かべるだろうか。2023年4月27日の米上下院合同会議での演説も、栄光の場面の一つとして記憶されるのではないかと思う。当時、演説後に議員席に降りてきた尹大統領と「自撮り(セルフィ)」を撮ろうとする米国の議員たちが列を成した。人気スターになった韓国大統領は、浮かれているように見えた。筆者は尹大統領の訪米を高く評価するわけではなかったが、その場面だけは少し嬉しい気持ちで見守った。韓国人の努力と成果が作り出した場面に思えたからだ。
今日で特派員を終える筆者は3年間、米国人の韓国に対する評価と関心が以前とはあまりにも違うことを実感した。数十年前に移民して白髪になった韓国人たちは感慨もひとしおだろう。「大変な思いをして太平洋を渡らなくても良かったかも」というニュアンスで話す人もいる。彼らの母国が以前には到底想像できなかった評価を受ける国になったためだ。
韓国の民主主義、経済、文化などに対する外国人たちの称賛は、韓国人が実感する以上の側面もあるようだ。韓国をほめちぎる米国の当局者たちの言葉には「こんなに立派な国に私たちが育てあげた」という自負ないしは自画自賛もにじみ出ている。「育ててもらったなら、何か差し出さなければ」という意味も込められている。自分たちが腰を折ってしまった朝鮮半島の片側に住む人々が苦労して成し遂げた成果に対する傲慢な態度と言わざるを得ない。
とにかく称賛自体はいいことだ。富国で生まれれば個人的努力と関係なく、貧国の人が享受できない経済的利益を得るという「市民権レント(rent)」という言葉もある。韓国人は文化的な市民権レントも、国家的な評判の上昇による市民権レントも享受できるようになったのだ。
国を代表する大統領はこのような変化の大きな恩恵を受けるものだ。尹大統領は歴代のどの大統領よりも手厚いもてなしを受けていただろう。もう一度言っておきたいが、尹大統領が素晴らしいからではない。尹錫悦を大統領に仕立て上げた人たちとその人々の先代が血と汗を流した結果だ。
尹大統領の12・3親衛クーデターは多くを変えた。韓国のイメージは急転直下に墜落した。韓国民主主義のレジリエンス(復元力)を称賛する声もある。しかし、強烈ながらも後進的な場面は、世界の人々の脳裏から簡単に離れられないだろう。多くの人々の心の中で韓国は30年、40年前に戻っただろう。韓国大統領は米国の国務長官でもなく副長官に「深刻な誤判断」を犯したと叱られるはめになった。韓国外交部長官は、夜中に米国大使の電話に出なかったと叱責された。好意と尊重はあっという間に冷淡と軽蔑へと変わった。韓国の外交官が気を張って米国を相手にすることは、さらに難しいだろう。
大統領は国の地位と評判を少しでも改善して守るのに最も大きな責任がある人だ。そのような人が5千万人の韓国人の顔にここまで泥を塗れるだろうか。指導者は一瞬の過ちで多くの人を不幸に陥れやすい。ところが、尹大統領は単なる無能と過ちではなく、故意と悪意でクーデターを起こした。そうしておきながら、歴史に残る「現職大統領による座り込み」を行ったあげく、逮捕されると、「望ましくない流血事態」を防ぐために自ら出頭したと主張した。
5千万人の名誉を踏みにじっても、自分の名誉は守りたいのだろう。茫然自失というのはこんな時に使うためにある言葉なのかもしれない。
「The Hankyoreh」 2025-01-17 07:59
■尹錫悦大統領、実益のない逮捕適否審請求…支持層の結集と裁判遅延狙った布石
「違法捜査」を争点化し、調査に応じず
裁判を引き延ばし、6カ月後の釈放狙うか
【写真】内乱首謀と職権乱用権利行使妨害の疑いが持たれている尹錫悦大統領が15日午後、高位公職者犯罪捜査処の調査を終えた後、車に乗って京畿道儀旺市のソウル拘置所に向かっている=共同取材写真//ハンギョレ新聞社
尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領が逮捕当日、直ちに逮捕適否審を請求し、翌日の高位公職者犯罪捜査処(公捜処)の調査にも応じず、「違法捜査」という主張を続けている。 認容(受け入れ)の可能性は低く、逮捕時間を延ばすだけの適否審まで請求するのは、違法捜査という主張で支持層を結集させ、裁判を遅延させることで、6カ月後に釈放される状況を狙っているのではないかという分析もある。
尹大統領の逮捕適否審請求は、公捜処の1次調査が終わった後の15日夜に公開されたが、尹大統領弁護団が適否審を請求したのは逮捕直後の15日午前だった。弁護団は、公捜処は大統領内乱容疑に対する捜査権がなく▽専属管轄のソウル中央地裁ではなくソウル西部地裁に逮捕令状を請求したため、公捜処の捜査および逮捕状の請求が「違法捜査」であり、逮捕状の発付も無効だと主張した。捜査機関が被疑者を逮捕すると、48時間以内に拘束令状を請求したり釈放しなければならないが、逮捕適否審を請求すれば、関連手続きが行われる間は身柄を拘束できる時間が増える。15日午後、尹大統領側のソク・トンヒョン弁護士は記者懇談会で、「(逮捕適否審の請求を)考慮しない」と述べたほど、尹大統領側としては意外な選択であるわけだ。
このように逮捕適否審請求の実益が少ないにもかかわらず、尹大統領側がこのカードを持ち出したのは、政治的目的が隠れているものとみられる。高裁部長出身の弁護士は「逮捕適否審の請求がソウル中央地裁で認容される確率は0%」だとし、「『違法捜査』フレームで政治的なショーをするのが狙いとみられる。実際、支持率の上昇効果をあげているのではないか」と語った。「違法捜査」を争点化し、今後の裁判の段階での遅延戦略まで念頭に置いているという分析もある。また別の判事出身の弁護士は「後で裁判で違法逮捕・起訴を抗弁するだろう。このように裁判を遅延させ(1審拘束期間の)6カ月前に釈放されることを考えているのではないか」と話した。
尹大統領が15日の公捜処の調査で陳述をせず、調書閲覧・捺印を拒否したのに続き、逮捕状態でも2日目の調査まで拒否したのも、「違法捜査」という主張の延長線上にある。内乱容疑を全面否定している状況で、生半可な陳述が自分にとって「毒」になるかもしれないという計算もあり得るが、拘束捜査の必要性も大きくなる。ある現職の部長検事は、「最小限の調査にも応じていないのに、逃走や証拠隠滅の恐れがないと判断するのは難しいだろう。拘束の可能性を高める行為」だとし、「捜査手続きについて納得できない理由を挙げながら捜査に応じないことも拘束の理由になりうる」と語った。また別の検事は、「内乱罪は警察にのみ捜査権があるという主張で公捜処の調査に応じていないが、(起訴のために)検察に事件が移牒された後もそのような主張を続け、供述を拒否するものとみられる」とし、「供述拒否も憲法上の権利であるため、捜査機関ではどうしようもできない」と話した。
しかし、供述拒否は検事時代の尹大統領の態度とは矛盾している。尹大統領は国政壟断特検捜査チーム長の時期、アン・ジョンボム元大統領府政策調整首席が拘束状態でも特検の取り調べに応じなかったことについて、怒りをあらわにし、「明日まで来て陳述しなければ、家族について捜査すると伝えろ」と言ったというエピソードもある。当時、アン元首席は裁判で「覚えている通りに陳述したにもかかわらず、特検が関連陳述を強く要求した。特検が家族のすべての問題を暴くと言い、妻を拘束すると脅し、起訴しないという懐柔も受けた」と主張した。
チョン・ヘミン、ペ・ジヒョン、クァク・チンサン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/1178345.html
韓国語原文入力:2025-01-16 22:12