虎屋文庫資料展のあゆみ

2015-06-07 00:00:32 | 美術館・博物館・工芸品
赤坂にある老舗和菓子店とらやの本店ビルが建て直しになる。どうなるのかよくわからないが、上階が高層マンションになるのだろうか。お菓子好きなら上に住むといいかもしれない。一階がカレー屋とかだと、ちょっと匂いがきついが和菓子にはあまり匂いが強いものはないだろう。八つ橋とか匂いがあるが、別の会社だ。ただ、高層ビルだと震度5でエレベーターで缶詰になる可能性はあるけど。

それで3年間の休業の後、再度、虎屋文庫がオープンするそうだが、3年後のことはよくわからない。何回か特別展で行ったことがあるので、のぞいてみた。

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特別展は78回開かれていて、2、3回行ったことがあるが、和菓子というのは、かなり謎の多い食べ物であって、日本の食文化の中で、実は先史時代から民族と密接につながっていたわけだ。

例えば、桃太郎伝説。このストーリーに忘れてはならないのが「きびだんご」。この「きび」といのは穀物の「きび」であって岡山の旧名である「吉備」ではないのだが、なんとなく岡山では混在して使われている。だんごというのは、日本古来の菓子であり、その後、中国菓子がきたり、禅宗の茶菓子がやってきたり、ポルトガル人が砂糖菓子を持ち込み、明治以降は洋菓子との合体。

江戸時代には井伊家が毎年大規模茶会を開いていて、その茶会に自慢の和菓子の新製品を出品すべく江戸の菓子店が競っていた。もちろん桜田門外の惨劇で茶会の時代は終わった。

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今回、わかったのは、とらやの中で新製品を作ってきたのには、伝説の和菓子職人という方が何人かいたということ。男性にも女性職人にもレジェンドがいたようだ。

そして、とらやを一つの菓子の分類で代表するなら、なんといっても「羊羹(ようかん)」だろう。とらやの羊羹は、かなり重いわけだ。だいたい一本が3000円から5000円くらいなのだから手土産の王様だ。羊羹1本というわけにはいかない。たいてい2本は必要だ。

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そういえば、お茶を入れてから、頂き物のとらやの羊羹の箱を開けたところ中から100万の札が出てきて腰を抜かした気の弱い町長という事件もあったぐらいだ。○○屋の羊羹だと、箱をあけずに知人や部下にそのままあげてしまうこともあるだろうから、やはりわいろはとらやの羊羹ということになる。

そして、本展では「羊羹」のことが書かれていたが、本当の羊羹は羊の肉のスープだそうだ。そのゼラチン質によって、スープが固まるらしい。日本に伝わった後、寒天と小豆が代用品として使われた。禅宗の戒律によるものらしいが、まあ、羊もそんなにいなかったしね。羊にこだわっていたら今のとらやはなかったに違いないだろう。