樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

ヒポクラテスの木

2013年07月25日 | 木と医薬
古代ギリシャの医者・ヒポクラテスは「医学の父」とか「医聖」と呼ばれていて、死後2400年の今も「ヒポクラテスの誓い」が医師の倫理として受け継がれているそうです。
9項目の「誓い」には、「依頼されても人を殺す薬を与えない」とか「市民と奴隷の相違を問わず医術を行う」「患者の秘密を遵守する」などが掲げてあります。
生地であるギリシャのコス島にはプラタナスの巨樹があり、その下で弟子たちに医学を教えたことから、「ヒポクラテスの木」として現在も保存されています。ということは、樹齢3000年くらいのプラタナスということになります。
その「ヒポクラテスの木」の末裔が、日本の医学関係者によって持ち帰られ、あるいはギリシャから贈られ、各地の病院や医系大学の敷地に植えられています。京都大学医学部付属病院にも2株あるというので行ってきました。


昭和33年の卒業生が持ち帰って寄贈した「ヒポクラテスの木」


寄贈者は京都でも指折りの巨大病院グループの会長

プラタナスは街路樹として使われていますが、ほとんどはモミジバスズカケノキかアメリカスズカケノキで、「ヒポクラテスの木」はスズカケノキ。写真のように葉の切れ込みが深く、街路樹の葉とは少し形状が異なります。



日本には9系統の「ヒポクラテスの木」があるそうです。つまり、9人の医学関係者がギリシャから持ち帰ったり、ギリシャの友好団体から寄贈されたわけです。
そのすべての株を調べている人がいて、その調査結果によると、日本には250株が移入され、そのうち95株の生存が確認されています。
ただし、すべての株が現地の原木と同じDNAを持つかどうかは調査できていないとのこと。本物の「ヒポクラテスの木」の実から育ったもののほか、ギリシャで育った別の株も混じっているようです。
いずれにしても、2400年前の医者の倫理がゆかりの木とともに受け継がれていることは興味深いですね。
コメント (6)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 音の名の鳥 | トップ | 誕生鳥 »
最新の画像もっと見る

6 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (guitarbird)
2013-07-25 11:38:02
こんにちわ
こういう話は好きです。
モミジバスズカケノキはこちらでは街路樹で多いですが、確かに葉っぱがかなり違いますね。
返信する
私も (fagus06)
2013-07-26 07:03:50
こういう葉のプラタナスは初めてです。
こちらでも街路樹に植えられているのはモミジバスズカケノキのようです。
京大病院にはもう1本、別のルートで移植された「ヒポクラテスの木」があり、それも探したのですが、さすが京大医学部、敷地が広くて、炎天下、しらみつぶしに歩くのは無理と思って諦めました。
同じ敷地に、山中教授のIPS研究所もありました。
返信する
府立医大にも (ちどり)
2013-07-26 16:11:24
記念植樹のコーナーがあって,ここにも植えられています。
プラタナスをどうしてヒポクラテスというのか,不思議に思っていましたが、このブログで教えていただきました。ありがとうございました。
写真も撮ってきましたが,モミジバか、アメリカか迷うところです。
返信する
ちどり様 (fagus06)
2013-07-26 16:18:43
やはり京都府立医科大学にもありますか。
多分、あるだろうなとは思っていましたが、最近、府立医大は不祥事がありましたから、行くのを遠慮しました。
モミジバかアメリカということは、ギリシャ・コス島からの移入株ではないということですね。
返信する
都大路では (moriyume)
2013-07-26 20:35:47
プラタナスから他の木に替えていく予定だと26日の京都新聞夕刊に書いてありました。
烏丸通りは「ユリノキ」だそうです。風情がまた少し変わりますね。
返信する
moriyumeさんへ (fagus06)
2013-07-27 07:44:41
烏丸通りのプラタナスは、フォークソングの歌にも歌われていましたが、数年前からユリノキに差し替えられていますね。
葉っぱが似ているので気づかない人が多いですが、樹皮を見ると、プラタナスは白っぽくて斑模様、ユリノキは茶色の縦縞なのですぐに分かります。
京都新聞の記事は読んでいませんが、プラタナスには虫がついて、通りに位置するビルのテナントから苦情が多いので、樹種が変更されるようです。
全国的に街路樹としてのプラタナスの人気は下降気味で、以前はベスト3に入っていましたが、現在はベスト10くらいになっているはずです。
葉っぱが大きくて、落ち葉の処理が大変という事情もあるようです。
返信する

コメントを投稿

木と医薬」カテゴリの最新記事