樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

ブナの寺

2008年07月30日 | 木造建築
夏もいよいよピークを迎え、朝の散歩コースのBGMも鳥の声から蝉時雨に替わりました。まさに、「閑(しずか)さや岩にしみ入る蝉の声」の季節です。

       

芭蕉がこの句を詠んだのは山形県の立石寺(りっしゃくじ)だそうですが、このお寺は木材の世界では日本最古のブナ建築として知られています。何度も書いているように社寺建築の主用材はヒノキであり、ブナを使ったお寺というのは非常に珍しいです。
立石寺は比叡山延暦寺の別院で、開基は860年。その後兵火で消失したため、1356年、山形に赴任した斯波兼頼(しばかねより)が根本中堂を再建したのですが、財政的なゆとりがないのでヒノキが入手できず、やむを得ずブナで建築したそうです。

             
                  (ブナの幹)
       
以来2回修理されていますが、1963年(つまり約600年後)の修理では再建時の約40%の木材を取り替えたそうです。ヒノキで造られた法隆寺の場合、1300年後の昭和の大修理で取り替えた木材が35%と言いますから、単純計算でもブナの耐久性はヒノキの1/2以下。やはり、建築材としてはヒノキが格段に優れていることになります。
ブナは現在でも建築材としてはほとんど使用されず、家具や玩具などが主な用途です。東北地方には世界遺産の白神山地をはじめブナの原生林があるので、調達コストがかなり安かったのでしょう。
立石寺は通称「山寺」で知られています。観光案内のサイトはこちら
コメント (2)
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