真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「人妻エロ風俗 そそる痴態」(1992『性感《秘》マッサージ 人妻愛撫』の2012年旧作改題版/製作・配給:新東宝映画/監督:深町章/脚本:周知安/製作:伊能竜/撮影:下元哲/照明:伊和手健/編集:酒井正次/助監督:広瀬寛己/監督助手:駒場三十郎/撮影助手:中尾正人/照明助手:小田求/スチール:津田一郎/録音:銀座サウンド/現像:東映化学/出演:石川恵美・橋本杏子・芳田正浩・荒木太郎・山本竜二・しのざきさとみ)。脚本の周知安は片岡修二の、製作の伊能竜が向井寛のそれぞれ変名。
 愛称エッちやんといふからにはまづ間違ひなく悦子であらう、岩崎悦子(石川)はコンピューター会社に勤務する優秀なプログラマーである夫(芳田)と、互ひにエッちやん・タッちやんと呼び合ふお熱い新婚生活を送る。夫以外に男を知らぬ悦子の性感帯は未開発で、くすぐつたがつてばかりの妻を相手に夫婦生活にあくせく悪戦苦闘するある日、岩崎は不意に勃たなくなる。仕事上のストレスに起因する一時的なものであるとする診断を下し、自宅療養を岩崎に勧める医師は、寛己でクレジットされる若き日の広瀬寛巳。若干細いが、殆ど変らないといへば変らない。長期休暇を貰つたはいいものの、その間は給料も減る。岩崎の不要な不安を払拭するためにも、悦子はパート探しに着手。『とらばーゆ』誌にさういふ案件が掲載されてゐるとは思ひ難いが、兎も角好条件に釣られて悦子が門を叩いた「さくらエステ」は、エステはエステでも性感出張エステ。女社長(しのざき)相手に御丁寧に攻守を交代する実地訓練を尺も潤沢に費やしこなした上で、その時電話をかけて来た、元町の証券マン・佐伯(荒木)宅に悦子は早速飛び込ませられる。この人もこの人で仕事上のストレスによる心因性のインポテンツで、挙句に彼女にも逃げられたといふ佐伯に、夫の姿も重ね合はせた悦子は俄然猛ハッスル。最終的には佐伯に促された前立腺を刺激することにより、男性機能の回復に成功する。見事初陣に勝利し喜び勇んで帰宅した悦子ではあつたが、佐伯には功を奏した前立腺攻略が、切れ痔持ちの岩崎には適用不可といふ中盤のオチは地味に気が利いてゐる。
 実は佐伯は岩崎の後輩であつたといふ事実が明らかとなり、ワン・クッション置くべく登場する山本竜二と橋本杏子は、劇中三人目の不能氏と、その細君。刺激を求めての、三人プレイを希望する。
 「若妻オイル性感 ぬめり汁」(1996)、「セックスドクター 奥さんはびしよ濡れ」(2001)、「若妻オイルマッサージ ぬめり汁」(2003)。何と今回で四度目の旧作改題となる、深町章1992年第二作。山本(仮名)家巴戦を経て、佐伯が同じくインポに悩む先輩に、いいエステを紹介しますよといふ塩梅で、以降はテンプレ通りの夫婦驚きの御対面にまで一直線。その場の勢ひで岩崎も復活し、何時しか悦子も性的に開花済み。万事目出度きハッピー・エンドといふ展開は他愛ないことこの上ないが、決して美人といふことはないものの、石川恵美の、人の好さも感じさせるエモーションが穏やかに全篇を包み込む様は、意外と素晴らしい。都合四度もの新版公開に案外堂々と耐え得る、幸福な娯楽映画の慎ましやかな佳作。個人的には、以後石川恵美といふ隠れた名女優に対して、評価を改める機運を成す一作となるやも知れぬ。


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