真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「性風俗ドキュメント ザ・穴場」(1991/製作・配給:新東宝映画/監督:深町章/脚本:周知安/製作:伊能竜/撮影:稲吉雅志/照明:田端功/編集:酒井正次/助監督:田尻裕司/監督助手:国分章弘/撮影助手:飯岡聖英/現像:東映化学/録音:銀座サウンド/出演:荒木太郎・渡辺由紀・千秋誠・宮下なお・上田亜衣・姫ゆり・西田早紀・飛田翔)。脚本の周知安と製作の伊能竜は、それぞれ片岡修二と向井寛の変名。
 津田スタの和室が点灯、荒木太郎が「こんにちは、これは日本の風俗をテーマにした映画です」と真正面から大登場。電気を点けないと真暗く、夜にしか見えないんだけど。続けて「人類最古の職業といはれる売春婦は」とか藪蛇な特大風呂敷をオッ広げ、時代の変遷に伴ふ―狭義の―新風俗の興亡をああだかうだ適当に概観しつつ、一通りの業態を潜り抜けた体験談を紹介するとするコンセプトの提示と、漢字でどう書かせる気か荒木太郎に「この映画の脚本を書いたメグリトモヤスです」と自己紹介させた繋ぎで、お店に置いてある風の嬢の目線入り写真にタイトル・イン。
 物語らしい物語も存在しないゆゑサクサク配役残り、渡辺由紀は、メグリが十数年前に凝つた、マントル嬢・アサミ。嬢が好んで口にするプロフィールとして、一位:十九歳専門学校、二位:二十歳OL、三位:二十一歳女子大生とするメグリ調べランキングが絶妙。メグリの御縄は免れながら、アサミが十七歳高校生であつたといふオチがつくのと、嬢の逆サバを八十年代以降新たに見られる特徴とする視座が開陳される。完全に顔をボカシで隠した嬢への短いインタビュー挿んで、盛り上がつた友人(飛田)と嬢を二人呼ぶホテトル篇。ここで初めて辿り着いたのが、飛田翔といふのが田尻裕司の変名。面倒臭い泥酔者を、案外楽しさうに演じてゐる。二人呼ぶホテトル嬢の女優の顔をしてゐる方が千秋誠で、問題が、残りの女優部が姫ゆりすら特定能はず。内訳は千秋誠の連れのホテトル嬢Bと、SM方面にシフトする後半に登場する順にM嬢A、鉄砲乳が見事な女王様に、M嬢B。女王様とM嬢Bでは間違ひなくないけれど、かといつてM嬢Aも姫ゆりとは別人なんだよなあ。
 片岡修二ピンク映画最終作「スチュワーデス禁猟区 -昼も夜も昇天-」(2000/脚本:甘木莞太郎/主演:吉井美希/a.k.a.伊沢涼子)の前作、「性風俗ドキュメントⅡ ザ・快楽」(1992/主演:下元史朗)を見ようとして、無印第一作もDMMの中にあるのを見つけ順番に片付けるかとした深町章1992年第三作。時代と量産型娯楽映画の大山に埋もれた名作たる「性風俗ドキュメント」シリーズ最終第三作が、「最新!!性風俗ドキュメント」(1994/監督:深町章/構成:甲賀三郎/主演:林由美香・荒木太郎)。軽く覗いてみると荒木太郎はピンク男優役で、「ザ・快楽」にもクレジットレスながら顔を出す皆勤賞を達成してゐる。
 話を戻すと物語のみならず、映画の中身も特にこれといつてない。飛田が使へない上にホテトル嬢Bは返すとした金も受け取らず、ならばとメグリが初体験の二輪車に突入する展開なり構成の妙が関の山。所詮はマントルであらうとホテトルであらうとヤッてゐることに―少なくとも映画上―差異は一欠片たりとて見当たらないのと、出し抜けに懐かしきノストラダムスに代表される終末思想まで絡めた、種族の繁栄を等閑視した快楽オンリーのメグリ曰く“世紀末セックス”を、エスエムに直結する方便が豪快もしくは粗雑に過ぎて、後半は幾ら濡れ場の羅列に過ぎぬにせよ、流石に映画が体を成してゐない。夜の街に繰り出すメグリが「それでは失礼します」と津田スタ和室を消灯、残されたテレクラにかけた嬌声が漏れる受話器がラスト・ショット。五分余した早目の尺をそこだけ掻い摘むとそれなりの余韻も残して締め括るのは、幕引き際に長けた深町章の妙手。


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コメント
 
 
 
Unknown (はる)
2018-07-17 07:43:02
ピンク映画でやる必然性はないですよねw
AVなら兎も角w
当時ビデオも買えない層がこれを劇場で見てたかと思うと切なく感じます。
あとドキュメントタッチで未成年が風俗ってかなりまずいのでは?
 
 
 
>ピンク映画でやる必然性はないですよねw (ドロップアウト@管理人)
2018-07-17 21:10:16
 ひとつの趣向として全然アリな気がします、大体中身は純然たる劇映画だし。
 
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