竜王戦のこと

2008-11-15 00:00:46 | しょうぎ
あまり将棋関係でまとまったことを書くことができなかったので、現在進行形の竜王戦を切り口に。とはいえ、3局終わって、3-0の大差。何か調理士がフグをさばいているかのような状況になっているが。

渡辺×羽生のタイトル戦は、2003年の第51期王座戦以来。17期連続で王座の座についている羽生名人は、その時のシリーズでは、かなり追い詰められていた。シリーズ全体を通して挑戦者が押していたのだが、最後は当時四冠だった羽生王座が、頭金を打って優勝賞金をゲットした。



最後の△6八金打の前に、7八にいた後手玉に対し、△6九角打、▲同玉と小学生の将棋教室のような手が入るのだが、頭金まで粘ったのは、渡辺五段(当時)の悔しさの表出だったのだろう。△6八金と打った羽生王座の指は、ブルブルと震えていたと言われ、業界では「怒りの一手」と言われているが、本当に怒りだったのかどうかは、よくわからない。

やっと賞金を獲得できた喜びではないだろうが、棋界第一人者の座が、はるかに年下の挑戦者に今後次々と崩されていくのではないかという内面的な不安から逃れることができたことが、精神的なバランスのわずかなゆらぎとなり、末梢神経の集中した指先の乱れにつながったのではないだろうか。

さらに、できることなら、この△6八金打に対して、すぐに投了せず、1八に眠る先手渡辺の飛車で、▲6八同飛と指してもらって、最後に、△6八同馬と指すのか、△6八同歩成と指すのか確認してもらいたかったところだ。もちろん、誤って、△6八同歩不成とか指してしまえば逆転だが、「悪あがき魔王」とか呼ばれることを嫌ったのだろうか。

そして、この後、渡辺明は竜王に就き、2007年には棋聖戦で佐藤棋聖に挑戦するも失敗。ところが、注意深くみていると、いずれの対戦棋士も、渡辺シリーズが終わったあと、不調の波に襲われているように思える。何か、相手の棋士が持っている潜在的な力を大脳の中からすべて引き出してしまうというような損な棋風なのかもしれない。だから対戦相手は、疲れきってしまう。したがって、現在、絶頂を極めている羽生名人の調子も、年明けからは下降局面に向かうのではないかと予測。



11月1日出題作の解答。

▲3三飛 △2四玉 ▲3五飛成 △1三玉 ▲1四歩 △1二玉 ▲2二と △同玉 ▲2三歩 △同玉 ▲3二銀不成 △1二玉 ▲1三歩成 △1一玉 ▲2一銀成 △同玉 ▲2二歩 △1一玉 ▲3一龍まで19手詰。

読みの練習みたいな問題で、11手目の3二銀不成のあたりが心細く、このあたりで終局まで読まないといけない。



今週の問題は、また嫌な入玉ふわふわ問題。攻め駒の隙間を玉が遊泳して逃走をはかるのを、やっと阻止する。

こどもの頃、積み木遊びが好きだったのだが、立派な構築物を作るのではなく、崩れそうな構築物を空中で組み替えて、別の崩れそうな構築物に組み替えるのが大好きだった。本問もそういう趣向。思えば、大人になって建築家になればよかったかもしれない。古い建物を解体せずに、そのまま空中で組み直して新しいビルの一部に使うとか。

わかった、と思われた方は、コメント欄に最終手と手数と酷評いただければ、正誤判断。