「ぬるぬる燗燗」(1996/製作・配給:新東宝映画/監督:西山洋一/脚本・音楽:島田元/原案:田中淳・ひさうちみちお/製作:後藤功一・春名謙一/プロデューサー:生駒隆始/撮影:芦澤明子/照明:長田達也/編集:神谷信武/装飾:大光寺康・鈴村高正/小道具:中島順子/ヘアーメイク:清水千恵子/録音:若林大記/効果:藤本淳/主題歌:大和屋竺 『酔つぱらひのブルース』 作詞・作曲 大和屋竺・島田元/助監督:七里圭/制作部コーチ:河合伴明/制作主任:東晃一/制作宣伝:福原彰/演出助手:池本晋・藤川佳三/撮影助手:佐久間栄一・西村友宏/照明助手:鈴木康介・田部誠/装飾助手:佐藤考之/編集助手:中川毅彦・近藤アヤ/ネガ編集:大橋まさみ/ネガ編集助手:浜田朝恵/タイミング:松本末男/車輌:佐藤元一・木下信・善養寺満/制作進行:伊藤聡・山口誠/多分協力:愛光・東映化学・ニューメグロST・シネオカメラ・石谷ライティングサービス・木山事務所・早大シネマ研究部/ロケ協力:志のぶ・ナガオカスタジオ・ユアーズ三茶亭・多摩川大黒屋/配役:藤田敏八・城野みさ・三浦勇矢・葉月螢・水橋研二・松本コンチータ・松川信・皆川衆・渡辺護/友情出演:坂田雅彦・柴田ミカ子・井川耕一郎・速見典子・浦野隆男・邸太郎・古川真司・森源次郎・田谷淳・柏木陽・茂木聡・植岡喜晴・柴田哲考・高橋俊光・鎮西尚一・野村正昭・万田邦敏)。実際のビリングは、水橋研二と松本コンチータの間に友情出演の一群を挿む。
ど頭に“本作品は平成四年に関西テレビ、ディレクターズ・カンパニーが制作し、関西テレビで放送された番組、ドラマドス「ぬるぬる燗燗」(出演・藤田敏八、大和屋竺)の映画化です。”とのクレジット、因みにオーラスは“初代・夢殿を演じた故・大和屋竺にこの作品を捧げます。”なる清水大敬病、誰かしら何かしらに映画を捧げれば全て清水大敬扱ひするのはよくないと思ふ。徳利から溜息が聞こえる聞こえぬと薀蓄を垂れた末に、“男前の酒飲みは、何時もツケだつた”とカッコいい主題歌がドカーンと起動してタイトル・イン。過剰動員のカメオ勢で、正直不自然なほど繁盛する横丁の赤提灯「物部屋」。大将・物部守男(藤田)が出す絶品の温燗を常連客の色男・常田速治(三浦)が楽しんでゐると、アメリカ留学を希望する、守男の娘・麻美(葉月)が帰宅。他方、守男の温燗が日本一だとする客の声に、「果たしてさうかな」と憎まれ口を残し謎の男(渡辺護)が捌ける。麻美と常田のカーセクロス挿んで数日後、物部屋はあんなに大繁盛してゐたのにすつかり閑古鳥。守男と常田はその原因の、全国各地に現れては消えるジブシー飲み屋・夢殿に行つてみる。夢殿の店舗は、河原に運動会感覚のテントをオッ建てた、ピンク風にいふとキャラバン野郎仕様、こちらの方が先だけど。主人・夢殿簫白(渡辺)が出す温燗は、物部屋と同じ銘柄が奇跡のやうに旨かつた。秘密を探る守男は、驚愕の事実に辿り着く。夢殿の傍らに停められたトラックの荷台の中では、簫白の年の離れた妻・澄代(城野)がレオタード姿でポールスクワット。簫白は胸の部分に明けたバルブから注いだ酒を、暫しの屈伸運動を経て下腹部のチューブから徳利に注ぎ、客に出してゐたのだ。チューブを蛇口に改良したぬるぬる燗燗スーツver.2.0を作成した守男は、麻美に白羽の矢を立てる。
配役残り水橋研二は、夢殿のボーヤその名も見習新三。皆川衆は酔客メインのがつてん和尚、合点要素も和尚要素も皆無。松川信は常田の紹介で守男が活路を見出すべく訪ねる、普段は飯田橋くららで働くワカメ酒の名人・大磯虎雄、画期的な設定が奮つてゐる。松本コンチータは、大磯の目下の相方を務めるストリッパー・海野雪絵。飄々と真実を繙いて行く、地味に重要な役割を担ふ。案外といふと失礼だが、女優部で一番仕事をしてゐるのは実はこの人かも。
テレビドラマをセルフ映画化したのは額面通りにせよ、十分長い七十分の尺や、ロマンポルノじみた、あるいは一般映画ばりの厚みある画作りに透けて見える潤沢な普請を窺ふに、城野みさ前戦「したくて、したくて、たまらない、女。」(1995/監督・脚本:沖島勲)同様、新東宝が一般公開に討つて出た弾なのか。それとも、至極抑制的な濡れ場を見るにつけ、寧ろこちら側の論理でいへば女の裸をエロく見せ、客の下心を刺激するそれはそれとしての誠意を欠いた風情に、そもそも今作をピンク映画の枠内に括つてよいものなのか、といつた根本的な疑問さへ過りかける。尤もその点に関しては、質量ともどもの貧しさに、意欲の有無すら疑はしい絡みをにも関らずキッチリ三人分揃へてゐるところに、逆説的にプログラム・ピクチャーの烙印を認め得るとする議論が成立し得るのやも知れない。
物語本体に与太吹く向きを変へると、大和屋竺はおろか藤田敏八や渡辺護の名前にも馬耳東風の意識低い系のピンクスにとつては、女体温燗の肝が処女性で、挙句に<膜を再生>すると熟成味が加はりより一層酒が旨くなるだなどといふのは、全体精神的なのか即物的なのだかよく判らない。澄代が酒の容れ物であることを強ひられる宿命に抗ふまでは、淡泊なりに筋がスムーズに通らなくもない反面、風見鶏感覚の麻美に関しては藪から棒で、最終的な簫白の去就には藪蛇ぶりも強い。ここは激怒して脚本をビリビリに引き裂くところから話が始まる、浜野佐知版―簫白役は絶対に栗原良、守男は久須りんか平勘―を夢想してみるか、凄い美人なのに何故か処女。これで温燗対決に勝てると守男が色めきたつたのもぬか喜び、実はその美人はニューハーフで、酒を飲んだ男は全員死亡。なんてクソみたいな展開が浮かんで来るへべれけな体たらくゆゑ、今日はもう寝るか >二度と目を覚まさなければいい>>もしくは皆忘れてるのを見越して豪快に薔薇族でパクッてみせるとか
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