樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

古事の森

2008年07月16日 | 木造建築
現在、日本には国宝や重要文化財に指定された神社、仏閣、城郭などの木造建築が3,300棟あるそうです。
これらは100年から150年の間に小さな修理、200年に1回は大修理をしなければなりませんが、それをまかなう用材が不足しています。特に主要建築材であるヒノキの大径木が供給不足になっているようです。

       
           (近くにある国宝・宇治上神社も主要材はヒノキ)

そこで、100年後、200年後のために今から修理用の木材を確保しておこうという運動が始まりました。言い出しっぺは、作家の立松和平さん。法隆寺での修行中に閃き、林野庁の担当者に提案してスタートしたのが「古事の森」事業。
余談ながら、最初は「古寺の森」とするつもりだったところワープロが「古事の森」と変換したので、そのまま使ったそうです。その第1号が京都市の北部、鞍馬山にあるというので行ってきました。

       

川床料理で知られる貴船川を遡って行くと、料理旅館の軒が途切れたあたりに鞍馬国有林があり、その急な坂道を登るとネットで仕切った斜面にヒノキの幼木が植えてありました。ここでもシカの食害があるらしく、幼木そのものもネット付きの支柱でガードされています。

       

現在、日本全国に約10ヶ所の「古事の森」が設けられ、主にヒノキが植樹されていますが、北海道江差町ではヒバ(アスナロ)が、沖縄ではイヌマキが植えられています。
これらの樹木が役に立つのは、100年後、200年後。それまでボランティアで手入れを続けながら、育てなければなりません。林業の宿命とは言え、気が遠くなるほど先の長い話です。
その頃には立松和平さんは亡くなっていますが、発案者として名前が残っているかも知れません。もちろん私も、この記事を読んでいるあなたもこの世にはいませんよ。
コメント (4)
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