真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「痴漢電車 いけないこの指」(昭和60/製作・配給:新東宝映画/監督:渡辺元嗣/脚本:片岡修二/製作:伊能竜/撮影:倉本和人/編集:酒井正次/音楽:芥川たかし/出演:大滝かつ美・田口あゆみ・しのざきさとみ・風見玲香・ジミー土田・池島ゆたか・久保新二)。スタッフはナベと倉本和人(a.k.a.倉本和比人)のみ、俳優部に至つては男主役であるにも関らずジミー土田の名前がない、絶望的なビデオ版クレジットに匙を投げる。残りとビリングはjmdbにひとまづ従ひ、ついででVHSは田口あゆみ・しのざきさとみ・大滝かつ美・久保新二・池島ゆたか・風見玲香の順、責任者か担当者は土に還れ。
 星空で開巻、JAL69便、の玩具。パイロットが管制と連絡を取らうとしてゐると、操縦席の外側から逆さにフレーム・インした田口あゆみが、「東京て何処ですか?」。下を指差した操縦士が首を傾げる一方、キャンディ(田口)はパラソルでゆるゆる降下。続いて高層ビルの窓拭き―但し内側から―に渋谷、烏には月見荘の場所を尋ね、当の月見荘。チャップリンTの小林松太郎(ジミー)が、明日の告白と結婚とを満月に期す、開けた窓からキャンディが松太郎の部屋に墜落する。電磁加速砲を喰らつた鳩のやうな松太郎に対し、キャンディが“世界で一番惨めな男”の松太郎を幸せにするやう神様に命じられた、天使である旨素頓狂か無礼千万な自己紹介をしてタイトル・イン。松太郎の部屋に、キャンディが文字通り飛び込むシークエンスは奇跡的なカット割りで案外見させるのと、パイロット共々、窓拭きが内トラにしては馬鹿にといふか、本職の男優部三本柱よりも寧ろ男前。
 配役残り、巨大なロイドに戦慄を禁じ得ない池島ゆたかは翌朝の通勤電車、松太郎について来たキャンディに痴漢する男。セットなんて組むのが面倒臭いとでもいはんばかりの、フリーダムな実車輌撮影―カメラ位置が妙に高い―が清々しい。話を戻して池島ゆたかに基いた松太郎いはく痴漢の定義が、「女が好きな癖に女をモノに出来ない内気な助平さ」、実も蓋もない。主要キャストの筈なのに、序盤かつ斯様な形で使つてしまつて池島ゆたかはどうするのか。と激しく疑問に思つてゐたら、月見荘住人の新劇俳優とかいふ形で力技の再登場を果たす。大滝かつ美は慌てて階段を駆け上がる松太郎が食パン感覚で激突する、段ボールに溢れるほど書類を抱へ下りて来た同僚の野沢か野澤未来、松太郎意中の人。何気に歯がガッチャガチャの久保新二は、松太郎に殺すだ何だ出鱈目な雷を恐らく毎日落とす園山課長。未来で野沢を切つてゐるゆゑ、新劇の苗字は本命が轟で対抗は江藤かな。しのざきさとみと風見玲香は、松太郎に激おこすると決まつて最後は鼻血を噴く園山を、介抱すると称して抱かれる画面手前のアスカと、真ん中に未来挟んで奥のキョーコ。絡みの順番的にはキョーコが先、といふかアスカはギリギリのスレスレまで温存する。あと、未来の机上に算盤が置いてあつたりするのは、有線電話以上に今の若い子達には理解し難いレガシーかも。忘れてた、最終盤聞かせる神様の二言三言は、混同もものともせず池島ゆたか。
 「マイ・フェア・レディ」の次は、「メアリー・ポピンズ」と来た渡辺元嗣昭和60年第三作。未来と松太郎の物語であれ、主演女優は大滝かつ美、ではなく田口あゆみ。松太郎から贈られたダサい三日月のペンダントを気に入つた未来が訪ねて来たところ、月見荘に転がり込んでゐたキャンディを見て恋路が拗れる、といつた方向に当然展開する。相変らずワン・ノブ・ロケーションに過ぎない電車が本筋には掠りもしない無頓着は兎も角、内気な新劇クン(仮名)をキャンディが筆卸し一皮剝く中盤の見せ場を最大のハイライトに、裸映画的にはとりあへず安定。風見玲香にしのざきさとみ、巨乳部を二枚並べた豪華な濡れ場要員は、全く同じ手口を厭ひも構ひもせず、久保チンが堂々と介錯する。今でいふパワハラ糞上司に連日怒鳴り散らかされる以外には、松太郎がそこまで“世界で一番惨めな男”にも見えない根本的な疑問は、豪快かつ小洒落たオチで回収してみせ素のお話もそこそこに纏まる。銀幕―ないし液晶―の此岸の“世界で一番惨めな男”に対し、キャンディが本当に「それー!」と飛んで来る爽快なラストもお見事。さうなるとなアキレス腱が、ナベは相当に惚れ込んでゐたらしいものの、酷いパーマ頭に絵に描いたやうな団子鼻で、精々ビューティー・ペアに憧れた全女の練習生といつた風情の大滝かつ美。星空に松太郎の名を叫ぶ、壮大か壮絶なロングには悶絶した。そこかしこの臆面もない安さは雀の覚えたダンスにせよ、今となつては如何せん厳しい、無造作なミソジニーは一旦さて措くに流石に難く、とかく初期ナベが持て囃される風潮に関しては、厳密な現在は未だ当地に着弾してゐないゆゑ兎も角、全般的に近年の方が普通にプログレスしてゐるのではなからうか。狙ひを定めると確実に低調してゐた2000年前後十年くらゐに醸成された、過去の過大評価であるやうにも思へる。


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 「悶絶劇場 あへぎの群れ」(2019/制作:花園シネマ/提供:オーピー映画/監督・脚本・編集:谷口恒平/撮影:金碩柱/照明:市川高穂・白鳥友輔/録音:北野愛有/ヘアメイク:坂口佳那恵/演出応援:江尻大/整音:吉方淳二/撮影助手:金山翔太郎・藤井良介・長棟宏輔/照明助手:迫田遼亮・宇都宮徳/ヘアメイク応援:Tomomi Ishizu/制作応援:水嶋優太/撮影応援:今岡利明/車両:ムラカミロキ・松野宏昭/劇中漫画製作:平松茉紘/仕上げ:東映ラボ・テック/機材協力:CRANK・撮人不知・グリフィス・日本照明/協力:マリエール、ビデオプランニング、馬力、Bar DUDE、ティファナ・イン、髭野純、金井塚悠香、染谷明美、鴨井雄一、池添俊、上村奈帆、酒井翔太郎、久田松真那/主題歌:『愛の暴露本 ~bakuro book~』おとぼけビ~バ~/出演:横山夏希・関幸治・霧島さくら・永瀬愛菜・細川佳央・中村無何有・可児正光・折笠慎也・山本宗介・安藤ヒロキオ)。
 美術の完成された部屋にて、上京二年、デビューの決まつたマンガ家・小崎愛(霧島)が原稿の制作中。騎乗位もとい机上には、敬愛する伊集院先生(折笠)のスナップも。優作の息子といふよりは、寧ろ美由紀の倅である松田龍平と、庵野秀明を足して二で割つたやうな編集者の森田(中村)が愛に用意した初陣の舞台が、体験告白エロマンガ誌『漫画・本当にあつたエロい話』。とはいへ未だ処女で創作に煮詰まる愛の、火に油を注ぐべく最近お盛んな隣人が華麗に開戦。嬌声にアテられた愛が伊集院先生の写真を手にワンマンショーをオッ始めかけたところ、伊集院先生が流石に抽斗は無理で机の下からヌルッと大登場。マンガも褒めて呉れた伊集院先生に、愛が弾力にも富んだ爆乳をブルンッとオープンするカットの、本当にブルンッといふ音が聞こえて来さうな一撃必殺のジャスティス。のつけから百点満点で三千点の絡み初戦は、“あの喫茶店”での取材を提示する森田からの電話に遮られる。一息ついたタイミングで、主題歌が起動してタイトル・イン。霧島さくらのブルンッのみならず、折笠慎也のヌルッとも何気に完璧。ところで谷口恒平と、ポスト少年ウルフことおとぼけビ~バ~は立命館の同窓生といふ仲。
 そんなこんなで森田は結局不在のまゝ、体験告白を直に聞くべく、愛は御馴染「マリエール」で春山タモツ(仮名/34歳/関幸治)と会ふ。タモツの体験談、「寝取られた男」。学生時代、多分バイトで撮影してゐた朗読劇(朗読者は山本ロザらしい)の会場で、タモツは金髪男(可児正光のゼロ役目)に手マンされるカオリ(横山)を目撃する。映研の同期であつたタモツとカオリのあくまで友人関係がスタートしつつ、カオリはセフレのバンドマン(山本)から呼び出されるや、こちらも定番の、タモツと飲んでゐた「馬力」を平然と後にする。そんな二人が、何故か結婚。ところがカオリは結婚後も相変らず、ほかの男達との関係を恣に続けた。配役残り、クレジット順に永瀬愛菜と細川佳央に安藤ヒロキオは、AV監督であるタモツの現場の女優部・櫻井ミキと、撮影にはタモツと二人で当たる後輩の三木に男優部。改めて可児正光は、タモツが監視カメラを仕掛けてゐるのも知らず、カオリが全裸で出迎へる今時出前。ところで今回得た知見が、可児正光は金髪に染めると、この人トムクルに似てる。タモツの体験談に衝撃を受けた愛は、軽く途方に暮れる。「こんなエロマンガみたいな女の人、ホントにゐるんでせうか?」、「ゐました」の画期的に秀逸な流れで、今度はマリエールに秋田カオリ(仮名/34歳/横山夏希)が飛び込んで来る。ところがカオリの体験談「見られたい女」の中では、妻相手には勃たないタモツの要請でカオリは山宗やカニ・クルーズと寝させられた挙句、その癖タモツはミキと浮気してゐた。本格的に途方に暮れる愛のスマホに、櫻井ミキ(仮名/24歳/永瀬愛菜)から直接電話がかゝつて来る。勢ひで上手く誤魔化しながらも、実は割と無理から割り込んで来るミキの体験談が、「ぶち壊す女」。その他残り、朗読劇会場を多分最多に、マリエール・馬力と通行部で計十数名?見切れる、馬力に周磨要と中村勝則がゐたのだけ確認出来た。「見られたい女」に登場する、ネットで募られたNTR氏・翔さんは酒井翔太郎。翔さんにタップリ出して貰つた精液のフローバックを、カオリが帰宅後タモツに飲ませる件から、マリエールに於ける、カオリがカップに注ぐコーヒーフレッシュに時制を跨ぐ繋ぎが、とても初めて撮つたピンクとは思へない鮮やかさ。
 第1回(2017)の新橋同様、第2回OP PICTURES新人監督発掘プロジェクト優秀賞獲得作品は別にクレジットされない、谷口恒平ピンク筆卸作。林田義行の『PG』誌から、切通理作の『シネ☆マみれ』誌に主催が移つたピンク映画ベストテンではベストテン一位と谷口恒平の監督賞。“ねえもんはねえ”あの髙原秀和の「つぐみ」続篇に作品賞一位を叩き出したとか初端から飛ばしすぎの、併設された桃熊賞でも関幸治の主演男優賞に、撮影部の新鋭・金碩柱が技術賞を獲得してゐる。
 三者の体験談が何れも食ひ違ふ、絵に描いたやうな所謂ラショーモン展開。と、いふよりも。横山夏希が殆ど服を着る暇もないほどの、重量級の煽情性を爆裂させ続ける絶え間ない濡れ場大連撃が兎にも角にも圧巻。今時出前を全裸で待ち受ける、フルショットとかエクストリーム、エロい超えてヤバい。霧島さくらに正しく勝るとも劣らないオッパイを誇る横山夏希が、かてゝ加へて関幸治との斉唱風の朗読を窺ふに、レス・ザン・目の表情を除けばお芝居の方もなかなか以上、御愛嬌ともエクセスライクとも決していはせない。細川佳央×可児正光×折笠慎也×山本宗介×安藤ヒロキオ、ガッチガチの本隊精鋭部隊を向かうに回し、関幸治自身が余程センスがあるのかそれとも演出部に勝因のより重きをおくべき―もしかしてEJD相当頑張つた?―なのかは兎も角、古澤健は自ら進んで壮絶な爆死を遂げた、場数の足らない男優部が女の裸を台無しにしてしまふ惨状も、外様作にしては極めて珍しく完ッ全に回避する。尤も、この点に関しては本隊も本隊のしかもエクセスで、松岡邦彦が派手に仕出かすこともあるのだが。閑話、休題。再び尤も、主演女優がビリングに違はぬ縦横無尽の大暴れを繰り広げ、大輪の百合を開花させる三番手も猛然と追走するのとは逆に、手口の代り映えはいつそ捨てた、伊集院先生とのイマジン戦をインターミッションに差し挿むでなく、霧島さくらを超絶のアバンで打ち止めするほかなかつた構成には、当然激越に心を残さずにはをれない。ドボルザークを駆使する劇伴も、ペラッペラの打ち込みには如何せん安さも否めない。兎も角愛がいよいよ万策尽きかけた窮状から、豪快な映画の魔法で突入するクライマックス。文字通り四方八方に動き倒すウルトラアクティブな長回しを経て、遂に愛のマンガが完成した!にも、関らず。そこで綺麗に物語を畳まなかつた態度か畳めなかつた限界には、量産型娯楽映画的にはなほさら如何なものかと巨大な疑問も禁じ難い。あへて畳まなかつた何某かの小賢しさにせよ畳み損ねた格好にせよ、結果としてはさして変らない。ある、いは。何故に斯くも、森田の造形を頑なにクソなまゝ固定しておかねば気が済まなかつたのか。上野の周年にぶつけて来るくらゐオーピーも前のめりで、世評も滅法高い。にしては、そこまでワーキャーするに足る決定力には些か遠かつた一作。同じ女エロマンガ家ものならば山﨑邦紀2012年第二作「異常飼育 ワイセツ性交」(主演:大城かえで)はまだしも、竹洞哲也の矢張りデビュー作「人妻の秘密 覗き覗かれ」(2004/脚本:小松公典・竹洞哲也/プロデューサー:小川欽也/主演:吉沢明歩)の方が、余程完成されてゐたのではなからうか。


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 「風俗ルポ ポケベル《裏》売春」(1994/製作:小川企画プロダクション/配給:大蔵映画株式会社/監督:小川和久/撮影:伊東英男/照明:内田清/助監督:井戸田秀行/編集:金子尚樹 ㈲フィルム・クラフト/脚本:林田義行/撮影助手:郷田有/照明助手:佐野良介/ネガ編集:三上えつ子/音楽:OK企画/録音:ニューメグロスタジオ/効果:協立音響/現像:東映化学《株》/出演:小川真実・水鳥川彩・西野奈々美・久須美欽一・太田始・鳥羽美子・杉本まこと)。
 七色に煌めく麗しの大蔵王冠ロゴ、杉本まことの開巻開口一番が「早く脱げよ」。長谷川文男(杉本)が同僚兼不倫相手のアイダ望(西野)に悪い顔で促す、帰社時間に迫られる昼下がりの逢瀬。望がブラウスをカメラ目掛け文字通り脱ぎ捨てて、暗転タイトル・イン。絡み初戦がタイトルバック、雑な体位移動はさて措き、締めの監督クレジットで乳に寄る。案外馬鹿に出来ない、強靭なジャスティス。寧ろ今時の外様辺りが積極的に、この手のコッテコテな古典的メソッドを模倣してみるのも面白い、やうに思へなくはない。
 大胆だか大雑把なのかよく判らないダイナミックな繋ぎで、ベンチに座つた長谷川が深刻な顔で黄昏る。箸が転べば公園、風が吹けば桶屋が往来。少々の不自然さなんぞてんで意に介さず、事ある毎に無料ロケーションを臆面もなく多用してのけるのは、確信犯的量産型娯楽映画の常。閑話休題、事後結婚を理由に望から不意の別れを通告された挙句、その結婚相手とやらが得意先である小林物産の社長子息だとかいふので、長谷川は声しか聞かせない部長(姿良三か小川和久)に馘をも宣告されてゐた。それで社員の首を切れるのか、なかなか機動性に富んだ会社ではある。実は、それだけでもなかつたのだが。再度閑話休題、キリがない。呆然自失と歩道橋から行き交ふ車列を見やる長谷川に、偶ッ々その場を通りがかつた女・冬美(小川)が「吸ひ込まれさう」と声をかける。適当な会話を流して、冬美の―スーサイドを―「少し先に延ばしてみない?」から、カット跨ぐとシャワーを浴びてゐる小川真実。少々無理か飛躍の大きなシークエンスであつたとて、女の裸で捻じ伏せてしまへば万事オッケー。ピンク映画固有の文法が、荒野にも似た地平を飄々と吹き遊(すさ)ぶ。正しく一発で冬美に執心した長谷川が、早速翌日貰つた番号にかけてみると、電話の先はホテトル店「キャンディ」だつた。矢張り声しか聞かせない電話越しの男には辿り着けないから、井戸田秀行なのかなあ。
 配役残り水鳥川彩は、長谷川の妻・唯。キャンディの店長(推定)に、長谷川が冬美の特徴を適当に伝へたところ、今上御大映画に於ける大御大映画影の女神・板垣有美こと、鳥羽美子が飛び込んで来るのが序盤のハイライト。長谷川は一旦落胆しかけたものの、チェンジせず先払ひまでしこそすれ、以降を端折り遂にかとときめかせられかけた、鳥羽美子の濡れ場が拝めはしなかつた点が最大の欠いた竜の睛。長谷川の―元―勤務先「黒川建設」から長谷川家に電話をかけ、当人はいひだせずにゐた失業を唯に発覚させる、だから声しか聞かせない中村はほぼほぼの自信を以て樹かず。その旨唯が長谷川に詰め寄る件に際しては、中村の名前が中本に変つてゐたりする不安定さが、変なところで妥協を知らないイズイズム。長谷川を放逐した唯は、最早声すら聞かせない電話の向かうの友人・キョーコに勧められか唆され、選りにも選つてキャンディでホテトル嬢に。それは余程世間が狭いのか、キャンディが独占的な大手なのか。太田始は冬美の源氏名・リカをチェンジする形での、唯の劇中最初の客、チュッパチャプスが偏執性を表するトレードマーク。久須美欽一は唯だけでなくリカも呼んでの、豪遊に興じる御仁。久須美欽一の、御仁感。最終的に、あるいは主体的に何某か展開の推移に関るでなく、概ね単なる純然たる巴戦要員。
 林田義行脚本にとりあへず驚いた、小川和久1994年第七作。慌てて当たつたjmdbによると、少なくとも1992年から1996年の間に四本ある模様、今作は二本目。後ろ三本が何れも小川和久であるのも兎も角、記録にある初陣がしかも新東宝の佐藤寿保―1992年第四作「制服ONANIE 処女の下着」(主演:浅野桃里)―といふのは何気に衝撃的、何が“しかも”なのか。望んだところで詮ないのは百億も承知の上で、存在を知つたが最後激越に観るか見たくなる、未練しか残らない無間地獄。
 長谷川が冬美に逃げ込んだとか何とか、二人が交す徒にアンニュイな会話周りには小賢しい才気が小走りしつつ、基本線としては久須りんを介して唯とも出会つた冬美が、長谷川の手荷物から二人の間柄を察知、元鞘に戻す御膳立ての手筈を整へるアーバン浪花節。冬美が長谷川とは普通に待ち合はせればいいハチ公前に、唯に対しては再び三人プレイのタッグを組むと称して呼び出すのは、久須りんの存在を紙一重で一幕限りから救出してみせる地味な妙手。結局結婚の破談になつた望も、別に気落ちするでなく出張風俗に転職してゐたりする、世間が狭いなり工夫を欠いたといつた以前の、女優部全員ホテトル嬢だなどと殆ど歪んだ世界観はこの際―どの際なんだ―等閑視すると、何処からでもビリング頭を狙へる加へて小川組に手慣れた三本柱の濡れ場を、何れも質量とも十全に披露する安心して見てゐられる裸映画。長谷川の望との不倫と冬美には求婚、一方唯も唯で歴然とした売春。絶大な火種は双方心に架けた棚に蔵入れ、締めの夫婦生活を堂々と完遂した上で、冬美のポケベルに新たなる招聘が着弾。颯爽と出撃する歩道橋から並木道に引くラストは、一応か力技で爽やかにピリオドを打つ。そんな、ツッコミ処の起爆装置が地表のそこかしこに露出してゐる中でも、一箇所素面で特筆しておきたいのは、長谷川が最初に冬美と寝たのが望と使つてゐたのと同じホテルだといふので、事の最中に望を想起してしまつた長谷川が一旦中折れする件。ハモニカを吹く口が、怪訝な面持ちで止まるシークエンスはそれはそれでそれなりに斬新、裸映画的にはなほさら正方向に煌めく。
 備忘録< “それだけでない”こゝろは、望は黒川とも関係を持つてゐた


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ピンク映画の感想のインデックスです。
当該タイトルを踏んで頂ければ、別ウインドウで表示されます。

深町章
痴漢各駅停車」(昭和53/旧題:『痴漢各駅停車 おつさん何するんや』/稲尾実名義)
痴漢最終電車」(昭和53/稲尾実名義)
夜這ひ どてさがし」(昭和54/稲尾実名義/買取系ロマンポルノ)
痴漢本番生録旅行」(昭和58/稲尾実名義)
好奇心レイプ」(昭和59/稲尾実名義)
痴漢電車 制服がいつぱい」(昭和61/旧題:『痴漢電車 終点までいかせて』)
痴漢電車 感度は良好」(昭和61)
痴漢電車 相互連結」(昭和61)
痴漢電車 指で点検」(昭和62)
赤い暴行」(昭和62)
痴漢電車 グッショリ濡らして」(昭和63)
新・未亡人下宿 裏も表もあいてます」(昭和63)
痴漢電車 みだらな指先」(昭和63)
満員通勤電車 集団痴漢」(昭和63)
痴漢電車 後ろからも愛して」(1989)
《秘》バイブ責め 糸を引く恥悦」(1989/旧題:『名器ひとすじ』)
痴漢電車 百発百中」(1989)
痴漢電車 車内口撃」(1989)
特写!!13人のONANIE」(1990)
欲しがる女5人 昂奮」(1990)
痴漢電車 パンティの穴」(1990)
ワイセツ隠し撮り 野外露出」(1990)
激撮!15人ONANIE」(1990)
未亡人いんらんONANIE」(1990)
ザ・欲望産業 思ひつきり出して」(1990)
受験ママ 禁断の関係」(1991/旧題:『いんらん家族 義母の寝室』)
ザ・夫婦交換 欲しがる妻たち」(1991)
痴漢電車制服篇 相互愛撫」(1991)
ハイミスOL 艶やかな媚態」(1991/旧題:『ハイミス本番 艶やかな媚態』)
個人レッスン 触つてあげる」(1991)
どすけべサラリーマン 開花篇」(1991/旧題:『人妻VS風俗ギャル ザ・性感帯』)
いんらん家族 姉さんの下着」(1991)
痴漢電車 素肌にタッチ」(1991)
人妻13人乱交パーティー」(1992/旧題:『人妻13人いんらん比べ』)
人妻エロ風俗 そそる痴態」(1992/旧題:『性感《秘》マッサージ 人妻愛撫』)
性風俗ドキュメント ザ・穴場」(1992)
3人の痴女 電車の中で」(1992/旧題:『痴漢電車 熟女の太股』
日本発情列島 ONANIE百態」(1992)
いんらん家族 花嫁は発情期」(1992)
おいしい女五人 やり比べ」(1992/旧題:『悶える女五人 好き比べ』)
痴漢電車 巨乳がいつぱい」(1992)
本番不倫 七人の人妻」(1992)
人妻不倫・不倫・不倫」(1993)
いんらん巨乳母娘」(1993)
ワイセツ隠し撮り 夫婦の寝室」(1993)
ニッポンの猥褻 好色一代記」(1993/旧題:『ニッポンの猥褻』)
覗いてみたい夫婦の寝室」(1993/旧題:『いんらん家族 若妻・絶倫・熟女』)
好色ドクター 不倫のすすめ」(1993/旧題:『人妻不倫 濡れ濡れ』)
痴漢電車 エッチな下半身」(1993)
人妻本番 昼下りの不倫」(1993)
最新!!性風俗ドキュメント」(1994)
痴漢電車OL篇 車内恋愛」(1994)
発情カップル 《秘》盗撮現場」(1994)
熟女7人 淫乱天国」(1994/旧題:『七人の熟女 淫乱』)
超いんらん家族 性欲全開」(1994)
痴漢電車 いたづら現行犯」(1994)
熟女6人 しびれる股間」(1994/旧題:『妻たちの昼下り 集団不倫』)
痴漢電車 人妻の肌ざはり」(1995)
悶絶スワップ すけべまみれ」(1995/旧題:『ぐしよ濡れスワップ 《生》相互鑑賞』)
おしやぶり天国 汚れた唇」(1995/旧題:『人妻・OL・未亡人 新・性愛実話』)
三十路妻の不倫」(1995)
痴漢電車 夫婦で痴漢」(1995)
見てはいけない母の痴態」(1996/旧題:『青い性体験 淫らに教へて』)
やらせるナース 在宅濡れ治療」(1996/旧題:『どすけべ付き添ひ婦 さはつていいのョ!』)
すけべ母娘 どつちも好きもの」(1996/旧題:『ドすけべ三昧 母娘喰ひ』)
淫獣捜査 夫婦暴行魔を追へ!」(1996/旧題:『夫婦暴行魔 牝肉レイプ』)
未亡人下宿 和服でハメ狂ひ」(1997/旧題:『未亡人下宿 熱いあへぎ』)
すけべ先生 淫らな授業」(1997)
ねつとり妻 おねだり妻」(1997)
官能未亡人 うごめく舌先」(1997)
熟女淫行マニア」(1997/旧題:『変態熟女 裏わざ表わざ』)
変態本番 炎の女体鑑定人」(1997)
エロ女房VSエロおやじ」(1997/旧題:『好色エロ女房』)
猟色未亡人 着物のまゝで」(1997/旧題:『いんらん家族 好色不倫未亡人』)
痴漢覗き魔 和服妻いぢり泣き」(1998)
不倫女将 濡れた失楽園」(1998/旧題:『いんらん旅館 濡れ濡れ若女将』)
やればスッキリ生尻娘」(1998/旧題:『生尻娘のあへぎ汁』)
車内プレイ ノーパン」(1998/旧題:『ノーパン痴漢電車 まる出し!!』)
熟女と不倫 すがりつく肉体」(1998/旧題:『未亡人の下半身 濡れつぱなし』)
好色長襦袢 若妻の悶え」(1998)
隣の女房 濡れた白い太股」(1998)
未亡人旅館 したがる若女将」(1999)
とろける新妻 絶倫義父の下半身」(1999)
鍵穴 和服妻飼育覗き」(1999)
OL金曜日の情事」(2000)
質屋の若女将 名器貸し」(2000)
家政婦のカラダ 押し倒したい!」(2000/旧題:『痴漢家政婦 すけべなエプロン』)
淫ら姉妹 生肌いぢり」(2000)
温泉仲居妻 やらせつぱなし」(2000/旧題:『いんらん旅館 女将の濡れ姿』)
女将のくびれ腰 濡れてまさぐる」(2001/旧題:『未亡人旅館2 女将は寝上手』)
母と娘 よがり比べ」(2001/旧題:『いんらん母娘 ~ナマで愛して~』)
発情おねだり 夜ごとの快楽」(2001/旧題:『いんらんアパート 毎晩いかせて!』)
絶頂くらべ 人妻の味」(2001/旧題:『誘ひ妻 不倫でお仕置き』)
濡れた愛人 グンと突きあげて」(2001/旧題:『愛人物語 くはへてあげる』)
女将と仲居 あたゝかい股間」(2001/旧題:『未亡人旅館3 女将の濡れたしげみ』)
オフィスラブ すけべなOL」(2002/旧題:『痴漢レイプ魔 淫らな訪問者』)
悶える熟女 夫も知らないみだれ方」(2002/旧題:『不倫妻 ねつとり乱れる』)
和服妻と愛人2人」(2002/旧題:『作家と妻とその愛人』)
激入 主人よりずつといゝ」(2002/旧題:『赤い長襦袢 人妻乱れ床』)
ハマッた人妻 絶頂」(2002/旧題:『人妻淫交』)
淫湯 ぬめり股」(2003/旧題:『わいせつ温泉宿 濡れる若女将』)
小説家の情事 不貞の快楽」(2003)
人妻痴態さらし もつと見て」(2003/旧題:『天井裏の痴漢 淫獣覗き魔』)
未亡人女将 真夜中の喘ぎ」(2003/旧題:『いんらん肉布団 女将の濡れ具合』)
いんらん家族計画 発情母娘」(2003)
痴漢股ぐらのぞき」(2003)
不倫旅行 一晩に三人と」(2004/旧題:『小説家の情事2 不倫旅行』)
エロ探偵 名器さがし」(2004/旧題:『痴漢探偵 ワレメのTRICK』)
人妻と大学生 密会アパート」(2004/旧題:『人妻・OL・美少女系 悶絶アパート』)
色つぽい義母 濡れつぱなし」(2004/旧題:『義母と巨乳 奥までハメて!』)
欲望温泉 そろつて好きもの」(2004)
下半身警備 あの名器を守れ」(2004/旧題:『桃色ガードマン カラダ張ります!』)
新・鍵穴 絡みあふ舌と舌」(2005)
セックス詐欺の女 濡れてよがる」(2005)
変態家族 新妻淫乱責め」(2005)
人妻 あふれる蜜ツボ」(2005)
セクシー剣法 一本ぶちこむ」(2005)
淫絶!人妻をやる」(2006)
熟母・娘 乱交」(2006)
淫乱後家ごろし」(2006)
若妻 しげみの奥まで」(2007)
欲しがる和服妻 くはへこむ」(2007)
物凄い絶頂 淫辱」(2007)
やりたがる女4人」(2007)
濡れ続けた女 吸ひつく下半身」(2008)
色情セレブ妻 秘められた欲望」(2008)
淫乱ひだのおく」(2009)
よがり妻」(2009)
淫行 見てはいけない妻の痴態」(2010)


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 「淫獣捜査 夫婦暴行魔を追へ!」(1996『夫婦暴行魔 牝肉レイプ』の2019年旧作改題版/製作・配給:新東宝映画/監督:深町章/脚本:岡輝男/企画:中田新太郎/撮影:稲吉雅志/照明:伊和手健/編集:酒井正次/録音:シネ・キャビン/現像:東映化学/協力:獅子プロ/出演:葉月螢・田中真琴・森下ゆうき・的場貴徳・熊谷孝文・小川真実)。jmdbには榎本敏郎とある助監督が、本篇クレジットでは抜けてゐる。それと矢張りクレジットからは等閑視されつつ、スチールは確実に津田一郎。
 土ワイな車列と、それを呆然と見やる葉月螢の横顔。道路にダイブせんとする、パジャマに足元もスリッパ履きの葉月螢を熊谷孝文がすんでで制止するのが、病院の屋上辺りかと思ひきや、よもや歩道橋といふ予想外のロケーション。の火にガソリンを注ぎ、新人女検察官の優子(葉月)が、大学の後輩(熊谷)とそんな突拍子もない形で再会しただなどとある意味画期的なシークエンスにクレジットと、限りなく確信に近い不安とが起動する。熊谷クン(仮名)に自宅まで担ぎ戻された、優子は茶色い酒を飲み始める。「アタシね、男に捨てられたの」、大雑把か大概な第一声で語り始めた優子と、熊谷の会話は畢竟噛み合はず。矢鱈な勢ひで杯を呷る優子に、熊谷が半ば匙を投げてペラ紙一枚のタイトル・イン。もう半分は、俺が投げよう。
 徹頭徹尾優子の会話中にしか登場しない優秀な上司と、優子は不倫する。優子の検察官としての初陣は、連続強姦事件。担当を優子に命じた、優秀な上司改め“彼”に認められたいと優子は燃えるものの、一人目の被害者・渡辺静香(田中真琴/ex.田中真琴で西藤尚)はモデルの仕事で人気雑誌と専属が決まつたゆゑ。一ヶ月後二人目の被害者である町田明代(森下)も交際相手から求婚されたため、それぞれ告訴取消。公訴に持ち込めず、優子は梯子を外される。さうは、いふけれど。薬物で水のないプールして連れ去つた上で、津田スタに数日間監禁する。静香と明代で各々が元ゐた場所しか違はない犯行の状況を窺ふに、刑法第225条(営利目的等略取及び誘拐)は同177条(強制性交等/ex.強姦)同様、一昨々年の刑法改正までは親告罪であつたにせよ、第220条(逮捕及び監禁)に該当してゐる時点で、非親告罪のセンも残らなくはない。
 配役残り、ダーリン石川(ex.石川雄也/a.k.a.石川ゆうや)と澤村清隆を足して二で割つた感じの、活動の痕跡が今作以外に見当たらない謎の俳優部・的場貴徳が、件のレイプマン・三枝ゲンタ。三年前まで精神科に入院してゐた、優秀なプログラマー。小川真実はその際担当看護婦であつた、目下三枝の妻・キリコ。諦めきれない優子が独自捜査を進める過程、別宅設定の津田スタに聞き込んだ際の、耳の遠い住人は津田一郎。この、玄関口で優子に応対するツダイチを背中から抜いた画を観てゐて発見が一点。かつて、深町章三十一作後の未亡人旅館第三作に新田栄が見切れてゐるやうな気がして首を捻つてゐたのが、あれは、案外背格好の似た津田一郎であつたのだとこの期に思ひ至つた。尤も、あるいは要は。勝手に見誤つたものを、ゼロに復旧しただけのマッチポンプではある。
 小屋オンリーで辿り着いた、最強の番組占拠率を誇る“無冠の帝王”新田栄。以降ex.DMM戦も絡めた、浜野佐知渡邊元嗣。深町章1996年第四作で、四人目の感想百本となるフォース・ハンドレッド。ex.DMM戦で百本を通過する、半ドレッド戦は結局回避した格好。とかいふのは、当該映画の中身とは一欠片の関りもない、純然たる私事にして些事に過ぎない。
 裸映画的にはとりあへず安定、どころか相当に充実する、ビリング頭をさて措けば。前半戦を支配する静香と明代に対する牝肉レイプは、津田スタ和室を記憶にないほど暗く歪める、ハードな描写が大いに下賤な琴線を激弾きする。些か面相はオッカナイ系ではあれ、森下ゆうきのパンチの効いた肢体は、卓袱台を引つ繰り返しての変型大の字拘束に激越に映える。疲弊した隙を突かれた優子も遂に囚はれ、突入する後半戦。優子に関しては手短に通り過ぎながらも、小川真実のこちらも見た覚えのないくらゐたをやかなオッパイを、潤沢に尺も費やし丹念に堪能させる。問題が、そこからいよいよ舞台を劇中現在時制の優子宅に戻しての、広げた風呂敷の畳み処。優子が完全にブッ壊れるのは、ある意味葉月螢にとつて十八番に近いものもあつたにせよ、映画ごと命運を共にデストロイドされてしまふんだな、これが。ガッバガバにダダッ広い行間をマキシマムな想像力で補ふと、三枝夫婦から凌辱された結果―キリコは華麗にペニパン装着―“彼”の子供を流産した優子が、何故か部屋の中に転がつてゐた金属バットで二人を撲殺。最終的には“彼”が事態を収束、心神を喪失した優子は責任能力を問はれなかつた系。と、いふか。そもそも“彼”の存在―なり“彼”との関係―自体甚だ怪しいサスペンスを通り越したサイコ・スリラーを、観客が諒解可能な状態で解決か着地させる営みを一切拒否。ケラケラと優子が狂ふばかりで、ちつともエロくない締めの濡れ場―締まつてない―をファンファンファンのサイレン音で締め括る。だから括れてゐない、六十分にも三分強余した強制終了。さんざトッ散らかしたまゝ放り投げるラストが、一見のんべんだらりとしかしてゐない始終を、実は周到に外堀を埋めての狙ひ澄ました一オチで、鮮やかに幕を引く。最後まで観ないと判らない終劇の魔術師・深町章にしてはらしからぬ、最後まで観てもサッパリ判らない一作。反面、もしくは一方。そこだけ切り取るつもりで掻い摘めばらしい切羽詰まりぶりを振り抜くのが、文脈とか最早どうでもいい優子の「“彼”がアタシを捨てるのよ、捨てたのよ!」のシャウト。葉月螢が持ち前の突破力で、一撃必殺を振り絞る。


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 「セミドキュメント スケバン用心棒」(昭和49/製作:プリマ企画株式会社/監督:代々木忠/脚本:林崎甚/製作:藤村政治/企画:渡辺忠/構成:佐々木忠/撮影:伊東英男/照明:近藤兼太郎/編集:中島照雄/音楽:多摩住人/助監督:城英夫/効果:秋山サウンド・プロ/小道具:高津映画/美術:日本芸能/記録:石井とも子/監督助手:安部峯昭/製作主任:大西良夫/現像所:東洋現像所/録音所:大久保スタジオ/出演:五十嵐のり子・畑中茂子・?・織田政代・立花可憐・江口令子・?・山岸清子・伊東真樹・西村和子・時田邦男・岡田あや子・?・?・橋本加代子・村田典子・山崎由美・浦??道・鈴木茂・沢村隆広・佐藤竜之助・?・阿佐ヶ谷グループ・城北チョンバックグループ・関東学生同盟)。企画の渡辺忠と構成の佐々木忠は代々木忠の変名で、ポスターでは脚本が林崎甚と代々木忠の共同になつてゐる。林崎甚自体、如何にも変名臭さは否めない。兎も角改めてで基本的な点を押さへておくと、この頃本隊作とも本クレでスルーする理由は知らないが、日活配給の買取系ロマポである。
 さあて兎にも角にもな最大の難問が、頭のキャストと尻のスタッフで割る、俳優部のクレジット、スタクレは普通に見られる。殆ど正方形の凄惨なトリミングで既に致命傷の正しく火に油を注ぎ、白トビ―あるいは埋没―と謎略字とでボッロボロに穴だらけ。挙句プレスからでも抜いて来たのか、徒に詳細なjmdb―とそれに引き摺られたnfaj―が霞をインビジブルな濃霧に変へる。そもそも、ポスターには名前の載る三重街竜が、あれだけ特徴的な面相の御仁が何処に出て来たのかサッパリ判らない―jmdbには客Aとある―といふか、出てゐない気しかしない。返す刀でnfajが原則所蔵フィルム画面の翻刻を謳ひながら、今回スタッフに関してあちこち嘘も見当たる。真面目でなくても構はないから、正確に仕事して欲しい。
 気を取り直して、初めて見るプリマロゴ。踏切開巻、電車が通過し遮断機が上がるのを律儀に待ち、スケ番グループ―男衆もゐるのがよく判らん―「関東阿佐ヶ谷会」の実子分・可憐(立花)が猛ダッシュ。アジトに飛び込んだ可憐は、一人その場にゐた豆千代(伊東)とショバを荒らす敵対グループ「総武連合会」をシメに出撃。したものの、予想外の多勢に無勢に屈し、総武会の強キャラ・斬り込みお竜(岡田)に豆千代は首から上を無造作に強打、死んでしまはないかと心配になる勢ひの半殺し。更に酷い可憐は割つた瓶でボックス―マンコの隠語、畳語かよ―を破壊され、エレベーターから抜いた盛大な俯瞰にタイトル・イン。タイトルさへ、当然左右がバッシバシ切られる、もう何だこれ。
 報復に燃える総番・マンネンの茂子(畑中)以下阿佐ヶ谷会と、総武会が対峙する場に、茂子とダチのオスミ(五十嵐)が介入、阿佐ヶ谷会は総武会総番のコロシ屋信子(星野アリミ)と男衆一人を拉致する。帰還した茂子がオスミをオケイ(髙島恵子)と同格の番格として阿佐ヶ谷会に迎へる一方、矢張りボックスを破壊された信子は退いたらしく、総番決定選挙の結果お竜が総武会総番を継ぐ。
 特定し得る配役は、劇中呼称される阿佐ヶ谷会実子分のみ。オスミに対する茂子の紹介順で、オケイに続きトランジスタ・グラマーの順子(土方順子/通り名がをんな政)。可憐と豆千代の間にフー子(大谷リナ)を挟み、豆千代以降はパイ子(織田政代/正式の通り名はアップルパイ子)に清子(山岸清子/通り名がお萬)。あと多分西川三枝が、総武会番格の早苗。
 セミドキュメントとか称して、「仁義なき戦ひ」もしくは「TOKYO TRIBE」よろしく阿佐ヶ谷会と総武会が血で血を洗ふ、純ッ然たる劇映画にほかならない代々木忠昭和49年第一作。清春似のクールな美貌と、ガチのマジでモデル体型の五十嵐のり子は足のよく上がるハイキックも映えつつ、お竜の兄貴分・死神セイジ(不明)に着衣のまゝ犯される程度で、この人実は脱がない。要は実子分の美人局と売春か、ポップなカツアゲ。連署血判状まで交す割に、阿佐ヶ谷会のシノギも正直ショボい。集団アクションとなると代々木忠は途端に何処を誰を撮つてゐればいゝのか判らなくなり、かといつて、濡れ場をこれでもかと見せきる訳でもない以前に、そもそもビリング頭の入浴なり着替へシーンすらない。要はズベ公アクションと成人指定の裸映画、何れも中途半端な綺麗に一兎も得損じた一作。渾身のポリアニズムで強ひて見所を掘り当てるならば、実子分をオッサン客の競りにかける、集金イベントたる関東阿佐ヶ谷会結成7周年記念祝賀パーティー。銘々買はれたそれなりの大乱交―も大乱交で、代々木忠は何処を撮ればいゝのか判らなくなる―の最中、拷問で可憐の口を割らせたお竜の通報により、派手に突入しもせず、何時の間にか官憲が壁際に整列してゐたりする間抜けなカットには、不意を突かれた笑ひが出た。


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 「平成風俗史 あの時もキミはエロかつた」(2019/制作:Blue Forest Film/提供:オーピー映画/監督:竹洞哲也/脚本:当方ボーカル/撮影監督:創優和/録音:大塚学/編集:三田たけし/音楽:與語一平/整音:吉方淳二/助監督:江尻大/監督助手:谷口恒平・山田理穂/撮影助手:赤羽一真・金碩柱/スチール:阿部真也/仕上げ:東映ラボ・テック/出演:友田彩也香・卯水咲流・なつめ愛莉・東凛・辰巳ゆい・若月まりあ・細川佳央・櫻井拓也・折笠慎也・可児正光・吉田覚丸・ケイチャン《声》)。出演者中、吉田覚丸とケイチャンは本篇クレジットのみ。
 タイトル開巻、早朝に昭和天皇が崩御した、昭和64年(1989)一月七日。出版社営業の鴨田龍平(細川)が、同じアパートの202号室に住むフリーターの戸沢正太(櫻井)、203号室の制服OL・富永五月(なつめ)と、五月にベッタベタの先輩・田野倉綾(卯水)と挨拶は交さない程度に交錯して201号室に帰宅。多分同業他社で編集職の妻・千景(友田)も残業で、昭和最後の夕食がマクドナルドとなつた点には不平を垂れながらも、激アツの夫婦生活をキメる。ここで釈然としないのが、翌日―因みに八日は日曜日―も平成に突入する瞬間のフィニッシュ目指して、主に龍平主導で昼間から励む点。七日の昼には小渕恵三の平成発表会見が行はれ、平成は八日の午前零時から始まつたと記憶してゐる。それはさて措き、2018年第三作「人情フェロモン もち肌わしづかみ」(脚本:当方ボーカル)ぶりに観た友田彩也香が、何かオッパイ大きくなつた?直截といふか、脊髄で折り返すにもほどがある。ホステスみしか感じさせないレス・ザン・所帯―あるいは人妻―スメルもさて措き、ヤバいドライブで濡れ場がエロい。
 フェイバリットのAV女優・tokiko(東)にワンマンショーの捗る戸沢は、ある日買ひ置きを切らし緊急避難したポケットティッシュから、テレクラでの筆卸を決意。さうはいへ空振り倒して待ち惚けを喰らはされ続ける姿を、綾にはテレクラ地蔵と揶揄される。今回一切ディスプレイから出て来ないtokikoに関してVHSのパケまでは工面するものの、戸沢家のテレビが、ブラウン管ではない。東凛は現状旦々舎ピンク最終作となる山﨑邦紀2017年第二作「痴漢電車 変態の夢と現実」ぶりで、山﨑組から初の外征。
 おメガネがエモい五月は、何故か自分に粘着する対照的にブイッブイでイッケイケの綾に手を焼きつつ、何時しか綾エフェクトで身の丈を超えた買物中毒に嵌り、端的なカード地獄に堕ちる。
 配役残り面相は完全に回避する吉田覚丸―城定秀夫大蔵第四作「世界で一番美しいメス豚ちやん」(鈴木愛と共同脚本/主演:百合華)の養豚場店長―は、家計を破綻させ風俗に身を落とした五月の、指だけで太つてゐると知れる客。最初EJDにしては、幾ら何でも肥えすぎに見えた。最終的に五月は男の影響で転職した、会社の金を横領しお縄を頂戴する。当方ボーカルの本名である小松公典が、買つたばかりでまだ着てゐない、赤いコートを被つた五月を連行する制服警察官。折笠慎也は、戸沢のバイト後輩・高田信雄。ほかの奴等とは違ひこいつは夢を掴む、と戸沢に予感させるボクサー志望。2017年第三作「疑心乱交 闇夜にうごめく雌尻」(脚本:当方ボーカル)以来、ピンク初陣は2014年と歴が長い割に本数的には五本目の辰巳ゆいは、高田の彼女・大江なな。こちらも2017年の第五作「まぶしい情愛 抜かないで…」(脚本:当方ボーカル・深澤浩子/主演:優梨まいな)以来となる若月まりあは、平成8年に生まれた千景と龍平の娘・朋子、木に竹しか接がないアイドルになりたガール、可児正光は朋子の彼氏・山内旭。最後に飛び込んで来るケイチャン(ex.けーすけ)は、藪から棒か素頓狂な「平成が終つてまふでー」シャウト担当。
 一ヶ月後に続篇「風俗図鑑 ヤレない男たち」が控へる、竹洞哲也2019年第三作。二本分ゆゑの女優部倍増六人態勢といふのは、実に判り易い。
 ともに単身のプーとOLまでは兎も角、パッと見た感じ変らない間取りに共稼ぎ夫婦が暮らしてゐる点に関してはストレンジネスも否めなくはない、三部屋並んだ三世帯四人を軸に、得意とする―つもりの―モノローグ劇で平成の一時代を総括しようと試みた意欲作。尤も、試みるのは勝手だが、竹洞哲也もしくは小松公典の資質を問ふ以前に、デジタル化によつて十分延びたとはいへども、広げた風呂敷の大きさに比して決して潤沢ではない尺がただでさへ女の裸で削られる―当然、大いに削つて貰はないと困る―中、率直にいつてこの国が少なくとも政治的と経済的には三十年をドブに捨てた平成の三十年を、小道具も十全に揃へられるでなく、表層的な意匠の面に於いてさへ満足に捉へられてゐるとは凡そ認めるに遠い。戸沢宅には初代ファミコンがある癖に、どうして鴨田家に初代プレステがないのか。この辺りの戦ひ方は、荒木太郎の方がまだ秀でてゐたのではなからうかなんて、死んだ子の齢を数へてもみたり。閑話休題、一時代どころか、二本撮りで一本当り増えた頭数がある意味綺麗な諸刃の剣、個々人一人一人の人生にすら碌に手の回らない体たらく。何となく年をとる龍平と、気がつくとフェード・アウトしてゐる戸沢に、一直線に―あるいは工夫を欠き―転落する五月は、それでもマシな内。千景は何時の間にか泉下に沈み、高田とななは正直出て来―て申し訳程度の絡みを見せ―るのみ。それ自体取つてつけた如きものであつたとて、一応折角念願叶つた朋子が、ケロッと山内と結婚して子供まで産んでゐたりするのにはグルグル何周かして吃驚した。結末でこそないが、衝撃の着地点。個々のシークエンス単位では満更でもない反面、全体的なまとまりとしては木端微塵寸前の劇映画に対し、裸映画的には戸沢の他愛ないイマジン含め前半戦を概ね支配する、友田彩也香が貫禄をも感じさせる一騎当千の大活躍。逆に、ビリング二位以下の五人は、なつめ愛莉がギリまだしもにせよ何れも形ばかりの裸見せに止(とど)まる。とこ、ろが。よくなくも悪くも何時も通り燻りかけた始終にあつて、一撃必殺の鮮烈かつ激越な印象を叩き込むのが、誰あらうピンク六戦目の卯水咲流。並んで立つとバービー体型であるなつめ愛莉をも完膚なきまでに爆殺する、デルモばりの―実際モデル出身ではある―情け容赦ない超絶スタイルと、艶と張りを兼ね備へた見事な口跡。未だ千景存命中である幾許かの疑問は強ひて呑み込むと、龍平と偶さか寝た事後。こんな筈ではなかつた自身の来し方を綾が軽くやさぐれて見やるカットの、何ともいへない正しく筆舌に尽くし難い眼差しと圧倒的な強度とには、マッタリしかけた心持ちが一息にレッドゾーンに持つて行かれた。楽な姿勢にしてゐた、背筋がガチのマジで伸びた。卯水咲流の主戦場たる?AVなりVシネその他方面には手が回らないが、旦々舎過去四作―と新橋―を易々と凌駕する一世一代級の名芝居。そしてそれを引き出し得た、竹洞哲也のディレクションに潔く中折れを脱ぐほかない、一点突破で大いに元の取れる一作。暴力的な手マンを仕出かす戸沢に激昂した五月の、「エーブイの見過ぎなんだよ、バーカ!」を、御丁寧に二度繰り返すのも可笑しかつた。


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 「エッチな18才 はちきれちやふ!」(1998/製作・配給:大蔵映画株式会社/監督:渡邊元嗣/脚本:波路遥/撮影:清水正二/照明:伊和手健/編集:酒井正次/助監督:佐藤吏/監督助手:湘南太郎/撮影助手:佐久間栄一/照明助手:小田求/スチール:津田一郎/録音:シネ・キャビン/現像:東映化学/出演:相沢知美・田口あゆみ・林由美香・樹かず・久保新二)。
 麗しの王冠開巻、街の遠景に天使の羽が舞ひ、キラキラリン音効が鳴る。本を読む背中挿んで、少女の足下に羽が落ちる。ルーズソックスとガングロの舞(相沢)が空を見上げると、今度はニュータイプ的な音効に閃光まで走らせた上、鐘の音によくいへばこの頃御馴染の、レス・ザン・バジェットなペラ紙一枚のタイトル・イン。正直この時点で既に、悪い予感しかしない。
 城山ゆき(田口)が日傘を差し楚々と歩く後ろを、処女作一発屋の小説家・河原畑淳之介(久保)が尾ける。またこの河原畑先生がゾンビ紙一重に隈がどす黒く、久保チン今回コンディション不良なんかいなとも思ひかけたが、体の動きなり口跡から窺ふ分には、別にさういふ風でもない模様。藪蛇な造形にも、早速あるいは順調に躓く。見るから不審な河原畑に舞が声をかけると、動揺した河原畑が橋の欄干であれよあれよバタついたのを、今度は舞がスーサイドするものかと勘違ひする。クリシェ迸るグダグダ通り越してグッダグダなシークエンスの末、制止したつもりの舞が橋から入水する。不安ないし猜疑が、ハンドレッド戦もとうに通過した経験に基づく確信に変る。うん、ダメな時のナベにさうゐない。兎も角、近辺のロケーションで何となくピンと来る、当然勿論絶対自動的な勢ひの津田スタに運ばれた舞は、自称小学校時代の愛読書『やどなしキューピッド』の作者が河原畑と知るや、寡暮らしの河原畑家に押しかけ家政婦を決め込む。
 配役残り樹かずは、零細出版社「ほがらか出版」の河原畑担当者・大藪。林由美香は大藪の同僚兼、事実上の婚約者・桑野か鍬野万里。編集部にもう二人見切れる、男女は完全に不明。それと、河原畑の絵本周りでひろぽん画伯のイラストが登場するのだけれど、湘南太郎だとか如何にも変名臭いセカンド助監督は、もしかして広瀬寛巳の変名?仮にさうであつた場合、藪から棒に、何でまたさういふ勿体つけた真似をするのかは知らないが。小田求かもよといふ可能性もなくはないにせよ、探せばあちこち出て来よう、広瀬寛巳と小田求が併記されたクレジットで否定し得るものと看做す。そもそも、小田求も小田求でそこはかとない共有スメルは否み難い。今に始まつたことでもないが、最早際限のない、無間地獄の獣道。何処かに辿り着く辿り着けるつもりで、歩いてる訳ぢやないんだよ。
 渡邊元嗣1998年第一作にして、大蔵第二作。何某か重たいドラマを抱へてゐるらしき久保チンの家に、軽やかな相沢知美が薄らかに転がり込む。コンフィデンスに進化か後退した危惧は、残念ながらまんまと的中。締めの濡れ場を、よもやまさか残り尺五分まで温存した二番手に委ねるだなどと、アグレッシブな奇策は展開上必ずしも酌めなくはないものの、それもそれで、せめて完遂させて欲しい。結局河原畑先生が舞には手を出し損ねた結果、三番手が絡みの回数を稼ぐアンバランスも微妙でなく苦しい。尤もその点に関しては、よしんばその場限りであつたとて、画期的な機動性で幾多のピンクをビリング下位からも救つて来た、林由美香の真骨頂をこそ尊ぶべきであるのかも知れない。最たる致命傷が、『やどなしキューピッド』に喰ひついた舞は、ネグレクト気味の家庭環境を匂はせつつ、今はすつかりくたびれたかやさぐれた河原畑に投げる。“世の中には沢山の孤独な子供達のゐること”と、“楽しい物語がそんな子供達の心の隙間を埋めること”とを。一撃必殺、一発大逆転も可能なエモーションの種を蒔いたにも関らず、結局<舞の正体が天使>とかいふありがちが暴力性に突き抜けるオチは根本的にどうしたものか。天からの何者かの降臨を、ギャルが察するアバンと激しくちぐはぐな以前に、林由美香を差し措いて、天使に適役な人間がこの星の上にゐるであらうか。否、ゐまい。一言で片付けるほかない、チャチいナベシネマ。クロッカス―劇中では頑なにクロウカス―の色によつて変る花言葉を、過去を引つ繰り返す重大なモチーフに持ち出すのも、オッサン相手の量産型娯楽映画としては疑問も禁じ得ない。クロッカスに限らず、花言葉なんて知らんがな、吉行由実でもやらないぞ。


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 「若妻トライアングル ぎゆつとしめる」(2019/制作:VOID FILMS/提供:オーピー映画/脚本・監督:山内大輔/撮影監督:田宮健彦/録音:大塚学/編集:山内大輔/音楽・音効:project T&K・AKASAKA音効/特殊造形・メイク マトリョーシカ製作:土肥良成/ラインプロデューサー:江尻大/助監督:菊島稔章/ポスター:本田あきら/撮影助手:荒金聖哉・赤羽一真/仕上げ:東映ラボ・テック《株》/出演:きみと歩実・桜木優希音・真木今日子・泉正太郎・安藤ヒロキオ・森羅万象)。
 タイトル開巻、マトリョーシカの画に、三本柱と山内大輔のみとりあへずクレジット。普通に長く聴いてゐたい、テクノが心地よい。戸建の外観一拍挿んで、結婚四年の佐藤マリカ(きみと歩実/ex.きみの歩美)が仏頂面で料理。妊娠検査は、恐らく外れ。役所の観光課に勤める夫・那津男(泉)が出張帰りぽく帰宅、四本ローソクの立つた結婚記念日ケーキを囲むに及び、二人は漸く笑顔を取り戻す。そのまゝ熱くチューしたカット跨いで、騎乗位で轟然と夫婦生活の火蓋を切るジャスティス。外様作が続き、数週間ぶりに触れた全うなピンクに安堵する。些か暗くもあれ、大正義正常位を大完遂。但しマリカは那津男の早さと、二回戦を戦へない不甲斐なさとに含みを残す。中略、翌朝那津男を送り出した“豊島区高尾 3-29-3”となるとフェイク住所―高尾は八王子市―の佐藤家を、フェルトの中折れまで黒尽くめの安藤ヒロキオが笹蒲鉾を手土産に来訪。呼鈴の反応がないと、安ヒロはマトリョーシカのキーホルダーのついた鍵で玄関を平然と突破。ワンマンショー後で寝落ちてゐたマリカの前に、一年前仙台で再会を約した男・田中を名乗り現れる。田中の記憶が全くないマリカに対し、証拠の仙台で撮つた写真と称する田中の隣で微笑む女はマリカver.2の茉莉花(真木)で、佐藤家のリビングに最初から飾られてゐた旅行先の仙台にて田中に撮つて貰つたスナップの、那津男の隣で微笑む女も真木今日子に代つてゐた。
 配役残り、髪型と画角如何では井上真愉見似に映る知見を今回得た桜木優希音は、茉莉花と田中が佐藤家リビングでオッ始めたその頃、那津男がラブホで矢張り一年ぶりの逢瀬を交すまりか、この二人の経緯は不明。のち田中の訪問を受けた茉莉花から最スイッチする形で、マリカver.3。そして今や御馴染マリカールもといマリエールに飛び込んで来る、森羅万象はデウス・エクス・牧男、でなくてマリカが雇つた探偵の三沢。茶店で三沢が平然と煙草に火を点ける光景に、禁じ得ない隔世の感。はさて措き、イズショーは出て来ないマリエールに於ける二役は、桜木優希音と真木今日子がカウンター席でホットドッグに舌鼓を打つ二人連れ、安藤ヒロキオはマスター。マリカの左背中にもう一人見切れるのは、見切り損ねたが多分EJD、背格好が菊りんとは明確に違ふ。
 一言で事済ますならば、所謂“かういふのでいいんだよ”な山内大輔2019年第一作。公務員の夫と結婚し、一軒家に住む専業主婦。にしては今時贅沢な寂寥を抱へるヒロインを訪ねる謎の男と、そもそもトライアングルに安定しない若妻の人格。とかいふ趣向は、女の裸を三人分効率的に見せる方法論として以外には、この際どうでもいい。兎にも角にも度肝を抜かれたのが、磐石の濡れ場初戦を綺麗に振り抜いた翌朝。好物らしく、毎朝の朝食と思しきマリカお手製の、本当に美味しさうな魚肉ソーセージのホットドッグを頬張る那津男を、まりかは相変らずぼんやり見やる。いよいよ出ようとする那津男を引き留め行つてらつしやいのキスまでは兎も角、跪きスラックスのチャックを下したかと思ふと、転び出て来たのはよもやまさかそのまゝな魚肉ソーセージ。を、射精に至るまで吹くのは一旦白日夢で片付けた上で、出勤後に魚肉ソーセージをマリカ―とその朝をループする茉莉花も―が一物そのものにガチ造形。ブッシャブッシャ豪快に潮を噴くに至るまで改めて吹く、超絶怒涛の張尺―張形を用ゐた尺八―ならぬ魚ソ尺が圧巻。フルコンの煽情性がバクチクする魚ソ尺―正直語呂は悪い―さへ吹かないものの、ほかの二人よりお胸は控へめな反面、好みにもよらうが表情ないし雰囲気は一番エロい桜木優希音の絡みも、何れも遜色ないどころでない満足と完成度。常々当サイトが性懲りもなく垂れて来た、撮らうと思へば幾らでも撮れる腕があるのだから、ここいらで山内大輔は割り切るか覚悟を極めた裸映画を撮つてみせろよ。とかいふ意識の低い不平も、有無をいはさず捻じ伏せる超実戦的な一作。これよこれ、これこそ“かういふのでいいんだよ”。唯一の不満は、現し世と夜の夢の境界と、田中以前に、そもそも自分は誰なのか。茉莉花が背面騎乗の最中全てを失するスローモーション。悩ましく躍る爆乳の一歩手前で、ティルトダウンが立ち止まる正しく寸止めが、強ひて論ふ欠けた竜の睛(ひとみ)。牧男(仮名)が種を明かしたところでスカッと切り抜けないのは、それは最早望んでも仕方あるまい。山内大輔は、たとへば片岡修二ではない。丁寧な語り口に騙されかねないが、実は物語といふほどの物語も別に存在しない辺りも実に潔い。といふか三本柱が泉正太郎か安藤ヒロキオとセックスして、更にきみと歩実と桜木優希音は二次加工品であるのを方便に、ノー修正でチンコを咥へる。要はそれしかないシングルイシューな代物を、何処をどう編集すれば、あるいは何をどれだけ撮り足せば一般映画に仕立て上げられるのかといふのが、残される巨大か根本的な疑問。流石に今回ばかりは、タス版の円盤でも出るやうなら食指を伸ばしてみるかな。


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 「ドキュメント・ポルノ 痴漢《秘》レポート」(昭和48/製作:プリマ企画株式会社/監督:代々木忠/製作:藤村政治/企画:渡辺忠/構成:池田正一/撮影監督:笹野修司/撮影:稲田昌平/特撮班:山田基吉・上條正己/録音班:秋山グループ・大久保グループ/音楽:多摩住人/編集:中島照雄/記録:奥山深作/助監督:阿部峰昭/製作進行:大西良夫/製作助手:山下幹夫/インタビュアー:大辻司朗/ナレーター:西原徳)。企画の渡辺忠は、代々木忠の変名。製作の藤村政治とナレーターの西原徳が、ポスターには渡辺忠と都健二、割と自由。現像所のクレジットがないのは、本篇ママ。それとポスターにのみ、監修として若林孟。若林孟が実際に関つてゐたのか否かは、本篇を見る限りでは全く以て判らない。
 東京全体を軽い俯角で捉へたロングに、車が引切り無しに通り過ぎる幹線道路の画を繋げて、“異常に膨れ上がつた経済大国日本”と耳慣れない声のナレーション起動。今や涙目の遥か遠く彼方の大昔に霞む、飛躍的な高度経済成長を遂げた日本の裏側に隠された大きな歪み。の中に棲息する人々の、“本能といふ怪物に支配されたあまりにも人間的な行為の偽らざる記録”とかいふ社会派気取りの有体な方便で、諸々の痴漢行為を列挙する奮つた趣向を案外スマートに開陳する。さういふ塩梅で、それらしきロケーションを工面する手間なり袖をイズイスティックに端折つたのか、そこら辺の公園にて大辻司朗が結婚二年目ながら、未だ絶頂を知らぬゆゑカーセックス浮気に溺れる人妻にインタビュー。ところで今作封切りの二ヶ月後に、大辻司朗(ex.大辻伺郎)は自ら命を絶つてゐる。その折にはあの勝新太郎が死を悼むほどの俳優ないし人物であつたやうなのだが、正直今作に於ける大辻司朗はといふと、話を訊く対象者である一山幾らの俳優部よりも、インタビュアーの癖に軽く呂律が回つてゐなかつたりもする。それはこの期にはさて措き、暗くてよく見えないカーセックスの映像に、トクレーションで改めてコンセプトを踏まへて正面を向いたカメラにタイトル・イン。タイトルバックは、そこかしこの青姦に照明を直撃させる。
 jmdbには佐々木元の監督作として登録されてゐるのが、周辺に波及してもゐるらしい代々木忠昭和48年第一作。確かにためにもなる反面、穴も一杯開いてゐるのがjmdb。さいはひ現物にサブスクで容易かつ大量に当たれる時代につき、ひとつひとつ潰して行くほかない。
 例によつて配役には手も足も出せない中、アバンのカーセックス人妻は軽いイントロダクション程度に通り過ぎ、以降は七年といふ長いのか短いのか微妙なキャリアを誇る覗きの達人。二十四歳のキーパンチャー・風間ユミこと、覗きながらの自慰に狂ふ女。吃驚するほど二枚目のスケコマシに、達人のAさんが再び登場。男が入つた電話ボックスを急襲して、本番行為を仕掛けるダイナミックな痴女と続く。第一次達人氏篇では暗視撮影―が特撮班の仕事なのか―を敢行し、スケコマシがダンスホールで捕まへた女の体に手を這はせるシークエンスに際しては、やれば出来るぢやないかといふくらゐ、細かくカットも割る。余程濫造してゐたのか、五作後の「発情族を剥ぐ」よりは全然飽かせず見させる。飽きずに見てゐられるといふだけで、別に面白いとは特にも何も決していつてゐない。ある意味では趣深いのが、スケコマシが女と入つた同伴喫茶の、隣のボックス席で男に逃げられた黒髪ロングを何故か一旦フィーチャー。第二次達人氏篇と電話ボックス女篇を経て、一体あの女は何だつたのかと訝しむか忘れかけるタイミングを見計ふかのやうに、黒髪ロングが茶髪ショートに文字通り変貌してまさかの再臨。しかも、件のカノウヤスエの職業が表向きは按摩の体で、追銭で体も売る所謂パンマ。“我々は細心の注意と限界を遥かに超えた忍耐力で遂に彼女を捕らへた”とか、段々水スペ感覚の撮影隊が最終的にはヤスエが官憲に逮捕されるまでを追ふと、母親の死を機に飛騨高山から北海道空知郡上砂川町に移る云々と、要は貧困に負けた一人の少女が、売春婦に身を落とす経緯を切々とトレース。痴漢のドキュポルであつた筈なのに、何時の間にかパン女のありがちな転落物語に着地してみせる豪快な構成がケッ作でありつつ、更にそこで終らないんだな、これが。“少女は再び蘇つた”と明後日に晴れ晴れしく謳つてのけるヤスエの現況が、パンマでパクられ娑婆に出て来たかと思へば、今度は停車中のドライバーを相手とする矢張り所謂ジャリパン、棲息地しか変つてゐない。そんな人を喰つたヤスエの姿を、心なしか力を込めたトクレーションで「何かが狂つてるとしかいひやうのない現代」、「そこに生を受けた者はこの少女と同じやうに、誰しもが十字架を背負つてゐるといふことを忘れてはならない」だのと、大仰な風呂敷で畳んでのける心にもなさが、如何にも量産型娯楽映画的で清々しい。エンドマークの“完”がフレームの右袖から滑り込んで来て、予想に反し画面中央を華麗に突破、そのまゝ横断した左端で漸く停止するのも何となく斬新。


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