樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

樹木のリスクマネジメント

2008年07月11日 | 街路樹・庭木
自然物である「樹木」と最先端の経済用語である「リスクマネジメント」はいかにもミスマッチですが、先日、大阪で「世界の樹木管理とリスクマネジメント」というシンポジウムがあったので行ってきました。樹木医のためのイベントで、主催は街路樹診断協会。
内容は、例えば街路樹の枝が折れて人や車が被害に遭った場合、どんな裁判になるかとか、そうならないために樹木をどう管理するかなど。私もだんだんマニアックな世界に首を突っ込むようになってきました。しかも、ドイツ、アメリカ、中国からもパネラーを招いた国際的なシンポジウムです。
いろんな報告がありましたが、日本の事例を一つご紹介します。ある神社の境内から市道の上に伸びたイチョウの枝が強風にあおられて落下し、たまたまその下にいた人がケガをしました。裁判は東京地裁、東京高裁、さらに最高裁でも争われ、結局は管理者に責任はないという結果になったそうです。

       
   (この道も左の枯れたマツの枝が落ちて事故が起きる可能性があります)

街路樹診断協会が主催なので対象は街路樹ですが、ドイツのパネラーは森林での事例も報告してくれました。ある少年が森にハイキングに出かけた際、樹が倒れてきて大ケガをしました。裁判の結果、倒木は自然の中の典型的な危険なので森の管理者に責任はないということになったそうです。ハイカーはそういうリスクを承知で利用しなさい、ということのようです。
いろんな事例を聞いているうちに、15年ほど前の出来事を思い出しました。実は、私が通っている「栃の森」で知人の娘さん(たしか中学生)が亡くなったのです。家族で歩いている時、細い道で体を支えるために樹に手をかけたら、枯れていたために折れて谷に落ちたそうです。

       
  (栃の森にはこんな倒木がたくさんあります。運が悪ければ直撃されるかも)

幸運にも私は事故には遭遇していませんが、そういう視点であらためて見ると危険はあちこちにあります。行くたびに巨木が倒れていたり、大きな枝が落ちています。また、丸木橋を渡ったり、崖のような斜面を歩きます。
仲間には「この森で死んだら本望」と言ってますが、実際に事故になれば冗談では済みません。「これまで以上に慎重に行動しなければ…」と思いながらシンポジウムの会場を出ました。みなさんもそういう危険が常にあると自覚して自然を楽しんでください。
コメント (4)
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