真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「はめ堕ち淫行 猥褻なきづな」(2020/制作:VOID FILMS/提供:オーピー映画/脚本・監督:山内大輔/撮影監督:田宮健彦/録音:大塚学・柳田耕佑/編集:山内大輔/音楽・効果:project T&K・AKASAKA音効/助監督:江尻大/制作進行:泉知良/撮影助手:末吉真/特殊メイク:李華曦/特殊造形監修:土肥良成/森羅万象スタイリスト:大石幸平/ポスター:本田あきら/エキストラ協力:長谷川千紗・河合夕菜・有志エキストラの皆さん/撮影協力:喫茶 マリエール・ステージドア/仕上げ:東映ラボ・テック《株》/出演:佐倉絆・桜木優希音・並木塔子・森羅万象・石川雄也・可児正光・安藤ヒロキオ・須藤未悠・泉正太郎・井尻鯛)。
 タイトル開巻、騎乗位で乱れる佐倉絆、ではなく。下になつた森羅万象の頭頂部を真上が真横になる画角から抜いた画に、エンドとは可児正光と安藤ヒロキオの順番が入れ替る俳優部と、山内大輔だけを抜粋したクレジット。ex.OLの泡姫・ミユキ(佐倉)が想起する、プロのヒモを自認する三沢(森羅)との出会ひ。目下専ら御馴染の喫茶「マリエール」(新宿区歌舞伎町二丁目)、ミユキは三年付き合つた五歳年下の彼氏・サトシ(可児)から、悠香(須藤)に心を移したゆゑの別れを告げられる。本職は写真部の須藤未悠が山内大輔2017年第三作、にして復活後の大蔵怪談映画第六作「女いうれい 美乳の怨み」(主演:佐倉絆)と、小関裕次郎デビュー作「ツンデレ娘 奥手な初体験」(2019/脚本:井上淳一/主演:あべみかこ)に続いて地道に三戦目。泉正太郎が一人で店を回すマスターで、背中につきバストならぬバックショットしか見せないその他客は有志か。半ば呆れ果てたミユキはサトシの他愛ない抗弁には耳を貸さず、カウンター席で元人妻のこちらも泡姫・灯里(並木)が何気に自ら秘裂に指を這はせ、そんな灯里の口内を三沢がスプーンで掻き回す、カップル喫茶ばりの豪快な痴態に目を奪はれる。脱ぎこそしないものの、何気にマリエールでの史上初絡み。サトシと悠香が辞したのち、一応泣いてはみるミユキに声をかけた三沢が金はおろか家もなく、そのまゝといふか何が何だかな勢ひで、ミユキの家に転がり込む。さういふファンタジーにせよ途方もない大飛躍をも、カット跨ぎの濡れ場で何が何でも兎に角遮二無二固定してのけるのは、ピンク映画ならでは、あるいはピンク映画にのみ許された横紙破りの力技。
 しがない勤め人の稼ぎでは三沢を食はせられず、ミユキは三沢の知人が店長を務める泡風呂に転職。配役残り、井尻鯛(a.k.a.EJD)が件の「新世界」店長。ミユキは新世界で先輩として灯里と再会し、ソープテクニックを伝授されがてら、話は灯里の来し方に。石川雄也が、無職かつDVのコンボを決める灯里元夫。元と夫の間に、クソが抜けてるぞ。河合夕菜は灯里が働いてゐたスナック「スミレ」のカウンターを任せられるホステスで、過剰に化粧の濃い長谷川千紗が矢張りママ。奥のボックス席に見切れるのも、マリエ同様有志か。三沢は左目が潰れるほどex.ダーリンを半殺しにし、灯里と離婚させる。安藤ヒロキオは、ミユキに文字通り感涙する新世界のピュア客・鈴木。そして、イズショーは店を空けるマリエールにて、店を任された三沢と出会ふ桜木優希音が、当時女子大生アルバイトの愛未、専攻は社会福祉学。愛未も愛未で、その後三沢の知人が店長を務めるデリヘルに。純然たる余談ではあれ我慢出来ずに噛みつくが、可愛らしい名前でも思ひついたつもりか“愛未”ぢやことの、全体親は何をトチ狂ふてをるのか。元来日本語に於いて愛だなどと頭に性をつけた性愛と限りなく同義の、どちらかといはずとも粘度の高い美しくも清らかでも全くない寧ろ正反対の言葉で、あまつさへ“愛”に重ねて“未”。情欲にすら至らないと来た日には、斯くも自堕落極まりない名を与へるから、娘が恐らく大志を懐いて学問をしてゐる筈であるにも関らず、禿て肥えた中年男にコロッとチョロ負かされた挙句、春を鬻ぐ破目になつてしまふのだ。なんて、時には保守じみた戯言も捏ねてみたり。
 三月初旬に封切られた山内大輔2020年第一作は、一年前より2020年三月末での引退を表明してゐた佐倉絆のラスト・ピンク。2021年第一作「淫靡な女たち イキたいとこでイク!」での、カメオぶりは果たして如何なるものなのか。
 公開題にまで佐倉絆の“きづな”を無理から気味に盛り込む割に、序盤から先行し中盤を任せられる三番手と、終盤まで結構温存する二番手にも十分に尺を割く。涼川絢音に対するやうに僅か一言の別れを述べるでなく、朝倉ことみ引退記念作品と初めから堂々と銘打つた、実は佐倉絆の初陣でもある「ぐしよ濡れ女神は今日もイク!」(2017)で花道映画を完成させた印象の今なほ強い山内大輔にしては、思ひのほかアッサリしてゐるどころか、最後を匂はせる何某かが案外皆無であつたりもする。一方、フィルムと比べての遜色を相当感じさせない、オープン撮影の綺麗さ―所々、不用意な屋内は相変らず暗い―は光りつつ、要は単なる体のいゝ女衒譚に過ぎない、物語自体は実のない屁の如き代物。かといつて、糞を放(ひ)れといつてゐる訳ではない、断じて。木に竹を接ぐ徒なバッド・テイストも、オーピーは山内大輔の持病を後生大事に放置してゐる場合でもなからう。下手な鉄砲を、滅多矢鱈に撃ち倒せる時代なんてとうの昔に終つてゐる、その認識がこの期に大蔵にはないのか。裸映画的には一見水準的に見せ、直截にいふと山内大輔が水準に納まつて貰つてゐては困る。何時以来か忘れるほど久々裸映画を振り抜いた、エクストリームにどエロい前々作「若妻トライアングル ぎゆつとしめる」(2019/主演:きみと歩実)を想起するに、山内大輔はまだ前に押し込めるギアを一つ二つ残してゐる。四の五のいふな役立たず、何でか知らんけどオッサンが三百花繚乱の女優部三本柱からモテまくり、ヤリ倒す。その、よしんば怠惰であつたとて甘美な夢に、何故貴様は大人しく微睡まぬ。さういふお怒りも飛んで来さうだが、その手の底を抜くか人肌なエモーションを志向するには、少なくとも今回の山内大輔は些か硬く、冷たい。絶妙に劇中虚実を濁す、ラストも悪癖の一言で片付るとそれなりに纏まつてゐるやうにも思へ、最終的に何を最もやりたかつたのかよく判らない、物足りないか漫然とした一作ではある。


コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )




 「悶絶劇場 あへぎの群れ」(2019/制作:花園シネマ/提供:オーピー映画/監督・脚本・編集:谷口恒平/撮影:金碩柱/照明:市川高穂・白鳥友輔/録音:北野愛有/ヘアメイク:坂口佳那恵/演出応援:江尻大/整音:吉方淳二/撮影助手:金山翔太郎・藤井良介・長棟宏輔/照明助手:迫田遼亮・宇都宮徳/ヘアメイク応援:Tomomi Ishizu/制作応援:水嶋優太/撮影応援:今岡利明/車両:ムラカミロキ・松野宏昭/劇中漫画製作:平松茉紘/仕上げ:東映ラボ・テック/機材協力:CRANK・撮人不知・グリフィス・日本照明/協力:マリエール、ビデオプランニング、馬力、Bar DUDE、ティファナ・イン、髭野純、金井塚悠香、染谷明美、鴨井雄一、池添俊、上村奈帆、酒井翔太郎、久田松真那/主題歌:『愛の暴露本 ~bakuro book~』おとぼけビ~バ~/出演:横山夏希・関幸治・霧島さくら・永瀬愛菜・細川佳央・中村無何有・可児正光・折笠慎也・山本宗介・安藤ヒロキオ)。
 美術の完成された部屋にて、上京二年、デビューの決まつたマンガ家・小崎愛(霧島)が原稿の制作中。騎乗位もとい机上には、敬愛する伊集院先生(折笠)のスナップも。優作の息子といふよりは、寧ろ美由紀の倅である松田龍平と、庵野秀明を足して二で割つたやうな編集者の森田(中村)が愛に用意した初陣の舞台が、体験告白エロマンガ誌『漫画・本当にあつたエロい話』。とはいへ未だ処女で創作に煮詰まる愛の、火に油を注ぐべく最近お盛んな隣人が華麗に開戦。嬌声にアテられた愛が伊集院先生の写真を手にワンマンショーをオッ始めかけたところ、伊集院先生が流石に抽斗は無理で机の下からヌルッと大登場。マンガも褒めて呉れた伊集院先生に、愛が弾力にも富んだ爆乳をブルンッとオープンするカットの、本当にブルンッといふ音が聞こえて来さうな一撃必殺のジャスティス。のつけから百点満点で三千点の絡み初戦は、“あの喫茶店”での取材を提示する森田からの電話に遮られる。一息ついたタイミングで、主題歌が起動してタイトル・イン。霧島さくらのブルンッのみならず、折笠慎也のヌルッとも何気に完璧。ところで谷口恒平と、ポスト少年ウルフことおとぼけビ~バ~は立命館の同窓生といふ仲。
 そんなこんなで森田は結局不在のまゝ、体験告白を直に聞くべく、愛は御馴染「マリエール」で春山タモツ(仮名/34歳/関幸治)と会ふ。タモツの体験談、「寝取られた男」。学生時代、多分バイトで撮影してゐた朗読劇(朗読者は山本ロザらしい)の会場で、タモツは金髪男(可児正光のゼロ役目)に手マンされるカオリ(横山)を目撃する。映研の同期であつたタモツとカオリのあくまで友人関係がスタートしつつ、カオリはセフレのバンドマン(山本)から呼び出されるや、こちらも定番の、タモツと飲んでゐた「馬力」を平然と後にする。そんな二人が、何故か結婚。ところがカオリは結婚後も相変らず、ほかの男達との関係を恣に続けた。配役残り、クレジット順に永瀬愛菜と細川佳央に安藤ヒロキオは、AV監督であるタモツの現場の女優部・櫻井ミキと、撮影にはタモツと二人で当たる後輩の三木に男優部。改めて可児正光は、タモツが監視カメラを仕掛けてゐるのも知らず、カオリが全裸で出迎へる今時出前。ところで今回得た知見が、可児正光は金髪に染めると、この人トムクルに似てる。タモツの体験談に衝撃を受けた愛は、軽く途方に暮れる。「こんなエロマンガみたいな女の人、ホントにゐるんでせうか?」、「ゐました」の画期的に秀逸な流れで、今度はマリエールに秋田カオリ(仮名/34歳/横山夏希)が飛び込んで来る。ところがカオリの体験談「見られたい女」の中では、妻相手には勃たないタモツの要請でカオリは山宗やカニ・クルーズと寝させられた挙句、その癖タモツはミキと浮気してゐた。本格的に途方に暮れる愛のスマホに、櫻井ミキ(仮名/24歳/永瀬愛菜)から直接電話がかゝつて来る。勢ひで上手く誤魔化しながらも、実は割と無理から割り込んで来るミキの体験談が、「ぶち壊す女」。その他残り、朗読劇会場を多分最多に、マリエール・馬力と通行部で計十数名?見切れる、馬力に周磨要と中村勝則がゐたのだけ確認出来た。「見られたい女」に登場する、ネットで募られたNTR氏・翔さんは酒井翔太郎。翔さんにタップリ出して貰つた精液のフローバックを、カオリが帰宅後タモツに飲ませる件から、マリエールに於ける、カオリがカップに注ぐコーヒーフレッシュに時制を跨ぐ繋ぎが、とても初めて撮つたピンクとは思へない鮮やかさ。
 第1回(2017)の新橋同様、第2回OP PICTURES新人監督発掘プロジェクト優秀賞獲得作品は別にクレジットされない、谷口恒平ピンク筆卸作。林田義行の『PG』誌から、切通理作の『シネ☆マみれ』誌に主催が移つたピンク映画ベストテンではベストテン一位と谷口恒平の監督賞。“ねえもんはねえ”あの髙原秀和の「つぐみ」続篇に作品賞一位を叩き出したとか初端から飛ばしすぎの、併設された桃熊賞でも関幸治の主演男優賞に、撮影部の新鋭・金碩柱が技術賞を獲得してゐる。
 三者の体験談が何れも食ひ違ふ、絵に描いたやうな所謂ラショーモン展開。と、いふよりも。横山夏希が殆ど服を着る暇もないほどの、重量級の煽情性を爆裂させ続ける絶え間ない濡れ場大連撃が兎にも角にも圧巻。今時出前を全裸で待ち受ける、フルショットとかエクストリーム、エロい超えてヤバい。霧島さくらに正しく勝るとも劣らないオッパイを誇る横山夏希が、かてゝ加へて関幸治との斉唱風の朗読を窺ふに、レス・ザン・目の表情を除けばお芝居の方もなかなか以上、御愛嬌ともエクセスライクとも決していはせない。細川佳央×可児正光×折笠慎也×山本宗介×安藤ヒロキオ、ガッチガチの本隊精鋭部隊を向かうに回し、関幸治自身が余程センスがあるのかそれとも演出部に勝因のより重きをおくべき―もしかしてEJD相当頑張つた?―なのかは兎も角、古澤健は自ら進んで壮絶な爆死を遂げた、場数の足らない男優部が女の裸を台無しにしてしまふ惨状も、外様作にしては極めて珍しく完ッ全に回避する。尤も、この点に関しては本隊も本隊のしかもエクセスで、松岡邦彦が派手に仕出かすこともあるのだが。閑話、休題。再び尤も、主演女優がビリングに違はぬ縦横無尽の大暴れを繰り広げ、大輪の百合を開花させる三番手も猛然と追走するのとは逆に、手口の代り映えはいつそ捨てた、伊集院先生とのイマジン戦をインターミッションに差し挿むでなく、霧島さくらを超絶のアバンで打ち止めするほかなかつた構成には、当然激越に心を残さずにはをれない。ドボルザークを駆使する劇伴も、ペラッペラの打ち込みには如何せん安さも否めない。兎も角愛がいよいよ万策尽きかけた窮状から、豪快な映画の魔法で突入するクライマックス。文字通り四方八方に動き倒すウルトラアクティブな長回しを経て、遂に愛のマンガが完成した!にも、関らず。そこで綺麗に物語を畳まなかつた態度か畳めなかつた限界には、量産型娯楽映画的にはなほさら如何なものかと巨大な疑問も禁じ難い。あへて畳まなかつた何某かの小賢しさにせよ畳み損ねた格好にせよ、結果としてはさして変らない。ある、いは。何故に斯くも、森田の造形を頑なにクソなまゝ固定しておかねば気が済まなかつたのか。上野の周年にぶつけて来るくらゐオーピーも前のめりで、世評も滅法高い。にしては、そこまでワーキャーするに足る決定力には些か遠かつた一作。同じ女エロマンガ家ものならば山﨑邦紀2012年第二作「異常飼育 ワイセツ性交」(主演:大城かえで)はまだしも、竹洞哲也の矢張りデビュー作「人妻の秘密 覗き覗かれ」(2004/脚本:小松公典・竹洞哲也/プロデューサー:小川欽也/主演:吉沢明歩)の方が、余程完成されてゐたのではなからうか。


コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )




 「若妻トライアングル ぎゆつとしめる」(2019/制作:VOID FILMS/提供:オーピー映画/脚本・監督:山内大輔/撮影監督:田宮健彦/録音:大塚学/編集:山内大輔/音楽・音効:project T&K・AKASAKA音効/特殊造形・メイク マトリョーシカ製作:土肥良成/ラインプロデューサー:江尻大/助監督:菊島稔章/ポスター:本田あきら/撮影助手:荒金聖哉・赤羽一真/仕上げ:東映ラボ・テック《株》/出演:きみと歩実・桜木優希音・真木今日子・泉正太郎・安藤ヒロキオ・森羅万象)。
 タイトル開巻、マトリョーシカの画に、三本柱と山内大輔のみとりあへずクレジット。普通に長く聴いてゐたい、テクノが心地よい。戸建の外観一拍挿んで、結婚四年の佐藤マリカ(きみと歩実/ex.きみの歩美)が仏頂面で料理。妊娠検査は、恐らく外れ。役所の観光課に勤める夫・那津男(泉)が出張帰りぽく帰宅、四本ローソクの立つた結婚記念日ケーキを囲むに及び、二人は漸く笑顔を取り戻す。そのまゝ熱くチューしたカット跨いで、騎乗位で轟然と夫婦生活の火蓋を切るジャスティス。外様作が続き、数週間ぶりに触れた全うなピンクに安堵する。些か暗くもあれ、大正義正常位を大完遂。但しマリカは那津男の早さと、二回戦を戦へない不甲斐なさとに含みを残す。中略、翌朝那津男を送り出した“豊島区高尾 3-29-3”となるとフェイク住所―高尾は八王子市―の佐藤家を、フェルトの中折れまで黒尽くめの安藤ヒロキオが笹蒲鉾を手土産に来訪。呼鈴の反応がないと、安ヒロはマトリョーシカのキーホルダーのついた鍵で玄関を平然と突破。ワンマンショー後で寝落ちてゐたマリカの前に、一年前仙台で再会を約した男・田中を名乗り現れる。田中の記憶が全くないマリカに対し、証拠の仙台で撮つた写真と称する田中の隣で微笑む女はマリカver.2の茉莉花(真木)で、佐藤家のリビングに最初から飾られてゐた旅行先の仙台にて田中に撮つて貰つたスナップの、那津男の隣で微笑む女も真木今日子に代つてゐた。
 配役残り、髪型と画角如何では井上真愉見似に映る知見を今回得た桜木優希音は、茉莉花と田中が佐藤家リビングでオッ始めたその頃、那津男がラブホで矢張り一年ぶりの逢瀬を交すまりか、この二人の経緯は不明。のち田中の訪問を受けた茉莉花から最スイッチする形で、マリカver.3。そして今や御馴染マリカールもといマリエールに飛び込んで来る、森羅万象はデウス・エクス・牧男、でなくてマリカが雇つた探偵の三沢。茶店で三沢が平然と煙草に火を点ける光景に、禁じ得ない隔世の感。はさて措き、イズショーは出て来ないマリエールに於ける二役は、桜木優希音と真木今日子がカウンター席でホットドッグに舌鼓を打つ二人連れ、安藤ヒロキオはマスター。マリカの左背中にもう一人見切れるのは、見切り損ねたが多分EJD、背格好が菊りんとは明確に違ふ。
 一言で事済ますならば、所謂“かういふのでいいんだよ”な山内大輔2019年第一作。公務員の夫と結婚し、一軒家に住む専業主婦。にしては今時贅沢な寂寥を抱へるヒロインを訪ねる謎の男と、そもそもトライアングルに安定しない若妻の人格。とかいふ趣向は、女の裸を三人分効率的に見せる方法論として以外には、この際どうでもいい。兎にも角にも度肝を抜かれたのが、磐石の濡れ場初戦を綺麗に振り抜いた翌朝。好物らしく、毎朝の朝食と思しきマリカお手製の、本当に美味しさうな魚肉ソーセージのホットドッグを頬張る那津男を、まりかは相変らずぼんやり見やる。いよいよ出ようとする那津男を引き留め行つてらつしやいのキスまでは兎も角、跪きスラックスのチャックを下したかと思ふと、転び出て来たのはよもやまさかそのまゝな魚肉ソーセージ。を、射精に至るまで吹くのは一旦白日夢で片付けた上で、出勤後に魚肉ソーセージをマリカ―とその朝をループする茉莉花も―が一物そのものにガチ造形。ブッシャブッシャ豪快に潮を噴くに至るまで改めて吹く、超絶怒涛の張尺―張形を用ゐた尺八―ならぬ魚ソ尺が圧巻。フルコンの煽情性がバクチクする魚ソ尺―正直語呂は悪い―さへ吹かないものの、ほかの二人よりお胸は控へめな反面、好みにもよらうが表情ないし雰囲気は一番エロい桜木優希音の絡みも、何れも遜色ないどころでない満足と完成度。常々当サイトが性懲りもなく垂れて来た、撮らうと思へば幾らでも撮れる腕があるのだから、ここいらで山内大輔は割り切るか覚悟を極めた裸映画を撮つてみせろよ。とかいふ意識の低い不平も、有無をいはさず捻じ伏せる超実戦的な一作。これよこれ、これこそ“かういふのでいいんだよ”。唯一の不満は、現し世と夜の夢の境界と、田中以前に、そもそも自分は誰なのか。茉莉花が背面騎乗の最中全てを失するスローモーション。悩ましく躍る爆乳の一歩手前で、ティルトダウンが立ち止まる正しく寸止めが、強ひて論ふ欠けた竜の睛(ひとみ)。牧男(仮名)が種を明かしたところでスカッと切り抜けないのは、それは最早望んでも仕方あるまい。山内大輔は、たとへば片岡修二ではない。丁寧な語り口に騙されかねないが、実は物語といふほどの物語も別に存在しない辺りも実に潔い。といふか三本柱が泉正太郎か安藤ヒロキオとセックスして、更にきみと歩実と桜木優希音は二次加工品であるのを方便に、ノー修正でチンコを咥へる。要はそれしかないシングルイシューな代物を、何処をどう編集すれば、あるいは何をどれだけ撮り足せば一般映画に仕立て上げられるのかといふのが、残される巨大か根本的な疑問。流石に今回ばかりは、タス版の円盤でも出るやうなら食指を伸ばしてみるかな。


コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )




 「人妻の吐息 淫らに愛して」(2019/制作:加藤映像工房/提供:オーピー映画/監督:加藤義一/脚本:伊藤つばさ・星野スミレ/撮影監督:創優和/録音:小林徹哉/編集:有馬潜/助監督:小関裕次郎/監督助手:菊嶌稔章/スチール:本田あきら/協力:鎌田一利/選曲:友愛学園音楽部/整音:Bias Technologist/仕上げ:東映ラボ・テック/出演:古川いおり・酒井あずさ・涼南佳奈・安藤ヒロキオ・櫻井拓也・竹本泰志《友情出演》・田中康文・広瀬寛巳・なかみつせいじ)。脚本の伊藤つばさと星野スミレは、それぞれ加藤義一と鎌田一利の変名。出演者中、竹本泰志のカメオ特記は本篇クレジットのみ。
 必ずしも朝ぽくはない風景を三枚連ね、頭側の壁には子供が描いた家族の絵も飾られたベッドで、小林しのぶ(古川)が目覚める。お弁当を作る手元はしのぶではなく、父親と二人暮らしの葉子(涼南)。しのぶの朝シャンで古川いおりの裸を一旦丹念に見せた上で、葉子の父親・大竹信次(なかみつ)がネクタイを結ぶ。しのぶがチャリンコで出撃して、黄バックのタイトル・イン。傾(かぶ)くでなくチャラけてみせるでなく、至つて粛々とオーソドキシーに挑んだ節ならば窺へる。結論を先走れば、別に成功したとは誰もいつてゐない。
 小出しされる情報を整理すると一切登場しない夫の不貞を理由―のひとつ?―に別居中で、今のところ未だ配偶者の手許にゐる息子・栄作(奇矯な眼鏡をかけたスナップの主不明)の親権を得るためにも、しのぶは就活センターに登録して職探し中。しのぶがセンターの職員A(竹本)の話を神妙に聞いてゐると、隣のブースから禿のB(田中)に大竹がキレる怒号が飛んで来る。人事を担当してゐた大竹は部下の首切りに厭き会社を辞めておきながら、その旨を葉子には打ち明けられずにゐるどころか、中高年再就職のビターな現実を直視すら出来ずにゐた。度々センターで顔を合はせるしのぶと大竹は、何となくもマキシマムに通り越し、何が何だかてんで判らないけれど兎も角遮二無二距離を近づける。
 配役残り、難航する就活と首を縦には振つてゐない葉子の恋愛に燻る大竹が、吸殻の山を築き情報誌を眺めてゐるのを優しく窘める酒井あずさは、十年前に死去した亡妻・弥生。工藤雅典大蔵上陸作「師匠の女将さん いぢりいぢられ」(2018/橘満八と共同脚本/主演:並木塔子)の前に、正式な三本柱となると山﨑邦紀2017年第一作「性器の大実験 発電しびれ腰」(主演:東凛)まで気づくと案外空いてゐる酒井あずさが、この人は樹カズ(ex.樹かず/a.k.a.小林一三)と同じく齢の喰ひ方を忘れてしまつたらしく、まだまだ全ッ然イケる、最前線で戦へる。絡み初戦を完遂したのち、大竹が寝落ちたソファーで我に返るのは綺麗な夢オチ。櫻井拓也は、フリーターゆゑ大竹が交際を認めてゐない、葉子の彼氏・岡倉勇、手前は無職の癖に。安藤ヒロキオは、しのぶの味方を装ふ義弟・良。状況の如何に関らず、万が一この人が亡くなるとピンクも同時に消滅するやうな気がする広瀬寛巳は、性の根を入れ換へた大竹が、漸く面接に漕ぎつけた会社の担当者、社長かも。
 城定秀夫の大蔵上陸作「悦楽交差点 オンナの裏に出会ふとき」(2015)から実に四年ぶりピンク二本目の、古川いおりを主演に据ゑた加藤義一2019年第二作。自身の2014年第二作「盗撮ファミリー 母娘ナマ中継」(主演:佳苗るか)以来の超電撃復帰を田中康文が遂げた何気に大きなトピックもなくはないものの、左背後から禿頭を掠める程度で、正直その人と識別可能な形で抜かれてはゐない。
 要はこれ百人この映画を観た人間のうち百五十人が同じ風に思ふにさうゐないが、少なくともミーツして二日目までは徹頭徹尾純然たる横柄でクソなプレ団塊ジュニアでしかない大竹に、しのぶといふか、より直截には古川いおりの方からコロッコロ惹かれて行くのが全く以て不完全無欠に理解不能。二人が互ひの―根本的に異なる―境遇に―便宜的極まりない―親近感を覚える契機―のつもり―の、“ブランク”とかいふ接着剤も、逆の意味で見事に木に竹すら接ぎ損なふ。一欠片の魅力も言ひ訳にも満たぬ方便さへあるまいと、兎にも角にもオッサンが黒髪ロングの麗しい、オッパイよりも尻がなほエロいしかも絶対美人に何故かモテる、何が何でもモテる。モテるべき理由の在不在などこの際関係ない、モテるためにモテる。主客層の琴線を激弾きする惰弱にして苛烈なファンタジーとしては酌めなくもないにせよ、その場合正攻法嗜好の落ち着いたドラマ作りが諸刃の剣以前の甚だ疑問手。師匠の新田栄ならば、潔く初めから底を抜いてみせたのではなからうか。ついでで些末な難癖をつけるやうだが、夜空の下で大竹がしのぶに「綺麗な星ですね」と声をかけるシークエンスは、そこは「月が綺麗な夜ですね」くらゐの漱石ライクな紋切型で切り出すのが、量産型娯楽映画らしい懐であるやうにも思へる。大絶賛堅調の酒井あずさ以外に唯一の見所は、極短の一回戦で欲求不満のフェイントをかけた上で、しのぶがサムシングに目を留めたカット跨いで突入する、質量ともに十全な古川いおりとなかみつせいじのエモーショナルな二回戦。を経ての、立ち尽くすしのぶからカメラが引くと、思ひ出のベンチに大竹が穏やかに座つてゐる見事なロング。たとへワン・ショットでも、一発でも撃ち抜いただけマシとでもいふことにして、今時のハイウエストに、激しく持ち上げられた涼南佳奈の腹肉に関しては見なかつたフリをする。

 ピンクに限らず著名なロケ物件なのか、チョイチョイ見かける喫茶店「マリエール」を、しのぶと大竹の買物デートで使用。


コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )




 「スナックあけみ 濡れた後には福来たる」(2018/制作:VOID FILMS/提供:オーピー映画/脚本・監督:山内大輔/撮影監督:田宮健彦/録音:大塚学/編集:山内大輔/音楽:Project T&K/効果・整音:AKASAKA音効/ラインプロデューサー:江尻大/助監督:小関裕次郎/特殊メイク・造形:土肥良成/特殊メイク・造形助手:リ・カエ/撮影助手:荒金聖哉/演出部応援:佐藤洸希/スチール:本田あきら/エキストラ協力:周磨要・鎌田一利・西村太一・郡司博史・中村勝則・etc./仕上げ:東映ラボ・テック《株》/出演:霧島さくら・佐倉絆・川瀬陽太・里見瑤子・黒木歩・森羅万象・野村貴浩・世志男・安藤ヒロキオ・ケイチャン・満利江・フランキー岡村・しじみ《特別出演》)。出演者中しじみのカメオ特記は、本篇クレジットのみ。
 新宿の場末、買物袋を提げた吉井ゴロウ(川瀬)が、電飾看板もあつらへたスナック「あけみ」に帰還。ママを継いだスミレ(霧島)が作つた焼きそばを二人で食し、もうすぐ三年の月日に触れる。ピンで両手をかざしたものと、EJD・もう一人と映つた、二枚の先代ママにしてゴロウの亡妻・明美(黒木)のスナップを抜いてタイトル・イン。「あけみ」のロケーションは、一手に引き受けた感も強いステージ・ドアー。あと、フライパンを振る何気ないカットに於いてさへ、威圧的なまでに魅惑的な霧島さくらのオッパイの迫力が凄え。大事なことゆゑ繰り返す、霧島さくらのオッパイの迫力が凄え。
 超絶技法で些かの躓きも感じさせず、全篇を通して前後にボックスを踏み続ける時制をザックリ整理すると、明美とは同じ児童養護施設「若草学園」育ちのゴロウが、六年のお勤めを終へ出所。ヤクザ稼業―今回共に欠場する、竹本泰志が組長で若頭は山宗か―の足を洗ひ、土建業の職に就く。ある日、ある意味川瀬陽太十八番のメソッドで、急激な便意に襲はれ帰途を急ぐゴロウは、顔面を痛々しくボッコボコにされたスミレを拾ふ。スミレはいはゆる神待ちの家出少女で、金田(ケイチャン/ex.けーすけ)に三万で買はれる。事後財布の金を盗まうとしたところ、半殺しにされたものだつた。その夜「あけみ」で焼きそばを振舞はれ、何にもしてゐないのにゴロウからもディスカウントな一万円を受け取つたスミレは、翌日ホステスを募集する「あけみ」の門を叩き、働き始める。
 配役残り森羅万象と野村貴浩は、「あけみ」の常連客で土建屋社長の三沢と、不動産屋社長の矢木澤。三沢がゴロウを雇ひ、矢木澤がスミレの住居を世話する。明美に対する身の上話中に登場するフランキー岡村は、両親とは死別、居心地の甚だ悪い親戚宅も飛び出したスミレを、最初に買ふ男・岡村。しかし六ヶ月ぶりで改めてひつこいやうだが、ただでさへポップと陳腐を穿き違へた、この男の抽斗の少なさはどうにかならんものか。しじみは矢木澤がスミレに用立てた、風呂場だけはピッカピカな破格の―事故―物件に出る、貞子みたいな女。ファースト・カットの暗さは、故有楽では何も見えなかつたにさうゐない。手帳が貰へさうなくらゐ左足に損傷を負つた里見瑤子は、この人も「あけみ」の常連客・野口容子。安藤ヒロキオと佐倉絆は、トラックに轢かれた明美に手の施しやうもなかつた医師の鈴木タカシと、結婚を約した仲にある看護師・野口深雪。ex.東川佳揚とかいはれても正直知らん満利江は、深雪が鈴木との結婚を喫茶店「マリエール」にて報告する、若草学園の恩師・坂上頼子、現在の肩書は理事長。そして鍵を握る世志男が、実はソープ嬢―嬢?―であつた容子の十五年来の馴染客・鈴木健治。エキ部は「あけみ」ボックス席と、深雪・鈴木勤務先の院内要員。一人女の看護師も姿を見せるのが、該当しさうな名前が演出部にも見当たらない。
 前田有楽閉館から半年、遂に戦線復帰の運びとなつた第百三十八次「小倉名画座急襲篇」。最初の有楽未着弾新作は、封切り直前に抹殺された荒木太郎の天皇映画に続きといふのも何だが、第三作「アブノーマルファミリー 新妻なぶり」(主演:神納花/ex.管野しずか)が一旦公開(11/16)後、謎封印の憂き目に遭つた山内大輔2018年第四作。ついでに“遂に戦線復帰”といつて、小倉の一月の番組は、依然既に八幡で観たものばかり並んでゐたりもする。本格再起動は、来月からかな。
 手料理が売りのスナックを舞台に、客と店の人間の、それぞれの家族の物語。山内大輔のスナック映画といふと、脊髄で折り返して思ひ浮かぶのが2013年第一作「スナック桃子 同衾の宿」(主演:山吹瞳)に、2017年第四作「ひまはりDays 全身が性感帯」(主演:涼川絢音)。バッド・テイスト映画の「スナック桃子」は固より、ザックリ同系統の「ひまはりDays」とも、森羅万象や満利江の役名以前にそもそもスナックの屋号ごと異なる、全く別個の物語である。
 現在と過去を頻繁に往き来する、劇中時間の移動に僅かな瑕疵のひとつ覚えさせない手腕は高く評価しつつ、一撃一撃も然程強くはない散発的か断片的、かつ有体なホームドラマの羅列に、ワーキャー諸手を挙げ称揚することもない。と、高を括りかけたところが。サプライズ的な濡れ場を効かせたのも裸映画として重ねて心憎い、片親同士を直結する予想外の大技で、一息に晴れ晴れしい大団円に落とし込む終盤は、圧巻といふほどでもないにせよ天晴。加へて、幾ら伏線は十全に敷設済みともいへ、余計にしか思はせなかつた蜆の刺さつた枝葉に花を咲かせてみせる離れ業に、寧ろ正方向に驚かされた。豪腕ストレートと、見えない方向から飛んで来るフック。二発のパンチが火を噴く、後述する小ネタのジャブまで含めかなり良質高水準の娯楽映画。では、あるものの。美容パックを施す直前の、スッピンも可憐に披露する佐倉絆が後半を引き受け大いに気を吐きながらも、絶大なる決定力を誇る主演女優のオッパイを、展開上序盤で封印せざるを得なかつた構成には如何せん心が残る。かつてエクセスが誇つた超武闘派集団・フィルムハウスの一角を担つた腕は未だ決して衰へてはゐない以上、観客の金玉をカラッカラにする裸映画―小屋でヌクのかよ―を、山内大輔に望まぬ訳には行かないだらう。

 もう一点特筆しておきたいのが、随所で弾けるビートの利いた小ネタ。妊娠六週間をゴロウに報告した明美が、無造作に煙草に火を点ける件。忽ち顔色を変へたゴロウの、「煙草なんかやめろ」×「ブッ殺すぞ」×「毒だぞこれ」のジェット・ストリーム・アタックには、「ブッ殺すぞ」で声が出た。息子の婚約者の前で、出し抜けに風俗通ひを告白し始めた父親に対する、安藤ヒロキオ―新人男優賞を選ぶとしたら、この人しかゐまい―の「親爺何いひだすんだよ」は間が絶品。電話するかとした母親が「二十年前に死んでた」と笑顔で惚ける三沢に矢木澤が呆れる、「酒の飲み過ぎで頭ブッ壊れてんぢやねえか」にも再度声が出た。かうして、思ひだしても笑けて来る。現代美術のヨシナリ・トヒは滑るが最も画期的なのが、深雪の気も辿つて来た辛苦も知らず、平板な絵空事を並べた鈴木が追ひ返された義理の母(予)を追ひ飛び出した往来の、後方に業態不明の「のう天気」なる看板が見切れる奇跡のショット。能w天w気www、狙つて抜いたものであるならば、神々しいほどの閃きにシャッポを脱ぐほかない。


コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )




 「おばちやんの秘事 巨乳妻と変態妻なら?」(2017/製作:松岡プロダクション/提供:Xces Film/監督:松岡邦彦/脚本:金田敬/企画:亀井戸粋人/撮影:村石直人/照明:多摩三郎/録音:山口勉/編集:小泉剛/助監督:江尻大/監督助手:村田剛志/撮影助手:八木健太/録音助手:廣木邦人/演出部応援:岡元太/スチール:本田あきら/整音:シンクワイア/仕上げ:東映ラボ・テック/協力:秋山兼定・榎本敏郎・吉行由実/出演:桐島美奈子・初芽里奈・酒井あずさ・野尻建・小林節彦・柳東史)。如何にも変名臭いゆゑ、使ひ回しされてゐる場合必ずしも同一人物とは限らない可能性すらあるものの、照明の多摩三郎が、松岡邦彦2005年第二作「刺青淫婦 つるむ」(黒川幸則と共同脚本/主演:小川はるみ)以来の地味な大復帰。
 あへて意図的に選曲したとでもしか思へない、如何に形容したものか、昔のAVみたいな気の抜けた劇伴で開巻。昼下がりのラブホテル、パート従業員の斉藤真由美(桐島)と吉岡美寿々(酒井)が、客が―僅かなサービスタイムの内に三発―残した使用済みコンドームにワーキャー大騒ぎする。一人で部屋の清掃に入つた真由美の秘かな愉しみは、客の情事の痕跡に妄想を膨らませての自慰。ボガンとこれぞ正しくスイカップな爆乳を放り出しての、オノマトペを多用する淫語も駆使してのオナニーを真由美が大披露した上でタイトル・イン。実も蓋もない結論を先走ると、今作、ここまでアバンを観ればそれで別に事足りる。馬鹿いふな、初芽里奈にコバセツにヤナーギー。どうしても残りの俳優部も観ておかないと気が済まんといふのでなければ、野尻建はどうした。
 バツイチの美寿々と、支配人の木島慎之介(小林)が控室にてほぼほぼ憚りもなく繰り広げる情事には大いにアテられつつ、淡泊な夫・吾郎(柳)は日々盛んな妻の求めをまるで取り合はず、真由美はポップに欲求不満を拗らせる。そんなある日、真由美が清掃に入つた702号室は既に自分達で綺麗に片付けられてあり、真由美を落胆させる。とはいへシーツに残る若い体臭に貪欲な日課をオッ始めた真由美がフと気づくと、枕元には自撮り用にセットしたのを、忘れて行つたスマホが。フィーチャーフォンしか持たない真由美が悪戦苦闘しながらも触つてみると、スマホには愛称・キミタクことイケメン俳優の君塚拓也(野尻)と、アイドル・飯田遥(初芽)の逢瀬が撮影されてあつた。
 第五弾「女と女のラブゲーム 男達を犯せ!」(2014/脚本:今西守=黒川幸則/主演:水希杏)から三年ぶり二本目の、松岡邦彦によるデジエク第九弾。かつて“エクセスの黒い彗星”と、当サイトが熱狂的に追ひ駆けてゐた松岡邦彦は今何処。主人公の職業が同じと来れば当然想起しない訳がない、止め処ない挿しつ挿されつを通して堂々としたグランドホテルを構築する大傑作ピンク「ド・有頂天ラブホテル 今夜も、満員御礼」(2006/脚本:今西守)と同じ人間が撮つたとは凡そ思へない、漫然としたのも通り越して閑散とした出来。内トラの余地さへ残らない、ミニマムな頭数ではグランドホテルなんぞ土台端から通らぬ相談である点に関しては、百兆歩譲つてこの際さて措く、にせよ。一篇通して新たに発生したイベントが、三面を賑す熱愛の成就にヒロインが文字通り一肌脱ぐのみとなると、三番手濡れ場要員絡みの精々二十分もあれば釣りが来さうな顛末に、五分延ばした尺を丸々費やすとは何を考へてをるのかと傾げた首が肩につく。厳密な意味での締めではないが事実上のクライマックスは、真由美がその時間帯―ラブホは―何処も満員だとかいふ正体不明の方便で、都合二度待ち合はせに使ふ喫茶店「マリエール」から、キミタクと飯田遥を直接自宅に招いての巴戦。予め設定した吾郎の予想帰宅時間といふタイム・リミットを、事に熱中するあまり忘れてしまふカットをわざわざ一手間設けておきながら、柳東史らしいメソッドで目を白黒させる吾郎の目撃がその先に一欠片も膨らまない、膨らませない意味が判らない。斉藤家の夫婦生活がその場の勢ひで華麗かつ豪快に再興するとでもいふのが、せめてもの最低限の大団円といつたところなのではなからうか。キミタクと仲良くなつたほかは、結局真由美の立ち位置は一ミリたりとて変化せず、そもそも、劇中ただ一人絶頂に達しさせて貰へない吾郎の冷遇に直面するに涙もちよちよぎれる以前に、吾郎を頑なに蚊帳の外に据ゑ置く要が何処にあるのか改めて理解に苦しむ。ビリング頭二人を向かうに回し長丁場を戦はせるには、単調な駄ビートを刻むばかりの野尻建の大根ならぬ逆マグロぶりは何気にでなく厳しく、食傷スレスレに桐島美奈子のオッパイを堪能させて呉れる以外には、コバセツも齢をとつたなあとかいふ至極当たり前な感慨くらゐしか取りつく島も見当たらない、レジェンドばりに薄味な屁のやうな一作である。松岡邦彦相手に、斯様に雑な悪口を叩きたくはなかつた。


コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )




 「帰れない三人 快感は終はらない」(2015/製作:いまおかプロ/提供:オーピー映画/監督:いまおかしんじ/脚本:佐藤稔/撮影:鈴木一博/音楽:ビト/録音:光地拓郎/編集:蛭田智子/助監督:永井卓爾/監督助手:鈴木啓太/応援:坂本礼/スチール:津田一郎/MA:シンクワイヤ/仕上げ:東映ラボ・テック/出演:涼川絢音・夏希みなみ・工藤翔子・櫻井拓也・守屋文雄・貴山侑哉・掛田誠・内藤忠司・倖田李梨・岡田智宏・中野太・佐藤宏・永井吾一・テルコ・生方哲・大池潤・鎌田一利・周摩要・中村勝則・伊藤一平・広瀬寛巳・佐久間栄一・和田光沙)。出演者中、永井吾一以降は本篇クレジットのみ。
 女・男・女・幼児と並んだイラストの添へられたタイトル開巻、幼児以外は登場人物のどれが誰に相当するのか案外判然としない。看護師の古川志保(涼川)と、彼氏・沢村健二(櫻井)がラブホテルにてセックス。当初ノリノリの二人ではあつたが、志保から望んだ肛門性行が上手く行かないとインスタントに衝突、健二は衣服を抱へ裸のまゝ部屋から出て行く、着てからにしろよ。一方、何時の間にか日も昇り、児童公園で多分OLの田山夕子(工藤)が、慣れぬ風情で泣き止まない乳児・テルコ(ハーセルフ/いまおかしんじ実子)に手を焼いてゐる。通りがかつた志保が見かねてミルクを飲ませる助け舟、テルコは夕子が不倫相手の子供を、連れ去つたものだつた。河原のススキ野で座りションを済ませたホステス・甘木智代(夏希)が、紅白の垂れ幕と万国旗とでデコレートされた根城に棲むホームレス・種田(掛田)に声をかけられる。死にかけた仲間に旨いものを食はせたいので、金を恵んで呉れといふ。種田がアマキと仲間の名を呼んだのに関心を惹かれた智子は、段ボールの中に臥せる男の顔をチラ見した上で、種田に一万円渡しそそくさその場を離れる。
 配役残り守屋文雄は、カラオケスナック「あみん」(実在はしないぽい)に於ける智代の常連客・段田五郎。佐藤宏は、店外の最中に説教臭い段田と喧嘩別れした智子を、街娼と勘違ひする坊主・珍念入道。珍念が経を唱へながら事に及ぶのは、いまおかしんじが荒木―太郎―病を罹患したのかと思ひきや、病気を患つた故郷の母親のために、百人斬りの願掛けをしてゐるとの方便。貴山侑哉が夕子の不倫相手でテルコの父親・近藤俊介、さりげなく紛れ込んで来る和田光沙は夕子と近藤がランデブーする喫茶店「マリエール」のウェイトレス。そして内藤忠司が、案の定死にかけてなどゐなかつた種田の仲間・甘木隆行。岡田智宏は、目的も失してなほ橋に立つ智代を買ふ、一見ジェントルマン・津崎。中野太は何だかんだで橋に立つ志保・智代・夕子の内、智代が最初に交渉成立する客・島野。倖田李梨は最後に残された志保の前に健二と現れる、新しい彼女だか浮気相手・タエコ、このビリングで脱ぐのには驚いた。事前のそこかしこにも見切れてゐた気がする永井吾一は、追ひ駆けた津崎を仕留めるラブホ従業員・串本。生方哲以降佐久間栄一までは、「あみん」店内と河原の葬儀要員か。「あみん」のいまおかしんじと、河原のひろぽんとビトくらゐしか確認出来なかつた。
 河童映画が小屋を素通りして単館に行つてしまつたゆゑ、いまおかしんじにとつては「獣の交はり 天使とやる」(2009/脚本:港岳彦/主演:吉沢美優)以来のピンク映画復帰となる、以前に、電撃大蔵初参戦が2015年まづ最初に我々の度肝を抜いた話題作。別に関係ないといへばないが、愛染“塾長”恭子と共同監督した「白日夢」(脚本:井土紀州/原作:谷崎潤一郎/主演:西条美咲・大坂俊介)のことは完全に忘れてた。
 映画本体に話を戻すとデジタル・オーピーの普請への弁へを欠いた、肝心要の濡れ場の舞台ともなる―中盤以降の―ラブホと、夜の河原周りの不用意な暗さには匙を投げつつ、無理からな共犯関係を二つ重ね、マイナスにマイナスを乗じてプラスに転じる強引さで女三人が一晩での百人斬りを目指す。掲げた目標の無茶さ加減も兎も角、城定秀夫は辟易する女三人が絡むデフォルトの要請に従つた物語の構築に、上手いこと成功してみせてゐる点には大いに感心した。とはいへ、初めて草鞋を脱ぐオーピーに気兼ねしてか、いまおかしんじにしては飛翔なり浮遊が然程高くない始終は、こぢんまり纏まるのが関の山かと、一旦は思へた。ともいへ守屋文雄が放つ逆転打、一件落着後の智代と段田の濡れ場に非ざる絡みは愚直な純情がストレートにグッと来させ、続く賑々しい河原葬儀は、脱力系の力技で捻じ込んだ穏やかにして確かな腹持ちのエモーションが、一撃必殺の大団円としての輝きを有してゐた。とはいへともいへ折角あれだけ長く回しておいて、最終的には俳優部に帰すべき責込みで三本柱中最もドラマの弱い志保と健二に下駄を預けた結果、冒頭を回収する締めの濡れ場が蛇の足に見えかねないのは裸映画的には明らかに不手際ではなからうか。豊作傾向の2015デジタル・オーピー元年戦線にあつて、予想外の名前が飛び込んで来たいまおかしんじに看板を持つて行かれるとは、行けさうで必ずしも行かなかつた一作である。

 然しくどいやうだがラブホと夜の河原周りは本当に暗い、腹が立つのも通り越し呆れ果てるくらゐに暗い。志保・智代・夕子と段田の四人で智代の親爺に会ひに行くカットに際して、やつと劇中夜が明けたかと清々しいまでにホッとしたのは、改めて考へてみるとよく判らない映画体験ではある。


コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )




 「抱きたい人妻 こすれる感触」(2012/製作:オフィス吉行/提供:オーピー映画/脚本・監督:吉行由実/撮影:下元哲/編集:酒井正次/録音:シネキャビン/助監督:江尻大/編集助手:鷹野朋子/監督助手:小鷹裕/スチール:津田一郎/選曲:山田案山子/現像:東映ラボ・テック/出演:羽月希・智弓胡蝶・山口真理・久保田泰也・白石雅彦・サーモン鮭山・柳東史)。
 「田中ロックサービス」―多分―アルバイトの明(久保田)が、後に見切れる編集画面からFC2であるのも看て取れる、自ブログ「夜明け鳥の日記」を昼食がてらチョコチョコ編集する。二十六歳にして童貞×天涯孤独、属性の過積載のきらひも否めなくはない孤独な明が、ブログの形で細々と自らが生きた足跡を残さうとする姿を、田中ロックサービス社員の杉田(白石)は生温かく見守る。ある朝、友人からの急を告げる電話を寝起きの明はてんで満足に聞いちやゐないところに、明の高校の同級生で不良の先輩と結婚した麻衣(羽月)が、当のヤバイ筋に借金を抱へ逃亡中の夫・前田和也(柳)と転がり込む。平身低頭の麻衣に対し、黒い柳東史が好演する何処から見ても堅気には見えない和也は、有無をいはせず明宅に居据わる旨言明する。明に意気地がなく成就はしなかつたものの、高校時代、明と麻衣はイイ仲になりかけたこともあつた。和也が積極的に憚らない夫婦生活と、関根和美をも凌駕する臆面のなさで明が度々膨らませるイマジンとで羽月希の上品な巨乳をタップリと堪能させつつ、素振りすら見せない和也に対し、麻衣は時給八百五十円で店長は吉行由実の喫茶店「マリエール」でウエイトレスとして働き始める。やがて、麻衣の化粧も服装も華美になつたある日。風邪気味の明が早退けすると、麻衣一人を働かせておきながら、和也は厳密には風俗嬢明示はない正体不明の女・夏美(智弓)を―しかも人の部屋なのに―連れ込んでゐた。ここでどうしても立ち止まらざるを得ないのが、ツイッターのプロフィールによると“SMやさん”とある智弓胡蝶―ツイアカはさくら智弓―の、体が傷だらけな点。左脇腹に複数見られる切傷は、それは自傷か?右腰にも銃創かと見紛ふ、派手な傷が。さて措き、遂に激昂し喰つてかゝれど和也にまんまとボコられた明は、自室を飛び出し以来戻らなくなる。
 配役残りサーモン鮭山は、和也に強ひられ時給三万円でデリ嬢を始めた麻衣の、菊をも散らす粘着質の客。どうでもよかないが移動時間のロス等も考慮すれば嬢に時給三万円を渡すとなると、一体この店は客から幾ら取つてゐるのか。杉田が相変らず覇気のない明を奢りで風俗に誘ふ流れに乗り飛び込んで来る山口真理は、明を優しく筆卸して呉れ、ようとはした―推定―泡姫・ユカ。土壇場で麻衣を想起し中折れる贅沢極まりなく情けない明にも終始温かく接する、改めて後述するが徹頭徹尾南風を吹かせると同時に、完璧にスマートな三番手投入のタイミングは地味に出色。
 吉行由実の2012年第一作は、最後まで性懲りもなく妄想を積み重ねるばかりで喪男の主人公が結局一皮剥けはしない、一見、肌触りは心地よくも他愛ない疑問作。暴力男に盲目的に尽くす麻衣も、ナイーブなのか単にだらしがないだけなのか、ウジウジと童貞を拗らせる明の造形もともに、吉行由実御当人からしてみれば、恐らくは唾棄すべき否定的な対象となるのかとも邪推し得る。とはいへ、そこで首を傾げてゐては再後述する非現実的に都合のいいオーラスまで含め、一貫して明に注がれ続ける優しい眼差しは理解出来まい。具体的には薫桜子と出会ひ王道娯楽路線に開眼する以前、かつての吉行由実作に顕著であつた、自称お姫様が何時まで経つても白馬に乗つた王子様を待ち続けるが如き、ステレオタイプですらあるからこそ同時にある意味力強さも失はない少女趣味。少年趣味だなどといふと正太郎コンプレックスに意味が変つてしまひかねないが、お花畑の少女趣味をそのまま裏返すや意外や意外、大人になりきれぬ点では同罪といへようピンク映画の若年層観客―どれだけ実在するのかよく判らんが―の惰弱な琴線に延髄斬りを叩き込む、思ひのほか素直に充実した商品性の一丁上がり。さういふアクロバティックな評価が、実はより正当であるのではなからうか。牽強付会?悪いけど一寸黙つてて貰へるかな。パッと見自堕落にもみせて、微温とはいへ確かなエモーションを撃ち抜く一作。ダメ男を慰撫する術を心得たものであるならば、これで案外吉行由実は、また新しい扉を一枚開けたのかも知れない。

 その他内トラ勢、(彼女のゐない)明の周囲に都合二組不自然に見切れるカップルと、ラスト間際の同窓会カット、最初に明と遣り取りする同窓生は不明。和也のヤサを突き止め、明の部屋に乗り込んで来るオッカナイ借金取りは、兄貴分が田中康文で連れが北川帯寛。画面の片隅を飾る、田中康文や国沢実や広瀬寛巳の安定感は異常、これが量産型娯楽映画の底力だ。同窓会に話を戻すと三人目に顔を出す同窓生が江尻大なのはいいとして、問題は、オーラス明と待ち合はせる「夜明け鳥の日記」に度々米をつける“ゆかり”役。普通に可愛らしい娘なのだが、一体どちら様?それにしても、非モテの管理人が常連といはゆるオフで会つてみたところ、ストレートに美人が現れた。・・・・何といふか、この際工夫もリアリティも要らねえよ、嘘でも夢でも構ふもんか。このくらゐ振りきつてみせて呉れると、グルッと一周して寧ろ清々しいぜ。

 以下は再見時の付記< 内トラ勢追加、マリエール店内で一人明確に顔を抜かれるのは下元哲


コメント ( 2 ) | Trackback ( 0 )