真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「下半身警備 あの名器を守れ」(2004『桃色ガードマン カラダ張ります!』の2017年旧作改題版/製作・配給:新東宝映画/脚本・監督:深町章/企画:福俵満/撮影:長谷川卓也/編集:酒井正次/選曲:梅沢身知子/助監督:佐藤吏/録音:シネキャビン/スチール:津田一郎/現像:東映ラボ・テック/出演:里見瑤子・鏡野有栖・酒井あずさ・川瀬陽太・かわさきひろゆき・牧村耕次)。滅多にない位置に選曲が飛び込んで来るクレジットではある。本当はスチールがもう一人元永斉
 ファースト・カットは朗らかに意表を突くかわさきひろゆき、百歩譲つて舞台ならばまだしも、映画に出るなら歯を治せ。警備会社「国際警備保障」付け髭の部長(かわさき)が、左右田万太郎(川瀬)に表彰状風に正規雇用の辞令。そんな児戯じみた会社と脊髄で折り返しかけたが、案外世の中広いのかもな。万太郎の初任地は八王子、古い庄屋屋敷、の蔵に保管されてある時価二十億のダイヤの警備。にしては、蔵の画は御馴染塩山温泉(山梨県)水上荘。八王子方面に走る、車載カメラでアリバイを作つてタイトル・イン。とか何とか颯爽と万太郎が向かふ庄屋屋敷は確かに見慣れない日本家屋であるものの、結局内部は矢張り水上荘。先制でロングの外景を効果的に叩き込むことによつて、上手く騙くらかしてゐる。
 配役残り、エーッ!まだ設定程度でこれといつて物語も起動してゐないのに。兎も角牧村耕次は、最小限の造作でそれらしく見せる警備員控室にて、万太郎を待ち受ける古参警備員・白川源次。白川が万太郎を連れ、庄屋屋敷の屋根から双眼鏡で遠目に覗く青姦カップルが、女―といふか尻―は里見瑤子に見えつつ、菊島稔章ばりの巨漢を誇る男は不明。改めて里見瑤子は、件のダイヤを狙つて現れたのか否かが実は不明な、女盗賊その名もベルサイユの黒バラ。不審な気配に万太郎が「もしやベルサイユの黒バラ姉ちやん?」といきなり身構へる、プリミティブに飛躍の高いシークエンスに腰骨を爆砕されてゐると、事前に万太郎は下手糞な絵の手配書―当然似ても似つかない―を見せられてゐた、知らねえよ。酒井あずさは、白川が大胆にも控室に連れ込む嫁・マチ子、ところで庄屋屋敷の家人は完スルーされる。鏡野有栖は、帰京した万太郎が飛び降りようとしてゐるのを制止する、スーサイダー・順子。屋上で―どさくさ紛れのオッパイ込みで―揉み合ふうちに、カット跨ぐと何処か知らん屋内に大移動、即絡みの火蓋が切られる豪快か乱暴な繋ぎが清々しい。
 未見といふ訳でもないのに、何故か別館が通り過ぎてゐたのを二度目の新版公開で再戦した、深町章2004年最終第六作。マチ子が憚る風情も窺はせない嬌声にアテられ、ベル黒は蔵の表で自慰をオッ始める。そこに到着した万太郎が、喰はれる形で開戦。完遂を待たずにベル黒に闖入―劇中用語ママ―し、ダイヤ盗難を阻止した表彰状をツケヒゲ部長(仮名)が万太郎に授与。ザクッとといふかガサッととでもいふか、兎も角、あるいは兎に角終止を分断して東京篇に突入。万太郎と一発カマしたが順子は生―か性―の意欲を取り戻し、ツケヒゲ部長が今度は自殺を阻止した功労状を万太郎に授与、八王子篇に再突入。木に竹を、接ぐ必要なんてあんのかオラといばんばかりの、力任せに東京と八王子を往復する展開が猛威を振るふ。帰還した控室でのベル黒との二回戦事後、激しく消耗する万太郎の下に順子から、また死にたくなつた―からシテ欲しい―旨の電話がかゝつて来るオチは一応成立してゐなくもないにせよ、牧村耕次が粗雑におどけてみせるオーラスは蛇に描いた足。そもそも、ベル黒に関して劇伴にツィゴイネルワイゼンを鳴らし、表層的な革命思想を振り回させるに至つては完ッ全に意味不明。邪推するに、要は深町章が本当に自分で脚本を書くと斯くも支離滅裂になる、といふだけの話に過ぎないのかも知れない。


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 「初恋不倫 乳首から愛して」(2001/製作:多呂プロ/提供:オーピー映画/監督・出演:荒木太郎/脚本:吉行由実/撮影:清水正二・岡部雄二/編集:酒井正次/助監督:森山茂雄・下垣外純/制作:小林徹哉/ポスター:縄文人/タイトル パンフ:堀内満里子/録音:シネキャビン/現像:東映化学/協力:長野ニュー商工会館/出演:里見瑤子・佐倉萌・山咲小春・西川方啓・中沢真美・太田始・内藤忠司・田中さん・井上さん・大町孝三・吉田康史・野上正義・長野市のみなさま)。出演者中中沢真美から吉田康史までと、長野市のみなさまは本篇クレジットのみ。なのはいいにせよ、絡みも介錯するそれなりに大きな役でポスターには―当然―名前が載るにも関らず、丘尚輝(a.k.a.岡輝男)が本クレに忘れ去られるよもやまさかの大惨事。
 長野の善光寺周りを流す車載カメラで開巻、修理屋の吉田公男(荒木)が、恋人で参道の喫茶店「夢屋」で働く苗字不詳の―早川?―小百合(里見)に車から声をかける。小百合の仕事終りを待ち二人で寿司を食つたのち、常用するラブホテル「プレジデント」に。婚前交渉の事後、一人勝手に満ち足りる吉田を余所に小百合が目を泳がせてゐると、8ミリ起動。善光寺近辺と2011年三月末に閉館した長野ニュー商工を暫し見せた上で、二人とも浴衣の、小百合と中学時代の同級生・野村健太(西川)が仲良く花火。のちに語られる撮影者は、小百合亡父。綺麗な女優さんになる夢と、小百合主役の映画を作る監督になる夢とを語り合つてタイトル・イン。明けて一転、再び35による東京の下町ショット。目下映画配給会社「東西映画」の営業として働く野村に、長野出張が決まる。一方、小百合の実家は、妹の香織(佐倉)と入婿かも知れない純一(丘)が継いだ長野ニュー商工。ところで小屋自体に話を逸らすと、スクリーンの横幅は本格的に狭く、無理からシネスコで上映すると派手に上下が空くにさうゐない。四席づつの客席が左右二列並ぶのが、妙に斬新に映る。ハッテンするには、何気に窮屈な気がする。閑話休題、長野入りした野村は、小百合と再会。楽日早めの終映後、老映写技師・山田(野上)の計らひで小百合が野村と“二人のための特別興業”を楽しんでゐると、吉田が迎へに来る。
 配役残り中沢真美から吉田康史までは、オフィスを手狭に見せるトゥー・マッチの東西映画要員か。太田始も内藤忠司もその人と知れる形では抜かれないが、頭数は合ふ。山咲小春は、既に一緒に生活する野村の婚約者・美香。長野隊は小百合と吉田の結婚に興味津々な夢屋常連客に、潤沢なニュー商工要員。
 大絶賛今をときめかない、どころか、抹殺された風情すら漂ふ荒木太郎2001年薔薇族込みで最終第五作。「キャラバン野郎」と双璧を成す多呂プロ二枚看板、「映画館シリーズ」の第一作である。荒木太郎推しの故福岡オークラで幾度と上映されてゐた筈にしては、この期に改めて見てみると何故だかワン・カットたりとて観た記憶が蘇らない。またこの男が頑なに臍を曲げ、忌避する勢ひで回避してたのかな?再度閑話休題、よくて藪蛇、しばしば積極的に邪魔な意匠で映画の素直な成就を妨げる、基本荒木調と持て囃されるところの荒木臭は、恐らくラブホ実景ではない、プレジデントの安普請サイバーパンクな美術を除けば今回鳴りを潜める。順に主演女優と、形式上のビリングに実質的な差異は特に見当たらない三番手と二番手の濡れ場を何れも入念に大完遂。先に見せるものを見せておいて、前半は小百合と野村のリユニオンを辛抱強く我慢、後半に勝負を賭ける戦法は裸映画的に極めて順当な構成に思へる。さうはいへ純真な輝きを放ち続ける里見瑤子は兎も角、面も口跡も間の抜けた西川方啓は決定力に激しく欠く。となると、極めて即物的に解するならば、要するに互ひに結婚を見据ゑた女と男が、双方後腐れない安全圏にて焼きぼつくひに火を点けるに過ぎなくもない、始終にワーキャー騒ぐほどの感興は別に感じなかつた。感じなかつた、ものの。野村の宿での、最初で最後の情交。静かながらハイキーに照明がスパークする一回戦も美しいが、二回戦に突入8ミリの映写機が二人の体に照射するや、ニュー商工の舞台にワープする大胆な映画の嘘は、一点突破で一撃必殺のエモーションを煌めかせる。

 昭和天皇を―モックンよりも数百倍素で寄つてゐる―荒木太郎が模した、2018年第一作が土壇場中の土壇場で公開中止の大憂き目を喰らつた事件に関しては、大蔵が完全に出来上がつた新作を蔵入れし、生え抜きのレギュラー監督である荒木太郎が、以来代りの一本も撮らせて貰へずにゐる事実ないしは現状以外に、表に出て来る情報が兎にも角にも乏しく、白黒のつけやうもない。尤も、普通に考へればオーピーが脚本なり初号に目を通してゐない訳がなく、直截にいふと、荒木太郎は梯子を外された印象を持つものである。


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 「まぶしい情愛 抜かないで…」(2017/制作:Blue Forest Film/提供:オーピー映画/監督:竹洞哲也/脚本:当方ボーカル・深澤浩子/撮影監督:創優和/録音:山口勉・廣木邦人/編集:中村和樹/音楽:與語一平/整音:吉方淳二/助監督:江尻大/監督助手:平田圭一/撮影助手:酒村多緒・杉田陽介・木村風志郎・佐藤京郎/スチール:阿部真也/仕上げ:東映ラボ・テック/協力:恩田真弓・橘秀樹・佐野彰則・深澤幸太・松井理子/出演:優梨まいな・那波隆史・若月まりあ・工藤巧真・白木優子・森羅万象)。橘秀樹・深澤幸太に加へ、津田篤と吉田俊大がポスターのみ出演者。
 ライターで火を点けた線香の、炎を手で扇ぎ消してタイトル・イン。夫(深澤幸太)が殺人を犯した直後に自殺した藤沢美奈子(白木)、後述する前篇では語られなかつたバーテンの修行時代、恋人のナカダユウコ(口頭に上る名前しか登場せず)を学生運動の内ゲバで喪つた過去を実は持つ木村亘(那波)。ここは正直驚いたのが、前篇ラストで半同棲相手の添野一馬(吉田俊大)が交通事故死してゐた、前回ヒロインの木本夏(若月)。それ判るかなあ、例によつての節穴自慢ならば面目ない限り。閑話休題、娘にして夏の母親(影も形も見せない山口真里)に、この人も交通事故で先立たれた仁志(森羅)。そして夏とは大学の同級生で、木村が経営するバー「バイオレット」でアルバイト中、出会つた常連客の岡田将也(津田篤)と交際。するも痴情のもつれから、眼前で服毒死された藤野乃亜(優梨)。銘々の来し方なり辛気臭い心情を、2010年の新春痴漢電車「痴漢電車 夢指で尻めぐり」(監督:加藤義一/脚本:近藤力=当方ボーカル=小松公典/主演:かすみ果穂)を脊髄で折り返して彷彿させる、言葉尻を次の話者が引き継ぐ、輪唱形式のモノローグで綴る。以前からあつた映画用語で、輪唱形式の有無はさて措き、さういふ語り乃至は回想で過去を描写する手法を、ナレーションとモンタージュの合成語でナラタージュといふらしい。如何にもシャレオツな響きの用語ではあるが、別に標準的なメソッドで、新語を捻り出す特段の意味はないやうにも思へる。再度閑話休題、周囲の目に耐へかね引越した美奈子は、妻とも死別し娘の死以来一人暮らしの仁志と、家事代行の仕事を通して出会ふ。ところで優梨まいなの濡れ場は、話を聞くに―岡田が乃亜に筆卸して貰つたのでなければ―岡田と付き合ひ始める時点では既に、木村と時折関係を持つてゐた形で処理される。
 配役残り工藤巧真は、少なくとも通つてゐるやうには凡そ見えない大学を、乃亜ともども休学してゐるのか退学したのかは完全に等閑視して済まされる夏が、再会する中学の同級生・西寺勇夫。勇夫に工場を継がせる旨を詫びる母親の声は山口真里とされつつ、あれ山口真里の声か?何処かに見切れてゐるとしたらロストした、松井理子なのかも。橘秀樹は二人で歩く夏と勇夫がミーツする、佐野彰則と政治ビラを撒く大学生。勇夫が活動に興味を示す一幕の跨ぎ際に、佐野彰則が「この国を潰しませう」だとか出鱈目なシャウトを放り込んでゐる、荒木太郎の昭和天皇映画よりも問題だろ。
 前作「ヤリ頃女子大生 強がりな乳房」(主演:若月まりあ)と全く連続した二部作を成す、竹洞哲也2017年第五作。漫然としかしてゐなかつた序盤中盤から、「ヤリ乳」が終盤結構持ち直して後篇に期待を繋げた、ものの。とりあへず優梨まいなと若月まりあの独白が壊滅的で、殊に若月まりあは口腔に問題を抱へてゐるやうにもパッと見見えない割に、呂律さへ回らない暴ならぬ大迷走、趣向を根底から木端微塵に爆砕する。重ねて対尺比で相変らず引き算知らずの情報量を詰め込み過ぎたのか、那波隆史は兎も角、森羅万象までもが明らかに性急なリズムの中苦戦を強ひられる始末。最終的に勇夫と別れた夏は出奔、乃亜は木村から受け取つたユウコの無駄にキナ臭い遺品を、岡田が農薬を呷つた歩道橋から空に捨てる。仁志との殆ど生活に近い関係に辿り着いた美奈子が、一人―あるいは二人で―昨日までとは違ふ明日に向かひ始める反面、夏と乃亜の物語は、欠片たりとて何某かの着地点に行き着くでなく、宙ぶらりんのまゝ放置される。父親の遺品である、動かなくなつたブリキ製のロボットを直して呉れた、勇夫の機械油に塗れた手に触れた瞬間、夏が「動きだした」と人生の再起動を確信するカット。美奈子との一旦の別れを経て、久し振りにコンビニざるそばを口にした仁志は、ボソリと「何の味もしなかつた」。確かに映画が力を持つ、あるいは持ちかける瞬間も所々ないにせよ、結局何も残らないある意味清々しい空疎の筈なのに、七十分を見せきるのが逆の意味で凄い。船頭の多さが禍したのか、泥船が全速力で白夜の樹海に突入するが如きちんぷんかんぷん作。これで女の裸にもう少し―どころでなく―時間を割いてゐれば、まだしも立つ瀬があつたものを。竹洞哲也にしても小松公典にしても、下手な色気が邪魔してストイックになりきれない。竹洞哲也前々々作「熟女ヴァージン 揉まれて港町」(主演:白木優子)に於いてやつとの思ひで初日を出したのも束の間、深澤浩子の苦戦もこの分だと依然続きさうだ。

 とこ、ろで。ちんこ股コレ、もといこんちこれまた。例によつてOPP+版では、夏と乃亜にも十全に形がつくだとかいはんぢやろな、模造刀振り回してスクリーンに穴開けんぞ   >やめれ


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 「股間連発テクニック」(昭和59/製作・配給:新東宝映画/監督:和泉聖治/脚本・プロデューサー:木俣堯喬/撮影:伊東英男/照明:石部肇/編集:菊池純一/効果:小針誠一/助監督:西沢弘美/〃:山下雅之/撮影助手:依田英男/照明助手:佐藤才輔/スチール:津田一郎/刺青:スーパーオリジナル/現像:東映化学/録音:ニューメグロスタジオ/出演:ひびき恭子・渡辺さつき・泉ゆり・木戸康之・川合勇樹・梶草介・塚本徹)。最初に白旗を揚げる、どうしやうもなく男優部に手も足も出せない。
 高層ビルから足元の歩道橋にティルト、カット跨いで東京駅。ところで一応都会的な硬質基調の画と、ホンワカした劇伴とに早速違和感、新喜劇ぢやないんだからよ。路線バスの画を噛ませて、帰宅する女のハイヒール、トレンチのひびき恭子を抜いてタイトル・イン。「日本オーナーズ」入社四年目のOL・貝塚洋子(ひびき)が帰宅すると、契約結婚相手の祐吉が焼きそばを作つてゐた。ここで今作に於ける“契約結婚”とは、サルトルとボーヴォワールが実践した事前に期間を限定する云々、ではなく。結婚を前提に婚前交渉を持ちつつ、互ひに相手を束縛しないだとかいふ、限りなく外延の曖昧なといふか、単なる半同棲生活―洋子宅の合鍵を所持する、祐吉の住所は別にある―と何処が違ふのかサッパリ判らないガバガバ概念。祐吉の求めに洋子が応じない応じろしてゐると、洋子の妹で、寮暮らしといふ点を見るに短大か女子大生の妹・玲子(渡辺)が彼氏の新一を伴つた電話ボックスから、「アタシ女になることにしたの」だ豪快に唐突な電話を寄こして来る。一回戦は大胆な暗転で割愛した二回戦の事後、祐吉は郷里で見合する羽目になつた旨洋子に告げる。
 女優部しか特定出来ない配役残り、洋子の上司で下卑た風貌の征木部長に続いて、何気に途方もない戦歴をさして顧みられるでなく誇る、量産型娯楽映画俳優部の鑑ともいふべき泉ゆりが征木行きつけのバーのママにして、肉体関係にもある築崎和代、左眉頭の大きな黒子が特徴。その他主な登場人物は、仮出所で娑婆に出て来た、和代の筋者の夫・三八。バー部隊のうち、バーテンの山ちやんはセカンド助監督の山下雅之か、現代でも通用するハンサム。
 思ひだしたやうに展開中の「Viva Pinks!」殲滅戦第十一戦は、和泉聖治昭和59年第一作。一般映画を一本挿んで、次作が「愛獣 熱く凌す」(脚本・プロデューサー:木俣堯喬/主演:沢田和美)。以降買取系ロマポはまだ数本あるものの、和泉聖治・ラスト・ピンクに当たる。
 これといつてどころでなくテクニカルな側面なんぞ終ぞ見当たらない、公開題から顕著なぞんざいさは、自堕落に全篇を支配。逆にといふか寧ろといふか、シナリオ題なんて全身全霊を込めてどうでもいいけれど。祐吉発で四年の関係に終止符を打たれた洋子が、征木と和代・三八の絡んだ悶着の末、退職金+αでせしめた小金を元手に、ついでに三八も部下に引き込んで―推定―ホテトルを開業するラストは、奮つてゐなくもないにせよ、清々しいほどに面白くも何ッともない。玲子の物語は特にも何も膨らまず、二番手が濡れ場要員といふビリングの変則性如き、この期にとるに足らない些末。唯一特筆すべきは、年下の義母・珠瑠美に劣るとも勝らない勢ひで乱打する長尺フェード。祐吉に事実上捨てられ、捨て鉢に征木と寝て以降の、“私は変身する”とした洋子決意の述懐。“祐吉で女になつて四年”、“征木といふ初めての外食で私はメニューの多彩さを知り”、“何れは腰を据ゑなければならないだらう結婚生活までに”、“思ひつきりセックスの美食遊びをしてやらうと思ひたつた”。タマキュー(珠瑠美旧作の意)と全く同様な、徒に冗長な割に屁よりも中身は薄いモノローグ。色濃いプロ鷹特色、といふか要は木俣堯喬の影響が深く及んでゐる点には、元凶に辿り着いた思ひの感興を懐いた。

 付記< 駅前で観て、一人だけ男優部を詰められた。祐吉役が、塚本徹名義の末次真三郎


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 「性獣一家 家庭教師・盗み喰ひ」(1997『変態一家 兄貴の家庭教師』の2003年旧作改題版/製作:旦々舎/提供:Xces Film/監督:浜野佐知/脚本:山﨑邦紀/企画:稲山悌二《エクセス・フィルム》/撮影:田中譲二・西村博光・坂上宗義/照明:秋山和夫・荻久保則男/編集:㈲フィルム・クラフト/音楽:中空龍/助監督:飯塚忠章/制作:鈴木静夫/録音:杉山篤/現像:東映化学/効果:中村佳央《東洋音響カモメ》/協力:日活撮影所/出演:水嶋眞由・吉行由実・悠木あずみ・新改幸紀・樹かず・甲斐太郎)。
 背後から揉み込まれる主演女優のオッパイを大接写、旧旦々舎の庭では悠木あずみが新改幸紀の尺八を吹き、更にその傍らでは裸エプロンの吉行由実と、甲斐太郎が乳繰り合ひつつバーベキューの準備。吉行由実が辰彦の進級祝ひといふ肉宴のテーマを告げ、カメラが引くと水嶋眞由のオッパイを揉み込む当の秋山辰彦(樹)も縁側に。濡れ場・ストリーム・アタックを豪快に撃ち抜いた上で、華のないGS顔―どんなだよ!―の新改幸紀が僅か三ヶ月の間に起きた、状況の劇的変化を呆然と振り返つてタイトル・イン。開巻からアクセルを踏み抜いて攻める、浜野佐知の剛腕が清々しい。
 事故死した両親が遺した家に二人で暮らす、秋山辰彦・寅彦(新改)兄弟。法学部の寅彦は同じ大学の医学部に通ふ辰彦の留年を危ぶみ、辰彦との上下は不明ながら、寅彦からは先輩に当たる中嶋か中島エイコ(水嶋)に兄の家庭教師を乞ふ。エイコが秋山邸に出入りするやうになつて一ヶ月、辰彦とエイコが普通に男女の仲になる中、エイコは在学中の司法試験合格を目指し勉学に専念、女つ気の窺へない寅彦に妹を紹介する旨を約する。スーパーに寄つて帰宅した寅彦と、門前で様子を窺つてゐたエイコの妹・ナオ(悠木)がコンタクト。のつけから空腹を訴へた天衣無縫なナオは、寅彦に振る舞はれたナポリタンのお礼にと挨拶程度の気軽さで尺八を吹く。
 配役残り、痩せぎすな分、不思議なことに二十年後の今より老けて見えるやうな気もする吉行由実は、家出して来た娘姉妹宅が手狭であると秋山邸に転がり込む、エイコとナオの母・郁代。全盛期のギラついたオッサン臭さが絶品な甲斐太郎が、家を出た嫁を追ひ矢張り秋山邸に怒鳴り込む、郁代の夫・ゼンゾー。
 周防正行のデビュー作「変態家族 兄貴の嫁さん」(昭和59)と、何となく元題が似てゐなくもない浜野佐知1997年第五作、ピンク限定だと第四作。DMMスルーの旧作が、小屋に飛び込んで来る僥倖に心滾らせる。病的に呑気な兄はてんで意に介さないものの、一人また一人と増殖して行く中嶋家の面々に、浸食される我が家に弟は気を揉む。脊髄で折り返して邪推するに、そもそも血が繋がらなければ婚姻関係にもない、疑似“乱交家族”なる特異なモチーフに山﨑邦紀は何程か込めたものかも知れないテーマを、浜野佐知はザクッと等閑視。濃厚かつ重量級の絡みをひたすら畳みかけるに徹する始終は、今回女性上位主義は全く薄いにせよ麗しき旦々舎仕事。顎と―新改幸紀もだが―へべれけなリップシンクに目を瞑れば均整の取れたプロポーションを輝かせる水嶋眞由と妖艶な吉行由実に、軽快なボーイッシュで全方位嗜好への対応を完成させる悠木あずみ。三者三様、三花繚乱の女優部に恵まれた裸映画は、磐石の安定感を以て咲き誇る。


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 「外人妻」(昭和48/製作:日活株式会社/監督:白井伸明/脚本:豊島耕次/プロデューサー:三浦朗/撮影:安藤庄平/美術:川原資三/録音:長橋正直/照明:高島利隆/編集:辻井正則/音楽:世田ノボル/助監督:上垣保朗/色彩計測:仁村秀信/現像:東洋現像所/製作担当者:古川石也/出演:サラ・バーネット、丘奈保美、吉田潔、木夏衛、薊千露、堀弘一、堺美紀子、島村謙次、橘田良江、北上忠行、トニー・F・スコード)。出演者中、橘田良江とトニー・F・スコードは本篇クレジットのみ。クレジットがスッ飛ばす、配給に関しては事実上“提供:Xces Film”。
 ジャンボ機の着陸ショットから、空港内をゆつくりとカメラを回す。足元と胸の谷間を抜いて、よく見ると五角形のグラサンをかけたアメリカ産の主演女優。ポーターにチップも寄こさずタクシーに乗り込んだマーサ・ジーン(サラ)が、セタガヤーと行き先を告げタイトル・イン。クレジット明けは、「茶道教授 家元 三村玄斉」の表札が掲げられた結構なお屋敷。とはいへ、劇中欠片も出て来ない点から窺ふに、どうやら玄斉先生は泉下の御様子。呼鈴の音に、玄斉の多分未亡人・しげ(堺)に促された女中のサユリ(薊)が応対すると、現れたのは警察官(北上)。三村邸を訪ねたいやうだが、殆ど日本語が話せないマーサを苦労して連れて来たのだといふ。“若先生”ことしげの息子・久男が留学中にとつた弟子だらうとしげとサユリが適当に納得する一方、当の久男(吉田)はといふと、ノンアポのマーサ来日を当然知らず、弟子に手をつけた細川あけみ(丘)と裏口からこつそり忍び込まうとしてゐた。ところで若先生の気配を―無意識裏に―察知するや、サユリが脊髄で折り返して臭い屁を放(ひ)る正しくクソみたいな小ネタは、序盤執拗も通り越した勢ひで乱打される割に、中盤以降はスカッと等閑視される。正直なところ、サユリが屁を放り倒す時点で臍は曲がつた、あるいは匙を投げた。
 配役残り、庄司三郎の型式を仮にMS-06とすると、私見では06Rに相当する木夏衛は、久男があけみを連れよく行つてゐた、レタリングに凝り過ぎて看板の店名が読めないバーのマスター・花田二郎、堀弘一がボーイの川本。今回見切つた木夏衛最大の弱点が、この人に介錯させると絡みがエロくならない。島村謙次はバーの常連客・黒木で、橘田良江は黒木が同伴する偽外人・エリザベス、何処からどう見ても単なるヅカメイクの日本人。ところで木夏衛と島村謙次の組み合はせとなると、今作の三週間後に封切られた「必殺色仕掛け」(監督:藤井克彦/脚本:高田純/主演:二條朱実)に登場する、棹で渡世を送る奥野三兄弟の次兄・慶次郎と長兄・沢太郎。更に薊千露は奥野三兄弟と激突する名器三人娘の一角・数の子天井のおぬきに、堺美紀子が女親分・血桜のお満。馴染の面子で大山を積もらせる、量産型娯楽映画らしさが清々しい。コミタマが出て来ないと画竜点睛を欠いた気がするのは、多分当サイトがどうかしてる。トニー・F・スコードは、マーサを追ひ来日した、アメリカに置いて来た元カレのヘンリー・スミス。ヘンリーに抱かれたマーサは一旦三村邸を放逐、ある意味問題なのが、公園で消沈するマーサを慰めるピエロ?役で、ノンクレジットで飛び込んで来る高山千草。メソッドは辛うじてピエロぽいものの、化粧も所作もあまりにも奇怪に不安定で、道化師といふよりは、直截に気違ひにでもしか見えない。
 映画界を退いたのちは―講師業もしてゐたやうだが―和光市議会副議長にまで上り詰めた白井伸明(2014年没)の、昭和48年第二作。しかも家人が普段から和装の一家に、アメリカ娘が逆トラトラトラを仕掛けて来る。コッテコテのホームドラマを、実はビリング頭二人しか脱がない布陣による劇伴からベタな濡れ場で繋いだ上で、戯画的な悪役投入、後半は雑な悶着が巻き起こる。ロマポに触れてしばしば思ふのが、画面―だけ―は下手に分厚い分、物語なり展開が他愛ないと、端的にその他愛なさが露呈するやうな気がする。この期に及んで、白人女の裸一点突破で腰から下に張られた琴線をウッハウハ激弾きされる訳でも別になく、それもそれでロマポなりの味なのであらうが、元来ロマポ如きシネフィルに喰はせてしまへといふ嘗めた態度の与太者につき、未だそれを嗜好するには至らず。尤も、コミタマに飛び込まれると途端に掌返すんだけどね。


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 「通勤電車 快感フルコース」(1992/製作・配給:大蔵映画/監督・脚本:小林悟/撮影:柳田友貴/照明:ジミー宮本/編集:酒井正次/助監督:日垣一博/スチール:佐藤初太郎/タイトル:ハセガワ・プロ/録音:銀座サウンド/効果:中村半次郎/フィルム:AGFA/現像:東映化学/出演:松岡利江子・西野奈々美・伊藤舞・杉原みさお・板垣有美・坂入正三・芳田正浩・白都翔一)。
 電車の画から、松岡利江子が芳田正浩の電車痴漢を被弾。のを―セット―車輌の外側から抜くショットに、今回初めて気づいたが、何気に実景の電車の色も合はせてある、さういふ心も配るんだ。パンティを突破された良子(松岡)が落としたバッグの下には、佐川ジュンジ(芳田)がそれ以前に落としてゐた財布が、カット跨いで電車が通過する鉄橋にタイトル・イン。駅から漸く出て来た良子は結構入つてゐる財布をチェックすると、名刺を頼りに佐川に連絡、ワインの御礼に与る。何処まで本気なのか泥酔した良子は、自宅まで佐川に送らせる迎へ狼。苦しいだ何だと膳を据ゑ絡み初戦を大完遂、ピンコ勃ちの乳首が直線的にエロい。味を占めた良子は今度は太田(白都)の電車痴漢を被弾するや、「あらここにも落ちてるは、届けなくつちや」と太田の上着から落ちてもゐない財布を掏る。とんでもない女だ、この天衣無縫なシークエンスこそが御大仕事の醍醐味。あるいは、直截にいふと度を越したやつゝけ仕事にして初めて到達し得る、グルッと何かを一周した破壊力。ところが翌朝、一部始終を見てゐたとかいふ声だけでその人と知れる板垣有美から脅迫電話がかゝつて来つつ、十万といふ要求金額で急に話は萎む。
 配役残り、後に披露する、気取つて天パをペッタペタに撫でつけた髪型が捧腹絶倒な坂入正三は、良子と寝た太田の武勇伝に、「まるで快感フルコースぢやねえかチッキショー」と喰ひつく、健康機器KK営業部のカワムラヒロシ、太田とは同僚の関係か。“快感フルコース”とは何ぞやといふと、痴漢からベッドまででフルコースとするこゝろ、その発想。とまれ太田とカワムラは、良子の更に先を行き、痴漢した女の懐に自ら財布を忍び込ませ、連絡を待つナンパ術を考案。全体どうすれば、そんなメソッドが上手く運ぶと思へるのか。そしてa.k.a.草原すみれの西野奈々美が、太田とカワムラで挟撃する格好のマユミ。マユミもマユミで板垣有美の横槍を受けながらも、財布に先に気づいて連絡した太田と快感フルコース。ここで初めて見切れる、アクティブに不愛想なバーテンは小林悟。伊藤舞と杉原みさおは、カワムラ×伊藤舞、太田×杉原みさおの形でタッグマッチを敢行する二人連れ。伊藤舞に至つては手コキで抜く痴女暴れを敢行するものの、杉原みさおにいはせると男運が悪い。結局板垣有美の正体は、スリを働いたと因縁をつける謎の因業ババア、木に竹も接がねえ。
 大御大・小林悟、1992年怒涛の全十八作中第十五作、ピンク限定だと十三作中の十二作目。ホゲホゲしてるサカショーを見てゐるだけで、何だか心が安らぐのは疲れてゐるからにさうゐない。大概な良子、何しに出て来たのか判らない板垣有美、正体不明のセカンド泥鰌に鼻の下を伸ばす男達。ネジの緩んだ有象無象が織り成す掴み処のない展開で、既に十分お腹一杯といふか胸やけしさうなのだが。最も大御大が大御大たる所以は、西野奈々美・伊藤舞・杉原みさおが続々と投入される後半、前半をほぼ一人で戦ひ抜いた主演女優が暫し完全に姿を消す豪快作劇。物語といふほどの物語でも全くないにせよ、腐つてもヒロインの筈なのに。お芝居の硬さをさて措けば、首から上も下も実はかなりの美人である松岡利江子が、恐らく間違ひなく小林悟の映画にしか出演してゐないのは、歴史の軽い悲劇といふべきか。他の組に出てゐたら出てゐたで、結局三番手が関の山であつたのかも知れないけれど。徒に豪華な二三四番手の濡れ場を消化したところで、残り尺はあと僅か。会社も休んでゐたらしく友人からの電話で再起動した良子が、相変らずな手口で財布を拝借したカワムラに連絡を入れるラストは、よくいへばいはゆる“変らないか終らない日常”とでもいふ奴なのか、何ひとつ完結してゐないにも関らずな結末が清々しいほどに大御大映画。尤も―地味に予想外な―伊藤舞をもが飛び込んで来る面子の粒は揃つてゐるだけに、深く考へずに女優部フルコースを楽しむ分には裸映画として普通に安定する。


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 「肉体販売 濡れて飲む」(2017/制作:加藤映像工房/提供:オーピー映画/監督:加藤義一/しなりお:筆鬼一/撮影監督:創優和/編集:有馬潜/録音:小林徹哉/音楽:友愛学園音楽部・OK企画/助監督:江尻大/監督助手:村田剛志/撮影助手:高橋草太・小山樹里/スチール:本田あきら/録音所:シネキャビン/仕上げ:東映ラボ・テック/出演:きみと歩実・清本玲奈・和田光沙・橘秀樹・山本宗介・森羅万象・吉田俊大・広瀬寛巳・周磨要・あぶかわかれん・佐賀裕子・久須美欽一)。出演者中、広瀬寛巳から佐賀裕子までは本篇クレジットのみ。
 “元気一発!健康第一!リフレット!”がキャッチの栄養ドリンク「リフレット」の販売員・リフレディ―要はほぼほぼヤクルト―の月野ユイ(きみと)が、川辺をチャリンコで流し流し軽く自己紹介してタイトル・イン。得意先のマンションを回つてユイが帰社すると、オフィスには支店長の出口裕二(山本)唯一人。関根和美ばりにユイが出口とのオフィス・ラブのイマジンを轟然と膨らませる呼び水となる、「イケメンでせう」云々とカメラの方を向いて語りかける往年のといふか昔年のウノコー調は、グルッと一周しかねないくらゐに苔生したメソッドを、しかも全篇通し抜くでなく序盤で易々と放棄する。特徴的な割に徹底しないギミックといふのも、いい加減のいい加減さが量産型娯楽映画ぽくなくもない。ところで、あるいはついでに。ユイが夜学でフランス語を学んでゐるとかいふ設定には、枝葉も満足に飾らない程度の意味しかない。それとも何かな、この男が無粋なだけで、“外国語を勉強中の女”といふのは何気にひとつの成立したカテゴリーなのか?閑話休題、ところがお気楽なまゝ話は進まず。ユイが出口とゐられる何処そこ支店は、閉鎖の危機に瀕する営業不振に喘いでゐた。ユイの悪戦苦闘も実らない一方、出口はリフレットを18本飲みながら唱へると願ひ事が叶ふだなどといふ、豪快か他愛ない都市伝説をSNSで拡散する奇策を思ひつく。ツッコミ処は多々あれ、とりあへず過ぎたる有効成分が体に悪影響を及ぼしはしまいか。そもそも、一本100mlとしても1.8ℓだぞ。
 配役残りあぶかわかれんと佐賀裕子は、オフィスに見切れる二人とも同じやうなガタイのリフレディ要員、眼鏡かけてない方が多分あぶかわかれん。思ひだした、出口がオフィスで電話を受ける顧客の高橋は、竹本泰志にさうゐない。前作「悶絶上映 銀幕の巨乳」(主演:神咲詩織)のポスター出演を等閑視すると、加藤組出演は2009年第一作「祇園エロ慕情 うぶ肌がくねる夜」(脚本:岡輝男/主演:椎名りく)以来となる久須美欽一は、ユイの上得意で独身資産家の灘良作。左目が殆ど開いてゐない以外は、快調なコンディションを窺はせる。そして山宗よりもビリングの高い橘秀樹が、身の回りの世話―以上の意味合ひも込み―で邸に出入り、灘に可愛がられる便利屋の進藤龍彦。周磨要は、ユイに乞はれての灘の紹介が空振りする、澁澤商事社長の澁澤季弘。森羅万象も、平井に続きユイが灘の紹介で訪ねる、平井建設社長・平井淳。軽く夏井亜美(ex.桜井あみ)似の清本玲奈はユイが助言を仰ぐ、顧客であつた社長の玉の輿に乗つた先輩リフレディ・桃井紀子、旧姓清本。中盤まで温存されつつ、集中砲火的に潤沢な濡れ場を披露する。この人は決してデカさに頼るだけでない、お尻の綺麗さが素晴らしい。吉田俊大が、紀子に乗られた玉の輿・桃井哲夫。大胆にして秀逸な荒業で裸を飛び込ませた吉行由実2017年第二作「人妻ドラゴン 何度も昇天拳」(アクション監督・共同脚本:小田歩/主演:二階堂ゆり)をも易々と超え得る、圧倒的かつファンタなエモーションを爆裂させる和田光沙はネタバレ回避不可につきさて措いて、無体なオチ担当の広瀬寛巳は、哲夫の女癖の悪さに匙を投げた紀子が、他の女から相手にされないやう醜く老けるのを願つてリフレットを18本飲んだ結果、確かにその通り成就した姿。醜く老けたver.がひろぽんて、ピンクの妖精を捕まへてあんまりだろ(笑   >笑ふとるがな
 今時年四本と竹洞哲也に次いで重用される、加藤義一2017年最終作。竹洞哲也同様、生え抜きゆゑ当然の扱ひといへるのかも知れないが、それをいふなら国沢実や、大絶賛今をときめかない荒木太郎も同等なんだけどな。とりたてて腹を立てるほどの綻びもない反面、新味なり面白さも特にどころでなく見当たらない。この期に及ぶと案外珍しい、一山幾ららしい一山幾ら作かと高を括つて、ゐたところ。内輪的な小ネタかに思はせた、久須りん―と山宗に捻り出させた嘘から出た実―に実は周到に撒かせてゐた伏線が着弾するや。一気呵成に濡れ場に突入してゐればといふ心も残さないではないものの、史上空前の超奇襲を繰り出したワダミサ投入は、同時に多義的な一大妙手。単にスマートなだけでもなかなかないが、斯くも鮮やかなサプライズを弾けさせる三番手を、些かの誇張でなく観た試が俄かには出て来ない。ダッサダサにダサいプリミティブ極まりないシークエンスを、俳優部の決定力におとなしく委ねた無作為な演出が功を奏するクライマックスも締めの強度と輝きとに満ち、下手に映画を気取らず終始明るい画面の中で、きみと歩実の健康的な肌の美しさは映える。原因は未だに不明な、岡輝男が一線を退いて以降長く脚本家に苦労した加藤義一にも、漸くどころかやつとのことで光明が差して来たのか、ワーキャー騒ぐほどでも別にないにせよ、カト・ストライクス・バックを軽やかに告げる良作。何時の間にか気がつくと加藤義一も十五年選手を通過、ここいらで開けて呉れないと、困る以前に話にならないからな。
 和田光沙の配役は、進藤と結ばれたい久須りんもとい灘が、リフレット18本で女体化した良作改め良子


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 「性風俗ドキュメントⅡ ~ザ・快楽~」(1992/製作・配給:新東宝映画/構成・演出:片岡修二/企画・製作:田中岩夫/撮影:下元哲/照明:伊和手健/編集:酒井正次/助監督:国分章弘/監督助手:原田兼一郎/撮影助手:奥野英雄/照明助手:広瀬寛己/スチール:西本敦夫/録音:ニューメグロスタジオ/現像:東映化学/レポーター:下元史朗/出演:池島ゆたか・水鳥川彩・大谷えりか・斉藤桃華)。照明助手の寛巳でなく広瀬寛己は、本篇クレジットまゝ。
 ズンドコ劇伴鳴らした歓楽街の夜景に、秒殺のタイトル・イン。矢継ぎ早に白のスーツの下元史朗が、「こんばんは下元史朗です」と妙な爽やかさで飛び込んで来る。「性風俗ドキュメント」シリーズ最終第三作「最新!!性風俗ドキュメント」(1994/監督:深町章/構成:甲賀三郎/主演:林由美香・荒木太郎)の開巻で荒木太郎も撃ち抜いた映画史上に残らう清々しさは、今作の時点で既に完成してゐた格好。因みに半年強先行する無印第一作「性風俗ドキュメント ザ・穴場」(1991/監督:深町章/脚本:周知安=片岡修二/主演:荒木太郎)に於いては、荒木太郎が矢張り堂々とした正面突破を敢行しながら、メグリトモヤスとかいふ漢字でどう書いたらいいのかよく判らない役名を名乗つてゐる。今回のコンセプトは、ザックリと新宿歌舞伎町の御案内。看護婦プレイが出来るSMクラブに自ら電話で取材依頼する下元史朗が、どさくさ紛れに新東宝映画の下元とか名乗つてゐるのが微笑ましい、何時専属契約を結んだんだ。とまれあくまで実際の風俗店を撮影隊が訪ねる体で、バタフライマスクで顔を隠した大谷えりかがナース服で待つ、本格的な病院セットがあつらへられたマンションの一室に。浣腸されることには下元史朗がNGを出しつつ、前立腺を刺激して貰つたり、何時の間にかマスクを外して私服の大谷えりかを患者役に、お医者さんごつこから最終的にはお注射まで完遂してみたりなんかする。パート尻には射精産業の図式的なコース分けを捕まへて、“触るとS触られるならMと、サド侯爵が地下から怒りで蘇つて来るやうな誠に短絡した発想である”となかなかに気の利いた毒を吐いてのける。
 配役残り、顔を完全に見せないホテトル嬢(声だけなら水鳥川彩にも聞こえるが、背格好は違ふ)の取材を経て、嬢が友達の父親とホテルで鉢合はせたエピソードの再現ドラマに突入。斉藤桃華が嬢で、池島ゆたかが嬢の友達・千春の父。大陰唇好きな千春父はパンティ越しに摘んだ娘の友人に、“プクプク”“プクプク”と暫し大はしやぎ。この頃の天衣無縫な突破力を、俳優部池島ゆたかは今一度取り戻せないものか。純ッ然たる枝葉ではあれ、一点何気でもなく琴線に触れたのが、斉藤桃華が池島ゆたかの承諾を得てホテルで飲む缶コーヒーがキリンのJive。粗挽きネルドリップ方式が本当に美味しかつた、高校の帰り道、友人と初めて飲んだ発売直後のジャイブには二人してこの缶コーヒー旨えな!と本気で感動した。それだけになFIREへの恨み節はさて措き、再現ドラマ・パートを経て、下元史朗は斉藤桃華が出演するピンク映画の撮影現場にまさかのお邪魔。荒木太郎が男優で、監督は片岡修二のヒムセルフに、カメラは田尻裕司。八年後のピンク映画最終作「スチュワーデス禁猟区 -昼も夜も昇天-」(2000/脚本:甘木莞太郎/主演:吉井美希/a.k.a.伊沢涼子)まで一旦ピンクから撤退する腹を既に固めてゐたのか、下元史朗の他人行儀なインタビューを受けた片岡修二は、かつては風俗をリードしたピンク映画が、今は必死で追ひ駆けてゐるとかわざわざ出て来た割に、覇気を感じさせない。ほぼほぼ終始アイマスク着用―最後に外すもカメラは背中越し―の水鳥川彩は、新機軸・夜這ひプレイの嬢、ものもらひでも出来てゐたのか?
 人海戦術を漫然と展開する「ザ・穴場」、劇的なモキュメンタリーを構築する「最新!!」と並べて比較した片岡修二1992年第五作の特色は、三本柱に全篇をほぼほぼ綺麗に三等分しての、最早ひたすらなまでに、兎にも角にも腰を据ゑて入念に展開する濡れ場。逆からいふと、下元史朗が最新風俗をガイドするとする体裁は限りなく透明に近く女優部と女優部を繋ぐための方便に過ぎず、中身らしい中身は「ザ・穴場」同様、殆ど全くない、実も蓋もないにもほどがある。ものの、肩の力の抜けた下元史朗の色気は軽やかに走り、一時間にも一割満たない尺とはいへ、心地よくサクッと見させる。


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 「ズーム・アップ 暴行白書」(昭和56/製作・配給:株式会社にっかつ/監督:藤井克彦/脚本:いどあきお/原作:飯干晃一《徳間書店刊》/プロデューサー:結城良煕《NCP》/企画:進藤貴美男/撮影:安藤庄平/照明:野口素胖/録音:小野寺修/美術:川船夏夫/編集:川島章正/音楽:甲斐八郎/助監督:那須博之/色彩計測:高瀬比呂志/現像:東洋現像所/製作進行:鶴英次/出演:風祭ゆき・平瀬りえ《新人》・河西健司・伊吹礼一・麻生みちこ・関悦子・桐山栄寿・日高雄二・仁科潮・平良政幸・沢村真美子・川辺直子・増尾久子・川村真樹・江角英)。配給に関しては、事実上“提供:Xces Film”。
 パパラパパパラパ、爆音鳴らして十台弱の単車が暴走、速攻のタイトル・イン。一転時報とともにKBSラジオ―Kはもしかして風祭のK?―の深夜番組「ミッド・ナイト・ティー・タイム」の生放送開始、パーソナリティーの脇村塔子(風祭)が、梶芽衣子「恨み節」のリクエストをかける、番組頭でかける曲か。ここで枝葉ながら、結構目立つ疑問点、より直截にはミス。塔子のテンプレ前説は、“君と私だけのミッド・ナイト・ティー・タイムがこれから二時間”。ところが後(のち)に見切れる、塔子が持ち歩く台本の表紙には、放送時間が“毎土曜日深夜1時~2時”。更に、複義的にラストの放送開始時、スタジオの時計が指してゐるのは十二時、一体「ミッド・ナイト・ティー・タイム」は何時から何時までが正解なんだ。クレジット明けは天候にも恵まれた海、要は嫁に番組を持たせた格好の、「ミッド・ナイト・ティー・タイム」をスポンサードする脇村産業社長にして、結婚三年目の塔子夫・省吾(江角)所有のクルーザー「あすお七世」。船内での夫婦生活を経て港に寄るあすお七世に、波止場から川村真樹が双眼鏡を向ける。カフェテラスで台本に目を落とす塔子に、鳴かず飛ばずのタレント下積み時代に百合の花を咲かせ―られ―た因縁にある、ブティック「マリーネ」の女主人・鳥羽典子(川村)が接触。生放送に向け帰京を急ぐスポーツカーが暴走族に囲まれ、追ひ詰められた塔子は輪姦される。
 名前の通つた脇役部が、気を吐く余白の見当たらない配役残り。桐山栄寿は、瞬間的に見切れる程度のKBSスタッフ。平瀬りえは、平素は従順な脇村家家政婦―劇中ではお手伝ひ―の丸西伊佐子。河西健司は、伊佐子が大胆にも省吾は不在の脇村邸に連れ込む情夫、兼塔子を襲撃した族のリーダー・早川達夫。関悦子と麻生みちこは、伊佐子の過去を調べる塔子が話を聞く、緑荘の管理人とトルコ嬢、麻生みちこも脱ぎはしない。伊吹礼一と、日高雄二から増尾久子までの六人は族要員。乱交する形で女優部は全員裸を見せる一方、伊吹礼一のビリングが一人飛び抜ける、実質的な意味合ひは特段見当たらない。
 藤井克彦昭和56年第三作は、昭和54年から58年にかけて、全五作が製作された「ズームアップ」シリーズの第三作。日活がズームアップを手放したのち、大蔵が「ズームアップ 秘唇」(昭和60/監督:市村譲)を捻り出してゐるのが感興深い。しかも市村譲だぜ、超絶観てえ。ついでにロマポの「ズームアップ」シリーズと、PGの母体の前身の元祖「ズームアップ」誌(廃刊は56年)との、相関なり前後は今となつてはよく判らん。
 姦計を割るのが早過ぎやしまいかと軽く首を傾げてゐると、典子が無作為に搔き回した挙句、単純に手際なり語り口の拙(まづ)さゆゑ判りにくい因縁に帰結。屋敷自体の魔性だとか木に藪蛇な竹を接ぎ損なつた末に、弾着も排莢もへべれけな凶行が暴発。藤井克彦×いどあきおの組み合わはせで、どうして斯くもグダるのか。相性の悪ささへ勘繰れなくもない中、特筆すべきは初陣でしかも大看板たる風祭ゆきを向かうに回した上で、平瀬りえが確かに光らせる芯の強さを感じさせる決定力。


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 「ポルノレポート 変態」(昭和51/製作:プロダクション鷹/配給:日活株式会社/脚本・監督:木俣堯喬/撮影:井上和夫/照明:石部肇/美術:佐川映二/音楽:新日本映像音楽/時代考証:衣恭介/編集:三浪一/効果:秋山実/助監督:早乙女雪・山田秀樹/撮影助手:佐々木哲男/照明助手:林正夫/現像:ハイラボセンター/録音:東音スタジオ/出演:珠瑠美・牧れいか・浅田ナナ・青木理沙・橘ゆき・広瀬京子・安田きよみ・市村譲二・山根一夫・城浩・木南清・林光男・藤春樹)。時代考証の衣恭介は、木俣堯喬の変名。クレジットはスッ飛ばす配給に関しては、事実上“提供:Xces Film”。そしてここからが問題、出演者中、浅田ナナ・橘ゆき・城浩・木南清は本篇クレジットのみで、逆にポスターには名前が載るのが田村令子・橘雪子・長田道子・吉岡一郎・九重京司・木村昌夫・東武雄。橘ゆきと橘雪子はある程度容易に辿り着ける範囲のブレにせよ、しかも時代ウォールに阻まれるのと頭数もそこそこ多い上で、かうも出入りの激しい真似をされると正直手も足も出しやうがない。が、ひとつだけ明確に断言しておくと吉岡一郎(a.k.a.吉岡市郎)は一切全ッ然カットの欠片も出て来ない、アテレコもしてゐない。何といふか今の気持ちを直截に言葉にすると、勝手にしやがれ。
 実景の波打ち際に生きてゐる猛禽類を配した、ロゴだけは本当に比類なくカッコいいプロ鷹開巻、ロゴだけは。暗転して燃ゆる蝋燭、障子がパカッと開いて、赤ジャン二人組(林光男と藤春樹?)が半裸の女(全く以て不明)を乱暴に放り込む。ただでさへ俳優部が霧の遥か彼方に霞む中、挙句ポスターをメインで飾る橘ゆきの位置が低過ぎて、ビリングも殆ど意味を成さない模様と来たもんだ、もうヤケ。女を二人がかりで手篭めにした末に、観音様に火の点いた蝋燭を突つ込むとタマキューでもよく聞く声―木俣堯喬?―によるプロ鷹ナレーション起動。サディズムに関して、相手に与へた苦痛を自己に反照させ自己陶酔する、などとする独自の解釈があまりにも画期的で軽くクラクラ来る、草葉の陰でサド侯も仰天されてゐるにさうゐない。閑話休題、炎に焼かれる女を骨盤周りにオーバーラップさせた画から、案外淡々としたタイトル・イン。全篇を貫く表層的な特徴として、“変態”の用語から現在安穏と予想される、如何にも商業ポルノグラフィーぽく即物的な煽情性を幾分過激か粘着質に追求するといふよりは、当時刑罰だ拷問だと取り憑かれたかのやうに流行つてゐた、残虐映画としての色彩がシンプルに強い。果たしてこれで勃つてゐたのか、この時代。
 兎も角舞台は明治四十四年、責め絵師の仙石乱月(市村)が、半裸に剝き後ろ手に縛り上げた妻・キク(珠)をモデルに筆を執る。ここで何はともあれ通り過ぎること能はざるエポックが、仙石役の市村譲二は、矢竹正知に劣るとも勝らない漆黒の魔導士・市村譲の俳優部時代の名義、新田栄でいふところの北村淳。見た感じを大雑把に譬へると、面長にした山科薫みたいな風貌。大蔵貢メソッドで、妾をモデルにした橘ゆきを仙石は家に上げる。夫婦生活を覗いたタチユキを仙石が招き入れ、いはゆる鶯の谷渡りを敢行するに及んで、キクは置手紙を残し家を出る。
 辿り着ける限りの配役残り、軽くナベ似の木南清は、キクがタチユキを犯させる近隣を徘徊する怪老人、端的に変老人といつた方が適当かも。大逆事件の新聞記事を紹介してのフェード明け、三十分強の仙石パートから、戦中戦後の強姦殺人鬼・小平義雄パートへとザクッと移行。また仙石篇の無体なラストとは一欠片たりとてリンクしない、大逆事件が木と竹が触れさへしないほどに唐突で、この何となくな繋ぎで新章に突入してのけるのか!?と激しく面喰つた。激しく面喰つたのちに、脱力した。牧れいかと青木理沙は、犯す前に絞める小平の毒牙にかゝる女学生と、肉感的な未亡人。半狂乱の青木理沙の抵抗ぶりが、下心の琴線には触れはしないが異様な迫力。三十分弱の小平義雄パートを経て、鷹ナレで“小平義雄から二十七年、彼を凌ぐ変態強姦殺人鬼大久保清が登場する”とここは実にスムーズに大久保清パートに突入する。といつて、残り尺はほぼ五分と殆どエピローグ感覚の扱ひといふか代物でもあるのだけれど。市村譲二と三人一纏めのクレジットを見るに、小平義雄と大久保清役は、山根一夫と城浩ではなからうかと何となく推測出来なくもない。今作の小平義雄が腺病質の外波文といつたなかなか味のある面構へにつき、何時か何処かで再会した際には特定すべく、記憶の片隅に止(とど)めておかう。特定不能の女優部はアバン女に小平義雄が入院だか収監される精神病院の看護婦―医師はクレジットレス?―に、大久保清の不細工な被害者、頭数は合ふ。いや、小平義雄が回想する従軍中に犯した支那娘を忘れてた。となると不脱の看護婦もクレジットレスかも、二人とも普通に台詞はある。
 この頃怒涛か狂気のポルレポ四連打を仕出かしてゐた木俣堯喬の、昭和51年第二作、前作は第二弾の「ポルノ・レポート 金髪パンマ」(主演:Missエマニエル)。ポルレポ全五作のうち第四作は渡辺護だが、プロ鷹製作の買取系である点は同じ。
 ところで映画の中身はといふと、「金髪パンマ」同様、特にも別にも面白くも何ともないんだな、これが。漫然とした全体の構成と個々のシークエンスに、薹が立つた、あるいは演出がさう思はせる俳優部。ある意味役満が完成した、厄い一作。変態性欲者の更生可能性を真向全否定する、ガコンと「ダンサー・イン・ザ・ダーク」ばりのそれなりにショッキングな絞首刑エンドが、心のこもらない裸映画を無体に締め括る。その様に錯覚しかねないグルッと一周した清々しさは、腰の据わつたやつゝけ仕事しか惹起し得まい、それはそれとしてそれなりに得難い感興。


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