三重県木本で虐殺された朝鮮人労働者の追悼碑を建立する会と紀州鉱山の真実を明らかにする会

三重県木本で虐殺された朝鮮人労働者の追悼碑を建立する会と紀州鉱山の真実を明らかにする会

木本・紀州鉱山・「朝鮮村」・月塘村  死者のネットワークとわたしたちの運動

2010年03月12日 | 紀州鉱山
■木本トンネル前の追悼碑
 2010年3月28日、わたしたちは熊野市紀和町で、紀州鉱山で亡くなった朝鮮人の追悼碑の建立除幕式を迎えます。
 この追悼碑は、熊野市の木本トンネル前に立つ朝鮮人李基允氏・相度氏の追悼碑の建立を引き継ぐわたしたちの運動の集約としての意味を持ちます。
 1926年1月3日に木本町現熊野市の住民によって惨殺された李基允氏・相度氏は、日本の植民地支配と朝鮮における土地の収奪によって日本に来ることを余儀なくされた多くの朝鮮人のひとりでした。

 1989年6月、わたしたちは「木本事件」の犠牲者であるおふたりの追悼碑を建立する運動を始め、5年後の1994年11月に碑を建立しました。
 そしてそれ以降、毎年追悼集会を開催すると同時に、熊野市近郊の紀和町でアジア太平洋戦争以前から日本の敗戦にいたるまで紀州鉱山で多くの朝鮮人が労働を強いられていたことを知り、その犠牲者の調査に取りかかりました。
 韓国に行き、石原産業が作成した「朝鮮人就労者名簿」を手がかりにして、紀州鉱山に強制連行された人たちや遺族に出会い、話を聞かせてもらってきました。その結果、今日までの調査で、35名の朝鮮人が紀和町で命を断たれたことを確認しました。

■海南島  田独鉱山・「朝鮮村」・月塘村
 熊野地域における日本のアジア侵略と植民地責任を追究する運動は、日本国外のアジアの地のネットワークをもつくりだしました。紀州鉱山を経営していた石原産業は、紀州鉱山を開発するよりも早くすでに1920年代にアジアの南方に進出し、鉱山事業・海運事業を進めていました。
 1939年に日本軍とともに海南島に侵入した石原産業は、現地の住民およびアジア各地の民衆を駆り出し、海南島で田独鉱山の鉄鉱石の採掘に着手して、多くの労働者の命を奪いました。
 わたしたちはこの調査のために海南島を訪れ、そこで日本軍および日本企業が海南島の軍事占領中の1939年2月―1945年8月に海南島の各地で行った資源の略奪や虐殺行為を知ることになったのです。
 日本海軍と朝鮮総督府と日本政府は1942年から海南島の労働力不足を補うために、朝鮮の刑務所から服役中の朝鮮人を海南島に送り込み、道路、飛行場、トンネル工事に酷使しました。
 飢えと疲労で、あるいは軍の虐待により、未来のあるかけがえのない命が異郷の地で奪われました。
 その遺骨はいまだに海南島の「朝鮮村」に放置されたままです。
 
 さらに海南島東部の万寧県にある月塘村では、日本が敗北するわずか3か月前の1945年5月2日(農暦3月21日)に日本海軍佐世保鎮守府第8特別陸戦隊万寧守備隊がこの村を襲撃し、赤ん坊、女性、老人をふくむ190名の村民を殺害しました。
 月塘村の村民委員会は、この殺害について自力で死者の家族を訪ね、犠牲者の数と氏名を確認して、殺された村民の実態を調査し、犠牲者の追悼碑を2008年4月26日(農暦3月21日)に建立しました。
 紀州鉱山の真実を明らかにする会の会員が多く参加している海南島近現代史研究会がこの追悼碑の建立に協力しましたが、建立された碑の右側面には、殺害された村民190名の名が刻まれ、碑の左側面には、謝罪と賠償を求める日本政府への要求書が刻まれました。
 中国の地方行政は村民が提出したこの要求書を10年以上にわたって放置してきましたが、海南島近現代史研究会は2008年の追悼集会に参加した際に、この要求書を預かり、村民の委託を受けて、この要求書を日本政府に提出しました。しかし日本政府はこの要求を「事実関係を承知しない」といって拒否しています。

■死者とのきずな
 熊野で地元住民に命を奪われた李基允、相度の両氏、紀州鉱山で家族から引き離され故郷に帰ることなく命を失った35名の朝鮮人、海南島の地中に名前もわからないまま遺骨が放置されている1000名を超えると思われる朝鮮人、そして月塘村で殺害された乳幼児、女性、高齢者の方々。
 私たちは1989年から20年間の活動を通して、日本の植民地支配と侵略戦争によって命を奪われたアジアの民衆の死者に出会い、そのネットワークを築き上げてきました。
 この死者とのきずなを確認し、紀州鉱山で亡くなった朝鮮人を追悼する碑の建立を通して、死者と生者を結ぶネットワークをアジア全域に広げ、植民地支配と侵略戦争の責任の所在を明らかにし、責任をとらせていきたいと思います。
                                           斉藤 日出治
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