真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「横浜シャイアン 女の湿地帯」(昭和49/製作:多分プロダクション鷹/配給:ミリオンフィルム/脚本・監督:和泉聖治/撮影:原一男/照明:加藤広明/効果:秋山実/編集:竹村峻司/現像:ハイラボセンター/録音:ニューメグロスタジオ/出演:菅みどり・美鈴愛・並木のぶえ・野上正義・鶴丸正信・吉岡一郎・中台明)。助監督以下、情報量カッスカスのクレジットは本篇ママ。プロ鷹仕様だらうといふのが、多分の所以。
 何となく繋ぐ港湾風景、それは錨が、チンコのメタファのつもりなのか。南海、もとい難解な開巻ではある。弱い者には大物ぶる、小物のチンピラ・黒馬権兵衛(以後漢字は当寸法/野上正義)が、美鈴愛をぞんざいに引つ立てる。実際掏つてゐた十万円を、おパンティの中に隠してゐた美鈴愛に権兵衛が挿すまで。八分半の何気に長いアバンを経て、人馬の別が判然としない面?の周囲に、花札を配する。アニミズム風味漂ふ、謎イラストにタイトル・イン。手前に置いた透明な何某かに、手で書いたクレジットにピントを送る。手法にせよ手間にしても造作ないものながら、正体不明か闇雲な作為が、管でも巻くかの如く煙に巻く。
 配役残り、鶴丸正信は権兵衛の弟分・石黒千吉。この男の風体も口跡も何もかも心許なく、ガミさんとの2ショットが凡そ形を成し難いのが、今作にとつて最初のアキレス腱。吉岡一郎と並木のぶえは、傾いた出版社の起死回生かヤケクソで権兵衛に取材を試みる、『実話週報』誌編集長の村田四郎と、記者の早坂トリコ、フランクに男と女の仲。繁華街に立ちんぼのやうな風情で佇んでゐたところ、権兵衛・千吉コンビに拾はれる女が、実は一番台詞の少ないビリング頭。浮気亭主が、会社の金も使ひ込む。適宜ではないが随時火を噴く盛大な説明台詞で事済ます顛末はさて措き、さういふ人妻が、人待ち顔で何をしてゐたのかは不明。権兵衛が菅みどりを手篭めにしてゐる間、連れ込み「三番館」を離れた千吉にカツアゲられる男と、かつあげクンが連れて来るハンチングの刑事。名前が一人分足らない二人の、何れが中台明であるのかに未だ辿り着けない、何時か辿り着けるのか。もう一人肩越しにしか抜かれない、三番館の女従業員が見切れはする。
 jmdbに記載のないものの、円盤ジャケの映倫No.を鵜呑みにした場合、和泉聖治昭和49年第四作、通算第八作。ミリオンが勝手に公開題でデッち上げたにしては木に竹を接ぐにもほどがある、「シャイアン」(1964/米/監督:ジョン・フォード)のこゝろがサッパリ判らない。ちなみに劇中言及されるのは、同じジョンでもミリアスの「デリンジャー」(1973/米/主演:ウォーレン・オーツ)。ジョン括り、雑すぎんだろ。
 中台明は無視するとミニマムな頭数で進行する、百万円の争奪戦、美鈴愛も無関係。権兵衛の強奪と、村田発案の奪還作戦。共々逆の意味で見事に子供騙しの悪ふざけが、先に触れた最初のアキレス腱の火に油を注ぐ、二つ目の致命傷。一見裸映画的には従順ではあれ、往時としては標準的の範疇に納まり得たのか、番手すら希釈もしくは無効化しかねない、全員美の少ない女の美少女揃ひの女優部は直截に有難味を欠く。夜のオープン、俳優部に当てるのが精一杯の、射程の短い照明は画から貧相さを増幅させ、菅みどりを激しく突く権兵衛が、出し抜けに目を白黒させ昏倒をも思はせる。奇怪なカット尻は結局一切拾ひやしない、大概な藪から棒。要は、三番館のさりげなく小粋な屋号以外、一欠片たりとて面白くないのをゼロ番目の急所に。屁のやうな物語がこれで雲散霧消もせず、何となく一篇を貫くのが不思議な気さへ否めない一作。あるいはこんな代物、よく素材が残つてゐたと、稀有は確かに稀有な僥倖でも言祝ぐのが、寧ろ正解なのかも知れない、こんな代物扱ひかよ。


コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )


« 下ネタトリオ... むちむちネオ... »
 
コメント
 
コメントはありません。
コメントを投稿する
 
名前
タイトル
URL
コメント
コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。