樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

花の木、香の木

2007年03月28日 | 木と宗教
写真はシキミの花です。枝や葉はよくご覧になるでしょうが、花はあまり目にする機会がないと思います。
でも、昔は花の方が重要だったようで、別名は「ハナノキ」。京都市の北部に花折街道という道がありますが、ここはシキミ、つまりハナノキの産地だったのでこの名前があるそうです。

      
    (今頃が開花時期。葉を揉むと線香の匂いがしますが花は無臭。)

普通、シキミは仏教、サカキは神道ですが、不思議なことに京都の愛宕神社ではサカキではなくシキミが神木になっています。この神社は防火の神様として信仰が厚く、京都の料理屋さんなど火を扱う商売の方々がたくさん参拝します。
神社から授かったシキミを神棚に供え、毎日火を起こすたびに1枚ずつ葉を燃やし、強い香りを放って邪気を追い払うことで火災を防ぐのだそうです。
葉に強い香りがあるので、もう一つの別名は「コウノキ(香の木)」。葉は線香の原料で、揉むだけで線香の匂いがします。また、墓地にシキミを植えるのは、墓を荒らすオオカミをその強い匂いで追い払うためだったとも言われています。
しかも、実は有毒です。そのことから、江戸時代の博物学者・貝原益軒は「悪しき実」→「シキミ」に転訛したのだと言っています。私は信じていませんが・・・。
シキミの学名のreligiosumは「宗教上の」という意味。名づけたのはシーボルトですから、日本で仏教によく使われることを知って命名したのでしょう。
コメント (10)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする