君も今日から考古学者!(横浜発掘物語2019)

2019-05-12 00:00:26 | 美術館・博物館・工芸品
横浜市歴史博物館で開催中(~6月2日)の『君も今日から考古学者!(横浜発掘物語2019)』へ行く。考古学というのは門外の人が本や雑誌や講演会で楽しむのは気軽だが、学者の方は毎日泥んこの戦いをしている。雨にも負けず風にも負けずだ。さらに少ない予算にも負けず。

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そういうのが嫌いな人ばかりになったら、考古学の研究は成り立たないわけだ。中には自家製の石器をばらまいてから発見した人もいた。発見率は100%だが、実際はそうはいかない。かけた土器のような土塊や、削った痕のあるように見える石ころを本物と見抜く察知力と眼力、さらに体力と気力が必要だ。

ということで、エントリー用にとりあえず掘れば何かでてくるはずの発掘遊びができるようになっている。横浜金沢海岸の潮干狩りよりもヒット率は高いはずだ。

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展示品も色々あるが、大人のこぶし大の炭化した塊が、知力を働かせるには絶好だ。炭素測定法で弥生時代のものとわかっているのだが、復元するとかなりの量の米を使っていることがわかる。同類の他地方の出土品の中には、握りの中に具が入っているものもあるそうだ。

弥生時代人は、主に米作をしていたと思われたが、男の多くは集落から毎日出て行って、動物やら栗の実やら魚介類やらの食糧集めをしていて、そのためのお弁当だったと思われている。現代でも会社に勤めながら自宅で農家をしている家族は多いが、2000年間進歩していないともいえるかもしれない。

もう一つの弁当の目的は戦争だったようだが、弁当一つで勝てるようなことはなかっただろうし、展示品は違うような気がする。

いずれにしても気になるのは、この弁当が、なぜ食べられずに化石化したのか。

単に、紛失してひもじい思いをしただけなのか。あるいは猛獣や別のに捕まったのか、タケノコ狩りをしていて足を滑らしたりして帰らぬ人となったのか。あまり楽しい想像はわかない。

ところで、この「おにぎり」だが、古語に「とんじき(屯食)」という言葉で存在する。源氏物語の第一帖桐壷の中に出てくる。「私は源氏物語を古文のまま、途中までは(あるいは全部)読んだ」と豪語している人がいたら、「ところで、『とんじき』って知ってる?」と聞いてみよう。知らなければ、全五十四帖のうち、第一帖すら到達しなかったことがわかるのだが、それを指摘して相手を怒らせるよりも、「この人の発言は、すべて大盛になっている」と認識するに留めた方がいいだろう。

そして、実は「とんじき」というお弁当屋さんが東京都北区に実在する。まさかと思うが創業年を調べようかな。

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会場の最後に石斧のレプリカが置かれている。これを持ち帰って何か悪事に使おうと思っても無理だ。刃もついていなければ、プラスティック製なので、おもちゃということ。本物は材木を切り、石を削って材木に固定しなければならない。もし作れてもそれをもって東京メトロに乗ると、時節柄、家に帰れなくなるはずだ。