樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

シカの好み

2014年07月07日 | 木と鳥・動物
約20年間通っている栃の森は、2000年ごろからシカの数が増え、さらに2005年ごろにササの一斉開花とそれに伴う枯死現象が発生したため、ササ群落が消滅しました。
餌のササがなくなると、シカは木の葉や幼木を食べます。彼らにも好みがあるようで、ある研究者によると、シカが好む樹木はクロモジ、リョウブ、ウリハダカエデ、オオカメノキ、ウスギヨウラク、ハイイヌツゲなど。
一方、嫌いな樹木はオオパアサガラ、テツカエデ、サワフタギ、タンナサワフタギ、スギ、カラスシキミなど。これらの樹はシカが食べないので増えます。私の実感でも、10年ほど前からオオバアサガラやテツカエデが増えて、林相が変わってしまうのではないかと心配になるくらい。


シカが嫌いなオオバアサガラの花

ところが最近、シカはオオバアサガラにも食指を伸ばし始めたようで、食痕が発見されています。この樹はエゴノキの仲間で、サポニン(有毒物質)を含んでいるためシカは食べないとされてきましたが、今は食べているのです。
さらに、5月に訪れた際、テツカエデにも食痕を発見しました。「オオバアサガラに次いでテツカエデまで」と驚きました。


シカの食痕が残るテツカエデ

上述の研究者の論文には、次のように書いてあります。
「シカの植物に対する嗜好性は突如として変化しうることが知られており、本研究では不嗜好性種として扱った種であっても、将来はシカの負の影響を被る可能性があるかもしれない」。
オオバアサガラやテツカエデについては正にその通りになっているわけですが、嗜好性が変わるというよりも、他に食べるものがなくなったので、まずいものやアブナイものでも食べざるを得ないということではないでしょうか。
5月の訪問時にはカラスシキミが4~5株まとまって自生しているのを発見しました。


カラスシキミの花

この樹は京都府では準絶滅危惧種で、この森でも以前1株発見したことがありますが、こんなにまとまって咲いているのは初めて。シカが嫌いな樹種だから増えたのかもしれません。
先日、草本に詳しい方から、「以前はシカが食べなかったクリンソウも最近は食害を受けている」と聞きました。樹も草も同じ状況のようです。
食べるものがなくなって、まずいものやアブナイものにも手を出す…。将来、人口が爆発的に増えれば、「シカ」を「ヒト」に置き換えたような恐ろしい状況に陥るのではないでしょうか。
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2 コメント

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Unknown (guitarbird)
2014-07-08 06:45:46
おはようございます
こちらではエゾシカがよく食べるのはハルニレのようです。
またハルニレに限らず、植樹活動をした苗木が次々と食べられるという話も聞きました。
樹木ではないですが、知床ではエゾシカが食べないハンゴンソウが増えています。
カラスシキミ、準絶滅危惧種がおそらくシカの影響で増えたというのは複雑な心境でしょうね。
シカの問題を人間に置き換えて考えるというのは、シカ問題を考える上で有効かもしれないですね。
シカはスギが嫌いというのは、感覚的になるほど、と思いました(笑)。
そちらの (fagus06)
2014-07-09 06:48:46
エゾシカも同じような状況なんですね。しかも、ハルニレが好きで、ハンゴンソウが嫌いなんですか。
スギが嫌いなのは、針葉樹は舌や口に刺さって痛いからかも知れません。
栃の森では現在、シカの駆除が行われていて、多少はその効果が出てきたみたいです。

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