樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

シャトル

2008年07月07日 | 木の材
今日は七夕なので機織りのお話です。
私の故郷は丹後ちりめんの産地。着物の需要が激減した現在は見る影もありませんが、幼い頃は町のあちこちから「ガチャコン、ガチャコン」と機を織る音が聞こえていました。
その音は、緯糸(よこいと)を織る杼(ひ)を左右に走らせる時に出ます。杼(ひ)は英語ではshuttle。ご存知でしょうが、シャトルバス、宇宙シャトル、バドミントンのシャトルコックなどは行ったり来たりする杼に例えたものです。

       

写真の杼は実家の近くにある「丹後ちりめん歴史館」の展示物。舟形の中に入っている糸巻きから緯糸が繰り出される仕組みです。手前の穴のあいた紙は「紋紙(もんがみ)」。自動織機が模様を織り出すための言わばインターフェイスです。
この杼は主にアカガシで作られています。固くて摩擦に強いからでしょう。欧米のシャトルには、同じく堅くて割れにくいハナミズキが使われるそうです。

       
      (歴史館の一角では自動織機がガチャコン、ガチャコンと稼動中)

京都の伝統産業・西陣織でも杼を使います。丹後ちりめんと同じく今や斜陽産業で、以前はこの杼をつくる杼屋(ひいや)さんが10軒以上あったようですが、現在では1軒残るのみ。その杼屋さんでは、宮崎産のアカガシを20年くらい寝かせて乾燥させてから使うそうです。なかなか良材が手に入らないので、祇園祭の鉾の車輪に使うアカガシを分けてもらうこともあるとか。

       
       (昔は織機そのものが木製でした。これも歴史館の展示品)

地元の西陣織だけでなく日本全国の織物作家から新規製作や修理の依頼が来るそうです。この杼屋さんがなくなったら、日本の伝統織物はどうなるんでしょう。
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47本の樹

2008年07月04日 | 樹木
日本の都道府県はそれぞれにシンボルツリーを決めています。
京都府は北山杉。スギは京都府のほかにも秋田県の秋田杉、富山県の立山杉、三重県の神宮杉、奈良県の吉野杉、高知県のヤナセスギと5県が選んでいます。それぞれ自慢の杉に名前をつけていますが、植物学的にはスギは1属1種なので同じ樹種です。

             
      (磨き丸太という特殊な用途のために枝打ちされる北山杉)

ちなみに最も多いのはマツ類で、名前はそれぞれ違いますが8道県が指定しています。マツやスギのように同じ樹種を選定する都道府県が多く、イチョウも大阪府と東京都と神奈川県が指定しています。
都道府県は47もあるのに、樹種は合計で23種類。私は「地域独自のもっと個性的な樹木を選べばいいのに」と思いますが、地元の林業などを考えるとスギとかマツに集中するのでしょう。
その都道府県の木がすべて集まっている場所があります。国会議事堂の前庭。1970年に議会開設80周年を記念して、各都道府県から贈られた木を植えたそうです。ただし、気候的に生育しない樹木もあるので、それらは代替の種類が植えてあります。

       
        (都道府県の木47本が植えてある国会議事堂の前庭)

昨年の6月に仕事で東京に行った際、その庭を見ようと国会議事堂まで足を伸ばしてきました。中には入れませんでしたが、柵の隙間から撮影したのが上の写真。画像を拡大したら、ちょうど「京都府 キタヤマスギ」というパネルが見えました。
誰が考えたのか知りませんが、国会議事堂に全国のシンボルツリーを植えるというのはいいアイデですね。
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名前-②

2008年07月02日 | 木と言葉
前回、樹や鳥の人名をご紹介しましたが、そういう名前の主人公が活躍する漫画がありました。赤塚不二男の「おそ松くん」。
全員に「松」がつく六つ子の物語ですが、その名前、覚えてますか? おそ松、一松、カラ松、チョロ松、十四松、トド松の6人。
このうち実在する松はカラマツとトドマツ。ジュウシマツは鳥ですが、野鳥ではなく、江戸時代にインドから輸入した小鳥を人工的に作り変えた家禽だそうです。

             
                  (カラ松くんの幹)

カラマツは日本固有種で自生地は東北と信州。日本唯一の落葉する針葉樹です。文学派は北原白秋の詩「落葉松(からまつ)」を思い浮かべるでしょう。
    からまつの林を過ぎて、からまつをしみじみと見き。
    からまつはさびしかりけり。たびゆくはさびしかりけり。

       
              (カラ松くんの葉。秋には落葉します)

トドマツは北海道に自生するマツ科モミ属。樹皮が海獣のトドに似ているのが名前の由来と思いきや、アイヌ語由来だそうです。

       
               (トド松くんの木材サンプル)

以前、木の名前の有名人として樹木希林山茶花究(さざんかきゅう)をご紹介しましたが、鳥では誰がいるだろうと考えたら石川啄木が思い浮かびました。本人は「啄木鳥(キツツキ)が木をつつく音を聞いて名づけた」とエッセイに書いているそうです。
啄木は岩手県の山村出身なので、その音の主はひょっとしたらクマゲラかも知れません(普通に考えればアカゲラかな?)。
もう一人、「おそ松くん」よりもっと懐かしい名前が浮かびました。小鳩くるみ。若い人はご存知ないでしょうが、50年前のアイドルです。
妹が購読していた少女雑誌の表紙でよく見ました。松島トモ子の陰に隠れた存在でしたが、私は小鳩くるみの方が好きでした。


       
           (小鳩くるみ、じゃなくてオニグルミの葉)

しかも、姓は鳥、名は樹木。ご本人の顔はもう忘れましたが、当ブログにぴったりの名前ですね~。
懐かしい「おそ松くん」のサイトはこちら

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