樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

ジンチョウゲ? チンチョウゲ?

2007年03月19日 | 木と作家
散歩コースの近くにジンチョウゲの生垣があって、もったいないほどの香りを周囲に漂わせています。少し遅れてうちの庭でも開花したので、切り花にしてテーブルに飾っています。
恥ずかしながら、樹のことを勉強するまでジンチョウゲ=ジャスミンであることを知りませんでした。みなさんはご存知でした?

      
      (いい香りが漂っている宇治川沿いの道)

この花について、文学界にこんなエピソードが残っています。夏目漱石門下の作家・久米正雄が東京朝日新聞に『沈丁花』という小説を連載したとき、「チンチョウゲ」とふりがなをつけました。それを見た多くの読者から、「ジンチョウゲではないか?」という投書が寄せられたそうです。
久米は「植物名としてはともかく、作品のイメージからして万葉風に清音にするのがふさわしい」と譲らなかったそうです。最初からそのつもりだったのか、無知を隠して強弁したのかは分かりません。私は作家ではありませんが、言葉を生業にしているので、久米正雄のこだわりは理解できますが、その一方で「清音にこだわるなら、チンチョウカとすべきでは?」とも思います。

      
       (この赤花タイプと白花タイプがあります)

この小説は映画化され、私は観たことはありませんが、田中絹代や岡田嘉子が出演しています。
また、「沈丁花は枯れても香し」という諺があります。「腐っても鯛」と同じ意味でしょう。中国原産で、日本には室町時代に渡来しました。
本家の中国にも、香りにまつわる伝説が残っています。ある僧が野外で昼寝をしていたところ、強い香りで目が覚めたので、その元を尋ねたらこの花が咲いていた。それ以来、中国ではこの樹を「睡香」と呼んでいるそうです。
コメント (4)
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