プリンセス・トヨトミ (文春文庫) 価格:¥ 750(税込) 発売日:2011-04-08 |
万城目学の『プリンセス・トヨトミ』を讀んだ。以前、テレビで『鹿男あをによし』を見て、なんだか不思議な作風だなといふ思ひを抱きながら、毎週そのドラマを樂しみにしてゐた。何がいいのかと訊かれると「う~ん」と考へてしまふが、まあ頭を休めるのには丁度いいのであつた。エロティックでもグロテスクでもなく、歴史を背景にしたエンターテーメントとしては良質だらうと思ふ。作者が私が務めてゐる學園の卒業生といふこともあるのだらうが、生徒に對する指導に「校則を十囘書かせる」といふ話が出て來たが、妙に親近感があつた(本校は般若心經を書かせるのであるが)。その後、DVDで『鴨川ホルモー』を見て、少少その馬鹿さ加減には呆れたが、そこに出て來た「ホルモー」の妖精はかはいらしくて愛敬があつた。
それで、間もなく映畫化されるといふこともあつて、表題作を讀んでみた。最高傑作と呼ばれてゐたから、少し氣合を入れてゴールデンウィークを使つて讀んでみたが、これまた「う~ん」といふ感じである。映畫化やドラマ化されるのがよく分るほど、何だかシナリオを讀んでゐる感じである。筋の展開だけで讀者を引きつけるのは、作者の力量ではあらうが、果たしてそれだけである。
求めてゐるものが違ふと言へばそれまでであるが、かういふ趣向のなかにも或る種の文章的魅力や氣の利いたセリフの一つ二つでもあれば、もつと良かつたのに、と思つた。因みに昨日高野山から下山して來た身から言へば、金剛峰寺が豐臣家の永代供養を擔ふ寺でもあるからプリンセス・トヨトミの出自に關してそのいきさつなどを話題を盛込むことも可能であつたと思ふ。そこでは僧侶との會話も可能となるし、徳川家やその後の明治政府からどう遠ざかりながら生きてきたのかを、京都から遠ざかつた高野の地に寺を建てた空海の言葉を引用することも可能であつた。万城目さんも高野山に修養に行つたはずであらうに・・・・・・
万城目ワールドを樂しみにしてゐる人には、彼はきつと天才に見えるのであらう。それほどの吸引力があるのは確かである。現に私の家内は「はまつてゐる」。そして、もう最新作『偉大なる、しゅららぼん』を讀み了へてしまつた。すごいことだ。
偉大なる、しゅららぼん 価格:¥ 1,700(税込) 発売日:2011-04-26 |