真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「巨乳レイプ 強制パイズリ」(1997/製作・配給:大蔵映画/監督:小林悟/脚本:五代暁子/撮影:柳田友貴/照明:矢竹正知/編集:フィルムクラフト/助監督:掘一/スチール:佐藤初太郎/タイトル:ハセガワプロ/録音:シネキャビン/現像:東映化学㈱/出演:細川しのぶ・風間恭子・白都翔一・坂入正三・港雄一・田村ちなみ)。助監督の掘一は本篇クレジットまゝ、あんまりだろ。
 繁華街の車道を適当に十秒押さへ、カット跨ぐと画角も変つてタイトル・イン。何処かしら目的地へとセーラー服で向かふ森尾英美(ピンクでは非常に珍しい恭子名義のカザキョン)を、豹柄ボディコンのノリコ(細川)が尾ける。少し離れて細川しのぶを抜いたカメラの直前を、ザクッと横切るのが堀禎一にも見えたが、流石に特定不能。制服のまゝラブホに入つた英美は、援助交際相手の資産家・大沢栄一(港)がそはそは待つ部屋に。遺産を全部英美にとかいふ勢ひで入れ揚げる大沢を、ほかにも金蔓を握る英美は適当に捌く。所移り、「BAR LAMER」の看板が消灯。「敵は女子高生か、手強いな」、白都翔一が口火を切る。大沢に「LAMER」も持たされた愛人のノリコが、英美の登場に危機感を覚え、情夫のシンジ(白都)に相談を持ちかけたといふ寸法。小林悟にしては、序盤で物語がひとまづ成立してゐる、五代暁子に脚本を書かせたゆゑかも知れないが。風間恭子V.S.港雄一戦に続き、細川しのぶV.S.白都翔一戦もミッチリこなした上で、英美が―普通の勤め人にも全然見えないけど―OLの姉(田村)と二人暮らしするマンションの一室に、シンジは援軍を頼つた素人投稿ビデオ制作を生業とする宮田(坂入)と狙ひをつける。モジャモジャ頭がワイルドなサカショーが普通に画になるのはいいとして、劇中宮田の言葉遣ひがブレブレで、シンジとの上下関係がサッパリ判らない。
 小林悟1997年第一作は、足かけ三年、全六作のピンク戦歴となる細川しのぶにとつて第五戦。小林悟三作後の最終第六戦、「エロ教師 ONANIEづくし」(主演:大倉由貴恵)だけがDMMにも見当たらない。姉妹の強姦ビデオを撮影しつつ、シンジはノリコも売る腹を宮田には匂はせ、つつ。結局は何が何だか完全にヨリを戻したノリコと大沢が、ラブッラブで夜の街に消える無頓着なラストは、貫禄の大御大仕事といふほかない。この際結末は些末とさて措き、何はともあれ、兎にも角にも今作の白眉は何と三十三分の長丁場を堂々と撃ち抜く、たまたま一人の田村ちなみを宅急便を装ひ襲撃してからの森尾家パート。坂入正三×白都翔一の色事師コンビは攻めれば完璧、守れば鉄壁。細川しのぶが絶対爆乳で加勢しての、美人姉妹を延々凌辱し倒す中盤から終盤の大半は、ひとりづつ責め、二人一緒くたに責め。特段特殊なシークエンスを繰り出してはゐないにも関らず、退屈させるでなくエクストリームに見せきる。“大先生”柳田友貴に、監督業からは既に足を洗つたキャリア最晩年―実晩年は2003年―の矢竹正知。脊髄で折り返すと壮絶な死闘が予想されなくもない撮影部も、結構意欲的な構図に、案外いいエロい色に見せる的確な照明を当てる予想外に堅い仕事ぶりで濡れ場を加速。一山幾らに見せて、なかなか辿り着けない水準の裸映画をモノにしてゐる。

 ところで、強制にせよ任意にせよ、風間恭子なり細川しのぶがパイズリを披露する件が存在しない件。小林悟も小林悟なら、大蔵も大蔵だ、そのまゝの御題で公開せんでもええぢやろ。


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 「大阪お天気娘 半熟美尻コテ返し!」(2017/制作:加藤映像工房/提供:オーピー映画/監督:加藤義一/脚本:後藤大輔/撮影監督:創優和/編集:有馬潜/録音:小林徹哉/音楽:大場一魅/助監督:江尻大/監督助手:岡元太/撮影助手:山田弘樹/照明助手:小松麻美/スチール:本田あきら/録音所:シネキャビン/仕上げ:東映ラボ・テック/出演:神咲詩織・里見瑤子・早瀬ありす・那波隆史・小滝正大・柳東史・大潮八朗汰・牧村耕次)。
 制作の加藤映像工房クレジットが上方に逃げるや、切りイカのもんじや焼きレシピ動画が飛び込んで来る。明けてスカイツリーを遠目に覗く隅田川、主演女優が如何にも上京したて風情で、「東京か、何や間抜けな街やなあ」と紋切型の憎まれ口を一吹き。舌の根乾かぬ内に、「間抜けは私か・・・・」と独り言ちた天満南(神咲)が、欄干に上半身を埋めてタイトル・イン。レシピ動画が後々の関西風広島風各お好み含め、過去に覚えがあるのかこれが普通によく出来てゐる。最後マヨネーズで一面真白にするのは、個人的には激越に辟易する悪手ではあるのだけれど。
 休業中のもんじや焼き屋「万きゅう」、床に臥せる店主の万鉄五郎(牧村)を、息子嫁のマチ子(里見)が口述筆記、息子については遺影も完スルーされる。さういふ関係に至る顛末は清々しくスッ飛ばした上で、二人は至極日常的な流れで義理近親相姦に及び、住み込み店員の、坂井八郎(小滝)が覗く。粉物の修行時代、大阪と広島に落胤があるとかいふ鉄五郎が、その子なり孫に「万きゅう」を継がせるといひだしたのに、自分に継がせるとした口約束を反故にされた八郎が血相を変へ思はず鉄五郎の居室に乱入。クロスカウンター顔射が双方向に誤爆するのは、実にピンク映画的なシークエンス。隅田川ほとりで、亡くしたか失くしたマチ子の娘に関する伏線を蒔きつつ、ほとぼりを冷ますマチ子と八郎の前に、大阪で鉄五郎が生ませた子の孫を名乗る天満南(神咲)が現れる。
 配役残り柳東史は、南に大阪を捨てさせる一因を担ふ不倫相手・武部彰。ホテルの一室より半歩たりとて外に出ない、作中唯一の純然たる絡み要員。那波隆史は、鉄五郎が南のお好み焼きを実食してゐる超絶のタイミングで「万きゅう」に到着する、広島からやつて来た自称鉄五郎の息子・呉昌造。変名臭を爆裂させる大潮八朗汰は、呉の往きと帰りにさして印象的にでもなく交錯する労務者風の男。呉に話を戻すと、広島弁自体がへべれけな以前に、普通に喋らせるデフォルトで正体不明の訛のある那波隆史に、方言を使はせるのは自殺行為だといい加減気づいたらどうなのか。早瀬ありすは、南が呉の宿に捌けた隙に、ぶぶ漬けで「万きゅう」を急襲するフロム京都の清水桃子。主がリタイアした「万きゅう」の敷居を、続々と各地のストレンジャーが上手い具合に跨ぐ方便に関しては、マチ子によるSNS拡散の一点突破で片付けられる。ところで神咲詩織は、ともに二年前で脚本は当方ボーカル(=小松公典)の小山悟単独第一作「ドM卒業 さよなら、ご主人様」(主演:佐山愛)・第二作「果てなき欲望 監禁シェアハウス」(主演)に続くピンク第三戦、加藤組次々作へとキャリア継続中。早瀬ありすは「桃木屋旅館騒動記」(2014/監督・脚本・編集:城定夫=城定秀夫/主演:西野翔)を覚えてゐなかつたが、今作を観ても思ひださなかつた。
 2007年第四作「浪花ノーパン娘 -我慢でけへん-」(脚本:岡輝男/主演:岡本優希)の如く関西ロケに出張るものかと思ひきや、舞台をもんじや焼き屋に設定し東京に留まる加藤義一2017年第一作。深澤浩子は三本で諦めたのか、前作に引き続き後藤大輔脚本となる割に、次作以降は性懲りもなく筆鬼一名義の鎌田一利と組んでゐたりもする。竹洞哲也も竹洞哲也なら、加藤義一も加藤義一でこの辺りどうにも厳しい。
 映画の中身に話を戻すと、一応後藤大輔らしい周到な力技が決まりはするものの、賑々しく大団円が完成するほどのカタルシスには遠い。鉄の裁断で鮮やかに退場処理したものかと思はせた三番手が、八郎の救済込みで美味しいところをカッ浚つて行くまさかの復活劇が作劇上唯一の見所。にしても、所詮は枝葉に過ぎぬことは論を俟つまい。プラスへの色気が芳しくない方向に転んでか、竹洞哲也なり加藤義一に中途半端に、あるいは中途半端な物語に拘泥する代償として、濡れ場さへもが疎かとなり万事休する傾向が否めない。田中康文は移籍組として一旦等閑視するにせよ、森山茂雄も完全に沈黙し、小山悟は機会を与へられず、江尻大に至つてはデビューすらしてゐない。本来ならば生え抜きの次代エース候補である筈にも関らず、仲良く燻る加藤義一と竹洞哲也を、外様の城定秀夫と山内大輔が遥か後方にブッ千切つて行く図式は如何ともし難い。いや別に、荒木太郎か国沢実がこの期に天下を獲つて呉れて全然構はないんだぜ。


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 「ノーパン添乗員 あなたを握りたい!」(2004/製作:サカエ企画/提供:Xces Film/監督:新田栄/脚本:岡輝男/企画:稲山悌二《Xces Film》/撮影:千葉幸男/照明:高原賢一/編集:酒井正次/スチール:佐藤初太郎/助監督:広瀬寛巳/音楽:レインボーサウンド/監督助手:茂木克仁/撮影助手:池宮直弘/選曲効果:梅沢身知子/録音:シネキャビン/製作進行:阿佐ヶ谷兄弟舎/現像:東映ラボ・テック/出演:Mew~ミュウ~《夏目衣織》・山口玲子・城春樹・柳東史・兵頭未来洋・丘尚輝・鏡麗子)。出演者中、目一杯盛つた主演女優の表記が、ポスターではMeWにミュウのふりがなと括弧夏目衣織。
 ガイドに耳も貸さず勝手に動く「東京グルメツアー」参加者を、「山手旅行」新宿支店のノーパン添乗員・井上みはる(Mew)が尻で掌握してタイトル・イン。ノーパン添乗員が一欠片のエクスキューズもなく初めから存在する、何て大らかな世界、底が抜けてゐるともいふ。ツアー参加者の面々はポップにピースで写真を撮られる加藤義一に、加藤義一の画面左手のイケメンが茂木克仁、右手に新田栄とニットのひろぽん。加藤義一と写真を撮つて撮られてする、サカエ企画地味に頻出の中年ナード風オッサンは全体何者なのか。
 大した物語もないゆゑサクサク配役残り、実も蓋もない。岡輝男と同一人物の丘尚輝は、山手旅行の新宿支店支店長・朝比奈陽二、みはると不倫関係にある。兵頭未来洋は新婚旅行の観光案内といふ思はぬ形での再会を果たす、みはるの元カレ・吉岡誠。鏡麗子が、水曜ドリフ―正式タイトルは「ドリフと女優の爆笑劇場」―感覚の新妻・由佳。m@stervision大哥が夏目衣織とは別撮りと踏んでをられるのが実際さうとしか見えない山口玲子は、劇中もう一人のノーパン添乗員・星川安子。柳東史は、安子が修学旅行の下見に随伴する大日高校教師・目黒幸彦。城春樹は子供宅を訪ね上京するも、邪険にされる鶴田圭造。仕方なく自力で東京見物に繰り出したはいいが道に迷つてゐたところ、干され気味にブラブラしてゐたみはると出会ふ。
 駅前ロマンか故福岡オークラで観てゐておかしくない筈にも関らず、清々しく初見の印象の新田栄2004年第二作は、二年後の復帰から改めて本格参戦するミュウのピンク映画初陣。この御方、AV女優のプロダクションを起業し目下も活躍中ではありつつ、何時頃か失念した数年前にはピンクに対する激越な呪詛を、腹が立つ云々よりも、当人のコンディションが心配になるレベルのヒステリックさでツイッター上にて撒き散らしてゐたりもした。この時ミュウに何があつたのかといふのと、果たして派手に臍を曲げさせたのはフィルハ勢なのか竹洞哲也なのか浜野佐知なのか、それとも池島ゆたかなのか。
 映画の中身に話を戻すと、新田栄に対し過剰に辛いm@stervision大哥はにべもなく匙を投げておいでだが、主演女優から全く独立した山口玲子パートに際しては、みはるが対吉岡新婚夫婦戦にて仕出かしたため、大日高校の修学旅行セールスといふ大一番に安子を起用する。といつた塩梅に、一応最低限の方便は踏んである。寧ろ、鶴田とのミーツを通して発案した「映画ゆかりの地を巡るツアー」でみはるが失地回復するラストに際して、安子も安子で―恐らく目黒相手に―爆死した顛末が、爆死したらしき旨が朝比奈に軽く触れられるのみでスッポリ抜けてゐる、ついでに吉岡のインスタント離婚についても。それもさて措き最大の問題は、問題といふのも何だがどストレートな「東京物語」feat.「君の名は」を繰り出す鶴田篇。九年前の前科も踏まへ邪気のないシネフィルぶりに触れるに、かう見えてといふとどう見えてなのか我ながらよく判らないが、新田栄も、若い頃は面白味に欠けるほど普通の映画青年であつたのだらうか。それにつけても、ただ単にど真ん中世代と片付けてしまへばそれまでの話に過ぎないのかも知れないにせよ、ナベ池島ゆたかと来て、そして元祖「君の縄」の片岡修二。ピンク映画界に、「君の名は」好きが何気に散見される件。

 ミュウに闇を植ゑつけた元凶に関して、そもそもの新田栄を忘れてた。


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 「レンタル女子大生 肉欲延滞中」(2017/制作:Blue Forest Film/提供:オーピー映画/監督:竹洞哲也/脚本:当方ボーカル/撮影監督:創優和/録音:山口勉/編集:目見田健/音楽:與語一平/整音:高島良太/助監督:江尻大/監督助手:市原博文/照明助手:小松麻美/スチール:阿部真也/仕上げ:東映ラボ・テック/出演:彩城ゆりな・酒井あずさ・櫻井拓也・イワヤケンジ・森羅万象・吉田俊大・友田彩也香)。照明助手の小松麻美が、地味に竹洞哲也2014年第一作「痴漢電車 いけない夢旅行」(脚本:小松公典/主演:辰巳ゆい)ぶりの中復帰。
 拍子抜けするくらゐアッサリしたタイトル開巻、居酒屋にて、何某かの撮影中。カメラを向けられる側の中岡有希(彩城)に、仕事終りの五島幸一(イワヤ)が合流、愛称テルこと池田輝雄の話から始まる。同じゼミ生で就職活動に爆死し大絶賛引きこもるテル(櫻井)を、何気に想ひを寄せぬでもない有希が案じて訪ねる。別に下級生で問題はないが、有希の進路に関しては等閑視される。何だかんだの末、社会に必要とされないのならひとまづ個人からと、有希はサイト登録制の緩い何でも屋「自分レンタル」にテルを誘ふ。製薬会社部長の五島は、あるいは五島も、自分レンタルを介したテルとの出会ひを通して、自らも自分レンタルを始めた口。ところでしかも役職つきが、その会社は副業を認めてゐるのか。おひとりさまウェディングが趣味のOL・新倉美和子(友田)に新郎役で呼ばれて以来、気に入られ重用されるテルが、美和子に入れ揚げる様子に有希はやきもきする。
 配役残り、自分レンタルのイントロダクションに背中だけ見せるのは当方ボーカル当人の小松公典。酒井あずさは、五島の妻・蓮。闇雲に重い役所で、普段はあまりでなく意識させない端正さを際立たせる森羅万象は、起承転結の転部要を担ふ自分レンタル顧客・福田治郎。吉田俊大は、テルを撃墜し有希を内心喜ばせる、美和子の恋人・陣内貴志。その他、右手から彩城ゆりなを抜いた居酒屋の奥に見切れる客が二組。中盤の周磨要と東京JOEには辿り着けるとして、序盤の異常に美人の二人連れが激しく判らない。あと、クライマックスにヒムセルフで飛び込んで来るのは阿部真也。
 “レンタル”の文言から脊髄で折り返して想起した、山内大輔2006年第三作「レンタルお姉さん 欲望家政婦」(主演:姫川りな)には特にも何も全く掠りもしなかつた、竹洞哲也2017年第一作。「サイコウノバカヤロウ」とかいふ仮題ばりにダサいタイトルで、OPP+ver.も公開されてゐる。外堀から埋めて行くと主演の彩城ゆりなは、松岡邦彦のデジエク第五弾「女と女のラブゲーム 男達を犯せ!」(2014/脚本:今西守/主演:水希杏)と、渡邊元嗣2015年第三作「愛Robot したたる淫行知能」(脚本:山崎浩治)に続くピンク三戦目。入れ替り立ち替り時々のAVアイドルが通り過ぎて行つてゐるやうにも見えて、案外息が長い人もゐれば、途方もなく長い人もゐたりするのが、歴史の名に値するだけの年月を積み重ねた量産型娯楽映画たる、ピンク映画の面白さ。
 それは、さて措き。終始撮影中の何某かの正体が、ピシャッと撮影者込みでラストに明らかとなる構成は酌める。今年は薔薇族や伊豆映画にまで出まくる櫻井拓也は昔日の―あへて断じるならば“戦犯”―久保田泰也の完全上位互換で、俳優部にも穴はない。画期的な濡れ場の僅かさに関しては、オーピーが初めからプラスありきで考へてゐる以上、最早一観客風情がどうかういふてもせんない、にせよ。一応有希起点のテルとのラブ・ストーリーといふ全篇を貫く主軸、覚束なさを加味するとチュ軸もなくはないとはいへ、最後まで観通してみると、退屈はしないばかりの尺が淡々と過ぎて行く始終には、呆れるほどの疑問も残らない。女の裸がなければ、強固な物語も燃えるやうなエモーションも、挙句にツッコミ処さへない。どうしたものか、どうしたいのか。本当に日本一短い手紙で猛然と一撃必殺を狙ひに来て現に見事モノにしてみせた、気概なり体力はもうこのコンビには残されてゐないのであらうか。


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 「馬小舎の未亡人 異常興奮」(1997『馬と未亡人芸者』の2003年旧作改題版/製作:サカエ企画/提供:Xces Film/監督:新田栄/脚本:岡輝男/企画:稲山悌二《エクセス》/撮影:千葉幸男/照明:高原賢一/編集:酒井正次/助監督:加藤義一/音楽:レインボーサウンド/監督助手:北村隆/撮影助手:池宮直弘/照明助手:田村崇/効果:中村半次郎/録音:シネ・キャビン/現像:東映化学/出演:速水千佳・しのざきさとみ・杉原みさお・久須美欽一・杉本まこと・丘尚輝・ビッグセイコー号《牡》8才)。ポスターは異常興奮にハイフンつきで、ビッグセイコー号の表記がビッグセイコー号《8才牡馬》。
 三味鳴る何処ぞの温泉旅館の一室、マザーならぬファザー牧場の誘致を目論む町長の不破(久須美)と、不破がファザー牧場関係者の接待、要は色仕掛け要員に招聘した未亡人芸者―不破曰くには枕芸者―の駒奴(速水千佳/九十年代中盤作でしばしば聞き覚えのあるアテレコ)。不破が駒奴を机に座らせ、何でも呑み込むとの観音様を検分してタイトル・イン。遺影のひとつ抜かれるでなく、駒奴の寡婦属性には過積載のタグづけといふ以外に、殆ど意味はない。
 不破がファザー牧場専務・京極(杉本)をもてなす座敷に、駒奴が上がる。軽く顔見せした上で、駒奴は一旦風呂に。エクセスライク迸る主演女優が、悠木あずみを更に縦に延ばしたやうなある意味綺麗な三日月顔ながら、手足は案外長くプロポーションは悪くない、トランジスタグラマなオッパイは詰め物だけど。駒奴が湯を浴びる間に、不破が京極の気分を盛り上げようと取り出したVHSの中身が、馬の交尾。目を白黒させる杉本まことのリアクションが、久須りんに対するこのオッサンは何を仕出かしやがるんだといふ観客のツッコミを代弁する。とまれ駒奴と京極の一戦、実は京極は相手を見つけるのに窮するほどの度外れた逸物の持ち主であつたのだが、だから何でも呑み込むらしい駒奴にはキッツキツで辛うじてフィットする。客でしかない京極に恋心を懐き始めた駒奴がぼんやり歩いてゐると、東京から『馬の生殖器の働きと機構に関する考察』―そこは“機能と機構”とかにならないか?―なるレポートの仕上げに当地を訪れた女子大生(杉原)が、お馬さん(ビッグセイコー号)の精液を採取するのに、わざわざ半裸にまでなり尺八をも吹く現場を目撃する。ビッグセイコー号の大巨根に、駒奴も心奪はれる。ところでビッグセイコー号は原野の中適当に繋がれてゐて、どんな掘立であれ馬小舎は登場しない。実に、エクセスだなあ。
 配役残り、丘尚輝が駒奴に向ける憧れの眼差しにも特に意味はない宿の番頭で、しのざきさとみが女将。杉原みさおの濡れ場はマッサージに呼ばれた番頭―何故番頭がマッサージに出張るのか?といふ疑問を持つのは禁物だ―が、何だかんだそのまゝ喰ふ形で、しのざきさとみのは女将が浸かる展望風呂に不破が現れての、悪代官と越後屋的に消化する。その他駒奴の蛤芸に拍手喝采する助平客に加藤義一と、もう一人。
 再び何のものの弾みかこの期に及んで小屋に飛び込んで来て呉れた、DMMでも見られない新田栄1997年最終第七作。2012年十月には1996年第四作「痴漢と覗き 未亡人と猫」、の2005年新版「四十路未亡人と猫 ねぶり責め」(脚本:岡輝男/主演:秋山ルナ)と、2003年第六作「黒犬と和服未亡人」の2010年新版「犬と後家さん -腰巻の中で-」(脚本:岡輝男/主演:高岡愛)と今作の三本立てで、「驚異の世界!新田栄のアニマル・セックス大会」なる今でいふパワーワード感爆裂する豪快な番組を組んでみせた新世界日活(大阪)は、2015年九月末に閉館、今はもうない。
 人間同士の絡みで新田栄らしいアクロバットな体位を結構貪欲に披露するほかは、お馬さんもの的にはお馬さんの御馬様に女優部が出来ることなど高が知れてゐる以上、特にも何も画期的なシークエンスを打ち出すでなく。駒奴のベクトルもビッグセイコー号よりも矢張りといふか何といふか、兎も角京極に向き、展開の主軸は取つてつけたが如き駒奴と京極の恋路が担ふ。正直お馬さんといふ飛び道具を有したことに胡坐をかいたといふ誹りも免れ得まい、常日頃に劣るとも勝らない薄いのも通り越しスッカスカの物語を兎に角通過した果てに、お約束の全裸乗馬ショットで締めてはみせるラストを前に、よしんば―個人的には理解に遠いが―観客の動員力はあつたにせよ、馬系の獣姦ピンクに何か一本でもマトモに面白い映画があつたのかと、今更にもほどがある根本的な疑問が胸中に去来する。

 付記< わざわざDMMでタマキュー(珠瑠美旧作の意)を見た怪我の功名で、漸く改めて確認した。主演女優アテレコの主は仲山みゆき、仲山みゆきが、自分でアフレコしたことが一度もないのでなければ


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 「新任女教師 しごいてあげる」(1990『課外授業 いかせて上げる』の、これはVHS題?/企画・制作:プロダクション鷹/配給:新東宝映画/監督:珠瑠美/脚本:目黒和男/撮影:伊東英男/照明:沖茂/音楽:MGB/美術:衣恭介/効果:協立音響/編集:竹村峻司/助監督:近藤英総/現像:東映化学工業株式会社/録音:ニューメグロスタジオ/出演:牧村耕治・嘉見力・朝田淳史・山口和幸・一の瀬まみ・仲山みゆき・森みなみ・渡辺奈智子)。男優部が先行する謎ビリングは、本篇ママ。jmdbはおろか新東宝公式をも元題を「課外授業 いかせて上げる」としてゐるが、“いかせて上げる”といふのは流石におかしくはないか。美術の衣恭介は、木俣堯喬の変名。
 南ヶ丘高等学校校舎夜景、教師の芦田郁子(一の瀬)がプロレス風の覆面で顔を隠した二人組に、地下の体育用具室に放り込まれてタイトル・イン。各々性器の模型も駆使しての二人がかりの輪姦、水鳥川彩と一の樹愛を足して二で割る数式を完成させる、一の瀬まみの時代に埋もれた逸材ぶりにこの期に及んで垂涎する。レイプされた旨の夫への告白を決意した郁子が帰宅すると、夫は家庭教師先に出てゐた。夫の一郎(牧村)が教職をドロップアウトしたゆゑ、仕方なく専業主婦志望の郁子が定時制高の教師に復職したものだつた。
 配役残り朝田淳史は、出し抜けに勃発する性犯罪を仕出かした生徒(当人は出て来ない)について、郁子に話を聞く刑事。渡辺奈智子が絞殺されて失禁する憐れな被害者なのだが、どうも木に竹を接いで挿入される登場場面はバンク臭い気がする。仲山みゆきは一郎の浮気相手、仲山みゆきの出演作になかなか辿り着けないでゐて、九十年代のアテレコ女王がこの人であるのを改めて確認したのが、今作に触れての殆ど唯一の収穫。特定不能の嘉見力と山口和幸は、体育用具室の件で郁子に接触する生徒の井上と、井上から二万取られた上で、ラスト再び郁子を輪姦する生徒Aか。ビリング推定だと、上位の嘉見力が井上。森みなみは、実は退職理由が生徒に対する暴行であつた一郎に、犯された生徒。
 日々の糧を食むための雑業がクッソ忙しい、苛立ち紛れに見てみた珠瑠美1990年第一作、自棄なのか?と、したところが。負け戦を予想以上だか以下に爆砕してみせるのが、大御大関良平に劣るとも勝らない珠瑠美といふ名の破壊王。一郎と仲山みゆきの関係性が不鮮明で混濁しかけた物語といふほどでは全くないへべれけな始終を、藪蛇に勿体ぶつた謎説明で本当に意味が判らない姦計を挙句御丁寧にも十重二十重に張り巡らし、完ッ全に止めを刺す。挙句郁子が正体不明のサスペンスの中右往左往する尺で、折角の、一縷の寄す処たるべき一の瀬まみの裸すら疎かになる始末。ただこの点に関しては、お話がどれだけへべれけでさへなくとも、裸映画としては最低限仕上げて来る珠瑠美にしては、下手な色気を出した結果なのか珍しいといつていへなくもない。特筆したところで、始末に負へないものが一欠片たりとて救はれる訳では無論ない。ラストの再輪姦で幾分持ち直しつつ、締めはタマルミ貫禄の官憲到着エンド。始終の決着の、投げやりな投げ放しやうがこの際清々しい、矢張り自棄なのか?これで、一の瀬まみの美巨乳を満足に拝ませてゐればまだしも立つ瀬があつたであらうに、支離滅裂な展開以外一切見所のない理不尽か不条理な徒労感のみを炸裂させる一作。そんなものが、見所になるものか。何より、最もどうかしてゐる、あるいはどうかと思ふのは。斯様なピンク映画として既に木端微塵な代物を、パケだけそれらしくあつらへるとピンクよりもより直截に煽情的であることが求められるであらう、アダルトビデオで御座いと堂々と販売してのけた新東宝の、羊頭を懸けて哺乳類ならばまだしも烏―臭みが如何ともし難く食へないらしい―を売るが如く、不誠実極まりない大概な商売に畏れ入る。


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 「寸止めスナック めす酒場」(2017/制作:関根プロダクション/提供:オーピー映画/脚本・監督:関根和美/撮影監督:創優和/助監督:加藤義一/編集:有馬潜/監督助手:小関裕次郎/撮影助手:加藤育/録音:シネキャビン/スチール:本田あきら/選曲:山田案山子/仕上げ:東映ラボ・テック/効果:東京スクリーンサービス/協力:広瀬寛巳・SHIN・周磨要・生方哲・東京JOE/出演:江波りゅう・玉城マイ・あやね遥菜・泉正太郎・津田篤・山本宗介・鎌田一利・なかみつせいじ)。
 団地外景で開巻、日曜の朝。藪蛇に新聞紙に囲まれ寝こけるフリールポライターの池山正樹(なかみつ)が、二人暮らしの娘・はるか(玉城)に叩き起こされる。正樹の妻にしてはるかの母は、既に故人、遺影も登場しない。はるかに男が出来たらしき話題でああだかうだホームドラマした上で、再びアングル変へた団地外景にタイトル・イン。画面のルックが何時もと違へて見えたのは、撮影今回創優和だつたんだ。スチールが小櫃亘弘でなく、本あきなのもその影響なのかな。
 正樹が出入りする、荒波出版。入社六年、『週刊旅の宿』から『盛り場スクープ』に自ら志願の上転属された近藤潤(泉)が発案した、「噂の美人ママ特集」なるぼんやりした企画に正樹は参加することに。近藤が当たりをつけた店はことごとく大外れ、泥酔した近藤を抱へ頭も抱へた正樹は、その場の直感で池島ゆたか映画で御馴染の、パブ「ステージ・ドアー」の敷居を跨いでみる。正樹はママ・沢田萌(江波)の濃厚な色香が一撃で琴線に触れ、近藤もホステスの篠崎佑夏(あやね)に喰ひつく。取材がてら何だかんだとステージ・ドアーに通ひ始めた正樹に、萌は閉店しようと戸締りしてゐると、パーカのフードをヒッ被つた山本宗介に待ち伏せされてゐるとの相談を持ちかける。ところで津田篤が、件の娘に出来た男こと、大蔵商事に就職し営業部に配属された、はるかの教育係・横山渉。研修対象の新入社員に手をつけサクサク寿退社させる外道、ラストで明らかとなる岡山転勤は、もしかすると懲罰の島流しか。
 配役残り、とはいへ山本宗介だけでなく鎌田一利にもネタバレせずには触れられないゆゑ正規俳優部は通り過ぎるとして、協力部は、ステージ・ドアー客要員、の筈。尤も暗めの画に厳しさが否めない我等が前田有楽の映写では、カウンター手前から抜いた奥のボックス席は闇に沈み殆ど見えず、カウンター席でも横顔を明確に見切れたのは、SHIN・周磨要・東京JOE(a.k.a.大池潤)のみ。
 前作では場外ファールで自分の車を破壊した、NSP“ニュー・関根和美's・ピンク”2017年第一作。なかみつせいじがステージ・ドアーでママの相談に乗るとなると、関根組ステド前作「和服女将の乱れ髪」(2013/主演:波多野結衣)が脊髄で折り返して脳裏に浮かぶ既視感は否応ない。正樹とはるかの父娘の物語に、女の裸の物理的総量も犠牲に尺を費やす点は今作の特徴ともいへ、はるかと横山の即席かつ直線的極まりない色恋沙汰に、捻りなり膨らみがある訳でも別にない。山宗の正体絡みで終盤火を噴く、木に軌道エレベーターを接ぐ出し抜けな魔展開は関根和美ある意味一流の底の抜けた破壊力を爆発させつつ、結局寄付する形で右から左へと華麗にスルーしてしまつては、何のための大風呂敷を通り越した超巨大風呂敷かといふ話である。寧ろ魔展開を裏返してゼロにする凄まじいクロスカウンターにこそ、関根和美が関根和美たる所以を見出すべきなのかも知れない。なかみつせいじは所々でピンの渋い画を抜いて貰へる反面、素材自体は結構な逸材にも思へるのだが、加藤義一2015年第三作「絶頂家族 愛人だらけ」(脚本:後藤大輔/主演:めぐり)、関根組前作に続きピンク三戦目の玉城マイは、役かお話に恵まれず今回も残念ながら初日は出ず。山宗はクッソ男前、無駄に男前。そんな中一際目を引いたのは、工藤雅典のデジエク第三弾「連れ込み妻 夫よりも…激しく、淫靡に。」(2014)以来の電撃大蔵上陸で、ピンク第二戦となる江波りゅう。この人こんなムンッムンに色気あつたかなと目を見張つたのは、単に積み重ねた歳月によるところなのか、あるいは終にエクセスの屋台骨になり損ねた工藤雅典と、それはそれで歴戦の関根和美とのそれなりに歴然とした地力の差なのか。
 山宗の正体< 高校時代労務者(鎌田)に強姦された萌は、財閥を所有する旧華族のタカノ家を事実上放逐。山宗は余命三ヶ月のタカノ家当主に雇はれ、唯一の遺産相続人たる萌を捜す探偵・山﨑照義   >三百億w


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 「むちむち・ぶるるん」(1991/製作:小川企画プロダクション/配給:大蔵映画/監督:小川和久/脚本:水谷一二三/撮影:伊東英男/照明:内田清/編集:フィルム・クラフト/音楽:OK企画/助監督:石崎雅幸/撮影助手:倉田昇/照明助手:佐野良介/録音:ニューメグロスタジオ/効果:協立音響/現像:東映化学/出演:高樹麗・織本かおり・井上真愉見・水鳥川彩・南野千夏・吉岡市郎・太田和幸・栗原一良・盛川水砂・姿良三・久須美欽一)。脚本の水谷一二三と、出演者中姿良三は小川和久(現:欽也)の変名。
 昭和の空気漂ふ渋い店構へのスナック「B&B」、常連客で夜勤ガードマンの北村和夫(久須美)が頻りにママの妙子(高樹)を口説くが、趣味ぢやないだ―容姿に関して―親に文句いへだと、妙子は清々しいまでの全否定ぶりでまるで取り合はない、客なのに。長椅子の上に横たはる、高樹麗の裸身にタイトル・イン。今作、めくるめく濡れ場の乱打に終始するのと、直截なところ物語物語いふほどの物語なんぞ存在しないのもあり、久須りんのトメを除きビリングに殆ど意味はない。
 嫁の公子(井上)と喧嘩してプンスカ出勤した北村と擦れ違つた太田和幸は、公子の間男だつた。一方、大学生アルバイトの藤田(栗原一良/改めていふが栗原良のバリエーションではない)が、彼女とデートだといふので申し出た中抜けを、北村は快諾。お礼にと、藤田は南米旅行の際に入手したとのペヨーテ―和名:ウバタマ―を、一回分北村に渡す。戻つて来た藤田とスイッチする格好でB&Bに出撃した北村は、トランキライザーと偽りペヨーテを妙子に飲ませてみる。してみると効果覿面、首尾よく妙子を抱き大喜びで帰還した北村に、藤田は対彼女にはもう必要なくなつたゆゑ、残り全部のペヨーテを気前よく譲る。
 配役残り、重ねていふが織本かおる(a.k.a.川上雅代)とは別人の織本かおりは、恐らく太田和幸への小遣ひで溶かした公子が、滞納した家賃の件で北村が出向く高利貸しも営む大家。久須美欽一V.S.織本かおり戦の、特に挿み込む意味も窺へないインターミッションにテレッと飛び込んで来る盛川水砂が、藤田の彼女、この二人は公園をてれてれ歩くだけ。陥落させた大家から百万をせしめた北村は、何度も、何ッ度も観るなり見た覚えのあるグレーの一張羅を新調、公子に離婚届を叩きつける以前に、仕事も辞めて来る。たかだか百万ぽつちで、北村ロックすぎるだろ。北村が安アパートを飛び出した弾みで、舞台は風景のほか場所を特定する情報を与へない、何処ぞの本格的な山中の観光地にボカーンと移動。帰郷した北村と十年ぶりに再会した吉岡市郎は同級生の現在旅館主人で、南野千夏は、かつて北村が吉市と争奪戦を繰り広げた、結果吉市の妻・レイコ。そして水鳥川彩が、混浴露天風呂にて北村が浸かり合はせる形でミーツする、TVスターの千草薫、自由闊達な棚牡丹作劇にクラクラ来る。忘れてた、姿良三は、北村の素性を千草薫に漏らす宿の番頭。貫禄の定位置にして伊豆映画の萌芽かとも思へたが、調べてみたら別に頻発してゐる訳でもなかつた。
 むちむち・ぶるるん、公開題のダイナマイトさ―逆にシナリオ題は何だつたのだらう―に脱帽してバラ売りDMMに手を出した、和久名義の今上御大・小川欽也1991年第七作。jmdbにはBではなくPの「むちむち・ぷるるん」とあるが、本篇にインするタイトルに準拠するならば、あくまでぶるるんである。jmdbついでに、小川欽也にはむちむちがもう一本あり、和久名義といふ以外何もかも不明な、昭和62年最終第十一作「むちむち 絶品の女」。
 うだつの上がらない中年男が、エロ本の通販感覚でどんな女でもイチコロの媚薬を手に入れる。底の抜けた展開とはいへ、久須美欽一が絶妙なバランス感覚で飄々とウハウハしながら駆け抜ける怠惰なファンタジーは、よしんばどれだけ過大評価したとてそれなりにしか過ぎなくとも、それはそれでそれとして量産型裸映画のひとつの王道にも、一旦は思へた。ところが結構足を延ばした地方ロケ・パートに突入するや、抜いた底を更に粉ッ々に砕かんばかりに、まるで違ふ話にフルモデルチェンジしてのけるフリーダムさは、起承転結の転どころではない。転で三尺玉の如く弾けた始終が、満足に結ばれる筋合にもなく。井上真愉見の豪快な痴態で逃げる自慰エンドは、絶妙な救ひのなさが別の意味でモヤモヤしたものを残す。それもこれも最早さて措き、もしくはそもそも。お盆映画でもないのに―七月末封切り―脱ぎあり女優部豪華五人態勢の中に、殊更むちむち要員もぶるるん班も見当たらない点については、この際立ち止まらずに駆け抜けるんだ。

 付記< バラ売りで見た直後に、今作が月額動画に新着するのを知り軽く呆然とする。まあいいんだけどさ(´・ω・`)


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 「新・実録をんな鑑別所 -恋獄-」(昭和51/製作:日活株式会社/監督:小原宏裕/脚本:神波史男・松下幹夫/プロデューサー:海野義幸/撮影:安藤庄平/照明:新川真/録音:神保小四郎/美術:菊川芳江/編集:鈴木晄/助監督:鴨田好史/色彩計測:関寿之/製作担当者:天野勝正/現像:東洋現像所/音楽:ダウンタウン ブギウギ・バンド/主題歌:『煉獄ブルース』作詞:清水哲男・作曲:宇崎竜童・唄:宇崎竜童/出演:梢ひとみ・山科ゆり・丘奈保美・南ゆき・佐原京子・南黎・宮崎あすか・長弘・谷本一・川村久志・溝口拳・しば早苗・橘田良江・結城マミ・榊原あい・森京子・小川奈津子・小見山玉樹・菅原義男/刺青:河野光揚)。出演者中、佐原京子としば早苗以降は本篇クレジットのみ。逆にポスターにのみ牧れいかの名前が載るのだが、これは即ち、牧れいかは役者名でなく役名をクレジットしてしまつた、ある意味量産型娯楽映画らしいといつていへなくもない豪快なお茶目さん。各種資料に見られる企画の奥村幸士が、例によつて本篇クレジットには見当たらず。クレジットはスッ飛ばす配給に関しては、事実上“提供:Xces Film”。
 ジングルベル流れる雑踏に、コートの前で腕を組み歩く主演女優、クレジットが先行する。険しい顔マンションの表に立ち止まる、懐には物騒なドス。北条真弓(梢)が子をも宿した恋人の元木登(谷本)には、闇雲に腹に般若、背には菩薩を彫つた佐原京子(牧)といふ女が、どうやら真弓よりも先に既にゐた。京子を抱く元木の部屋に侵入した真弓は、ドスを抜き京子を背腹それぞれ一閃の二太刀で斥け、元木の脇腹を深々と貫いてタイトル・イン。タイトルに僅かに先行して起動、何故か“煉獄の”の“の”抜きでクレジットされる主題歌は、元々は後述する第一作のために書き下ろされたもの。
 護送中拘束された両手で自ら腹を乱打し流産した真弓は、担ぎ込まれるやうな形で武蔵野鑑別所に入る。正真正銘の刃傷沙汰を仕出かして来たにしては、真弓は優等生を集めた31号房に入れられる。といつて31号房の女学校的空気に真弓が馴染む素振りをサラッサラ見せない中、31号房と、逆に札つきを集めた13号房とが衝突、13号房のボス・大野芳江(丘)だけが懲罰房にブチ込まれる。芳江の無事を祈りに礼拝堂に忍び込んだ、妹分で黒人ハーフの浜田ルミ(宮崎)は、電極を仕込んだ張形で杉本(溝口)が芳江を責めるのを、マジックミラー越しの隠し部屋にて楽しみながら、教官の二宮和子(南ゆき)が所長の滝岡(長)と乳繰り合ふ現場を目撃する。
 配役残り我等がコミタマこと小見山玉樹は、武蔵野鑑別所その他職員、菅原義男も同じくか。山科ゆりが31号房房長の草壁文子で、南黎が、文子とは百合香らせる仲にもある副長格の加川かおる。川村久志は、和子が文子を籠絡する出汁に使はれる、詰襟の色男・美崎次郎。しば早苗から小川奈津子までは、その他鑑別対象者と鑑別所職員要員か。幾分台詞も与へられるオバハン職員が、しば早苗なのか橘田良江なのか未だ見極められない壁は、何れ越えてみせる。更に、ここからがある意味一番重要。タイトル直後の護送車に、庄司三郎がクレジットレスで飛び込んで来る。
 小原宏裕昭和51年第一作は、三作前の前年第一作「実録をんな鑑別所 性地獄」(桃井章との共同脚本)と、その次作「続実録をんな鑑別所」(脚本:桃井章)から一作空けての、「実録をんな鑑別所」シリーズ最終第三作。主演は全て北条真弓役の梢ひとみ、なのだが。ザッと調べてみるに真弓が臭い飯を食ふに至る顛末が各々違ふゆゑ、パラレル的なシリーズ展開なのかも。
 要は鑑別所の鑑別対象者といつて、描写上一欠片の差異が考慮されるでなく、看板の毛色を少しだけ変へた女囚映画であるのは改めていふまでもあるまい。現にといふか因みにといふか、どワイルドな昭和ヒャッハー造形の溝口拳の役名が、杉本看守。いはゆる看守といふのは厳密には日本では―国家公務員である―刑務官の階級で、よしんばパッと見看守にしか見えなくとも、鑑別所で勤務するのは法務教官―か技官―である。些末はさて措き、全裸身体検査に、懲罰と称した性的拷問。少女同士の私闘大乱闘と、昼夜問はず塀の中で咲く百合。女囚映画のフォーマットを馬鹿正直に踏襲しつつ、今作がユニークなのは、良くも悪くも主人公の主体性の欠如。誰かにハメられたでなく、元木にキッチリ落とし前をつけて来た真弓にとつて、娑婆に残した未練は劇中殆ど窺へない。武蔵野鑑別所に入つてからの真弓といへば、完全に吹つ切れたかのやうに燻るばかりで、別にすることも特にやりたいことも見当たらない。始終の動因は専ら和子の愛憎と権謀術数が担ひ、動機が希薄なヒロインは精々何か事が起きてから後を追ふか、振りかゝつて来た火の粉を払ふ程度。といつた点は気づいてみると物珍しく映らぬでもないが、決して面白いといつてゐる訳ではない。なし崩し的な一斉蜂起からの、まさかの一網打尽エンドには「エーッ!」と確かに驚かされはしたものの、二撃鮮烈な印象を残す「ルナの告白 私に群がつた男たち」(脚本:佐治乾/主演:高村ルナ)の前作といふので、期待して観たほどでは全くなかつた。


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 「エロスの住人 ハメ快楽」(2001/製作:ナベシネマ/提供:オーピー映画/監督:渡邊元嗣/脚本:山崎浩治/撮影:飯岡聖英/照明:小川満/編集:酒井正次/助監督:佐藤吏/監督助手:小川隆史/撮影助手:小宮由紀夫/照明助手:石井拓也/スチール:津田一郎/録音:シネキャビン/現像:東映化学/出演:黒田詩織・しのざきさとみ・間宮結・石川雄也・熊谷孝文・十日市秀悦)。
 速水万依作『愛の嵐』のワープロ原稿越しに、少女小説家志望の速水万依(黒田)当人と、『月刊少女小説』誌編集者・高坂(石川)の一戦で開巻。二人は平常の彼女彼氏ではなく、高坂と寝たら、万依をデビューさせてやる云々の関係。事後、約束を華麗に翻し『愛の嵐』に没を出した高坂は、『月刊少女小説』誌の販売不振による『桃色少女小説』への誌面刷新と、桃少巻頭小説を官能小説界の大御所・桑畑六剣郎ならぬ六十九郎(十日市)に依頼しようとしてゐる旨を告白。要は高坂の腹としては人身御供がてら桑畑六十九郎への弟子入りを勧められた万依は、コロッと快諾。「アタシ、官能小説家を目指すは☆」、と黒田詩織がレッツらゴーしてタイトル・イン、腰よりも軽いフットワークが清々しい。
 これといふほどの物語もないゆゑ配役残り、南酒々井の津田スタもとい桑畑六十九郎の自宅兼仕事場を訪ねた高坂と万依を出迎へる、一見書生とお手伝ひの熊谷孝文としのざきさとみは、家賃まで取られて桑畑家に逗留する、エロ書房編集者の岩下周平と、『レディースぬれぬれ』誌編集者・門倉希世子。その頃な桑畑先生の執筆部屋では白衣で尺八を吹いてゐた間宮結も、『週刊びんびんマガジン』誌の編集者・岸川沙月。オーラス万依が再開する形の編集者下宿で、シェーと仰け反る三馬鹿は、佐藤吏も含まれてはをらす不明、小川隆史がこの中にゐるのかな?
 主演女優といふよりも、不器用ながら三枚目のエモーションを撃ち抜く、ことも時にある十日市秀悦を目当てに選んでみた渡邊元嗣2001年第三作。実は桑畑六十九郎の処女作『お花畑で愛を追ひかけて』は、タイトルを偽らぬゴリッゴリのお花畑メルヘン。華々しく文壇に登場した桑畑であつたが、文学賞も受賞直前、恋愛感情を持つてゐたアシスタントに売名目的で巻き起こされたセクハラ騒動を被弾。その後失意の果てと生活のために、桑畑は官能小説に転向する。それなりの展開を辿るかに思はせた、にも関らず。公開当時m@stervision大哥に撮影部の不手際を中心に酷評され、それも全くその通りなのだが、それ以前に、単純に面白くないのには百歩譲るにせよ、そもそも物語の出来が頗る芳しくない。自身の立ち位置と重ならなくもない桑畑の過去に触れ、既定路線の筈の高坂とも寝たやうに桑原先生と男女の仲になることに関して、万依が俄かにジレンマに苛まされるかのやうに、一旦は見せかけて。カット跨ぐと大失恋後絶頂感を失つた万依と、桑原の俺が教へてやる的な濡れ場にサクッと突入してのけてゐるのには逆に吃驚した。ヒロインが思ひ惑ふ筈の葛藤をコマ単位で粉砕した日には、ドラマらしいドラマの成立しやうもない。万事目出度しの大団円といへば聞こえもいいものの、直截には御都合の嵐が吹き荒れるラストの落とし処も粗雑な印象が強い。桑畑が執筆に窮するや、寄宿する編集者が絡み込みでといふか絡みそのものの寸劇を披露する。となると迸る既視感、大門徹第三作「本番熟女 淫ら舞ひ」(1996/脚本:木村正/主演:さの朝香)と全く似たやうな話ながら、底の抜けた世界観を抜いたまゝ爽快に振り抜いた大門徹に対し、中途なお涙要素を盛り込みかけただけに、逆の意味で見事に仕損じたナベとのその限りに於いての優劣が、改めて際立つ一作ではある。

 ナベシネマ恒例楽屋オチ風のエンドロールにて、黒田詩織が手に持つカチンコには、“お世話になりました!”のメッセージが。黒田詩織は今作で一旦引退後、忘れた頃の2006年、黒田瑚蘭名義で電撃復帰。その後も国際魅力学会とかいふ、如何にも胡散臭げな団体で―少なくとも―つい最近まで活動してゐた痕跡が、You Tubeの中にゴロゴロ転がつてゐる。


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 「好色家族 狐と狸」(昭和47/製作:日活株式会社/監督:田中登/脚本:宮下教雄/企画:三浦朗/撮影:安藤庄平/美術:山本陽一/録音:高橋三郎/照明:松下文雄/編集:鈴木晄/音楽:奥沢散策/助監督:海野義幸/色彩計測:田村輝行/現像:東洋現像所/製作進行:斉藤英宣/出演:田中真理・原英美・小森道子・堺美紀子・しまさより・高山千草・山口明美・木島一郎・大月幹太・久松洪介・長弘・甲斐康二・織田俊彦・影山英俊・近江大介・庄司三郎・玉井謙介/刺青:河野光揚)。出演者中、しまさよりと長弘に織田俊彦、近江大介以降は本篇クレジットのみ。クレジットはスッ飛ばす配給に関しては、事実上“提供:Xces Film”。
 開巻は無駄に判り辛いが黒い帽子からカメラがティルト・ダウンした先は、脂汗を流す堺美紀子。医師(織田)の胃潰瘍とする診断をガンだと頑として真に受けない宝田ユメ(堺)は、医者が口を割らぬのならと看護婦(不明)を詰問。ユメのどうかした勢ひとちらつかせるダイヤの指輪の誘惑に負け、看護婦はあと三日の命と白状する。続けて現れたユメの長女・クラ子(高山)に、ここが放置される最大のツッコミ処なのだが織田医師はあと三日の旨をサクッと告知。クラ子がすは遺産と安心屋不動産を営む夫・古田(甲斐)と出撃しようとしてゐるところに、旦那が草鞋を脱ぐ組の若い衆・ヤスオ(庄司)を連れ買物中のユメ次女・カネ子(小森)が通りがかる。古田が口を滑らし事態を知つたカネ子が、高飛び中につき不在の夫の弟分・高森(木島)とすはすはしてゐるのを見た三女のカネ子(原)も、ヤスオを締め上げ争奪戦に参戦。一方、風呂場に卓袱台を浮かべ情夫の畑山(大月)と花札中の、カネ子とは二卵性双生児の四女・ギン子(山口)もギン子で、カネ子経由のパラノーマルなチャンネルで騒動を察知。ギン子がかうしちやゐられないと卓袱台を引つ繰り返すと、宝田邸を目指し急ぐ安心屋不動産社用車にタイトル・イン。
 配役残り田中真理は、五人姉妹のうち唯一ユメと暮らす五女・タマ子。影山英俊が、ガッパヘッドだ何だとキッチュな小物で煩はしいヴィレバンみたいな部屋に、タマ子が堂々と連れ込む同級生の新川君、多分二人は大学生か。久松洪介は、実はキンギン姉妹の父親でもある、宝田邸使用人・山野貫太郎。ユメはいはゆる愛人業で4/5人父親の違ふ五姉妹を産み、慰謝料を元手に財を成したとかいふ寸法。玉井謙介は、道路予定地の買収に宝田邸を日参する東京高速公団職員。そして小見山玉樹が、玉井謙介の連れとしてクレジットレスで飛び込んで来る。飛び込んで来る瞬間の、コミタマ!感が堪らない。長弘は、九州からナシをつけに舞ひ戻つて来た、カネ子の夫にして高森兄貴分。長弘が連れて来るwith赤子の九州妻と冒頭織田医院の看護婦のどちらが、しまさよりなのか辿り着けないのが今の当サイトの限界。近江大介は、“あと三日”の三日目金曜日の朝、宝田邸を訪ねる警察官。
 田中登昭和47年デビュー年、全五作中第四作。母親の今際の間際?に、欲の皮を突つ張らせ急遽駆けつけた姉達とその同伴者と、ヒロインが対立する騒々しいホームドラマ。濡れ場の種で適宜目移りしつつああだかうだワーワー姦しいばかりの始終は、かといつて魅力的な展開にも欠き、特段も何も面白くも何ともない。ユメと貫太郎絡みのエモーションも匂はすだけさんざ匂はせておいて挙句綺麗に不発で、何時壊れたのかそして壊れたことの意味も見つけ難い、キン子の瓶底メガネの件なんぞそんなところに落ちてゐる帽子共々まるで意味不明。コミタマなり庄司三郎、日活が誇る脇役部―この辺りには流石に、ピンクが辛うじて対抗し得るのは新田栄が自ら誇る超絶ステルス性能くらゐか―のイイ感じの仕事ぶりのほかこれといつた見所も見当たらず、ところで、あるいはそもそも。田中登に話を戻すと、この御仁、満足に量産してたのは二年目までで、改めて調べてみると通算でも僅か二十五本ぽつちしか撮つてゐないのね。シネフィル~ゥ♪受けがいいのか何だか知らないけれど、量産型娯楽映画作家としては全然ヒヨッ子どころかピヨッ子ではないか。


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