真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「桃木屋旅館騒動記」(2014/製作:新東宝映画株式会社・レオーネ/配給:新東宝映画/監督・脚本・編集:城定夫/企画:衣川仲人/製作:獅子奮迅/プロデューサー:獅子奮迅/ラインプロデューサー:羽根誠/撮影・照明:田宮健彦/録音:小林徹哉/助監督:伊藤一平/ヘアメイク:柿原由佳/スチール:本田あきら/撮影助手:川口諒太郎/監督助手:寺田瑛/制作応援:躰中洋蔵/メイキング:相羽誠聡/制作プロダクション:Production Lenny/出演:西野翔・早瀬ありす・吉岡睦雄・麻木貴仁・津田篤・森羅万象・蘭汰郎・廣岡孝一・辻和朗・久保和明・花畑元子《声》・稲森誠・城太郎)。出演者中、花畑元子以降は本篇クレジットのみ。
 山間の田舎町・毛更津村の温泉旅館「桃木屋旅館」(ロケ先:八幡屋旅館)がてんてこまひに大繁盛するのは、二人で切り盛りする夫兼板前の桃木幹也(吉岡)に起こされた女将・月子(西野)の午睡の夢。読みかけのホームページ作成の入門書に、月子が再びとりかゝりタイトル・イン。このアバン、自作サイト云々が後述するピュオーネ隊がそれを見て桃木屋にやつて来る。のにしか繋がらないといふのは、開巻の振りにしては些か弱くもあるまいか。
 温泉旅館とは名ばかり、毛更津は地質変化で温泉が枯渇、桃木屋は当然の如く閑古鳥。目下の宿泊客は、社長の無茶振りで再開発計画の下調べに毛更津を訪れたものの、聞きしに劣るとも勝らない壮絶な過疎さ加減に頭を抱へるのも通り越し匙を投げ気味の、デベロッパー会社の山田(麻木)と部下・中島(津田)の二人きり。そんな桃木屋に、「潮吹き温泉」シリーズで人気のAV女優・星川キララ(早瀬)以下、監督の定岡(蘭汰郎)・助監督なのかカメラマンなのか微妙な二つ足した三平(廣岡)・ストイックな潮吹かせ男優の後藤タッカー(辻)からなるピュオーネ御一行が到着する。月子は三平に国営放送の旅番組クルーと言ひ包められ、一方山田と中島は業界の名物男の異名を誇る、「大東京地所」丸山専務(森羅)の―何にもない―毛更津での接待と、再開発計画契約書に判を捺させるインポッシブルなミッションをバカ社長に厳命され悶絶する中、洩れ聞こえる嬌声に誘はれた山田と中島を注意しようとして、撮影現場に転がり込んだ月子は驚く。星川キララが栃木の実家を家出して生き別れ状態の、妹・陽子であつたからだ。ところで蘭汰郎が、更に遡れば頂哲夫ソックリな綱島渉に、異常なほど酷似してゐる。
 配役残り、レオーネ代表取締役社長である久保和明は、オドオドと終始不発の吉岡睦雄に対し小気味いい弾けぷりを披露する借金取り・遠藤。花畑元子は棒読みナレーションの主に、もしかするとクレジットはオミットされたけど桃木屋先代の幹也没母遺影も兼務?大阪を拠点に関西圏で活動する劇団「シアターOM」代表の稲森誠と、あんまり顔が綺麗なのでまさかと思つた城太郎は、劇中2バージョン挿み込まれる「お仏壇のケサラヅ」CMのお爺ちやんと孫。まさかとは何事かといふと、太郎君は城定秀夫の愛息である。
 城定夫名義だけどよもや一日撮りなのか!?城定秀夫「妖女伝説セイレーンX 魔性の誘惑」(2008/高木裕治と共同脚本/主演:麻美ゆま)以来六年ぶり二度目の新東宝作。因みに地元駅前ロマンが来月末には正月映画の「わるいをんな」(2015/主演:めぐり)と、二ヶ月連続で城定秀夫新東宝新作が着弾する晩夏と初秋の大フィーバー。映画の中身は絡みに絡める一工夫も設けられるとはいへ、要は「ザ・クールジャパン ロシア熟女で女体盛り」なるイカした新題で来月新版公開される、勝利一2004年第二作「和風旅館のロシア女将 女体盛り」(助監督:伊藤一平/主演:グロリア)が不自然に釣り逃がした魚を的確に押さへた、悪くいへば“だけ”の物語。確かに手堅いことは手堅いが城定秀夫分ハードルが上がつてゐるだけになほさら、ギャースカワースカ騒ぐほど面白い訳でも別にない。展開込みで類型的な造形に俳優部がほぼほぼ全滅する中、久保和明以外に気を吐くのは飛び込んで来るや圧倒的な貫禄で始終を突発的に牽引する森羅万象。流石に馬力が違ふ、専務の割に上着は安つぽいけれど。観客の期待と予想を一欠片たりとて裏切らぬ、順当な順当な王道娯楽映画であるのは間違ひないにせよ、あくまでそれは、理想論に於ける量産型娯楽映画のアベレージ。新東宝が年に一本製作するかしないかの決戦兵器の出来としては、矢張り物足りなさは否めない。仕出かす時は派手に仕出かしつつ、温泉映画の黙したアルチザン・新田栄の方が、当たれば遠くに飛ばす。裏の裏に表返るセカンドインパクトの方便に、東北地方太平洋沖後の頻発地震をどさくさと紛れ込ませるのは、それはブラックユーモアのつもりなのか、それとも単なるキナ臭い無神経なのか。


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 「ぬるぬる燗燗」(1996/製作・配給:新東宝映画/監督:西山洋一/脚本・音楽:島田元/原案:田中淳・ひさうちみちお/製作:後藤功一・春名謙一/プロデューサー:生駒隆始/撮影:芦澤明子/照明:長田達也/編集:神谷信武/装飾:大光寺康・鈴村高正/小道具:中島順子/ヘアーメイク:清水千恵子/録音:若林大記/効果:藤本淳/主題歌:大和屋竺 『酔つぱらひのブルース』 作詞・作曲 大和屋竺・島田元/助監督:七里圭/制作部コーチ:河合伴明/制作主任:東晃一/制作宣伝:福原彰/演出助手:池本晋・藤川佳三/撮影助手:佐久間栄一・西村友宏/照明助手:鈴木康介・田部誠/装飾助手:佐藤考之/編集助手:中川毅彦・近藤アヤ/ネガ編集:大橋まさみ/ネガ編集助手:浜田朝恵/タイミング:松本末男/車輌:佐藤元一・木下信・善養寺満/制作進行:伊藤聡・山口誠/多分協力:愛光・東映化学・ニューメグロST・シネオカメラ・石谷ライティングサービス・木山事務所・早大シネマ研究部/ロケ協力:志のぶ・ナガオカスタジオ・ユアーズ三茶亭・多摩川大黒屋/配役:藤田敏八・城野みさ・三浦勇矢・葉月螢・水橋研二・松本コンチータ・松川信・皆川衆・渡辺護/友情出演:坂田雅彦・柴田ミカ子・井川耕一郎・速見典子・浦野隆男・邸太郎・古川真司・森源次郎・田谷淳・柏木陽・茂木聡・植岡喜晴・柴田哲考・高橋俊光・鎮西尚一・野村正昭・万田邦敏)。実際のビリングは、水橋研二と松本コンチータの間に友情出演の一群を挿む。
 ど頭に“本作品は平成四年に関西テレビ、ディレクターズ・カンパニーが制作し、関西テレビで放送された番組、ドラマドス「ぬるぬる燗燗」(出演・藤田敏八、大和屋竺)の映画化です。”とのクレジット、因みにオーラスは“初代・夢殿を演じた故・大和屋竺にこの作品を捧げます。”なる清水大敬病、誰かしら何かしらに映画を捧げれば全て清水大敬扱ひするのはよくないと思ふ。徳利から溜息が聞こえる聞こえぬと薀蓄を垂れた末に、“男前の酒飲みは、何時もツケだつた”とカッコいい主題歌がドカーンと起動してタイトル・イン。過剰動員のカメオ勢で、正直不自然なほど繁盛する横丁の赤提灯「物部屋」。大将・物部守男(藤田)が出す絶品の温燗を常連客の色男・常田速治(三浦)が楽しんでゐると、アメリカ留学を希望する、守男の娘・麻美(葉月)が帰宅。他方、守男の温燗が日本一だとする客の声に、「果たしてさうかな」と憎まれ口を残し謎の男(渡辺護)が捌ける。麻美と常田のカーセクロス挿んで数日後、物部屋はあんなに大繁盛してゐたのにすつかり閑古鳥。守男と常田はその原因の、全国各地に現れては消えるジブシー飲み屋・夢殿に行つてみる。夢殿の店舗は、河原に運動会感覚のテントをオッ建てた、ピンク風にいふとキャラバン野郎仕様、こちらの方が先だけど。主人・夢殿簫白(渡辺)が出す温燗は、物部屋と同じ銘柄が奇跡のやうに旨かつた。秘密を探る守男は、驚愕の事実に辿り着く。夢殿の傍らに停められたトラックの荷台の中では、簫白の年の離れた妻・澄代(城野)がレオタード姿でポールスクワット。簫白は胸の部分に明けたバルブから注いだ酒を、暫しの屈伸運動を経て下腹部のチューブから徳利に注ぎ、客に出してゐたのだ。チューブを蛇口に改良したぬるぬる燗燗スーツver.2.0を作成した守男は、麻美に白羽の矢を立てる。
 配役残り水橋研二は、夢殿のボーヤその名も見習新三。皆川衆は酔客メインのがつてん和尚、合点要素も和尚要素も皆無。松川信は常田の紹介で守男が活路を見出すべく訪ねる、普段は飯田橋くららで働くワカメ酒の名人・大磯虎雄、画期的な設定が奮つてゐる。松本コンチータは、大磯の目下の相方を務めるストリッパー・海野雪絵。飄々と真実を繙いて行く、地味に重要な役割を担ふ。案外といふと失礼だが、女優部で一番仕事をしてゐるのは実はこの人かも。
 テレビドラマをセルフ映画化したのは額面通りにせよ、十分長い七十分の尺や、ロマンポルノじみた、あるいは一般映画ばりの厚みある画作りに透けて見える潤沢な普請を窺ふに、城野みさ前戦「したくて、したくて、たまらない、女。」(1995/監督・脚本:沖島勲)同様、新東宝が一般公開に討つて出た弾なのか。それとも、至極抑制的な濡れ場を見るにつけ、寧ろこちら側の論理でいへば女の裸をエロく見せ、客の下心を刺激するそれはそれとしての誠意を欠いた風情に、そもそも今作をピンク映画の枠内に括つてよいものなのか、といつた根本的な疑問さへ過りかける。尤もその点に関しては、質量ともどもの貧しさに、意欲の有無すら疑はしい絡みをにも関らずキッチリ三人分揃へてゐるところに、逆説的にプログラム・ピクチャーの烙印を認め得るとする議論が成立し得るのやも知れない。
 物語本体に与太吹く向きを変へると、大和屋竺はおろか藤田敏八や渡辺護の名前にも馬耳東風の意識低い系のピンクスにとつては、女体温燗の肝が処女性で、挙句に<膜を再生>すると熟成味が加はりより一層酒が旨くなるだなどといふのは、全体精神的なのか即物的なのだかよく判らない。澄代が酒の容れ物であることを強ひられる宿命に抗ふまでは、淡泊なりに筋がスムーズに通らなくもない反面、風見鶏感覚の麻美に関しては藪から棒で、最終的な簫白の去就には藪蛇ぶりも強い。ここは激怒して脚本をビリビリに引き裂くところから話が始まる、浜野佐知版―簫白役は絶対に栗原良、守男は久須りんか平勘―を夢想してみるか、凄い美人なのに何故か処女。これで温燗対決に勝てると守男が色めきたつたのもぬか喜び、実はその美人はニューハーフで、酒を飲んだ男は全員死亡。なんてクソみたいな展開が浮かんで来るへべれけな体たらくゆゑ、今日はもう寝るか   >二度と目を覚まさなければいい>>もしくは皆忘れてるのを見越して豪快に薔薇族でパクッてみせるとか


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 「女子大生レズ 暴姦の罠」(2014/制作:OKプロモーション/提供:オーピー映画/監督:小川欽也/脚本:水谷一二三/撮影監督:創優和/編集:有馬潜/音楽:OK企画/助監督:加藤義一/撮影助手:安間大/照明助手:小山悟/監督助手:小関裕次郎/効果:東京スクリーンサービス/出演:きみの歩美・星野ゆず・倖田李梨・平川直大・岡田智宏・姿良三・青森次郎・なかみつせいじ)。脚本の水谷一二三と出演者中姿良三は、小川欽也の変名。同じく出演者中、青森次郎は本篇クレジットのみ。
 霧の立ち込める山道を、倖田李梨が覚束ない足取りで歩く。その後方に、左折して来る形でヨタ車がフレーム・イン。不審に思つた運転席のなかみつせいじが車を寄せると、倖田李梨は行き倒れる。運転席目線で一時流した上で、無味乾燥なタイトル・イン。藤田産業グループ代表の藤田宏二(なかみつ)は、元々の行き先であつた自身の別荘に行き倒れた女・川村知子(倖田)を担ぎ込む。手荷物に手をつけ、知子が自殺しようとしてゐたのを知つた藤田は、半裸に剥かれた状態で目を覚まし騒ぎ始めた知子に、生まれ変つたつもりでの愛人契約を提示。ザクザク手籠めにする、最早流石とでもしかいひやうがない。翌朝、裸エプロンの知子が何時の間にかすつかり斜め上にソノ気の一方、会社が何事かキナ臭いトラブルに見舞はれた藤田は緊急帰京。入れ替る形で、藤田の女子大生の娘・美沙(きみの)と、美沙の後輩で、当然世間には秘密の男と女ならぬ女と女の仲の須貝加代(星野)が藤田家別荘に入る。とりあへず自己紹介した知子を、美沙はお手伝ひかと誤認。美沙が加代と百合の花咲かせる中、社会の不合理への怒りを拗らせた企業ゴロ・北村裕二(平川)と、ヒャッハーな造形の弟分・小泉明(岡田)が別荘を襲撃する。
 豪気にも監督生活半世紀はスルーして済ます、今上御大・小川欽也最新作。伊豆に行つて、帰つて来たり来なかつたりする―だけの―映画。2011年「若妻と熟女妻 絶頂のあへぎ声」(主演:夏川亜咲)に於いて完成した現代ピンクの到達点・伊豆映画の、ビリングが混濁する「美女家庭教師の谷間レッスン」(2012/主演:あずみ恋か来栖ひなた)、娯楽映画の慎ましやかな名作「乱宴の宿 湯けむり未亡人」(2013/主演:舞原美咲)を経ての、初のサスペンス。といつて、別荘ロケーションの御馴染花宴に適当に拡げた風呂敷を、デウス・エクス・マキナたる刑事に自ら扮した小川欽也―竹洞哲也の変名の青森次郎が部下―がガッサリ荒畳みして逃げるラストは、一夜明けると知子が従順な肉メイドと化してゐる超展開以上に豪快。豪快といふか何といふか、グルッと一周はおろかグルグル数周して全てをブッ千切る、御大クラスにして初めて可能な―あるいは許される―正体不明のカタルシス?には言葉も失ひクラクラ来るほかない。折角の周年記念をスッ飛ばす程度は正しく序の口、数少ない見所は今年に入つて戦線に完全復帰した感が頼もしい、クレジットをオミットされる田中康文2013年第一作「人妻エロ道中 激しく乗せて」(主演:加藤ツバキ)に気付かなかつたフリをすると、池島ゆたか2012年第三作「婚前OL 不埒に濡れて」(脚本:五代暁子/主演:周防ゆきこ)以来。小川組だと「新婚OL いたづらな桃尻」(2010/脚本:岡桜文一/脚本監修:関根和美/主演:愛葉るび/ひらかわなおひろ表記)以来久々の我等がナオヒーローこと平川直大の、ブランクを感じさせないお腹一杯の暴れぷりくらゐか。但し何れの絡みも乳首への責めに執拗な執着を発揮、裸映画的にはそれはそれでそれなりに見応へもなくはない。反面伊豆映画としての致命的な弱点は、濡れ場に傾注した諸刃の剣で始終は概ね花宴に籠りきり、伊豆の風光明媚に割く尺が殆ど見当たらないのが矢張り厳しい。

 ところで、この週の前田有楽三本立て併映は新里猛作の「痴漢タクシー エクスタシードライバー」(1999/脚本:大河原ちさと/主演:田中要次・奈賀毬子)の、2012年旧作改題版「性欲タクシー 走る車内で」と、新田栄の「和風コンパニオン 絶頂露天風呂」(1999/脚本:夏季忍=久須美欽一/主演:柿沼ゆう子)の、2009年旧作改題版「和服のコンパニオン 極上昇天」。何でわざわざ平素は触れない類の話題を持ち出したのかといふと、注目点は「和風コンパニオン 絶頂露天風呂」のビリング下位。ノン・クレジットの新田栄と、丘尚輝(=岡輝男)とともに助平宿泊客要員の青森哲也こと、青森出身の竹洞哲也。即ち、十五年の歳月を越え新田組と小川組とに跨り、竹洞哲也が青森姓で俳優部に紛れ込む二作を並べた番組を組んでみせた格好になる。純然たる単なる偶然にさうゐないにせよ、恐らくさういふ例がほかにはない筈ゆゑピン・ポイントぶりが恐ろしい。これを量産型娯楽映画の案外馬鹿にならぬ歴史が弾き出した、奇跡と称さずして果たして何といはう。
 重ねてところで、クリスマスも跨いで封切られた今作が、フィルム撮影最後のピンク映画となる。この先歴史が逆方向に戻りもしなければ、よもやまさかでENKなり国映が飛び込んで来る驚天動地もあるまい。別に出来上がつた映画をどういふ順番で公開するかは単なる大蔵の匙加減ひとつともへ、肩肘張らないどころか抜けてんぢやねえかといふほどの肩の力の抜け具合は、それはそれでそれらしくもある。


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 「スケベ女の太股 濡れて奥まで!」(1991『究極onanie 奥まで丸見え』の1998年旧作改題版/製作:新映企画株式会社/提供:Xces Film/監督:新田栄/脚本:亀井よし子/企画:伊能竜/撮影:千葉幸夫/照明:渡波洋行/編集:酒井正次/音楽:レインボー・サウンド/助監督:石崎雅幸/撮影助手:池宮直弘/照明助手:渡部康史/録音:銀座サウンド/効果:時田グループ/現像:東映化学/スチール:佐藤弘伸/タイトル:ハセガワプロ/車輛:野澤昌弘/出演:麻生まみ・大滝ゆり《新人》・大橋美加子・坂入正三・岡竜太郎・石神一)。
 双眼鏡越しのマンション外景、双眼鏡を覗く主演女優を抜いてチャッチャとタイトル・イン。双眼鏡視点は暫しウロウロした末に、俳優部クレジットの辺りでとある一室に辿り着く。指南役と思しき所長(坂入)見守る中、田中ショウタロウ(岡)が後々語られる職業はソープのお姉さん(大橋)に手マンする。所長がチラシ貼りに席を外した隙に、田中は目隠しした上でバイブと偽り、何時も鍛へてるとの自らのイチモツを大橋美加子に挿入する。のと並行して、双眼鏡の主・麗子(麻生)も自室にて自慰。ここまで話は全く見えないが、麻生まみも大橋美加子も共にそこそこの美人でプロポーションは手放しで美しく―特に麻生まみの尻―ひとまづ見応へはある。格好が下手に華美な割に金欠気味の麗子は、所長が貼つたバナナクラブが女性モニターを募集するチラシに目を留める。麗子が訪ねてみたバナナクラブは、麗子にとつてはこないだ覗いてゐた既知の部屋。「どんなモニター?」と問ふ麗子に対し、所長の答へは「オナニー」、どんな会話だよ。ともあれ1テスト二万円といふ風俗感覚の高級に釣られ、麗子はサクサク快諾。玉を作つた紐や、模型も駆使した地味に超絶の撮影により本当に膣内に入つて来てゐるやうに見える、泥鰌を用ゐたオナニー?に喜悦する。
 配役残り石神一は、麗子がバナナクラブから帰宅すると部屋に上がり込んでゐた彼氏。そのまゝ麻生まみの二連戦が執り行はれるのはいいとして、石神一が今夜は感度のいい麗子の観音様がヌメヌメするところまでは手が届けど、もう一声、何か生臭いなあ―石神一の声色で―とか欲しかつた気もする。ビリング上は二番手の割に絡みが一度きりの大滝ゆりは、バナナクラブに駆け込む課長に捨てられた女。加へて、田中がポップな送り狼と化す夜間の青姦が、新田栄らしからず下手に暗くて結構見えない。大滝ゆりと順番を前後して、後述する爆弾を抱へた所長に、非情な診断をサクッと下す医者の声は新田栄。
 前回のDMM戦で見た岡柳太郎がウッスラ頭に残る岡竜太郎とあまりに別人につき、岡竜太郎の出演作を探してみた新田栄1991年最終第十一作。さうしたところ岡柳太郎の改名後が岡竜太郎であるとするリストも見受けられるものの、矢張り二枚目と三枚目とで全ッ然違ふ、因みに柳が色男の方。オカリュー問題に関しては解決したとして、ところで今作本体はといふとこれがまたここまで来ると器用さすら錯覚しかねないくらゐに、逐一ちぐはぐな一作。そもそも双眼鏡を用ゐた出歯亀が趣味の女子大生、といふヒロインの大概珍奇な造形も、バナナクラブが全体如何なる業態の―性的―サービス業なのかといつた、劇中世界を成立させる上での基本的な情報を天衣無縫に等閑視。即ち、開巻まるで見えなかつた物語は、結局最後まで見えはしない。ついでにセックスしたら客は来ないと、田中に頑なに本番を禁ずる所長の論理も、清々しく不鮮明で何がいひたいのかサッパリ判らない。そんな所長は酒にお溺れ度々苦しげに腹に手を当て、判り易い重病フラグを立てると同時に、なかなか観るなり見た覚えのない、影のある渋さがなかなか画になる。となると、都会の片隅でチンケな男がチンケに命を落とす。たつたそれだけの他愛なさを無様にせよ精一杯ロマンティックの下駄を履かせてカッコよく描く、あの―どのだ―サカショーが「真夜中のカーボーイ」のダスティン・ホフマンばりの死に様を撃ち抜く、歴史に埋もれた新田栄百本に一本の映画と遂に邂逅するのかと色めきたつたのは、我ながら早とちりにもほどがある。大滝ゆりを喰つたお痛が発覚し、叱責された田中がバナナクラブを飛び出した弾みで昏倒した所長は全治二ヶ月の入院、要は死に損なふ。細腕繁盛記よろしく、一人でバナナクラブを切り盛りする麗子は、大橋美加子と大輪の百合を咲かせついでに新ガジェット製作を依頼され、帰つて来た田中に運ばせた―盗んだ―マネキンでワイフならぬダッチハズバンドの開発に走り出す。といふのは終盤に際して覚束なかつた始終が力強く盛り返す、順当な展開に思へたものを。ケロッとバレてのけるが所長のイマジンも繰り出しつつの、麗子のダッチ試運転で規定の尺を駆け抜けるラストには軽く度肝を抜かれた。そこはダッチハズバンドのロールアウトが成功を収めたバナナクラブに、大将たる所長も帰還し万事目出度く大団円。となるのが娯楽映画の定石なのではなからうか、などといふ素人の浅知恵に砂をかけるどころか後ろ回し蹴りが飛んで来る、最終的には豪快な一作である。


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 「ザ・人妻性感帯 SEXドクターの告白」(1999『驚異! 勃起促進剤』の2015年旧作改題版/製作:IIZUMI Production/提供:Xces Film/監督:北沢幸雄/脚本:五代暁子/企画:稲山悌二《エクセスフィルム》・業沖球太/製作:北沢幸雄/撮影:小山田勝治/照明:渡波洋行/音楽:TAOKA/編集:北沢幸雄/助監督:城定秀夫・増野琢麿/撮影助手:鈴木慎二/照明助手:和田正宏/ヘアメイク:鷲野早苗/ネガ編集:酒井正次/タイトル:道川昭/音響効果:東京スクリーンサービス/出演:東城えみ・相沢知美・奈賀毬子・佐々木基子・杉本まこと・木立隆雅・熊本輝生・柴田敬介・村井智丸・野上正義)。
 何故か音は洋ピン風の影絵状の絡み(本体は東城えみと熊本輝生)が暫し続いた上で、勃起不全治療剤・バイアグラもといバイナグラの効能・効果なり用法・用量のクレジット。ここで用法・用量に関して、“25mg~50mgを性行為の役1時間前に口径投与する”。“口径投与”とは一体如何なる形の投与なのか、経口投与だろがよと草を生やしかけてゐると、唐突なタイミングでタイトル・イン。内科と婦人科の開業医、神崎医院。院長の神崎(杉本)を、旧友の小林(木立)が訪ねる。浮かない小林が何事か悩みを抱へてゐるらしき反面、看護組合の会合で鬼ならぬ女房の居ぬ間に、浮気相手と会ふ予定の神崎は完全に浮き足立つ。男二人の押し問答に結構長尺を費やした末、劇中用語ママでSEXドクターを新規展開する神崎に、小林は遂にインポを白状。気が急く神崎を再三再四押し止め、小林は神崎がバイナグラを処方した患者の逸話を聞き出す。
 さてそんなこんなで、旦那が弱いゆゑ膳を据ゑる気マンマンのパートの人妻(相沢)を、経年劣化で持て余すコンビニ店主(野上)。そもそもさういふ男がどうして結婚したのかも謎なのだが、ゲーム会社に勤務し家でも自社ゲームのプレイに夢中で、夫婦生活の気配すらない夫・ひでくん(柴田)をどうにかしたいリエちやん(奈賀)。素人インポ・慎二(熊本)のエピソードが、効果のほどに興味津々の小林に対し、それどころではない神崎が半分キレながらも渋々話し続ける格好で順々に連ねられる。配役残り、ビリングの頭に置かれる割に、さして重きを置かれる気配も窺へない東城えみは、慎二の彼女・愛子。女優部の扱ひは、全員均等に思へる。適材適所感を爆裂させる村井智丸は、勃たない慎二に一旦愛想を尽かせた愛子が、二股かけかけるオラついたヤリチン。クレジット上での役名はフリーター、実も蓋もない。
 何といふこともないまゝに、何となく見させる北沢幸雄1999年最終第二作、ENK薔薇族が一本先行する。杉本まことと木立隆雅の薔薇ならぬ絡みに結構な尺を割く割に、愛子と慎二篇が終つたところで、血圧を測るのと超絶簡略な問診のみでバイナグラを出して貰つた―大丈夫か、神崎―小林は喜び勇んで退場するや、綺麗サッパリ御役御免。ケロッとバレてのけるが実は神崎の火遊びに気付いてゐた、矢張り鬼の女房(佐々木)が潜んでゐた隣室から登場。無理からな夫婦生活に突入し、二回戦に際してバイナグラを投入するといふラストは、他人のオムニバスが話者当人に収斂する捻りが効いてゐるのか、単に裸映画のルーチンぶりが奮つてゐるだけなのかよく判らない。更に、あるいはそもそも。そこかしこで多用される影絵もザックリした見映えで、二十一世紀を目前に、全体何を狙つた基軸なのだか漫然とした釈然としなさを加速する。


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 「好色エロ実話 ‐13人集団快楽‐」(1990『実体験リポート ★13人★SEXパーティー』の1994年旧作改題版/製作:飯泉プロダクション/配給:新東宝映画/構成・演出:業沖九太/企画:板川尚/撮影:石原一夫/照明:佐久間優/音楽:TAOKA/編集:金子編集室/助監督:増野琢磨・梶原積・上野徹/撮影助手:青木克弘/照明助手:池田義郎/キャスティング:斉藤一馬/スチール:小島浩/効果:東京スクリーンサービス/録音:銀座サウンド/現像:東映化工/出演:芹沢里緒・島崎里美・木内玲子・高原ルミ・山本純・杉下なおみ・野口優子・中山久美子・三条ルル・高中流水・燁野由衣・中原めぐみ・桃川麻理子・小林節彦・刀根新太郎・宝明晴彦・平野恒雄)。
 十人前後の女がテレテレ躍る地下?のイベント・スペースに、秒殺のタイトル・イン。演者もカメラもガチャガチャ動き、頭数が俄かには判らない。階段を下りる男が会場のドアを開け、男子禁制秘密パーティーの潜入取材に現れた、週刊告白記者(平野)がカメラの方に振り向きリポーターよろしく喋り始める。紙媒体なのに、動画カメラを連れて来てるのかよ。女子大生の主催者・リョーコ(芹沢)は何事か密約を交した記者に、人妻の面白い話とヨーコ(島崎)を振る。ヨーコは集合住宅下の階のタクシー運転手・カワイ(刀根新太郎か宝明晴彦)と御近所不倫。マンション上下階を抜くロング、パチンコと偽り外出する夫を送り出す妻の声は、当時の便利屋ポジションにあつたのか石川恵美。日本文化センターのテレフォンショッピングを、背景音に丸々流す謎音効はさて措き、オーソドックスな顔立ちと健康的な肢体、そして柔らかさを感じさせる美巨乳を窓から溢れる強い外光の中捉へる島崎里美の絡みが、今作の裸映画的な白眉。以降宝明晴彦か刀根新太郎とのカーセクロスを、多分演出部の出歯亀二人組に覗かれる恐らくキョーコ(木内)、先輩と百合の花を咲かせる准看護婦のマチコ(高原)、パートナーの小林節彦と、結構本格的なプレイに狂ふM女(杉下)のエピソードが順々に続く。際立つのが島崎里美に勝るとも劣らない高原ルミの、随分な言草だが何でこんなところに居るのか不思議なほどの大正義美少女ぶり。
 配役残り、ビリング推定で山本純がマチコのお姉様・ミホかミオ。野口優子から桃川麻理子までは、後述するがそれには止(とど)まらなかつたパーティーのモブ要員。詰まるところ銀座サウンドに皆を呼びはしなかつたらしく、銘々がああだかうだ話す同一カットにて、幾分声色を変へたにせよ石川恵美が別々の二人分の声をアテる、大概な荒業を披露もとい仕出かす。
 北沢幸雄映画の主に企画で知られる業沖球太(わざおききうた)といふのは、要は北沢幸雄(きたざわゆきを)のアナグラム変名か。我ながら今更ながらにもほどがあるとは苦笑しつつ、これまで“わざおき”を“ごふおき”と誤読してゐたので気付かなかつた。そんな業沖球太の九太名義による、何と監督作。構成なり演出といふのはセミドキュメント風味を出すための方便で、脚本・監督と同義とみてまづ間違ひあるまい。中身も単なる劇映画である、但し物語性は限りなく稀薄な。因みに本作は本体の北沢幸雄込みで1990年最終第六作、この時北沢幸雄が何故別の名義を捻り出したのかは、今とならなくとも判らない。一方、企画担当としての業沖球太の登場が最初に確認出来るのは、現時点では三年後の1993年第三作、非新田栄系「痴漢と覗き」第一作となる「痴漢と覗き -社員女子寮篇-」(脚本:笠原克三/主演:上杉愛奈)。今後ぼちぼち探して行けば更に遡る球太デビュー作が出て来る可能性も否定出来ないともいへ、とまれ今回使用したアナ変を、微調整復活させたものではなからうかと思はれる。
 さて本丸に陣を進めると、女限定秘密パーティー参加者のいはゆる体験告白といふ形で濡れ場をつらつら連ねた上で、パーティー主催者が記者に取材を許した条件といふのが、衆人環視の下自身と一戦交へること。さういふ次第でオッ始まつたリョーコV.S.記者戦にギャラリーが次第に盛り上がり始め、藪蛇に突入する男一人女十二人からなる大乱交が、新旧公開題を偽らぬ感動は別にしないけれども豪快なラスト。度肝を抜かれたのが、しかもハズレの居ないその他大勢含め、その場の女達が全員脱ぐのが圧巻の壮観。かといつて、そもそも男女の人数比が全く不均衡であるのも禍し、脱いだはいいけどアタシは誰と何をしたらいいの?風にただでさへ一時間に四分半残した尺すら、漫然と持て余した感は否めない。何が如何に転んで擁した闇雲な大軍勢なのかは知らない―jmdbによると公開が十二月なので、もしかすると正月映画なのかも―が、粒は十二分に揃つてゐるだけに集めた面子で普通に四本撮ればいいやうな、女優部の無駄遣ひが清々しく勿体ない。何処からでも点が取れるどころか、島崎里美と高原ルミに至つては三割三十本三十盗塁のトリプルスリー級だ。


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 「密室凌辱18人」(昭和60/製作:日本シネマ/配給:新東宝映画/監督:新田栄/脚本:中良江/企画:伊能竜/撮影:国立二郎/照明:ライトハウス/編集:酒井正次/助監督:岩永俊明/音楽:レインボー・サウンド/効果:中村企画/録音:銀座サウンド/現像:ハイラボセンター/スチール:津田一郎/出演:早乙女宏美・姫川京子・相原ユミ・高橋樹里・久須美欽一・山倉峻・水戸康之・岡柳太郎・滝川昌良)。
 懐中電灯で足元を照らしながらの、白いハイヒールの夜道。家が見え、安堵した姫川京子が灯りを落とすや、何者かの足音が。家が見えたにしては暫しの追跡劇の末、姫川京子が襲撃されたタイミングでタイトル・イン、タイトルバックは在りものの緊縛写真。姫川京子が連れ込まれたのは何処ぞの物置、新田栄の的確なカット割り込みで滝川昌良が手際よく縛り上げると、姫川京子は失禁。したといふのは、全部で十八人をレイプしたと豪語する強姦魔・清原純一(滝川)の、刑事A(久須美)に対する七人目の供述内容。パクられてんのかよといふのは、確かな手応へのズッコケ処。順々に十八人分の武勇伝を嬉々と話す清原に対し、警察が受理した被害届は二件だけ。清原が提供する、結構詳細な個人情報に基き刑事B(山倉)が接触を試みた―清原いはく犯した―女達は何れも口を噤み、お縄を頂戴したのも棚に上げ妙に得意満面な清原とは対照的に、久須りんと山倉刑事は手詰まつた捜査と、清原の相手に往生する。
 配役残り高橋樹里は、八人目の人妻・弥生、水戸康之が昼間から夫婦生活の最中の旦那。清原が忍び込んだ上薬で二人とも眠らせ凶行に及ぶ現場が、今もナベシネマを中心に御馴染の南酒々井のハウススタジオ、一体何時からある物件なんだ。結構可愛くてオッパイも大きい相原ユミは、十四人目の城南大学付属高女子高生・小倉マユコ、岡柳太郎がカーセックス中に襲はれるマユコの彼氏・シンゴ。そして早乙女宏美が、予想通りの性癖を持つ人妻・池田麻美。
 異常に詳細なウィキ―但し記述はあちこち正確とは限らない―が軽く狂気じみて映らなくもない、新田栄昭和60年第十作。「密室凌辱18人」といふのは2007年に発売されたDVD題で、元題は「緊縛 縄の陶酔」とのこと。更に今度はjmdbに行つてみると、新田栄の昭和60年が全十八作といふ闇雲さに圧倒に近い感興を覚える。量産型娯楽映画が、実際に量産された麗しき時代よとロマンを酌めば済む話でもなく、シンプルに体力的にも大概しんどかつたのではなからうか。ところで映画の中身に話を戻すと、あくまで十八といふ人数は裏が取れない以上、刑事ABも半信半疑の清原が拡げた風呂敷に過ぎず、現に野球チーム二つ分の大軍勢が投入される訳ではないのはある意味仕方もない。それにしても何でまたわざわざ今世紀に及んでDVD化されたのだか、一体新東宝が今作のリリースで何をフィーチャーしようとしたのか清々しく解せない平板な出来栄えの一作。始終は概ねも何も終始、濡れ場と取調べ室とを単調に往復。津田篤の劣化レプリカ程度の滝川昌良を逆の意味での筆頭に、俳優部もそれなりに脆弱、三十年の歳月に耐え得る強度には乏しい。初恋相手に裏切られて以来清原が拗らせた憎悪が、早乙女宏美登場の時点で見え見えのオチに呑み込まれ―かけ―る展開は一瞬物語的な深化を覗かせたものの、結局綺麗に等閑視し通り過ぎたところで万事休す。刑事ドラマ風に表面上の体裁だけあつらへた心ないラストが、隙間風のやうに吹き抜ける。


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 「痴漢電車 悶絶!裏夢いぢり」(2015/制作:VOID FILMS/提供:オーピー映画/脚本・監督:山内大輔/特殊メイク・造形:土肥良成/撮影監督:田宮健彦/録音:大塚学/音楽:T&K Project、他一者/助監督:江尻大/制作:ワダミサ/編集:山内大輔/エキストラ?:鎌田軍団・加藤義一、他一名・江尻大/仕上げ:東映ラボ・テック《株》/出演:朝倉ことみ・涼川絢香・麻宮涼子・瀬戸友里亜・和田光沙・野村貴浩・川瀬陽太)。見知らぬ名前と情報量とに爆死する。
 鮮血滴るVOID FILMSのロゴに続いて、“朝倉ことみ第一回主演作品”。御馴染南酒々井の、薄暗い台所。左目の眼帯も痛々しい八木澤ユリ子(朝倉)の、DV被害を高校時代の親友・芝原か柴原麻里(涼川)が積極的に慮る。暴力の痕跡が残る内にとユリ子の生傷の写メも撮つた麻里が、公的機関のカウンセラーか警察に通報でもするのかと思ひきや、麻里はこれ見よがしな新興宗教「希望の輪」の城南支部地域リーダーで、ユリ子を訪ねたのは要は人の弱みに乗じた勧誘なり布教に過ぎなかつた。結婚前は明るかつたのに変つたとユリ子を評した麻里が辞した後、ユリ子は変つたのはアンタだよと毒づく。電車で移動する麻里は、スーツ姿なのにアウトサイダー感を爆裂させる吉井(川瀬)の痴漢を被弾。吉井が自宅まで尾けた麻里を強盗がてら犯すのと、ユリ子が夫・貴男(野村)に虐げられる夫婦生活が並走。吉井も吉井で、苛烈な家庭内暴力の末に妊娠した―させられた―子供を無断で堕胎した妻・路子(和田)を、激昂のあまり絞め殺した過去があつた。麻里のスマホで得た情報を下に吉井が八木澤家に侵入してみると、荒んだ寝室にユリ子が鎖で監禁されてゐた。吉井が財布を持たされないユリ子をとりあへず凌辱、したかと思ふと簡素な食事を摂らせ何となく距離を近づけもする中、貴男が帰宅。吉井は手慣れた戦闘力で貴男を圧倒すると、結束バンドで動けなくした上でクレジットカードを奪取、ヒットが済むやアウェイする。一方、拘束を解くために鎖の鍵の在り処を聞き出したユリ子は、吉井が殴打するのに使用したマナ板で嫌な断末魔を遺す貴男に止めを刺し、自宅を脱出する。
 配役残り麻宮涼子は、例によつて強盗―と強姦―相手を物色する吉井の電車痴漢を、受け容れる熟女痴女・和子。問題が、吉井の劇中現在時制四人目の被害者・絵麻役の、池島ゆたか2014年第一作「紅い発情 魔性の香り」以来ピンク第二戦となる瀬戸友里亜。単に奪ふに止(とど)まらず、藪から棒に惨たらしく絞殺され損なふ―だけの―役所はそもそも出番自体が結構以上に短く、折角見せるオッパイも端的に脱ぎ損。目出度い新春祝儀の増員にしては、無駄遣ひぶりが甚だしい。主演から四番手といふ垂直落下式のビリングに加へた、両義的に無体な扱ひに思はず胸が痛む。それは兎も角さうなると吉井は名ありの女優部を全員犯るか殺つてゐる次第で、正しく鬼畜ぶりがグルッと一周して清々しくなくもない。その他識別可能なのは加藤義一が麻里痴漢時の乗客要員、鎌田一利は二度目に出所した吉井がある意味微笑ましげに見やる、据膳を喰つたつもりで和子に喰はれるオッサン。この、変らない日常を表す鎌田一利のポジションが、別に痴漢電車である必要が限りなく希薄な今作を、徳俵一杯で踏み止まらせる。江尻大は、死んでゐなかつた絵麻の優しい旦那。登場順でいふと加藤義一と鎌田一利の間に入る、キレた仮面三人組は一人の声が江尻大であるのと、女は和田光沙に思へなくもないけれど、仮面の下の演者は特定不能。あぶ刑事よりもあぶない造形の、港湾署刑事二人連れも判らない。
 山内大輔2015年第一作は―撮影順は違ふらしいが―デジタル・オーピー第一弾にして、栄えある大蔵恒例正月痴漢電車。映画の中身に入る前に、とりあへず外見から。開巻の台所から既に大概だつたが、八木澤家寝室が吉井とユリ子がミーツする重要な舞台であるにも関わらず、まあ見事に暗い。それでも歴史的な暗さで塗り潰された漆黒の狂作「ビデオガール 夢中女人」(1991/監督:市村譲/原案:桜井文昭/脚本:夢野春雄)よりはまだマシかともいへ、安普請デジタル映写の限界にも阻まれ、一応消化する一濡れ場さへ殆ど見えない。素人がおこがましい聞いた口を叩くやうだが、もしも仮に万が一御存知ないやうだと今後も頭を抱へ続ける羽目になるゆゑ、憚りながら吐いておく。自分達が初号で観てゐるのと、実際に小屋で上映されるものとは別だ、これは録音レベルに関しても同じことがいへる。かつての“エクセスの黒い彗星”松岡邦彦映画の、ドス黒い作品世界とは対照的にノッペリと明る過ぎるきらひが目についた平板な画面も、それはそれとしてそれなりの深謀遠慮の結果であつたのかも知れない。
 映画の中身に話を戻すと、地獄の底で出会つた別の鬼に、救はれる女の物語。何はともあれ、吉井がテント生活を送る荒涼とした臨海工業地帯の風景に、その手のロケーションで無類の強さを発揮する川瀬陽太を放り込んでのショットが全弾一撃必殺。朝倉ことみも追随し、憤怒と絶望の果てに紙一重を突き抜けた如何とも形容し難いエモーションは、女の裸さへ何時しか何処吹く風に凄まじく見応へがある。正直リユニオンの仕方には工夫を欠きつつ、偶さか且つ甚だ不安定な、逆説的な平安を吉井がユリ子とそしてヨシコと得る展開にも、この映画がこのまゝ終る訳がないと屈折したスリリングに震へた。尤も、続く飛び道具三連撃で急旋回のメガホンを切る終盤が、徒花であれよしんば毒花であれ大輪を咲かせ、るには残念ながら至らず。浴びた血が黒く変色した翼をそれでも力強く羽ばたきかけた映画が最終的には、山内大輔らしいといへばいへるにせよ、単なるバッド・テイストの羅列に収束してしまつた印象は否めない。地獄の底をも踏み抜いた吉井が辿り着いた地平が、何度と見覚えのあるやうな悪夢といふのでは、拍子は抜けれどカタルシスは貫けぬ。ビックリ箱に驚くのは精々最初の一度目かそれを忘れた二度目くらゐまでで、毎度毎度同じ仕掛けのビックリ箱に仰天せよといふのは、それは流石に相談が通らない。結局、ラストに際してロケーションの威力を放棄した戦略にも疑問は残る。何れにせよ、賑々しいダーイダーンエーンな娯楽映画の対極に位置する、ダークでハードでマッドな横紙破りが新年早々観る映画かとの疑問は、決して為にする与太でもあるまい。“明るく楽しい”売りはとうに放棄したのか、事ここに及んでの攻めの姿勢も確かに酌めなくはないものの、大蔵も正月ばかりはもう少し保守的であつていいのではなからうか。


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 「女子大生 下半身淫行飼育」(1994『超変態 女体肉実験』の1998年旧作改題版/企画:サン企画/製作:Gプロダクション/配給:大蔵映画/監督:市村譲/脚本:夢野春雄/撮影:倉田昇/撮影助手:太田竜/照明:堀川春峰/助監督:丸山実/スチール:巴絵/録音:銀座サウンド/音楽:東京スクリーンサービス/編集:酒井編集室/効果:ダイナマイト/現像:東映化学《株》/出演:西野奈々美・麻生雪・吉行由美・辻斬かれん・森川美穂・野上正義・神戸顕一・樹かず・平岡彦・石津雅之)。
 大学で絵画を学ぶ斎藤早紀(西野)が画材を抱へて出撃し、役名併記の出演者クレジットが並走する。建物をスケッチする早紀の前を、これはパンツスタイルのドレス?ティアラも装着した、結構素頓狂な扮装の麻生雪が通過するストップ・モーションにタイトル・イン。絵を描く早紀の姿を麻生雪が遠目に注視するのは、早紀の認識で五日目。逆に早紀が尾けてみた麻生雪は、西村脳神経科病院の表で消失する!おいおいおい大丈夫かこの映画、と草を生やす暇も与へず、カット跨ぐと樹かずの声で西村脳神経科病院にようこそ。何故か全裸で寝かされた早紀が、瓶詰の胎児だとか如何にもな小道具も繰り出しつつ医者(樹)に嬲られる。何といふか、パンドラの箱が開いた感が堪らない。
 ところが一転、例によつて遠い遠いロングでガミさんがホテホテ登場するや、出し抜けに振り抜かれたキ印は暫し鳴りを潜め、百弐拾円が大金であつた時代の、多少キナ臭いホームドラマがそれなりに粛々と進行する。そんなこんなで配役残り、野上正義は、絵を嗜み始めた大学教授・大沼。吉行由美アテレコの辻斬かれんは、都合が悪くなると手話で話しだす大沼邸小間使ひ・さなえ、頼むからその手話は何某かの形で訳して欲しい。森川美穂が、大沼の限りなく情婦に近い一応絵のモデル・マリア。石津雅之は、物置に毛を生やしたやうな自室にさなえが連れ込む男で、大沼の娘・葉子(麻生)の顔見せと森川美穂の濡れ場挿んで、平岡彦が早紀の乳首や観音様に電極をとりつけて何事か測定してゐるぽいものの、一体何を測定してゐるのかはサッパリ判らない西村脳神経科病院の医者其の弐。そして吉行由美が、元生保レディで保険詐欺の前科持ちといふやゝこしい経歴の、大沼の後妻・久子。その実は事故死した大沼の前妻・あや(名前しか出て来ない)の保険金を狙ふ毒婦で、神戸顕一が実際の亭主。
 1994年最終第四作で、僅か八本ばかりの市村譲最終戦。何かトチ狂つたオーピーが小屋に放り込んで来れば別だが、現状DMMのピンク映画chに、新しい弾が追加される気配はない。さて最後に触れる市村譲はといふと、これが伝説的な狂作「ビデオガール 夢中女人」(1991/原案:桜井文昭/主演?:中川みず穂)には流石に及ばないとはいへ、なかなかにマッドな一作。マッドといつてマッドさをエクストリームな娯楽に昇華した訳では別になく、ただ単にマッドな一作。ある意味といふか逆の意味でといふか、ビデオガール共々、純粋にマッドな映画とはいへる。とりあへず、暗い画も終始適度な暗さをキープする、手堅い撮影部と五枚並べてなほ穴のない強力な女優部とに支へられ、裸映画としては尋常でなく安定する。殊にガミさんと吉行由美(現:吉行由実)による夫婦生活のどエロさ加減と、五番手にして西野奈々美(a.k.a.草原すみれ)に勝るとも劣らない森川美穂の超絶プロポーションは圧巻。序盤早々に脳病院なんぞ繰り出し、順調に暗雲の立ち込める展開は、久子が入つた、あるいは久子まで揃つた大沼邸に西村で拘束されてゐた筈の早紀も当初予定通り、大沼の絵の指南役として何時の間にか入つてゐたりする辺りで、実に市村譲的なへべれけさに一旦着地する。ところが葉子の父親に対する二人称が“貴方”である、拭ひ難い違和感―そもそも親に対してさうさう二人称を使ふまい―をまさかの箆棒な力技で解消する辺りから、いよいよ猟奇的な大風呂敷が本格的にオッ拡げられる、ものかと思ひきや。最終的には脈略と緊張感を綺麗に失して煙に巻かれたラストに、一見軟着陸にも見せて実のところは墜落する。奇想を軸に右往左往した果ての支離滅裂を見るにつけ、思ふに夢野春雄が本来編まうとした、久作の匂ひ漂ふ夢と現とが混濁した世界を、市村譲が全く理解してゐなかつたのではなからうか。黙つて女の裸にオッ勃てるもよし、案の定な木端微塵に屈折した安堵を覚えるもよし。様々な愉しみ方を許すといふ意味に於いては、無下に斬つて捨てるには忍びない。


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 「愛染恭子の人妻セールスレディ ~快楽の実演~」(2000/製作・配給:新東宝映画/監督:小林悟/脚本:愛染恭子・かねださとし/原作:愛染恭子『快楽理研株式会社』より/企画:福俵満/撮影:飯岡聖英/照明:ICE&T/編集:井上和夫/録音:シネキャビン/スチール:佐藤初太郎/助監督:竹洞哲也・定城秀夫/撮影助手:岡宮裕/タイトル:ハセガワタイトル/現像:東映科学《株》/出演:愛染恭子・吉澤綾・剣幸志・茂木晃・けーすけ・ささきまこと・坂入正三・港雄一)。共同脚本のかねださとしは、いはずと知れた金田敬の平仮名表記。セカンド助監督の定城秀夫は、本篇クレジットママ、これでも読みが変らないのが凄い。
 タイトル開巻、兼愛染塾長の覚束ないモノローグ起動。結婚十年、未だ子宝に恵まれぬ小沢美智子(愛染)と夫・等(坂入)の夫婦生活。正直子作りに厭きた等は、美智子の量が多過ぎる愛液にも閉口する。事後のグジャグジャした夫婦喧嘩を経て、BAR「Riz」。前後に二人の子を負ひカウンターに入る、弟で八人の子沢山マスター・宍戸翔(剣)にくだを巻く美智子に、L字型のカウンターの画面手前から金髪の山田太郎(茂木)が声をかける。“人類を救ふ偉大な仕事”の販売部員募集とやらで、美智子が深く考へもせずに訪ねてみたのは「快楽理研株式会社」。店長改め社長の徳大寺春彦(港)曰く“全地球の将来を守るべく設立された政府の認可予定の素晴らしい会社”との快楽理研の業務内容とは、コンドームの実演訪問販売。ところでオフィスの画面左手前に、電車のドアが見切れてる。何だこれ、要は摩天楼ぢやねえかと草を生やしかけてゐると、流石は小林悟、しかも堂々と劇中そのドアを使用してみせる。徳大寺に招かれ、繰り返すが電車のドアからトップ販売部員の野村久子(吉澤)が颯爽と登場。後に抜かれる棒グラフには野村と小沢のほかに、椎名・坂口・秋山と計五つ名前が並ぶも、徳大寺の台詞ではトップとはいへセールスレディは久子と美智子の二人しかゐない模様。ともあれ、尺八でコンドームを装着するところから始まる、コンドームの作法ことゴム道を美智子は伝授される。真綿色したシクラメンよりも清しい馬鹿馬鹿しさが、紙一重をも易々と超え素晴らしい。
 配役残りささきまことは、美智子の初陣相手でリストラ主夫の佐藤耕作。サクサク抱いた美智子に―事を致すのが―二十年ぶりだと感激してみせるのは、流石に幾ら何でも振り過ぎ。けーすけは少子化の昨今避妊具を売り歩くとはけしからん、あまつさへやつてゐることは出張風俗と同じではないかと至極全うに美智子の目を覚ます、大東京大学の医学生・平賀源外。後に久子が、シレッと“日がな”と呼ぶカットあり。塾長に乱暴に真性を剥かれたけーすけが奇声を上げながらいはゆる変顔を作る十八番を、東から上つた日が西に沈むかの如く披露する。源外が検査する等の精子役のモジモジくんが、定石だと竹洞哲也と城定秀夫ではなからうかと思はれつつ、チャカチャカ動き画も遠く視認不能。若干名見切れるRizの客要員にも手も足も出ないが、オーラスの声しか聞かせない入浴中の男は、大御大御当人のやうな気がする。
 小林悟2000年ピンク第四作は、大御大×塾長第二戦。最終的に何時何処で誰の映画に出ても、愛染恭子は相変らずな愛染恭子でしかないマキシマムによくいへばワン・アンド・オンリーさは爆裂し、そんな塾長が客とセックスしながらコンドームを売り歩くといふ物語自体が、抜けた底の落下速度を加速する。脇に控へるのも御馴染港雄一とサカショーと来れば、自ずと更に一層大御大な大御大仕事かと、一見思ひきや。名前で映画を見る悪弊に染まるやうで若干恐縮でもあるが、金田敬が一枚噛んでゐるのは恐らく伊達ではないらしく、開巻の濡れ場から度重ねて投げた伏線で大概な力技にも見え、案外周到に始終を畳み込む作劇は矢張り平素の大御大映画とも塾長映画とも一線を画する。無人の“旧”快楽理研事務所に漂ふ祭りは終つた感は予想外の抒情を叩き込み、裸映画的には何はともあれ、塾長に食傷したところで飛び込んで来る、吉澤綾の超絶美身のオアシスぶりが素晴らしい。となると何か?愛染恭子の裸は砂漠かよ(´・ω・`)


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