『ひまわりの祝祭』藤原伊織著

2010-04-22 00:00:02 | 書評
himawari『ひまわりの祝祭』は藤原伊織の初期の作品である。ミステリ。

実は、以前、読んだ本である。文庫で530ページだから、かなり長い。ファン・ゴッホがアルルで描いた有名な「ひまわり」の連作について、世間で知られている7枚ではなく、8枚目が存在して、それが日本にある、という設定である。ちょっと読み直したかったわけだ。

と簡単に書くと、「ひまわり」の1枚は、新宿の損保ジャパンひまわり美術館にある、とか、1945年の8月6日、原爆の日に芦屋で空襲を受け、富豪である山本顧彌太氏の実家で焼けたという話ではなく、さらにもう1枚あるという設定になっている。

そして、せっかく、元画家である失業者Aが、このひまわりをみつけたのに、ついカッとして燃やしてしまうわけだ。

感想なのだが、もっと8枚目のひまわりの絵のことを、本当らしく筆を進めるべきだったのではないだろうか。日本に渡ってきた経緯とかだ。探し物がゴッホの作品でなくてもマンモスの象牙とか某国の機密文書でも何でもいいような話になっているように思える。

と書いたところで、既に作者はこの世にはいない。そういえば、多くのミステリ作家は、生前よりも死後になって本が売れだすようだが、ゴッホもその口ということだ。