絵画カフェ・パウリスタ物語

2011-01-09 00:00:24 | 美術館・博物館・工芸品
昨年末に東京竹橋の近代美術館で、ある画家の作品群が公開された。

伝説の画家、長谷川利行(1891-1940)。

絵を描いては売り、酒を買い、肝臓を傷めるという<絵・酒・肝臓>のスパイラル人生で、最後は行旅人として、本当に行き倒れる。

そして、そのミニ展の中心となる作品が、『カフェ・パウリスタ』。銀座に会った老舗の喫茶店の内部を描いた絵画ある。和製ムーラン・ド・ギャレットとでも呼ぶべきか。1930年に「第3回1930年協会展」に出品されたまま、行方が知れなかった。高さ53センチ、横幅73センチと、小さくはなく、また大き過ぎることもない。



その絵画を世に問うた人物は福井さんという方である。自宅にあった汚れた1枚を、テレビ東京の人気番組「開運!なんでも鑑定団」に持ち込む。2009年2月24日放送である。

そして、鑑定の結果、長谷川利行の消えた名画であることが判明する。鑑定額は、1800万円。

この福井氏が入手した経緯だが、もともとは祖父が貸間経営をしていた時に、間借り人だったのが長谷川利行。カネがあればすぐに酒を飲むため、家賃を払えず、家賃の代わりに絵を描いていたこともあるという。

その後、谷中の古家にあった何枚かの絵画は、空襲を受けることになる。疎開先には人間だけが行ってしまい、おきざり。が、結局、焼けのこることになった。

次に昭和24年(1949年)。ある男が、長谷川利行の絵画を探していて、福井さんの父親を訪ねる。そして、3枚あった絵画のうち程度のよかった2枚を買っていく。そして表面が汚れていた「カフェ・パウリスタ」は、その時点で売れ残り、長い眠りについた。


そして、福井家に三代伝わった「消えた名画」であるが、1800万円の鑑定の先である。

福井氏はついに、ある番号に電話をかけることになった。近代美術館である。

その絵画の今後の処遇について、複数の美術関係者からの意見である。まず、修復が必要であるとの認識である。

そして、話は「修復した上で、ご寄託」という筋から「美術館により購入し、その上で修復」へ移っていく。

美術館が、いくらで購入したのかは、ちょっとわからない。



修復はフルコースで行われ、当初、美術館の手にわたった時のくすんだ絵画は、あざやかに蘇ったわけである。

結構、お宝って眠っているものらしい。うちでも探してみようかな。何も眠っていないのは確かだが。