メタンハイドレートの研究は玉石混淆?

2008-04-15 00:00:44 | 市民A
db07243b.jpg原油価格が上昇し、またCO2問題が「どげんかせにゃいかん」状態になり、やっとメタンハイドレート開発の研究が動き出している。ただ、単に商業的には、メタン(天然ガス)の価格は遅行的に原油価格に強く連動する(カロリーパリティ価格)し、採掘場所が1万メートルの海底からでも、中東の大ガス田からでも同じメタン(化学式CH4)でしかないため、もし生産が開始されれば、おそらく世界で最も価格競争力のないメタンになるはずだ(限界価格)。換言すれば、世界のエネルギー需給バランスが日本海溝の底を常に揺さぶることになる。

そのため、むしろCO2問題の方に効果があると思える。メタンは、化学式がCH4と炭素/水素の比率が化石燃料の中では、最も低いため、燃焼した後のCO2/H20(水)の比率が最も低くなる。

たとえば、某紙にこういう記事があった。3月末。


次世代燃料のメタンハイドレート、連続産出実験に成功
独立行政法人の石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)は次世代エネルギーと期待されるメタンハイドレートを地中から連続して産出する実験に世界で初めて成功した。急激な原油高や将来のエネルギー不足を見据え、中国など世界各国がメタンハイドレートの早期の商業生産を競っている。日本は最大の課題である採掘技術の開発で先行、2018年ごろの商業化を目指す。「資源小国」である日本にとってエネルギー自給率の向上につながる可能性が出てきた。

メタンハイドレートは永久凍土の下や海底下の砂層にシャーベット状で埋蔵する。経済産業省は昨年、東海沖から熊野灘の海底に日本の天然ガス年間使用量の14年分に相当する1.1兆立方メートルのメタンハイドレート埋蔵量を確認。日本近海全体では天然ガス約100年分にあたる推定7.4兆立方メートルと世界最大規模の埋蔵量があるとされる。

このJOGMECのホームページに3月28日のニュース・リリースとして「メタンハイドレートの、連続産出実験に成功」というPDFファイルが公開されている。

実験はカナダ北部の地下1,100メートルに眠るシャーベット状のメタンハイドレートを採掘するもので、従来の技術であった「温水還元法」ではなく「減圧法」によるということだそうだ。

もともとメタンハイドレートは高圧低温の条件の中でメタンの分子の回りを水分子が取囲みシャーベット状になったものなので、従来の温水法は、早い話がシャーベットにお湯をかけてガスを溶かそうという方法。そして、減圧法はガス井戸の中の気圧を下げることでシャーベットを崩そうという方法だ。詳しくはわからないが、お湯をかけるのは、コントロールが難しいような感じがする(あくまでも素人なので)。

しかし、いずれの方法でも、深海にゴロゴロ転がっているとされるハイドレート塊を拾って集める場合は、まったく異なる方法が必要だろうと思われるわけだ。これが地上に転がっていれば、非常に安いコストなのだろうが皮肉なものだ。


そして、まったく別の角度での研究も進んでいる。このメタンハイドレートを海上輸送するための船舶技術を研究しているグループがある。ある造船会社が世界大手の邦系海運会社と手を組み、その他の各種スポンサーの協力で、このシャーベット状のメタンハイドレートを輸送する方法を研究している。東京ビッグサイトで開かれる、あるコンベンションの中で発表されるというので、4月中旬の某日、聴きに行くことにした。

が、・・・

まず、東京ビッグサイトの場所をうっかり勘違いしていた。東京駅の前だと思っていたら、そこは東京フォーラム。ビッグサイトは有明の方だ。どちらもよく行くのに、うっかりミス。歩いていくつもりが、40分かけて『ゆりかもめ』になる。途中、レインボーブリッジを渡ると、乗客の多くが窓の外を探し始めるのは、フィリピン女性バラバラ殺人事件の現場があるからだ。「運河で頭部発見」と書かれていたが、要するにマンションの前の海に投げたということだろう。

そして、講演5分前に会場に到着すると、椅子が60人分しかないのに立ち見の人がいっぱい。もっと遅く着いた人は会場にも入れない。すごいハイドレート人気だ。

しかし、講演が始まり2分ほどして、この講演を聴きにきた人は、「自らの誤解」に気付くことになる。

多くの人は、海底に転がっている黒っぽく表面の汚れたハイドレート塊か、海底の鉱山(ガス田?)から掘り出したシャーベットを液体または固体または気体で運ぶ方法を研究していると思っていたはずだ。

実は、このセミナーで発表されたのは、「ガス田で既に精製されたメタンガスを消費地に運ぶ方法」だったわけだ。生産物なので、純白の固体だ。その輸送方法として生産地で水とメタンガスを混ぜて人工的にハイドレート化して、固体として運ぼうということ。がっかりだ。

簡単に言うと、メタンハイドレート化すると、輸送中の温度は摂氏マイナス30度ということで、日本の得意なLNG船での輸送温度マイナス162度より、簡単な船舶設備でいいということ。

ただし、聴いていてわかったのは、致命的な問題。ハイドレートはメタンの回りに水の分子が取囲むため、メタンの5倍?程度の大量の水も運ばなければならないため、輸送費(ランニングコスト)が高くなるということ。

つまり、近距離輸送ではパイプラインに負け、長距離輸送ではLNG船には負けるということで、このハイドレート化輸送に価値があるところはあるのだろうかということ。さらに言えば、日本だからこそ、「水はタダ」と思えるのだが、ガス田のある国は砂漠か海上ガス田。水のコストは油より高いはずである。


後で、考えたのだが、例えばシベリアには油田も天然ガス田もあるのだからメタンハイドレート田がありそうな気がするわけだ。そこは、タンカーで輸送というわけにはいかないし、パイプラインは長すぎる。固体のまま鉄道で輸送という方法がありそうではあるのだが、それにしても最初に書いたように、生産物が単なるメタンであるということを考えれば、人類が巨大ガス田を掘りつくした百年先に登場するのではないだろうかと考えざるを得ないのである。

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