湘南オンラインフレネ日誌

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5/13中邑氏の紹介ツールの話から>集音機の話

2006-05-15 06:47:38 | 引きこもり
 中邑氏から紹介されたツールの分厚いカタログ集は結構楽しめる。実に様々なツールが開発されているものだと思う。しかし私はガンダム系アニメ(笑)を見たときの不快感を一方で催していた。生身の人間がマシンを装着することによって超能力を獲得することへの嫌悪だった。ひとの夢なるキッチュな思考の混入を批判する回路を持たない、技術信仰への拒絶感覚だった。しかし対極として原始回帰自然崇拝の思考にもまた、自己陶酔的な嫌らしさを感じるのだ。

 場面がしっかりとあり、そこのテンションのなかに技術があるということが大事なことだ。障がいという生き難さがあり、そこを解決していくことで成しうることの水路(可能性)を開くという目的性を持ったツールが望まれるのだ。その可能性とは機能という括りでは見逃してしまう人の間(関係)を潤滑にしていく、新たな社会関係へと取り結ぶ(ステージが変わる)ということが見逃されてはならないだろう。勿論人工心肺のように生体活動を維持していくツールもある。しかし、それさえ生きてあることによって間接的に人の関係に変化を与えるツールともいえるのだ。

 中邑氏の持ち込んだツールは、いわば試され生き残ったツールだった。呈示されたものは自閉症スペクトラム関連の手軽なものばかりだった。使いこなせそうなものが多く、そのいくつかはすでに様々な実践現場では利用されており、その推薦版というようなものもあったが、場面にフィットしているものばかりだった。紹介はまずは「集音機」から始めるが、後の紹介するものも意味が薄いということではない。ただ単にメモをまとめ終えた順に紹介しているに過ぎない。

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 一昨日、中邑さんに見せていただいたツールは、感覚過敏の自閉症の子向けのツールなど数点だった。

 聴診器のY字構造をI字にしたものは、身体に触れることなく騒音を排除し声を耳に届ける機能をもっていた。私達は騒音の中から目的の音声を聞き分けることができる。(カクテルパーティ効果)ところが聴覚過敏のため、そのフィルタリングが困難な子がいる。この機器はプリミティブな構造では筒構想である。しかし見かけは同様の構造をしているが、「超指向性マイク>アンプ>コード>イヤホーン」の形をしており1m程度の長さを持っている。マイクを目的の音源(対話相手の口)に向けると、環境音を拾わずに目的の音声のみを耳に届けるという機能を持っている。

 補聴器が使用者から嫌われる一つに無差別な集音があり、たとえば台所の食器がぶつかる音のようなエネルギーの大きな音や、嫌われる周波数の音を強調して耳に届けてしまうという問題があった。また、補聴器のマイクは指向性が弱いために、周囲の音のすべてを拾ってしまった。このため、人の声の周波数帯域に、電子的なバンドパスフィルタをかませて、人の声が強調される構造を意図的に作り出していた。

 TVや映画のドラマの不自然さは、配役の声だけが交わされる場面が多用されることにある。野外の録音をしてみればわかるが、自然は実に騒々しい。ところがドラマでは筋書きの進行の手がかりとなる音声の内容が場面を引っ張っていくために、普段TVや映画を見ていても必要な情報が与えられているために、気がつかないことが多いのだ。

 しかし、補聴器もどきの聴音ツールがホース状をしているのは、なんとも不器用な作りではないか。ワイヤレスマイクとラジオのような関係で、ホース(コード)を省略することは出来ないことではないのだ。しかしここにもホース(コード)状にしている意味がある。ひとつは誤作動対策、もうひとつは対話関係の明示ということがある。

 前者は妨害電波が飛び込むことがあると、それが健常者と異なる聴音となり事故につながる恐れがあるからだが、後者は注目に値する。つまり線に結び付けられることで、私とあなたが今ここで対話しているという視覚サインとなっていることだ。対人交渉の弱い自閉症の方にとって、今会話中という視覚的なサインは意味が大きいだろう。ツールは目だつ白色をしていた。さらに言えばホース(コード)構造の無骨さよりも、それが壊れることなくフレキシブルに折りたため携帯性を持てばツールは実用となるのだ。

 ここでもうひとつの意味は、対人距離を適正に保てることがある。感覚過敏なタイプの自閉症の方は、身体接触を極端に嫌がる。パニックを起こすことさえある。このときこの会話ツールがその方に容認されれば、会話は一気に進むだろう。

(つづく)

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