真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「フェチづくし 痴情の虜」(2018/制作:加藤映像工房/提供:オーピー映画/監督・脚本・編集:高原秀和/原作:坂井希久子『フェティッシュ』/原作協力:特選小説 綜合図書/撮影監督:下山天/撮影協力:森川圭/音楽・整音:野島健太郎/助監督:加藤義一/監督助手:江尻大/スチール:本田あきら/仕上げ:東映ラボ・テック/出演:涼南佳奈・櫻井拓也・酒井健太郎・NIMO・那波隆史・榎本美咲、他二名・森川凜子・重松隆志・竹本泰志・国沢実・坂井希久子・石川欣・金田敬、他多数)。出演者中他二名・森川凜子と、国沢実以降は本篇クレジットのみ。逆に、ポスターには載る照明のガッツ=守利賢一と録音の堀田範仁の、本クレが何故か抜けてゐる。
 ど頭はR18+、加藤映像工房ロゴはスッ飛ばし、原作クレジット開巻。榎本美咲・涼南佳奈・NIMOの順で、「アタシの欲望の扉は・・・」と各々モノローグを繰り返す、コマーシャル風なモノクロのアップを連ねてタイトル・イン。とこ、ろで。NIMOとかいふ変名ぽさも漂はせる形式三番手は実際その検索し辛い名義で活動してゐる、前二人と同様AV勢。
 通販会社の宣伝部に勤める瀬田美夕(榎本)と、同じ部署ではないが同期の小森美晴(涼南)が、専ら御馴染高円寺の居酒屋「馬力」で女同士のサシ呑み。そこにクレーム対応担当の水野晃(那波)と、美夕らの後輩で、美晴にとつては直属の部下である滝川勇気(櫻井)が現れ、挨拶を交し別のテーブルに着く。既婚者の美夕に対し、三年の社内不倫も経ての美晴は未だ独身。短い何だかんだを経て、二人が“人それぞれ”と何の結論にもなつてゐない着地点にとりあへず落ち着いたタイミングで、第一話―はクレジットされない、以下同―のタイトル“噛”が改めてタイトル・イン。不倫相手で課長(当時)の鹿山茂明(酒井)に美晴は行為の最中噛むやう乞はれ、応じてゐる内に、自ら男の体に歯を立てることに快楽を覚えるやうになる。鹿山と別れて久しく、次第に噛む飢ゑに苛まれた美晴は、セフレ的状態にある滝川―滝川の中では普通の交際関係―に、噛みたいと真情を吐露してみる。その件、櫻井拓也の背中越し滝川の右肩に齧(かぶ)りついた美晴は、もうひとつの手で抱き締めるやう求める。のを、折角熱の籠つたシークエンスなのだから、一手間割いて今度は涼南佳奈の背中越しに、美晴の激情に応へる滝川の左腕を押さへればよかつたのにと、素人考へが軽く過る。実際の画角では、抱き締めるも何も左腕の動きさへ映らない。更に一層特筆すべきが、後述するNIMO共々、一話限りで御役御免の酒井健太郎。顔とメソッドに発声、何もかもが徒か過剰に濃く映画のカットの中では下卑てしか見えない。酒井健太郎が本来は舞台を主戦場とした、演劇畑の人なのではあるまいかと訝しんでゐたところ、必ずしもさういふ訳でもないみたいで、なほかつ那波隆史・森川圭・重松隆志と同じ、芸能事務所「STRAYDOG」所属であつた。
 第二話“声”、四十五歳の誕生日祝ひの準備を全ッ力でしたにも関らず、水野が仕事先の長野から雪で帰京出来ない旨の連絡に、同棲してゐるのか否かは微妙に判らない田所由美(NIMO)はアヒル口を尖(とん)がらせる。由美と水野のミーツは、ずばりクレーム対応。由美が通販で買つた皿が、初めから欠けてゐた。至らない担当者(CV:森川凜子)の対応に由美がキレかけた電話に介入した水野は、ここも、あるいはそもそも不自然だが一人暮らしの女宅に自ら新品の皿を持参する。
 第三話“匂”、帰宅した美夕が家内に違和感を感じてゐると、居間で本を読んでゐた夫・勝男(重松)からは、もつ鍋でも食べて来たのかと尋ねられる。てつきり美晴と馬力で舌鼓を打つて来たのかと思ひきや、美晴は宣材の撮影で出会つたカメラマン・宮本賢太(竹本)と、美晴に語つた劇中台詞ママで“Bまで”致して来たところであつた。匂ひフェチの美夕がよろめいたにしては、全体宮本は如何なる体臭の持ち主なのか。美夕のベクトルないし琴線が、拗れてゐるのだとしたらそれまでの話だが。配役残り他二名と森川凜子が、その他宣伝部要員。国沢実以降は、映画監督を大量動員したらしい、ラスト・ショットは店中一斉の乾杯で賑々しく幕を引く馬力隊。
 加藤義一とはどういふ縁なのか、「ロリ色の誘惑 させたがり」(2005/監督:高原秀和/脚本:永元絵里子/主演:綾瀬つむぎ)以来実に十三年ぶりとなる、まさかの高原秀和ピンク復帰作。2008年のオール讀物新人賞受賞時、現役SM嬢であつた飛び道具エピソードで名前を打つた女流官能小説家の原作を得、三本柱銘々の性的嗜好を軸に据ゑた、最後も締める馬力にて美晴は滝川との交際を美夕に報告し、水野も水野で―由美との―再婚を報告する程度に、緩やかに三話がリンクするオムニバス篇。高原秀和のピンク復帰に関して、“まさか”と筆を滑らせたのはほかでもない。当サイトは「ロリさせ」の時点で既に、二十年選手の癖にどうしやうもない高原秀和の青より青臭い生硬さは、生れ変つても抜けぬにさうゐないと匙を投げてゐたのだ。あに、はからんや。一旦戦線撤退の翌年に旗揚げした、主宰劇団「lovepunk」の歩みをも含む三十三年の月日は流石に伊達ではなかつたのか、かつて強靭であつたぎこちなさはすつかり影を潜め、かといつて、物語の面白さなり撃ち込んで来るエモーションの重さを感じさせる、でもなく。書き言葉と聞き言葉の違ひもあるにせよ、わざわざ官能小説を原作に戴いた割には思ひきりプルーンなナレーションがよくいへば淀みなく、悪くいへば淡々と進行する、撮影部の手堅さが諸刃の剣スレッスレの、小奇麗なばかりのトレンディな裸映画であつた。尤も、水野の声に一目もとい一耳惚れした由美は玄関口でモーニング・ボイスを録音させて貰ひ、しかも社内で初対面の取引先であつた勝男に、美夕は私にとつてはいい匂ひだと破天荒な内角モーションをガンッガン投げ込んで来る。坂井希久子の所為なのか高原秀和がやらかしたのか、大穴を開けておかしくない大(だい)で済まない超飛躍は所々際立つ。とは、いへ。全員普通に若くて美人な、女優部に穴はない。扱ひは均等でビリングの序列に実質的な意味は極めて薄い反面、企図したものか単なる不作為の偶然か、三話を通してオッパイが徐々に大きくなつて行く構成の妙には、映画の神の祝福が透けて見えなくもない。酒井健太郎のトゥー・マッチを除けば阻害要因も見当たらない濡れ場は質量ともひとまづ申し分なく、フラットに女の裸を浴びる分には、満更でもない一作。アクシンデンタルに抹殺された荒木太郎を筆頭に、旧来のローテーション監督が外様に駆逐されて云々。残りの選択肢はほぼほぼ潰へ、いよいよ大蔵の腹積りひとつで何時終に詰んでもおかしくない最中、かういふ缶コーヒー業界でいふところのアメリカンな映画を撮る意義かんぬん。銀幕の中ながら可愛い女の子の―下―心を弾ませる乳尻を前に、その手の無粋な野暮如きさて措いてしまへ。


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 「痴漢《秘》変態夫婦」(昭和56/製作・配給:新東宝映画/監督:大門登/撮影:塩田敦也/照明:山田明/編集:酒井正次/監督補:石部肇/製作補:北村淳/録音:東音スタジオ/効果:東芸音響/現像:東映化学/出演:中川夕子・栄雅美・笹木ルミ・辻明宮・北村淳・吉岡一郎・久須美護・関口豊・村井浩)。俳優部と製作補を兼ねる北村淳は、ex.北村淳で新田栄。石部肇が演出部に入るのを目にするのは二度目なのと、脚本クレジットが見当たらないのは驚く勿れ本篇ママ、頓着のなさが堪らない。
 階段絡みのパンチラに、後にもワン・カット登場する謎の小男―これが大門登?―と、北村淳が垂涎する。北村淳が「おお、いい土手」と漏らす嘆息にタイトル・イン、クレジット中は諸々の青姦なりオナニーに、久須美護(久須美欽一の旧名義)と吉岡一郎(a.k.a.吉岡市郎)が固唾を呑む。明けて海ショットにパラリラパラリラ、カメラマン・立夫(吉岡)のボンネットに管楽器を載せた喧しい車が、女子大生モデル・圭子(中川)を助手席に撮影地の伊豆を目指す。圭子がハコ乗りも辞さない勢ひで出鱈目な無羞恥露出を仕出かしつつ、車の中から如何にもこれからオッ始める風情のカップル(二人とも、殊にヒゲの男優部が謎)を発見した立夫は、車を停めわざわざ覗きに行く。
 配役残り笹木ルミと北村淳は、女学生強姦プレイを―矢張り野外で―仕出かす、業態不明の飲食店「民芸茶房」ママ・みどりと、町一番の有力者の倅・兼吉。久須美護と栄雅美は、立夫と圭子が宿を取る「白岩荘」の主人・祐介とその妻・はるみ。客も入る浴場を、日常的に夫婦生活で使ふ。みどり&兼吉といひ、自由すぎるだろ、伊豆、あるいは昭和。それとはるみは、赤貝でシャンパンを開ける荒業を敢行する、凄いマン力だ。心臓動かすのやめればいいのにな、俺。辻明宮と村井浩は、漁師の娘の千代に、恋人で造船所で働く友平。北村大造から演技力をスポイルしたかの如き関口豊は、千代の意は一切介さず、兼吉と結婚させようとする父親・源造。
 如何にも変名臭い謎の監督・大門登の、jmdb準拠で最終第八作。残り七作は全てミリオンで、ex.ミリオンがジョイパック、ex.ジョイパックがヒューマックスといふタイム・ゴーズ・バイ。
 特に口説き落とすでなく、普通にみどりと関係を持つ祐介が、兼吉と千代の縁談成就を目論む―兼吉父の―尖兵として蠢動する形で、やゝこしく繋がつた伊豆クラスタの相関関係に、ストレンジャー主人公たる立夫と圭子が小耳に挟む程度に首を突つ込む。と掻い摘むと、あたかもそれなりの物語が成立でもしてゐるかのやうに誤解されかねない。のかも、知れないが。実際には漫然とした濡れ場濡れ場にとりとめもなく終始する、俳優部のビジュアルがなほさらマッタリ見せる真清々しき純粋裸映画。白岩荘をみどりとの逢瀬に使つた兼吉が、強打したのは腰であるにも関らず、何故か片玉潰す大怪我、ものの弾みにもほどがある。騒動に臍を曲げた源造は、脊髄で折り返して千代を兼吉の玉の輿に乗せる皮算用を白紙撤回。祐吉とはるみの密談を盗み聞いた立夫と圭子は義憤ぽい感情に駆られつつ、要は具体的には何もしないまゝに、千代と友平の恋路が勝手に実る。抜けるどころか底の溶けた作劇が、グルッと一周した感興を惹起する。それでゐて、立夫が劇中二度失敗する出歯亀がてらのパンティ釣りに、三度目の正直で遂に成功するに及んで、そこはかとない大団円感を錯覚しかねないのは、何気な展開の妙なのか、あるいは単に、小生の元々貧しい脳味噌が、すつかり桃色に煮染められてゐるに過ぎないのか。尤も帰京する車中、立夫に宝物の戦利品を捨てさせた圭子が、パンティよりも中身と軽く膳を据ゑてみせる流れで、くつきりと所謂マン筋の刻み込まれたパンティが正対する画から、後ろを向いてキャストオフ。改めて正対すると照明が落ちた上で、観音様から“終”がグウーッと飛び出て来るラスト・カットは、振り切れたプリミティブさが案外完璧。心身の少なくとも何れかがくたびれた時に、女の裸をのんびり楽しんで、眠たくなれば躊躇なく寝てしまふ、さういふ用に供するには最適な一作。そしてそれはそれで、ひとつの量産型娯楽映画が到達すべき境地であるやうにも思へる。


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 「乱行催眠 私は、かうして暴行された」(1996/製作:プロダクション鷹/提供:Xces Film/脚本・監督:珠瑠美/撮影:伊東英男/照明:石部肇/美術:衣恭介/音楽:鷹選曲/効果:協立音響/編集:井上和夫/助監督:高部真一/現像:東映化学/録音:ニューメグロスタジオ/出演:東杏奈・桃井桜子・青木こずえ・竹田雅則・加藤健二・樹かず)。美術の衣恭介は、木俣堯喬の変名。
 何か一行が進むジャングルが目に浮かぶ、冒険映画みたいな劇伴にタイトル開巻、全体何を考へてこの曲を選んだのか。ワイングラスで赤い液体を飲んだ桃井桜子が、催眠状態突入を示すグルグル画を回す処理を経て、樹かずに嬲られる。如何にも抱き心地のよささうな、桃井桜子のバディ感溢れる肢体が絶品。三分濡れ場を黙つて見せた上で漸くクレジット起動、遅れ馳せた居心地の悪さが色濃い。珠瑠美クレジットの直前で、竹田雅則が加勢する。明けてチュンチュン、鳥のさへづり鳴らした戸建外景。休日なのか、朝つぱらから終に劇中呼称不明の桃井桜子(以下モモーイ)と、夫・雪村か幸村(竹田)の夫婦生活。事後の余韻に何時までも回す、無闇な尺が別の意味で堪らない。それは出勤時?何をしてゐるのかよく判らない背広姿でブラブラする雪村と、何処かの女子大から出て来る青木こずえのカットを何の脈略もなく連ねて、モモーイに、母親(珠瑠美)から電話がかゝつて来る。用件は、母親の父親の入院。の木に竹を接ぎ、モモーイ宛に元カレの、池田三郎から手紙が届いた旨を投げる。何だかんだで、モモーイの義妹で女子大生の千秋か千晶(青木)が、マッチポンプな悶着を抱へ雪村家に一時避難して来る。モモーイから千秋が処女である旨を聞いた雪村は、内心でもなく喰ひつく。動揺する雪村が明後日に酒を注ぎ卓を汚すのを、単なるクリシェと見るか。それとも珠瑠美にしては、心象を表しようとした十全な演出と目するべきか。
 配役残り総尺の1/4を消化してやつとこさ出て来た東杏奈は、眠剤入りのワインで女をこます、性質の悪いスケコマシである池田(樹)の情婦・レイコ、職業はパンティの中に手を入れても怒られない店のホステス。加藤健二は、レイコと雪村を引き合はせる、女遊びに長けた上司のオタキ課長。
 シーユー・タマキュー!珠瑠美1996年第三作で、DMMで見られるものも遂に見尽くした。この期に配信スルー作が小屋に飛び込んで来るものの弾みに恵まれれば勿論迎へ撃つし、買取系ロマポが今後―DMMに―新着する可能性は、果たしてあるのやらねえのやら。やらやら、もといやれやれ。といつて間違つても寂しかつたりする訳がない、全部で三十五本観るか見た珠瑠美作は、大体どれも似たやうなタマキュー。藪蛇な選曲、映写事故かと見紛ふほどの長尺フェード。頓珍漢なイメージの乱打と、多用する春画なり外人のエロ写真のモチーフ。勿体ぶつた書き言葉を一方的に投げる初めから破綻したダイアローグに、大抵そもそも存在しない物語。その癖、エクセスライクの地雷を踏む羽目には滅多に陥らず、恵まれた女優部の裸をあくまでその限りに於いてはお腹一杯に見させる純粋裸映画。いつそ適当な言語―ハナモゲラで可―にでも吹き替へて呉れた方が、余程素直に愉しめさうな可能性すら否み難い小一時間。改めて今回でソーロングになつたとて、名残惜しさが微塵も湧いて来ないのも至極当然といつたところか。兎も角今作の特徴を強ひてひとつ挙げるならば、桃井桜子にも青木こずえにも、東杏奈が秀でてゐるポイントが一欠片も見当たらない以上寧ろ賢明とさへいへるのか、豪ッ快なビリング完無視。レイコの役所(やくどころ)は、オタキのアシストを受け雪村と池田を繋ぐ、三番手の割には何気に本筋に貢献する満更でもない三番手。どちらにせよ、精々上手く展開に組み込まれた三番手が関の山。終盤家に池田をシレッと招いた雪村の魂胆は、眠剤ワインで眠らせた千秋の水揚げ、相変らずクライマックスもレイコ不在。共々実も蓋もない青木こずえ×竹田雅則と桃井桜子×樹かずの絡みを適当に並走させた末に、しかも何れも完遂には遠く至らないまゝであるにも関らず、池田がモモーイを喰ふ大絶賛中途でブツッと“END”が叩き込まれる結末には、最早この期に驚きもしない。起承転結が成立しやうがしまいが、ひとつの性行為に区切りがつかうがつくまいが、時間が来れば―といつて、実は六十分にも九十秒強余してゐたりする―強制終了。それが小林悟の大御大仕事に劣るとも勝らない、珠瑠美流の純粋裸映画である。雪村が千秋に喰ひついた流れで、モモーイが配偶者にバージンを捧げたとする話と、雪村と出会ふ前池田と拗らせた関係との間に燻る根本的な疑問如き、この際とるに足らない些末。一々そんなところに気づくのが悪い、いはゆる釣られた方が負けといふ奴だ。とかくタマキューの無造作な不条理に触れてゐると、正体不明の敗北感にも似た徒労が否応ない。それとも何時か、グルッと一周するか何某かから解放されるかして、楽になる日が来たりとかするのかな。

 軽く事件級のビリング破壊に関してはもしかすると、撮影当時、といふか当日。男優部としか顔を合はせない東杏奈の、拘束上の問題とか発生してゐたのかも知れないが。


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 「出張ソープ 和風不倫妻」(1994/製作:プロダクション鷹/提供:Xces Film/脚本・監督:珠瑠美/撮影:伊東英男/照明:石部肇/美術:衣恭介/音楽:鷹選曲/効果:協立音響/編集:井上編集室/現像:東映化学/録音:ニューメグロスタジオ/出演:神代弓子《イヴ》・本城未織・麻生雪・杉本まこと・樹かず・神戸顕一)。美術の衣恭介は、木俣堯喬の変名。
 素頓狂に京劇風の劇伴が鳴る中タイトル開巻、春画からイヴちやんにパンしてクレジット起動。早くも何もかもが、紛ふことなき珠瑠美映画、この際完璧とでもいふほかない。クレジットがてらイヴちやんの自慰を二分見せて、とりあへずそこそこ豪邸の堀江邸。jmdbには堀井とあるが、都合二回着弾する郵便物の宛名は何れも堀江。堀江勇作(杉本)は妻の美佐子(神代)と他愛ない会話を交しつつ、美佐子が堀江家に代々伝はる枕絵を覗き見た節を確信する。背中を流せと風呂場に呼んだ美佐子を、勇作が軽くシャワー責めする流れで、カット跨ぐとサクサク突入する夫婦生活。勇作は祖母や母と同様、美佐子に枕絵から学んで名器の持ち主になるやう厳命する。九十年代中盤の現代劇で、時代錯誤といふか倒錯甚だしいといふか、兎も角一言で片付けるとかういふ狂つた家族観をケロッと描いてのけるのが逆に凄い。絡みから十秒!費やす長尺フェード明け、美佐子が庭でポケーッとしてゐる―実際ポケーッとしてゐるやうにしか見えない―と、電話が鳴る。美佐子が出たところ、支局長の村井が急死したとやらで、勇作に急遽バンコク転勤が決まつたとかいふ仰天人事。フリーダムな会社だな、電話一本で、しかも相手が配偶者とはいへ本人すらスッ飛ばすんだぜ。兎も角、専業主婦である美佐子がついて行かない不自然な事情に関しては一欠片たりとて触れないまゝに、勇作は単身での赴任間際、ちよつとしたパーティーで会つた美佐子の旧友・時田恵子の名刺を残して行く。
 配役残り、整理すると林田ちなみa.k.a.本城未織がex.新島えりかとなる本城未織が、表向きは美容サロンを経営する時田恵子。またこの恵子の会社の屋号が不安定、勇作が美佐子に渡した名刺には「CREATE・ジュリー」。美佐子が名刺の番号にかけてみた電話口では「タイエット・ジュリー」で、マンション一室に構へた自宅兼オフィスの表札は「CREATE・ケイコ」。かうなるとスクリプターだ何だといつた次元ではない、大体何なんだジュリー。唐突に飛び込んで来る麻生雪と、ランデブーする神戸顕一は、出張風俗嬢の浅井弓子とその客・良行圭介。この二人の対戦に際してはユミコが外したサングラスに映した騎乗位から、次の画は九十度俯瞰と撮影部が発作的なヤル気を見せる。樹かずは恵子のパパさんポジの、若くして化粧品会社専務。
 実は、と改まつていふのも何だが、もうDMMの中にも、未見のタマキューが今作入れて二本しかない、別に寂しくはないけれど。ともいへ買取系ロマポでも今後新着した暁には、バラ売りであれ臆することなく出撃する。監督デビュー初期のミリオン作は固より、新東宝の望みも最早あるまい。旦那の「中川みず穂 ブルーコアin香港」(昭和61/脚本・監督:木俣堯喬/主演:中川みず穂)と二本撮りしたものと踏んでまづさうゐない、「香港絶倫夫人」(同/脚本:木俣堯喬/主演:川上雅代)ならば何気にでなく普通に観るなり見たい。
 話の中身は自身も一肌脱いで会員制のマントルならぬマンションソープ―劇中用語ママ―を営む恵子が、樹専務を籠絡する切札にハメ撮り写真を撮影した美佐子を脅迫する。何の捻りも新味もないといふ意味で、商業ポルノグラフィー的には当り障りないもの。ところが「CREATE・ジュリー」だか「タイエット・ジュリー」だか「CREATE・ケイコ」が裏の素顔はマンションソープである旨を、終盤恵子が自ら美佐子に宣言するまで、何故か珠瑠美は断固として痒いところに手を届かせぬ強い意志を感じさせかねないほどに、頑なに明示を拒む。酔ひ潰された美佐子を犯す役に呼ばれた良行が、辛うじて一番外側の外堀を埋める程度。本城未織と樹かずの逢瀬は、単なる愛人とパパさんの情事で普通に成立する。挙句勇作が美佐子を強制一皮剥けさせるために恵子との再会を仕組んだ、といつたありがちな姦計が明らかとなる、でさへなく。恵子は―恵子推定で―美佐子の樹専務の会社への密告で失墜、一方美佐子は勝手に帰国した勇作と、締めの濡れ場をキメて駆け抜けるといふか、要はヤリ逃げるラストは、一言で片付けると面白くも何ともない。本当に女の裸しか見所のない、純粋裸映画。そのほかに印象に残るのは、全篇を通してシークエンスに合はせる気も展開の推移に沿はせる気もさらッさら窺へない、闇雲な選曲くらゐしか捉へ処も見当たらない。量産型裸映画で面白い映画なんぞ寧ろ撮る必要がない、珠瑠美―かプロ鷹―鉄の信念にでも我々は感服するべきなのであらうか。


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 「レイプ秘書 監禁飼育」(1993『白昼レイプ 監禁秘書室』の1998年旧作改題版/製作:プロダクション鷹/提供:Xces Film/脚本・監督:珠瑠美/撮影:伊東英男/照明:石部肇/音楽:新映像音楽/効果:協立音響/編集:井上和夫/助監督:近藤英総/現像:東映化学/録音:ニューメグロスタジオ/出演:幸あすか・佐伯麗子・朝比奈樹里・牧村耕二・木下雅之・羽田勝博)。出演者中牧村耕二が、ポスターには牧村耕治。
 走るスティックを適宜ギターが追ふ、矢鱈とカッコいい劇伴鳴る中、カレンダー的には三連休中の理研南販秘書室に悲鳴が木霊する。営業所所長の杉田(牧村)が、秘書の西條るり子(幸)をレイプする。派手に飛ぶカットに目を疑つてみたりもしつつ、あれを見ろと杉田がるり子に促すモニターに映し出されたのは、パケ写的な幸あすかのヌード写真に続いて、今し方の映像が流れる本篇ママで“西條るり子犯しの淫らな痴態全記録”。1993年当時に、杉田は会社にどんなシステムを構築してやがつたんだよ!といふツッコミ処も兎も角、木に接いだ竹を微塵も厭はぬ唐突か闇雲なモチーフの放り込みやうは、如何にもタマルミックではある。要は、単なる旦那譲りに過ぎぬのかも知れないが。杉田はるり子を三日間犯し倒す腹で、幸あすかの右肩に実際に彫られてゐる蝶の刺青は、愛人関係にある御曹司の常務に入れられたとかいふ設定。杉田が半身のるり子をグイと正対させるのに合はせて、花冠が何かよく判らん書類の上に飛んでタイトル・イン。闇雲なものは下手にしつかり見せる癖に、枝葉ともいへ状況の描写に必要な小道具をどうしてちやんと映さないのか。
 配役残り、事の中途で杉田が移行した手マンの、更に中途で適当に画を繋いで渋谷駅。佐伯麗子と、革のジャケットがカッチョいい羽田勝博が落ち合ふ。ハチ公の足の間から遠くの全然何でもない雑踏にピントを送るカットは、全体何がしたかつたのか。タマルミの巨大な不条理に、撮影部も呑み込まれてしまつたのであらうか。朝比奈樹里は杉田の細君・アイコ?で、木下雅之が、件の御曹司常務。都合二度濡れ場を展開しながら、何処の誰だか欠片たりとて説明しないまゝ尺は勝手に進む佐伯麗子と羽勝が、営業所の事務員多分河合と、その彼氏で元社員の青木と判明するのは、差しかゝるどころか終盤に首まで浸かつた五十分前。仮に、純粋に全篇マクガフィンのみで映画を撮り上げたならば、こんな感じになるのかな。
 日々の糧を食む為の雑業の多忙ぶりに癇癪を起こし、オッ始めてみた珠瑠美殲滅戦も、DMMに残す弾はあと三本となつた1993年第一作。小屋に未見のタマキューが飛び込んで来る奇跡が、今後再び起こることがあるものやらないものやら、やらやら。
 るり子を監禁飼育―何と瞬着で手の平をソファーに固定!―する一方、「一応女房の方にも乗つてやるか」とド外道の杉田が一時帰宅。アイコもアイコで夫婦交換に味を占めるやうな女で、一筋縄では行かない夫婦生活を繰り広げるのを、羽勝と佐伯麗子の第二戦挿んで何と二往復する中盤、映画の底は見事なまでに完全に抜ける。何がしたいのかとかどうする気なんだといつた、疑問を持つた方が負け。珠瑠美の絶対不敗ぶりに改めて圧倒されながらも、超絶の三本柱に支へられ、裸映画としては文句なく安定する。といふか、どうせ物語らしい物語も存在しないのだから、タマキューこそ三十分に短縮してリリースするに最適な素材にも思へる、何時の時代の話してるんだよ。如何にザックザク切つたとて、恐らくでさへなく、出来栄えが対して変りはしまい。プリミティブな意味で予測不能な展開は、理不尽な終盤に突入。のうのうとバレてのけるが、拘束を“劇薬角化皮質溶液ケラチナミン”で強制解除したるり子を、よもやまさか自宅に招いた杉田曰く、ビデオを返して欲しくば、巴戦で嫁を満足させろ。どうすれば斯様な途方もない方便が成立し得るのか、何か人智を超えた大いなる存在に、到底辿り着き難い深遠な謎を投げかけられでもしてゐるかのやうな気がして来た。この亭主にして、この女房あり。“世界一の動物ショー”と称して金魚をるり子の蛤に捻じ込むアイコも、「これは熱帯魚ぢやないのよ、さぞ中で苦しがつて暴れるでせうよ」、熱帯魚ぢやなくても暴れる。便意を訴へたゆゑ仕方なく手洗ひに入れたるり子が、なッかなか出て来ないのにしびれを切らせ、杉田夫婦は不自然か無防備極まりなくも劇中三度目の夫婦生活。この二人、何だかんだ普通にお盛んではある。それはさて措き、その隙に手洗ひから脱け出したるり子は、杉田のビデオで杉田夫婦の営みを撮影しての、ヒットならぬショット・アンド・アウェイ。待てよと不意を突かれた牧村耕二のストップモーションに叩き込まれるENDには、この際完敗を認めるほかはない。完璧、何かもう完璧、タマキューはこれで完璧。正確にいふと、タマキューはこれでカ・ン・ペ・キ、錯乱してんのか。

 一点―だけ―もしかすると正方向に興味深いのが、瞬着で手の平を固定したるり子を、杉田は剃毛、したかと思へば。剃つたばかりの、本当に剃つた即座の土手に付け髭を貼り悦に入る屈折した倒錯性は、性転換した末のパートナーが、男かと思へばビアンの女だなどといふ、アニキとアネキの間を取つてアヌキ・ウォシャウスキーにも通ずるものがあると思ふ。正しくな、グルッと一周した感。


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 「揺れる巨乳103cm」(1989/製作:プロダクション鷹/配給:新東宝映画/監督:珠瑠美/脚本:木俣堯喬/撮影:伊東英男/照明:沖茂/音楽:CMG/美術:衣恭介/編集:竹村峻司/録音:協立音響/録音:ニューメグロ・スタジオ/現像:東映化学工業・株式会社/出演:東美由紀・渡瀬奈々・刀根新太郎・嘉見力・須藤伸・あおい恵)。美術の衣恭介は、木俣堯喬の変名。協立音響も録音になつてゐるのは、効果の誤りか。とか何とか、それどころではなく。
 カッチョいいギターがギュインギュイン唸る中、自慰る尻が漫然と正面を向きオッパイをデローンと開陳する。暗転明けた先は、上下に“abnormal sex”の五連打。流石だ、今ならストロングゼロでもがぶ飲みしながらでないと、こんな映画撮れない気がする。東美由紀つきのVHS題がブツッとタイトル・インして、最初の、といふか最大の衝撃は本篇クレジット、渡瀬奈々とかあおい恵なんて出て来ないぞ。何で斯くも自由なのか、大泉逸郎みたいな気分だ。
 「トラック一杯といひたいのだが」、「その片隅に僅かな身の回り品だけを載せて」、「田舎の高校を出るとエイコ十八歳」、声は渋いプロ鷹ナレーション起動。両親の束縛から逃れるためだけに短大に進学した、要は遊ぶ気全開のエイコ(東)が同級生でルームメイトの、この人は保母志望で一応真面目に勉学するマサコ(上原絵美/石川恵美の旧名義)に生活態度を窘められる。不貞たマサコが街をブラつく頃、マサコもマサコで隣に住む大学生(刀根)をベランダから家に上げての一戦。帰宅したエイコに、情事の痕跡を見つけられる。母親が倒れ、マサコは一時帰郷。マサコが彼氏らしき先に電話をかける度に隣で受話音が鳴るのに気づいたエイコは、マサコを装ひ誘き寄せた刀根新を寝取る。
 配役残り、上原絵美同様本クレに等閑視される井上真愉見は、百合を咲かせる目的でエイコを買ふ未亡人。かに見せかけて、須藤伸が百合畑に乱入し二人でエイコを手篭めにする井上真愉見配偶者、実にタマルミックなシークエンスではある。嘉見力は、誰かしら弾いた直後にエイコとミーツする鉄砲玉・ケン。
 珠瑠美1989年第一作、案外少ない全三作。タマルミのフリーダム演出に劣るとも勝らない致命傷は、オバパーでどすこいフェイスの主演女優。角度と顔さへ撮らなければオッパイは確かに映えなくもないものの、乳が太ければ腹回りも多少太からうと構ふまいとするが如き風潮には、当サイトは断固として与さない。一方、主演女優の面と腹肉を見て流石の珠瑠美も血相を変へ幾分かはヤル気を出したのか、前半のマサコ篇は、別にも特にも全く面白くはないにせよ、第一次井上真愉見パートを挿んでエイコが刀根新と乳繰り合ふところにマサコが帰つて来る修羅場で、霞よりも稀薄な物語とはいへ大袈裟な破綻もなくひとまづ収束する。明けて銃声とともに嘉見力が飛び込んで来た時には、いよいよ以てこの映画は終りだと頭を抱へかけつつ、まさかよもやの木に接いだ竹を魔展開で裏返す力技で井上真愉見と嘉見力を強制連結。だから欠片たりとて面白くはないにしても、とりあへずなラストに到達してみせるのは、珠瑠美にしては画期的。

 ところで、濡れ場でこれといつてアブなプレイを仕出かしてはゐない件?バッカモーン!だからタマルミが風呂敷を畳んでゐるだけ有難いと思ふべきだ。


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 「全裸妻連続暴行」(昭和57『新妻残酷に犯す』の1994年旧作改題版/製作:プロダクション鷹/配給:新東宝映画/監督:珠瑠美/脚本・プロデューサー:木俣堯喬/撮影:倉本和人/照明:石部肇/音楽:新映像音楽/効果:秋山実/編集:菊地純一/助監督:佐藤曉彦/録音:東音スタジオ/現像:東映化学㈱/出演:美野真琴・佐田川彩・田口あゆみ)。恐らくはVHS仕様か、男優部を端折るクレジットに悶絶する。
 ど頭はキネコのブルーバックで、“MIYOWA・PICTURE プロダクション鷹 作品”なるクレジット。みよわ?漢字で書くとどうなるのか、そもそも何語なのか。とまれ本篇開巻、予想外の見事なシネスコに吃驚する。
 共働きのOL・アイカワアヤコ(美野)が帰宅、ズージャ―を流すラジオをつけると、不意に部屋の灯りが落ちる。何時の間にか家内に侵入してゐた、黒マスクの暴漢登場。ダイナミックに逃げ惑ふも、アヤコは絞殺されかねない勢ひで首を絞められ失禁する。恐らくラジオを倒した弾みで、これ見よがしに印象的に抜かれる割に、結局特段重要な小道具でもないオルゴールが鳴り始める。暴漢が失神したアヤコを無理から床(とこ)に運んで、床(ゆか)に転がるハンドバッグにタイトル・イン。タイトルが入つてから、クレジットが起動するまでに一分超、地味に時機を失したタイミングが居心地悪い。
 配役残り江上真吾(現:江上真悟)が、革ジャン男との見るから怪しげなコンタクトを経て帰宅する、アヤコの夫・サトル。野上正義は、エロ専門のカメラマン、ツダスタジオで撮影してゐるゆゑ津田かと思へばワタナベ。サトルがカメアシで、田口あゆみはヌードモデル。ワタナベに話を戻すと、一息つくのにタバコか缶コーヒー感覚で、シャブを打つダイナマイトな御仁。アヤコは気づかぬ間に、サトルも打つてゐた。佐田川彩は、サトルが出入りする賭場の女・サヨコ。華があり、脱いでみるといいオッパイの逸材。他の出演作も見てみたいけれど、流石にハードルが高い。その他アヤコが勤める会社のオフィスに二人、サトルが借金の形にアヤコを売る悪い仲間がもう二人、アイカワ家に踏み込む刑事が更に二人。絡みもこなす悪い仲間二人―不細工な外波山文明とナオヒーロー似―は本職の俳優部に見えるが、残り四名は内トラ臭く映る。兎にも角にも、しかもこの古さでクレジットをスッ飛ばされては手も足も出ない。
 DMMで見られる中で最も古い、珠瑠美昭和57年最終第十作。ちなみに月額でもバラ売りでも、ラインナップは変らない。jmdbを鵜呑みにすると、前年監督デビューした珠瑠美にとつて、通算では第十一作に当たる。前十本、ミリオン作は流石に難しからうが、買取系ロマポだと何かの間違ひかものの弾みで、まさかがあるかも、見たいのか
 映画の中身はといふとヤク中かつ博打打ちとかいふ絵に描いたやうなクズ亭主の因果で、新妻が残酷に犯されるはブルーフィルムを撮られるはと色々酷い目に遭ふ。救ひがなければ工夫なり新味もない全く類型的な物語未満の展開ながら、後年の―女の裸以外見るべきところが本当にない―純粋裸映画を知る目からは、あの珠瑠美にしては物語といふほどの物語でもないものの、少なくともひとまづ一篇を通する形で成立してゐることと、驚く勿れ選曲その他の要素も含め何も破綻してゐない点に度肝を抜かれた。最低限の映画に何を驚愕してをるのかといふ話でしかない訳だが、あれか?よくいふ捨て犬に優しくする不良か。この時代的には単なる古き良きスタンダードであつたのか、あるいは撮影部の独断専行かも知れないにせよ、兎も角左右に広い画面の中、明暗も効かせての凝つた構図を撃ち抜く意欲的な画作りも際立つ。お話的にはなんちやないとはいへ、1994年当時今作に小屋で触れたならば、結構チョロッと心酔してゐた可能性も想像に難くない。逆にそこで珠瑠美といふ名前に喰ひついて、追ひ駆け始めた途端激しく絶望する悲劇は更に容易に予想し得る。遅くとも昭和61年には、我々がよく知る木端微塵、ないしは支離滅裂が完成してゐる。それは完成したのか、それとも壊れたのか。逆に従来知る珠瑠美旧作略してタマキューとの共通項としては、始終を結ぶのに官憲に頼る作劇が、全然マシな形ともいへこの時点に於いて既に見られる。


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 「新任女教師 しごいてあげる」(1990『課外授業 いかせて上げる』の、これはVHS題?/企画・制作:プロダクション鷹/配給:新東宝映画/監督:珠瑠美/脚本:目黒和男/撮影:伊東英男/照明:沖茂/音楽:MGB/美術:衣恭介/効果:協立音響/編集:竹村峻司/助監督:近藤英総/現像:東映化学工業株式会社/録音:ニューメグロスタジオ/出演:牧村耕治・嘉見力・朝田淳史・山口和幸・一の瀬まみ・仲山みゆき・森みなみ・渡辺奈智子)。男優部が先行する謎ビリングは、本篇ママ。jmdbはおろか新東宝公式をも元題を「課外授業 いかせて上げる」としてゐるが、“いかせて上げる”といふのは流石におかしくはないか。美術の衣恭介は、木俣堯喬の変名。
 南ヶ丘高等学校校舎夜景、教師の芦田郁子(一の瀬)がプロレス風の覆面で顔を隠した二人組に、地下の体育用具室に放り込まれてタイトル・イン。各々性器の模型も駆使しての二人がかりの輪姦、水鳥川彩と一の樹愛を足して二で割る数式を完成させる、一の瀬まみの時代に埋もれた逸材ぶりにこの期に及んで垂涎する。レイプされた旨の夫への告白を決意した郁子が帰宅すると、夫は家庭教師先に出てゐた。夫の一郎(牧村)が教職をドロップアウトしたゆゑ、仕方なく専業主婦志望の郁子が定時制高の教師に復職したものだつた。
 配役残り朝田淳史は、出し抜けに勃発する性犯罪を仕出かした生徒(当人は出て来ない)について、郁子に話を聞く刑事。渡辺奈智子が絞殺されて失禁する憐れな被害者なのだが、どうも木に竹を接いで挿入される登場場面はバンク臭い気がする。仲山みゆきは一郎の浮気相手、仲山みゆきの出演作になかなか辿り着けないでゐて、九十年代のアテレコ女王がこの人であるのを改めて確認したのが、今作に触れての殆ど唯一の収穫。特定不能の嘉見力と山口和幸は、体育用具室の件で郁子に接触する生徒の井上と、井上から二万取られた上で、ラスト再び郁子を輪姦する生徒Aか。ビリング推定だと、上位の嘉見力が井上。森みなみは、実は退職理由が生徒に対する暴行であつた一郎に、犯された生徒。
 日々の糧を食むための雑業がクッソ忙しい、苛立ち紛れに見てみた珠瑠美1990年第一作、自棄なのか?と、したところが。負け戦を予想以上だか以下に爆砕してみせるのが、大御大関良平に劣るとも勝らない珠瑠美といふ名の破壊王。一郎と仲山みゆきの関係性が不鮮明で混濁しかけた物語といふほどでは全くないへべれけな始終を、藪蛇に勿体ぶつた謎説明で本当に意味が判らない姦計を挙句御丁寧にも十重二十重に張り巡らし、完ッ全に止めを刺す。挙句郁子が正体不明のサスペンスの中右往左往する尺で、折角の、一縷の寄す処たるべき一の瀬まみの裸すら疎かになる始末。ただこの点に関しては、お話がどれだけへべれけでさへなくとも、裸映画としては最低限仕上げて来る珠瑠美にしては、下手な色気を出した結果なのか珍しいといつていへなくもない。特筆したところで、始末に負へないものが一欠片たりとて救はれる訳では無論ない。ラストの再輪姦で幾分持ち直しつつ、締めはタマルミ貫禄の官憲到着エンド。始終の決着の、投げやりな投げ放しやうがこの際清々しい、矢張り自棄なのか?これで、一の瀬まみの美巨乳を満足に拝ませてゐればまだしも立つ瀬があつたであらうに、支離滅裂な展開以外一切見所のない理不尽か不条理な徒労感のみを炸裂させる一作。そんなものが、見所になるものか。何より、最もどうかしてゐる、あるいはどうかと思ふのは。斯様なピンク映画として既に木端微塵な代物を、パケだけそれらしくあつらへるとピンクよりもより直截に煽情的であることが求められるであらう、アダルトビデオで御座いと堂々と販売してのけた新東宝の、羊頭を懸けて哺乳類ならばまだしも烏―臭みが如何ともし難く食へないらしい―を売るが如く、不誠実極まりない大概な商売に畏れ入る。


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 「好色家族 狐と狸」(昭和47/製作:日活株式会社/監督:田中登/脚本:宮下教雄/企画:三浦朗/撮影:安藤庄平/美術:山本陽一/録音:高橋三郎/照明:松下文雄/編集:鈴木晄/音楽:奥沢散策/助監督:海野義幸/色彩計測:田村輝行/現像:東洋現像所/製作進行:斉藤英宣/出演:田中真理・原英美・小森道子・堺美紀子・しまさより・高山千草・山口明美・木島一郎・大月幹太・久松洪介・長弘・甲斐康二・織田俊彦・影山英俊・近江大介・庄司三郎・玉井謙介/刺青:河野光揚)。出演者中、しまさよりと長弘に織田俊彦、近江大介以降は本篇クレジットのみ。クレジットはスッ飛ばす配給に関しては、事実上“提供:Xces Film”。
 開巻は無駄に判り辛いが黒い帽子からカメラがティルト・ダウンした先は、脂汗を流す堺美紀子。医師(織田)の胃潰瘍とする診断をガンだと頑として真に受けない宝田ユメ(堺)は、医者が口を割らぬのならと看護婦(不明)を詰問。ユメのどうかした勢ひとちらつかせるダイヤの指輪の誘惑に負け、看護婦はあと三日の命と白状する。続けて現れたユメの長女・クラ子(高山)に、ここが放置される最大のツッコミ処なのだが織田医師はあと三日の旨をサクッと告知。クラ子がすは遺産と安心屋不動産を営む夫・古田(甲斐)と出撃しようとしてゐるところに、旦那が草鞋を脱ぐ組の若い衆・ヤスオ(庄司)を連れ買物中のユメ次女・カネ子(小森)が通りがかる。古田が口を滑らし事態を知つたカネ子が、高飛び中につき不在の夫の弟分・高森(木島)とすはすはしてゐるのを見た三女のカネ子(原)も、ヤスオを締め上げ争奪戦に参戦。一方、風呂場に卓袱台を浮かべ情夫の畑山(大月)と花札中の、カネ子とは二卵性双生児の四女・ギン子(山口)もギン子で、カネ子経由のパラノーマルなチャンネルで騒動を察知。ギン子がかうしちやゐられないと卓袱台を引つ繰り返すと、宝田邸を目指し急ぐ安心屋不動産社用車にタイトル・イン。
 配役残り田中真理は、五人姉妹のうち唯一ユメと暮らす五女・タマ子。影山英俊が、ガッパヘッドだ何だとキッチュな小物で煩はしいヴィレバンみたいな部屋に、タマ子が堂々と連れ込む同級生の新川君、多分二人は大学生か。久松洪介は、実はキンギン姉妹の父親でもある、宝田邸使用人・山野貫太郎。ユメはいはゆる愛人業で4/5人父親の違ふ五姉妹を産み、慰謝料を元手に財を成したとかいふ寸法。玉井謙介は、道路予定地の買収に宝田邸を日参する東京高速公団職員。そして小見山玉樹が、玉井謙介の連れとしてクレジットレスで飛び込んで来る。飛び込んで来る瞬間の、コミタマ!感が堪らない。長弘は、九州からナシをつけに舞ひ戻つて来た、カネ子の夫にして高森兄貴分。長弘が連れて来るwith赤子の九州妻と冒頭織田医院の看護婦のどちらが、しまさよりなのか辿り着けないのが今の当サイトの限界。近江大介は、“あと三日”の三日目金曜日の朝、宝田邸を訪ねる警察官。
 田中登昭和47年デビュー年、全五作中第四作。母親の今際の間際?に、欲の皮を突つ張らせ急遽駆けつけた姉達とその同伴者と、ヒロインが対立する騒々しいホームドラマ。濡れ場の種で適宜目移りしつつああだかうだワーワー姦しいばかりの始終は、かといつて魅力的な展開にも欠き、特段も何も面白くも何ともない。ユメと貫太郎絡みのエモーションも匂はすだけさんざ匂はせておいて挙句綺麗に不発で、何時壊れたのかそして壊れたことの意味も見つけ難い、キン子の瓶底メガネの件なんぞそんなところに落ちてゐる帽子共々まるで意味不明。コミタマなり庄司三郎、日活が誇る脇役部―この辺りには流石に、ピンクが辛うじて対抗し得るのは新田栄が自ら誇る超絶ステルス性能くらゐか―のイイ感じの仕事ぶりのほかこれといつた見所も見当たらず、ところで、あるいはそもそも。田中登に話を戻すと、この御仁、満足に量産してたのは二年目までで、改めて調べてみると通算でも僅か二十五本ぽつちしか撮つてゐないのね。シネフィル~ゥ♪受けがいいのか何だか知らないけれど、量産型娯楽映画作家としては全然ヒヨッ子どころかピヨッ子ではないか。


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 「不倫狂ひの人妻 喰ひまくり」(1993『若奥様 不倫漏らす』の2000年旧作改題版/製作:プロダクション鷹/提供:Xces Film/脚本・監督:珠瑠美/撮影:伊東英男/照明:石部肇/美術:衣恭介/音楽:MGC/効果:協立音響/編集:井上和夫/助監督:小林豊/現像:東映化学/録音:ニューメグロスタジオ/出演:中上絵奈・松下英美・摩子・羽田勝博・夢野和樹・神坂広志)。美術の衣恭介は、木俣堯喬の変名。
 中上絵奈と夢野和樹の濡れ場で開巻、キャスト・スタッフの順でクレジットが先に走り、垂直に垂れる白濁液にタイトル・イン。呑気に庭でゴルフクラブを振るカシワギケンサク(夢野)が、お手伝ひの前田みよ子(松下)に軽く手を出す。二匹の猫を可愛がる妻のマミコ(中上)に、同族経営の会社で働くケンサクは朝まで仕事をしてゐただとかで、その日は出社しない旨を言明、平日なのかよ。マミコもマミコで夫の気紛れを気軽に受け、家事は自分がすることにしてみよ子に終日の暇を出す。
 配役残り羽田勝博が役職不詳のケンサクの兄で専務、摩子が秘書といふ名の愛人。といふか、愛人を秘書に据ゑた要は大蔵貢方式。この二人、前妻と死別した半年後に課長の娘であるマミコを押しつけたケンサクから、ハネカツが摩子を強奪した格好。元々は水商売の女であつた摩子にハネカツは何のかんのと悪態をつき続けつつ、昼夜を問はず何だかんだ抱く文字通り腐れた腐れ縁。神坂広志は、街に出たみよ子が落ち合ふ彼氏・三郎。
 この期に及んで何のものの弾みか番組に紛れ込んで来た、珠瑠美1993年第三作。DMMでも見られない珠瑠美旧作―新作があり得る訳でもなからうが―に、タマキュー!と絶叫しながら小屋の敷居を飛び跨いだものだが、よくよく考へてみるまでもなく、そもそも動画配信でわざわざ珠瑠美を見るところからどうかしてゐる。幾ら大原則として映画は観るなり見ないでは何も始まらないとはいへ、さういふ小賢しくさへない美徳の衣を纏つた貧乏性如き、易々と限りなく十割に近い打率で粉砕して後には草一本残さないのが珠瑠美。どうしてこの人は、登場人物の相関関係程度が関の山で満足な物語の“も”の字も設けずに、銘々が好き勝手に入り乱れ挿しつ挿されつするだけで映画が撮れるのか、挿しつ挿されつするだけの映画を量産もとい粗製乱造出来るのか。珠瑠美旧作を戯れにタマキューと略してみたものの、何だか、珠瑠美に腰骨を砕かれたピンクスの―浜岡賢次風―断末魔といつた方が、より適当なやうな気がして来た。劇映画といふにはドラマが限りなく透明に近い、ある意味最も純度の高い裸映画。首から下は申し分ない反面表情の硬い主演女優と、この娘は生気が抜けてゐるのではと心配になりかねないくらゐぼんやりした二番手を制し、超絶美人の摩子が扇の要に座る布陣はそれなり以上に盤石。おまけにエクセスライクも火に油を注ぐタマキューのビリングに、意味なんぞ端から殆どあるものか。正体不明の夢野和樹も男優部としての華はまるでないが絡みもまゝならぬといふほどではなく、何処から観ても何処でやめても全ッ然困りはしない裸がつらつらだかうつらうつら連ねられるに終始する、本当に終始するのみの時間は、それでもその限り、あくまでその限りに於いては安定してゐなくもない。

 ラストがグルッと一周してケッサク、いや、流石の与太吹きも、タマキューを傑作と賞する蛮勇は持ち合はせん。昼間エアロビと偽り三郎と寝て来たマミコに、疲れてゐると夫婦生活を断られたケンサクは、コニャックと称して寝室を後にするやみよ子を半分手篭め気味に抱く。のが尺の満了に伴ふ自動的な締めの一戦かと思ひきや、寝室に戻つたケンサクは平然とマミコ相手に二連戦。化け物か、あるいは病気か。正常位のストップモーションから、一旦切り替つた画面中央に鎮座した“END”が、グワーンッと凄い勢ひでズームするオーラスは、起承転結が転結どころか起から成立してゐようがゐまいが、ここで終りといつたら終りだ!とでもいはんばかりの、断固たる意志が感じられて変に清々しい。


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 「未来H日記 いつぱいしようよ」(2001/製作・配給:国映株式会社、カレス・コミュニケーションズ、新東宝映画株式会社、O・H・C/監督:田尻裕司/脚本:増田貴彦・田尻裕司/企画:朝倉大介/プロデューサー:森田一人・松家雄二・福俵満/撮影:飯岡聖英/助監督:吉田修・松本唯史・伊藤一平/撮影助手:田宮健彦・山本宙/編集:酒井正次/録音:シネ・キャビン/現像:東映化学/タイミング:安斎公一/スチール:佐藤初太郎/応援:榎本敏郎/協力:《有》ライトブレーン、《株》日本映樹、《有》バック・アップ、志賀葉一、橋口卓明、細谷隆広、熊谷睦子、小峰千佳、小泉剛、小林康宏/音楽:面影ラッキーホテル 主題歌:『夏のダイアリー』 作詞:ACKY・作曲:ACKY・編曲:SONeY/出演:川瀬陽太・織原稜・川屋せっちん・小野弘美・佐藤幹雄・中浦安紅子・美輪めぐみ・羅門中・高梨ゆきえ)。企画の朝倉大介を先頭にまづはスタッフ、協力・O.L.H.を経て田尻裕司まで来たその後に、改めて俳優部が来るクレジット順に意表を突かれる。
 “1995年8月30日(水)”、洋菓子を手に商店街を歩く女の後姿。顔馴染のカレー屋の大将(羅門中=今岡真治)に声をかけられた鈴木悦子(小野)は、妹・智子の誕生日である旨答へる。いはゆるバックシャンで、口跡も素頓狂寄り。ところでその頃、十六になつた画期的にセーラー服が似合はない智子(高梨)の部屋には、ワンピースの誕生日プレゼントを携へた悦子の彼氏・佐藤健二(川瀬)が。悦子が前を通り過ぎる「恋する惑星」のポスターをわざわざ抜いた上で、智子と健二は対面座位に突入。その場に現れた悦子は洋菓子を投げつけ踵を返し、後を追ふ妹と彼氏の眼前、ベタなSE交通事故。ベチャッと健二に血糊を飛ばしてタイトル・イン、一濡れ場も一応こなし、ここまでアバンはそれなりに順調ではあつた。
 “5年後 2000年8月12日(土)”、五年前はリーマンだつた筈なのに、現在はドロップアウトしてプーの健二と、同居人でゲイの美容師の裕太(川屋)が、ベチャベチャ商店街を歩く。ゲイといふと美容師の紋切型を、昨今久しく見ない気がする。一方、本家未来日記の映画版上映館―八月十二日時点では、未だ封切られてゐなかつたみたいだが―前にて、待ち惚けを喰らはされる健二の彼女・美加(織原)の脇を劇場に向かふ、エッチな未来が書いてあり、その通りにしないと恐ろしいことが起こる。不幸の手紙的な「未来の日記」の都市伝説を投げる中浦安紅子と美輪めぐみ(最終的に、健二に二発目の血糊を飛ばすショートカットが中浦安紅子)と、映画を観て来た智子に、号泣してゐる智子幼馴染の彼氏・さとる(佐藤)が擦れ違ふ。続く美加と裕太が健二を取り合ふ悶着は蛇の足臭いが、総計一分半回すカットも積極的に悪くない。ともあれ水不足の夏の、“8月14日(月)”。健二が仕事に出る裕太を送り出すと、食事中の机上には何時の間にか、悦子の墓参りに行つた健二が、思ひがけない人と出会ふとする「未来の日記」が。その他辿り着けた配役、相ッ変らず健二と美加と裕太で無駄にガチャガチャする美容室に、「未来の日記」を健二宛の宅配便といふ形で届けに来る配達員は小泉剛。
 山崎浩治とのコンビは解消したのか、渡邊元嗣が2016年第三作・2017年第一作と二作続けて脚本家を増田貴彦と組んでゐるのに何気にでなくハラハラしつつ、DMMピンク映画chの片隅に潜り込んでゐるのを探しだした田尻裕司2001年第一作にして、前述したナベシネマ2016年第三作が十五年ぶりの電撃復帰作となる増田貴彦―アニメ・特撮畑を主戦場にしてゐる人らしい―のピンク映画初陣。個人的には大昔に故福岡オークラで観て以来、前後して駅前ロマンでも観てゐたかも知れないが、今なほ長く再見の機会には恵まれずにゐた。軽く話を戻して、「未来H日記」がDMMピンク映画chの“片隅に潜り込んでゐるのを探しだした”といふのは、直截なところタグづけがへべれけで、何処に何が紛れ込んでゐるのか大概手探りであつたりもする。辿り着く過程もそれはそれで楽しいので、ちやんとしろよとは別にいはん。
 閑話休題、増田貴彦は遅くとも90年代中盤には既にプロとして活動してゐるゆゑ、あとはといふか要はといふか、どれだけ田尻裕司が余計な手を入れて呉れたのかが鍵の責任回避なり弁解の余地は留保するにせよ、ナベシネマの今後が甚だ不安になつても来る出来。人の未来と文字通りの命運とを握るパラノーマルな飛び道具に導かれ、依然近所に暮らしてゐると思しき割には五年ぶりに再会した恋人を喪つた男と、姉を喪つた女。頑なに心を閉ざす智子に対し、美加や裕太との絡みも踏まへるに、全方位的に自堕落極まりない健二の造形が如何せん呑み込み辛い。田尻裕司の一般映画志向からすればそもそも論外である根本的な疑問点は強ひてさて措き、ピンク映画的には無邪気の範疇に押し込めて押し込めなくもない、ブラの中に蝉が入る小川欽也も真つ青なへべれけシークエンスよりも寧ろ、作劇上も素面の男女交際としても都合のいいことこの上ない、健二と美加の別れの一幕の方が一層度し難い。勿体つけて智子を絶句させながら、“8月23日”の「未来の日記」の内容を挙句その日に限つて見せない意味が判らないし、一旦出勤した智子が捌けたところで電話が鳴るや、傍らに置かれてゐたハードカバーが雑な繋ぎで「未来の日記」に変るカットも十二分に酷い、カメラワークでもつと幾らでもスマートに見せられたぢやろ。死の代償を懼れ、「未来の日記」が司る未来に従はうとする智子の姿は、相手役が自堕落に手足を生やしたが如き人物につき葛藤らしい葛藤が生じずドラマをゼロから拒み、にも関らず、出し抜けに手の平を返して土砂降る雨の中青姦カマしたかと思へば、元々クソな米米CLUBの劣化レプリカの主題歌―O.L.H.て、こんなバンドなの?―が流れ始めるラストは、ある意味綺麗にものの見事に万事休す。こんなに詰まらなかつたかな、とグルッと一周した清々しい感興を覚えかねないほどに詰まらない。ドリフ桶よろしく頭上から降つて来た、抜けた映画の底で脳天を痛打するかのやうな、小林悟でも観てか見てゐた方がまだマシ。“でも”とは何だ、“まだ”とは何事か。とまれここはひとつ、今後に際しては俺達のナベを信用するほかない、それか今作が何かの間違ひか。


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 「痴漢女教師」(昭和56/製作:獅子プロダクション/提供:東映セントラルフィルム株式会社/監督:滝田洋二郎/脚本:高木功・滝田洋二郎/企画・製作:沢本大介/撮影:志賀葉一/編集:酒井正次/照明:守田芳彦/録音:東音スタジオ/効果:秋山実/助監督:西田洋介/監督助手:渡辺元嗣・池田文彰/撮影助手:宮本良博/照明助手:森久保雪/現像:東映化学/音楽:谷山三朗・宮本淳・坂崎孝之介《アルフィー》/出演:竹村祐佳・蘭童セル・今泉厚・青野梨魔・竹岡由美・港雄一・楠正通・堺勝朗・北村淳・嶋田隆宏・仁科ひろし・野上正義・久保新二/友情出演:沢木みみ・香川留美・佐川二郎・後藤友平)。出演者中、仁科ひろしと後藤友平は本篇クレジットのみ。実際のビリングは、仁科ひろしとガミさんの間にカメオ勢を挿む。照明助手・森久保雪の“一”が脱けてゐるのは、本篇クレジットまゝ。提供の東映セントラルフィルムに関しては、実際にはエクセス。
 蝉の声と校舎遠景、並木道を歩く竹村祐佳の足元に、サッカーボールが転がつて来る。ネーチャンと声をかけられ腹を立てた竹村祐佳が、威勢よく蹴り返さうとして、見事に空振りするショットにタイトル・イン。校長に用のある高校教師の竹村友子(竹村)が夏休みの校舎に顔を出してみると、当のチョビ髭校長(野上)以下一同は、何と視聴覚室にて―しかも―洋ピンに垂涎してゐた。生を通り越し糞真面目な友子がその場に闖入しどさくさする中、友子は生徒の非行を防がうと、夏休み中の家庭訪問の許可を校長から得る。
 配役残り、現在は青空キュート―青空球児・好児に弟子入りし青空一門―として司会業で活躍する嶋田隆宏は、ガリガリ受験勉強に励むシンイチ。青野梨魔は、ノーパンエプロンで息子のシンイチに洋菓子を持つて来たかと思ふと、そのまゝ肉奉仕するPTA副会長、早速友子の度肝を抜く。蘭童セルと今泉厚は、妊娠四ヶ月と判るや、ライトに心中を決意する高校生カップル・浜子と悟。二人して白装束に身を固め、いよいよ首を括らうかとした段に、友子が飛び込む。悟と浜子の結婚を成立させるべく、未決拘留中の悟父親を保釈するのに必要な百万円を作るため、浜子は悟の仕切りで美人局する羽目に。然程の無理も感じさせず、矢継ぎ早かつ軽快に走る超展開が堪らない。楠正通は、友子と結婚を約束した体育教師。竹岡由美は、シンイチがミーツするスケバン・お柳かお竜。堺勝朗と久保新二が、家の外で待機する悟に、友子がパトランプを点灯させ飛び込むタイミングを報せる仕掛けが洒落てゐる、美人局のカモ。三千円しか持つてゐない坊主と、往診鞄の中に札束をゴロゴロ持ち歩く医者。贅沢をいふと、同一フレーム内に勢揃ひしたガミさん×堺勝朗×久保チンが大暴れを繰り広げる、ジェット・ストリーム・アタックが観たかつた、メガホンで捌くのが相当大変さうだけど。そして港雄一が、久保チンから毟り取つた百万で娑婆に出て来た、悟の前科十五犯の―その内またひとつふたつ増える―父親・池田亀造。a.k.a.新田栄の北村淳は、友子と亀造を媒酌人に目出度く三々九度の済んだ池田家に、久保チンの手引きで乗り込む刑事、連れの若いのが多分仁科ひろし。香川留美がガミさん周りに見切れてゐたやうな気もしつつ、友情出演組は、暗いか遠いかでその人と識別可能な形では抜かれてはゐない。
 第一弾「夜のOL 舌なぶり」(昭和56/監督・脚本:宗豊/主演:朝霧友香)・第二弾「武蔵野夫人の唄 淫舞」(昭和53/監督:渡辺護/脚本:高橋伴明/主演:北乃魔子)に続くエクセス提供東映ナウポルノ第三弾は、ピンク畑で初めて紫綬褒章を受賞した滝田洋二郎のデビュー作。処女と童貞同士の、友子と体育教師の青姦。なのに友子ではなく、楠正通がチンコから出血した謎が放置されるのをさて措けば、トッ散らかつた物語が超絶手堅く纏まつてゐる以外には、寧ろ纏まり過ぎてゐて、面白みに欠くきらひもなくはない。そんな中でも、亀造が体を張り、倅と倅の嫁と友子を逃がす件。ここぞといふ場面では出し抜けなり木に接いだ竹であらうとなからうと、重量級のエモーションを見事に撃ち抜いてみせる辺りには、初陣にして既に流石の地力に感服した。

 滝田洋二郎に関して、“ピンク畑で初めて紫綬褒章を受賞した”と戯れに筆を滑らせは、したものの。何も御上や世間様に認めて貰ふばかりが、華といふ訳でもあるまい。人知れず、歴史に残る残らないどころかネガさへ現存しない膨大な作品群を、移ろひ変りやがてかぢきに消えてしまふ時代の泡(あぶく)の中にだけ落し、猥雑に戦ひ抜いて、サクッと通り過ぎて行く。さういふ、三番手濡れ場要員の如きある意味潔い姿の方に、より量産型娯楽映画作家らしさを覚えてみたりもするものである。


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 「人妻銀行員 不倫密会」(1998/製作:シネマアーク/製作協力:THE PSYCHEDELIC PLASTICRAINS/提供:Xces Film/監督:瀧島弘義/脚本:本調有香/企画:稲山悌二《エクセスフィルム》/製作:奥田幸一/撮影:村川聡/照明:多摩三郎/編集:酒井正次/音楽:斎藤慎一《smp recordings》/助監督:久方真路/監督助手:玉城悟・松岡誠/撮影助手:藤井昌之/照明助手:藤森玄一郎・堀口健/キャスティング:綿引近人/スチール:本田あきら・佐藤初太郎/ネガ編集:三上えつ子/録音:シネキャビン/効果:東京スクリーンサービス/現像:東映化学/現場応援:国沢実・横井有紀/衣装協力:小倉久乃・桧山勇・Material Voice/撮影機材:ナック/フィルム:愛光/台本印刷:ユタカスタイラス/協力:木澤雅博・秋山兼定・大工原正樹・光石冨士朗・金田敬・野口勝広・槇原めぐみ・加藤章夫・細谷隆広・大山雅義・木村富貴子・ゴジラや・丸号・Dear Friends/出演:井上知子・岸加奈子・吉行由実・川屋せっちん・森羅万象・臼井星絢・国枝量平・内藤忠司・岡本暁・石阪稔朗・田上陽介《子役》)。出演者中、内藤忠司以降は本篇クレジットのみ。
 ノイズに片足突つ込んだ虚仮威しな劇伴鳴る中、東都銀行の朝礼風景。その他女子行員と同じ制服だが課長らしい恵(吉行)から書類を受け取り、外回り隊が各々出撃する。紅一点のトモコ(井上)が、渡されたばかりの書類をクシャッと握り潰しタイトル・イン。タイトル明けは、調理中の茹で卵。トモコと、夫のタカヒロ(森羅)の朝つぱらからの夜の営み。因みにjmdb準拠で、今作が今をときめく量産型娯楽映画界の重鎮・森羅万象のピンク映画初陣。見た目が殆ど全く変らないゆゑともすると通り過ぎがちになつてしまふのかも知れないが、何気に再来年で二十の周年である。ピンクに、再来年があるのかどうかは知らないけれど。尤も、同時にさういふ物言ひがリアリティを持ち始め、果たして何十年経つのかといふ話でもある。閑話休題、共働きにしては何故か、二人は持ち家のローンの支払ひで尻に火が点くどころか、殆ど首さへ回らなくなつてゐた。とりわけトモコに至つては金融のプロであるにも関らず、一体どんな無茶なローンを組んだのか。顧客(国枝)から三百万を預かつたトモコは、客に渡す控へは三百万で切つておいて、東都に提出する受取証は二百万で偽造。なほかつ、素知らぬ顔で国枝量平に体を任せる。帰還後のトモコに、恵が言ひ寄る。トモコに横領の手口を指南したのは、恵だつた。不自然に人気のない行内にて、二人は美しい百合を咲かせる。
 配役残り川屋せっちんは、トモコ大学同期の元カレ、にしてブランクの有無はさて措かれながら、兎も角目下関係は継続だか再開してゐる田中ケン。店長・木澤雅博で御馴染のアンティークトイ店「ゴジラや」の、二号店「ゴジラや2」―現存せず―店長。岸加奈子は息子・リョータが「ゴジラや2」で万引きしたのか否か外堀は絶妙に有耶無耶のまゝに済まされつつ、ケンと逢瀬の末に、金まで支払ふハイソな人妻・アキコ。水族館男優部の臼井星絢は、泥酔して田中家に転がり込む矢張り大学同期・サトシ。世事に疎いケンに、トモコの枕を投げる、内藤忠司がトモコがM字を披露する劇中二人目の顧客。リョータが家出したと「ゴジラや2」に現れたアキコは、衝動的に尺八を吹く。田上陽介は、その模様を通りから目撃する妙にハイカラな紛争の男児、この坊やがリョータなのか否かも不明。石阪稔朗と一緒くたのビリング推定で岡本暁は、恵を連行する刑事。
 目下は長く映画を離れ、舞台撮影を主に活動する瀧島弘義のデビュー作。何処で躓いたのか“せじまひろよし”と、お名前を間違つて覚えてゐたことは内緒だ。金に困窮したトモコが渡る、蜜の匂ひ漂ふ危ない橋。妙にモテるケンを間に挟み、トモコとアキコが織り成す三角関係。硬質な画作りにも支へられ終始思はせぶりに種だけは蒔き続けておいて、結局何ひとつ満足には刈り取らずに豪快に振り逃げてみせる物語自体には、特段の魅力は感じない。但し、絶妙な決して美人ではなさが寧ろエロい主演女優の脇を固めるのは、絶対美貌を誇る岸加奈子と、妖艶な大巨乳を爆裂させる吉行由実。一度きりしかない吉行由実の絡みが、しかも頗る短いものである点に関しては不満も残らなくはないにせよ、総体的には超強力な三本柱を素直に見せ魅せる、裸映画として素晴らしく高い水準で安定してゐる。山岡隆資の最初で最終作「人妻秘書 肉体ご接待」(1995/脚本:七里圭/主演:白井麻子/a.k.a.工藤翔子)同様、新人監督が覗かせる映画的野心は―正しく―ほどほどにいなした上で、キッチリ商品として仕上げさせて来る、エクセスの強さがより際立つ一作である。


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 「抱かれ上手な女 性欲が止まらない」(1991『巨尻 ぶち抜く!』の1999年旧作改題版/製作:プロダクション鷹/提供:Xces Film/脚本・監督:珠瑠美/撮影:伊東英男/照明:隅田裕行/音楽:新映像音楽/美術:衣恭介/編集:井上編集室/現像:東映化学/録音:ニューメグロスタジオ/出演:家永翔子・愛川まや・あおい恵・清水義人・中満誠治・牧村耕治)。美術の衣恭介は、珠瑠美の夫・木俣堯喬の変名。
 ボーカルまで入りだすロックンロール起動、主演女優の裸を軽く見せて、何処ぞの波打ち際の岩場。カメラがパンした先、顔が隠れてよく見えない二人の女の、尻を二つ並べて谷を渡る中満誠治(無論現:なかみつせいじ)を抜いてタイトル・イン。クレジット明け、改めてブティックを持たされる喜代子(家永)と、パトロン・誠一(牧村)の一戦。ここまで序盤は順調に女の裸のみ、物語らしい物語は凡そ存在しない。誠一は自宅に戻つた翌朝、喜代子が朝食の準備をしておいて鏡に裸身を映す、女の裸を銀幕に載せる以外には本当に意味を欠片たりとて計りかねる件や、適当な繁華街の繋ぎカットを経て、女子大生・大田ユカ(愛川)の家に、セフレの灰田一郎(中満)が転がり込む。何だかんだ、といふか絡みを連ねるばかりにつき、要は何が何だかの末に、誠一とお目当ての物件を見た後の喜代子と、実は喜代子とは高校の同級生で、一郎と適当に街を歩いてゐたユカとが再会。後に喜代子とヤリたがる一郎を前に、ユカは腹を立てるどころかザクザク賛同、ユカからの連絡を受けた喜代子も喜代子で巨尻といふほど別に馬鹿デカくもない尻は水素原子よりも軽く、三人での巴戦の話がサクッと纏まる。
 配役残りあおい恵は、人間嫌ひのオールドミスなのに、親の遺した旅館を細々と継いでゐるとかいふ、正体不明な造形のリカ従姉・佳代。清水義人は、誠一だけでは土台飽き足らぬ喜代子の愛人・時男。誠一が一週間日本を離れるとやらで時間の出来た喜代子の思ひつきをリカが膨らませ、当然一郎も交へた三人で、佳代の旅館に泊まることになる。とかいふ寸法で今回、後半はまさかの伊豆映画へと発展する。
 珠瑠美1991年第七作は、お姉さん・神代弓子の「人妻不倫 夫にばれなければ!」(1992)に四作先駆ける、全然似てない妹・家永翔子のピンク映画初陣、因みに妹のピンク出演は最初で最後。伊豆に出張つたところでどうせ物語らしい物語が依然起動するでもなく、相変らず濡れ場濡れ場を連ね倒すばかりの、よくいへば腰の据わつた裸映画。とはいへこれはこれで、何はさて措き、といふか要は何もかもさて措いてさへともあれ女の裸だけはお腹一杯愉しませてみせる分、半端な―映画的―色気を出して下手に生煮えて呉れやがるよりは、一兆倍マシだといふジャスティス。と、自分に言ひ聞かせようかと思つてゐたら、一郎の夜這ひに女の悦びを知つた佳代が、笑顔を取り戻す予想外に正方向の爽やかなラストには驚いた。といつて一般的な劇映画の水準からすると十二分にも三分にもへべれけではあるのだが、何せ敵が珠瑠美なだけに、不意打ちがてら心が洗はれてしまつた。何だか、仔犬を可愛がる不良のやうな一作である。


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 「痴漢電車 ちんちん発車」(昭和59/製作:獅子プロダクション/配給:新東宝映画/監督:滝田洋二郎/脚本:高木功/製作:伊能竜/撮影:志賀葉一/照明:金沢正夫/編集:酒井正次/音楽:ロス・ギーワック/助監督:片岡修二/監督助手:笠井雅裕/撮影助手:乙守隆男、他一名/照明助手:吉角荘介/録音:銀座サウンド/効果:中村半次郎/現像:東映化学工業/出演:竹村祐佳・松原冷・甲斐よしみ・長友達也・池島ゆたか・立川世之介・藤田悦子・高橋宏美・周知安・笠松夢路・久保新二・堺勝朗・螢雪次朗)。撮影の志賀葉一が、頑ななまでにポスターには清水正二。出演者中、立川世之介から笠松夢路までは本篇クレジットのみ。
 この物語はフィクションであり云々と、登場する人物・団体名等が架空のものである旨を、末尾は“ださうです”―原文珍仮名―と適当に謳ふ開巻。単なる緩めのギャグかと思ひきや、中身を観てみたらとんでもなかつた。昭和のおほらかさが、せゝこまさばかりが募るきのふけふとなつては無性に麗しい、後述する。
 黒田一平(螢)が家電製品か何かの機械を修理する、黒田一平探偵事務所。助手の竹村浜子(竹村)は郷里の許嫁から届いた、迎へに行くとの巻手紙を受け取り頭を抱へる。浜子の里では女は二十三までに結婚しないと一族郎党晒首となる上、浜子は東京で金持ちと婚約したと嘘をついてゐた。作業に夢中で、まるで意に介さない黒田に腹を立てた浜子が事務所を飛び出すと、電車の画に(仮称)「痴漢電車のテーマ」がジャジャジャジャージャジャージャジャンジャン―これで伝はるのかよ―と起動してタイトル・イン。車中で指揮棒を振る二角帽子の久保チン―振りきれた造形だ―と出くはした浜子は、逆電車痴漢を仕掛け接近。そのまゝ作曲家・大野銀一(久保)の家だか常宿とするホテルに転がり込んだ浜子は、銀一に二日間限定の婚約を持ちかける。片や、右翼大物・大野大吉(堺)に呼び出された黒田は、さうも見えないけど兎に角大吉が余命幾許もないゆゑ遺産相続人たる、銀一ともう一人の子供で行方不明の宏美(甲斐)捜しを依頼される、松原冷は大吉秘書の糸井。銀一がイッパツ致した事後、眠る浜子の拇印を捺し婚約どころか婚姻届を勝手に提出してしまふ一方、大吉から与へられた、奥歯にダイヤモンドを詰めてゐるとの正直藪蛇気味な特徴を手掛かりに、黒田は歯医者に扮し「ハイ、行つてみよう!」と御馴染の痴漢電車宏美捜索を敢行。2代目快楽亭ブラックの十一番目の名前である―2代目快楽亭ブラックは十七番目―立川世之介と藤田悦子・高橋宏美が、その件の車内要員。ところが、ロサンゼルスから医療雑貨を輸入する会社を潰した、一本足りない二浦義和(長友)と結婚した宏美が昼間から夜の営み明けの散歩中、二浦共々暴漢の襲撃を受け、のちに搬送先の病院で死亡する。何か、何処かで聞いた話だな・・・・といふか“ださうです”ぢやねえだろ!“ださうです”ぢや。どうして斯くもフリーダムであれたのか、昭和、音楽担当もロス・ギーワックだぜ。
 配役残り、イコール笠井雅裕の笠松夢路とイコール片岡修二の周知安は、テレビを見てゐた黒田の度肝を抜く宏美襲撃事件に関して二浦にインタビューするテレビリポーターと、黒田が話を訊きに行く週刊立春編集部の人。池島ゆたかが、新潟から四十八時間かけてトラクターで東京にやつて来る浜子の許嫁、愛称熊ちやんこと職業マタギ。
 滝田洋二郎昭和59年第二作は滝田痴漢電車通算第七作にして、私立探偵黒田一平シリーズ第五作。ベッタベタな浜子の縁談狂想曲と、文春が疑惑の銃弾を撃ち抜いた直後といふタイミングも踏まへればなほさら、大胆不敵どころでは済まないロス疑惑のド直球フィーチャーで味つけされた、遺産相続絡みのミステリーとが見事に上手いこと十字の火花を散らす。滝田滝田と無闇に称揚するつもりは毛頭ないが、成程面白い。トリック的には小道具が見え見えの、ついでに微妙に回りくどいダイイング・メッセージ解きよりも、棚から三十億個の牡丹餅が雪崩を起こす死亡時刻時間差の方が、バタフライ・エフェクトじみた伏線回収の妙まで含め断然貫通力は高い。何気に驚いたのが、黒田一平シリーズが今作で明確に完結してゐるとは不勉強にして知らなかつた。考へてみれば以降も面子が変らないだけに一見連続してゐるやうに勘違ひしかねないものの、あくまで螢雪次朗が私立探偵黒田一平ではなく、猿飛佐助であつたりチンドン屋であつたりゴルゴ17であつたりする訳である。改めて振り返つてみると、全然別物ではないか。これでは単なる馬鹿自慢だ、何を今更。とまれ、スレッスレの残り尺で黒田と浜子が滑り込む、ピンク映画史上最大級のハッピー・エンドのゴキゲンさ加減が賑々しく始終を駆け抜けた末に爽やかな後味を残す、盤石の娯楽映画である。

 喧嘩別れした浜子の危険を察知、慌てて追ふ黒田と、浜子with怪人物が―黒田が乗る―エレベーター越しに交錯するのは、あれ何の映画のオマージュだつけ、「ミッドナイト・クロス」?


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