真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「フェリーの女 生撮り覗き」(2001/製作:多呂プロ/提供:オーピー映画/監督:荒木太郎/脚本:瀬々敬久/撮影照明:前井一作・横田彰司/編集:酒井正次/助監督:森山茂雄・石田朝也/制作:小林徹哉/録音:シネキャビン/現像:東映化学/挿入歌:『フェリーの女』 作詞:瀬々敬久 作曲:足達英明 アコーディオン:〃 トランペット:永島幸代 唄:野上正義・中川真緒/協力:佐藤選人・睦月影郎/パンフレット:堀内満里子/出演:中川真緒・佐倉萌・佐々木基子・縄文人・内藤忠司・石川雄也・野上正義/ナレーション:今泉洋)。
 青地に白い意図的にプリミティブな筆致と、今泉洋のナレーションで「昔々、男のロマンは女だつた」。久保チンより九つ上のガミさんより更に一回り上で、堺勝朗と同世代。昭和30年代中盤から昭和末期にかけてピンク映画で膨大な戦歴を残した今泉洋は、翌年没する。久保チンでさへその死を後々知つたといふから、内々に継続して親交のあつたガミさんが、いはば一種の花道を用立てたのか。それ、とも。今泉洋最後の出演作「裏ビデオONANIE 遊戯」(昭和63/監督:北沢幸雄)の、脚本を担当したのが監督デビューを遥かに遡る初脚本となる荒木太郎!あるいは荒木太郎自身が、今泉洋とある程度以上近しい間柄にあつたものやも知れない。しかも、その「裏ビデオONANIE 遊戯」がex.DMMで見られると来た日には、次に見る。
 一旦さて措き、行進曲が起動して日の丸。今度は荒木太郎の、ヤケクソすれすれに性急なナレーションで「オマンコ×オメコ×ヴァギナ、呼び方は色々だが男は必死にそれを追ひ求めた」、「これはそんな時代の物語である」。東京湾フェリー運航のかなや丸を正面から抜いて、如何にもこの時期の多呂プロテイストなイラストタイトル・イン。結構デカい軍船と飲み屋街、平成24年八月に閉館した金星劇場(神奈川県横須賀市)の画を連ね、ボンカレーを皮切りに、昭和な雑誌なりポスターがこれ見よがしに撒かれた部屋。裏ビデオ監督兼ビニ本カメラマンのフーやんこと藤川オサム(縄)が、ノリの悪い恵(佐倉)相手にビニ本を撮影する。悪戦苦闘の末に、とまれバナナを使つたワンマンショー完遂。第三者の気配にフーやんが気づくと、恵の義父・菊池(内藤)がマスをかいてゐた。荒木レーション曰くフーやん同じく“エロの虫”たる菊池とフーやんの関係は、菊池が経営する電気屋―キクチなのに屋号は「PANA PORT タジマ」―で、フーやんの裏ビデオをおまけにデッキを売り捌いてゐた。佐々木基子が恵の母親にして、パートの子連れ未亡人に菊池が手をつけた真紀子。客で広瀬寛巳が、完全無欠のクレジットレスで飛び込んで来る。菊池に話を戻すと、m@stervision大哥はフーやん役が佐野和宏の瀬々ver.を観たいと仰つておいでだが、さうなると菊池役は、諏訪太郎だと思ふ、目に浮かぶツーショットが超絶カッコいいぞ。菊池がフーやんに、製作費を出す老人が脚本も自分で書き、ついでに主演もその老人とかいふ、要は俺裏ビデオを撮る話を持つて来る。恵には逃げられつつ、とりあへず乗つた老人が住む島に渡るフェリーの船内、フーやんは鼻歌でローレライを歌ふ夢子(中川)に見惚れる。
 配役残り、最終的には佐々木基子の濡れ場を介錯する役得、もとい大役を果たす荒木太郎は、真紀子にソニーのベータを売りつけられる男。フーやんが、ベータでも裏ビデオを出してゐたのかは不明、店でダビングすれば済む話だけど。てか、そもそもベータ規格に手を出してゐない、松下の特約店なのに。兎も角石川雄也は、後を追ふフーやんの眼前、夢子と自販機の物陰で致す行きずりの絡み要員。よくよく考へてみると、瀬々が悪いのか荒木太郎の所為なのか、大概な力技ではある。そして野上正義が、島でフーやんと夢子を待ち受ける菊池。ガミさん登場で、展開が偶さか走り始めるラッシュは圧巻。電車で七十の婆に痴漢した菊池を逮捕するのと、菊池が口を割り、フーやんも追ひ駆ける刑事は小林徹哉と森山茂雄。コバテツは殆ど変らないが、森山茂雄が何か凄え若い。
 別れ際、「傑作を期待してますぞ」と波止場から全身を使つて手を振る菊池に、声など届かぬのをいいことに、フーやんが「早く死ね糞爺」と爽快に毒を吐くカットと、菊池が仕出かした恵との親子丼を知り、一修羅場起こした真紀子は荒木太郎を捕まへ、二人が本番する裏ビデオを撮るやうフーやんに強要。四の五のしながらもオッ始めたゆゑ、勢ひに吞まれるやうにフーやんがカメラ、夢子はライトを構へるカットは覚えてゐた、荒木太郎2001年第四作。如何なるものの弾みか、現状といふ限定も最早必要あるまい、最初で最後の瀬々敬久大蔵上陸とは、いふものの。生死が熱くか、真逆に冷たく立籠めるでなければ、政の気配が滾るでもなく。軽妙でリリカル、且つギミック過多の下町譚は、徹頭徹尾荒木太郎の映画にしか見えない。見えないのと、よくいへば穏やかな、直截にいへば硬度に乏しい演出の中に放り込むと、これまで絶対美人かに思つてゐた中川真緒の、案外間延び具合が際立つのはこの期に及んでの発見。もうひとつ興味深いのが菊池と夢子、あるいは野上正義と中川真緒が完パケ題は「戦場に燃ゆる恋」となる裏ビデオの歌パートとして披露する、挿入歌「フェリーの女」―劇中題は「人生裏表」―のメロディが、「恋情乙女」(作詞:三上紗恵子 作曲:安達ひでや 唄:牧村耕次)とほぼほぼ同じな件。なんて思つてゐたら、足達英明は安達ひでやの本名であつた、長い付き合ひなんだね。

 とこ、ろで。ナレーション特記はないまゝに、他の俳優部とともにポスターにも名前の載る今泉洋であるが、驚く勿れ仕事はラストで再度使用される、「昔々、男のロマンは女だつた」の正真正銘一言のみ。正直その口跡は、少なくとも力強さを感じさせるものではない。


コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )




 「初恋不倫 乳首から愛して」(2001/製作:多呂プロ/提供:オーピー映画/監督・出演:荒木太郎/脚本:吉行由実/撮影:清水正二・岡部雄二/編集:酒井正次/助監督:森山茂雄・下垣外純/制作:小林徹哉/ポスター:縄文人/タイトル パンフ:堀内満里子/録音:シネキャビン/現像:東映化学/協力:長野ニュー商工会館/出演:里見瑤子・佐倉萌・山咲小春・西川方啓・中沢真美・太田始・内藤忠司・田中さん・井上さん・大町孝三・吉田康史・野上正義・長野市のみなさま)。出演者中中沢真美から吉田康史までと、長野市のみなさまは本篇クレジットのみ。なのはいいにせよ、絡みも介錯するそれなりに大きな役でポスターには―当然―名前が載るにも関らず、丘尚輝(a.k.a.岡輝男)が本クレに忘れ去られるよもやまさかの大惨事。
 長野の善光寺周りを流す車載カメラで開巻、修理屋の吉田公男(荒木)が、恋人で参道の喫茶店「夢屋」で働く苗字不詳の―早川?―小百合(里見)に車から声をかける。小百合の仕事終りを待ち二人で寿司を食つたのち、常用するラブホテル「プレジデント」に。婚前交渉の事後、一人勝手に満ち足りる吉田を余所に小百合が目を泳がせてゐると、8ミリ起動。善光寺近辺と2011年三月末に閉館した長野ニュー商工を暫し見せた上で、二人とも浴衣の、小百合と中学時代の同級生・野村健太(西川)が仲良く花火。のちに語られる撮影者は、小百合亡父。綺麗な女優さんになる夢と、小百合主役の映画を作る監督になる夢とを語り合つてタイトル・イン。明けて一転、再び35による東京の下町ショット。目下映画配給会社「東西映画」の営業として働く野村に、長野出張が決まる。一方、小百合の実家は、妹の香織(佐倉)と入婿かも知れない純一(丘)が継いだ長野ニュー商工。ところで小屋自体に話を逸らすと、スクリーンの横幅は本格的に狭く、無理からシネスコで上映すると派手に上下が空くにさうゐない。四席づつの客席が左右二列並ぶのが、妙に斬新に映る。ハッテンするには、何気に窮屈な気がする。閑話休題、長野入りした野村は、小百合と再会。楽日早めの終映後、老映写技師・山田(野上)の計らひで小百合が野村と“二人のための特別興業”を楽しんでゐると、吉田が迎へに来る。
 配役残り中沢真美から吉田康史までは、オフィスを手狭に見せるトゥー・マッチの東西映画要員か。太田始も内藤忠司もその人と知れる形では抜かれないが、頭数は合ふ。山咲小春は、既に一緒に生活する野村の婚約者・美香。長野隊は小百合と吉田の結婚に興味津々な夢屋常連客に、潤沢なニュー商工要員。
 大絶賛今をときめかない、どころか、抹殺された風情すら漂ふ荒木太郎2001年薔薇族込みで最終第五作。「キャラバン野郎」と双璧を成す多呂プロ二枚看板、「映画館シリーズ」の第一作である。荒木太郎推しの故福岡オークラで幾度と上映されてゐた筈にしては、この期に改めて見てみると何故だかワン・カットたりとて観た記憶が蘇らない。またこの男が頑なに臍を曲げ、忌避する勢ひで回避してたのかな?再度閑話休題、よくて藪蛇、しばしば積極的に邪魔な意匠で映画の素直な成就を妨げる、基本荒木調と持て囃されるところの荒木臭は、恐らくラブホ実景ではない、プレジデントの安普請サイバーパンクな美術を除けば今回鳴りを潜める。順に主演女優と、形式上のビリングに実質的な差異は特に見当たらない三番手と二番手の濡れ場を何れも入念に大完遂。先に見せるものを見せておいて、前半は小百合と野村のリユニオンを辛抱強く我慢、後半に勝負を賭ける戦法は裸映画的に極めて順当な構成に思へる。さうはいへ純真な輝きを放ち続ける里見瑤子は兎も角、面も口跡も間の抜けた西川方啓は決定力に激しく欠く。となると、極めて即物的に解するならば、要するに互ひに結婚を見据ゑた女と男が、双方後腐れない安全圏にて焼きぼくゝひに火を点けるに過ぎなくもない、始終にワーキャー騒ぐほどの感興は別に感じなかつた。感じなかつた、ものの。野村の宿での、最初で最後の情交。静かながらハイキーに照明がスパークする一回戦も美しいが、二回戦に突入8ミリの映写機が二人の体に照射するや、ニュー商工の舞台にワープする大胆な映画の嘘は、一点突破で一撃必殺のエモーションを煌めかせる。

 昭和天皇を―モックンよりも数百倍素で寄つてゐる―荒木太郎が模した、2018年第一作が土壇場中の土壇場で公開中止の大憂き目を喰らつた事件に関しては、大蔵が完全に出来上がつた新作を蔵入れし、生え抜きのレギュラー監督である荒木太郎が、以来代りの一本も撮らせて貰へずにゐる事実ないしは現状以外に、表に出て来る情報が兎にも角にも乏しく、白黒のつけやうもない。尤も、普通に考へればオーピーが脚本なり初号に目を通してゐない訳がなく、直截にいふと、荒木太郎は梯子を外された印象を持つものである。


コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )




 「日本夜伽話 パコつてめでたし」(2017/制作:多呂プロ/提供:オーピー映画/監督・脚本:荒木太郎/撮影照明:飯岡聖英/編集:酒井正次/現場演出:若月美廣/撮影助手:宮原かおり・岡村浩代/照明助手:広瀬寛巳/ポスター:本田あきら/制作:佐藤選人・小林徹哉/応援:中西さん/亀補助:三上紗恵子/音楽:龍宮首里音楽研究会/協力:福島清和・首里劇場/録音:シネキャビン/仕上げ:東映ラボテック《株》/カラリスト:石井良太/出演:麻里梨夏・塚田詩織・愛野ももな・西藤尚・本木幸世・淡島小鞠・平川直大・夕須虎馬・冨田訓広・小篠一成・稲葉良子/特別出演:牧村耕次)。出演者中、西藤尚・本木幸世と冨田訓広は本篇クレジットのみ。牧村耕次の正確なビリングは冨田訓広と小篠一成の間で、荒木太郎の俳優部に関してはオミットされる。とか何とか、あと少しの絶妙な情報量に屈する。
 可動ギミックを仕込む形で進化を遂げた多呂プロ立体ロゴと、亀の甲羅にタイトル開巻。国民年金を受け取りさゝやかにホクホク帰宅する浦島才蔵(小條)は、あちきなヒャッハー造形の不良少女三人組(西藤尚×本木幸世×淡島小鞠)が、亀を苛めてゐる現場に遭遇する。ここで、ともに銀幕初陣の小篠一成と本木幸世は黒テント一派。といふか、遅れ馳せながら今回初めて辿り着いたのだが、多呂プロでのキャリアをぼちぼち積み上げる冨田訓広がそもそも黒テント。この御三方、小篠一成は創立メンバーで、本木幸世と冨田訓広はそれぞれ2000年と2010年の入団。そして改めて声を大にして訴へたいのは、何がそんなにいいのか個人的にはてんでピンと来なかつた、アイドル扱ひで持て囃された現役時代よりも、西藤尚は顔の線がリファインされた現在の方が絶対に美人である、である(ドン!   >と机を叩いてみる
 収拾のつかなくなつた感情の発露は兎も角、亀を助ける引き換へになけなしの泪金を巻き上げられた才蔵は、亀を川に逃がした後(のち)とぼとぼとまさかのシネキャビンに帰宅。浦島家のロケーションは、荒木家を巧みに兼用してるのかも。軽く呆けた妻のさなえ(稲葉)は困窮した事態を理解しない中、長い付き合ひの大家の、ドライな息子(平川)が滞らせた家賃の催促に現れる。突きつけられた猶予は、非情か非常識にも二日、といふか少なくとも不法だ。何も出来ない一昼夜を通過した、シネキャ最後の夜。若き日のさなえ(塚田)の幻影に誘き寄せられ、自身も若返つた才蔵(夕)が騎乗位を完遂した淫夢明け、娘が満額家賃を払つて行つたと、ナオヒーローが領収書を手に現れる。謎の恩人を捜しに家を飛び出した才蔵は、川のほとりにてこの人?が金を出して呉れてゐた、助けた亀の化身・アンモナイト麻美(愛野)と出会ふか再会する。むかしでないけど浦島は、助けた亀につれられて。豪快にハンドメイドな紙細工と、要は夕須虎馬が愛野ももなを後背位で突くイメージを通して、亀の背中に乗つた才蔵は、琉球建築を王宮に模した竜宮エレン国に到着する。
 配役残り満を持して登場する麻里梨夏が、暗殺された国王に代る事実上の女王として、竜宮エレン国を統べる王女・エレン。散発的に名曲「恋情乙女」(2010)が劇伴にも使用される牧村耕次と、冨田訓広にコバテツがエレンの従者。華麗に二役を務める淡島小鞠は、竜宮エレン国に侵攻する隣国のAve Maria少年総統、荒木太郎が配下。その他景色的に、首里劇場館長が見切れる。
 関東近郊だけでなく、沖縄・大阪ロケをも謳つた荒木太郎2017年第二作。尤も、沖縄に渡つたのは恐らくカメラを持つた荒木太郎と亀を持つた三上紗恵子(=淡島小鞠)のみで、多分大阪も、出張つたのは塚田詩織と夕須虎馬の二人きりか。そして、あるいはそんな。正直何気に意義が微妙な大阪パートを、生存が確認されるレベルで久ッし振りに名前を見た若月美廣が仕切つた格好なのか?
 映画の中身に話を戻すと、性愛によつて発生するエネルギーで文明を回す―図らずも、山﨑邦紀と荒木太郎が近いタイミングで同じやうな話を書いてゐるのが興味深い―竜宮エレン国では、正装がいはゆるバカには見えない服。日常の各挨拶も愛撫諸々とかいふ、如何にもピンク映画的なユートピア設定。兎にも角にも特筆すべきは、さういふ方便で荒野に於けるAve Maria少年総統との対峙時以外には正真正銘の全篇をトップレスか全裸で通す麻里梨夏が、荒木太郎前作に続くピンク第二戦で代表作の貫禄を以て撃ち抜く、たをやかにして弩級のエモーション。飯岡聖英デジタル時代も必殺のカメラの力も借り、時に美しく時に気高く、濡れ場に入るや問答無用にどエロい麻里梨夏が叩き込み続けるショットの数々は、要は浦島太郎に二三本毛を生やした程度に過ぎぬ他愛ない物語をも、主演女優の一点突破で堂々と支へきる。エレンの背景で、如何にも竜宮城的な舞を舞ふ役を担ふには、表情に限らず体も硬い三番手に、荒木太郎が我慢しきれない、表層的なアクチュアリティ。こちらもピンク第二戦で、闇よりも暗い第一戦では唯一人気を吐く輝きを誇つた塚田詩織の、実質締めの濡れ場でここぞと再び「イン・ザ・ムード」を鳴らさない超絶のロスト画竜点睛。猥雑な昭和を懐かしんでばかりの荒木太郎には、これから自分が描く世界にも目を向けなよと声をかけたくもならうところではあれ、万事些末とさて措いてしまへ。麻里梨夏だけ見てればいい、それだけで戦へる。いや、それだけでもないもう一点。一人づつだと映画的にはクドさも否めない小篠一成と稲葉良子が、二人見事に噛み合ふとシークエンスが芳醇な香りを放ち始める、滋養深いケミストリーは裸を離れた見所。もしかすると、演劇畑でもこの二人の共演は何気にエポックたり得るのか。


コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )




 「結婚前夜 やさしく挿れて」(2017/制作:多呂プロ/提供:オーピー映画/監督・脚本:荒木太郎/撮影・照明:飯岡聖英/編集:酒井正次/演出部:三上紗恵子/撮影助手:船田翔・染谷有輝/音楽:安達ひでや・首里音楽研究会/挿入歌:作曲:安達ひでや・作詞:荒木太郎『人生負け祭』/ポスター:本田あきら/制作:佐藤選人・小林徹哉/現場進行:手島有・冨田訓広/録音:シネキャビン/仕上げ:東映ラボテック《株》/出演:麻里梨夏・神納花・今井ゆあ・夕須虎馬・冨田訓広・野村貴浩・牧村耕次/弁士:稲葉良子)。クレジットの大半はタイトル・イン直後の冒頭で、稲葉良子のみオーラスのエンド・マーク前。
 多呂プロ立体ロゴからモノクロ開巻、以降全篇に亘りモノクロとカラー各パートを往き来する格好なのだが、回想が全てモノクロでといふ訳でもなく、今井ゆあの濡れ場のやうに途中から色がつく件もあり、一見ランダムにしか見えないスイッチの基準は、デジタルにつきかういふ作業も簡便になつたといふ方便のほか釈然としない。稲葉良子が太宰治『弱者の糧』の朗読をオッ始め、要は大体「昭和枯れすすき」の節に、何もかんもに負け倒す歌詞がグルッと一周して痛快な挿入歌が起動した上で、パッチワーク風のタイトル・イン。後述する何と当人をも大登場させる闇雲な太宰治フィーチャーも、最終的には『一匹と九十九匹と』にも連なる太宰の卑屈と紙一重の映画観に荒木太郎が寄せる共感が、現作家としての志込みで酌めなくもないものの、斯くも断片的な引用では、実際の出来栄え上は藪から棒な印象に止(とど)まる。
 ロングで波打ち際を急ぐ二人の男、山上恒彦(牧村)の息子・達彦(野村)が、先に妊娠させた婚約者・斉藤藍(麻里)の家に父子で御挨拶に向かふ。ここから、といふか開巻で既にでもありつつ、所々で黙りながらも、初つ端は恒彦を上条恒彦と絡めたネタが爆裂する稲葉良子による口上大起動。こちらも改めて後述するが、これも荒木太郎が書いたのか案外気の利いた台本と、稲葉良子の自由自在な話芸ともに申し分ない。藍にも母親はをらず、どちらかといはなくとも恒彦より達彦に齢の近い比呂志(夕・・・・が苗字でいいのか?)は藍にとつて義父で、職業はホストだつた。達彦には失踪したと話してゐた母親に関し、恒彦が“亡き妻”と口を滑らせた弾みで、二人の父親は銘々身の上話を始める。
 配役残り今井ゆあは、三十五年前、リストラされ失意の恒彦が出会つた、当時ガソリンスタンド店員の達彦母・美奈子。妙に自信満々で恒彦の前露にする、自慢の爆乳が確かに威力絶大。重要な役ともいへ実は殆ど単なる濡れ場要員であるにも関らず、さう思はせないだけの確かな存在感を刻み込む。達彦が生まれて間もない頃、ある朝美奈子は起きて来ず、傍ら達彦も泣いてゐた。後々の描写を見るにリサイクル業を開業したと思しき恒彦が構はず仕事に出たところ、帰宅してみると美奈子は死んでゐた。といふのが、達彦に秘してゐた母親不在の真相。美奈子を搬送する救急隊員は、画面手前がコバテツに見えるのでだとすると制作部か。そして四年ぶりの復帰後荒木組三作連続登板の神納花が、藍の母親・春子。元々比呂志とは幼馴染の年上のお姉さん的な関係で、社会的地位も収入もあるけれどクソDV野郎の藍実父(荒木太郎)との生活に疲れ果てた春子が、客引き中の比呂志と再会したのが二人の馴初め。比呂志との再婚で平穏な幸福を取り戻した春子ではあつたが、交通事故で死去する。冨田訓広は、藍の子供の父親は比呂志ではないかと達彦に吹き込む―達彦も働く―古道具屋従業員と、着流しで飛び込んで来ては“私は、たいていの映画に泣かされる”と『弱者の糧』を引き続き一頻り打つ、よもやまさか太宰治当人の二役。正直精々ギター侍で、似せようとする意識は微塵も感じられない。面影で攻めるとなると・・・・岡田智弘辺りが衣裳は兎も角メイクの力も借りればいい塩梅に寄せられないか?
 闇よりも暗い神納花(ex.菅野しずか)復帰作、枠そのものが恐ろしい不吉な怪談映画と結構壮絶な二連敗が続いた荒木太郎の、2017年第一作。ところがこれが、満更でもないから矢張り映画は観てみないと判らない。これから結婚する若き二人と同等か寧ろそれ以上に、二人の父親をフィーチャーした構成にしては、その若い方は佐川一政と舛添要一を足して二で割つたが如き、何処で拾つて来たぶりを迸らせる馬の骨に過ぎない。割に、夕須虎馬のところに空いた穴は適宜俳優部の全員野球でカバーする。絡みに突入してなほ始終姦しい稲葉良子の口上は、一見あるいは一聞するに不要な意匠で映画を散らかす荒木調ならぬ荒木臭の極致かと思ひきや、絡みの展開を思ひのほか的確にサポートするのと、締めの初夜に於いては麻里梨夏の乳尻に対する観客のエモーションを効果的に誘導する、のみならず。突入に際する女の裸を観に来た者供に対する注意喚起の返す刀で、素面の観客以外の一大どころかある意味主要勢力、ハッテン勢を牽制してのけるのには、荒木太郎の癖に洒落た真似をしやがると激しく感心させられた。偏に映画だけでなく、小屋にも向けられた荒木太郎の眼差しには軽くグッと来た。尤も、よくよく考へてみるまでもなく、映画館シリーズの荒木太郎を捕まへて、何をこの期に寝惚けた与太をと難じられるならば、全く以て仰せの通り。咥へてもとい加へて、少々薄味の物語も、最後は牧村耕次の朗々とした大歌唱で些末を吹き飛ばす大団円を捻じ込んでみせるのは、上手くハマれば多呂プロの御家芸。そして文字通りの手作り感が微笑ましいLucky号の砂浜ラン、もう少し物理的速度込みで疾走感が欲しかつた気持ちも残らぬではないが、陽性の娯楽映画の着地点として綺麗に抜けてゐる。オッパイオッパイして、思ひ返すほどの話の中身もないけれど、スカッとした心持で家路に就く。それはピンクの、別に偉ぶらなくともひとつの然るべき姿ではなからうか。


コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )




 「色慾怪談 ヌルッと入ります」(2016/制作:多呂プロ/提供:オーピー映画/監督・脚本・出演:荒木太郎/原作:瞿宗吉『牡丹燈記』・三遊亭円朝『怪談 牡丹燈籠』/撮影・照明:飯岡聖英/編集:酒井正次/撮影助手:宮原かおり・志田茂人/照明応援:広瀬寛巳/演出助手:三上紗恵子/音楽:安達ひでや・首里音楽研究会/メイク:ビューティ☆佐口・イム/ポスター:本田あきら/応援:榎本敏郎/進行:佐藤選人・小林徹哉/協力:花道プロ/録音:シネキャビン/仕上げ:東映ラボ・テック《株》/出演:南真菜果・水野朝陽・神納花・那波隆史・野村貴浩・河内哲二郎・春風亭伝枝・天才ナカムラスペシャル・淡島小鞠・牧村耕次《特別出演》・稲葉良子)。
 制作に変更された二代目多呂プロ立体ロゴから、タイトル開巻。特製チラシに謳はれる、“多呂プロ20周年記念作品”の文言が本篇中には見当たらない。
 夏祭りの風情も賑やかなお盆前、私財でこども食堂を開く有徳の教師・萩原喬生(那波)の下を、元教へ子の人妻・飯島美麗(南)が女中の夜音(稲葉)を伴ひ訪れる。一切登場しない夫の暴力と継母の苛めに苦しむ美麗は、かねてから想ひを寄せてゐたらしい萩原に、盆期間限定で夫婦の契りを求める。初めは固辞してゐた萩原も、何だかんだで据膳を喰ふ。美麗と逢瀬を重ね、何故か徐々どころでなくみるみる消耗する萩原の話を、萩原の叔父にして、穀潰しゆゑ甥の下男的に生計を立てる伴潤一郎(河内)から聞いた占ひ師の白翁堂幽斎(春風亭)は、二丁拳銃を振り回す美麗の義父に踏み込まれる悪夢から跳ね起きた萩原に、衝撃的な事実を伝へる。飯島家の環境に耐へかねた美麗は既に自死、夜音も後を追つてゐるといふのだ。
 配役残りex.菅野しずかの神納花が件の凶悪な継母・くに子で、野村貴浩はくに子に仕向けられ美麗を手篭めにする間男・源次、二人して飯島家の財産を狙つてゐるとかいふ安い寸法。牧村耕次が美麗義父の喜一、何でくに子のやうな悪女と再婚したのか不思議な人徳者。何時まで経つても出て来ないやきもきを、まんまと的中させる水野朝陽は伴の女房・峰子。天才ナカムラスペシャルとwith二人目?の淡島小鞠は、幽斎指揮下萩原の無事を祈願し祈祷する引きこもり要員。皆さん籠もつてた期間は紹介順に三ヶ月の佐藤選人と六ヶ月の榎本敏郎でもない誰か判らん人に、一年の淡島小鞠が前列左から。後列は右から五年の小林徹哉、十年の荒木太郎と、三十八年の天ナス。大トリの破壊力は、作中僅かに命中する。新顔の女優部に話を戻すと、オッパイの破壊力は申し分ないもののお芝居の方は御愛嬌に心許ない南真菜果が誰かに似てゐるやうな気がしたのは、軽く千葉尚之。一方負けず劣らずのオッパイを誇る水野朝陽は、前回の塚田詩織同様肩の力を抜いた演出が功を奏したのか、軽快な突破力を発揮する。
 大概な土壇場に至つて二番手が飛び込んで来たり、旧態依然とした荒木調ならぬ荒木臭がガッチャガチャ空騒ぐ中を、深町章の「熟母・娘 乱交」(2006/脚本:河西晃/主演:藍山みなみ)以来の牡丹燈籠が辛うじて通り一遍進行する。国沢実は高橋祐太とのコンビでこの期に及んでの好調を死守する反面、荒木太郎2016年第三作は2012年に復活した大蔵時代の恒例夏の怪談映画枠を頂戴しておきながら、黒澤明の「生きる」を翻案した割にはちつとも生きてやしない謎が暗黒よりも深い前作に引き続き、逆の意味で見事に失速し力なく二連敗。水野朝陽投入が遅きに失した、即ち劇映画としての全体的な構成の崩壊は、神納花V.S.野村貴浩が妙に費やす尺とも加へて、裸映画としては全般的な濡れ場の総量確保と引き換へといつていへなくもなく、さういふ肉を斬らせて骨を断つ戦略を採用したと最大限好意的に曲解するならば、漸く発見しかけたせめてもの立つ瀬を。泰然と水泡に帰してのけるのが、今も昔と変らなかつた荒木太郎といふ御仁。スッカスカの始終を仕方なく通過したのちの、二組に別れた俳優部が例によつて無駄にてれんこてれんこ呑気に踊り呆けてみせるオーラスが、力尽きて寝た子も起こして癪に障る。果たして周年記念に本気で挑む気概が本当にあつたのか出任せた方便か、斯様なザマでは三十周年なんぞ来はせんのではなからうか。

 ところでといふか、ところがといふか。改めて復活後の大蔵恒例夏の怪談映画を振り返つてみると、「おねだり狂艶 色情いうれい」(2012/監督:渡邊元嗣/脚本:山崎浩治/主演:大槻ひびき)は、今も深く心に染み入る。因みに最後の水上荘映画でもある「愛欲霊女 潮吹き淫魔」(2013/監督・脚本:後藤大輔/主演:北谷静香)、手応へさへ感じられない「怪談 女霊とろけ腰」(2014/監督:加藤義一/脚本:鎌田一利/主演:水樹りさ)と来て、レス・ザン・イントロダクションで飛び込んで来る倖田李梨が大草原の「色欲絵巻 千年の狂恋」(2015/竹洞哲也/脚本:当方ボーカル/主演:伊東紅)。折角ナベが、最高のスタートを切つた、のに。真に恐ろしいのは、怪談映画の中身ではなく、映画そのものが実は何気に現在四連敗中といふ死屍累々。呪はれたシリーズの連鎖を断ち切るには、今年は必殺を期して城定秀夫でも連れて来るしかあるまいぞ。


コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )




 「溺れるふたり ふやけるほど愛して」(2016/製作:多呂プロ/提供:オーピー映画/監督・脚本・出演:荒木太郎/撮影・照明:飯岡聖英/編集:酒井正次/撮影助手:宮原かおり・榮穰・岡村浩代/演出:榎本敏郎/演出ヘルパー:冨田訓広/制作:佐藤選人・小林徹哉/メイク:ビューティ☆佐口/ポスター:本田あきら/協力:花道プロ/録音:シネキャビン/仕上げ:東映ラボ・テック株式会社/出演:神納花・松すみれ・塚田詩織・野村貴浩・津田篤・天才ナカムラスペシャル・冨田訓広/特別出演:平川直大・淡島小鞠・ほたる)。ポスターには記載のある音楽の首里音楽研究会が、本篇クレジットには確か見当たらない。
 立体ロゴとタイトル開巻、先にクレジットが流れる。天下りの工場長・長谷川修平(荒木)が、朝から枯れ果てて定時出社。派遣の工員には陰口を叩かれつつ、仕事も特に何するでもなく、新聞をスクラップしかけた長谷川は突如襲はれた激しい苦痛に悶絶。担ぎ込まれた病院で、あつさり手の施しやうのない末期癌を宣告される。とまれとりあへず職場復帰してみた長谷川に、工場の事務員・小山内美紀(神納)は、「死んでる時間の中にゐたくない」だ「このまゝ終りたくない」だとかありがちな方便で退職を申し出る。ここで神納花といふのが、今何処田中康文大蔵移籍の第三作「女真剣師 色仕掛け乱れ指」(2011)・第四作「感じる若妻の甘い蜜」(2012)以来の電撃ピンク復帰を遂げたex.菅野しずか。妻・秋子(淡島)と死別した長谷川は、秋子の思ひ出も残る親が遺した家での、現在は弟・哲平(野村)夫婦との同居生活。弟嫁の千里(松)のみならず、哲平も兄の遺産に対する色目を隠さうともせず、長谷川は家に帰つても針の筵に座らされてゐた。万事に力尽きた長谷川は、飛び込まうかとした急流の畔で、傾(かぶ)いたホームレスの保志(天ナス)と出会ふ。何のためにも誰のためにもならないとこれまでの来し方を述懐する長谷川を、山﨑邦紀に気触れたのか保志は完全な芸術家と称揚する。
 配役残り塚田詩織は、保志が長谷川に引き合はせる謎の女・ジャネット。水上荘の法被を羽織り、寿限無をシャウトしながら賑々しく大登場。「イン・ザ・ムード」鳴り響く中、散発的に自慢の爆乳を最短距離で誇示する「オッパーイ!」を連呼する飛び道具的三番手にして、今作唯一の清涼剤。利いた風な口を叩いた割に、結局美紀はデリ嬢に。客(ナオヒーロー)と別れた美紀と、出社もしないで徘徊する長谷川は再会する。以降美紀を取り巻く男達が、順にコバテツが客、順番を前後して冨田訓広の二役目、ナオヒーローの二役目、津田篤があがりを吸ひ取るダニ。この中で津田篤のビリングが高いのは、絡みがあるから。こちらは加藤義一2014年第一作「制服日記 あどけない腰使ひ」(脚本:鎌田一利/主演:桜ここみ)以来のピンク帰還となるほたる(ex.葉月螢)は、偶さか平穏を取り戻した長谷川と縁側でかき氷を食べる、多分病人友達。その他、長谷川を揶揄する派遣行員は佐藤選人と冨田訓広に、台詞のないビューティ☆佐口と、背中しか見せないもう一人。あと、ぞんざいにステージ4を告知する医師のアフレコが、クレジットは完全に素通りしてゐるけれど岡田智弘に聞こえたのだが。塚田詩織に話を戻して、それどころでなくなる前に触れておくと、塚田詩織の豪快な起用法に加へ、松すみれに秋子の秘密を明かさせるカットでは、荒木太郎の演出も冴えてゐた。
 改めて後述するが荒木太郎が心配にさへ思へて来る、2016年第二作。再会した美紀を、長谷川は食事に誘ひ、食後にはソフトクリーム、締めにブランコに乗る。それだけの一日が楽しくて楽しくて仕方がなかつた長谷川は、コバテツと別れた美紀を、再び同じ店に誘ひ、ソフトクリーム経由のブランコと、かつて美紀が“死んでる時間”と吐き捨てた工場での仕事と変らない、同じことを繰り返す。脊髄反射で臍を曲げ、一旦別れを告げるも踵を返した美紀は長谷川に、「金出せよいい夢見させてやんぞ」と悪し様に詰め寄る。これは、これはこれで無力に立ち尽くすほかないダメ人間に、延髄斬りを叩き込む残酷な天使が降臨するドラマが起動したのかとときめきかけたのは、俺史上最大級空前の早とちり。風俗嬢に入れ揚げ全財産を貢いだ男は、弟嫁まで含め全てを失ひ最終的には野垂れ死に。女も女でちよろまかした金をダニに吸ひ取られるまでは兎も角、何故か男の後を追ふかのやうにみるみる消耗、挙句急流に身を投げるストップモーションがラスト・ショット。だ、などと。斯くも一欠片の救ひもないどうしやうもない物語を、荒木太郎は一体何を考へて撮つたのか。長谷川と美紀の造形なり関係性から火を見るよりも明らかなやうに、黒澤明「生きる」の翻案をチラシに謳ふまでもなく実際に取り組んでおきながら、全ての生命力を失ひ落下運動の如く死に至るのが、荒木太郎にとつての“生きる”といふことなのか?全然生きてねえよ。侘び寂びなんぞでは片付かぬ明らかに尋常ではない生命観に荒木太郎が心配にさへ思へて来る、2016年恐らく最大の問題作である。

 最後にもう一ツッコミ、為にする嘘ないしは事実誤認であるのかも知れないが、健康問題でも家族との不和でもなく、中高年―男性―自殺の原因第一位は経済的な要因ぢやろ。


コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )




 「やは乳太夫 月夜の恋わずらひ」(2016/製作:多呂プロ/提供:オーピー映画/監督・脚本:荒木太郎/撮影・照明:飯岡聖英/編集:酒井正次/撮影助手:矢澤直子、もう一名/照明応援:広瀬寛巳/助監督:三上涙/音楽:島袋レオ・宮川透/メイク:ビューティ☆佐口/ポスター:本田あきら/制作進行:佐藤選人・小林徹哉/協力:花道ファクトリー/録音:シネキャビン/仕上げ:東映ラボテック株式会社/出演:澁谷果歩・里見瑤子・結城恋・橘秀樹・平川直大・天才ナカムラスペシャル・春風亭伝枝・那波隆史)。出演者中春風亭伝枝の、“傳”の字の略字表記は本篇クレジット・ポスターまゝ。
 まんま浄瑠璃調の狂言回しな義太夫(春風亭伝枝/ex.滝川鯉太郎)が、ベンベン三味を鳴らしながら明治時代、“I love you.”なる英文を二葉亭四迷は“貴方とならば死んでもいい”と訳し、別の作家―周知注:夏目漱石―は“月が綺麗な夜ですね”と訳したとか紹介してタイトル・イン。開巻即座に吹き荒れる荒木調ならぬ荒木臭に大いなる危惧を覚えつつ、“I love you.”訳に向き合ふと漱石も兎も角、二葉亭に関してはどうやら事実ではないらしい旨が検証されてゐたりもする。
 年金暮らしの気持誉三郎(那波)が、古いピンク映画のプレスシートを貼り巡らせた自宅兼―劇中営業してゐる風にも別に見えないが―「我楽多屋」の周囲で、ビューティ☆佐口も交へた一同と三線の音に乗りよいよいと踊り明かす。いよいよ以て暗い予感が胸を過りつつも、まだ諦めるのは些か早い。ビリング中盤に、我等がナオヒーローこと平川直大が控へてゐるんだぜ。複数の男の下を死なない程度に搾り取つて渡り歩く、腹黒姫ユミ(義太夫いはくには腹黒娘だけれど、多呂プロ作成の特製チラシにも腹黒姫/結城恋)との情事の最中、誉三郎の腰がメシッと恐ろしい音とともにデストロイ、誉三郎は元気に七転八倒しながら床に臥せる。一方、誉三郎の息子・盾男(橘)も、いはゆる恋わずらひで寝込む。土手で「ムーンライト・セレナーデ」をギターで爪弾く紺屋高尾(澁谷)を、盾男は見初める。ところが高尾は順番だけで一年待ち、一晩三百万を取る高級中の高級娼婦だつた。年収二年分の高嶺の花に力なく白旗を掲げる盾男に対し、兄貴分の得呂喜一通称エロッキー(平川)は、二年死ぬ気で働けば高尾に会へるぢやないかと背中を押す。斯くてエロッキーに励まされ、盾男は我武者羅に働き始める。
 配役残り里見瑤子は、順調に婚期を逃す盾男の妹・唯々子。妹!?何気に豪快なキャスティングではある。ヒット・アンド・アウェイよろしく、どさくさに紛れて飛び込んで来ては即座に捌けるエロッキー母親は、背格好推定で多分淡島小鞠(a.k.a.三上紗恵子)。たんぽぽおさむのセンでジェントルマンを物静かに好演する天才ナカムラスペシャルは、高尾が抱える借金を直ぐにでも完済し得る、高尾の上客・伴潤一郎。ほかに明確に見切れるのは小林徹哉が、盾男やエロッキーが働く現場の親方。唯々子に話を戻すと盾男と高尾の逢瀬を何かとアシストするエロッキーの真意ないしは下心が、ズバリ唯々子。多呂プロ映画御馴染のロケーション、スワンボートが並ぶ富士五湖何れかの湖畔。何故か上半身裸になつたエロッキーの、ナオヒーロー持ち前の情熱が迸る唯々子に対する求愛。自身の容姿に自信を持てない唯々子に「そんなことはない!」と雄々しく断言したエロッキーが、「思つた通り綺麗だ・・・・」と囁く時、平川直大の姿はこの星の上で最も美しい映画「キャリー」(1976/米/監督:ブライアン・デ・パルマ/主演:シシー・スペイセク)に於けるベティ・バックリーに重なり、一旦その場を立ち去るかに見せた唯々子が、フレーム外からダイナミックなジャンピング・ボディー・アタックでエロッキーに抱きついた瞬間、「ムーンライト・セレナーデ」と同じくグレン・ミラーの「イン・ザ・ムード」が賑々しく鳴り始めるカットで今作のエモーションは最高潮に爆発する。
 遠目に富士が望めてゐれば日本映画は何とかなる気がする、中川大資は木端微塵に仕損じた何の根拠もない楽観論を思はず持ち出しかける、荒木太郎2016年第一作。荒木臭の悪寒に苛まされたのは、幸にも杞憂。盾男の愚直に何故か絆された高尾が、更に二年後の満月の夜に今度は自から嫁ぎに来る。欠片ほども中身のない物語を、外野のハイテンションと主演女優の的確な濡れ場とで一息に観させる。平川直大と里見瑤子がエモーションを爆発させる傍ら、今回奇跡的に那波隆史も空回るでなく、三番手の結城恋が地味に、佐々木基子と速水今日子を足して二で割つて若くした逸材。反面、澁谷果歩と橘秀樹には正直多くを望めない高尾と盾男のパートに際しては、春風亭伝枝は黙らせ、エッサカホイサカの最中(さなか)も盾男の存在を半ば排したわわに揺れ躍る澁谷果歩のやは乳―のみ―を執拗に抜くカメラワークはあまりにも秀逸。当代人気AV女優の裸を、大スクリーンでお腹一杯に見せるジャスティス。一見勢ひに任せた一発勝負に見せかけて、アバンをズバッと回収してみせる、即ち義太夫が単なる余計な意匠ではなかつたことも意味するラスト・ショットはお見事。締めがキチンと締まる映画は強い、この期に及んで荒木太郎がノッてゐる風情を窺はせる快作。三百六十度全周するパンを通して、三者三様の選曲に乗つた高尾V.S.盾男戦・唯々子V.S.エロッキー戦・ユミV.S.誉三郎戦を順々に連ねるピンク映画らしい濡れ場のジェット・ストリーム・アタックも、一周で終つてしまつたのが惜しいほどのスペクタクル。


コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )




 「変態調教 白衣のうめき声」(2001/製作:多呂プロ/提供:オーピー映画/監督:荒木太郎/脚本:内藤忠司/撮影:前井一作・横田彰司/編集:酒井正次/助監督:田中康文/制作:小林徹哉/応援:広瀬寛己/音楽:篠原さゆり/ポスター:木下篤弘/タイトル・パンフ:堀内満里子/録音:シネキャビン/現像:東映化学/出演:横浜ゆき・篠原さゆり・時任歩・TAKAO・石川雄也)。応援の広瀬寛巳ではなく寛己は、本篇クレジットまゝ。
 畳の上に横たはつた顔面には包帯を巻いた白衣の女が、荒々しく犯される。女を縛り鞭打つ、男も仮面で顔を隠す。求められ男は女の首に手をかけるも、加減を誤つたか女は事切れる。狼狽へた男が呆然自失とモーゼル銃でこめかみを撃ち抜き、ススキ野にマンガ絵のタイトル・イン。クローズアップを多用した煽情性溢れるカットは、昨今の荒木太郎には見られない手数かも。枯れたのか単に面倒臭いのか、もつと観客を勃たせることに情熱を傾けて欲しい。
 病床に臥せる資産家が派遣看護婦を絞殺、事後自らも自殺。以来幽霊となつた二人が取り憑き、取り壊さうとする度に事故が起こる山荘を、『週刊民衆』のライター・山野辺か山野部ミサ(横浜)が、彼氏で恐らく普通のサラリーマン・次郎(石川)の運転で目指す。昨夜は遅く寝不足の次郎に対し、ミサは眠気覚ましにと尺八を吹く。そろそろここいらで、運転手に助手席から尺八を吹く、フラグを立てるのは已めにしまいか。到着した二人を、薄気味悪い仏頂面の助手・キジマ里子(篠原)を伴つた、超常現象研究家の芳倉カズミ(TAKAO/a.k.a.縄文人)が出迎へる。幽霊映画風の如何にも思はせぶりな―その癖中身は特にない―繋ぎと、ピンク映画必須の濡れ場の導入がものの見事に噛み合はない横浜ゆき(a.k.a.ゆき)V.S.石川雄也(現:ダーリン石川)第一戦を経ての翌日。一人帰京するかとした次郎は到着時と同様、別荘を離れようとするや激しい違和感を覚え、どうしても帰ることが出来なかつた。
 配役残り時任歩は、森を散策するミサが目撃する、白衣×自慰×血の雨×振り返ると顔面包帯とかいふ、盛り過ぎで訳が判らなくなつた女。荒木太郎が、離れにて時任歩を熱ロウ責めする人夫。その他計四名登場する人夫が、微妙に詰めきれない。六人並んだカットで画面左から小林徹哉と内藤忠司、荒木太郎と時任歩挟んで広瀬寛巳までは辿り着けつつ、一番右がどうしても不明、田中康文には見えないんだけどな。かうなると矢張り、小さな液晶画面の限界。
 昨年死去した縄文人の初期の軌跡を確認すべく、DMM戦を挑んだ荒木太郎2001年第一作。別荘を訪ねる横浜ゆきと石川雄也の2ショットには、何となく見覚えがあつた。改めて整理すると、当時恒例の100円パンフにでもさう書いてあつたのか、m@stervision大哥が今作がTAKAO=縄文人の映画初出演と書いておいでなのは間違ひ。撮影は「白衣のうめき声」の方が先であつたとでもいふのならば別だが、前作の2000年最終第五作「飯場で感じる女の性」(脚本:内藤忠司/主演:林由美香・鈴木あや)が実際の初陣で、次作薔薇族「ポリス」(脚本:吉行由実/主演:西川方啓・佐藤幹雄)までがTAKAO名義。更に「ポリス」次作の「義姉さんの濡れた太もも」(脚本:内藤忠司/主演:時任歩)から縄文人名義を使用し、俳優部としてのフィルモグラフィーは薔薇族込みで全十六作となる。協力での参加も含めるとなると、一から洗ひ直す羽目になるゆゑここはさて措く。
 映画の中身に話を戻すと、森の中で時任歩を目撃したミサが逃走するカットに際して、画と音が連動してカチャカチャするいはゆる荒木調ならぬ荒木臭を持ち出す辺り、何処まで真面目に恐がらせようとするつもりがあつたのかは甚だ疑問ながら、ミイラ取りが元々ミイラであつた類の、封切りが二月末といふとお盆でもないのに、案外オーソドックスな幽霊映画。芳倉の第一声で種を蒔くまではいいとして、折り返しそこいらで話を割つてみせる豪快な尺の配分には後半丸々どうするのかと別の意味でハラハラさせられつつ、役目を果たしたTAKAOと篠原さゆりの、穏やかな笑顔は一作のハイライトたるエモーションを静かに、且つ力強く撃ち抜く。ラスト十分も、残り十分を濡れ場だけでもたせるのは荒木太郎には無理なのではなからうかと思ひかけたが、二組の並走と主役二人は二回戦突入。更には四人を“井”の字風に69連結してみせる大技まで繰り出し、時任歩と荒木太郎によるエピローグまで、それなり以上に絡みのみで走り抜けてみせる。馬鹿正直に幽霊映画と捉へるならば腰も砕ける出来ともいへ、そこそこ腰の据わつた裸映画ではある。

 然し久ッし振りに目にしたが、クレジットを飾る堀内満里子(a.k.a.火野妖子)による似顔絵?が、似せる気あんのかよとこの期に及んでツッコミたくなるほど清々しく似てない。石川雄也なんて寧ろ、あるいは余程樹かず(現:樹カズ)に見えた。


コメント ( 2 ) | Trackback ( 0 )




 「息子の花嫁 いんらん恋の詩」(2015/製作:多呂プロ/提供:オーピー映画/監督・脚本:荒木太郎/撮影・照明:飯岡聖英・藤田朋則/編集:酒井正次/助監督:金沢勇大/撮影・照明助手:近藤祥平、他一名/音楽:安達ひでや・宮川透・島袋レオ/制作進行:佐藤選人/スチール:本田あきら/協力:花道ファクトリー/タイミング:安斎公一・小荷田康利/録音:シネキャビン/仕上げ:東映ラボテック/タイトル画:天才ナカムラスペシャル/出演:星野ゆず・加山なつこ・杏堂怜・ダーリン石川・平川直大・春風亭伝枝・天才ナカムラスペシャル・縄文人・稲葉良子・牧村耕次)。出演者中春風亭傳枝が、ポスターには春風亭伝枝、クレジットの情報量に素直に敗北する。
 タイミングが難しい話題を、最後ではなく最初に。吉行良介の復活と同時に、金沢雄大はピンクから足を洗つたのか?といふのは粗雑な早とちりに過ぎず、単に関根組を離れ、2013年第三作「異父姉妹 だらしない下半身」(主演:愛田奈々・美泉咲)以来二年ぶりに荒木組に復帰しただけだつた。ものかと思ひきや、荒木太郎の2016年第一作にも矢張り、金沢雄大の名前が見当たらない。
 すつかり定着した立体ロゴ開巻、牢の中、“妻をめとらば才たけて”、“顔うるはしくなさけある”と、牧村耕次が与謝野鉄幹の「人を恋ふる歌」を吟ずる。“全てはここから始まつた”と色を抜いた回想だか幻想イン、川の岸辺にて水かけつこと称するには随分苛烈に水を浴びせかけた星野ゆずを、牧村耕次は両手で抱へなければならないほどの大きさの石で殴打する。一転日々の日常、同居する息子・修(ダーリン)が仕事に出ると、妻には先立たれた井伊六輔(牧村)は暫しぼんやりとした一人きりの時間を過ごす。食事療法が必要な六輔のために、ヘルパーの外山姫子(星野)が来宅、姫子のノーブラの透け乳を抜いてタイトル・イン。六輔の仲間の不良老人達、元芸人のパハップス沼田(天ナス)・那須三太郎(縄)・毒茸三太夫(禿鬘を被つて男役の稲葉良子)の顔見せ噛ませて、六輔は姫子に、年甲斐もない下心を拗らせる。ところが姫子は、修と結婚を約束する関係にあつた。
 配役残り、界隈随一タンクトップが似合ふ平川直大は、姫子に付き纏ふ性質の悪い元カレ・大橋汚染、役者くずれ。加山なつこは、「脱法暴走老人愛人生活協同組合」こと“脱暴愛生協”―荒木太郎版ゲーターズみたいなものか―を構成する沼田・那須・毒茸が、皆で囲ふ業態不明の「宵待草」ママ・松島とめ子、顔よりも大きな正しく爆乳で年寄りを喰ひまくる。春風亭伝枝は、最終的には六輔が診て貰はうとした今後の運勢を、「“これから”つて何よw」と綺麗に一笑に付す捌けた占ひ師。とはいへ腕は確からしく、風雲児の相を看て取つた六輔から、エロ事師として全国を放浪した過去を引き出す。杏堂怜が、その過去パートに登場する亡妻・詩子。その他荒木太郎と佐藤選人と西村晋也が六輔が姫子を誘ふ、ゴーゴー音楽が爆裂する歌声喫茶に乱入する、荒木太郎は刑務官の声も兼務。
 荒木太郎2015年第三作は、ピンク映画十四戦目にして初めて主演女優の座を掴んだ、星野ゆずの引退作。六輔は脱暴愛生協の面々を抱き込むだか焚きつけられ姫子と息子に横槍を捻じ込まうとするものの、六輔が動けば動くほど、二人の仲は深まつて行く。近年の荒木太郎にしては珍しく形になつた正攻法の物語は、良くなくも悪くも荒木太郎的なガチャガチャした余計な意匠にも妨げられずに綺麗に進行し、春風亭伝枝の投入を、数字的には時機を失しかけた三番手の濡れ場にスムーズに繋げるスマートな導入には、素面で感心した。展開の盛り上がりに綺麗に同調し、「親子の縁を切るぞ」、「死刑の前に寿命だよ」。鬼気迫る凄味で、名を通り越した猛台詞を連発する牧村耕次も激越にカッコいい。前作で荒木調ならぬ荒木臭を完全復活させ―てしまつ―た危惧をいい意味で裏切り、なかなか以上に見応へのある一作である。
 牧村耕次と平川直大によるクライマックスの修羅場が相変らず、木端微塵に暗くて何が何だか全ッ然判らないのは双方執拗に考へものながら、土手の画面手前に小さく星野ゆずと牧村耕次。右上斜めに巨大な鉄橋の影を黒く通した上で、更にその遠く背景には流れる雲海越しに夏富士の頂が覗く。ダイナミックな構図と奥行きとが猛烈に素晴らしいショットには、完敗を認める勢ひで感嘆した。ただ多用する白黒画面に関しては、元素材がデジタルなだけに下手にクリアなモノクロてのもなあ、と荒木太郎が狙つたと思しき詩情なり抒情よりも、パッと見のしつくり来なさの方が先に立つ。同時に今回荒木太郎は七十分の尺を持て余したのか、姫子が転がすキックボードを中心に、乱打されるインサートは積み重ねられて行く手数といふよりは、意図を測りかねる漫然さがより色濃い。
 星野ゆずに触れると、荒木太郎いはく“星野ゆずにNGはない!!星野ゆずがNGだ!!”とのことで、下手だ下手だとする世評も存する気配が窺へる。尤も、個人的には2014年第二作「巨乳未亡人 お願ひ!許して…」(主演:愛田奈々)で目についた、初代上野オークラ劇場公認マスコットガールとして知られるふんはかしたイメージとは全く遠い、スレた突破力が今も印象に強く、藪蛇に刀を返すと未完の大女優・愛田奈々よりは余程上手く思へるものである。あるいは、意地悪をいふとそもそもさういふ荒木太郎の演出力が如何程なのか、といふ話なのでもなからうか。

 2000年最終第五作「飯場で感じる女の性」(脚本:内藤忠司/主演:林由美香・鈴木あや/縄文人ではなくTAKAO名義)以降、六年のブランクを挿みつつ長く荒木太郎映画に携はつて来た縄文人氏は昨年十一月に死去されたらしく、今作が最終戦に当たる。封切りが九月中旬となると撮影時期は初夏か、前回に引き続き今回も特段死期が迫つてゐたやうにはお見受けしなかつた。

 付記< 気がつくと、金沢雄大は一般映画でデビューしてた http://pinchu.jp


コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )




 「未亡人女将 じゆつぽり咥へて」(2015/製作:多呂プロ/提供:オーピー映画/監督・脚本・出演:荒木太郎/撮影・照明:飯岡聖英/編集:酒井正次/音楽:宮川透/助監督:三上紗恵子、他一名/撮影助手:宇野寛之・宮原かおり、他一名/応援:小川隆史/制作進行:小林徹哉・佐藤選人/スチール:本田あきら/録音:シネキャビン/仕上げ:東映ラボテック/タイミング:安斎公一・小荷田康利/出演:谷原ゆき・星野ゆず・白音幸子・那波隆史・津田篤・冨田訓広・野村貴浩・縄文人・春風亭傳枝・西村晋也・函南会の皆さん)。全く綺麗な見易いものであつたにも関らず、大容量かつ高速のクレジットに惨敗する。出演者中春風亭傳枝が、ポスターには春風亭伝枝、函南会の皆さんは本篇クレジットのみ。
 前作初御目見えの立体ロゴ開巻、現状ブッ千切り、歴史的にも出来が群を抜いてゐるのではなからうか。
 “てはじめにお通しをどうぞ。”と、尺八を吹く谷原ゆきを、臍辺り視点で見せてタイトル・イン。開店一周年に沸く割烹飲み屋「せんらく」(鮎楽とも/所在地:静岡県田方郡函南町)が、一転凍りつく。女将の徳永和子(谷原)の夫(津田)が「せんらく」に駆けつける道すがら、車に轢かれ急死したといふのだ。津田篤含め医者の家系で、元々水商売の女との結婚に難色を示してゐた徳永家から和子が無下に籍を抜かれる一方、津田篤に重過失が認められ、刑事責任は問はれなかつた交通事故の加害者・水島(那波)は謝罪だか贖罪の意思を示し、招かれざる「せんらく」に通ひ詰める。
 出演者残り、プーッ☆とむくれた膨れつ面が芸になる星野ゆずは、「せんらく」の看板娘・あやか。二戦目となる冨田訓広が、あやかの彼氏・稔。野村貴浩・春風亭傳枝・西村晋也は「せんらく」常連客要員メインのカウンターに陣取る三馬鹿、函南会の皆さんがその他頭数。2009年第一作「人妻悲恋 巨乳みだれ泣く」(脚本:荒木太郎・三上紗恵子/主演:はるか悠)以来の御無沙汰登板よりも、十一月末飛び込んで来た死去の報になほ一層驚かされた縄文人は、津田篤の父・才蔵、荒木太郎が兄の英俊。縄文人に話を戻すと、死期が迫つてゐたやうには特に見えない。因みに縄文人に加へ、春風亭傳枝といふのも真打昇進を機に改名した、2006年第二作「桃色仁義 姐御の白い肌」(脚本:三上紗恵子・荒木太郎/主演:美咲ゆりあ)以来となるex.滝川鯉之助。そして薄味にリファインした美波輝海(a.k.a.大貫あずさ・小山てるみ)のやうな白音幸子が、事件後解消した水島の婚約者・エリカ。
 荒木太郎の2015年第二作は、三作続いた闇雲突破感路線から派手に旧態に後退した、ネガティブな意味での問題作。エクセスライクな主演女優も兎も角、那波隆史を男優メインに据ゑた配役が素直に災ひし、演出部・俳優部が共倒れる非力に、主眼たる筈の和子と水島のメロドラマが全く以て形を成さない。それ以前に、あやかと稔の濡れ場に傍らから春風亭傳枝が活動弁士としてべんべん邪魔臭いことこの上ない口上をつける、いはゆる荒木調ならぬ荒木臭の完全復活が年間最大級の大悪手。この男は女の裸を愉しむのに些末な意匠は不要でしかないことを、終に理解せぬまゝ死ぬものと見える。三馬鹿がポップに膨らませる、未亡人女将がじゆつぽり咥へて呉れるエロ妄想はそれなりに扇情的ではあるものの、当の三馬鹿が貧相で画にならず、和子と水島が逢瀬を重ねる、コーヒーハウス「ルパン」(所在地:静岡県沼津市双葉町)の画期的に魅力的なロケーションのほかには、見所を探すにも苦労を覚える寂しい始末。

 ショッパイ映画本篇はこの際さて措き、残る、どころか最も重大な問題は。予告を偽り脱いで絡むはおろか、西藤尚が賑やかしに出て来すらしない点。

 嘘ついたね、

 僕達を騙したね><


コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )




 「淫乱巨乳妻の白日夢」(2015/製作:多呂プロ/提供:オーピー映画/監督・脚本:荒木太郎/撮影・照明:飯岡聖英/編集:酒井正次/助監督:三上紗恵子・光永淳/撮影助手:矢澤直子・巽亮人・広瀬寛巳/制作:佐選人・小林徹哉/スチール:本田あきら/録音:シネキャビン/仕上げ:東映ラボテック/タイミング:安斎公一・小荷田康利/出演:大塚れん・西川りおん・峰岸ふじこ・なかみつせいじ・ダーリン石川・牧村耕次・稲葉良子《声》)。出演者中、アテレコのみの稲葉良子は本篇クレジットのみ。逆にポスターにある音楽の宮川透と協力の静活が、本篇クレジットには見当たらない。
 人形をあしらつた、多呂プロ立体ロゴにて開巻。これが結構な出来なのだけれど、今後も使用するのかな。
 ど頭と―紙芝居式―クレジット後のオーラスに、何故か荒木太郎と西藤尚がヒムセルフ&ハーセルフで登場、観客に向かつて賑々しい口上を繰り広げる。荒木太郎が腰が痛くて走れないだ、西藤尚が自称“貴方の心のスイーツ”だといつた小ネタに特段の意味は欠片もない割に、何となく腹も立たせず楽しく観させる。西藤尚いはく、次は脱いで絡むとの衝撃予告、本当だろね。因みに、ナベシネマでのレギュラーぶりに思はず通り過ぎかねないけれど、西藤尚の荒木組参戦は2011年第二作「発情花嫁 おねだりは後ろから」(主演:早乙女ルイ)―次作「人妻OL セクハラ裏現場」(主演:安達亜美)では声のみ―以来案外久し振り。この人若い頃よりも、今の方が顔の線がリファインされて美人な気がする。
 家内を掃除する正しく巨乳妻の登紀子(大塚)が、苛立たしげに布巾を辺りにガチャンガチャンガチャンと投げつけタイトル・イン。近所(山中湖周り)に外出した登紀子は、特徴的なンフンフ笑ひが気持ち悪い黒服の占ひ師(ダーリン)に見て貰ふ。ところが黒服は自分には手に負へぬと、登紀子は黒服の師匠がゐるといふグラウンド脇のあばら家「奇譚館」に連れて行かれる。紙芝居を手元に据ゑた老婆の師匠(牧村耕次/稲葉良子のアテレコ)は登紀子の夫の職業とセックスレスを看破した上で、このまゝ夫婦生活のない状態が続いた場合の、登紀子の生命の危機すら宣告する。元々の欲求不満がてら真に受けた登紀子は、疲労困憊して帰宅した弁護士の夫・横山昭二もとい昭次(なかみつ)に迫つてみるも、五年越しの冤罪事件を抱へた昭次は、老婆の占ひを一笑に付す。不貞腐れた登紀子の様子に昭次が文字通り重い腰を上げ頑張りかけたところで、矢張り中折れする。
 配役残り西川りおんは、殆ど芝居も与へられずダーリン石川と絡む黒服の女。大塚れんの爆乳に正しく勝るとも劣らぬいはゆる鉄砲乳を、もう少し拝ませて貰ひたかつた心は残す。ファースト・カットのマイク・アピール中では何気にハーセルフの峰岸ふじこは、風呂場でダーリンに犯された模様を盗撮された登紀子の窮地に、駆けつける友人・彩。素材的には日高ゆりあ似の―元―ギャルながら、モンスターの異名も誇る淫乱系の飛び道具。挨拶代りの謎のマスクマン(体格的には広瀬寛巳か佐選人?)との絡み、騎乗位で跨る瞬間アホになる時の世界のナベアツの顔になるのと、ダーリン以下広瀬寛巳・佐選人・光永淳・小林徹哉が増殖した黒服軍団に、ライトバンの中に拉致られ凌辱される件。口では嫌々、手足もじたばたさせつつ、最終的には全然ウェルカムな風情が爆発的に可笑しい。ここで本篇にも紛れ込む荒木太郎は、面倒臭げなプチアイランド児島第二総合グラウンド管理人。牧村耕次は横山弁護士が担当する冤罪事件の被告人も兼務、広瀬寛巳・小林徹哉・佐選人・光永淳は往来の林檎集団と、牧村被告人(仮称)の支援者を兼務。確か今回珍しく、淡島小鞠が見切れて来ない。
 前作同様公開題がストレートに体を表す、荒木太郎2015年第一作。前々作で荒木太郎は吹つ切れたのか、オーソドックスな起承転結なり物語を下手に追ふ営みはこの際潔く放棄。主演女優と二番手のオッパイで濃密に立ち込めさせた煽情性を、三番手の突破力でブチ抜いたかと思ふや、正体不明のオプティミズム薫るハッピーエンドに有無をいはさず捻じ込む。淫らな御鈴音の濫用にかつての荒木調ならぬ荒木臭の残滓が感じられなくもないものの、雰囲気と勢ひ―だけ―でザクザク見させる力技裸映画として、元々の荒木太郎の線の細い抒情性を適度な隠し味に、一作毎に力強く前に進んでゐる印象を受ける。あれだけフィルム文化の終焉を声高に嘆いてみせたにしては、雀百までといふ奴か、デジタルに移行して戦法に決定的な変更を加へられたやうには映らず。外光に屈するほかない屋外は流石に厳しい反面、屋内での濡れ場は、結構従来と遜色ない官能的な肌の質感に軽く目を疑つた。同録が出来るのだからしてもいいのに、依然アフレコに拘る姿勢も清々しい。1996年の荒木太郎と、その前年の国沢実。監督デビューはほぼ同期、終に燻りじまひかとさへ一旦は思へた最早どころでなく若くはない二人が、ここに来て藪から棒に元気なのが頼もしい、消える前の何とやらとかいはんでお呉れよ。


コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )




 「THEレイプ いきなり!ぶち込む」(2014/製作:多呂プロ/提供:オーピー映画/監督・出演:荒木太郎/脚本:荒木太郎/脚本協力:光永淳・小谷香織/撮影・照明:飯岡聖英/編集:酒井正次/撮影・照明助手:宇野寛之・金山翔郎・藤田朋則、もう一名/助監督:三上紗恵子・光永淳/制作:佐藤選人・小林徹哉/タイミング:安斎公一/出演:西園寺れお・河西あみ・杉原えり・冨田訓広・みつ・小林徹哉・佐藤選人・淡島小鞠・里見瑤子)。OPロゴに続きど初つ端に叩き込まれる、「L'ETS ACME」が原題なのか?ポスターによると宮川透が音楽担当の筈なのだが、クレジットレス。ビリング頭四人に、エンド・クレジットでは括弧新人特記。
 ジューズ・ハープがビヨンビヨン鳴る中、「L'ETS ACME」と大書されたスケッチブックを一枚一枚捲つて行くと、キャスト・スタッフの順にクレジットして最後にインしたタイトルに、何の意味があるのか土がかけられる。一枚一枚捲るスピードは別に問題ない反面、字が勢ひがあるといふよりは単に乱雑で直截に読みにくい。
 夫(みつ=光永淳)とのある意味積極的に気乗りしない夫婦生活明け、燐(西園寺)はパート先に出勤がてらその旨明言して家を出る。ロケーション的には天野商事、だけれども劇中では「日野オイル」。平然とガソリンスタンド内で煙草を吸ふ燐に、社長の中山(荒木)が下心を覗かせながらも手を焼く中、燐は仕事を終へ帰宅する研修生・浩(冨田)のライトバンに同乗。尺八を一吹きした事後、二人連れの男(まづ特定不能)に尾けられる女子大生(河西)を更に燐が浩とともに尾けてみると、ここは正直時間が飛んでしまつてゐるやうにしか見えないのだが、女子大生は犯された後だつた。助けるでもなく、燐は浩をけしかけ河西あみを更に陵辱。燐が私物を自宅に取りに戻る、濡れ場の途中にその件を差し挿む意図が見えない正体不明の繋ぎはさて措き、燐と浩はかつて体験したことのない苛烈な快感を覚える。
 配役残り杉原えりは、女子大生をレイプした際のアクメを再び求め、燐と浩が―荒木組が土地勘のある―富士五湖近辺で拉致する人妻国語教師。スタンドから拝借した何かで昏睡させた杉原えりを車に押し込むカット、遠目に見切れるのが小林節彦に見えたのは気の所為か?そこそこ攻め込まれこそすれ、ギリギリ脱ぎはしない里見瑤子は選挙ポスターには“東京にエクスタシーを”なる文言も踊る、藪から棒に荒木太郎は山邦紀共々近年俳優部として重用される浜野佐知に被れたのか、“女だつて男を犯したい”と底の抜けた女性上位スローガンを旗印に戦ふ民自党候補者・磯野和代。小林徹哉はチャリンコの磯野センセイに走つて追随する運動員、出演者クレジットは人が抜けてゐたやうな気がする茶髪の佐藤選人が、遊説中の磯野にテンションの上がるスタンド客。久し振りに、といふか戦線復帰以来初めて単騎の淡島小鞠は、姿を探した浩を捜し奔走する燐を、何故か狂騒的に笑ふ派手な格好の女。
 荒木太郎2014年第四作は、近年事ある毎に―映画用35mm―フィルム文化の終焉を声高に嘆き続けた荒木太郎にとつて、事態が革命級に派手に転びでもしない限りフィルム最終作。強姦の悦楽に目覚めた女と男が、強烈な体験を忘れられずに次々と新たな獲物を狩る。となると、最終的に殺しまではしないものの「暴行切り裂きジャック」(昭和51/監督:長谷部安春/脚本:桂千穂/主演:桂たまき・林ゆたか)と似たやうなお話なのかと思ひきや、やがて暴走を始めた男が、当初は連れられる格好であつた女を振り切り独走する、鮮やかなまでにまんまな展開に突入してみせるのにはグルッと一周して驚いた。要は映画史上空前に無体で、同時にフリーダムな結末を撃ち抜いた「暴行切り裂きジャック」に対し、「レッツ・アクメ!」の決まり文句で最低限の形を成したともいへ、中途半端にオチをつけ損なつた今作といふ仕方のない対比で元も子もないケリがついてしまふやうにも思へつつ、パンチの利いた主演女優と、いい感じに歪んだ劣情を刺激する何れも肉感的な二番手と三番手。女優部に恵まれたことと、余計な意匠は廃しハードなシークエンスを叩き込み続けることに徹した結果、ザクッとした裸映画としては普通に見応へがある。まんま切り裂きジャックに関しても、一見線の細い小僧つ子に見えた演劇畑から初参戦の冨田訓広が、案外浩が狂気を膨らませる風呂敷を十全に拡げてみせる地力に長けてゐたのはサプライズな見所。恐らくフィルムで撮る最後の機会に、荒木太郎が何でまたこのやうな負け戦臭が濃厚な企画を選んだなり挑んだのかと、一体淡島小鞠は何しに出て来たのかはよく―後者は全く―判らないが、下手なメロドラマを力なく燻るか萎ませるくらゐならば、頭あるいは腰の下ひとつ抜けた印象も確かに感じたものである。


コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )




 「不倫音楽教師 魅惑のゆび使ひ」(1999『女ピアノ教師 ゆび誘ひ乱されて』の2002年旧作改題版/製作:多呂プロ/提供:オーピー映画/監督:荒木太郎/脚本:岡輝男/撮影:清水正二・岡宮裕/編集:酒井正次/制作・録音協力:小林徹哉/スチール:木下篤弘/演出助手:田中康文/タイトル:内藤忠司/ピアノ指導:蓮見和美/出演:山崎瞳・篠原さゆり・岸加奈子・川瀬陽太・今泉浩一・野上正義)。“配給:大蔵映画”ではなくオーピー映画提供としたのは、白黒のOP開巻に従つた。
 女子高生・ことみ(山崎)の着替へを、ことみとは幼馴染の岩沢か岩澤厚治(川瀬)と、厚治の悪友・和彦(今泉)が覗く。ことみに気付かれた二人は逃げる、ことみなんかよりも年上が好みだといふ厚治の前を、ドンピシャの産休音楽教師・春代(篠原)が颯爽と自転車で通り過ぎタイトル・イン。旧題を山崎瞳が読み上げる―映倫番号は川瀬陽太らの合唱―ため、音とタイトル画面がちぐはぐなことになつとる。一手間かけて、抜けばいいのに。
 弾けもしないピアノが置かれた部屋、厚治が春代とのセックスをイマジンしてゐると母親にしてはいやに若い雪子(岸)が現れるのは、挿み込まれる厚治の老父(野上)が遺影を見やるカットで、雪子は幽霊である旨が語られる。ただ、この遺影岸加奈子か?悶々とした下心を爆発させ日課のジョギングがてら雪子宅の様子を窺ひに行つたところ、雪子に見付かつた厚治はピアノを習ひたいとその場しのぎで言ひ逃れるも、音大受験を目指すことみが既に実際にレッスンを受けてをり、二人で雪子宅に通ふ羽目になる。さりげなく配役残り、春代が町を去る際コートの後姿しか見せない同伴者は小林徹哉。
 昨今の大蔵旧作投入の流れに乗り着弾した、荒木太郎1999年第二作。確実に話題を呼べると思しき友松直之の「コギャル喰ひ ~大阪テレクラ篇~」(1977)をこの期に長く温存し続けてゐるのは、もしかすると上映権がオーピーの手許にないのかな?行間の無闇に広い薄味の物語を、当時は荒木調として―世間的には―神通力を失つてはゐなかつた小手先で埋める始終はよくいへば穏やかで、直截にいふと退屈。但し厚治が実は一番近くに居た大切な人と結ばれる、定番展開で漸く終盤に至つて求心力を取り戻す。そこから、締めの濡れ場が三番手なのは荒木太郎は三上紗恵子と出会ふ前からピンク映画の構成が出来てゐなかつたのかと呆れかけさせて、オーラスの厚治とガミさんの会話を通して厚治とことみの関係を、ガミさんと雪子の馴れ初めにリンクさせ綺麗に纏め上げる。未だ上り調子、この頃の映画を近作と並べられるのは、正直荒木太郎にとつて酷なのではなからうか。


コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )




 「めぞん美熟女 ぬるぬる下宿」(2014/製作:多呂プロ/提供:オーピー映画/監督・脚本・出演:荒木太郎/撮影・照明:海津真也/編集:酒井正次/音楽:日野サウンズ 演奏:安達ひでや/主題歌:『俺らの未来は希望しかない』 作曲・演奏・ボーカル:安達ひでや 作詩:荒木太郎 発売:首里ドーナツレコード/撮影・照明助手:矢澤直子、もう一名・広瀬寛巳/助監督:三上紗恵子・光永淳/製作進行:佐藤選人/タイミング:安斎公一/車輌:小林徹哉/出演:竹内紗里奈・愛田奈々・松すみれ・野村貴浩・那波隆史《特別出演》・河内哲二郎・ダーリン石川・佐々木基子・牧村耕次)。最近多呂プロのカンパニー・ロゴを観てゐない御無沙汰に、機を失して気付いた、何時からだ?
 チャンチャカチャンな主題歌起動、白の日傘×白のワンピース×白いハイヒールで楚々と土手道を歩くヒロインと、喜八(牧村)と次郎(野村)。義兄弟の毎読新聞勧誘員コンビの賑々しい顔見せにクレジットが併走、タイトルで朗々と締めるワン・コーラス歌ひ上げてタイトル・イン。片肌脱ぐと右の二の腕には南無妙法蓮華経の彫物も鮮やかな、春江(佐々木)が女将の未亡人下宿「日野荘」。下宿人の喜八と次郎が、同じく下宿人で、眠るデリヘル嬢のジャネット(松)に夜這ひを仕掛ける、昼間だけど。ところが、といふか当然ジャネットは途中で目を覚まし、喜八と次郎と、天井裏から愛を込めずに覗いてゐた医学生(荒木)も金を取られる。喜八の妹分でこの人も下宿人・明美(愛田)が、昔の男(ダーリン)に体よく弄ばれたショックで淺川橋から飛び込む飛び込まないと騒いでゐるところに、開巻の白尽くめの女が通りがかり、喜八はポップに一目惚れする。日野荘に手伝ひといふ形でやつて来た、春江の姪・一乃(竹内)と再会した喜八は驚喜する一方、一乃は実は既婚者であるものの、夫は七年前に失踪してゐた。
 配役残り河内哲二郎は、人気の少ない夜の路上で手売りと、まるで、あるいは丸つきりパン女のメソッドで自作詩集を売る一乃に、絡む酔つ払ひ。話を戻して淺川橋の件では、未だ自立には至らないのか相変らず御子を背負つた三上紗恵子と、小林徹哉に小谷香織も見切れる。那波隆史は水車小屋にて七年ぶりに一乃と待ち合はせる、真二君もとい伸介君。
 一昨々年から一昨年にかけて一時的に復調の兆しを見せかけながら、以降は力なく迷走する荒木太郎の2014年第三作。ともに天下を取るほどの戦果も未だ挙げてゐない上で、荒木太郎と国沢実がある意味順調に萎んでゐるのは困つたものだ、この二人に限つた話でもないのかも知れないけれど。一本骨の通つたドラマを構築する体力は失つたとしても、キャラクターを描く小手先は仮に手癖に過ぎずとも衰へてゐないらしく、日野荘に棲息する飛び道具揃ひの面々は騒々しく魅力的。日野といふと確か荒木太郎の自宅の筈の、日野荘の猥雑なロケーションも文句なく素晴らしい。尤も、これでは要は映画美術といへば映画美術で、単なる生活環境といへば生活環境。その辺りの生活と映画の直結具合に、否応なく感じさせる限界の所以が逆説的に照射されるやうに映らなくもない。兎も角、愛田奈々や佐々木基子が暮らす大所帯を掃き溜めと称するつもりは毛頭ないが、そこに一羽の鶴が舞ひ下りる手堅い構成は磐石。七転八倒するまでの明美の便秘を救つた医学生に体で対価を払ふのが、何故かジャネットであつたりする辺りには巨大な疑問符が拭ひ難くもありつつ、非日常的に弾けた日野荘の日常は勢ひでザクザク見させる。関根和美の向かうを張るかの如く、主演女優の濡れ場らしい濡れ場を全て妄想か夢オチで片付けてみせる潔いか威勢のいい態度も清々しい。反面、一乃が蒸発した亭主と再会する本来ならばクライマックスに際しては、生半可に生真面目にならざるを得ないだけに若干の失速感も否めないともいへ、幹はこの際等閑視、枝葉のフリーダムさを楽しむ軽演劇と割り切るべき、映画だけど。観終つた後に何も残らないのは優れた娯楽映画であることの証左と捉へるならば、最早下手に一本の物語を紡ぐ能力にも乏しい、昨今の荒木太郎にとつてひとつの突破口たり得る可能性を秘めた一作。己で与太を吹いておいて何だが、南なのか北なのか、風が何処から吹いてるのか判らない。


コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )




 「巨乳未亡人 お願ひ!許して…」(2014/製作:多呂プロ/提供:オーピー映画/監督・脚本・出演:荒木太郎/撮影・照明:飯岡聖英/編集:酒井正次/音楽:モンタージュ・ファクトリー/助監督:三上紗恵子/撮影・照明助手:他二名、畠山航/演出助手:三上一/タイミング:安斎公一/協力:花道プロ・小林徹哉・光永淳/出演:愛田奈々・松すみれ・星野ゆず・佐々木基子・石川雄也・野村貴浩・なかみつせいじ・今泉浩一・太田始・牧村耕次・那波隆史)。決して追へない代物ではなかつたものの、あちこち屈する。協力が、ポスターでは花道プロ・光永淳・小谷香織。ポスターには製作進行と記載される佐藤選人の、本篇クレジット上の有無は未確認。それと音楽のモンタージュ・ファクトリーといふのは、宮川透のバンドあるいはユニット。
 タイトルからイン、続いて路傍の石たる文言が現れるのは、原作とでもいふつもり?いや、未だ山本有三の没後五十年が経過してゐない以上、精々原題か。何れにせよクレジットが追走、ロングでモノレールを一拍挿んで、全裸で横たはり電話を取る松すみれが飛び込んで来る。リストラ後、別居中の妻・秋子(松)を始め周囲からも見放され八方塞がつた谷口周平(那波)は、町内のラジオ体操グループのマドンナ・垣花佐和子(愛田)と出会ふ。
 配役残り―早えな―野村貴浩は、秋子の不倫相手・司博。佐々木基子は、佐和子と纏めてこの人等もリストランの倉田節。なかみつせいじと今泉浩一と太田始は、ラジオ体操メンバーの飲食店店主・杉山恒夫、袈裟を着てゐるゆゑ多分坊主の西脇実、職業不詳の近藤庄太郎。小谷香織含め協力勢と佐藤選人も、ラジオ体操の輪の中に見切れる。あと相変らず子連れの淡島小鞠(a.k.a.三上紗恵子)も、成長日記か。牧村耕次は、誰か判らない遺影の夫没後六年佐和子が面倒を見続ける、目下は痴呆症も発症した義父・種吉。元石屋で、琴線に触れる石を見付けると―元々最早殆ど覚えてない―我を忘れる。石川雄也は、金に窮した佐和子が文字通り一肌脱ぐ、白タクならぬ白売春の客。星野ゆずに関しては後述する。忘れてた、荒木太郎は谷口を悪し様にいふ噂話と滞る家賃を催促する―垣花家の―大家の声と、クロブタカマトの「カマト運輸」引越作業員、もう一人ゐる若い後輩は判らん。一応ツッコんでおくと、斯くもナノ尻穴な御時勢、今時の引越屋が幾ら待ち呆けを喰らはされてゐるとはいへ、客の部屋の前、ないしはマンションの通路で煙草は吸はんよな。一歩間違へたらトラックの中でさへ許されない可能性も、己等不自由な世界を作るのがそんなに楽しいか。
 はてさてな荒木太郎2014年第二作、松すみれのゴージャスなオッパイの陰から、野村貴浩が不意に身を起こし正しく出現するカットには、ピンクで映画なピンク映画らしい冴えが煌いた。徘徊する種吉が分け入つた薮の中にて、不自然極まりなくもそんなロケーションで寝てゐる星野ゆずと出会ふ件はまたエラい三番手の放り込みやうをと一瞬呆れかけたが、星野ゆずに関心を払はず種吉はそこにある大きな石を引き抜かうとする。即ち、種吉が石に激しく執着する種を事前に十全に蒔いた末に結実するシチュエーションであるといふ点は、三上紗恵子が終に辿り着き得なかつた論理性のビクトリー。イチ・ニ・サン・シ、すりすりすりすりとラジオ体操と称して訳の判らないオリジナル体操の、同時に異様な溢れんばかりの幸福感は、荒木太郎が今なほストライクを取れる数少ない決め球。転がり込んだ垣花家でありもしない金目の物を物色してゐる現場を佐和子に見咎められた星野ゆずが、信じて貰へなくていいと前置きした上で投げる「好きぢやなきや、寝なかつた」との捨て台詞も、上野オークラのマスコットガールとしてのふんはかしたキャラクターとは全く異なる相貌を呈した、星野ゆずのスレた突破力に加速されハクい。尤も、肝心の佐和子と周平の物語がスッカスカ。外堀がある程度豪華であつたとて、本丸が掘立では話にならぬ。それまで半ばでもなく見下すかのやうに周囲との接触を拒んで来た谷口が、愛田奈々の色香にチョロ負かされたといふならば万感の同感を以て肯くほかないにせよ、スッぽかした町内掃除に出し抜けに狼狽するかの如く改悛する。取つかゝりから快調にバタついたラブ・ストーリーは、以降も銀幕に愛田奈々が映し出されてゐる以外にはさして拡がるでも深まるでもなく。羨ましさが限りなく爆裂するラスト・ショットは素晴らしいとしても、佐和子も佐和子で“覚悟”の一言を口にしたにも関らず、何だかんだ、何だかんだとしかいひやうのない展開に従ひ谷口と懇ろとなるに至るのでは、着地点が然るべき納まり処に納まつたといふよりは、正直単に水が低きに流れた印象の方が強い。これは純然たる好き嫌いに過ぎないのかも知れないが、那波隆史といふ人は笑顔の輪郭があやふやなので、下手な好い人役、もしくはハッピー・エンドにはどうしても御都合なり自堕落さが先に立つ。マキシマムにそもそも、今作の何が、何処が路傍の石かといふ話である。石好きの爺が出て来るだけだ、何だそりや。結局、事ある毎にフィルム文化の終焉を声高に嘆いておきながら、残された数少ない、指を折るにしても片手で足る本当に残り僅かな35mmフィルムで映画を撮る機会を、今回荒木太郎は何時もの気の合つた仲間と、すりすりすりすり漫然と茶を濁してしまつたと難じざるを得ない。そして、それは現代ピンクにとつてひとつの象徴的な光景でもあるだなどと、惚けた顔して筆を滑らせてみれば実も蓋もない、ババンバン。


コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )


« 前ページ