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三重県木本で虐殺された朝鮮人労働者の追悼碑を建立する会と紀州鉱山の真実を明らかにする会

三重県木本で虐殺された朝鮮人労働者の追悼碑を建立する会と紀州鉱山の真実を明らかにする会

「解雇ばかりか労働者の賃貸保証金まで仮差押えした日本企業の韓国子会社」

2023年11月30日 | 国民国家日本の侵略犯罪
「The Hankyoreh」 2023-11-21 07:54
■解雇ばかりか労働者の賃貸保証金まで仮差押えした日本企業の韓国子会社
 [ハンギョレ21]「黄色い封筒法」 
 日本企業の子会社・韓国オプティカルハイテック
 
【写真】金属労組の韓国オプティカルハイテック支会の組合員らが2023年11月13日、火事で焼けた亀尾工場の前に立っている=リュ・ウジョン記者//ハンギョレ新聞社

 自宅の保証金の仮差押えを確認した時のことを、パク・ジェジョンさんははっきりと覚えている。2023年9月1日、同僚がカカオトークのグループチャットにメッセージを送った。「会社が自宅を仮差押えしたらしいので、みんなも一度確認してほしい」。パク・ジェジョンさんは不安な気持ちを抑え、借家のオンライン登記を確認した。「金4000万ウォン(約460万円)、債権者:韓国オプティカルハイテック株式会社、債務者:パク・ジェジョン他4人」。自身の借家の登記書類にこのような文面が記されていた。彼が使用者側の解雇決定に対抗した代価だった。
 「大変なことになった、と思いました。口座を差し押さえられるのはまだわかるとしても、伝貰(チョンセ。契約時に高額の保証金を賃借人に預ける代わりに月々の家賃は発生しない不動産賃貸方式)の保証金を仮差押えするというのは、私は初めて聞きました。1月初めには今の家を引っ越さなければならないのに、保証金がなければ家を借りることもできません。その後は毎日のように眠れませんでした。心配のあまりに夜中に何度も目が覚めます」。
 別名「黄色い封筒法」と呼ばれる労働組合および労働関係調整法(労働組合法)第2条と第3条の改正案が11月9日、国会の本会議で可決された。ストライキを行った労組を相手に、企業側が無分別な損害賠償請求訴訟と仮差押えをすることに歯止めをかけるものだ。経済界はこの法律を「悪法」と呼び、大統領に再議要求権の行使を建議し、ハン・ドクス首相は「国民の生活からかけ離れた法律」だと非難した。実際に訴訟の矢面に立つことになった労働者たちの意見は違う。会社を相手に生存闘争を行ったという理由で、数億ウォンの「損賠爆弾」を受けるべきだというのであれば、それは「労働組合活動をするなと言うのと同じだ」と語った。

◆11年働いた会社に1日で切られる
 パク・ジェジョンさんは2011年、慶尚北道亀尾(クミ)にある韓国オプティカルハイテック(以下「韓国オプティカル」)に入社し、11年間勤務した。韓国オプティカルはLGにLCDの偏光フィルムを納品する日本の日東電工グループの韓国子会社だ。2017年まで年間売上額は7000億ウォン(約800億円)に達した。「あまりに忙しくて昼食も食べられず、菓子で間に合わせて仕事をする時も」パク・ジェジョンさんは大丈夫だと考えていた。
 2018年から韓国オプティカルの売上は3000億ウォン(約350億円)台に落ち込んだ。ディスプレイ業界の業況が悪化したことを契機に、会社側は2019~2020年に2回の構造調整を行った。運良く解雇を免れた人たちは残留した。2022年10月、亀尾工場で火災が発生すると、会社側は清算を決めた。亀尾で生産していた製品を平沢(ピョンテク)工場に移した後、労働者全員に希望退職を提示した。従業員210人中193人が退社し、17人が残った。パク・ジェジョンさんと同僚らは「平沢に生活根拠を移すから、平沢工場で働けるようにしてほしい」と要求した。会社側が平沢工場で新たに採用するという採用人員に、残った17人を加えてほしいということだった。
 会社側は拒否した。「亀尾韓国オプティカルと平沢日東オプティカルは、それぞれ別の法人であるため、雇用を継承する義務はない」とした。労働者らは雇用継承が受け入れられるまで闘うことにした。2023年2月から無給で10カ月、労組事務室に出勤した。会社側はこれらの人たちが工場撤去を妨害しているとして、退去拒絶と業務妨害罪で刑事告訴する一方、妨害禁止の仮処分と撤去遅延にともなう「損害額」4000万ウォンの仮差押えを裁判所に申し立てた。8月末に仮差押えが認められ、パク・ジェジョンさんと同僚たちの自宅の伝貰の保証金が差押えられた。
 「私は昨年から携帯電話の料金も2万ウォン(約2300円)台に減らし、労組事務室の無線LANを使っています。保険もいくつか解約しました。そんな状況で自宅の伝貰の保証金まで差押えられたので、妻に本当に申し訳なかったです」。
 実際、会社側が仮差押えを申し立てる際に主張した被害金額は4000万ウォンだ。会社側は労組の反対で労組事務室の撤去が遅れたとして、8月3日(撤去を最初に試みた日)から8月24日(仮差押え申立日)までの約3週間で8406万ウォン(約970万円)に達する損害を被ったと主張した。内訳を細かく見てみると、その期間中の工場敷地の賃貸料から撤去業者の人件費と通信費、事務室費に交通費にいたるまで、すべて被害額に合算した。会社側はその一部の4000万ウォンをまず仮差押えするよう裁判所に申し立てた。

【写真】金属労組の韓国オプティカルハイテック支会のチェ・ヒョンファン支会長が11月13日、ハンギョレ21のインタビューを受けている=リュ・ウジョン記者//ハンギョレ新聞社

◆工場撤去計画書はまだ審査中なのに…
 工場撤去は市庁の許可が出てから着手できる。それまでは業者の人件費などは当然のことながら支出される。亀尾市庁によると、工場撤去(解体)計画書はまだ審査中だ。許可が出るまでは、工場撤去の遅延費用は労組事務室の撤去とは関係なく発生するという意味だ。このような背景は仮差押えの申立書からは抜け落ちている。
 会社側が主張した被害額4000万ウォンは、仮差押え制度を経て、請求額4億ウォン(約4600万円)にまで膨れ上がった。原理は簡単だ。仮差押えは、訴訟が長引く間に債務者が財産を隠蔽する可能性などに備え、債権者が債務者の財産を事前に保全する制度だ。債務者が多数ならば誰かは返済できるとの理由から、企業は各人に仮差押えをすることができる。韓国オプティカルはこれを十分に活用し、組合員全員にそれぞれ4000万ウォンの仮差押えを行った。ストライキで損失を出したという額は4000万ウォンであるにもかかわらず、組合員に行った仮差押えを合計すると4億ウォンになった。大邱(テグ)地方裁判所の金泉(キムチョン)支部は、仮差押え申立てをそのまま受け入れた。
 「組合員一人ひとり全員を共同不法行為者とみなして仮差押えするというのは、労使関係の上下関係を考えれば過剰な側面がある。労組活動は、個々人の行為というよりも労働組合という団体の行為だ。特に個人の不法行為がなければ、損害賠償の仮差押えは個々人にではなく労働組合に対してのみ行うべきだ」と、高麗大学法学専門大学院のキム・ジェワン教授(民法)は述べた。
 労働法の枠組み内で労組と使用者側として向き合う関係が、民法の枠組み内に入ったとたんに債務者と債権者の関係に変わった。
 「私たちが会社に何の損害を与えたのでしょうか。工場に入って機材を壊したのであれば、当然損害賠償しなきゃなりませんが、ただ労組事務室に出勤しただけのことです」。
 韓国オプティカルで勤務18年目となる労働者のチェ・ヒョンファンさんはそう語った。チェさんは「使用者側の一方的な主張が裁判所で受け入れられたことは、もっと理解できない」と言い、「仮差押えがこのように簡単に認められるとは思わなかった。妻が『あなたは闘争してもいいから、私たちの貯金だけは被害が及ばないようにしてほしい』と言っていたのに、自宅が仮差押えされた」と語った。
 労組側は、現時点では不当解雇に関する裁判所の判断を受けていないのに、労組事務室から撤去することは受け入れられないとする立場だ。2015年に外国の投資企業の撤収によって整理解雇されたハイディスの労組支会も、裁判所から不当解雇勝訴の判決を得たが、工場はすでに撤去された状態だったため、希望退職を受け入れなければならなかった。韓国オプティカル支会が空っぽの工場の場所でも守ろうとするのもそのためだ。

【写真】2023年11月15日、カトリック・プロテスタント・仏教の3宗教の団体が集まり、ソウル光化門の東和免税店前で「黄色い封筒法」を祈願する宗教者断食祈祷会を行っている。団体は法の成立まで断食祈祷会を続けるとしている=リュ・ウジョン記者//ハンギョレ新聞社

◆機材を壊したわけでもなく、ただ労組事務室に出勤しただけ
 「黄色い封筒法」があったとすれば、状況が違ったのだろうか。国会を通過した労働組合法改正案第3条によると、裁判所が「団体交渉、争議行為、その他の労働組合活動」に対して損害賠償の責任を認める場合、組合員のそれぞれの帰責事由と寄与度に応じ、責任の範囲を個別に決めなければならない。会社側がストライキなどで損害を被ったとすれば、原則的には労働組合を相手に請求しなければならず、組合員全員を債務者とみなして賠償を求めることはできないということだ。これまではストライキなどによって営業に支障が生じた場合、企業が損害額を大きく膨らませて組合員全員に賠償責任を負わせたりした。ストライキに参加したという理由で数億ウォンの債務を負うことになった組合員は、深刻な圧力を感じ、労組が解体したりもした。
 キム・ジェワン教授は「黄色い封筒法が施行されれば、仮差押えをされても、組合員が損賠額を全額負担することにはならない」としたうえで、「会社側が主張する金額のうち、組合員が『実際にしたこと』に対してのみ責任を負うことになる」と述べた。
 韓国オプティカルの会社側が不動産と伝貰の保証金の仮差押えを申し立てた労組組合員は10人だ。現在、雇用継承を要求する12人のうち、財産がある10人を仮差押え対象とした。
 韓国オプティカルの労働者たちは、このようなことがこれ以上繰り返されてはならないと話す。「損害賠償の仮差押えがこれほど容易に行われるということを、私も今回初めて知りました。会社側が一方的に主張したことをもとに、供託金だけで私たちの不動産全体を押さえたということです。これまで闘ってきた労働者たちが、激しい弾圧のなかで、いかに不安のもとで生きてきたか、亡くなった方々も本当に圧力が激しかったのだろうということを思い知りました。こういったことをなくすために、国会議員が(黄色い封筒)法を作りましたが、(公布されるまで)見守らなければ」。チェ・ヒョンファンさんは語った。
 「早くこのような法律が成立すれば、私たちのような弱者が少しでも保護されるのではないでしょうか。労働者も国民であり、一緒に生きていくことで国がうまく回るのに、あまりにも企業側に法が傾いているようです。今も法で許されているからこそ会社側は強気で言うんですよ。仮に大統領が(拒否権を行使)したら、弱者はさらに困難に陥るのではないでしょうか…」。勤務17年目の労働者のイ・ヒウンさんが付け加えた。
 韓国オプティカルの労働者たちとって、2023年の年末は運命の時間だ。労使がそれぞれ行った仮処分申立を待っているからだ。11月17日は、会社側の仮処分申立の尋問期日だ。12月1日は、労組側が要請した仮差押えの異議申立ての尋問期日だ。会社側が勝てば会社側が主張する「損害額」が日々増えることになり、労組側が勝てば仮差押えの金額を減らすことができる。最終的に労組側が望むことは、12人に減ったメンバーが平沢工場に雇用継承され、働けるようになることだ。

◆2023年11月15日、カトリック・プロテスタント・仏教の3宗教の団体が集まり、ソウル光化門の東和免税店前で「黄色い封筒法」を祈願する宗教者断食祈祷会を行っている。団体は法の成立まで断食祈祷会を続けるとしている=リュ・ウジョン記者//ハンギョレ新聞社

◆90億、158億、15億、246億ウォン…損害賠償訴訟の懲罰の歴史
 ストライキを行った労組に対して企業側が損害賠償訴訟で「懲罰」するのは、歴史のなかで絶えず繰り返されてきた。2003年の斗山重工業の損害賠償訴訟で命を絶った労働者のペ・ダルホさんを皮切りに、2009年には双龍自動車労組の組合員と家族30人あまりが、暴力鎮圧のトラウマと損害賠償訴訟の圧迫に苦しめられ、自ら命を絶った。2010年、現代自動車が非正規職労組を相手に90億ウォンの損害賠償訴訟を起こして認められた。キム・ジュイク支会長が損害賠償訴訟の圧力で2003年に命を絶った韓進重工業では、2012年にふたたび158億ウォンの損害賠償訴訟が起こされ、労働者のチェ・ガンソさんが亡くなった。半導体企業KECの労組組合員は、2016年から3年にわたり賃金30億ウォンを差し押さえられた。2018年にはCJ大韓通運が宅配労組を相手に15億ウォン、2021年には現代製鉄が労組と組合員641人を相手に246億ウォン、2022年には大宇造船とハイト真露がそれぞれ下請けと特殊雇用労組を相手に470億ウォンと27億ウォンの損害賠償訴訟を起こした。
 「黄色い封筒法」の公布を求めて無期限のハンガーストライキに突入した韓国基督教教会協議会などの宗教団体は、11月13日に声明を出し、「数多くの労働者と市民の切実な願いのもとで国会を通過した労組法第2条・第3条の改正案が、大統領の拒否権によって消えることのないよう、ただちに公布されることを願う」と明らかにした。

◆[黄色い封筒法とは?]
→ 労使の団体交渉の範囲をこれまでより拡張し、ストライキに対して企業が起こす損害賠償訴訟にも制限を設けた労働組合および労働関係調整法(労働組合法)第2条・第3条の改正案。これまでは、労使の団体交渉は一つの事業所の内部だけで保障され、社内下請けの労組や特殊雇用職の労組は実質的な労働条件を決める元請けと交渉できなかった。これらの労組が10年にわたり叫び続けた「本当の社長出てこい」というスローガンは、労働組合法第2条の「使用者」の定義を拡大する条文の改正として現実となった。また、これまでは占拠ストライキなどが発生した場合、会社側がストライキに参加した個人まで債務者とみなし、数億ウォン台の損害賠償訴訟を起こす慣行が続いた。新法は、損害賠償の主体を労働組合団体と個人に分離し、個人には直接の行為に対してのみ損害を賠償するように制限した。

シン・ダウン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2023-11-18 11:58


「The Hankyoreh」 2023-11-21 08:17
■[寄稿]黄色い封筒法こそ「真の」労働改革です
 民生に取り組むという大統領へ 
 イ・ビョンフン|中央大学名誉教授(社会学)

【写真】労組法2、3条改正運動本部が今月9日、国会正門前で黄色い封筒法の制定を求めるパフォーマンスを繰り広げている=キム・ヘジョン記者//ハンギョレ新聞社

 「黄色い封筒法」が紆余曲折の末、国会本会議で可決された。政府与党と財界は「国を亡ぼす悪法の強行」と激しく非難し、大統領に拒否権行使を求めている一方、野党と労働社会団体は30年あまりかかった法制定であるだけに、直ちに公布・施行することを求めている。「黄色い封筒法」の運命は、尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領が拒否権を行使するか否かにかかっている。
 「黄色い封筒法」は、2014年に47億ウォンの損害賠償が請求された双龍自動車の労働組合を支援するために多くの市民が自発的な連帯活動として展開した「黄色い封筒キャンペーン」を起源とする。黄色い封筒運動の趣旨は、労働組合の争議行為が違法とみなされて命じられる莫大な損害賠償、仮差押さえによる労組破壊と労働者の生活の破滅を防ごうというものだった。実際に、黄色い封筒運動を主導してきた市民団体「手を取って」によれば、1990年から2023年にかけて197件の損害賠償・仮差押さえ事件で3160億ウォンが請求され、これらの事件の94.9%が労働者個人を標的にし、彼らの暮らしと家庭を深刻に破壊したことが確認できる。多くの企業が損害賠償・仮差押さえを武器に労組の無力化を試みる過程で、2003年の労働者ペ・ダルホさんをはじめ数十人の「労働者烈士」を生み出してもいる。
 企業による雇用関係の外部化とデジタルプラットフォームの商業化によって、急速に増えている間接雇用の非正規労働者と従属的事業者に対し、労働基本権を保障しようというのが黄色い封筒法のもう一つの制定趣旨だ。派遣、請負、用役、下請けなどの様々なかたちで働く間接雇用の非正規労働者、特殊雇用労働者、フリーランサー、プラットフォーム仲介労働者などの従属的事業契約に縛られて働く労働者は、労働組合を結成して彼らの労働条件を実質的に支配する「本当の社長」である元請け大企業、フランチャイズ本部、プラットフォーム事業者、仲介エージェンシー、親企業との交渉を保障するよう求めてきた。元請け企業のほとんどが現行の労働関係法における使用者ではないとの理由で交渉を拒否しているため、不安定な労働者たちが自身の権益を改善するために違法ストライキに打って出た、というニュースにもよく接する。大宇造船海洋の下請け労組は昨年、元請けとの交渉を引き出すためにストライキを打たざるを得なかったが、それによって彼らの組合費や賃金ではとてもまかなえない途方もない額の損害賠償訴訟が起こされている。
 現行の労働組合法の弱点の改善を目指す「黄色い封筒法」は、最高裁の判例、国際労働機関(ILO)条約(第87号と第98号)の批准、国家人権委員会の勧告などによって、その必要性に対する社会的コンセンサスは十分に形成されている。ところが財界と保守メディアは、「黄色い封筒法」の施行はストの急増、労使関係の不安定化、法治秩序の崩壊などを招くため、企業投資の萎縮と雇用の減少に帰結し、結局は韓国経済を駄目にしてしまうと主張している。労働争議を制限し、違法ストに対する過剰な損害賠償請求を認める現行の労組法体系こそが、労働基本権を形骸化させるだけでなく、制度による保護の死角地帯に追い込まれた不安定な労働者たちの極限の闘争と違法争議行為をあおり、産業現場の法治秩序をより困難にし、対立する労使慣行から抜け出せなくしているのではないか。また、元請け・プラットフォーム大企業にとっては、「黄色い封筒法」によってこの間の「亀裂職場」(企業がコスト削減のために業務を下請けに押し付けることで、働く場所がバラバラになるうえ、労働者の処遇が劣悪になる現象)の乱用で得た利益の一部を取られるというコスト負担は発生するだろう。だが長い目でみれば、法律の外に置かれた労使関係の死角地帯を解消することにより、共生的な産業環境が構築され、労働市場の二重構造の緩和という社会的実益が得られると期待する。
 近ごろ大統領が民生(国民の暮らし)問題に取り組むと語っているのは喜ばしいことだ。元請け、フランチャイズ、プラットフォーム大企業の利益を代弁するのではなく、間接雇用の非正規労働者や従属的事業者のような労働弱者の権利と安全を守るならば、大統領が民生を強調したのは本気だったことが認められるだろう。尹錫悦大統領にはぜひお願いしたい。働く国民の生活に責任を取ろうとするなら、「黄色い封筒法」に拒否権を行使するのではなく、真になすべき労働改革として直ちに同法を施行せよ!と。

イ・ビョンフン|中央大学名誉教授(社会学) (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国原文入力:2023-11-20 15:21
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「90年代にもハナ会によるクーデター説…全斗煥の反乱の種が取り除かれるまで」

2023年11月29日 | 韓国で
「The Hankyoreh」 2023-11-29 08:51
■90年代にもハナ会によるクーデター説… 全斗煥の反乱の種が取り除かれるまで
 「ソウルの春」を踏みにじった陸軍少将全斗煥はどうやってクーデターに成功したのか
 クォン・ヒョクチョルの見えない安保//ハンギョレ新聞社

【写真】映画『ソウルの春』の中の全斗煥保安司令官の姿=プラスエムエンターテインメント提供//ハンギョレ新聞社

 映画『ソウルの春』は全斗煥(チョン・ドゥファン)など新軍部が1979年12月12日主導した軍事反乱を題材にしている。 12月12日夕方から13日未明までクーデターを起こした新軍部とこれを阻止しようとする鎮圧軍の9時間にわたる死闘を取り上げた映画だ。
 当時、保安司令官として陸軍少将に過ぎなかった全斗煥は、どうやってクーデターに成功したのだろうか。 この疑問は「保安司令官」と「ハナ会」というキーワードでひも解くことができる。 韓国軍内部では1960年代からクーデターを防ぐための装置が二重三重に設けられていた。 朴正煕(パク・チョンヒ)元大統領自身が1961年5・16軍事クーデターで執権したため、クーデターの再発防止のための安全装置が張り巡らされていた。
 全斗煥が司令官を務めていた保安司令部の主な任務は対転覆任務だ。 「ひっくり返す」という意味の「転覆」はクーデターを指す。 対転覆任務は、簡単に言えば、クーデターを防ぐことだ。
 保安司令部の対転覆任務遂行は、脅威となる要素を見つけて取り除くのではなく、転覆の兆候を事前に捉えて取り除くか、転覆に繋がる要因が発生しうる条件を探し出して管理することで、脅威となる要素の発生自体の防止を目指す。 保安司令部はクーデターの芽を摘むために、主要軍指揮官の公式・非公式に接触した人物と動向をきめ細かくチェックする。 主要軍指揮官の有線・無線通話も24時間傍受する。
 朴正煕元大統領は、本当に信頼できる人を保安司令官に任命した。 陸軍第1師団長を務めていた全斗煥は1979年3月、保安司令官に任命された。 全斗煥大尉は1961年5・16軍事クーデター直後、朴正煕将軍に抜擢され国家再建最高会議議長室民願秘書官を務めるなど、早くも朴正煕の腹心だった。
 保安司令部のクーデター予防措置にもかかわらず、クーデターが起きれば、1979年当時ソウル忠武路(チュンムロ)に駐屯した首都警備司令部やソウル松坡区(ソンパグ)の特殊戦司令部がソウルに入ってきたクーデター軍を鎮圧する。 これらの部隊を対転覆任務部隊とも呼ぶ。
 このようなクーデターの予防・鎮圧システムは1979年12月12日にもあったが、新軍部の軍事反乱を防ぐことはできなかった。 クーデターを防ぐべき全斗煥保安司令官がクーデター「首魁」だったからだ。 『ソウルの春』では保安司令部が軍通信網を傍受し、鎮圧軍の動きを手に取るように把握し対応する。 クーデター防止のために保安司令部に与えた軍通信網の傍受権限を、新軍部が逆にクーデターに悪用したのだ。 猫に鰹節のようなものだった。
 対転覆部隊の任務を遂行すべき特殊戦司令部と首都防衛司令部の一部指揮官も軍事反乱に加担し、行動隊長を務めた。 軍事反乱を鎮圧しようとしたチョン・ビョンジュ特戦司令官の部下であるパク・ヒド第1空輸特戦旅団長とチェ・セチャン第3空輸特戦旅団長、チャン・ギオ第5空輸特戦旅団長が反乱軍に加わり、直属の上官に銃口を向けた。
 
【写真】1979年12月12日クーデターに成功した全斗煥(前列左から5番目)、盧泰愚(4番目)ら新軍部の主軸勢力は翌日、保安司令部で勝利を祝う記念写真を撮った=『第5共和国前史』より//ハンギョレ新聞社

 彼らが正常な指揮系統と任務を無視してクーデターを起こすことができたのは、「ハナ会」という私組織で堅く結ばれていたからだ。 1963年、全斗煥、チョン・ホヨン、盧泰愚、キム・ボクトンなど陸軍士官学校11期生の主導で軍隊内の私組織ハナ会が結成された。 1979年12・12軍事反乱当時、保安司令部、特戦司令部、首都警備政令部などの主要メンバーがハナ会所属だった。 ハナ会はもともと朴正煕大統領の親衛組織を標ぼうし、朴大統領の庇護の下で勢力を拡大した。 朴大統領とハナ会は宿主と寄生生物のような関係だった。 ところが、1979年10月26日に朴大統領が亡くなると、寄生生物だったハナ会が宿主の座を射止めようと12・12軍事反乱を起こしたのだ。
 金泳三(キム・ヨンサム)大統領は就任するやいなや、ハナ会を解体し始めた。 金大統領は就任11日後の1993年3月8日、陸軍参謀総長と機務司令官を更迭し、ハナ会の粛正に着手するとともに、栗谷不正、人事不正、12・12軍事クーデター関連者を軍から追い出すなど、電光石火のようにハナ会関連者たちを片付けていった。 このようなハナ会の清算過程は「政治的なパフォーマンス」とも皮肉られたが、金泳三政権の関係者たちは当時の状況では不可欠な措置だったと反論する。
 「1979年冬、全斗煥保安司令官を東海(トンヘ)警備司令官に左遷しようとする計画が漏れて12・12軍事反乱が起きた。この点を金泳三大統領は意識せざるを得なかった。 就任初期、盧泰愚政権時代に任命された軍将官の中で、金大統領が信頼できる人はほとんどいなかった。 ハナ会と妥協して同居するつもりがないなら、政権発足初期に息をつく暇もなく刀を突きつけるしかなかった」。
 金泳三大統領も退任後、1999年8月、あるメディアとのインタビューで、ハナ会の解体に一か八かの覚悟で臨んだと述べ、「それを行っていなかったら、政権は存続できなかっただろうし、次の金大中(キム・デジュン)政権も誕生しなかっただろう。再びクーデターを起こしたはずだ」と述べた。
 金泳三政権が発足した1993年夏、情報機関や軍、大統領府などにはクーデター説が広がり始めた。 閑職に追いやられたハナ会所属の一部の将軍たちが資金調達と兵力の動員などの役割を分担し、クーデターを準備しているという噂が流れたのだ。
 「ハナ会のクーデター謀議説」が広がったことを受け、韓国政府はクーデターを主導する可能性がある将軍とその周辺人物の電話を傍受するなど動向を密着監視し、クーデターの資金源を探るために銀行口座を隅々まで調べた。 結局、うわさにとどまったが、クーデター説は1993年末まで幽霊のようにソウル上空を漂っていた。
 1990年代半ばまで政局が不安になれば、軍部の介入する可能性が取り上げたりもした。 この頃、各種世論調査では、軍部が韓国政治で最も影響を及ぼす集団に挙げられていた。
 しかし、2000年以降、韓国社会でクーデターを起こすのは不可能だと思われている。 何より社会が変わったからだ。 韓国社会が政治・経済・社会的に多元化され成熟した。 軍が主導的な役割を果たす時代は過ぎ去った。

【写真】1996年8月26日、12・12軍事反乱を主導したなどの疑いで囚人服を着て1審宣告公判を待つ全斗煥と盧泰愚=ハンギョレ資料写真//ハンギョレ新聞社

 万が一、一部の政治的野望を持つ軍人がクーデターを起こし、一時的に政権獲得に成功したとしても、永久に政権を握り続けることはできないし、任期を終えた後には処罰を受けることになる。 金泳三政権時代、検察は12・12軍事反乱について「成功したクーデターは処罰できない」という見解を示した。 これに対する国民の抵抗が激しくなり、国会は1995年5・18民主化運動などに関する特別法を議決し、全斗煥と盧泰愚に対する起訴が行われた。 1997年4月、最高裁の確定判決で全斗煥には無期懲役、盧泰愚には懲役17年が言い渡された。 成功したクーデターも処罰されるという先例が作られた。 ハナ会のように公式指揮系統まで破り周到にクーデターを企画し実行できる軍内の私組織はもう存在しない。
 金泳三政権以降、軍に対する文民統制の原則は大きな流れとして定着した。 文民統制は国民が選出した政治権力(大統領)と文民の官僚(国防長官)が安全保障政策を主導・決定し、安全保障専門家集団である軍は軍事作戦でこれを後押しする方式だ。 民主軍隊は政治的中立を前提に軍本来の任務だけに専念する安全保障専門家集団だ。 『ソウルの春』は民主軍隊とクーデターは両立できないという事実を改めてもの語っている。

クォン・ヒョクチョル記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/politics/polibar/1118152.html
韓国語原文入力:2023-11-28 22:11
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「もう一つの戦争、招いてはならない…朝鮮半島危機の打開策を」

2023年11月28日 | 国家・社会
「The Hankyoreh」 2023-11-28 09:14
■[コラム]もう一つの戦争、招いてはならない…朝鮮半島危機の打開策を
 9・19南北軍事合意の白紙化で朝鮮半島危機が高まる 
 外交は消え、軍事だけが幅を利かす現実を直視すべき 
 6カ国協議の創意的再開を推進すべき時

【写真】2005年9月19日、6カ国協議の首席代表が北京の釣魚台で9・19共同声明に合意、採択した後、明るい表情で記念撮影している。左から米国のクリストファー・ヒル国務次官補(東アジア太平洋担当)、日本の佐々江賢一郎外務省アジア大洋州局長、中国の武大偉外務次官、韓国のソン・ミンスン外交通商部次官補、北朝鮮のキム・ゲグァン外務次官、ロシアのアレクサンドル・アレクセイエフ外務次官/聯合ニュース

 世界中の視線がロシア-ウクライナおよびイスラエル-パレスチナの戦争に注がれている。だから「2つの戦争」という言葉が流行している。しかし、現実はそうではない。国連は今年1月に、全世界の紛争の水準が第2次大戦終戦以降の最高値に達したと発表している。2022年の時点で全世界で55の武力衝突が起き、2020年前後の戦争の平均持続期間も以前の長さにその約3分の1がプラスされた8~11年を記録したとするスウェーデンのウプサラ大学とノルウェーのオスロ平和研究所の共同研究結果も、国連の発表を後押ししている。
 このような状況は何を意味するのだろうか。まず戦争がはじまると、休戦や終戦は非常に難しくなっている。また、国連や米国をはじめとする大国の仲裁努力も少なくなっており、その力量も大幅に落ちている。そのうえ大国が直接・間接的に戦争に介入していることで、状況はいっそうこじれている。「国際平和と安定」のために様々な特権を与えられている国連安保理の常任理事国が戦略競争に余念がないということが、大きく影響している。何よりも対立を仲裁・解決し、戦争を防止する外交がほば失われているのが、こんにちの世界の現在地だ。
 「戦争は始めるより終わらせる方が難しい」という教訓を遠くから探してくる必要もない。まさに朝鮮半島こそ、終戦も平和協定も70年以上ない「停戦状態」に置かれているからだ。そのような朝鮮半島において、再び戦争の可能性を懸念しなければならない状況が造成されつつある。2019年に朝鮮半島平和プロセスが座礁してから確実に積み重なってきていた危機の兆候は、先日南北が9・19軍事合意の無効化を宣言したことで、よりいっそうはっきりとしてきている。偶発的な衝突と拡大を防止する「ガードレール」の一つが除去されつつあるからだ。このような事情にもかかわらず、危機の収拾を目指す外交は失われた状態にある。
 2018年12月に中断された南北対話は、空転状態が1971年以降で最長となっている。2019年10月に中断された朝米対話も同じだ。北朝鮮は対話の扉を固く閉ざしており、韓米は「対話の扉は開かれている」と述べつつも、そのための実質的な努力はしていない。では、朝鮮半島危機を打開する代案はないのだろうか。私は、南北と米中日ロが参加する中で2003年から2008年まで行われた6カ国協議の創意的な復活が必要だと思う。いくつかの理由がある。
 第1に、危機管理の有用性だ。6カ国協議に対する評価は様々ありうるが、この多国間会議が2000年代前半に朝鮮半島危機の管理と防止に貢献したことだけは明らかだ。当時の米国のブッシュ政権は、北朝鮮をイラク、イランと共に「悪の枢軸」、かつ先制攻撃の対象と規定していた。朝米ジュネーブ合意も破棄され、北朝鮮は核兵器開発に本格的に乗り出していた。また米国は北朝鮮との2国間対話を強く拒否していた。6カ国協議は、このような状況の収拾に大きく貢献した。現在も南北・朝米関係は最悪へと突き進んでいるが、2国間対話の可能性は非常に低い。過去の例に照らし合わせ、対話は危機の防止と管理に寄与するという点を考えれば、そこに6カ国協議の有用性を見出すことができる。
 第2に、朝鮮半島問題の6カ国化だ。最近の朝中、朝ロ関係は、北朝鮮の不可逆的な核保有国宣言と核の高度化にもかかわらず、1990年代初頭以降で最も深まっている。特に朝ロ関係は軍事協力すら可視化している。韓米・日米同盟も日増しに強まっており、韓米日関係もやはり3カ国軍事同盟といえるほど癒着しつつある。そのため、朝鮮半島問題をめぐって「韓米日」対「朝中ロ」という対決構図が本格化するのではないかという懸念も高まっている。これは逆に、6カ国が集って6カ国が共に朝鮮半島の緊張緩和に努めなければならないということを意味する。
 第3に、実現の可能性だ。議長国である中国は6カ国協議の再開が必要だという原則的な立場と、「双中断」および「双軌並行」に代表される均衡的な解決策を維持してきた。また、中国は6カ国の中で他のすべての加盟国と意思疎通できる唯一の国だ。先日、激しい競争と対立を繰り広げてきた米国や日本と首脳会談をおこなったことからも、それが分かる。大きな注目は集められなかったが、ロシアの提案も注目に値する。ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相は10月19日、北朝鮮のチェ・ソンヒ外相との会談後の記者会見で、朝中ロは「前提条件なしに朝鮮半島の安保問題を話し合うための定期的な交渉プロセスを構築することを支持する」と述べた。6カ国協議という名称は使っていないものの、内容的にはそれを意識した発言だ。韓米日も北朝鮮との対話の必要性を絶えず提起してきた。これらを総合すると、6カ国協議の再開を通じて朝鮮半島の緊張緩和を図ることが最も現実的な選択となりうる。
 6カ国協議が実現したら、最大主義ではなく最小主義からはじめることが望ましい。6カ国協議は当初、朝鮮半島の非核化と平和体制の構築、南北関係の発展と朝米・日朝関係の正常化、北東アジア平和安保体制の構築を目指していた。しかし短期的には、このような目標を実現することは不可能だ。特に韓米日が強調してきた非核化や、北朝鮮が要求してきた米国の敵視政策の撤回がそうだ。このような状況で最大主義の目標を掲げれば、6カ国協議は口げんかに終わり、状況のさらなる悪化へとつながる公算が高まる。
 したがって最小主義の課題を設定し、まずはその実現を目指す必要がある。肝心なのは、朝鮮半島における偶発的な衝突とその拡大を防止するとともに、崩壊した軍事的信頼を回復する措置を講じることだ。これは、まず既存の合意を復活させることから始められる。崩壊した9・19軍事合意と南北ホットラインの復元、北朝鮮の核実験、および弾道ミサイル技術を用いたすべての発射の中止と、大規模な韓米合同演習の中止がそれに当たる。また、朝ロ軍事協力の中止と、米国の朝鮮半島戦略資産の展開および韓米日合同演習の中止も議論の対象にしておく必要がある。6カ国が武力の使用および威嚇をしないという消極的な安全保障を宣言することも同様だ。
 6カ国が「共同研究グループ」を作ることも考慮に値する。このグループでは中長期的かつ根本的なアプローチが必要不可欠な事案、すなわち朝鮮半島の核問題の解決、停戦体制の平和体制への転換、北東アジア平和安保体制の構築、朝米・日朝関係の正常化、北東アジアにおける軍備統制と軍縮の推進などの問題が扱えるだろう。もちろん、当事者の立場が鋭く対立する可能性はある。協議体をまず共同研究グループとして提案した理由もここにある。6カ国を含む国際社会の民間専門家たちが参加する集まりになれば、さらに良い。民間の専門家たちの方が、率直ながらも創意的でバランスの取れた意見を提示できるからだ。

チョン・ウクシク|ハンギョレ平和研究所所長 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2023-11-27 10:00
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「日本外相「慰安婦判決是正」迫る…韓国外相「合意を尊重」、的外れな返答」

2023年11月27日 | 日本軍隊性奴隷
「The Hankyoreh」2023-11-27 08:36
■日本外相「慰安婦判決是正」迫る…韓国外相「合意を尊重」、的外れな返答

【写真】パク・チン外交部長官(中央)と日本の上川陽子外相(左)、中国の王毅外相が26日午後、釜山海雲台区のヌリマルAPECハウスでの韓中日外相会談に先立ち、手を取り合って記念写真を撮っている=キム・ジョンヒョ記者//ハンギョレ新聞社

 韓中日外相が26日、釜山(プサン)で4年3カ月ぶりに会談した。しかし、韓中日首脳会談の開催日程を決めることはできなかった。パク・チン外交部長官はこの日、韓日、韓中2国間外相会談もおこなったが、日本は韓国司法による「慰安婦裁判の結果」について「国際法違反」だとして強く抗議し、中国は9・19南北軍事合意の無効宣言について韓国との意見の違いを示した。
 この日午前の韓日外相会談の直後、日本外務省は報道資料で、「上川陽子外相は23日、ソウル高裁で国際法上の『主権免除原則』が否定され、原告の訴えを認める判決が下されたことを非常に遺憾に思い、国際法違反を是正するために韓国政府に適切な措置を講じるよう再び求めた」と述べた。ソウル高裁民事33部(ク・フェグン裁判長)は23日、日本軍「慰安婦」被害者イ・ヨンスさん、故クァク・イェナムさん、キム・ボクトンさんの遺族ら16人が日本政府を相手取って起こした損害賠償請求訴訟の控訴審で、一審の却下判断を取り消し、請求金額の全額の賠償を日本政府に命じる判決を下した。
 外交部は報道資料でこのような内容を明らかにしていない。ただし外交部の関係者は「パク・チン長官は慰安婦判決についてどのような意見を日本に表明したのか」と記者団に問われ、「2015年の韓日慰安婦合意を両国の公式合意として尊重していると伝えた」と説明した。韓国司法の決定に対して日本が遺憾を表明したにもかかわらず、それについては直接答えず「的外れ」な返答をしたかたちだ。韓日は朴槿恵(パク・クネ)政権時代の2015年12月28日のこの合意で、日本軍慰安婦問題は「最終的かつ不可逆的に終結した」と宣言している。
 韓日外相会談に続いて行われた韓中外相会談では、両国は朝鮮半島に関する懸案をめぐって意見の食い違いをみせた。外交部の関係者によると、パク長官は、9・19南北軍事合意の一部の効力を停止したのは「国民の安全のための最小限の防衛的措置」だとし、「9・19軍事合意に拘束されず追加挑発で威嚇し、その責任を韓国に転嫁する北朝鮮の態度を明確に指摘した」と述べた。しかし中国の王毅外相は「各主体が冷静さを保ち、政治的解決の大きな方向性を維持していかなければならない」という中国側の従来の立場を繰り返したという。
 それに続く3国外相会談の終了後、パク長官は「3人の外相は、3国の協力を早期に復元し、正常化していくことで合意した」と述べた。しかし3国外相は、韓中日首脳会談については「3国がそれぞれ都合がよく、最も早い時期に開催しよう」との従来の立場を再確認しただけで、開催日を決めることはできなかった。
 よって韓中日首脳会談は、政府が当初は年内開催を予告していたのとは異なり、来年に先送りされるとみられる。チョ・テヨン国家安保室長はこの日、3国外相会談の直前に聯合ニュースTVに出演し、「(3国首脳会談の年内開催の)扉は閉じられてはいないが、今のところ年内開催は容易ではなさそうだ」と述べた。外交部の当局者も3国外相会談の直後、記者団に対し、「3国首脳会談の開催と協力の復元および正常化について、王毅外相も何度も強い支持を表明した」としつつも、「様々な考慮要因があるため、今回の会談で開催日が決められなかったのは事実」だと述べた。
シン・ヒョンチョル記者、北京/チェ・ヒョンジュン特派員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2023-11-26 19:43


「聯合ニュース」 2023.11.26 13:48
■韓日外相 慰安婦訴訟判決巡り議論=朴氏「尊厳回復へ努力を」
 張智彦
【釜山聯合ニュース】韓国の朴振(パク・ジン)外交部長官は26日午前、韓中日外相会談のため来韓した日本の上川陽子外相と釜山市内のホテルで1時間半近く会談した。両氏は23日に韓国の高裁が日本政府に対し旧日本軍の慰安婦被害者らへの損害賠償を命じた判決など両国間の懸案について話し合った。

【写真】韓国の朴振(パク・ジン)外交部長官(中央)は26日、韓中日外相会談のため来韓した日本の上川陽子外相と釜山で会談した。上川氏と会談会場に入る朴氏(共同取材)=(聯合ニュース)

 日本政府は、原告の訴えを却下した一審判決を破棄して賠償を命じた同判決について激しく反発。韓国政府に対し国際法違反の是正のため措置を取るよう求めている。この日の会談でも上川氏は朴氏に日本政府の立場を改めて伝達。これに対し朴氏は「2015年の(韓日の)慰安婦合意を両国の公式合意として尊重している」と政府のスタンスを改めて表明した。
 韓国外交部の当局者は会談での朴氏の発言について、「(慰安婦合意文にある)被害者たちの名誉と尊厳の回復のために両国が努力しなければならず、このような(状況の)なか韓日が建設的かつ未来志向的な関係を今後も模索するため努力しなければならないという趣旨で述べた」と説明した。
 韓日政府による15年末の慰安婦合意には、日本政府による謝罪や10億円の拠出のほか両国が協力して被害者の名誉と尊厳を回復するための事業を行うとの条件が含まれており、慰安婦問題を最終的かつ不可逆的に解決したとした。
 日本側は1965年の韓日請求権協定や同合意で慰安婦問題は解決しており、今回の高裁判断はこれに反する国際法違反と主張している。
 同当局者は「被害者が損害賠償を受ける法的権利がないと考えるのか」と報道陣の問いに明確に答えなかった。まだ今回の判決文が一般公開されていないなか、法的な論点に対する具体的な言及を避けたと受け止められる。
 また両外相はこの日の会談で韓日、韓米日による先端技術分野での協力、韓日領事当局の協力などを深めることで一致。国連など多国間外交の舞台で両国が一致した対応を取れるよう引き続き意思疎通することも確認した。約4年間開催されていない韓日中首脳会談の早期開催実現でも意見が一致した。
 この日の会談は1時間の予定だったが、約30分超過した。両外相が韓日協力に関する評価や今後の方向性について詳細に語ったため予定の時間をオーバーしたという。


「The Hankyoreh」 2023-11-24 08:46
■[フォト]「慰安婦」被害者、損害賠償請求訴訟で日本に勝訴…イ・ヨンスさん「万歳」

【写真】慰安婦被害者と遺族ら21人が日本国を相手取って起こした損害賠償請求訴訟の控訴審で、ソウル高裁が日本国に請求金額の全額の賠償を命じる判決を下した23日午後、被害者のイ・ヨンスさんがソウル瑞草区のソウル高裁から出てきて万歳している=ペク・ソア記者//ハンギョレ新聞社

 元日本軍「慰安婦」被害者が日本政府を相手取って起こした損害賠償請求訴訟の控訴審で、裁判所は原告の請求金額の支払いを命じる判決を下した。
 この日の判決公判に車椅子に乗って参加した日本軍「慰安婦」被害者のイ・ヨンスさんは、裁判所を出る際に明るく笑いながら「ありがとうございます」と盛んに述べた。
 ソウル高裁民事合議33部は23日、イ・ヨンスさん、故クァク・イェナムさん、キム・ボクトンさんの遺族ら21人が起こした損害賠償請求訴訟の控訴審で、却下判断を下した原審の判決について「一審判決を取り消し、原告の請求金額をすべて認める」と述べた。
 イさんら日本軍慰安婦被害者と遺族21人は、2016年12月に被害者1人当たり2億ウォン(約2300万円)の賠償を求めて、日本政府を相手取って訴訟を起こしていた。

【写真】慰安婦被害者と遺族ら21人が日本国を相手取って起こした損害賠償請求訴訟の控訴審で、ソウル高裁が日本国に請求金額の全額の賠償を命じる判決を下した23日午後、被害者のイ・ヨンスさんがソウル瑞草区のソウル高裁から出てきて万歳している=ペク・ソア記者//ハンギョレ新聞社
【写真】慰安婦被害者と遺族ら21人が日本国を相手取って起こした損害賠償請求訴訟の控訴審で、ソウル高裁が日本国に請求金額の全額の賠償を命じる判決を下した23日午後、被害者のイ・ヨンスさんがソウル瑞草区のソウル高裁から出てきて喜んでいる=ペク・ソア記者//ハンギョレ新聞社
【写真】慰安婦被害者と遺族ら21人が日本国を相手取って起こした損害賠償請求訴訟の控訴審で、ソウル高裁が日本国に請求金額の全額の賠償を命じる判決を下した23日午後、被害者のイ・ヨンスさんがソウル瑞草区のソウル高裁から出てきて喜んでいる=ペク・ソア記者//ハンギョレ新聞社
【写真】慰安婦被害者と遺族ら21人が日本国を相手取って起こした損害賠償請求訴訟の控訴審で、ソウル高裁が日本国に請求金額の全額の賠償を命じる判決を下した23日午後、被害者のイ・ヨンスさんがソウル瑞草区のソウル高裁から出てきて万歳している=ペク・ソア記者//ハンギョレ新聞社
【写真】イ・ヨンスさん(右)が23日午後、ソウル瑞草区の民主社会のための弁護士会(民弁)の事務所で行われた控訴審判決に対する立場発表記者会見に出席し、民弁のチョ・ヨンソン会長(左)から祝いの花束を受け取っている=ペク・ソア記者//ハンギョレ新聞社
【写真】イ・ヨンスさん(左から2番目)が23日午後、ソウル瑞草区の民弁事務所で行われた控訴審判決に対する立場発表記者会見に出席し、「(裁判部に対して)ありがたいのではない。当然のことだ」と語り、参加者たちが笑っている=ペク・ソア記者//ハンギョレ新聞社
【写真】23日午後、ソウル瑞草区の民弁事務所で行われた控訴審判決に対する立場発表記者会見で、イ・ヨンスさん(前列左から2番目)をはじめとする出席者が日本政府の公式謝罪を求めている=ペク・ソア記者//ハンギョレ新聞社
ペク・ソア記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2023-11-23 14:43


「The Hankyoreh」 2023-11-24 07:38
■日本軍「慰安婦」損害賠償請求訴訟で勝訴、今度は日本政府に直に問う
 ソウル高裁、一審の判断覆し原告勝訴判決 
 被害者側「これまで勝訴と却下が交錯し真相究明難しかった 
 障害は解消されたため、日本の責任ある謝罪を求める」

【写真】23日午後、日本軍「慰安婦」被害者と遺族が日本政府を相手取って起こした損害賠償請求訴訟で、ソウル瑞草区のソウル高等裁判所は原告の請求を却下した一審の判断を取り消した。イ・ヨンスさんが判決を聞いて喜んでいる/聯合ニュース

 「一審判決を取り消す。原告に請求金額の全額と遅延損害金を支払うよう命ずる」
 23日午後2時、ソウル中央地裁308号室。裁判官が勝訴判決を読み上げると、「慰安婦」被害者のイ・ヨンスさん(95)は車椅子からがばっと立ち上がった。両手を合わせて裁判長に向かってしきりに頭を下げ、涙を流した。
 2016年末に訴訟を起こした「慰安婦」被害者は11人だったが、今や残っているのはイさんただ一人。この日の判決が確定すれば、韓国国内の「慰安婦」被害者が日本政府を相手取って起こした損害賠償請求訴訟はすべて勝訴で終結する。被害者支援団体は「判決の食い違いが統一されたので、日本政府に謝罪と責任ある賠償を求める土台が確立された」と述べた。
 ソウル高裁民事33部(ク・フェグン裁判長)は23日午後、イさんと故クァク・イェナムさん、キム・ボクトンさんの遺族ら16人が日本政府を相手取って起こした損害賠償請求訴訟の控訴審で、一審の却下判断を取り消し、請求金額をすべて認めた。イさんら日本軍「慰安婦」被害者と遺族は2016年12月に、1人当たり2億ウォン(約2300万円)の賠償を求め、日本政府を相手取って訴訟を起こしていた。
 一審と二審の判断を分けたのは、「主権免除(国家免除)」の法理を認めるか否かだった。二審は「(最近の)国際慣習法によると、日本の行為は韓国領土で韓国国民に対して行われた不法行為であるため、日本の主権免除は認めず、韓国裁判所の裁判管轄権を認めるのが妥当だ」と述べた。
 主権免除とは、国内の裁判所が他国の政府とその財産に対して裁判管轄権を行使できないようにすることで、国を互いの裁判管轄権から保護しようという国際法の規則。一審は主権免除の法理を認め、訴訟を却下していた。
 二審は日本政府の行為の違法性も認めた。二審は「日本国の前身である日本帝国も日本国の現行憲法第98条2項に則り、日本国が締結した条約と国際法規を順守する義務がある」とし、「『陸戦の法規慣例に関する条約(ハーグ陸戦条約)』、『婦人及び児童の売買禁止に関する国際条約』、『奴隷条約』、『強制労働に関する条約』などに違反している」と述べた。続けて「日本帝国の公務員が過去に刑法第226条で禁止する『国外移送目的の略取・誘引・売買』行為をおこなっただけでなく、日本帝国政府はこれを積極的に助長したりほう助したりした」と説明した。
 1965年の韓日請求権協定と2015年の「慰安婦」合意によって被害者の損害賠償請求権が消滅したかどうかは判断を下さなかった。裁判所は「被告側の抗弁がないため、特に判断しなかった」と述べた。日本政府は韓国裁判所の判決に対応していないため、この日の判決はそのまま確定する可能性が高い。
 イさんを含む「慰安婦」被害者たちは韓国政府に対応を求めてきたが、2015年の韓日「慰安婦」合意以降は「韓国政府に期待することは困難」と判断し、わらをもつかむ思いで韓国裁判所で損害賠償請求訴訟を起こした。
 しかし、勝訴したにもかかわらず、実際に賠償を受けるのは容易ではないとみられる。日本政府の資産を強制的に売却して賠償金を調達しなければならないが、外交問題などが複雑に絡んでいるからだ。
 「慰安婦」被害者の日本政府を相手取った訴訟は、1次(ナヌムの家)と、この日判決が下された2次(正義記憶連帯・民弁)に分けられる。1次訴訟では2021年1月に、日本政府に被害者1人当たり1億ウォンの賠償を命じる原告勝訴の判決が下され、まもなく確定した。しかし1次訴訟の原告たちも、3年が経過したにもかかわらず実質的な賠償は受けられていない。
 1次訴訟の原告たちは賠償金と訴訟費用を受け取るため、財産明示決定と訴訟費用の取り立てを請求した。裁判所は主権免除の法理を引用し、訴訟費用は「取り立てられない」との決定を下した。日本政府の韓国国内の財産目録の公開を命じる財産明示決定は、別の裁判所によって認められた。原告はこの決定に則り、日本政府が「和解・治癒財団への拠出金」の返還請求権を持っていることを確認し、これを差し押さえることを検討中だ。
 この日勝訴した2次訴訟の原告たちは、「返還請求権の差し押さえ」ではなく日本政府に直に謝罪と賠償を求める、との立場だ。訴訟を率いたクォン・テユン弁護士は記者会見で「本日の判決までは勝訴・却下と判決が交錯していたため、真相究明運動をおこなったり日本政府に賠償義務の履行を求めたりするうえで困難があった」とし、「今や障害は解消され、裁判所で被害者の権利が確認されたため、日本政府の直接の謝罪と責任ある賠償を求める」と語った。
イ・ジェホ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2023-11-23 17:49


「The Hankyoreh」 2023-11-24 07:51
■[社説]日本政府の「慰安婦賠償責任」を再確認した歴史的判決

【写真】日本政府を相手取り、日本軍「慰安婦」被害に対する損害賠償訴訟を起こしたイ・ヨンスさんが23日午後、ソウル瑞草区のソウル高等裁判所で、控訴審の勝訴判決を言い渡された後、「ありがとうございます」と言いながら、両手を合わせている=ペク・ソア記者//ハンギョレ新聞社

 23日、日本政府に日本軍「慰安婦」被害者と遺族に損害を賠償する責任があることを再確認する韓国裁判所の判決が出た。2021年にソウル中央地裁で日本政府の損害賠償責任を認めた最初の判決が出たのに続き、今回は上級裁判所であるソウル高裁が同じ趣旨の判決を下した。戦時中に「軍慰安婦」のような反人道的な犯罪を犯した国は、その責任から逃れられないという原則を明らかにしたもので、歴史的・法的に意味が大きい判決だ。
 日本政府を相手にした「慰安婦」損害賠償訴訟は二つに分かれて進められてきた。「第1次訴訟」と呼ばれる故ペ・チュンヒさんなど被害者と遺族12人が起こした訴訟は、2021年の判決で勝訴し、日本政府が控訴しなかったため、原審が確定した。一方、イ・ヨンスさんや故クァク・イェナムさん、キム・ボクトンさんなど被害者と遺族16人が提起した「第2次訴訟」では「訴訟が成立しない」という却下判決が下された。互いに異なる裁判所の判決による混乱があったが、この日の第2次訴訟の控訴審で第1次訴訟と同じ結論が出たことで、司法府の判断に統一性が備わることになった。
 裁判の主な争点は「主権国家である外国政府に対しては裁判権を行使できない」という「主権免除」の法理を「慰安婦」問題にも適用すべきかどうかだった。同日、裁判所は国連協約と外国事例などを根拠に挙げ、「裁判が開かれる国の領土内で、その国民に対して発生した違法行為については、その行為が(外国の)主権的行為であるかどうかに関係なく、主権免除を認めない内容の国際慣習法が存在するとみるのが妥当だ」と明らかにした。2021年の判決と同様に、反人道的犯罪を犯して他国の個人に損害を与えた国家は主権免除の法理に頼ることはできないことを再確認したのだ。
 韓国司法府は、日本企業を相手取った強制動員訴訟ではこれに先立つ2018年に、最高裁(大法院)全員合議体判決で損害賠償責任を認めている。今回「慰安婦」訴訟でも一貫した司法府の見解が確立されたわけだ。しかし、尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権は対日低姿勢外交を展開する中で、司法府の判断まで歪曲し「歴史問題の封印」に躍起になり、強制動員関連の最高裁判決にもかかわらず「第三者弁済」という譲歩案を貫こうとしている。法治国家なら、政府は司法府の判断を尊重しなければならない。判決の趣旨に合わせて、歴史的正義の実現と国民の被害回復に努めなければならない。日本政府も、韓国政府の一方的な譲歩に喜ぶだけではなく、歴史問題の解決に向けた真摯な努力を示さなければならない。

(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2023-11-24 02:41
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「ソウルで発掘された朝鮮戦争の民間人犠牲者遺骨、布をかぶせ6年間放置されていた」

2023年11月26日 | 韓国で
「The Hankyoreh」 2023-11-23 07:27
■ソウルで発掘された朝鮮戦争の民間人犠牲者遺骨、布をかぶせ6年間放置されていた
 国防部「国軍の戦死者ではない」2017年に中断 
 一度さらされて再び埋められた遺骨は腐食が速い 
 ソウル牛耳洞の民間人犠牲者、初の公式発掘 

【写真】2017年に朝鮮戦争の民間人犠牲者の遺骨発掘作業が中断されたため、遺骨にかぶせられた不織布=三韓文化財研究院提供//ハンギョレ新聞社

 1950年の朝鮮戦争から73年を経て、朝鮮戦争の民間人犠牲者の9~10体の遺骨が、ソウル江北区牛耳洞(カンブック・ウイドン)で先月公式に発掘された。ソウルは朝鮮戦争期に民間人虐殺が最も多く発生した場所の一つとして知られているが、集団埋葬地が発掘されるのは今回が初めて。
 今回の発掘は、国防部の遺骨発掘鑑識団が存在を確認したにもかかわらず、国軍の戦死者ではなく民間人であるとの理由で発掘・収拾を中断し土で覆って以来、6年ぶりに実施された。発掘機関同士の情報共有、協力システムを構築する必要があると指摘する声があがっている。

◆箱の中に高齢女性、10歳に満たない子どもの遺骨
 ソウル江北区役所は、先月16~20日に江北区牛耳洞338番地一帯で朝鮮戦争期の民間人犠牲者と推定される9~10体の遺骨を発掘・収拾し、現在は鑑識をおこなっていることを21日に明かした。同区役所は真実・和解のための過去事整理委員会(真実和解委)からの2200万ウォン(約252万円)の補助金で遺骨発掘を実施した。

【写真】10月にソウル江北区牛耳洞338番地で発掘された遺体が最初にあらわになった時の様子=三韓文化財研究院提供//ハンギョレ新聞社

 そもそも牛耳洞の遺骨の存在が初めて確認されたのは、6年前の2017年11月16日。江北区を流れる仁寿川(インスチョン)の擁壁工事をしていた労働者たちが遺骨を発見し、彼らの通報を受けて江北警察署科学捜査隊が確認し、5~6体の遺骨、靴、装弾子(クリップ)などを発掘した。
 韓国軍の戦死者の遺骨と誤認した警察は、現場を国防部の遺骨発掘鑑識団に引き渡した。その後、同年12月6日までの発掘過程で、さらに女性と子どもの遺骨および遺品が確認された。国防部は民間人犠牲者だと推定し、発掘を中断した。6・25戦死者発掘法上、軍には民間人の遺骨を発掘する権限がない、というのがその理由だった。
 国防部から改めて現場を引き渡された江北警察署はその後、行政安全部過去事支援団および江北区役所と協議し、現場を保存するため不織布をかけ、その上から土をかぶせた。警察が「偶然」発掘・収拾した5~6体の遺体は、鑑識を経て現在は世宗(セジョン)追悼の家に安置されている。今回発掘された遺骨も合わせると、牛耳洞338番地で発掘された遺骨の数は15~16体分になる。

◆ソウルで軍と警察によって殺された民間人犠牲者は5千人あまり

【写真】10月19日、ソウル江北区牛耳洞338番地の現場で、調査員たちが遺骨発掘作業をおこなっている=三韓文化財研究院提供//ハンギョレ新聞社

 発掘作業を受託した三韓文化財研究院のハ・ヨンジュン責任調査員は、「面積70平方メートルの発掘地から出た骨片は200点で、太ももの骨が最も多く、頭骨は5~6個が割れた状態で出てきた」、「3体の子どもの遺骨と、箱に入った入れ歯と一緒に出てきた高齢女性が目についた」と語った。木箱に入れられた2体は、6年前に国防部の遺骨発掘鑑識団が土をかぶせていったものと推定される。
 江北警察署による2017年の現場鑑識の結果、1950年10月ごろに国軍に指揮された大韓青年団の団員と警察によって、人民軍の駐留時期の人民軍の協力者とその家族であるとの疑いをかけられて集団虐殺された犠牲者であることが確認された。真実和解委は、朝鮮戦争期にソウルで軍や警察によって殺された民間人犠牲者は5千人あまりにのぼるとみている。昨年に発表された釜慶大学産学協力団の報告書によれば、全国の遺体埋葬に関する調査の対象地となっている381カ所のうち、ソウルにあるのは「牛耳洞338番地」が唯一。

【写真】ソウル江北区牛耳洞338番地の遺骨発掘現場の10月の様子。掘削機で地面を掘っている=三韓文化財研究院提供//ハンギョレ新聞社

◆「トラックに人が乗せられてきて射殺されるのを見た」
 彼らはどのような人たちなのだろうか。朝鮮戦争前から牛耳洞で暮らしていたウォン・ヨンボンさん(89)はハンギョレに、「中学1年生くらいだった1950年10月ごろ、警察が朝鮮戦争の前に北から共産党を嫌ってやって来て暮らしていた情報提供者の音楽の先生(当時45~50歳)の一家5人を、仁寿川周辺で射殺するのを目撃した」と語った。遺骨には音楽の先生夫婦と先生の義母、7歳以下の2人の息子のものが含まれている可能性があるとみられる。
 事件当時9歳で、牛耳洞に住んでいたアン・サンウクさん(82)もハンギョレに「トラックに人が乗せられてきて、今の軽電鉄の事務所のある発掘現場で射殺されるのを目撃した。射殺される場面を密かに目撃したら見つかって、殴られ、地下室に夜遅くまで閉じ込められていた」と証言した。
 牛耳洞のような遺骨の放置や発掘の遅れなどの問題が再発しないよう、国軍の戦死者と民間人犠牲者の遺骨を発掘する機関同士の円滑な協力システムの構築が必要だと指摘する声もあがっている。国防部の遺骨発掘鑑識団は常設の独立部隊となっているが、民間人の遺骨発掘は一時的な機関である真実和解委、または遺族会や市民団体がおこなってきた。
 遺骨発掘の専門家である忠北大学のパク・ソンジュ名誉教授は「一度さらされて再び埋められた遺骨は、腐食がはるかに速く進む」とし、「遺骨を放置せずに収拾するコントロールタワーが必要だ」と述べた。実際に今回発掘された遺骨は、ひどく砕けたり割れたりしていたという。

【写真】入れ歯と高齢女性の遺骨が入っていた木箱。2017年11~12月に作業をおこなった国防部遺骨発掘鑑識団が、作業中断に際して箱に収めたものとみられる=三韓文化財研究院//ハンギョレ新聞社
【写真】ソウル江北区牛耳洞338の遺骨発掘現場。10月11日撮影。発掘前にドローンで撮影したもの=三韓文化財研究院提供//ハンギョレ新聞社
【写真】10月11日にソウル江北区牛耳洞338の遺骨発掘現場で執り行われた開土祭。朝鮮戦争戦後民間人犠牲者全国遺族会のキム・ボギョン会長が追悼の辞を読み上げている=三韓文化財研究院提供//ハンギョレ新聞社
【写真】10月、ソウル江北区牛耳洞338の現場から発掘された骨の整理作業が行われている=三韓文化財研究院提供//ハンギョレ新聞社

コ・ギョンテ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2023-11-22 03:00
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「「想像をはるかに超える民間人虐殺」…朝鮮戦争中、全羅南道で何が起こったのか」

2023年11月25日 | 韓国で
「The Hankyoreh」 2023-11-25 07:20
■「想像をはるかに超える民間人虐殺」…朝鮮戦争中、全羅南道で何が起こったのか
 真実和解委、光州で討論会
 
【写真】23日、真実和解委発足3周年を記念し光州で開かれた「全羅南道地域の軍・警察および敵対勢力による犠牲事件に関する討論会」で、参加者たちが討論している=真実和解委提供//ハンギョレ新聞社

 「想像をはるかに超える被害、出口のない恐怖」。
 全南大学社会学科のチェ・ジョンギ教授は、朝鮮戦争前後に全羅南道霊光(ヨングァン)地域で起きた民間人虐殺について、このように表現した。朝鮮戦争前後の時期、霊光地域では他の郡より圧倒的に多い4291人の民間人が死亡した。1948年の麗水・順天(ヨスン・スンチョン)事件で蜂起を起こした国軍第14連隊の一部が、霊光地域内の仏甲山(ブルガプサン)や君遊山(クンユサン)、九岫山(クスサン)、太清山(テチョンサン)などで国軍討伐隊と対峙する局面を成し、加害の主体が警察と地方左翼で入れ変わる状況が繰り返された。朝鮮戦争勃発後は奪還するまで時間がかかり、恐怖と報復、事前攻撃などの感情を持った武装した群衆によって虐殺の悪循環が深まった。
 真実・和解のための過去事整理委員会(真実和解委)は23日午後2時、光州市西区(クァンジュシ・ソグ)のラマダプラザホテルで「全羅南道地域の軍・警察および敵対勢力による犠牲事件に関する討論会」を開いた。第2期真実和解委の発足3周年を記念して開かれた今回の討論会は、朝鮮戦争前後の時期に全羅南道地域で発生した軍・警察および敵対勢力による犠牲事件の真実究明の成果を共有し、犠牲者の名誉回復および被害克服のために今後の課題を示す場となった。
 現在、真実和解委に申請された朝鮮戦争前後に起きた民間人犠牲事件計1万3982件のうち、光州・全羅南道地域の犠牲事件の数は5874件(麗水・順天事件、刑務所事件を除く)で、申請された事件全体の42.3%に上る。霊光が属する光州と全羅南道地域は、朝鮮戦争前後で最大の民間人犠牲事件の被害地域だ。

【写真】23日、真実和解委発足3周年を記念し光州で開かれた「全羅南道地域の軍・警察および敵対勢力による犠牲事件に関する討論会」で、参加者が質問している=真実和解委提供//ハンギョレ新聞社

 この日の討論会にはチェ・ジョンギ教授をはじめ、キム・ウンギ真実和解委員、パク・チャンスン漢陽大学名誉教授が発題者として参加した。発題報告後には漢陽大学比較歴史文化研究所のユン・ヘドン教授、KBS木浦放送局のキム・グァンジン記者、新安(シナン)郡庁のイ・ジェグン学芸研究士、真実和解委員会のパク・ミギョン調査第2課長が討論者として参加した。
 「朝鮮戦争前後に起きた全羅南道地域の民間人犠牲事件ー真実究明の成果と課題」をテーマに最初に発題したキム・ウンギ委員は、「朝鮮戦争当時、全国各地で民間人が軍・警察によって適法な手続きなしに犠牲になったという主張が事実であることが明らかになり、真実究明を土台に政府の謝罪が続いた」とし、「事件地域を中心に慰霊碑、慰霊墓域が建設されるなど、遺族の無念を解消し、地域社会内の和解措置が履行されるのに寄与した」と成果を挙げた。
 キム委員はまた、第2期真実和解委の課題として、第1期に比べ申請件数は80%増えたが調査期間は1年短縮された第2期委員会の調査期間の延長と、賠償・補償法制定など被害者の名誉回復と被害救済、過去事財団の設立などを提示した。

【写真】23日、真実和解委発足3周年を記念し光州で開かれた「全羅南道地域の軍・警察および敵対勢力による犠牲事件に関する討論会」の開始に先立ち、参加者が記念撮影をしている=真実和解委提供//ハンギョレ新聞社

 2番目の発表を行ったチェ・ジョンギ教授は、「朝鮮戦争前後に起きた霊光地域の民間人虐殺」をテーマに、大きな被害が発生した全羅南道霊光地域の「犠牲者統計」と「加害者を基準にした地域別被害事例」、「1945~1953年時代の霊光地域の政治社会学」、「朝鮮戦争期の霊光地域の民間人虐殺事件」について発表した。
 チェ・ジョンギ教授は発表資料で、全羅南道霊光郡で最も被害が大きい地域として白岫面(ペクスミョン)と塩山面(ヨムサンミョン)の事例を挙げた。海岸沿いに位置する白岫面の九岫山の峰であるカッポンはパルチザンの集結地であり、軍・警察による奪還が7カ月ほど遅れたことで、1950年10~11月に発生した左翼による犠牲事件が全体の犠牲事件の80%を占め、また仏甲山と九岫山をつなぐ通路だった塩山面では、1950年9月28日のソウル奪還以後、被害者の約80%が無差別虐殺の被害を受けたと明らかにした。
 3番目の発表者である漢陽大学のパク・チャンスン名誉教授は、「朝鮮戦争前後に起きた全羅南道莞島(ワンド)地域の民間人犠牲事件」をテーマに、「解放後から1946年までの莞島郡の政治・社会的動向」、「1947年から1949年までの莞島警察の左翼掃討作戦」、「朝鮮戦争勃発後の莞島郡での民間人虐殺」などについて発表した。
 パク・チャンスン教授は、特に莞島郡で犠牲者が多かった所安面(ソアンミョン)で犠牲事件が多数発生した原因を考察し、「二つの家の些細な対立が植民地解放後に左右の対立につながり、左派の一人の青年が麗水・順天事件で死亡した事件が右翼に対する報復虐殺につながった」とし、「これがさらに、警察による奪還後に反逆者処罰へとつながる悲劇として現れた」と明らかにした。
 また、2013年5月「所安抗日運動記念館の隣の空き地に建てられた『所安面犠牲者追悼碑』には、村ごとに犠牲になった人たちの名前が左右を問わず全員刻まれ、追悼碑の除幕式の際に莞島警察署長は犠牲者に謝った」として「和解と癒やしが始まった」と評価した。

コ・ギョンテ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr)
韓国語原文入力:2023-11-23 17:09
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「韓国野党国会議員「日本、『慰安婦』敗訴が遺憾? 尹政府、駐韓日本大使を呼ぶべき」」

2023年11月24日 | 日本軍隊性奴隷
「中央日報日本語版」 2023.11.24 14:05
■韓国野党国会議員「日本、『慰安婦』敗訴が遺憾? 尹政府、駐韓日本大使を呼ぶべき」
 「日本軍慰安婦」被害者16人に2億ウォン(約2290万円)ずつ損害賠償をするよう命じる韓国裁判所の判決に対して日本政府が遺憾を表明した中で、韓国第一野党「共に民主党」の李元旭(イ・ウォンウク)議員が「尹錫悦(ユン・ソクヨル)政府はこのような不当な招致と反省のない態度に対して見ているだけのつもりか」と声を高めた。
 李議員は24日、フェイスブックを通じて「ソウル高等法院(高裁に相当)は日本軍慰安婦被害者とその遺族が日本に対して出した損害賠償訴訟で被害者と遺族に勝訴の判決を下した。1審とは違って被害者の権利を確実にした今回の判決を尊重する」とし「歴史的事実が存在するにも関わらず、その存在さえ無対応で一貫した日本政府の態度に対してわが国司法府が正義の判決を下した」と評価した。
 また「日本は正義的判決を受け入れず、開き直って駐日韓国大使を呼び、わが政府に抗議した」とし「『判決は極めて遺憾』という立場は極めて遺憾で、日本政府が相変らず謝罪と反省ではなく戦犯国家の記憶を肯定化しているのではないか疑われるほど」と指摘した。
 続いて「我々も駐韓日本大使を呼び、龍山(ヨンサン)大統領室声明を通じて積極的な抗議と遺憾表明があるべきだ」とし「それが国の品格であり国益で、大統領がすべき仕事」と強調した。
 あわせて「日本は経済大国と共に歴史的に間違った部分ですべてを尽くして謝罪して賠償する姿を示すべきだ」とし「それこそが韓日関係の復元であり、韓日未来世代の真の友情と強固な連帯を可能にする動力になるだろう」とした。


「聯合ニュース」 2023.11.24 14:08
■慰安婦訴訟で日本政府に賠償命令 韓国外交部「15年の合意尊重」
 金泰均
【ソウル聯合ニュース】日本政府に旧日本軍の慰安婦被害者らへの賠償を命じた韓国高裁の判決に日本が強く反発していることについて、韓国の外交部当局者は24日、「判決の詳細を把握しているところ」だとして、「2015年の(韓日の)慰安婦合意を両国の公式合意として尊重している」と述べた。外交的合意の枠組み内でこの問題を取り扱う姿勢を示したものとみられる。

【写真】ソウル高裁の判決を受け、両腕を上げて喜びを示す李容洙さん=23日、ソウル(聯合ニュース)

 ソウル高裁は23日、慰安婦被害者の李容洙(イ・ヨンス)さんや遺族ら計16人が日本政府を相手取り損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決で、原告の訴えを却下した一審判決を取り消し、日本政府に対して原告側の請求全額(1人当たり2億ウォン=約2300万円)の支払いと訴訟費用の負担を命じた。判決を受け、日本政府は尹徳敏(ユン・ドクミン)駐日韓国大使を呼んで抗議したほか、上川陽子外相が「国際法違反の状態を是正するために適切な措置を講ずることを強く求める」とする談話を発表した。
 ただ、日本メディアは今回の判決について、韓国政府が今年3月に徴用問題の解決策を発表してから急速に改善している両国関係に与える影響は限定的との見方を示している。


「中央日報日本語版」 2023.11.24 14:01
■日本、慰安婦賠償判決に「極めて遺憾…断じて受け入れられない」
 ソウル高等法院(高裁に相当)が前日に日本政府に対して日本軍慰安婦被害者に1人当たり2億ウォン(約2290万円)を賠償するよう命じる判決を下したことについて、日本政府は24日、「極めて遺憾で断じて受け入れられない」という立場を明らかにした。
 松野博一官房長官はこの日午前の記者会見で「判決に対する認識と日韓関係に及ぼす影響、今後の外交方針」に対して質問を受けると「国際法と日韓両国間の合意に明らかに反するもの」としながらこのように答えた。
 あわせて「韓国側が適切な措置を講じることを強く求める」と明らかにした。
 続けて「北朝鮮が弾道ミサイル技術を用いた発射を繰り返すなど、厳しい戦略環境を踏まえれば、緊密な協力が今ほど必要とされる時はない」と強調した。
 そのうえで「両首脳のリーダーシップの下、日韓関係を積極的に動かしてきた」とし「引き続き、さまざまな面で取り組みを進める」と明らかにした。
 前日、ソウル高等法院は李容洙(イ・ヨンス)さんやその遺族ら16人が日本政府を相手取って出した損害賠償訴訟控訴審で、1審判決を取り消して原告の請求金額をすべて認めた。


「中央日報日本語版」 2023.11.24 06:42
■「慰安婦訴訟敗訴」日本、韓国大使を呼んで抗議「極めて遺憾」
 日本政府は23日、李容洙(イ・ヨンス)さんら慰安婦被害者が日本政府に対して韓国裁判所に出した損害賠償請求訴訟控訴審で勝訴したことを受け、尹徳敏(ユン・ドクミン)駐日大使を呼んで抗議した。
 NHK放送や共同通信などによると、岡野正敬外務省事務次官はこの日尹大使を呼んで、「極めて遺憾な判決」としながら抗議の意を伝えた。
 岡野事務次官は今回の判決に対して、主権国家が他国の法廷に立たないという国際慣習法上の「国家免除」原則が適用されなかったとしながら、日本政府はこれを「断じて受け入れられない」という立場を明らかにした。
 あわせて韓国政府が国際法違反を是正するための適切な措置を講じなければならないと求めた。
 この日、ソウル高裁民事33部(部長判事ク・フィグン)は李容洙さんをはじめ日本軍慰安婦被害者やその遺族ら16人が日本政府に対して出した損害賠償訴訟控訴審で「1審判決を取り消し、原告の請求金額をすべて認める」と判決した。
 これに先立ち、主権国家である日本に他国の裁判権が免除されるという理由で「却下」判断を下した1審と違い、韓国裁判所の裁判権を認めた。裁判部は「国際慣習法上、被告日本政府に対する大韓民国裁判所の裁判権を認めるのが妥当だ」とし「当時の慰安婦動員過程で被告の不法行為が認められ、妥当な慰謝料を支払わなければならない」と判示した。
 一方、日本はこれまで国家免除原則を掲げて慰安婦関連訴訟に応じてこなかった。「慰安婦に対する法的な損害賠償責任がない以上、訴訟そのものも認めることはできない」と主張しながらだ。今回敗訴した訴訟も日本政府は出席を拒否した。


「聯合ニュース」 2023.11.23 18:58
■慰安婦被害者「日本は謝罪と賠償を」 控訴審逆転勝訴で=韓国
【ソウル聯合ニュース】旧日本軍の慰安婦被害者と遺族らが日本政府を相手取り、損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決で韓国高裁が原告勝訴の判決を言い渡したことを受け、原告の李容洙(イ・ヨンス)さんは23日、記者会見を開き「これ(今回の判決)は日本にとって始まり」だと指摘したうえで、「日本は原告らに心から謝罪し、判決に従い法的賠償を行うべきだ」と述べた。

【写真】記者会見の様子=23日、ソウル(聯合ニュース)

 李さんは「慰安婦の歴史は韓国の自尊心であり、歴史を学び教えるべきだ」とし、「そのためには若者たちが互いに往来し、交流しなければならない」と強調した。
 進歩(革新)系弁護士団体「民主社会のための弁護士会」の「慰安婦問題対応TF(タスクフォース)」団長の李相姫(イ・サンヒ)弁護士は、まずは日本の自発的履行を促すとして、強制執行などの手続きを行う可能性も開かれていると述べた。
 また、2015年の韓日慰安婦合意以降、韓国政府に期待できることがなく最後の手段として同訴訟を起こしたとし、被害者が法の保護を受ける完全な市民権者であることを確認した判決だと説明した。
 会見に同席した、慰安婦被害者を支援する市民団体「日本軍性奴隷制問題解決のための正義記憶連帯(正義連)」の李娜栄(イ・ナヨン)理事長は「被害者の切迫した訴えに耳を傾け、人権の最後のとりでとして責任を果たした裁判所の判決を歓迎する。国際人権法の人権尊重の原則を確認した意味ある判決だ」と評価した。
 ソウル高裁はこの日、李容洙さんら被害者と遺族計16人が日本政府を相手取って起こした損害賠償請求訴訟の控訴審で、原告の訴えを却下した一審判決を取り消し、日本政府に対して原告側の請求全額(1人当たり2億ウォン=約2300万円)の支払いと訴訟費用の負担を命じた。
 一審のソウル中央地裁は2021年4月、主権国家である日本に対して他国を訴訟の当事者として裁判を行うことはできないとする国際法上の原則「主権免除」を認め、原告の訴えを退けた。

【写真】記者会見で発言する李容洙さん=23日、ソウル(聯合ニュース)


「聯合ニュース」 2023.11.23 16:19
■慰安婦被害者らが逆転勝訴 一審破棄し日本政府に賠償命令=韓国高裁
【ソウル聯合ニュース】旧日本軍の慰安婦被害者の李容洙(イ・ヨンス)さんのほか故クァク・イェナムさん、故金福童(キム・ボクドン)さんらの遺族、計16人が日本政府を相手取り損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決で、韓国のソウル高裁は23日、原告の訴えを却下した一審判決を取り消し、日本政府に対して原告側の請求全額(1人当たり2億ウォン=約2300万円)の支払いと訴訟費用の負担を命じた。

【写真】控訴審判決に両腕を上げて喜びを示す李容洙さん=23日、ソウル(聯合ニュース)

 高裁は「国際慣習法上、被告である日本政府に韓国裁判所の裁判権を認定することが妥当だ」と述べた上で、慰安婦を集める過程で被告の違法行為が認められることから適切な慰謝料を支払う必要があるとの判断を示した。
 被害者について「最低限の自由すら抑圧され、日本の軍人との性行為を強要された結果、無数の傷害を負わされたり妊娠・死亡の危険まで甘んじたりするしかなく、終戦後も正常な範囲の社会生活に適応できないという損害を被った」と言及した。被告の行為は韓国の民法上の違法行為に当たるとし、各被害者への慰謝料は原告が求める2億ウォンを上回るとみるのが妥当だと述べた。
 この日、車いすに乗って出廷した李容洙さんは判決を聞いて法廷を出てくると、両腕を上げて万歳を叫びながら涙を流した。「ありがとう」と何度も繰り返し、「天にいらっしゃるハルモニ(おばあさん、慰安婦被害者)たちにも私から感謝を伝えたい」と語った。
 李さんや被害者遺族らは2016年12月、日本政府に対し1人当たり2億ウォンの賠償を求める訴訟を起こした。21年4月にソウル中央地裁は日本の主権免除を認め、原告の訴えを却下した。
 この年、同地裁は同種の訴訟に異なる判断を示していた。別の慰安婦被害者ら12人が起こした賠償請求訴訟で21年1月、「日本の違法な行為に国家免除(主権免除)を適用できない」として日本政府に1人当たり1億ウォンの賠償を命じた。日本政府はこうした訴訟に対応しないとの原則を崩さず控訴もしなかったため、判決は確定した。


「中央日報日本語版」 2023.11.23 15:02
■李容洙さん「万歳」…日本相手に損害賠償訴訟2審勝訴

 旧日本軍慰安婦被害者が日本政府を相手に起こした損害賠償請求訴訟の控訴審で、裁判所が1審を覆して被害者側の訴えを認めた。

【写真】両手をあげて喜ぶ李容洙さん

 ソウル高裁は23日、李容洙(イ・ヨンス)さんら慰安婦被害者と遺族16人が損害賠償を求めた訴訟で1審の判決を覆して原告勝訴判決を出した。
ソウル中央地裁は2021年4月、国家の主権行為を他国で裁判することはできないという「国家免除論」が依然として国際慣習法として認められているとし、損害賠償請求を却下した。
 半面、控訴審では「現在まで形成された国際慣習法上、被告の日本国に対する大韓民国の裁判権を認めるというのが妥当」とし「当時、韓半島(朝鮮半島)で日本軍慰安婦動員過程での不法行為が認められ、したがって妥当な慰謝料を支払うべき」と判断した。
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「イスラエル、病院「標的」に攻撃か…ガザの医療システム麻痺」

2023年11月23日 | 国家・社会
「The Hankyoreh」 2023-11-22 07:12
■イスラエル、病院「標的」に攻撃か…ガザの医療システム麻痺
 アル・アハリ、アル・シファに続き北部の病院を再び空爆

【写真】ガザ地区北部のアル・シファ病院から救助された未熟児たちが20日、エジプトへの移送を待ちながら、南部ラファ国境近くの病院で待機している。パレスチナ赤新月社救助チームは、28人の未熟児が国境を越えたと発表した/AP・聯合ニュース

 イスラエルがハマスの本部だと主張してきたガザ地区内の最大病院であるアル・シファ病院に対する攻撃を続けている中、北部に位置する別の病院も空爆し、少なくとも12人が死亡した。イスラエルは病院を対象にした攻撃を続けており、ガザ地区の保健システムを破壊することを軍事戦略の一つとしているのではないかという分析まで出ている。
 非営利救護団体「INARA」の創立理事であり、パレスチナ系英国人医師のガッサン・アブ・シッタ氏は20日、「アルジャジーラ」とのインタビューで「今回の戦争がこれまでの中東戦争と異なる点は、医療システムの破壊がイスラエルの軍事戦略の主軸という点にある」と指摘した。同氏は、イスラエル国防軍(IDF)が先月17日に空爆し、471人が死亡したとされるアル・アハリ病院と、11日からイスラエル軍の攻撃を受けているアル・シファ病院でいずれも勤務した経験がある。アブ・シッタ氏は医療システムが破壊されれば、イスラエル軍の空爆で負傷し運良く生き残っても(適切な治療を付けられず)結局死に至るとし、これは「パレスチナを完全に破壊しようとする軍事戦略であり、一種の大量虐殺」だと強調した。また、ガザ地区では約80万人が燃料・医薬品不足、病院破壊などで医療サービスを受けられない状況だと付け加えた。
 ガザ地区のパレスチナ保健省は、北部の都市ベイトラヒアにあるインドネシアの病院でも20日にドローンなどによる攻撃が行われ、12人が死亡し数十人が負傷したと発表した。病院に残っている700人が避難できず孤立しているという。ガザ地区保健省のアシュラフ・アルクドラ報道官は「アル・シファ病院と同じことをここでも行っている」と述べた。国境なき医師団パレスチナ支部のアンバー・アラヤン副局長も、自分が働いているアル・シファ病院の建物に「国境なき医師団」の表示があるが、同日の朝にも銃撃戦が起きたと語った。アル・シファ病院には医療関係者と患者の家族など70人余りが依然として取り残され、食糧と水も底をついたが、建物の外に出られない状況だと語った。車もすべては破壊され、移動手段もない状況だという。
 世界保健機関(WHO)などの国際社会は、イスラエルとハマスの戦争で病院が標的になってはならないと強調している。WHO保健非常プログラムの総括責任者、マイケル・ライアン氏は同日、「(ガザ地区内の)36の病院のうち10カ所だけが現在かろうじて機能しており、それさえも本来の機能を果たせていない」と述べた。開戦から6週が過ぎ、ガザ地区の医療システムは事実上麻痺している。北部の病院は凄惨な攻撃を受けて機能を失い、南部の病院は小規模であるため、深刻な負傷は治療できない状態だ。
 冬に入ったガザ地区の天気は寒いうえ、湿気が多く、保健危機が深刻さを増している。最近、冬雨が降り、難民キャンプで生活している人々は水因性伝染病や感染など、大きな保健危機にさらされている。ガザ地区保健省は20日基準で、死亡者が1万3300人に達すると発表した。このうち児童は5600人、女性は3550人だ。

キム・ミヒャン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力: 2023-11-21 20:15
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「アル・シファ病院に残された新生児、千辛万苦の末に母親のもとへ」

2023年11月23日 | 国家・社会
「The Hankyoreh」 2023-11-23 08:34
■アル・シファ病院に残された新生児、千辛万苦の末に母親のもとへ
 治療のために病院に残し、家族は南部に避難 
 イスラエルによる空爆の中、連れてくる方法がなかったが…

【写真】21日(現地時間)、ワルダ・スベタさん(32)がパレスチナ・ガザ地区南部のラファにある病院で、息子のアナス・スベタちゃんと再会した/ロイター・聯合ニュース

 「これまで生きた心地がしませんでした。赤ちゃんが安全に保護されていることに感謝しました」。
 21日(現地時間)、パレスチナ・ガザ地区南部のラファにある病院の新生児室で、名簿に目を凝らしていたワルダ・スベタさん(32)は、息子のアナスの名前を確認した後、ロイター通信にこのように語った。
 スベタさんは水色のベビー服と帽子姿で眠っている息子を見ながら微笑んだ。ひと時も忘れず会う日を待っていた息子と45日ぶりに劇的に再会した瞬間だった。

【写真】21日(現地時間)、ワルダ・スベタさん(32)がパレスチナ・ガザ地区南部のラファにある病院で息子のアナス・スベタちゃんを抱いている/ロイター・聯合ニュース

 パレスチナのガザ市に住んでいたスベタさん一家は現在、臨時避難所が設けられた南部のハンユニスのある学校で生活している。
 先月7日、イスラエルとパレスチナのイスラム武装勢力ハマスの戦争が勃発した当時、生まれたばかりのアナスちゃんはガザ地区北部のアル・シファ病院の新生児室で治療を受けていた。
 イスラエルの攻撃を避け、スベタさんの家族も南に避難せざるを得なかった。しかし、電力、水、食料、医薬品まで不足し、アナスちゃんは治療のためにアル・シファ病院に残らなければならなかった。同病院はガザ地区最大規模の医療機関だった。
 スベタさんは「アル・シファ病院から息子を迎えに来るよう連絡が来たが、北部の病院に戻るのが困難だった」とし、「ガザ市を出る道は開かれていたが、(ガザ市に)戻る道が閉鎖されたため」と説明した。当時、アル・シファ病院をはじめとする北部のすべての病院が運営を中断しなければならない危機的な状況で、保護者たちに退院の意思を打診したものとみられる。
 今月18日、イスラエルがアル・シファ病院の地下にハマスの最大の拠点があると主張し、状況は緊迫さを増していった。病院と連絡が途絶えたのもこの時からだ。
 スベタさんは「息子について何も分からなくなった。生きているのか死んだのか、誰かが赤ちゃんにミルクをあげているのかも(分からなかった)」とし、「息子が生きている姿を見られるという希望を失っていた」と語った。
 アナスちゃんの生死を確認するために走り回っていたスベタさん夫妻は、臨時避難所で会った他の避難民を通じて、新生児たちがガザ地区の南部に移送されていることを聞いた。
 すぐにハンユニスの病院に駆けつけたが、アナスちゃんはおらず、ラファの病院に行くよう言われた。そして、ついに息子と再会できた。

【写真】今月12日(現地時間)、パレスチナのガザ市のアル・シファ病院で生まれたパレスチナ人の新生児たちの姿/AP・聯合ニュース

 イスラエルが退避を通告した当時、アル・シファ病院の新生児室には39人の新生児たちがいた。しかし、ラファとエジプトに避難する前に8人が死亡した。8人のうち2人は避難前夜に死亡した。
 世界保健機関(WHO)と国連人道問題調整事務所(OCHA)の支援を受け、生き残った31人の新生児たちは19日、ラファに移送された。翌日、28人はエジプトに再び避難した。アナスちゃんを含む3人の新生児はラファに残った。1人は身元が確認されておらず、1人は医療スタッフが身元を公開しなかったと、ロイター通信は報じた。
 ユニセフのジェームズ・エルダー報道官はロイター通信に「エジプトに避難した28人のうち20人は保護者がおらず、8人は母親と一緒にいる」とし、「保護者のいない一部の新生児は孤児であり、残りの新生児は家族に関する情報がない」と述べた。また「このすべてがガザ地区の家族が置かれた恐ろしい状況を示している」と語った。
 スベタさんはアナスちゃんと一緒にエジプトに避難してさらに治療を受けることを提案されたが、夫と7人の子供を置いてエジプトにいくことはきなかった。
 幸いにも、現在アナスちゃんは退院できるほど回復している。ロイター通信は、スベタさんの家族がアナスちゃんとともに新しい生活を始めようとしていると報道した。

チョ・ユニョン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2023-11-23 01:12
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「爆弾で14人の甥や姪を一度に失う…子どもにテロの責任を問うな」

2023年11月22日 | 国家・社会
「The Hankyoreh」 2023-11-22 07:43
■爆弾で14人の甥や姪を一度に失う…子どもにテロの責任を問うな
 [ハンギョレ21]ホモ・ミグランス 
 極右連立政権として政権延命「ネタニヤフの戦争」の様相 
 死者の40%は子ども…インフラ破壊で集計中断

【写真】英国ロンドンで活動中のガザ地区出身のジャーナリスト、アフメド・アルナウクさんが2019年に故郷で甥や姪と撮った写真。この子どもたちは2023年10月のイスラエル軍による空爆の際にたった1発の爆弾で全員死亡した=同氏のインスタグラムより//ハンギョレ新聞社

 「『声がない』などということはない。意図的に沈黙を強いられた人々、選択的に聞こえなくされた人々がいるだけだ」。
 インドの作家、アルンダティ・ロイが2004年にシドニー平和賞の受賞演説で述べた言葉だ。ロイは1997年に初の小説『小さきものたちの神』で英文学界最高の文学賞であるブッカー賞を受賞した。彼女は政治的暴力と新自由主義に抗して弱者の人権を代弁する人権活動家でもある。

◆民間人の被害を最小化する努力など眼中にないイスラエル
 世の中には声を発しているのに聞こえない弱者、社会的マイノリティが数え切れないほどいる。中でも子どもは最も小さくて弱い存在だ。子どもは疾病、貧困、自然災害だけでなく、大人たちの暴力に対してもとてつもなく弱い。戦争は最悪だ。戦争は、人間の暴力性が極限にまで至っていながら黙認される事態だ。2023年10月7日にはじまったイスラエルとパレスチナのイスラム武装政治組織ハマスの戦争も同じだ。
 ハマスによる奇襲攻撃とイスラエルの全面戦争宣言ではじまった戦争は、7週目に入った。彼らの戦争は現代版「ダビデとゴリアテの対決」だ。旧約聖書時代には、後にイスラエル王国の王となった少年ダビデが投石でペリシテ(今のパレスチナ)の戦士ゴリアテを倒したが、今は真逆だ。圧倒的な軍事力を前面に押し立てたイスラエルが、面積が狭く人口が密集しているガザ地区に一方的な攻撃を浴びせている。民間人居住地域と住宅はもちろん、病院と学校、さらには負傷者を乗せた救急車すらも空爆と砲撃の標的となる。イスラエルは、ハマスが民間人を盾として悪用しており、病院の地下トンネルを軍事施設として用いていると主張している。しかし、ガザの住民には避難命令を繰り返すばかりで、民間人の被害を回避したり最小限に抑えたりする努力や戦術は眼中にもないようだ。
 ハマスがイスラエルの領土に侵入して音楽祭を楽しんでいた1500人あまりの民間人を手当たり次第に殺し、数百人を人質に取ったのは弁解の余地のない戦争犯罪だ。まともな武器さえ確保が困難な被抑圧者が強大な占領勢力に抗してゲリラ戦術を用いることもあるが、ハマスの民間人攻撃は決して認められない蛮行だ。しかし、「自衛権」を掲げて反撃をはじめたイスラエル軍の無差別攻撃と民間人殺傷の方がよっぽど深刻だ。同じ戦争犯罪ではあるものの、その残酷さは比較にならないほどだ。
 武装集団が民間人の密集地を襲って銃を乱射するのは「野蛮なテロ」だろうか。当然だ。では、正規軍が戦闘機やミサイル、戦車、野砲の砲弾、恐ろしい殺傷兵器である白リン弾を民間人の密集地域に投下するのは「文明化した戦闘」行為なのか。発射される兵器、特に遠距離発射兵器であるほど、加害者(攻撃者)は被害者(犠牲者)に直に対面することなく殺傷できるため、罪の意識が軽くなる。そのうえ、直接手にする凶器や個人用火器ではなく先端科学技術が用いられた兵器であるほど、殺傷の野蛮さは隠され、洗練されたもののように見えるという錯視現象を引き起こす。しかし、犠牲者の命を奪う時の残酷さは後者の方が上だ。兵器と戦術が戦争の悲惨さを相殺することはできず、あらゆる戦争はそれそのものが絶対悪だ。

【写真】11月14日、パレスチナのガザ地区南部のハンユニスの病院付近で、イスラエル軍による空爆で家族と親戚を失った人々が悲しみながら歩いている=カーンユニス/AP・聯合ニュース

◆一家皆殺しはよくあることだが、もはや死者の集計すら困難
 ガザ地区出身のアフメド・アルナウクさんは、10月22日のイスラエル軍による空爆で父親と兄弟姉妹、14人の甥(おい)や姪(めい)など、21人の家族親戚を一度に失った。彼はリーズ大学で「国際ジャーナリズム」の修士号を取得し、2019年からロンドンで暮らしながらジャーナリスト兼パレスチナ支援団体の活動家として働いている。11月11日に彼がBBCの記者に見せた家族写真には、無邪気でかわいい甥や姪が明るく笑っている様子が写っている。4年前に故郷で撮ったものだ。写真の中の子どもたちはもうこの世にいない。
 同じ日、英日刊紙「ガーディアン」は、カナダに住むパレスチナ出身のジャーナリスト、パレス・アルグルさんの悲劇を伝えた。ガザ地区に住む親戚の家が爆撃され、36人の親戚が死亡したという。一家が皆殺しにされるという惨状はガザ地区のどこでも見られる。パレスチナ住民を含むアラブ人には祖父母、親子3世代が一つの家(建物)に集住して独立した世帯をなすという伝統があるからだ。
 アルナウクさんの活動する団体の一つが「ウィ・アー・ノット・ナンバーズ(We Are Not Numbers)」、すなわち「私たちは数字ではない」だ。しかしイスラエルとパレスチナとの紛争だけでなくあらゆる戦争において、ほとんどの犠牲者は、特に死者が増えれば増えるほど、それぞれの育んできた夢と人生は抹消され、冷たい数字としてのみ記録される。ガザ保健省は11月10日、戦争勃発からの累計死者数は1万1078人、負傷者は2万7490人にのぼると発表した。死者には子どもが4506人(40.7%)、女性が3078人(27.8%)、老人が678人(6.1%)含まれている。4人に3人が子ども、女性、老人だ。ガザ保健省はこの発表を最後に集計を中断している。イスラエル軍による無差別攻撃で医療インフラが崩壊し、死傷者の集計が不可能になったからだ。
 同日、世界保健機関(WHO)の事務局長は国連安全保障理事会で「ガザ地区では平均すると10分毎に1人の子どもが死んでいっている。どこも、誰も安全ではない」と警告した。特に「10月7日以降、パレスチナのガザ地区とヨルダン川西岸地区の医療施設に対する攻撃が250件以上確認されている。…ガザ地区の医療システムは崩壊しつつある」と強調した。11月6日には国連のアントニオ・グテーレス事務総長が「イスラエル軍の地上作戦と相次ぐ爆撃で民間人、病院、難民キャンプ、イスラム寺院、教会、避難所、国連施設がすべて攻撃を受けている。…ガザ地区は子どもたちの墓場と化している」と述べ、即時休戦を求めている。開戦後、ガザ地区の学校の51%に当たる258校の校舎が被害を受けたとも発表されている。

【写真】ガザ地区最大の医療施設アル・シファ病院の医療スタッフが11月15日(現地時間)、イスラエルの急襲後、煙の立ち込める廊下で患者を運んでいる/ロイター・聨合ニュース

◆ガザでは子どもが10分に1人死んでいる
 今回の戦争は、子どもの死がこれまでのどの戦争よりも深刻だ。戦争勃発から3週間がたった10月29日、子ども支援の国際NGO「セーブ・ザ・チルドレン」は、ガザ地区で報告された子どもの死者数(この日の時点で3257人)が全世界の紛争地域で2019年以降の1年間で死亡した犠牲者の数を超えたと明らかにした。これは、最近3年間に世界20カ国以上で武力衝突に巻き込まれて死亡した子どもの数より多い。開戦からの1カ月間で、ガザ地区では1日平均で少なくとも136人、10分に1人の割合で子どもがイスラエル軍による空爆で命を失った。倒壊した建物のがれきの山にどれほど多くの子どもが埋もれているかは、十分に把握されていない。
 南北に細長く伸びるガザ地区は、世界で最も人口密度が高い場所の一つだ。約365平方キロの土地に237万人あまりが住んでいる。1平方キロ当たり実に6500人だ。人口が均等に分布しているわけではないため、北部のガザ市に人口の40%が集中している。ユニセフ(UNICEF)によると、ガザの人口の47%が18歳未満の子どもと青少年だ。イスラエル軍の人命被害は相対的に少ない。イスラエル国防軍は11月14日、「ガザ地区北部でハマスのテロリストと戦っていた兵士がさらに2人死亡し、イスラエルの地上作戦での死者数は46人となった」と発表している。
 ここまで来ると、イスラエルとハマスの戦争は言葉が戦争であるだけで、一方的な民間人虐殺に他ならない。国連は11月2日に発表した声明で「特にジャバリヤ難民キャンプに対するイスラエルの空爆は厚かましい国際法違反であり、戦争犯罪だ。女性や子どもなどの民間人が保護される収容所を攻撃することは、戦闘員と民間人の比例原則と区別原則に完全に違反する」と批判した。
 イスラエルによるガザへの侵攻は今回が初めてではない。2006年のパレスチナ総選挙でハマスが圧勝し、ガザ地区での独占的権力を確保して以来、イスラエルはガザ地区を全面封鎖し、水、電気、ガスなどを統制するというやり方で命綱を握ってきた。イスラエルとハマスとの間では大小の武力衝突が日常化し、イスラエルがガザ地区に進撃する戦争も4回も起きた。
 特に今回の戦争は「ネタニヤフの戦争」となっている。イスラエルの日刊紙「ハアレツ」は11月13日、「ネタニヤフ首相は、ガザ地区での長期間の戦争が批判世論を緩和し、自身の権力を維持させると信じている」とし、「さらに重要なのは、10月7日の惨事(ハマスによる奇襲攻撃とイスラエルの情報の失敗)に対するあらゆる個人的責任を回避し、(ハマスに対する)非難を広めることができると考えていることだ」と指摘した。ネタニヤフ首相は、在任中の不正腐敗容疑でイスラエルの現職首相として初めて起訴され、極右シオニスト諸政党と連立して政権を延命させるというやり方で刑事処罰を回避してきた。

◆ユダヤ人とパレスチナ人の苦しみに公平に共感せよ
 韓国ドイツ史学会(チョン・ジンソン会長、釜山教育大学教授)は10月31日、「イスラエルとドイツの知識人仲間に告ぐ」と題する声明を韓国語、ドイツ語、英語の3カ国語で発表した。
 声明はまず、「中東に対する欧州の植民地統治の矛盾、ナチス政権の反人倫的犯罪などが重なった錯綜の結果としてイスラエルが建国して75年がたち、その後、この地域に平和というものはなかった」とし、「ハマスの攻撃に対する悲しみと怒りには深く共感するが、臨界点を超える集団的怒りが揮発性ではありえないということも忘れることができない」ということを明確にした。そして「文明はどこに行ってしまったのかと問わざるを得ないやり方で暴力が暴力を生む現状、これを止めるための努力が切実に求められている」として「今すぐ、ガザ地区に対する封鎖と爆撃をやめ、対話をはじめるよう、あなたたちの政府を説得せよ」と述べた。
 特に声明の最後の部分は、「知識人仲間」だけでなく国連をはじめとする国際社会にとっても痛切に響く。以下に書き出してみる。
 「すべての人間は同等に尊厳を持っており、すべての人の苦痛と死は同等な道徳的基準で測らなければならない。ホロコーストが私たちに衝撃を与えたのは、それが特定の集団に試練と苦痛を与えたからではなく、それこそ人類に対する挑発だったからだ。ユダヤ人もパレスチナ人も、いずれも人類という家族だ。ネタニヤフ政権の反人道的犯罪に対する批判を反ユダヤ主義と同一視することはできない。ドイツの知識人はユダヤ人とパレスチナ人の苦しみに公平に共感せよ。パレスチナ人全体にハマスのテロの結果に対する責任を問うな。ハマスの無差別テロに対してと同様に、イスラエルの無差別攻撃に対しても怒れ」。

チョ・イルチュン|ハンギョレ土曜版先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2023-11-19 16:45
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