『丸山みゆき』さんのこと(1)

2008-11-18 00:00:13 | 音楽(クラシック音楽他)
半年ほど前だったか、自宅のカセットを中心としたアナログ音源のデジタル化の件を書いたのだが、その後、ぼちぼちと案件は進行中だった。と言っても、アナログをシステム的にデジタル化するというのは、決して、元の音源より改質しないという、当たり前ながら核心的な問題に突き当たってしまうわけだ。

そのために、



1.問題の縮小化
  つまり、要らないものを捨ててしまう。そして、音質が重要なのか、単に記録として必要なのかなどに分類。

2.オリジナルの劣化チェック
  湿気で固まったカセットなんか、そのまま動かすことが可能なのかどうかチェック。

3.とりあえず、同じアナログでもMDにしておいて、あとでデジタル的に加工できないか(英語のスピーチ集など)とか。

4.現在、CDで入手可能か。(新品、中古、図書館、場合によってはダウンロード)

まあ、そういうことをやってみると、多くは「要らない」というカテゴリーになり、問題は大きく縮小されたわけだ。


そして、問題を絞りこんだ上、困難度の高い「現在、廃盤。かつ、それほど有名にならなかったミュージシャン」というカテゴリーに着手することにした。そして、私の机上の大問題となった女性シンガーが、

『丸山みゆき』さん。

ああ、そういえばと覚えている人も少ないだろうけど、「スクールウォーズ2」の主題歌だった『FIRE』という曲とか、その他数曲がCMなどに使われていたはず。そんな彼女のアルバムのカセットが3本見つかった。以前、住んでいたマンションのそばにレンタル屋があって、当時乗っていた車のオーディオがカセットだったこともあり、自宅、レンタル屋、クルマの三角関係ができあがっていたのだ。

発見したアルバムは、

「Sugar Time」(1990年)
「Moon Light](1991年) 
「青すぎる空」(1992年)

よく聴いていたことを思い出し、カセットを回してみるが、あちこちで劣化と癒着の構造になっていて復元困難であることが判明。

大雑把に思い出すと、ヒットした「FIRE」は、意外にも彼女の曲の中でも例外的なアップテンポで強烈なビートに乗った曲(絶叫型とまではいかないけど)。後は、ほぼ全部がスローバラードで、高音の伸びが効いて、かなりドラマスティックな大構造である。そして、おそろしく巧い。こんなに巧い歌手が、なぜビッグになれなかったのか。運だったのだろうか。


そして、そもそも、彼女は、今、どこで何をしているのだろう、何歳?というようなことを考え始めたのは、それからしばらくのことだった。確かそれらのアルバムは1990年頃で、まだwindows95は発表されてなく、インターネットなんてなかった(本当はあったのだが)。現代ではgoogleの検索や、wikipediaという強い小道具がある。

軽く調べてみると、同時代の女性歌手でも、今井美樹とか小比類巻かほる(実は、この二人は丸山みゆきと音楽的に関係があるようだ)とかは、正々堂々と当時と同じような仕事をしている。情報は、ほぼ無限大。

しかし、「丸山みゆき」はいつか、見えなくなった。

バラバラになっている彼女の情報を丹念に集め、つなぎ合わせてみると、前述したヒット作「FIRE」に行くつくまで、長く困難な曲がり道があったことがわかってきた。

1969年長野県生まれ。歌手になるため、高校を中退し上京。1985年頃、TDKに所属し、何曲か発表するも、1988年に、何らかの権利関係の問題が発生し、今までのシングルが、すべて廃盤になる。19歳で何と不幸な話。

しかし、その後2枚のアルバムを出している。私が聴いていたのは、その後の3枚。つまり3枚目から5枚目までだった。そして、毎年、1枚ずつ秋に発表していたアルバムが、何らかの事情で、1993年に途絶える。24歳。

所属をトーラスへ移し、1994年、6枚目のアルバム完成。そしてその後2枚のシングルを出したあと、1995年から1996年9月まで、地元の信越放送でラジオ番組を持つが、番組終了。その後、引退したようだ。

1998年の段階で、普通の仕事をしているとのことらしい。

ドラマティックな歌唱力であるのも、人生の軌跡を見れば当然だったのだろう。


そして、既に入手するのが困難な、これらのアルバムについて、あちこちの中古ショップのネットショップを調べ、とりあえず自宅にあった3枚分を注文する。おそろしいことに18年も前の音の記憶が、僅か三日でメール便で到着する。

聴覚は人間の五感の中で、もっとも原初的であると言われるが、そんな昔の記憶が最初の1フレーズですぐに戻ってきた。1990年代の初めは、自分の人生の中では困難な時期の一つだったのだが、その頃、よくこれを聴きながら接待ゴルフ場に向かったことなど思い出す。


しかし、

こうなると、この3枚の他、まだ聴いたことのない残り3枚のアルバムと、さらに前の廃盤となったシングルや引退直前の2枚のシングルなども、手に入れたくなってくるわけだ。

つまり、アナログ音源のディジタル化というテーマから、さらに別の段階に進んでしまったわけだ。
(つづく)