エーゲ海に捧げられる可能性大

2015-06-24 00:00:27 | 市民A
寡作家である故池田満寿夫の芥川賞作『エーゲ海に捧ぐ』を大幅に改造して映画化した『映画版・エーゲ海に捧ぐ』では、お気軽ギリシア男が愛人とエーゲ海の島で過ごしているところに、銃を持った女が現れ、結末を付けるのだが、破綻に瀕した現在のギリシアに銃を突きつけているのは、ドイツ人女性ではあるが、他の欧州各国は見て見ぬふりをしている。ドイツはギリシア文明の影響が少ないからだろう。

今や、ギリシアの破綻は「どの段階で確定するのか」というのがもっぱらの話題の中心だが、IMF専務理事のラガルドさんが、7月1日!と宣言したのでそうなるのだろう。

で、ギリシアの「ユーロ離脱」とか「EU離脱」とかという方向に向かっている。さらに「EC(欧州コミュニティ)追放」ということまで懸念されている。村八分どころか「所払い」だ。

ところで、もう一つの欧州にくすぶっている問題が、英国のEU離脱問題、およびスコットランド独立(さらに欧州各地で地道に進んでいる地域独立運動)。

思うに、原則的に欧州の国は3分類になっている。EU非加盟(スイスなど)。EU加盟でユーロ不参加(英国など)。EU加盟でユーロ参加。(NATOというのも別の観点でのくくりとしてはあるが)

で、大国である英国、ドイツ、フランス、イタリアをみると、英国は二番目のEU加盟でユーロ不参加。残りの三国は三番目のEU&ユーロ組だ。

で、第三組にいるギリシアが何組にクラス替えになるのかということになる。

その前に、EUとユーロの関係だが、個人的には、この二つの経済システムには基本的に矛盾が内在している(始めからわかっていたが)。

EUというのは相互の経済障壁をはずして域内を非関税化し、さらに資本の流動化をはかり共通の経済圏を作ろうという方向で、各国の政治的自主性は自己責任で行うことになる。

一方、通貨(ユーロ)統合してしまうと、ほぼ自動的に一体経済化していくので、域内格差が生じるのが当然のこととなる。日本でいえば、首都圏と沖縄の経済格差みたいになる。日本という国家の中のことなら税金や補助金の配分により、格差を縮小することは可能だが、この第三グループでは困難だ。ドイツ人の金でギリシアの役人給与や年金を払うのは許せない!となる。その前に、海運産業という無税特権階級を締め上げろ!年金受給年齢を引き揚げろ!役人の数を減らせ!赤字の国営企業は民営化しろ!ということになる。

つまり、ある意味で経済力があまりにも違う国家が第三グループにいることが、問題の始めのような気がしている。ギリシアもドイツもどちらも英国と同じように第二グループにいるべきなのだろう。ギリシアが第一グループとかEC追放とかなると、これは本当に国家崩壊というギリシア悲劇の再現となるだろう。

一方、ギリシア問題が醜い展開となると、英国が国民投票を行ってEU離脱(第二から第一グループへ)となる可能性が出てくる。ところが、先日、英国からの離脱失敗したスコットランドはEU加盟維持(第二グループ)が支持されているため、今度こそ英国からの独立が成功すると思われている。実は国家がEU非加盟で自治国が加盟ということが可能かどうかはわからないが、国家がEU加盟で自治国が非加盟という例はある。グリーランド。母国であるデンマークはEU加盟だが人口5万人だが面積大国のグリーンランド自治国はEUを脱退している。

思えば、ギリシアの哲人プラトン、アリストテレスはデモクラシー(民主主義)について、「民衆の智力が低い場合は、独裁政治の方がまし」ということを言っているわけで、自ら選んだ政権のせいで国家が崩壊するというのは、まさにギリシア的といえるわけだ。

思えば、日本でも大正デモクラシーが崩壊して軍部独裁制になり国家が自壊したのが80年前。ギリシアが二度目の崩壊までに要した2000年という期間を大幅に短縮して二度目のデモクラシー失敗例に向かっている可能性もうすうす感じている。