真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「赤塚不二夫のギャグ・ポルノ 気分を出してもう一度」(昭和54/製作:アイランズ・コーポレーション/監督:山本晋也/脚本:高平哲郎・山田勉/原案:赤塚不二夫/ギャグ:面白グループ/企画:奥村幸士・成田尚哉/製作:八巻晶彦・高平哲郎/製作補:八田剛宏・大井武士/撮影:鈴木史郎/照明:出雲静二/録音:市村肇章・松原一/音楽監督:北島肇/編集:田中治/音楽:坂崎孝之助・所ジョージ/助監督:滝田洋二郎/製作主任:長谷川一/製作協力:太平洋映画社/協力:関根大サーカス/出演:小川亜佐美・柄本明・宮井えりな・結城マミ・日野繭子・たこ八郎・堺勝朗・坂本明・ベンガル・由比ひろ子・はな太郎・与那城ライラ・久保新二・由利徹《友情出演》・赤塚不二夫)。出演者中、与那城ライラが何故か本篇クレジットのみ、要員とはいへ濡れ場も務めるのに。クレジットはスッ飛ばす配給に関しては事実上“提供:Xces Film”。壮絶なクレジットの情報量に爆死すれど、正確には協力の関根大サーカスは、与那城ライラと久保新二の間に入る。
 中野区役所前のロング、離婚届を提出する待ち合はせに遅れた、ギリギリ未だ夫の畑山大五郎(柄本)を花子(小川)が気違ひだ―ど頭には、“不適切な表現”云々の注釈が入る―変態だと罵りつつ、二人は対照的に入籍を済ませ出て来た、タキシードにウェディング・ドレスの出来たて夫婦(ベンガルと由比ひろ子)と交錯する。離婚届を抜いて手短にタイトル・イン、はいゝとして、この時代の離婚届には、写真貼付したの?さて措きさあて独身生活再開と颯爽と街に繰り出す花子に対し、取り残された格好の大五郎は男尊女卑な恨み節をワーギャーぶちまけながらも、最終的には惰弱な未練を拗らせる。
 配役残り、ほぼヒムセルフの赤塚不二夫は、喫茶店にて締切に追はれる割に、電話で捕まへたか捕まつた女とヤッてばかりのマンガ家・赤坂不二夫。登場する都度繰り返される、アタリをつけた原稿に、赤塚不二夫がグッグッグッとまるでペン入ればりのテンションで黒々と下書きを入れるカットが、歴史的な価値もあるのではなからうかと思はれる今観ても今作数少ない見所。結城マミは、花子が一発ヤルつもりで訪ねた赤坂先生を、カッ浚ふ杉本雪子。たこ八郎は、山本晋也が運転する電車に、飛び込まん勢ひの大五郎の足を釘で打ちつける変質者。赤塚不二夫と結城マミの絡み初戦を経て、大五郎は何でか知らんけど関根大サーカスの小屋に彷徨ひ込む。久保チンと与那城ライラが、二頭の象の傍らで事に及ぶ団員なのか何なのか訳の判らないカップル。ある意味流石ともいへるのか、久保チンが象の鼻で尺八を吹かせようとするのが、自分よりも決定的に体の大きな相手に一物を預ける行為にハラハラさせられて仕方がない。堺勝朗は多分新宿のポルノ映画館の表で、花子がミーツするジェントルマン。花子が勝手に膨らませるイマジンで小川亜佐美の濡れ場を介錯するものの、紳士は薔薇族であつた。このオチ、堺勝朗を迎へに来るのは製作協力の太平洋映画社に続く膨大な人数の名前の中に紛れ込む、サングラスをキャストオフしたタモリ?由利徹は関根大サーカスを離脱した大五郎が診察を受ける、この御仁こそ気違ひみたいな造形の医師・門口先生、因みに看護婦が雪子。二人とも、正式な免許を持つてゐるやうには凡そ見えない、はな太郎は大五郎に続いて現れる患者。宮井えりなは赤坂が出入りする居酒屋の女将・秋由玲子で、日野繭子もその店の常連・原田幸子。一旦坂本明を飛ばし赤坂宅のヤリ部屋にて幸子×雪子×玲子で赤坂先生を取り合ふ件、結城マミと日野繭子をビッシビシ蹴倒す宮井えりなのヤクザキックが笑かせる。より正確にいふと、ヤクザキックは笑かせる。柄本明と日野繭子の絡み経て改めて坂本明は、花子がプラッと敷居を跨いでみたゴーゴー喫茶で、いはばラップ感覚でシャウトを連打するビートの利いたパフォーマンスを披露するリーゼント。
 二作後には大体同じ仲間内での「下落合焼鳥ムービー」が控へる、山本晋也昭和54年第三作。アバンとラストだけ掻い摘めば綺麗に纏まつてゐなくもないとはいへ、問題はその中間、要は一部始終。たこ八郎が起爆し、関根大サーカスで大爆発、そして由利徹が完膚なきまでに止めを刺す。脈略は全くなければ、面白打率も間違つても高くはない各幕が延々延々、体感的には果てしなく続く地獄巡り。地獄を巡る過程を描いた映画、ではなく、それ自体が映画的な地獄巡りに付き合はされるのには非常な困難を覚える、非情に詰まらない苦行作である。個々のシークエンスに別に意味がないのに加へ全体的な繋がりも場当たり的な羅列に過ぎない以上、好きに動かせた俳優部を撮影部がキチンと押さへてさへゐれば、カントクは山本晋也で御座いといつたところで、こんなもの誰が撮つても変りはしないのではあるまいか、とすら思へる支離滅裂。小川亜佐美や宮井えりなと来て日野繭子、男優部も堺勝朗に久保チンと結構な布陣を揃へておいて、ガチャガチャかグチャグチャ空騒ぐ中綺麗に無駄遣ひ、裸映画としても満足に成立してゐない。といふか、グダグダグダグダ執拗に地獄を巡らされてゐる内に、何時しか棹を勃てる気力なり活力も萎える。笑へず勃たずそもそも面白くもなく、斯様な代物が“ギャグ・ポルノ”であるとするならば、お高くとまつたロマンの方がまだしもマシだ。


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 「愛Robot したたる淫行知能」(2015/製作:ナベシネマ/提供:オーピー映画/監督:渡邊元嗣/脚本:山崎浩治/撮影・照明:飯岡聖英/編集:酒井正次/助監督:永井卓爾/監督助手:小関裕次郎/撮影助手:矢澤直子・樋口覚・船越繰未/スチール:本田あきら/録音:シネキャビン/効果:梅沢身知子/仕上げ:東映ラボ・テック《株》/タイミング:安斎公一・小荷田康利/撮影機材:有限会社アシスト/協賛:GARAKU/出演:彩城ゆりな・夏希みなみ・横山みれい・津田篤・山本宗介)。
 生活感・仕事場臭ともに欠く部屋にて、彩城ゆりなが―古臭い絵柄の―マンガの下書き中。机上には原稿用紙と画材のほかに、銀紙で折られた折り鶴がちらほら。津田篤とのスナップ抜いて当の真弥(津田)が、自身が担当編集を務めるマンガ家の霞(彩城)に紅茶を淹れる。真弥発案のロボットと人間が恋に落ちる企画の資料を渡しがてら、二人は新連載が起動に乗つた折の、結婚を約束する間柄にもあつた。開巻速攻婚前交渉もオッ始めかねないラブラブな雰囲気から一転、遠目の路上で、何事か霞と真弥が激しく諍ふ。霞がフレーム左袖に捌けるや、聞こえよがしに車が暴走、何かしらを撥ねるSE。車道に散乱する原稿用紙、暗転ならぬ赤転してタイトル・イン。アバンは今回のナベシネマが、シリアス路線である旨を告げる。
 明けて一ヶ月後、頭には包帯を巻いた霞が自宅で目覚めると、傍らには白衣の山本宗介が。同じく白衣の津田篤を伴つた、真弥の学友にして、往診医との尾崎(山本)は衝撃的な事実を告げる。真弥は交通事故で死亡、白衣の津田篤は霞の治療目的に真弥の記憶をインストールしたセラピー・ロボット、オリジナルではないといふ塩梅でダッシュだといふのだ。何時の間に、あるいは何処から一人の人間の記憶をデータ化したのかよ、とかいふ疑問は脊髄で折り返して体外に排出せれ。ひとまづ、霞が我儘を振り回すダッシュとの生活。霞に笑はないのを指摘されたダッシュが近所の公園でぎこちなく笑顔の練習をしてゐる様子を、久美子(横山)がオッカナイ形相で凝視する。
 配役残り、デジエク第五弾「女と女のラブゲーム 男達を犯せ!」(2014/監督:松岡邦彦/脚本:今西守/主演:水希杏)の二番手から年と会社跨いで主演に昇格した彩城ゆりな同様、いまおかしんじ電撃大蔵上陸作―次はないのかな?―「帰れない三人 快感は終はらない」(涼川絢音・工藤翔子とトリプル主演)に続きピンク第二戦の夏希みなみは、ダッシュが機能を停止した濡れ場込みのどさくさの末にGARAKU魂を爆裂させるメイド衣装で飛び込んで来る、三年前に死別した尾崎亡妻の姿にカスタマイズされた、この人?もメイド型ロボット・恵。だから妻と同じ外見のロボットにメイド服を着させる、尾崎の嗜好に入れるツッコミは脊髄で折り返せつてば。
 エースにしては案外少ない、渡邊元嗣2015年最終第三作。ど直球な公開題ながらロボット三原則が欠片たりとて参照されるでなく、寸分違はぬ外装のロボットが人間と共存する世界観といふ以外にはアシモフとも、ウィル・スミス主演の映画版(2004/米/監督:アレックス・プロヤス)とも特段関係はなからう。寧ろ直近では2013年第三作「愛液まみれの花嫁」(主演:樹花凜)以来となるロボナベは、先に登場する三番手が上手い具合に隠された真相の存在を予感させる、サスペンスに一旦は主眼が置かれる。折り鶴を折る真弥は、口癖のやうにかう繰り返し投げる「祈りを込めて折れば、想ひはきつと通じる」。祈りを込めて撮れば、想ひはきつと通じる。さう言ひ換へるならばそのまゝナベシネマの信念と受け取れる文言ともいへ、十字に交差するどんでん返しが火花を散らす謎明かしは、片側が結構無理が大きいのもあり、この手のお話か幽霊譚にありがちな予想可能性を、必ずしも捻じ伏せるものではない。据ゑられた膳は喰つておいて、尾崎は恵に鳴海昌平ばりの捨て台詞を投げる。2009年第三作「愛液ドールズ 悩殺いかせ上手」(主演:クリス・小澤)に於いては映画の奇跡で美しく昇華する、作られし者の悲劇なり、作る側の傲慢さが掘り下げられるでもない。女優の裸を美しく押さへることに全振りする、デジタルのクリアな果実は見所とはいへ反面始終は薄味であるものの、ピンク映画的には主要モチーフでもある喪装の投入含め、無常観と表裏一体のある意味永遠の思慕が叩き込まれるラストは、雌雄は決したと高を括つた早とちりを覆す、それなりに深い余韻を残す。理に落ちた展開に足を引かれ、祈りを込めて撮つたからといつて想ひがきつと通じたとは行かないまでも、最後の最後に粘りを見せる一作ではある。
 備忘録< 本妻と別れろ別れられないの痴話喧嘩の最中に、久美子の車に轢かれ霞死亡。以来自身をロボットと思ひ込み精神を閉ざした真弥を治療する目的の、霞がダッシュ>>オーラスは真弥の没後百年、尾崎は五十年の墓参に各々喪装で訪れた二体のロボットが交錯


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 「女子大生 教師の前で」(昭和58/製作・配給:新東宝映画/監督:水谷俊之/脚本:磯村一路/撮影:坂真一穀/照明:三好和宏/音楽:坂口博樹/編集:菊池純一/助監督:周防正行・冨樫森/撮影助手:斉藤幸一/録音:銀座サウンド/効果:内田越允/現像:東映化学/タイトル:代東画/協力:アトリエキーホール・ファイブドアーズ/出演:山本さゆり・美野真琴・田口ゆかり・山口良一・森林太郎・小磯一巳・米長一彰・大杉漣)。
 山本さゆりが田舎の母親と電話で話す、電話を切り就寝すると暗転タイトル・イン。明けて今度は美野真琴(a.k.a.よしのまこと)登場、着替へるのかと思ふと、自ら胸を揉みオナニーをオッ始める。壁に並ぶ細い覗き窓が、その空間が嬢の痴態を個室に入つた客に覗かせる、いはゆる覗き部屋である旨を伝へる。因みに協力のキーホールは実名登場する有名店、ファイブドアーズは判らん。四周を闇に縁取られる覗き窓視点の、上辺にクレジットを打つのが激しく洒落てゐる。元教師につき、本名不詳源氏名ならシェリー(美野)からは“教授”と呼ばれる店長(大杉)の顔見せ挿んで、その日のキーホールの営業は終了、ネオンを消灯する。ジョギングで一走りし帰宅後に鳴りだした目覚まし時計を止める工藤タカコ(山本)と、対照的にベッドの中から目覚ましを蹴倒すシェリー。西(甚だ覚束ないビリング推定で山口良一)の車に乗るタカコに対し、シェリーは大欠伸しながら電車で通学。風俗のアルバイトで月数十万を稼ぎ、大学には殆ど顔を出さないシェリーは久々に再会したタカコを、お気楽にキーホールに誘つてみる。
 配役残り、新東宝が別タイトルでリリースしたVHS―現在はDVDもあり―では「田口ゆかり 見せちやひます」と、三番手にして堂々とだかシレッと看板をカッ浚ふ田口ゆかりは、パンジー(タカコの源氏名)・シェリーとキーホールのナンバーワンの座を争ふキャンディ。張形とペニパン持ち出し、ペニパン越しに張形を挿入するといふ斬新なプレイも披露しつつ、敵情視察したタカコには、「感じてなんかゐやしない癖に、ただの見世物だは」と痛罵される。森林太郎は・・・・教授と二言三言遣り取りを交すキーホールの従業員?磯村一路と米田彰の変名臭い小磯一巳と米長一彰は、キーホールを―ついでに大学も―辞めたシェリーの、移籍先に於ける客要員??とかく男優部にはボロボロに手も足も出ないものの、新宿電話局の二人は定石からいふと演出部か。
 高橋伴明率ゐる高橋プロダクション解散後、残された面々で立ち上げた制作集団ユニット5。福岡芳穂・米田彰・磯村一路(a.k.a.北川徹)・周防正行(順不同)と五人組のもう一人・水谷俊之の通算第三作。因みに家にないゆゑ当然よくも何も全然知らないが、目下水谷俊之はテレビを主戦場としてゐる御様子。悪友から覗き部屋のアルバイトに誘はれた、シェリー曰く“何するにも真面目”な、自称“在り来たりの女子大生”が、やがてキーホールに家財道具の一式を持ち込み、遂には電話も引き、覗き部屋で寝起きするにまで至るといふ展開が実にユニーク。ついでに電話を引くなるイベントが、発生する点には時代を感じさせる。今ならばスマホなりWi-Fiを持ち歩けば事済む話で、全く以て味気ない。閑話休題、重ねてユニークなのが、女の裸をほぼ全て―客の鼻先でポーズを取り写真を撮らせる、シェリー移籍先での様子を僅かに除く―覗き部屋の“舞台”に於けるパフォーマンス―キーホールで生活し、断じて風ではないタカコの自慰ですら―として処理し、男女が性交するシークエンスが半カットたりとて一切存在しない奇抜な機軸。いつそパンジー×シェリーの百合すら放棄し、濡れ場から一切の絡みさへ廃してしまへばなほ独創的であつたのに。クライマックスをオナニーだけで魅せきる熱量を確かに感じさせる、タカコのライブはマジックミラー越し、満場の観衆の拍手と各々のブースを打ち鳴らすオベーションを招く。屈折しながらも辿り着いた感動の大団円、かと思ひきや。何より素晴らしいのがお嬢さんお嬢さんした柔和なイメージを一転、山本さゆりが鋭く一閃する、映画を観るなり見てゐる観客含め一切合財を奈落の底に叩き落す、ハードボイルドに衆生を突き放したドライなエモーションが圧巻。この時、意欲的に映画に取り組む若き水谷俊之は一見対極中の対極に位置する、裸映画に裸以外の何物も、時には映画をも求める心性を貪欲と戒めるかの如く否定する、大御大・小林悟の厳格な父性にも似たダンディズムに、偶さか邂逅しかけてゐたのかも知れない。


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 「妻くどき撮り 変態くらべ」(1993『変態妻 わいせつくらべ』の1999年旧作改題版/製作:旦々舎/提供:Xces Film/監督:浜野佐知/脚本:山崎邦紀/撮影:河中金美・稲吉雅志・難波俊三/照明:秋山和夫・荻野真也/音楽:藪中博章/編集:《有》フィルム・クラフト/助監督:広瀬寛己/制作:鈴木静夫/ヘアメイク:酒井智恵子/スチール:岡崎一隆/録音:銀座サウンド/現像:東映化学/出演:小林亜樹・真下奈々江・森山芽衣子・衣さよこ・石神一・杉本まこと・芳田正浩・栗原良・神戸顕一)。助監督の広瀬寛巳ではなく寛己は、本篇クレジットまゝ。
 男の体を舐める女の舌のクローズ・アップにクレジット起動、二番手と三番手がポスターと異なるビリングに面喰ふ。張形を舐める画に監督クレジット、咥へ込んで暗転タイトル・イン。竹村祐佳を軽くリファインしたやうな主演女優が、「駅前カルチャースクール」オープン準備の女性モニターを募集する、タウン誌の広告に目を留める。駅前カルチャースクールを仕掛けるのはTAMAカルチャースクール準備室こと、気になるしくじりの内容が、終に語られずじまひの元大手広告代理店マンの日下(石神)に、元風俗店経営の小野(杉本)と元スカウトの三田(芳田)。小林亜樹がシャワーを浴びて軽く一裸、首から上は些か老けてる割にはいはゆる美乳のいいオッパイが意外性の眼福。晩酌する夫のナガノ(栗原)に、セツコ(小林)は小説を書きたいとモニター応募の承諾を求める。適当に首を縦に振りつつ、ナガノが小説よりも子作りと突入する夫婦生活の導入が、あまりにも鮮やか過ぎて草が生える。セツコの他に、ハスキーボイスの馬面(真下奈々江と衣さよこが特定出来ない/以下馬面>あんまりだ)、旦々舎に住むもう一人(同/以下旦々舎)、その御近所(森山芽衣子/以下御近所)も駅前カルチャースクールに関心を持つ。背水の陣で挑むTAMAカルチャースクール準備室の面々は、出資者に提出する報告書のために銘々モニターとの接触を開始。ところが英会話の受講を希望する旦々舎の目的は、黒人男とのセックス。御近所は御近所で、女の性を女の側から描くシナリオ・ライター。セツコが書きたい小説の中身とは、夫の目の前で犯される人妻の話。三田と小野が二の足を踏み、日下は明らかに尋常ではないセツコのテンションに怖気づく火に油を注ぎ、馬面に至つては資格マニアを拗らせた得意の性技の資格認定を求め、三田は最早ヤケクソで据膳を喰ふ。
 正直残弾僅かともなつて来た、DMM浜野佐知殲滅戦、1993年全十二作中第五作。三人の男達が、カルセン開校に再起を賭ける。といふとプロジェクトXじみた主人公が男の、即ち浜野佐知的には甚だらしからぬ物語になるのかもと思ひきや、モニターとして接触した奥様方がどいつもこいつも華麗に猥褻度合いを比べる変態妻揃ひで、自由奔放に解き放たれる女達の性的な妄想なり要望に、三人がクラクラ翻弄される展開は結局何時も通りの浜野佐知、実に清々しい。全員濡れ場もこなす結果、却つてビリング推定を拒む甲乙つけ難い、といふか要は乙ばかりの微妙な女優部が、唯一の難点らしい難点とはいへる。突発的に琴線をマキシマムに弾かれたのは、旦々舎が臆面もなく膨らませる願望。イマジン中腰から下をシャネルズした男優部(識別不能)が登場するのは、よもや妙に温存される神戸顕一は黒人役で出て来やがるのかと、ピンク映画史上空前絶後のプリミティブなギミックの予感に、思はずPCを置いた机上に身を乗り出した。結果的に絡みに参加することもない神戸顕一の甚だ中途半端な配役は、劇中一切姿は見せない日下のコネのカルセン開校のスポンサー“会長”の、使ひの者。反面栗原良(a.k.a.リョウ・ジョージ川崎・相原涼二)はセツコの小説の中で、縛り上げられた眼前女房を手篭めにされ、重厚に地団太を踏む十八番を綺麗に披露する。各講座の内容が“現代セクソロジー/寝室の文化史/写真とフェティシズム/ウーマン・ラビング/独身者の科学/異装のセクシュアリティ”と、セクシュアルな方向に舵を切つた「ナイト・カルチャースクール」といふ形で、三馬鹿の企画は目出度く船出を迎へる。ところまでは娯楽映画的に十分順当ともいへ、余した尺は夜のカルセンの模様が描かれるでもなく、残り十分をナガノ家の夫婦生活で堂々と切り抜ける。最終的に男供は正しく蚊帳の外に放り出し、始終を何故かセツコの統治下においてみせるのは、流石といふかある意味といふか、改めて浜野佐知なればこそ。


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 「人妻銀行員 不倫密会」(1998/製作:シネマアーク/製作協力:THE PSYCHEDELIC PLASTICRAINS/提供:Xces Film/監督:瀧島弘義/脚本:本調有香/企画:稲山悌二《エクセスフィルム》/製作:奥田幸一/撮影:村川聡/照明:多摩三郎/編集:酒井正次/音楽:斎藤慎一《smp recordings》/助監督:久方真路/監督助手:玉城悟・松岡誠/撮影助手:藤井昌之/照明助手:藤森玄一郎・堀口健/キャスティング:綿引近人/スチール:本田あきら・佐藤初太郎/ネガ編集:三上えつ子/録音:シネキャビン/効果:東京スクリーンサービス/現像:東映化学/現場応援:国沢実・横井有紀/衣装協力:小倉久乃・桧山勇・Material Voice/撮影機材:ナック/フィルム:愛光/台本印刷:ユタカスタイラス/協力:木澤雅博・秋山兼定・大工原正樹・光石冨士朗・金田敬・野口勝広・槇原めぐみ・加藤章夫・細谷隆広・大山雅義・木村富貴子・ゴジラや・丸号・Dear Friends/出演:井上知子・岸加奈子・吉行由実・川屋せっちん・森羅万象・臼井星絢・国枝量平・内藤忠司・岡本暁・石阪稔朗・田上陽介《子役》)。出演者中、内藤忠司以降は本篇クレジットのみ。
 ノイズに片足突つ込んだ虚仮威しの劇伴鳴る中、東都銀行の朝礼風景。その他女子行員と同じ制服だが課長らしい恵(吉行)から書類を受け取り、外回り隊が各々出撃する。紅一点のトモコ(井上)が、渡されたばかりの書類をクシャッと握り潰しタイトル・イン。タイトル明けは、調理中の茹で卵。トモコと、夫のタカヒロ(森羅)の朝つぱらから夜の営み。因みにjmdb準拠で、今作が今をときめく量産型娯楽映画界の重鎮・森羅万象のピンク映画初陣。見た目が殆ど全く変らないゆゑともすると通り過ぎがちになつてしまふのかも知れないが、何気に再来年で二十の周年である。ピンクに、再来年があるのかどうかは知らないけれど。尤も、同時にさういふ物言ひがリアリティを持ち始め、果たして何十年経つのかといふ話でもある。閑話、休題。共働きにしては何故か、二人は持ち家のローンの支払ひで尻に火が点くどころか、殆ど首さへ回らなくなつてゐた。とりわけトモコに至つては金融のプロであるにも関らず、一体どんな無茶なローンを組んだのか。顧客(国枝)から三百万を預かつたトモコは、客に渡す控へは三百万で切つておいて、東都に提出する受取証は二百万で偽造。なほかつ、素知らぬ顔で国枝量平に体を任せる。帰還後のトモコに、恵が言ひ寄る。トモコに横領の手口を指南したのは、恵だつた。不自然に人気のない行内にて、二人は美しい百合を咲かせる。
 配役残り川屋せっちんは、トモコ大学同期の元カレ、にしてブランクの有無はさて措かれながら、兎も角目下関係は継続だか再開してゐる田中ケン。店長・木澤雅博で御馴染のアンティークトイ店「ゴジラや」の、二号店「ゴジラや2」―現存せず―店長。岸加奈子は息子・リョータが「ゴジラや2」で万引きしたのか否か外堀は絶妙に有耶無耶のまゝに済まされつつ、ケンと逢瀬の末に、金まで支払ふハイソな人妻・アキコ。水族館男優部の臼井星絢は、泥酔して田中家に転がり込む矢張り大学同期・サトシ。世事に疎いケンに、トモコの枕を投げる、内藤忠司がトモコがM字を披露する劇中二人目の顧客。リョータが家出したと「ゴジラや2」に現れたアキコは、衝動的に尺八を吹く。田上陽介は、その模様を通りから目撃する妙にハイカラな紛争の男児、この坊やがリョータなのか否かも不明。石阪稔朗と一緒くたのビリング推定で岡本暁は、恵を連行する刑事。
 目下は長く映画を離れ、舞台撮影を主に活動する瀧島弘義のデビュー作。何処で躓いたのか“せじまひろよし”と、お名前を間違つて覚えてゐた粗忽は内緒だ。金に困窮したトモコが渡る、蜜の匂ひ漂ふ危ない橋。妙にモテるケンを間に挟み、トモコとアキコが織り成す三角関係。硬質な画作りにも支へられ終始思はせぶりに種だけは蒔き続けておいて、結局何ひとつ満足には刈り取らずに豪快に振り逃げてみせる物語自体には、特段の魅力は感じない。但し、絶妙な決して美人ではなさが寧ろエロい主演女優の脇を固めるのは、絶対美貌を誇る岸加奈子と、妖艶な大巨乳を爆裂させる吉行由実。一度きりしかない吉行由実の絡みが、しかも頗る短いものである点に関しては不満も残らなくはないにせよ、総体的には超強力な三本柱を素直に見せ魅せる、裸映画として素晴らしく高い水準で安定してゐる。山岡隆資の最初で最終作「人妻秘書 肉体ご接待」(1995/脚本:七里圭/主演:白井麻子/a.k.a.工藤翔子)同様、新人監督が覗かせる映画的野心は―正しく―ほどほどにいなした上で、キッチリ商品として仕上げさせて来る、エクセスの強さがより際立つ一作である。


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 「エロ番頭 覗いてイヤン!」(2015/製作:OKプロモーション/提供:オーピー映画/監督:小川欽也/脚本:水谷一二三/撮影監督:創優和/録音:小林徹哉/編集:有馬潜/助監督:加藤義一/音楽:OK企画/監督助手:小関裕次郎/撮影助手:佐藤雅人・宮野和真/協力:鎌田一利/録音所:シネキャビン/仕上げ:東映ラボ・テック/スチール:津田一郎/出演:広瀬奈々美・真島かおる・佐倉萌・岡田智宏・なかみつせいじ・倖田李梨・平川直大・久須美欽一・姿良三)。オープニングとエンディングとで、ビリングが異なる。オープニングでは倖田李梨が、佐倉萌と岡田智宏の間に入る。脚本の水谷一二三と出演者中シレッとトリを務める姿良三は、小川欽也の変名。
 実名登場御馴染伊豆高原のペンション「花宴」に、識別不能の宅配業者(演出部だとすると小関裕次郎か)が航空便の荷物を届けに来る。荷物を手渡すとサインも貰はずに業者が捌ける無頓着さが、誠大らか。番頭の中沢裕二(岡田)が個人輸入したのは、錠剤と粉末タイプの媚薬。二種類ある点に、劇中特に意味はない。何を考へてゐるのか粉末をアイコに溶かして自ら飲んだ中沢が、女客に試してみる何気に大概な蛮行をほくそ笑むと波打ち際の絶壁の遠景に、ザックリいへばポール・モーリア風のOK劇伴が長閑かに鳴つてタイトル・イン。オープニング・クレジットに連動して、主演女優を軽く、あるいは正しく顔見せ。
 明けて河野ミチル(真島)と小林由香(佐倉)の二人連れが、花宴に到着する。絶妙に訳アリ風情なカップルを中沢は親子と誤認しつつ、二人は特段否定もせずに部屋に通される。尋ねられた由香に軽く伊豆観光トークを投げた後、旦那の出張中に一人旅の人妻・浜崎佐和子(広瀬)が入つてゐる頃の風呂を中沢は覗きに行く。エロ番頭が覗いてイヤン!となるなのは全く以て麗しい限りにせよ、ところで、一体何時の間に佐和子は花宴にチェック・インしたのか、そこスッ飛ばすのかよ。大らかどころの騒ぎぢや済まないぞ、フリーダム過ぎる。一方、もしくは実は。ミチルと由香はミチルの父親が決めた縁談絡みで火種を抱へる、百合の花香る間柄にあつた。
 配役残り姿良三は、花宴の支配人・木下充。なかみつせいじが佐和子がテレフォン・セックスを敢行する夫の英介で、倖田李梨がその際英介の傍らで息を潜ませるマッサージ師。それだけの登場かと思ひきや、本域の豪華四番手として英介と一戦交へるのには軽く驚いた。英介が上手く口説いたものか、初めからパンマであつたのかは不明。要は覗きの怪我の功名で中沢に早期発見され事なきを得たものの、由香はミチルとの無理心中を仕出かす。荒木太郎2009年第二作「屋台のお姉さん 食べごろな桃尻」(主演:飯島くらら)以来の大復帰を目出度く遂げた久須美欽一は、病院に担ぎ込まれた娘を迎へに来る、ミチルの父親・欽一。一旦リタイア後の復帰時と変らぬ御姿を披露、木下即ち小川欽也と同じフレームに納まるカットでは、何だかんだで馬鹿にならない歴史なり偉大な戦績の重みを感じさせる。一件を機に引退した木下から中沢が花宴を継いだ三ヶ月後、手の平返しなラブラブぶりのミチルと婚前旅行で花宴に現れる平川直大が、欽一に決められたミチルの婚約者・大川晃一。部屋に入るやヤリたがる、ポップな、あるいは裸映画的には頗る簡潔なさかりのつきつぷりが清々しい。
 伊豆で、映画を、撮る。それ以外の一切を求めず、そのことのみによつて完結する。今上御大・小川欽也が終に辿り着いた安らかな桃源郷・伊豆映画の、デジタル時代もワン・アンド・オンリーな地平を飄々と驀進する最新作。今作のハイライトは、わざわざ開巻を使つて種を蒔いた媚薬が起爆する一騒動、では別になく。木下から、佐和子に依頼されたマッサージが捕まらなかつた旨を伝へられ、詫びを入れに向かつた中沢が、揉んで下さらないと豪快に膳を据ゑられる件に拍手大喝采。この期に及んでさういふ底の抜けたシークエンスを堂々とした貫禄で撮り抜け得るのも、最早この星の上には小川欽也くらゐしか見当たらないのではなからうか。ナベや―男役が自身でなければ―清水大敬でも十二分に形になりさうな点に関しては、一旦さて措く。国沢実や荒木太郎は、このまゝ大成しまい。見せたい部分にのみ的確に最低限の照明を当てる、結構鋭く踏み込んで煽情的な広瀬奈々美の絡みと、終始長閑なOK劇伴とのミスフィットは何気に耳につくともいへ、この際さういふ些末は気にするな。裸映画に於ける濡れ場と音楽の相性が、些末と片付けられる事柄なのか否かは知らないフリをする。グランドホテル、もといペンション形式の一作にて、ヒロインが舞台となる宿の敷居を跨ぐ段取りすら端折つてみせる始末で、当然物語らしい物語も存在する訳がない。けれども蒸し返していふが、伊豆で映画を撮る以外の一切を求めず、そのことのみによつて完成するのが伊豆映画だ。昔日のやうには多作してゐないにも関らず、女の裸以外の映画的な色気には一瞥だに呉れない。いまなほ逆説的にストイックなピンク魂を失はない小川欽也は、全く以て量産型娯楽映画作家の鑑。反面繋ぎのカットではそこかしこの伊豆の風光明媚を押さへ、三番手までの女優部が、さくらの里や伊豆ぐらんぱる公園を巡る一手間は決して惜しまない。断じて惜しみはしないのが、改めて伊豆映画の伊豆映画たる所以。ここいらで伊豆の観光協会から、小川欽也のところにPR動画の依頼でも来ないかな。


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 「発情娘 糸ひき生下着」(1998/製作:?/監督:吉行由実/脚本:五代暁子/撮影:小西泰正/照明:渡波洋行/助監督:瀧島弘義/製作担当:国沢実/編集:酒井正次/音楽:加藤キーチ/監督助手:横井有紀/撮影助手:小田嶋信幸/照明助手:小倉正彦/スチール:大崎正浩/協力:荒木太郎・Dear Friends/録音:シネキャビン/現像:東映化学/タイトル:道川昭/配給:大蔵映画《株》/出演:林由美香・河名麻衣・石川雄也・吉行由実・川瀬陽太・原知佐子)。
 タイトル開巻、方位磁石?と地図を舐めて、ディスプレイデザイナーのマリカ(林)が、屋上から望遠鏡を覗く。望遠鏡視点込みにしても、カメラ少々グラグラ動き過ぎ。赴任先が東京から東南といふと何処ぞの離島か、マリカとマンションを共同購入した同居人で、コンサルか何かよく判らん仕事の中沢か中澤晃(石川)が、見える訳がない遠さで望遠鏡を覗くマリカを後ろからギュッとする。軽めの絡み初戦挿んで、晃がゐない間の女の一人所帯を防ぐべく、晃の幼馴染で、イラストレーターのシュン(川瀬)が到着する。猫に魚の番をさせるつもりか、さういふ心配は御無用。晃のパジャマを借りられることを喜ぶシュンは、ゲイであつた。
 配役残り河名麻衣は、マリカの大学の後輩でデパガの比奈子。遊びに来た際シュンを見初め、喰つても貰へぬ膳を据ゑる。吉行由実は晃と一緒に深い森の中を調査して回る、同僚・杉崎薫。目下進行中のプロジェクトを原因に離婚、双方何だかんだに感けた事後。凄いタイミングでマリカから晃に電話がかゝつて来るや、外は雪降る窓辺にて聞こえよがしにくさめする、ある意味如何にも吉行由実らしいキラー・パスを通す。どういつた伝で連れて来たのか原知佐子は、シュンの様子を見に来る母親。
 吉行由実1998年第一作、通算第三作。吉行由実×林由美香コンビの代表作の一本として、流石に昨今は林由美香の名前も遠くなつた感が否めないにせよ、長く誉れ高かつた一作とこの期にDMM戦。今年で閉館後十年となる、福岡オークラで観てゐた可能性も大きく残しつつ、今回中身に見覚えは特になかつた。二人で三十年ローンまで組んでおいて、寧ろ頑ななまでに結婚といふ形には拘らないマリカと晃。片やシュンが安穏と夢想する、晃帰京後の生活臭のしない三人での新しい共同生活。川瀬陽太の線の細さが象徴的な、モラトリアムな物語には四度目のゾロ目となるこの齢にもなると、さしたる魅力は感じない。シュンのマリカに対する目線いはくの、“好きな人が好きな人つて好きだよね”だなどと腐れJポップの歌詞じみたクソ恋愛談議に関しても、渾身の力を込めてどうッでもいい。寧ろ残酷な無理解を振り回す比奈子なり、貫禄の安定感を迸らせる原知佐子、枝葉の先にちらほら咲いた花の方が目立たなくもない。ともいへ、今でいふアラサーに突入して以降の―トゥー・アーリーな―晩年、若い頃の芋つぽさがリファインされ別人とまでいふと言葉も過ぎようが奇跡のやうに美しく輝き始める林由美香が盟友・吉行由実のメガホンの下、ただただ普通に笑つてみせたり怒つてみせたり。トコトコ歩いてみたりおどけてみたり、マッタリとしてみたり。今作以降、最終作「ミスピーチ 巨乳は桃の甘み」(2005)に至る吉行由実映画の中での、最早映画本体が面白からうとなからうとそれをも些末とさて措かせ得る、桃色にくすんだ銀幕に舞ひ降りた天使・林由美香の永遠のキュートさに関しては、改めて再確認した次第。返す刀で現在にも目を向けると、地から足の浮いたお花畑にせよ白馬に乗つた王子様が迎へに来て呉れる類の寝言にせよ、ひとまづセンシティブではあつた旧作と比べてみると、三本柱を中心に土台場数不足のエクセスライクな俳優部の問題もあるとしても、無茶な大技を振り回すきらひが目につく以前に、近作は全般的に些か雑ではあるまいか。


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 「色情旅行 香港慕情」(昭和48/製作:日活株式会社/監督:小沼勝/脚本:中島丈博/企画:伊地智啓/撮影:山崎善弘/美術:若松正雄/録音:福島信雅/照明:新川真/編集:山田真司/音楽:月見里太一/助監督:八巻晶彦/色彩計測:前田米造/現像:東洋現像所/製作担当者:服部紹男/出演:宮下順子・小川節子・井上博一・やかた和彦・片桐夕子・白井鋭・清水国雄・賀川修嗣・南昌子・趙宣龍・葦篠儀・甘開物・葦俊)。出演者中、賀川修嗣と趙宣龍以降は本篇クレジットのみ。クレジットはスッ飛ばす配給に関しては事実上“提供:Xces Film”。
 妹・室井匠子(小川)の部屋を借り、浅利章子(宮下)が東洋貿易に勤務する夫の後輩・諸橋郁也(清水)と不倫の逢瀬。部屋を二人に渡し外出した匠子が向かつたのは何と、知らぬは亭主ばかりなり、章子の夫にして匠子の義兄・住夫(井上)が、呑気に家内でゴルフクラブを振る浅利家。何処までも呑気に住夫は欠片も気付かないものの、絶妙に膳を据ゑかける気配を窺はせつつ、結局匠子は義兄宅も辞する。諸橋を誰かしらのお供の香港出張に送り出し、帰宅した住夫は愕然とする。章子が、置手紙を残し諸橋と香港に飛んでゐたのだ。てな塩梅で、章子を捜すべく、住夫も香港に乗り込みタイトル・イン。見るから危なつかしげに章子捜しに奔走する住夫は、治安の悪さうな界隈にてまんまと四人組に絡まれる。その場にフラリと飛び込んで来たやかた和彦が、時代を感じさせる手刀で暴漢をビッシビシ圧倒。どう見ても堅気には見えない矢吹豪(やかた)は、何故だかその後も住夫に手を貸す。章子を発見したといふ矢吹に、既に正規の休暇も消化した住夫が連れて行かれた先は、住居代りの―航行可能なのか不能なのか微妙な―舟々が軒先もとい舳先を連ねる水上スラム街。そこにゐたのは宮下順子の二役ではあつても章子ではなく、シャブ中の支那人売春婦・春玲だつた。
 配役残り白井鋭と賀川修嗣がよく判らないけれど、多分東洋貿易香港支社長か支店長の添田邦道と、日本語の出来る香港警察霊安室担当官。日本人観光客を拉致し、売春窟に放り込む。大概などアウトローの矢吹の稼業に、何時しか住夫も加担。片桐夕子と南昌子は、二人にトッ捕まる大阪からの旅行者・君子と利枝。現地トラに関しては性別すら手も足も出ないが、裸要員も結構な数投入される。
 ロマポ初海外ロケ作との、小沼勝昭和48年第二作。因みにロマポ香港ものの最終作は、旦那・木俣堯喬の「中川みず穂 ブルーコアin香港」(昭和61/新東宝)とプロ鷹が恐らく二本撮りした、珠瑠美の買取系「香港絶倫夫人」(脚本:木俣堯喬/主演:川上雅代)。重ねて因みにピンクだと現状海外ロケ最終戦は、フィリピンにまで出張り台詞は何時ものシネキャビンで日本語を豪快にアテレコした、下元哲の「淫婦義母 エマニエル夫人」(2006/脚本:関根和美・水上晃太/主演:サンドラ・ジュリア)。
 今作に話を戻すと、ビリング頭はあくまで宮下順子とはいへ、ビッグ・バジェットな逃避行を仕出かした、章子に関してはものの見事に綺麗に完スルー。住夫に向けられる匠子の健気な眼差しも、精々最初と最後を整へるお飾り程度。平凡なサラリーマンが、苛烈なリベンジャーを経てやがて一子相伝的に一人前の外道として異国の地で一皮剥ける多国籍フィルム・ノワールに、殆ど女の裸すら何処吹く風な勢ひで完全に振りきれてみせるのが面白い。最初に打たれたシャブで錯乱した住夫が、無数の時計に腰まで埋まりながらハンマーで時計を叩き壊し、鉄格子の中ではゾンビみたいな造形の阿片中毒者の群れに、章子だか春玲が凌辱される。結構延々続く、まるで地獄巡りのやうなバッド・トリップ描写は、わざわざ海を渡つて何を撮りに行つてゐるのかとツッコミたくなるほどの異様な迫力。出し抜けな最期は藪蛇さと紙一重ともいへ、次第に消耗して行く住夫を慮つた、矢吹がフライパンのまゝ差し出す炒つた玉蜀黍も妙に旨さうだ。宮下順子・小川節子・片桐夕子と一線級のスターを三枚並べる豪華な布陣を敷いておいて、一見正体不明に入れ揚げる矢吹と、ある意味その期待に応へる住夫。前面に押し出された二人の男の宿命的なドラマに、現にそれしか印象が残らないのが一興である。


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 「果てなき欲望 監禁シェアハウス」(2015/製作:Blue Forest Film/提供:オーピー映画/監督:小山悟/脚本:当方ボーカル/プロデューサー:竹洞哲也/撮影・照明:田宮健彦/録音:松島匡/編集:有馬潜/助監督:北川帯寛/特殊造形:土肥良成・大森敦史/スチール:阿部真也/音楽:膳立煙猫/監督助手:ワダミサ/撮影助手:高嶋正人/仕上げ・効果:東映ラボ・テック/整音:EEスタジオ/制作応援・草毟:小鷹裕・相川瑞紀/車輌応援:まみくん3歳/出演:神咲詩織・Maika・青山真希・津田篤・山本宗介・和田光沙・愛河シゲル/写真協力:佐々木麻由子)。出演者中、愛河シゲルは本篇クレジットのみ。
 東京都郊外、スローバラードでなく、カーラジオから流れて来るのは荒れ模様の天気予報。オーナー・谷亘ワタル(津田)の車で、北原佐奈(神咲)がギリッギリ都内のシェアハウスを目指す。スマホが彼氏のLINEを着弾した流れで、回想パート突入。佐奈の彼氏でゲーム業界で働く石岡秀機(山本)は、将来を見据ゑ一年間のアメリカ留学を決意。佐奈も佐奈で派遣稼業と賃貸の契約切れがちやうど重なり、安い郊外のシェアハウスへの転居を思ひたつ。てな塩梅でオッ始まる神咲詩織の絡み初戦をタップリタップリ、タップンタプンプリ―アホか―愉しませつつ、車は一旦直近の―それでも大概遠い―コンビニに立ち寄る。佐奈が車を離れるや、津田篤がにこやかな表情をスッと冷たく豹変させるカットが鋭く歪(ひず)む。よせばいゝのに、蝶の標本が家内を飾るシェアハウスに到着。佐奈以外のハウスメイトが頑なに姿を見せない中、昼食から夕食まで。部屋の窓に張られた物騒な鉄格子や、夕食後佐奈が浴びるシャワーで再びオッパイオッパイ( ゜∀゜)o彡°させる件をも投げ、何処までも進む尺にオーラスまで持ち越すものかと思ひきや。谷垣と二人庭呑みする佐奈が意識を失つたところで、何と開巻二十分を経ての何気に凄いタイミングで飛び込んで来るタイトル・イン。翌朝佐奈が目を覚ますと、私物ではない服に着替へさせられた上、手足は鎖でベッドに繋がれてゐた。
 配役残り和田光沙は、シェアハウスから徒歩で買物に出た佐奈の傍らを、どうかしたテンションでカッ飛ばして行くチャリンコ女。加藤義一2013年第四作「女教師 秘密の放課後」(脚本:鎌田一利/主演:辺見麻衣)以来と、気がつくと随分御無沙汰の佐々木麻由子は、キメッキメの女優みたいな―女優なのだが―写真が食堂の壁を飾る谷垣没母。忘れられがちになりかねないのかも知れないが、ピンク映画初陣は渡邊元嗣2012年第一作のMaikaと、ex.逢崎みゆこと青山真希が、佐奈の監禁メイトの三田宏海と中原美枝。青山真希に至つては裸を見せる前に退場するゆゑ、一体濡れ場はどうするつもりなのか地味にハラハラさせられた。問題が、愛河シゲルが何処に見切れてゐたのだか寝落ちてもゐないのに全く判らない。冒頭の天気予報を読んでゐたのは、女の声だつたつけ?
 前作兼単独デビュー作「ドM卒業 さよなら、ご主人様」(主演:佐山愛)から三ヶ月と全く順調なペースで公開された、小山悟の2015年第二作。日曜洋画劇場放送時には沢田研二がテレンス・スタンプを吹替へた、その手映画の古典的名作「コレクター」(1965/英・米/監督:ウィリアム・ワイラー/主演:テレンス・スタンプ、サマンサ・エッガー)に藪蛇な負け戦を挑んだ、いはゆる監禁ものの一作。“藪蛇な負け戦”といつて、二作が掠るのは女を監禁する主人公の趣味が蝶の採集といふ、一点のみに限られるといつてしまへば実も蓋もないのだけれど。星の数ほど撮り散らかされた同工異曲の類作群と一線を画さうとする意欲あるいは手数が特段見当たらなければ、前回が調教で今作が監禁となると、小山悟自身の嗜好もしくは志向性自体が屈折してゐる節もある程度は邪推されるにしては、かといつて歪(ゆが)むは歪むなりに厳しく踏み込んでみせるでもない。量産型娯楽映画的にはよくいへば御行儀がいゝともいへ、万事が類型性の枠内より半歩と出でない始終は、天候にも恵まれず、わざわざそこそこ遠方にまで出張つておきながら決定的なショットひとつ押さへられずじまひでは、なほさら清々しいほどに平板。尤も二三番手はビリングをも無効化する勢ひで共々瞬間的に通過する反面、ひとまづとりあへず最低限、神咲詩織の裸だけは少なくとも量的には十二分に見せ倒すにつき、裸映画としてはギリギリ徳俵一杯に踏み止(とど)まる。尤も裸に徹して戦ふなら戦ふで、たとへば大門通2007年第一作「奴隷調教 監禁SM御曹子」(主演:今野由愛)の如く、腰から下の琴線を激弾きする、責めの一工夫が欲しかつた心残りは決して小さくない。


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 「変態調教 白衣のうめき声」(2001/製作:多呂プロ/提供:オーピー映画/監督:荒木太郎/脚本:内藤忠司/撮影:前井一作・横田彰司/編集:酒井正次/助監督:田中康文/制作:小林徹哉/応援:広瀬寛己/音楽:篠原さゆり/ポスター:木下篤弘/タイトル・パンフ:堀内満里子/録音:シネキャビン/現像:東映化学/出演:横浜ゆき・篠原さゆり・時任歩・TAKAO・石川雄也)。応援の広瀬寛巳ではなく寛己は、本篇クレジットまゝ。
 畳の上に横たはつた顔面には包帯を巻いた白衣の女が、荒々しく犯される。女を縛り鞭打つ、男も仮面で顔を隠す。求められ男は女の首に手をかけるも、加減を誤つたか女は事切れる。狼狽へた男が呆然自失とモーゼル銃でこめかみを撃ち抜き、ススキ野にマンガ絵のタイトル・イン。クローズアップを多用した煽情性溢れるカットは、昨今の荒木太郎には見られない手数かも。枯れたのか単に面倒臭いのか、もつと観客を勃たせることに情熱を傾けて欲しい。
 病床に臥せる資産家が派遣看護婦を絞殺、事後自らも自殺。以来幽霊となつた二人が取り憑き、取り壊さうとする度に事故が起こる山荘を、『週刊民衆』のライター・山野辺か山野部ミサ(横浜)が、彼氏で恐らく普通のサラリーマン・次郎(石川)の運転で目指す。昨夜は遅く寝不足の次郎に対し、ミサは眠気覚ましにと尺八を吹く。そろそろここいらで、運転手に助手席から尺八を吹く、フラグを立てるのは已めにしまいか。到着した二人を、薄気味悪い仏頂面の助手・キジマ里子(篠原)を伴つた、超常現象研究家の芳倉カズミ(TAKAO/a.k.a.縄文人)が出迎へる。幽霊映画風の如何にも思はせぶりな―その癖中身は特にない―繋ぎと、ピンク映画必須の濡れ場の導入がものの見事に噛み合はない横浜ゆき(a.k.a.ゆき)V.S.石川雄也(現:ダーリン石川)第一戦を経ての翌日。一人帰京するかとした次郎は到着時と同様、別荘を離れようとするや激しい違和感を覚え、どうしても帰ることが出来なかつた。
 配役残り時任歩は、森を散策するミサが目撃する、白衣×自慰×血の雨×振り返ると顔面包帯とかいふ、盛り過ぎで訳が判らなくなつた女。荒木太郎が、離れにて時任歩を熱ロウ責めする人夫。その他計四名登場する人夫が、微妙に詰めきれない。六人並んだカットで画面左から小林徹哉と内藤忠司、荒木太郎と時任歩挟んで広瀬寛巳までは辿り着けつつ、一番右がどうしても不明、田中康文には見えないんだけどな。かうなると矢張り、小さな液晶画面の限界。
 昨年死去した縄文人の初期の軌跡を確認すべく、DMM戦を挑んだ荒木太郎2001年第一作。別荘を訪ねる横浜ゆきと石川雄也の2ショットには、何となく見覚えがあつた。改めて整理すると、当時恒例の100円パンフにでもさう書いてあつたのか、m@stervision大哥が今作がTAKAO=縄文人の映画初出演と書いておいでなのは間違ひ。撮影は「白衣のうめき声」の方が先であつたとでもいふのならば別だが、前作の2000年最終第五作「飯場で感じる女の性」(脚本:内藤忠司/主演:林由美香・鈴木あや)が実際の初陣で、次作薔薇族「ポリス」(脚本:吉行由実/主演:西川方啓・佐藤幹雄)までがTAKAO名義。更に「ポリス」次作の「義姉さんの濡れた太もも」(脚本:内藤忠司/主演:時任歩)から縄文人名義を使用し、俳優部としてのフィルモグラフィーは薔薇族込みで全十六作となる。協力での参加も含めるとなると、一から洗ひ直す羽目になるゆゑここはさて措く。
 映画の中身に話を戻すと、森の中で時任歩を目撃したミサが逃走するカットに際して、画と音が連動してカチャカチャするいはゆる荒木調ならぬ荒木臭を持ち出す辺り、何処まで真面目に恐がらせようとするつもりがあつたのかは甚だ疑問ながら、ミイラ取りが元々ミイラであつた類の、封切りが二月末といふとお盆でもないのに、案外オーソドックスな幽霊映画。芳倉の第一声で種を蒔くまではいいとして、折り返しそこいらで話を割つてみせる豪快な尺の配分には後半丸々どうするのかと別の意味でハラハラさせられつつ、役目を果たしたTAKAOと篠原さゆりの、穏やかな笑顔は一作のハイライトたるエモーションを静かに、且つ力強く撃ち抜く。ラスト十分も、残り十分を濡れ場だけでもたせるのは荒木太郎には無理なのではなからうかと思ひかけたが、二組の並走と主役二人は二回戦突入。更には四人を“井”の字風に69連結してみせる大技まで繰り出し、時任歩と荒木太郎によるエピローグまで、それなり以上に絡みのみで走り抜けてみせる。馬鹿正直に幽霊映画と捉へるならば腰も砕ける出来ともいへ、そこそこ腰の据わつた裸映画ではある。

 然し久ッし振りに目にしたが、クレジットを飾る堀内満里子(a.k.a.火野妖子)による似顔絵?が、似せる気あんのかよとこの期に及んでツッコミたくなるほど清々しく似てない。石川雄也なんて寧ろ、あるいは余程樹かず(現:樹カズ)に見えた。


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 「痴漢やらせ電車」(昭和61/製作:小川企画プロダクション/提供:オーピー映画/監督:関根和美/脚本:ミスター・チャン、瀬下孝志/撮影:大塚章弘/編集:金子編集室/録音:ニューメグロスタジオ/効果:協立音響/現像:東映化学/スチール:矢沢和彦/出演:風原美紀・水上乱・水野さおり・林桃子・武藤樹一郎・兼石耕平・石部金吉)。見慣れぬ名前ばかりのクレジットに爆死する。紀野正人(a.k.a.創優和)の名前を見切つたものの、肩書不明。出演者中林桃子が、ポスターには林もも子。同じく照明が、ポスターでは本篇クレジットとは別の名前の内田清、変名をカミングアウトしたのか?実際のクレジット通りの“配給:大蔵映画”ではなくオーピー映画提供としたのは、七色と金の王冠ではない、白黒OP開巻に従つた。
 小川企画製作であつた点に軽く驚きつつ、爆乳をブルンブルンさせながら亭主に適当なアームロックを極めた、元悪役プロレスラー・プラッシー道代(水上)が、「さあ、寝ようか」とスッキリしてさつさと寝る。夫の浩一(武藤)は配偶者にプロレス技をかけた上でないと眠れない妻の性癖に加へ、果てしなく長く残る自宅マンションのローンに溜息をつく。気を取り直し寝てからが楽しいと、道代の体に手を伸ばした浩一が、放屁を喰らふとプラッシー道代の現役時代の写真と電車を抜いて、地の画に埋もれがちなタイトル・イン。通勤電車の車中、スカートの下から抜かれるに止(とど)まる、その癖一番美人の四番手を痴漢した浩一は、隣から割り込んで来た二浪の予備校生・飯塚隆(兼石)共々林桃子にトッ捕まる。時代の大らかさか、交番に突き出される程度で済んだ浩一に、隆は痴漢の共同戦線を申し出る。
 配役残りポスターはメインで飾る水野さおりは、浩一・隆がコンビで初めて狙ふセーラー服。鴨葱とホテルに連れ込んだ二人に、事後一人頭二万五千円を請求する。懲りもせず浩一は隆を、金曜夜の公園での覗きに誘ふ。何気に、総本家の新田栄をしても達成は稀な、“痴漢と覗き”を完成せしめてゐるのが麗しい。風原美紀と石部金吉(a.k.a.清水大敬)がそこに現れる、アルプス女子大二年の村上アツコと、パーティーで知り合つたアツコを持ち帰つたコピーライター。黙つて見てゐるどころか、浩一と隆はアツコの下半身に手を伸ばす大胆介入を敢行。ところが途中で何かに気付いた隆は、非現実的に迂闊な石部金吉に見付かつてもゐないのに一人その場を離脱する。勝手に姿を消した隆を追つた浩一は落として行つた定期入れに入つてゐた写真で、アツコが隆の片想ひの相手であつたことを知る。
 新東宝での処女作から二年空いた通算第二作にして昭和61年第一作は、関根和美の大蔵デビュー作。以来今に至るまで、川井健二名義込みで大蔵・オーピー一筋で来たものかと思ひきや、jmdbによると一旦ピンクを離れる直前に、一本エクセス作―「性感エアロビクス くひこみ」(1989)―があるらしい、超絶観るなり見たい。何はともあれ、黙つて待つてゐればその内来る新作は現在進行形として勿論重要だが、かういふ凄く古い映画が何かの弾みで観られるのも全然嬉しい。
 映画の中身に話を戻すと、平凡なダメリーマンに過ぎない主人公の嫁が、わざわざ元悪役女子プロレスラーである必然性が果たして何処に見出せるのか欠片も判らない道代の造形。浩一が人に会ふ度に一々持ち出す割に、終に何ひとつ結実しない星座談議。それこそ三十年前ともなると関根和美も相当若かつた筈なのに、今と全く変らない鮮やかなほどの藪蛇具合には、色んな意味で眩暈がして、もといクラクラ来る。ともいへ、グダグダと濡れ場を連ねるに終始するかに一旦思はせ、後半物語本体は浩一が隆の恋路のために一肌脱ぐ方向で意外と正方向に展開。百年の恋が冷めた隆が、モラトリアムな電車痴漢からも足を洗ひ前を向いて歩き始める結構爽やかなラストは、紛ふことなき案外ストレートな青春映画。何となく、いい映画を観た気分にさせられなくもない一作、あくまで何となく。何はさて措き一応とりあへず、隆に抱かれるアツコが「カズヨシ、間違へた」、「マサオ、ぢやない!」、「アキラ、でもない」とヤリマン女の本性を現し目下自分を抱く男の名前に執拗に辿り着かないカットなども、関根和美らしからぬテンポのよさが光る。


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