「医学生」(南木佳人著 小説)

2017-12-05 00:00:12 | 書評
先日、「ダイヤモンドダスト」を読んだので、さらにもう一作南木文学を追求してみた。本作も作家の実体験を素材にしていて、実際のモデルはいないそうだが、新興の秋田大学医学部に何らかの事情を抱えながら入学した4人の若者(でもない人も含まれるが)の医者になるまでのエピソードを描いている。

igakusei


野球の投手で言えば、「ダイヤモンドダスト」は勢いのある短編集なので、9回裏に登板するリリーフピッチャーのような鋭さがあるが、本作は先発ピッチャーが、様々な変化球を駆使して9回を投げ切るというような小説の技を見せている。

もちろん、本人がそう感じていたのだろうが、出身校を三流大学と決めつけているのだが、私の出身学校もそう威張れるレベルではなかったが、まあそれ以上でも以下でもない程度には卒業校として愛着の欠片程度は持っているのだが、小説家というのはそんな甘い考え方ではいけないということなのだろうか。

なお、まったく個人的話だが、作家より2才年上の人で秋田大学の鉱山学部を卒業した人を知っていた。いかにも秋田出身の朴訥な感じだったが静岡県出身だった。この小説に書かれた学生たちのように、なんらかのネガティブな事情があったのだろう。いつもネガティブなことを言っていた。

もう一人、今でも親しい人で、だいたい作家と同じような年ごろの方で、10年遅れで山形大学医学部へ入学して苦節、山形県で開業医となった先生を知っている。某有名私大理工学部→某有名国立大学工学部→某有名国立大学教育学部と東京六大学を転々として卒業後、就職。2年後に退職し1年間の受験勉強で山形大学医学部に入り「自分探しの旅」を終了。ただし、小説は書かない。

まあ。5回も退職金をもらった人間が書く話ではないのだが。