樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

酒と杉

2007年03月02日 | 木と飲食
私が住む宇治市は京都市伏見区に接しており、近くには「伏見の酒」をつくる蔵が建ち並んでいます。そこを歩くと、あちこちに蜂の巣のような丸い物体がぶら下がっています。大きさはサッカーボールくらい。杉の枝を束ねて球形にしたもので、「杉玉」と言います。

      
      (伏見の酒蔵にはあちこちに杉玉がぶら下がっています)

この杉玉の由来にはいくつかの説があって、一つは「新酒ができましたよ」という目印にしたという説。緑の葉が茶色く変色する具合を見て、熟成された飲み頃を判断したそうです。なぜ杉なのかについて、「杉材を樽に使った後、枝や葉が残るので杉玉に使った」という話をどこかで読みました。
もう一つの説は、酒の神様を祀る大神神社(奈良県桜井市三輪)のご神体が杉だからという説。その杉の枝をいただいて軒に吊るし、良い酒ができることを祈願したのだそうです。

      
      (酒蔵の板壁も杉材。街には酒の匂いが漂っています。)

いずれにしても、現在は酒屋の看板として常時吊るされていることも多いようです。杉の樽に詰めたり、酒蔵に杉玉を吊るしたり、日本酒と杉はなぜか因縁が深いです。
ちなみに、私たちが目にする杉は日本の固有種で、スギ科スギ属の1属1種。外国には以前ご紹介したメタセコイヤなど別の属のスギ科の樹がありますが、日本にあるスギ科の樹はこの1種類のみ。秋田杉とか北山杉というのはあくまでも産地名であって、植物学的には同じ種類です。
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