樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

木の実から見える動物の生態

2016年10月20日 | 木と鳥・動物
10月の連休、栃の森に行ってきました。紅葉にはまだ少し早かったものの、いろいろな木の実が成っていたり、落ちていたり…、それなりに楽しめました。
落果をつぶさに観察していて、面白いことに気づきました。トチノキの根元には堅い殻が、クリの木の根元にはイガイガの殻がたくさん落ちているのに、オニグルミの根元には殻があまり落ちていないか、半分に割られた殻が落ちています。いずれも、中の実は残っていません。


トチノキの下には殻がいっぱい


クリのイガイガ


オニグルミの殻は半割り

トチノキやクリは中の実をシカが皮ごと食べたり、小動物がどこかに運んで食べたり、貯食するので、堅い殻だけが残る。オニグルミは、リスが殻ごとどこかに運ぶか、樹上に登って食べるので半分に割られた殻が下に落ちる。そういうことのようです。
ある研究者によると、ネズミはオニグルミの堅い殻をかじって穴をあけて実を食べ、リスは殻を半分に割って中の実を食べるそうです。下の写真のオニグルミの殻にはリスが半分に割るために少しかじったギザギザの痕があります。



ミズナラの樹の下にも、あまりドングリが落ちていないか、落ちていても小さな実です。大きなドングリはクマやカケス、ヤマガラなどが食べたり、貯食するからでしょう。ネズミもミズナラのドングリが好物のようですが、ミズナラにとってありがたいネズミとそうでないネズミがいるそうです。


ミズナラは小さいドングリしか残っていない。大きい実は動物が持ち去った?

北海道での研究ですが、エゾヤチネズミはドングリの先端をくわえ、エゾアカネズミは底部分をくわえて運ぶ。先端には芽や根になる胚があるので、深くかじられると発芽できなので、エゾヤチネズミはミズナラにとっては迷惑な存在。
一方、エゾアカネズミは種子散布してくれるありがたい存在。それでもネズミが隠したドングリのうち発芽するのは1~2%とのこと。発芽しても、樹木として成長するのはさらにその数パーセントでしょう。樹木の生き残り作戦は、気が遠くなるくらい打率が低いですね。
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2 コメント

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Unknown (guitarbird)
2016-10-27 06:42:46
おはようございます
ネズミの主によりかじる場所が違うというのは、それをよく調べたなあとただただ感心しました。
木の実の殻ですが、私のホームフィールドには鹿がいないので、今度鹿がいる場所でじっくりと観察するしてみたいです。
オニグルミの半割りはよく見かけますが、見るとついつい拾いたくなります(笑)。
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ネズミについては (fagus06)
2016-10-27 07:55:47
ある大学院生が、自動カメラで撮影した映像を見ていて気付いたそうです。エゾヤチネズミはミズナラにとっては天敵になるわけですね。
オニグルミの殻は半分に割れていることが多いです。
「くるみ割り人形」ではなく「くるみ割りリス」ですね。
トチノキの実をシカが食べるのは、以前どこかのドキュメント映像で見たことがあります。
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