真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「人妻本番 昼下りの不倫」(1993/製作・配給:新東宝映画/監督:深町章/脚本:加付加/企画:中田新太郎/撮影:下元哲/照明:伊和手健/編集:酒井正次/助監督:田尻裕司/監督助手:榎本敏郎/撮影助手:小山田勝治/照明助手:広瀬寛巳/スチール:津田一郎/録音:銀座サウンド/現像:東映化学/出演:石原ゆり・林由美香・杉原みさお・扇まや・柳蜂逸男・平賀勘一・山本竜二・池島ゆたか)。脚本の加付加は、小水一男(a.k.a.ガイラ)の変名。仮に新版ポスターと同じ面子だとすると、出演者中、柳蜂逸男が本篇クレジットのみ。
 クレジットが起動する雑踏に、一三四番手が連れ立つて歩く。ヒロコ(石原)とほか二名(杉原みさおと扇まや/どちらかはマリ)のうち、専らほか二名が喋り続ける話題は配偶者に対する愚痴、性的な。外に男を作つたみさおとまや(絶対仮名)がヒロコに口止めした上で、ホテル街の画にビデオ題「昼下りの不倫妻」でのタイトル・イン。みさおと山本竜二の逢瀬で絡み初戦を手短に撃ち抜く一方、パジャマぽいヒロコが、屋上的なロケーションで黄昏る。結論を一部先走ると、こゝの繋ぎからぞんざい過ぎたんだ。兎も角ヒロコが想起するのは、銀行員の夫・譲(池島)との、譲がヒロコを待たず勝手に達する半ば片方向の夫婦生活。譲が本店帰還の皮算用を巡らせなくもない、ヒロコが重役貴婦人達のお供を四日間も務める、即ち家を空ける木に竹を接ぐイベントに関して投げるだけ投げておいて、車のボンネットを開け悪戦苦闘する譲に、伊豆のホテル「月野ハーバービュー」の社長令嬢・月野しずか(林)が接触。家出して来たといふしずかは、譲に狂言誘拐を持ちかける。
 配役残り平賀勘一と柳蜂逸男は、渋谷駅東急プラザ前の身代金受け渡し場所にて、譲を検挙する官憲部。これまで特定出来ずにゐた柳蜂逸男の正体が、榎本敏郎の変名であるのに初めて辿り着けた。依然、どう読ませたいのかは知らんけど。
 散発的に出くはす例(ためし)でもあれ所蔵プリントが飛んでゐるらしく、nfaj尺がjmdb=ex.DMMの配信尺より三分短い、深町章1993年第八作。そのためか、原則翻刻を謳ふnfajにはセカンド助監督から東化までの記載が漏れてゐる。
 羊頭を懸け狗肉を売る“本番”はさて措き、ビリング頭のヒロコが実は不倫をしないまゝに、譲が藪から棒な勢ひでしずかに溺れて行くのと並走して、寝間着ver.のヒロコは闇雲に塞ぎ込む。截然と斬り捨ててのけるが、ガイラだ林由美香だといつた名前に引き摺られるにせよ釣られるにしても、斯様にトッ散らかつた代物を無理して評価しようとするのは、全く以て宜しくない、為になるまい。再三挿み込まれる割に、結局パジャマが何時何をしてゐるのか、最後の最後まで大体程度にしか判然としない、量産型娯楽映画の古強者・深町章らしからぬ不親切設計。そんなタマにも見えないが、杉原みさおと扇まやが“重役貴婦人”なのかと思ひきや、さういふ訳でも全ッ然ない、限りなく意味を成さない“お供の四日間”。重ねて単なるワン・ノブ・間男かと思ひきやきや、山本竜二がコーエー・エクス・マキナな扇の要を成す粗雑な相関関係。そもそも譲も金貸しのプロだろ、といふツッコミ処は強ひて一旦呑み込んだとて、何が斯くも必要なのか不思議な金と、毒婦に師匠の名前をつける点は奮つてゐるものの、若松孝子が譲の素性を知つてゐた何気な謎。行間ばかりがガッバガバ、思はせぶりに含みを持たせ倒した末に、石原ゆりが結構エクストリームな目に遭ふ締めの濡れ場をも、薬師丸ひろ子を模して“よく締まるヒロコ”ぢやことの、どうしやうもないクソネタ込みで山竜が何時もの調子で水を差すのも通り越し完全に鎮火、終に取りつく島は消滅する。四年後の「官能未亡人 うごめく舌先」(老成螺帝名義/主演:田口あゆみ)はそこそこ見られた記憶も残しつつ、ギャーラギャーラ持て囃すどころか、割と劇的に面白くない。林由美香―本来ならば―必殺の「アッカンベー☆」も、それを活かすポップなりキュートなセンスを深町章に求めるのは、些かお門違ひではなからうか。


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コメント
 
 
 
昔、小屋で (失楽亭)
2021-11-23 20:21:41
観た時は雑踏のシーンは無くて、いきなり屋上のシーンから始まっていた様な記憶が。ずっと後で配信で観て、あれっ、こんなシーンあったっけ、と思った事でした。
 昔はそれなりに面白く観た気もするのですが、よく考えなくても、会ったばかりの女のために、いきなり銀行預金解約して、マンション購入しますかね。
 山本竜二氏演じる闇金屋兼主婦売春の元締(?)が主人公夫婦を罠に嵌める為に書いた絵図という訳でもない(若松孝子の事を『ガキみたいな女』と言っていたから、彼女の正体は知らなかった様です)。
 石原ゆり氏の最後における「転身」も伏線も何にも無い余りにも唐突過ぎるものでした。
 取り敢えずは、これにて。
 
 
 
>昔、小屋で (ドロップアウト@管理人)
2021-11-23 23:54:21
>いきなり屋上のシーンから

 まゝあることですが、それは流石に凄いですね。
 改めてサブスクで確認してみると、よもやまさか八分飛んでますよ、大飛翔だ(笑
 己に対する戒め込みで、重ね重ね人の名前で映画を観るなり見る悪弊は如何なものかと
 
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