小室哲哉、破滅の軌跡は

2008-11-10 00:00:09 | マーケティング
小室哲哉が、もうすぐ逮捕されるらしい、という情報を聞いたとき、「そういえば、ニセ外人、マーク・パンサーの妻、確か薫子とかいう建築会社社長令嬢が薬物で捕まっていたのだから、同病ということかな。そういえばルコピンとか薬みたいな名前だったよな」などと、方向違いの勘違いをしていた。最近、globeで話題になったのは、このニセ外人がマルチ商法の会社をやっていることとか、KEIKOの実家、ふぐ料理の「山田屋」の東京店がミシュランの栄えある二つ星店に選ばれたこととか、本業とは、およそ無関係。

そして、捕まえてみれば、詐欺罪。



著作権とはあまり関係のない人生だったので、著作権が転売されるものなどとは今まで知らなかったのが、勉強の第一。そうなると、音楽だけじゃなくて小説なんかもそういうことになっていて、例えば、仮に、村上春樹が金策に失敗したりして、村上龍が友情購入した後、「そういえば、ノルウェイの森の主人公ワタナベ君のキャラクターは暗すぎるから、ちょっと書き直してみるか」とか可能なのだろうか。そんなことできないと思うけどどうなのだろう。本の表紙の色を変えるくらいならいいのだろうけど。

既に転売して、所有権のない自分の著作権を第三者に二重販売してしまえば、いずれ短期間で発覚するのは間違いないところ。自身が運営していた会社が潰れるだけならダメージは限定的で、確か大富豪になっていたはずのジャンボ尾崎も破産している。詐欺罪が追加され、破滅した。執行猶予になるかならないかわからないが、どっちみち破滅するだろう。槙原某は作曲家として復活したが、小室は無理っぽい感じがする。

そして、彼の軌跡を眺めると、一体、なぜ破滅したのか、というところからして疑問を感じる。

報道されているのは、『著作権の二重売買』、『月額800万円の生活費(50万円のワインとか)』、『海外事業の失敗』、そして問題の作曲の方は、『同じパターンの曲ばかり書いて、飽きられた』と酷評されている。もう少し好意的な批評では、『自分で自分の音楽に飽きたもののモデルチェンジに失敗』という意見もある。

つなげると、一時(1995年あたりからか)、何を書いても大ヒットしたのに、数年で飽きられてしまい、音楽の変質と海外展開を考え東アジア進出したものの、失敗。一方、高額出費の続く派手な生活パターンはそのままだし、離婚慰謝料の支払いも必要となり、ついに詐欺を始めるに至る。と、いうことになる。

確かに、1日の生活費が1万円では、生活に余裕がなく、いい作曲ができない、ということも真実だろうが、だからと言って、1日5万円でも10万円でも100万円使っても、比例して作曲の質が向上するはずはないだろう、とは誰だってわかるはずだ。遊ぶ時間があればピアノを弾いたらって。


しかし、やはり本質的な原因は、突然、彼がヒット曲を出さなくなったことではないだろうか。それはなぜか。年代別の彼のヒットを並べてみる。

「寒い夜だから…」trf (1993年)
「恋しさとせつなさと心強さと」 篠原涼子(1994年)
「WOW WAR TONIGHT 時には起こせよムーヴメント」H Jungle With t(1995年)
「DEPARTURES」globe(1996年)
「I'm proud」華原朋美(1996年)
「CAN YOU CELEBRATE?」安室奈美恵(1997年)

1993年から1997年にいたる彼の代表作(思い出せない方は、おけ屋に行って儲けさせるか、自宅でダウンロードしてドリンク代をセーブすればいい)。順番に並べてみると、彼なりに変化していたのが、うっすらとは感じられる。初期の頃は、高音高速ビートとでもいうべき、高音を維持しながら小刻みに半音刻みで上昇と下降を繰り返すようなパターンである。

実は、この前の時代の調べ物をしていたのだが、アン・ルイス、荻野目洋子、小比類巻かほるといった中低音ビート系があって、その後、スローバラードの女王、今井美樹が活躍していた。だから、小室哲哉は極めて新鮮だったはず。

しかし、1996年あたりから、少しずつ、高速から中速に変っている。半音刻みの上下階段ではなく、もっと大きな音域で階段を作っている。批評家の言う「ワンパターン」ではなく、苦心惨憺努力したが、という感じではないだろうか。世間の音楽の好みが変化し、色々やったがついていけなかった。

さらに、篠原涼子はドラマに転進するし、安室は出産休み、朋ちゃんは壊れてしまった。さらに、追い討ちが「沖縄」。安室だけじゃなく、MAX、SPEEDが登場し、その後、ヒッキーが登場し、今や、ゆるめのテルマーになって、もはや小室が身をおく隙間はどこにもない。

だから、自分で自分の音楽に飽きた、というような好意的な推測もあるようだが、単に、時代の変化についていけなかっただけ、ではないかと思う。


一方、今回の逮捕について、合理的説明ではなく、単に、「華原朋美の怨念」という人もいる。それの方がもっともらしく聞こえるのも変だが、彼の逮捕によって、朋ちゃんの呪われた呪縛もやっと解けたのではないだろうか。現夫人KEIKOさんも、弁護士と相談の結果、失うべき財産がないことから離婚を断念したようだが、早めに「ふぐ屋の女将」の道に転進した方がいいかもしれない。