真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「悶絶スワップ すけべまみれ」(1995『ぐしよ濡れスワップ 《生》相互鑑賞』の2004年旧作改題版/製作・配給:新東宝映画/監督:深町章/脚本:双美零/企画:中田新太郎/撮影:稲吉雅志/照明:伊和手健/編集:酒井正次/助監督:榎本敏郎/演出助手:菅沼隆/撮影助手:片山浩/録音:シネ・キャビン/現像:東映化学/出演:青木こずえ・風間晶・杉原みさお・井上亜理奈・杉本まこと・平岡きみたけ・池島ゆたか)。
 津田スタ夜景にタイトル・イン、既にオッ始まつてゐる、アイダサヨ(青木)と夫(杉本)の夫婦生活で麗しく開巻。ハモニカを吹かれてゐる最中、サヨは池島ゆたかの声が自らの名を呼ぶ幻聴を聞く。片方向にサヨのみが達した事後、妻から申し出た尺八も固辞する、夫の配偶者第一主義にサヨは感激する。一方、玄関口をサヨがごそごそ掃除してゐると謎の大判封筒が、中身は何とスワップ誌。こゝで、誌名がサヨの―説明―台詞の中ではスワップビートとされる反面、のちに表紙が見切れる実物はモア出版の『スウィンギング』。いはゆる日本でいふところのスワッピング“swapping”の、英語圏に於ける一般的名称がスウィンギング“swinging”である。
 配役残り、サヨがスワップビートに目を丸くする件の、カット尻も乾かぬうちに飛び込んで来る杉原みさおは杉まこの部下、兼浮気相手のキョーコ。後述する江藤夫婦各々の登場と同様、実際へべれけな展開を、俳優部投入のスピード感で何となく固定させる力技。キョーコと杉まこの会話を通して、サヨが二人が勤務する、会社の社長令嬢である逆玉が明かされる。なので杉まこは、もしかすると入婿かも。居間でサヨがスワップビートを読み耽つてゐると、縁側から上がり込んで来る風間晶は隣家の江藤夫人。但し下の名前が大本命の倫子、でなく今回は妙子。ゴッリゴリのスウィンガーで、サヨがスワップに興味を持つてゐるらしきと知るや俄然時めく、猛然と時めく。井上亜理奈と平岡きみたけは、杉まこがキョーコを妻と偽りスワッピングする、内山スミエと連れのコーイチ。但しこの二人も、実はブティック経営者とアパレル勤務。即ち、要はコーイチにとつてスミエは顧客といふ事実上の上下関係にある偽夫婦。そして池島ゆたかが、妙子の夫。とりあへずは見られてゐるだけで十分と、アイダ家床の間で妙子と致す筋金入りの御仁。
 未見未配信の深町章旧作が地元駅前ロマンに着弾した、1995年第二作、新作があるのかといふ話ではある。久々に持論を蒸し返すが、当サイトにとつて、未知の新作と未見の旧作との間に、本質的な差異は概ね存在しない。さういふ意図的に見境を何処かに忘れて来た視座が、それもまた厳密には大いに疑問と我ながら首を傾げなくもないのと同時に、尤ももしも仮に万が一、新作を撮つて呉れるなら撮つて呉れたで、無論勿論畢竟絶対、反応反射音速光速で観に行くのはいふまでもない。
 夫婦交換の異様にカジュアルな、確信犯的に底を抜いた世界観といふか世間観を舞台に、全ての登場人物をスワップの経糸で巧みにか無理から紡いでは、実直な濡れ場のひたすらな連打に終始する、覚悟完了した裸映画。さうは、いへ。済し崩し的に絆を深めるアイダ夫婦の姿には、流石に如何なものよと自堕落も否み難い落とし処を、ESPな飛びギミックで遮二無二補完。一見、未だ尺を余す以降は蛇の足かと、思ひきや。蚊帳の外に追ひやられた四番手―と平きみ―の不憫さに、溢れる涙が止まらない大団円へと至る道程を、堂々と辿り着くと評するか、勢ひ任せに雪崩れ込むと解するのかに関しては、統一的な評価を求める類の議論ではそもそもなく、折々の体調機嫌その他諸々、銘々の気紛れなコンディションに寧ろ支配される、偶さかさに属する事柄にさうゐない。それをいつては、実も蓋もないやうな気もしつつ。


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 「すけべ母娘 どつちも好きもの」(1996『ドすけべ三昧 母娘喰ひ』の2006年旧作改題版/製作・配給:新東宝映画/監督:深町章/脚本:岡輝男/企画:中田新太郎/撮影:稲吉雅志/照明:伊和手健/編集:酒井正次/録音:シネ・キャビン/現像:東映化学/協力:獅子プロ/出演:青井みずき・扇まや・杉原みさお・頂哲夫・平岡きみたけ・杉本まこと)。助監督―始めスチールその他―のクレジットが本篇には元々ない反面、jmdbは何故か榎本敏郎にしてゐる。
 原色系のケミカルな色合の液体が、フラスコの中でポコポコ煙を吹く研究室。脊髄で折り返した印象としては、あたかも通り越しまんまナベシネマ。劇伴の矢継ぎ早に起動した、情報量を絞り込んだクレジットがザクッと駆け抜ける。裸電球から舐めていはゆる瓶底眼鏡、と杉原みさお。飯島エミリ(杉原)が見守る通称ハカセくん(平岡)の今回の発明が、飲んだ人間が最初に目を合はせた者と人格が入れ替る薬。底の抜けたトンデモぶりに関しては一旦さて措き、薬物が煮詰まるまで二三十分、その間新しい体位の研究とか求めて来るハカセくんを、エミリが平手でツッコんでタイトル・イン。時間の目安に結構アバウトな幅があるといふのも、何気に随分な話、簡単レシピぢやないんだから。
 特に珍奇な姿勢の探求も為されない一戦経て、あと一手の新薬調合を勝手に完成させたエミリは、コーラ瓶に移し持ち出す。どうせその瓶も、洗つてさへゐないよね。一方、設定的には高校の夏休み時期の津田スタ。母子家庭の広瀬家、母親のジュンコ(扇)がテレフォンセックスに耽つてゐるのは、次なるお相手のゴロー氏にはジュンコから名指しで電話をかける、地味に謎システムのパート。娘のアイリ(青井みずき/a.k.a.相沢知美/a.k.a.会澤ともみ)が奔放な母に呆れがてら、自分で支度して食事を摂る。ところに、アイリが初恋をときめかせる、アイカワ君との交際の進捗を任されたエミリが来宅。木に竹を接ぎ気味にキャッキャウフフするアイリとエミリが二階のアイリ自室に上がつた隙に、適当に見せびらかす以外、実際何の目的で持つて来たのかよく判らない珍薬を、ジュンコが飲んでしまふ。そのことを察知したエミリの制止も間に合はず、ジュンコとアイリが目を合はせ、イッケイケの母親と、案外晩熟の娘、好対照な母娘の主体が交換される。、
 配役残りチューバッカTの頂哲夫が、件のアイカワカズヤ。野球部で甲子園に行く、アルプススタンドだけど。テレセ一人目の声も兼務する杉本まことは、ジュンコの不倫相手・江沢陽一。岡輝男の脚本に大人気なくツッコんでおくと、幾ら提出すればまづ受理されよう万全に書式が揃つてゐたとて、確定的な決意の表明といふなら兎も角、離婚届自体は1mmの証明にもなり得ないぞ。
 残弾数、ゼロ。終にex.DMMの中に未見作のなくなつた、深町章1996年第三作。それはさて措きちな、みに。当時の深町章が前回は林田ちなみ(a.k.a.本城未織/ex.新島えりか)の主演で、二本どすけべが続いた格好。どすけべついでに―我ながら凄い序でではある―1991年第六作「人妻VS風俗ギャル ザ・性感帯」(脚本:周知安=片岡修二/主演:橋本杏子)の、2010年旧作改題版「どすけべサラリーマン 開花篇」に続き、1994年第二作「痴漢電車OL篇 車内恋愛」(脚本:周知安/主演:西野奈々美)と1990年第二作「欲しがる女5人 昂奮」(脚本:周知安/主演:橋本杏子)が、気づくと2020年にどすけべサラリーマンのそれぞれ「快楽処世篇」と、「肉体遍歴篇」で新版公開されてゐる。無論、各々元作は全く別個の映画―そもそも公開順からグッチャグチャ―で、そんな天衣無縫さが、実に清々しい。
 閑話、休題。山中恒風にいふとあたしがおかあさんで、おかあさんがあたし。薬品をしかも片方のみが服用する以外、一切の機器すら使はない。原理の皆目不明な、箍の外れた超化学が少しでなく不思議なSFピンク。完全なる心身二元論に立脚してゐる点に関しても、一言触れておきたい。事態は木端微塵にトッ散らかつたまゝ、アイリの器に入つたジュンコが、エミリの整へた手筈に則りアイカワ君に会ひに行く。一方、家にゐるのがジュンコの器に入つたアイリであるとも知らず、今の配偶者とは本気で別れる腹の、江沢が広瀬家を訪れる、そら知らんはな。アイリとジュンコ、各々の恋路が直交の十字火花を散らす思ひのほかウェルメイドな中盤が、すべたの母親、もといすれた母親があつさり娘の破瓜を散らしてのける、ある意味岡輝男らしいブルータルな無造作に、爆散されるものかと頭を抱へさせられた。とこ、ろが。江沢には明かしてゐた秘密をパワー系の軸に、霧散しかけた始終の求心力を猛回復。母娘の和解を超えた関係の深化に、暫し女の裸もお留守にまどろこしく尺を喰ふのは仕方ないともいへ、変則的なスワッピングの果て、辿り着く大団円は満更でもない見事な仕上り。かと、思ひきや。実は確かに玄関先に置かれたまゝのコーラが改めて火を噴く、更に一捻りには完全に油断してゐて驚いた。江沢と目を合はせるカットに於ける、アイカワ君こと頂哲夫の間抜け面が絶品。要は再度ハカセくんに御登場願へば済む話にせよ、綺麗な展開が綺麗にオチる、大人の量産型娯楽映画ながらジュブナイル調の佳篇。尤も、百円オチの他愛なさは、矢張りオカテル。

 岡輝男脚本作に触れるのも思ひのほか久し振りで、有楽閉館に際し見せた篤実を、何とはなしに思ひだした。


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 「ワイセツ隠し撮り 野外露出」(1990/製作:メディア・トップ/配給:新東宝映画/監督:深町章/脚本:周知安/企画:伊能竜/撮影:稲吉雅志/照明:守田芳彦/編集:酒井正次/助監督:佐野正光/監督助手:西栄作/撮影助手:村川聡/照明助手:柴崎太郎/スチール:津田一郎/録音:銀座サウンド/現像:東映化学/出演:加賀恵子・南野千夏・しのざきさとみ・川奈忍・久須美欽一・芳田正浩・荒木太郎・戸田狂貞)。脚本の周知安と企画の伊能竜は、それぞれ片岡修二と向井寛の変名。
 薄暗い林にタイトル開巻、間髪入れずクレジット起動。野外で小用を足す加賀恵子に、別に動画を撮影してゐる訳でもないのに、芳田正浩の声が逐一動作が早い云々注文をつける。続けてチリ紙を使ふ斬新なワンマンショーをさせた中途、今度は公衆トイレで南野千夏を多分純然たる盗撮。一応依頼を受けての仕事らしいカメラマンの、下の名前が渉と来た日には、苗字は轟にさうゐない轟渉(吉田)が女子手洗から南野千夏に遅れて出て来たところを、警邏中の巡査で今度は苗字が園山と来ると、下の名前はまづ高志の園山高志(久須美)が発見。実は二十年来のカメコである園山に、フラッシュを焚かずとも撮れる赤外線フィルムまで見抜かれた渉はその場でネガを感光。一旦放免される一方、園山は夢の職業であつた職業写真家の渉に、渉も渉で手堅い公務員かつ社会正義を守る警察官の園山に対し、双方憧憬の念を懐く。
 配役残り、津田スタに帰宅した園山を迎へるしのざきさとみが、妻の明子。明子が下着ドロの被害に遭ふ友人の相談を園山に持ちかける、矢張りあるいは堂々と、使ひ回す津田スタに暮らす川奈忍が明子の友達・江藤倫子。倫子に関しては江藤も、久須りんの口から明示される。荒木太郎は明子と戸建に同居してゐる―ついでに仕事は普通のサラリーマン―にしては、“恋人”と称される謎氏。非番の園山が江藤家に張り込んだ昼下がり、髭と頓珍漢なツーブロックに、アグレッシブに掴み処のない造形がおかしな―大体全部ぢやねえか―荒木太郎が急に帰宅しての、ありがちな間男サスペンスが木に竹を接ぐ一幕かと思ひきや、案外さうでもなかつた。総勢多分四組の青姦をパンで繋ぐ、不明であつた視点の主が隠れ撮りしてゐた園山、とかいふ無体な件。定石からいふと演出部の、競艇を捩つた変名と思しき戸田狂貞は、南野千夏を介錯する男優部。満足に抜かれるカットが存在しない以前に、抜いて呉れたところで佐野正光と西栄作の面相を知らない。
 何気にでもなく重大な疑問が、劇中固有名詞も呼称されないとはいへとりあへず渉の彼女ではある加賀恵子はまだしも、南野千夏は台詞すら限りなく与へられない単なる盗撮要員。そんな二人が上位に座るビリングに、ちぐはぐさは否み難い深町章1990年第五作。もつと沢山ありさうな気がしてゐたものの、ちやんと数へてみるとex.DMMの中に未見の深町章は、今作入れて二本しか残つてゐなかつた。
 荒木彼氏との情事を、押入れに押し込んだ園山に見られた倫子が、対明子の口止めに思ひついた奇策が“同じ秘密”。さうはいへマスをかゝせるのもどうかゆゑの、「アタシとしませう」とかいふ神々しい方便には、強引な論理の清々しさに拍手喝采した。底が抜けてゐる?川奈忍の濡れ場をもうひとつ増やす、更なる大事に遮二無二向かはんとする果敢な営為と、それを如何に形成すかに心砕いた、苦し紛れの閃きとに賛意を表するべきだ。その最中、何故かロボットアニメに於ける合体シークエンス風の、金属的な音効とともにファインダーが障子を突破。性懲りもなくその模様を盗み撮らうとした、渉と園山が再会を果たす展開も冴えてゐた、そこまでは。勿体ぶるだけの物語もない、といふか起承転結の結を半ば以上だか以下に放棄したかのやうな体たらくにつき、截然とバレてのけるがさんざ自身の職について執拗に“聖職”を連呼してゐた癖に、先にも触れた通りシレッと園山がスニークに開眼、木乃伊取りが木乃伊にもほどがある。園山が情事を盗撮してゐた加賀恵子の、お相手がしかも写真を捨て警察官になつた渉。ありがちな奇縁に園山が久須美欽一十八番の口跡であげた、「ありやあ!?」の声で渉に覗きを察知されながら、結局渉は男が園山であるのに器用か頑なに気づかないまゝ、適当に追ひ駆けつこして終るラストは画竜点睛を激越に欠く。最終的には詰めの甘さが玉に瑕通り越して致命傷の、漫然とした一作ではある。

 最後に、いはずもがなに触れておくと。特徴ある上の句を共有してゐるからといつて、1993年第三作「ワイセツ隠し撮り 夫婦の寝室」(脚本:瀬々敬久/主演:岸加奈子)と今作は、隠し撮る目的が裏ビデオとエロ写真から根本的に違うやうに、全くも何も、二作がある意味見事に掠りもしない。下手な弾を撃ち倒すのを宗とする、量産型娯楽映画の世界。一歩間違ふと関係者さへ日々の作業に追はれるうちに、気づいてゐなかつたりするのではなからうか。


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 「夜這ひ どてさがし」(昭和54/製作:ユニバース・プロ/監督:稲尾実/脚本:山本晋也/企画・製作:向井寛城/撮影:志賀葉一/照明:斉藤正明/音楽:芥川たかし/編集:田中修/録音:FOスタジオ/助監督:滝田洋二郎/監督助手:花堂純次/撮影助手:石渡均・蔵之下和文/照明助手:水本俊一郎/現像:東映化学/製作主任:大井たけし/スチール:津田一郎/出演:川口朱里・深沢ゆみ・滝沢秋弘・長友達也・北沢ゆき・沢木みみ・江木あき子・花田秀男・西村あきら・中島実・森田雄二郎・久保新二)。出演者中、深沢ゆみと北沢ゆきに沢木みみが、ポスターにはそれぞれ深沢ユミと北沢ユキに沢木ミミ。花田秀男から、森田雄二郎までは本篇クレジットのみ。監督の稲尾実はex.稲尾実で深町章、製作の向井寛城は向井寛の変名。現在進行形で名義を併用する、撮影の志賀葉一はa.k.a.清水正二。クレジットがスッ飛ばす配給に関しては、事実上“提供:Xces Film”。
 チャンコチャンコ猥歌を歌ひながら、夜這ひを仕掛ける二人の男の影にタイトル・イン。二人が野原を駆ける、疾走感のあるタイトルバック。男二人は夜這ひ名人を称へられる通称ギョロ松(滝沢)と、弟子筋の新田仙吉(長友)。仙吉が忍び込んだのは幼馴染で、相思相愛のおゆき(深沢)宅。さつさと祝言挙げればいゝのに、といふのは他人の勝手なツッコミ。兎も角駆け落ちの約束を交しつつ、母親(多分江木あき子)の介入を受ける。一方、天狗の面を模した鈴を、左右に提げた玉で鳴らす。即ち鼻を棹に見立て金玉まで完備した、画期的に気の利いた小物―適当に復刻して上野で売ればいゝのに―をお守りに、ギョロ松は後家・おたね(沢木)の寝床に侵入。何れの絡みも徒に画を狙ひすぎて、乳尻が遠いもどかしさは否み難い。仙吉とおゆきが待ち合はせた、明神様の裏。故郷を捨てる覚悟で、親の墓に参つてゐた仙吉が遅れる隙に再び母親に強奪されたおゆきは、借金の形に庄屋のドラ息子・好太郎(久保)に嫁がされる。
 配役残り、花田秀男以下四名はほかにこれといつた役も見当たらないゆゑ、恐らく花嫁行列と葬列要員。行列の先頭と葬列のしんがりの、津田一郎が僅かに識別可能。森田雄二郎といふのは如何にも滝田洋二郎の変名臭いものの、当サイトの節穴には視認不能。川口朱里はギョロ松・仙吉と大体行動をともにする、矢張り幼馴染の仙吉に、片方向の想ひを寄せるおよね。北沢ゆきは小料理屋の女将兼、この人に夜這ひをかけた男達が、ことごとく腹の上で死んでゐるブルータルな魔性の後家・おさね。
 うつかりすると“懐かしの新東宝「昭和のピンク映画」シリーズ!”と勘違ひしかねない、稲尾実昭和54年第一作。それらしき時期のjmdbをランダムに踏んでみたところ、深町章が稲尾実時代には相当数の買取系を撮つてゐるぽい。素材が残るものに関しては、今後思ひだすかのやうに小屋と配信の如何を問はず、市場に放り込んで貰へると大変有難い。
 悲恋をも打ち消す性風俗の横行する、大らかな山間の集落を舞台とした田舎ポルノ。さうは、いへ。前述したが兎に角穿つた画角で狙つたカットが多く、女優部を四枚並べた上で息を吐くやうに夜這ひが展開される傍ら、重ねて好太郎は情婦のおたねと励むにも関らず、裸映画的な満足度は決して高くないといふか、真直ぐ撮らんかといふフラストレーションが寧ろ強い。物語的にも、仙吉とおゆきが終ぞ結ばれ得ないまゝ、およねにカッ浚はられる形で所帯を持つたところで夜這ひといふ逃げ道が初めから開通してゐる以上、メロドラマの梯子も外された格好。尤も乱打されるカッコいゝロングの力も借り、断片的か散発的なエモーションなら枝葉を繁らせるには十二分。仲良く遊ぶせんきちとおゆきを、口を尖らせたおよねが寂し気か恨めし気の遠目に見やる、在りし日を示すセピア色の回想は琴線をフルコンタクト。男なら、危険を顧みず、腹上死すると判つてゐても夜這ひしなければならない時がある。とこそいはないにせよ、「おめこに命を賭けるのが夜這ひの奥義」と、ニカッと笑つておたねの家に赴くギョロ松こと滝沢秋弘が途方もなく男前。偶々降つてゐたからそれ行けと撮つたのかも知れないが、壮絶な戦死を遂げたギョロ松が仙吉と対峙する、此岸と彼岸の境界を模したであらう雪原のイメージも凄まじい。さういふ物言ひ、あまり好むところではないのだが現代ピンクで、これだけの画撮れる人ゐる?あるいは撮れるなら撮つて。腰を据ゑて女の裸を捉へることに関しては、昨今の方がグルッと一周して誠実かしらんとも思ふけれど。濡れ場に垂涎するといふよりも、劇映画が普通に面白い方が勝る一作。ついでで爆発的に可笑しいのが、車の進行方向に誰かゐると、とりあへず突つ込んでみる久保チンの破天荒なドライビング(笑


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 「ワイセツ隠し撮り 夫婦の寝室」(1993/製作・配給:新東宝映画/監督:深町章/脚本:瀬々敬久/製作:田中岩男/撮影:稲吉雅志/照明:渡波洋行/編集:酒井正次/助監督:原田兼一郎/監督助手:榎本敏郎/撮影助手:片山浩/照明助手:斗桝佳之/スチール:津田一郎/録音:銀座サウンド/現像:東映化学/出演:岸加奈子・杉原みさお・伊藤舞・池島ゆたか・久須美欽一・久保新二)。
 タイトル開巻、「人の噂も七十五日といふが」と、往来で池島ゆたかのモノローグ起動。何放送協会なのかHHK局のディレクター、であつたカワシマ春雄(池島)はドキュメンタリー番組に於けるヤラセを巡り懲戒免職、また派手に詰め腹切らされたね。目下は元々共働きで雑誌編集者の妻・みゆき(岸)の稼ぎが家計を支へ、カワシマは専ら主夫業に納まつてゐた。そんなカワシマの悩みはみゆきの配偶者に対するヒモ扱ひ、ではなく、失職以来の性的不能。その旨を示す、初戦の夫婦生活。やをらカメラがスーッと―何もなければ誰もゐない―部屋の端にパンするのに、よもや稲吉雅志が柳田友貴ばりの“大先生”ムーブを繰り出すのかと引つ繰り返りかけたのは、当然当サイトの脊髄で折り返した早とちり。障子に隙間を開け夫婦の寝室を隠し撮りしてゐた、裏ビデオ界のクロサワを自任する兵頭六輔か六助か六介(久保)もカワシマがインポであるのを看て取り、「あかん、勃たへん」と落胆する。如何せん文字情報のみで伝へやうもないが、久保チンの聞くも無残な似非関西弁に関しては、下手な造形を潔く放棄する賢明は検討されなかつたのか。
 配役残り、みゆきとの不忍会談で飛び込んで来る久須美欽一は、カワシマの復職を願ふみゆきが頼らうとする、HHK局のプロデューサー・岡本、実はヤラセを命じた張本人。パチンコ屋の表とかいふ、風情があるのか単なる大雑把か無頓着の類なのか甚だ微妙なロケーションにて、普通に歩いてゐたところ兵頭に捕まりその場でビデオを一万で売りつけられる若い男が、結構遠いロングにつき断定はしかねつつ、多分セカンド助監督の柳蜂逸男。一方、当初ワンマンショーを盗撮されてゐるかに思はせた杉原みさおは、兵頭の情婦・ヒロミ。そして、声は石川恵美がアテる伊藤舞が、勿論津田スタのカワシマ家に呼んでの情事を、兵頭が撮るのでなく自身がヤルのを―無論カメラの扱へる―カワシマに撮らせようとした、出張風俗嬢・ヨーコ。エナニー?とか聞こえる、屋号を詰めきれず。
 改めて調べてみると、瀬々敬久が他人に脚本を提供するのは獅子プロの兄弟子たる片岡修二―や橋口卓明―のみならず、jmdbに記載のあるだけで深町章に案外八本も書いてゐる、1993年第三作。
 自慰で絶頂に達する女を撮りたい兵頭の思惑に反し、ヒロミが六ちやん六ちやんと情夫の名をいぢらしく呼ぶのに押し切られ、イケイカないの攻防戦の末、結局兵頭はビデオカメラを捨てヒロミを抱く格好に。即ち、裏ビデオを撮影中といふ体の窃視視点から、男女が本格的に致す濡れ場に移行するシークエンスは、実質的な意味合ひが特にある訳でなくあくまでさういふ進行に過ぎないともいへ、ある意味アダルトビデオがピンク映画に屈した風に曲解出来なくもなく、敗者なり精一杯のロマンティックかアクロバットであつたにせよ、瀬々よく考へたなと感心した。うつかり兵頭が当のカワシマに隠し撮りを買はせてしまひ―キャッチした時点で気づけよ―発生した接点が、職を探すカワシマに兵頭が組まないかと持ちかける形で発展。その過程で三番手を回収する輝かしく秀逸な妙手を何気に撃ち抜いた上で、ヒロミも岡本に喰ふだけ喰はれ騙されたことから、カワシマと兵頭の共同作業が、岡本といふ共通の敵に対する共闘へと変る。さういふ次第での大一番が、伏線的なサムシングも気配程度に撒いてはゐる、みゆきを弾に擁したハニートラップ。自らは決して撮らうとはしない小癪ささへさて措くと、何だよ瀬々思ひきり普通の、正調娯楽映画らしいコッテコテの物語も編まうと思へば編めるんぢやないか。なんて見直しかけたのも、今作に際し通算二度目の早とちり。結局、カワシマが回復あるいは回春するほかは、勧めるほどの善も別に存在しないゆゑ勧善は兎も角、懲悪も大団円も寸止めで回避。最終的には良くも悪くも平素の深町章、のんべんだらりとした絡みで駆け抜けるといふよりは振り逃げる、焦点を失したラストは逆の意味で見事に失速。照れ臭いのか馬鹿にしてゐるのか知らないが、ベタなものを、潔しとしない態度を基本的に当サイトは評価しない。ベタにはベタなりに、定番として熟成され得るに足る、積み重ねられた何某かが備はつてゐなければそもそもベタの名に値しないのではなからうか。これは定石が成立する過程にも重きを置く、ひとつの保守の態度である。


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 「三十路妻の不倫」(1995/製作・配給:新東宝映画/監督:深町章/脚本:双美零/企画:中田新太郎/撮影:稲吉雅志/照明:伊和手健/編集:酒井正次/助監督:榎本敏郎/スチール:津田一郎/監督助手:菅沼隆/撮影助手:片山浩/録音:シネ・キャビン/現像:東映化学/出演:田口あゆみ・三橋里絵・林田ちなみ・風間晶・平賀勘一・神戸顕一・杉本まこと)。
 不忍池越しに、林田ちなみが人待ち風情で佇むロング。クレジットと同時に、「これ本当に恥づかしい話なんですけど」と杉本まことのモノローグが起動する。八年前、現在の妻・さとみ(林田)と就活に苦労してゐた二流大学かつ二留の沢野(杉本)も、漸く内定に漕ぎつける。ちやうどその頃、沢野には二股をかけてゐた女が存在した旨、告白して不忍池にタイトル・イン。
 配役残り、早えな!掻い摘むストーリーとかねえのかよ、別にないんだけど。タイトル明け津田スタに飛び込んで来る田口あゆみが、件の二股相手で当時三十二歳の人妻・荻山あやこ。社員の身辺にナーバスな会社につき、関係を清算する腹の沢野が餞別も兼ねたバイブであやこを責めた事後、帰つて来る神戸顕一が、十八であやこが見合結婚した夫。それゆゑあやこが若いツバメ―沢野に対する呼称はヒロ君―との逢瀬を、“初めての恋”と称するのに沢野は軽くでなく引く。平賀勘一と風間晶は、沢野にとつて単なる上司を超えた兄貴分の藤森部長と、藤森の愛人で、藤森が転勤で東京を離れる間の世話を沢野に託さうとした、凡そ堅気のOLには見えない凄まじいギャル造形の小川りお。身辺には神経質でも、服装は案外どころでなく自由なんだな。藤森が持たせたりおのアパートを、沢野が辞す際。何気に見切れてゐる三橋里絵が、藤森の本妻・あきよ。
 菅沼隆の目下確認し得る最古のキャリアが、二作前の「ぐしよ濡れスワップ 《生》相互鑑賞」脚本:双美零/多分主演:青木こずえ/未配信)となる深町章1995年第四作。
 公園にて、思ひだしたあやこの思ひでに浸る沢野に、背後から近づいた女がまさかのあきよ。あきよから“目には目を”とか迫られるまゝに、沢野は危ない橋を渡る。やがて、二人をホテル街にて目撃したりおの口から、二人の不義かつ不義理が藤森の知るところに。何れも十二分に尺を割く濡れ場の僅かな隙間隙間を、展開がスリリングに駆け抜けて行く。一見自堕落な裸映画に見せ、針の穴に紙一重を通し首の皮一枚物語を紡いで行く、何気な妙技に大人しく酔ひ痴れて、ゐさせて呉れればよかつたものを。一応「背筋が寒くなりました」で敷いてゐなくもなかつた伏線が、木に竹を接いで藪から棒に暴発。危ふく一命を取り留めはしたものの、な不用意に後味の悪い結末は、漫然としたラスト・ショットとの親和も果たせず、もやもやした居心地の悪さばかりを残す。絡み初戦から二連戦をこなしたのち、よもや終ぞ退場したきりなのかとさへ危ぶませた、田口あゆみが先頭に座る不可解に関しては、兎にも角にも劇中世界を支配してのけた点に免じて兎も角、三橋里絵が林田ちなみよりも上位に来るのは全く以て解せないとしかいひやうのない、そもそもビリングからちぐはぐな一作。沢野を驚愕させるさとみの素性も素性で、一緒に就職活動に励んでゐたアバンと齟齬を来す疑念は如何とも拭ひ難い。


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 「発情カップル 《秘》盗撮現場」(1994/製作・配給:新東宝映画/監督:深町章/脚本:瀬々敬久/企画:中田新太郎/撮影:清水正二/照明:伊和手健/編集:酒井正次/助監督:田尻裕司/監督助手:徳永恵実子/撮影助手:清水一博/照明助手:広瀬寛巳/スチール:津田一郎/録音:銀座サウンド/現像:東映化学/出演:林由美香・井上あんり・橋本杏子・梶原恭子・扇まや・本間優作・平賀勘一・山本竜二)。さて、例によつての共倒れjmdbに引き摺られたのか、といふか“引き摺られる”の意味が判らないけれど、何れにせよnfaj共々、照明の伊和手健を井和手健に。百歩譲つて個人の手作業であるjmdbはまだしも、所蔵フィルムからの翻刻を謳ふ以上、nfajにはちやんとして欲しい。使ふなといふ訳では断じてないが、公費も使つてゐるんだぞ。
 青基調のキネコ、木々の間を巡る盗撮画像に中新からクレジット。女の背中に寄つて、スタッフ先行のクレジットが俳優部に。カメラの仕込まれたアタッシュケースを抜くところで、画面はフィルム撮影に復帰。それらしき青色にてつきり暗視でもしてゐるのかと思ひきや、思ひきり昼間で軽く拍子も抜かれる。林由美香と平賀勘一の青姦をカメラに収めてゐた山本竜二が、物音をたて二人に気づかれる。慌ててすたこら退散する様に「俺は富樫ジュン、歴史に残る名探偵と自負してゐる」と大風呂敷を広げてのける割に、中身は特にないモノローグ起動。頭に載せた中折れが外れた、山本竜二のストップモーションにタイトル・イン。公称を真に受けると封切り当時三十七歳になる平賀勘一の老け芝居が、俄かには覚えのない強度でサマになつてゐる。
 すかいらーくの看板から、ピントを手前に送つた先には井上あんり。適当なロケーションを用立てる一手間も端折つた、ビュービュー無造作に吹く風が女優部の髪を乱すのがあんまりな、そこら辺の屋上。実業家・高岡コータロー(平賀)の浮気調査を後妻(井上)から請け負つた富樫(山本)は、林中の情事をパーマネントな関係ではなく、高岡が宿なしのプータローに同情でもした、行きずりのものだらうと高を括る。富樫が恐らく兼住居の事務所でカップ焼きそばを啜つてゐると、女優部の二役アテレコではないゆゑ、もしかすると徳永恵実子が読むTVニュースがアイドル・カワイ美里(林)の失踪事件を伝へる。伝へた流れで当の美里が、逃げる際に落として行つた、名刺の住所を頼りに富樫を訪ねる。高岡と致してゐた女といふのは兎も角、富樫がその女がカワイ美里である点は器用に等閑視したまゝ、美里は「雇つて呉んない?」と助手として探偵事務所に転がり込む。
 岡持ちにCCDカメラを忍ばせ、出前持ちに扮した美里の初仕事。配役残り、井上あんりは美里が尾行するカップルの女の方。そして扇まやが男の方、といふ訳では無論なく、タチの方・ユキコ。問題がユキコが高岡の娘で、性質の悪い女に騙されてゐるぽい娘の調査を、アバンのターゲットであつた高岡が富樫に依頼してゐる相関が混濁する衝撃には、この映画序盤から爆散するのかと一旦頭を抱へかけた、ものの。高岡が後妻も富樫を雇つてゐたのを知つてゐる旨と、美里に対してはいゝ人に拾はれたとする台詞とで、辛うじて行方不明になりかけた軌道を修正する。置手紙を後妻に残し、高岡が姿を消す。富樫は高岡から届いた手紙の消印を唯一の手懸りに、高岡の生まれ故郷に。橋本杏子がそこで高岡と歩いてゐた、“モロッコのマタハリ”とか素頓狂な異名を誇るケンモチマリコ、と高岡の初恋相手・お春の二役。急な雨に降られた高岡少年とお春が、雨宿りがてら軽く手を握る程度の回想。幾ら何でも高校生なんだから、平勘に髭くらゐ剃らせろ。そして木に竹を接ぐ藪蛇キャストかに思はせて、実は案外さうでもない本間優作は、高岡とマリコを尾ける富樫と美里を、更に尾けるカシマミノル、美里ファンクラブ会員番号3445番。
 残弾数を数へるのがまだ面倒臭い程度には、ex.DMMの中に未見作が残つてゐる深町章の1994年第三作。高岡が自ら選んだ最期と、戯れに気紛れに、富樫の前を通り過ぎて行つた美里。一抹のほろ苦さも効かせたかつたか、効かせたつもりなのかも知れない物語本体は山竜にエッジと、深町章にソリッドを求むべくもなく、殊更ゼーゼー騒ぐほど面白くも別にない。後妻が大概へべれけな流れで富樫に身を任せる、梶原恭子の絡みを除けば一途に堅守する盗撮画像から、頃合を見計ひフィルムに帰還するタイミングの絶妙な濡れ場の数々が、時代の流れも酌まざるを得ないのか橋本杏子が三番手に座る無闇に豪華な五本柱にも当然彩られ、終始高いテンションを保ち続ける裸映画的な充実が寧ろ際立つ。側面から特筆すべきなのが、一昨日から現れて、明後日に蹴飛ばされて行くかに一見映るカシマミノル。最初の電話登場時にはその間に美里を寝落ちさせ、蒸発した人気アイドルが、しがない私立探偵の事務所に居座る。飛躍しかない無理気味の一幕を、どさくさ紛れに固定。津田スタ庭に於いては当て身で富樫を昏倒、上手いことその場の離脱を促す。如何にも余計な枝葉然としてゐながら、カシマミノルが何気に都合二度展開の肝要を担ふ、地味に強靭な論理性は出色。同じくカシマミノルが呼び水となる、鮮烈なハシキョンキックも素晴らしいが何より驚かされたのが、ノー弾着をものともせず、平賀勘一の名演技と切れ味鋭いカット割りのみで、見事形にしてのけたピンクでまさかのヘッドショット。無茶を承知で粗い理想論か雑な絵空事をいふと、要はこの脚本、瀬々が自分で撮つて富樫役がたとへば佐野―和宏―であつたなら、恐ろしくカッコいゝ映画になつてゐたのではあるまいか。


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 「人妻本番 昼下りの不倫」(1993/製作・配給:新東宝映画/監督:深町章/脚本:加付加/企画:中田新太郎/撮影:下元哲/照明:伊和手健/編集:酒井正次/助監督:田尻裕司/監督助手:榎本敏郎/撮影助手:小山田勝治/照明助手:広瀬寛巳/スチール:津田一郎/録音:銀座サウンド/現像:東映化学/出演:石原ゆり・林由美香・杉原みさお・扇まや・柳蜂逸男・平賀勘一・山本竜二・池島ゆたか)。脚本の加付加は、小水一男(a.k.a.ガイラ)の変名。仮に新版ポスターと同じ面子だとすると、出演者中、柳蜂逸男が本篇クレジットのみ。
 クレジットが起動する雑踏に、一三四番手が連れ立つて歩く。ヒロコ(石原)とほか二名(杉原みさおと扇まや/どちらかはマリ)のうち、専らほか二名が喋り続ける話題は配偶者に対する愚痴、性的な。外に男を作つたみさおとまや(絶対仮名)がヒロコに口止めした上で、ホテル街の画にビデオ題「昼下りの不倫妻」でのタイトル・イン。みさおと山本竜二の逢瀬で絡み初戦を手短に撃ち抜く一方、パジャマぽいヒロコが、屋上的なロケーションで黄昏る。結論を一部先走ると、こゝの繋ぎからぞんざい過ぎたんだ。兎も角ヒロコが想起するのは、銀行員の夫・譲(池島)との、譲がヒロコを待たず勝手に達する半ば片方向の夫婦生活。譲が本店帰還の皮算用を巡らせなくもない、ヒロコが重役貴婦人達のお供を四日間も務める、即ち家を空ける木に竹を接ぐイベントに関して投げるだけ投げておいて、車のボンネットを開け悪戦苦闘する譲に、伊豆のホテル「月野ハーバービュー」の社長令嬢・月野しずか(林)が接触。家出して来たといふしずかは、譲に狂言誘拐を持ちかける。
 配役残り平賀勘一と柳蜂逸男は、渋谷駅東急プラザ前の身代金受け渡し場所にて、譲を検挙する官憲部。これまで特定出来ずにゐた柳蜂逸男の正体が、榎本敏郎の変名であるのに初めて辿り着けた。依然、どう読ませたいのかは知らんけど。
 散発的に出くはす例(ためし)でもあれ所蔵プリントが飛んでゐるらしく、nfaj尺がjmdb=ex.DMMの配信尺より三分短い、深町章1993年第八作。そのためか、原則翻刻を謳ふnfajにはセカンド助監督から東化までの記載が漏れてゐる。
 羊頭を懸け狗肉を売る“本番”はさて措き、ビリング頭のヒロコが実は不倫をしないまゝに、譲が藪から棒な勢ひでしずかに溺れて行くのと並走して、寝間着ver.のヒロコは闇雲に塞ぎ込む。截然と斬り捨ててのけるが、ガイラだ林由美香だといつた名前に引き摺られるにせよ釣られるにしても、斯様にトッ散らかつた代物を無理して評価しようとするのは、全く以て宜しくない、為になるまい。再三挿み込まれる割に、結局パジャマが何時何をしてゐるのか、最後の最後まで大体程度にしか判然としない、量産型娯楽映画の古強者・深町章らしからぬ不親切設計。そんなタマにも見えないが、杉原みさおと扇まやが“重役貴婦人”なのかと思ひきや、さういふ訳でも全ッ然ない、限りなく意味を成さない“お供の四日間”。重ねて単なるワン・ノブ・間男かと思ひきやきや、山本竜二がコーエー・エクス・マキナな扇の要を成す粗雑な相関関係。そもそも譲も金貸しのプロだろ、といふツッコミ処は強ひて一旦呑み込んだとて、何が斯くも必要なのか不思議な金と、毒婦に師匠の名前をつける点は奮つてゐるものの、若松孝子が譲の素性を知つてゐた何気な謎。行間ばかりがガッバガバ、思はせぶりに含みを持たせ倒した末に、石原ゆりが結構エクストリームな目に遭ふ締めの濡れ場をも、薬師丸ひろ子を模して“よく締まるヒロコ”ぢやことの、どうしやうもないクソネタ込みで山竜が何時もの調子で水を差すのも通り越し完全に鎮火、終に取りつく島は消滅する。四年後の「官能未亡人 うごめく舌先」(老成螺帝名義/主演:田口あゆみ)はそこそこ見られた記憶も残しつつ、ギャーラギャーラ持て囃すどころか、割と劇的に面白くない。林由美香―本来ならば―必殺の「アッカンベー☆」も、それを活かすポップなりキュートなセンスを深町章に求めるのは、些かお門違ひではなからうか。


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 「すけべ先生 淫らな授業」(1997/製作・配給:新東宝映画/脚本・監督:深町章/企画:福俵満/撮影:稲吉雅志/照明:伊和手健/編集:酒井正次/録音:シネキャビン/現像:東映化学/出演:しのざきさとみ・水乃麻亜子・悠木あずみ・扇まや・杉本まこと・熊谷孝文)。まあしかし、レス・ザン・情報量なクレジットではある。
 タイトル開巻、女子高生の冴子(水乃)がバスケットボールであんたがたどこさする体育館に、飯盒を提げた金井玉三郎こと、通称金八ならぬ金玉先生(杉本)が現れる。冴子から誘はれたと思しきにも関らず、「さて」と金玉が飯盒の雑炊を食ひだした時点で、気づくべきであつたのか。否、あつたのだ。一旦結論はさて措き二人がオッ始めた、のはいゝけれど。撮影部と演出部は健闘する、結構な大きさの地震が発生、杉本まことが下手なオーバーアクトで茶を濁す。坂本龍馬を心酔する金玉は「天が怒り狂つとる」とか、狂つてゐるのはこんならぢやとしか思へない頓珍漢な大仰さで事態を曲解。その頃冴子の友達・鶴子(悠木)も、優等生?の勝(熊谷)と薄野原で致さうかとしてゐたのを果たせずに終る。水上荘の自宅に逃げ帰つた勝は、夫(影も形も登場しない)とは随分御無沙汰な模様の母(扇)に泣きつく。極度のマザコンである勝と一緒に風呂に入つたまやママは、禁忌の障壁をさしてどころか微塵も感じさせずに息子の尺八を吹き、精も口で受ける。配役残りしのざきさとみが、金玉の下宿―も矢張り水上荘―に出入りする、恋人的ポジションの風俗嬢。形式的な序列上は主演―の筈の―女優にしては、何気に一番顧みられない不遇通り越して不思議な役。といふか、ビリング頭が濡れ場要員かよ、またエッジの効いたキャスティングだな。
 ex.DMMにある未見作を、下の方―配信開始の古い順―から無差別に見て行くかとしたところ、踏んでしまつた深町章1997年第二作。龍馬気取りの金玉が勝“まさる”を、もしくは勝も勝海舟の生れ変りと称する一方、冴子と鶴子まで二人して実は憧れる金玉にアテられたのか、自身らが龍馬ゆかりの女達の、転生であるのではなからうかと胸をときめかせる。どうかしたのか―明確にどうかしてゐるのだが―藪から棒なスピリチュアル方面に転んでみせる香ばしい展開に、またぞろ剽窃作の可能性を摸索しかけた下衆い勘繰りは、ほどなく霧消した。少なくとも、たとへばさういつた場合の大本命たるa.k.a.周知安の片岡修二が、斯様にスッ惚けた脚本を書く訳がない。ところがスピるならスピるで、徹しすらしやがらないんだな、これが。冴子と鶴子にしのざきさとみを前に、金玉が乱世を救ふ新しい教育方針とかいふ蕩けた方便で打ち出したのが海綿体、もとい快men隊スピリット。心配御無用、意味の名に値する意味なんてねえよ。プロのしのざきさとみから前立腺責めを学んだ冴子と鶴子が、勝に逆夜這ひを敢行する巴戦などは結構な完成度ながら、最終的には龍馬コスすら披露するに及ぶ金玉あるいは杉本まことが、端々でパチキン―武田鉄矢に対する蔑称―の物真似に戯れてゐてはどうもかうもあるか、映画が凡そ満足な体を成さない。何処まで壊れれば壊せば気が済むのか、仕出かす時の破壊力は珠瑠美をも実は凌駕する、盛大か壮絶な水上御大御乱心。随分な扱ひのしのざきさとみ以上だか以下に、エクストリームな悲運に見舞はれるのが何故かトメに座らされた熊谷孝文。どうやら完全に耄碌した深町章が山本竜二と勘違ひしてゐるらしく、山竜ならでは、といふか山竜でも往々にして大人の量産型娯楽映画を子供騙し未満に爆砕してのける、ある意味ダウナーなばか造形をアテられた熊谷孝文はものの見事に爆死。プリップリに弾ける水乃麻亜子の乳尻を、大人しく見せてさへゐれば幾らでも戦へたらうに。木に竹も接ぎ損なふドラスティックな悪手を異常な執拗さで繰り出し続けた結果、最早腹も立たぬ時間の無駄である。

 ただこれ、よくよく画像を探してみるに、ポスターでは水乃麻亜子と悠木あずみに続いて、しのざきさとみは三番手になつてゐる。となると今度は、そもそも本クレが腐つてゐたのかと別種か寧ろより性質の悪い、新たなるツッコミ処が発生するどうでもよからざる話でしかない。


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 「いんらん巨乳母娘」(1993/製作・配給:新東宝映画/監督:深町章/脚本:周知安/企画:田中岩男/撮影:稲吉雅志/照明:伊和手健/編集:酒井正次/助監督:原田兼一郎/監督助手:榎本敏郎/撮影助手:片山浩/スチール:津田一郎/録音:銀座サウンド/現像:東映化学/出演:しのざきさとみ・杉原みさお・凪?瑞?希・荒木太郎・山本竜二・池島ゆたか)。フォントが潰れ、三番手の頭二文字が判読不能。
 津田スタ外景にタイトル開巻、起床した杉原みさおの何気にウノローグ―宇能鴻一郎調モノローグ―が「私野沢悦子、短大に通ふ女子大生なんです」。短大に通つてゐるのを女子大生と呼んでいゝものか、早速疑問が脊髄で折り返しつつ、大手の就職内定も貰つた悦子(杉原)は“私のこの巨乳のやうに”、“夢もはち切れんばかりなんです”とこの世の春を謳歌する。ある意味、杉原みさおにして初めて形にし得る豪語ではある、臆面もなく。一方狭いダイニングキッチンでは悦子の母で、今にもエアロビでも踊りだしさうなラスタな色合ひの明子(しのざき)が、朝つぱらから競艇新聞に首つたけ。未婚で悦子を産んだ明子はかつては水商売、目下は博才で一人娘を育て上げ、てゐたものの。昨今は負けが込み、借金も重ねてゐる模様だつた。暗転した先は東京の繁華街、悦子と連れ立つ彼氏の轟渉(荒木)は、小説家を志望し大学を中退したフリーター。いや、あるいはだから、別に中退する必要ないから。それは兎も角、サイズからおかしな、丹前みたいに見えるへべれけなジャンパー―但し値段的には高さう、無駄に―の下に黒T。中途半端な太さの白い綿パンに挙句止めを刺すが如く、頭にはモルタルボードみの軽くあるベレーを載せた荒木太郎の壮絶なファッションの破壊力が凄まじすぎて、もう映画の中身なんててんで頭に入つて来ない。ピンクにつき衣装などといふ高邁な概念は―制服なりコスプレを除けば―基本的に存在せず、俳優部の私服である筈ならば、果たしてこの時、荒木太郎は何を血迷ふて斯くも素頓狂な扮装をしてみようと思つたのか。
 配役残り、ホテル代をケチッた悦子が轟を野沢家に連れ込んでゐたところ、明子が連れ込む山本竜二は、案の定負けた明子が競艇場にて五万を借り、た形に身を任せる男。「今日はツイてなかつた」と別に反省はしてゐない明子に対し、「穴狙ひすぎてんだよ」と観音様を指差した上で、自身のヤマリュー!を誇示し「俺みたいに硬く行かなきやよ」。山竜が、もしくは山竜の癖に手堅い文句を吐くと、何か余計鮮烈に聞こえる。池島ゆたかは遂に津田スタまで乗り込んで来る、明子に家を担保に金を貸してゐる本格的な借金取り・佐伯、と来ると下の名前は恭司にさうゐない。名義が判然としないではその他活動の形跡も追ひやうがない、謎の三番手に関しては後述する。
 自社物件なのに何をトチ狂つたか、新東宝ビデオのVHSジャケが星?瑞?希を伊藤舞とか大嘘表記してゐるのに、みすみすex.DMMの出演者タグも釣られる怠惰が情けない深町章1993年第二作。もう少し、ピンクに真面目に接して欲しい。因みに多分瑞希は瑞希で合つてゐるやうな気がする某瑞希と伊藤舞が、似てゐる訳でも全くない。見紛つた訳ですらない伊藤舞の名前は、全体何処から湧いて来たのか。
 ギャンブル狂の母親と、気が気でない娘の他愛なくさへない物語。手放しでスマートな劇中最大の妙手は、事実上野沢家をブン捕つた佐伯は母娘を―元々悦子の居室である―二階の一室に追ひやり、津田スタで囲はうと連れて来た愛人・ナツミが、後述するとしたナゾミズキ(推定)。尺の折返しも優に跨いだ、遅きに失する危機もぼちぼち覚えかねないタイミングでの、三番手を清々しいほどの円滑さで話の流れに取り込む、何気に練り込まれた論理性には深く感心させられた。反面、残念ながらその辺りが関の山。負ければ悦子ともども佐伯の愛人となる条件で、家を取り返すべく明子が挑んだ最期もとい“最後の博打”が、佐伯と明子の差し馬で行ふ麻雀の半荘勝負。母が卓を囲む姿を見て何時しか覚えた悦子は兎も角、ナツミは麻雀が出来ない中、劇画原作募集に応募しようと麻雀の勉強を始めてゐた、轟がのこのこ現れる、明子から出禁を喰らつてゐるのに。文字通り面子が揃つた瞬間の、王道展開ぶりは確かに煌めいてゐた、のだけれど。結局―のうのうとバレてのけるが―轟の起死回生、といふか要は紛れ中りの国士無双を佐伯がうつかり被弾。漁夫の利で明子が勝利を収める史上空前に自堕落なハッピー・エンドには、開いた口が塞がらないのも通り越し、欠伸はおろか溜息も出ない。随分昔から一貫して太つてゐる池島ゆたかは仕方ないにせよ、何故か杉原みさおと山本竜二までもが、常日頃より明らかにダッブダブ。乳が太ければ腹も少々太いとて構はない、とする倒錯した美意識に、当サイトは断じて与すものか。詰まるところはそんな二人が象徴的な、締まりを欠いた一作である。

 神の宿らない細部を思ひだした、純然たる些末ぢやねえか。元々賭け事は嫌ひな轟が、悦子に麻雀指南を乞はうとして「ホテル行つて教へて呉れないかなあ」。力任せに底を引つこ抜く没論理が、濡れ場の導入といふ一種宿命的な要請に粛々と奉仕する、寧ろ清らかな名ならぬ迷台詞には声が出た。


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 「人妻不倫・不倫・不倫」(1993/製作・配給:新東宝映画/監督:深町章/脚本:瀬々敬久/製作:伊能竜/撮影:稲吉雅志/照明:伊和手健/編集:酒井正次/助監督:今岡信治/監督助手:北本剛/撮影助手:村川聡/照明助手:広瀬寛己/録音:銀座サウンド/現像:東映化学/出演:井上あんり・しのざきさとみ・杉原みさお・斉藤桃華・杉本まこと・池島ゆたか)。照明助手の寛巳でなく広瀬寛己は、本篇クレジットまゝ。それと、jmdbに引き摺られたのか、所蔵フィルムからの翻刻を謳ふ、nfajまでもが助監督を今岡健治と記載してゐるのは頂けない、ちやんと信治でクレジットされてるだろ。
 よくよく見るとウォーリー感覚で池島ゆたかが紛れ込んでゐる、雑踏ロングにモノローグ起動。「私の名は兵頭六輔、長年勤め上げた興信所を辞め独立したばかりの探偵だ」。「探偵とはいつても」と、兵頭六輔(池島ゆたか/権藤六輔:川瀬陽太)が現実はレイモンド・チャンドラーの小説のやうには行かないのと、いゝ女も存在しない。とか自嘲したところでは、未だ気づかなかつた、何に。兵頭が松原和代(杉原みさお/沢井和代:薫桜子)から、夫の浮気調査を依頼される件。余所の女を抱いて来た夜は、入念に湯だけを浴びて来たと思しき典夫(杉本まこと/平川直大)が何の匂ひもしない寧ろ不自然と、さういふ時に限つて、妻を求める夫婦生活で辿り着いた、だから何に
 配役残り斉藤桃華が、課長である典夫の部下兼、浮気相手の霧島佑香。ビリング頭にしてはフレームの中にゐる時間から短い井上あんりは、六輔の妻・真理子(里見瑤子)。真理子がクラス会に家を空けた、日曜の昼下がり。鬼の居ぬ間に六輔が早速一杯始めたタイミングで、訪ねて来るしのざきさとみはお裾分けを持つて来た、隣家の小島房恵(小島晴美:春咲いつか)。房恵に関してもjmdb・nfajとも苗字を川島としてゐるものの、劇中に於いてはあくまで小島と呼称される。小島と川島、意外と手書きなら惜しいかも。与太は兎も角、さて。
 やあみんな、深町章ハンターだよ。今上御大の如くセルフリメイクするならまだしも、深町章1993年第一作が例によつて、瀬々敬久の書いた脚本を文字通り我が物面した、2007年第一作「若妻 しげみの奥まで」の元作。サルでも判る最大の相違点は、四番手の不在。但し「若しげ」に於いても、六輔が盗聴はする音声の中で、声だけ聞かせる佑香は春咲いつかが二役でアテレコしてゐる。加へて、「若しげ」ではその逢瀬を最後に結婚する佑香と典夫が―六輔の介入を待たず―勝手に別れてゐるため、のちに真理子との仲を疑つた六輔が典夫に接触した時点が、二人の初対面となるのも大き目な変更箇所。その他若干の固有名詞の差異はさて措き、「若しげ」が御馴染の聖地「花宴」でロケを張つた、伊豆映画であるのは視覚的にも如実な特徴。繋ぎの独白なり、くさめオチまで一緒とあつては、二作を比較する場合俳優部にでも目を向けるほかなく。さうなるとナオヒーローがどんなに頑張つたとて、全盛期のしのざきさとみと春咲いつかの絶望的な戦力差は、杉原みさおに対する薫桜子のアドバンテージをも相殺して文字通り余りある。何れにせよ、クラス会にて再会した真理子と典夫の関係に含みを残した上で、他愛なく濡れ場を連ねるのんびりした裸映画である点に何ら変りはない。今作を瀬々敬久の名に釣られ賞賛した手合は、きつと「若しげ」にも諸手を挙げたにさうゐない。もひとつ、世紀を跨いだ一回り以上の歳月と、結果としての平素通り平板な出来栄えを窺ふに恐らく、川瀬陽太は「若しげ」の脚本が元々、あるいは本来瀬々敬久のものであつたとは、知らなかつたのではなからうか。


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 「新・未亡人下宿 裏も表もあいてます」(昭和63/製作・配給:新東宝映画/監督:深町章/脚本:周知安/製作:伊能竜/撮影:稲吉雅志/照明:守田芳彦/音楽:二野呂太/編集:酒井正次/助監督:小原忠美・五十嵐伸治/撮影助手:片山浩/照明助手:田島昌也/録音:銀座サウンド/現像:東映化学/出演:黒沢ひとみ・秋本ちえみ・橋本杏子・ジミー土田・大部大極丸・山本竜二・池島ゆたか)。脚本の周知安と製作の伊能竜は、それぞれ片岡修二と向井寛の変名。
 何か大きな建物を建ててゐる現場にさつさとクレジット起動、流れ者ぽくダッフルバッグを担いだボッサボサ頭の男が、寄るとまさかの秋本ちえみ。一方、町のハッテンもとい発展を方便に立ち退きを迫る地上げ屋(池島)に対し、夫が遺した持ち家で下宿屋を営む野沢明子(黒沢)は頑なに固辞する。秋本ちえみのロングに監督クレジット、津田スタ外景にタイトル・イン。明子が池島(とりあへずな仮名)から自堕落なドラマツルギーで手篭めにされかけるタイミングで、津田荘(ウルトラ仮称)に新しく加はる丸井定子(秋本)が到着、明子は助け舟を出された格好に。定子が3号―劇中“室”は使用されない―に通される一方、一旦敗走した形の池島は、相棒兼情婦?の橋本杏子に協力を乞ふ。池島ゆたかとハシキョンの役名を、終にどうしても呼称して呉れない。
 配役残りジミー土田は、1号のサラリーマン・岩淵竜也。岩淵が帰宅すると定子の着替へを覗いてゐた大部大極丸は2号の轟渉、職業不詳。岩淵と轟が何時も二人で明子のオナニーを覗いてはマスをかく、朗らかに曰くセンズリ兄弟であるといふのはどうでもよさを爆裂させつつ、なほのこと芳醇な枝葉。それと小原忠美ではないゆゑ、冠二郎と今上御大を足して二で割つた感じの―どう読ませたいのかも判らない―大部大極丸は、五十嵐伸治の変名なのかなあ。兎も角、そして山本竜二が5号のオカマ、その名も岡万太郎。駅前の「クルージング」勤務で、源氏名はそのまゝ放り込んで来るマンコ、固有名詞なら許されるのか。最後に飛び込んで来る亡夫遺影がリアル家主の津田一郎かと思ひきや、ノンクレの鈴木幸嗣で名前は園山高志、死後明子が籍を抜いた模様。つか、その予想もどうなのよ。
 深町章昭和63年第二作は、自身三本目となる未亡人下宿。といふので改めて、目下総計二十八作を数へる未亡人下宿の沿革を大雑把に踏まへてみると。山本晋也は矢張り山本晋也でも、元祖無印第一作が実は新東宝「未亡人下宿」(昭和44/製作:東京興映/配給:新東宝興業/監督:山本晋也/脚本:原良輔/主演:森美千代)。その後全て買取系ロマポの、日活未亡人下宿がセミドキュメントだ新だ続だと、何だかんだで都合十六作(昭和49~59/全監督:山本晋也)。が終つた後に、「新・未亡人下宿 間借り穴借り」(昭和61/監督:深町章/脚本:周知安/主演:田口あゆみ?)で再起動した第二次新東宝未亡人下宿が今作まで全四作、第二作「新・未亡人下宿 夜の手ほどき」(昭和62/脚本:平柳益実/主演:新田恵美)のナベ(渡辺元嗣名義)以外は深町章。更にその後の20th century未亡人下宿は、謎のエクセス未亡人下宿「新未亡人下宿 地上げ屋エレジー」(昭和63/監督:田胡直道/脚本:大沢治/主演:伊藤久美子?)と、深町章1997年第一作「未亡人下宿 熱いあへぎ」(脚本:岡輝男・榎本敏郎/主演:田口あゆみ)。今世紀に入つては愛染塾長の「平成未亡人下宿 痴漢みだら指」(2006/脚本:寿希谷健一・愛染恭子/主演:天衣みつ)を経て、清水大敬による大蔵未亡人下宿「未亡人下宿?」シリーズ(2017~)が、現在進行形で今のところ四本目。何気に清大が、本数では深町章に並んでゐたりもする。
 池島が女を担当し、男はハシキョンに任せる。地上げ屋が店子の籠絡を自ら―津田荘に不法侵入して―図る肉弾戦法は、如何にも裸映画的な底の抜けた展開ながら、本丸に堂々と乗り込んでしまつた以上ロケーションごと限定され、賑々しく絡み絡みが連ねられるとはいへ動きに乏しく、明子が岡のセクシャリティをガン無視してのける、今の時代では到底あり得ない―にも関らずのうのうと仕出かす外様もゐるのだが―昭和の大らかさか仕方のなさ以外には、これといふ見所も見当たらない。定子の思はぬ正体が明かされる件も、如何せん深町章にはネタ自体の他愛なさを補ふに足るキレに欠き、池島がとつちめられる修羅場の雑さ通り越した酷さは、割とでなく映画に止めを刺す致命傷。尤も、ムカデ人間式の“〇”で岡が轟を吹いてゐるのは別に問題ないのかも知れないが、“サ”で轟が岩淵に挿してゐるのには双方の心中を察するに余りある、連結した男女で文字を成すピンク版モジモジくんともいふべき怒涛の5Pは締めの濡れ場云々いふよりも、あれやこれやの些末を有無もいはさず吹き飛ばす、捨て身の迫力に溢れる。


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 「未亡人いんらんONANIE」(1990/製作・配給:新東宝映画/監督:深町章/脚本:周知安/企画:伊能竜/撮影:稲吉雅志/照明:守田芳彦/編集:酒井正次/助監督:橋口卓明/演出助手:広瀬寛巳/撮影助手:鍋島淳裕・田中譲二/照明助手:尾田求/スチール:津田一郎/録音:銀座サウンド/現像:東映化学/出演:川奈忍・山本竜二・石川恵美・池島ゆたか・早瀬瞳・宗元大介)。脚本の周知安と企画の伊能竜は、それぞれ片岡修二と向井寛の変名。
 蝉の音鳴らした墓地のロング、浴衣の女が参る。クレジット起動と津田スタ夜景に続いて、山本竜二の遺影が飛び込んで来るのが開巻二十二秒。早いといふよりも速い、いはゆる未亡人ものの単刀直入な速度が清々しい。未亡人ものを撮る時は、誰しもが新田栄になる。
 朝顔柄の浴衣で悲嘆に暮れる野沢明子(川奈)が、始終そんなに徹底する訳でもないウノローグ―宇能鴻一郎調モノローグを略した造語―で「アタシ未亡人なんです」。三十八歳差と、明子は下手な親子より齢の離れた野沢俊介(山本竜二の一役目)と結婚した、ものの。新婚三日目に騎乗位の最中につき、俊介は腹上死ならぬ股下死、享年六十二。とか絡み初戦込みで明子が基本的な来し方を振り返つたところで、「ただいまー」と山竜ボイス。そんなこんなな目下、明子は俊介の連れ子―前妻の去就は一切等閑視―とはいへ、自身と同い年で大学生の大介(山本竜二の二役目)と二人暮らし。どうでもいゝが、大介は二十四で学部生なのか、医学部にも見えないし。閑話休題、ところで大介が最初は一見秀才ぽく見せて、次第に頬に刷いたチークも赤やかに、気がつくとトッ散らかるか、半ば以上にブッ壊れた何時も通りのばか造形。俊介が田舎の土地を売つた金が、まだ一億は残つてゐる筈だと主張する大介が有無から行方不明な預金通帳の探索を明子に促す一方、俊介の弟・コースケ(池島)が妻の悦子(石川)を伴ひ野沢家を来訪。明子の将来を鑑みて云々の一点張りで、野沢の家から籍を抜くやう勧める。
 大介を養子に迎へる形で遺産を狙ふコースケの思惑は、明子の予想外に固い、義息の面倒を見る決意で一旦頓挫。石川恵美の痴態がエクストリームな夫婦生活を入念に見せた上で、悦子は息子が駄目なら、大介を弟にする奇策を思ひたつ。配役残り、早瀬瞳は悦子が対大介に放つ、妹の倫子。さう来たか!といふ片岡修二らしいグルーヴ感が、今作のハイライト。そしてよもや大介役を、あるいは大介分もわざわざ別にクレジットしたのか?と最後まで読めなかつた、如何にも変名臭い宗元大介―次元を捩つたのかなあ―は、津田スタを急襲するオチ担当の借金取り。サングラスを更に別人の声がジャミングして甚だ判り辛いが、多分アテレコ―主不明―されたひろぽん。
 ビデオ題が邪魔臭くて一覧から未見作を探すのが正直無駄に骨の折れる、深町章1990年第七作。野沢埋蔵金を巡る騒動が最終的には他愛ない帰結を迎へ、明子と大介の疑似近親相姦物語も、相変らずな山竜がガッチャガチャに水を差す締めの濡れ場で、逆の意味で見事にドッチラケる。面白くない詰まらないでいふと煌びやかに見所を欠くかに映りかねない一作ながら、スッカスカな展開の隙間を女の裸で埋め尽くす量産型娯楽映画としての充実さあるいは誠実さと、何、より。大介を籠絡するべく飛び込んで来た倫子が、一戦カマすや御役御免と退場。話の流れを阻害するでも木に竹を接ぐでもなく、本筋に全く即した上での、なほかつ鮮やかな一撃離脱。何気に完成された、三番手の起用法が実は感動的。慎ましやかに研ぎ澄まされた、論理と技術が静かに火を噴く匠の一作。寧ろ以降の終盤丸々を、ロンゲストな蛇足と捉へてしまへ。


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 「特写!!13人のONANIE」(1990/製作・配給:新東宝映画/脚本・監督:深町章/企画:伊能竜/撮影:稲吉雅志/照明:佐久間勝/編集:酒井正次/助監督:橋口卓明/演出助手:松本憲人/撮影助手:佐藤和人/照明助手:中島一/スチール:津田一郎/録音:銀座サウンド/現像:東映化学/出演:橋本杏子・加賀恵子・伊藤清美・井上真愉見・南野千夏・森みなみ・高中流水・中村京子・深田みき・鴻港しのぶ・香川久美・津村梅子・榊原いずみ・池島ゆたか・山本竜二)。
 Vサインみたいな凄い兎の浮かんだ満月に、「人妻13人絶叫黙示録」のVHS題開巻。如何にも作り物じみたあり得ない形の兎さん以前に、満月の外周が―月より―手前にある筈といふか、手前になくては絶対におかしい、木々を結んだラインを満月の外周が削つてゐるのだけれど、何処までいゝ加減な画なのか。そんな宇宙の歪んだ、岩形県変木郡落目村、ヘンボク郡の漢字は推定。助役(山本)と杯を交す村長・池ノ上豊太郎(池島)のが第一声が「いやあ参つた」と、画にでも描いたかのやうに判り易く困り果てる。その過剰なくらゐの判り易さは、決して藪蛇なクリシェなどではなく、量産型娯楽映画にとつて一つの肝要なのでなからうか。さて措き池ノ上が頭を抱へるところの所以は、昨夜シゲゾーの娘・サエコ(二人とも名前が口頭に上るのみ)が村を出ての、村内未婚女性消滅。即ち、深刻通り越して詰んだも同然の嫁不足。にも関らず、多分女郎的な三本杉のオサネ(橋本)の下に一週間ぶりで遊びに行つた池ノ上は、オサネがその間ONANIEで火照つた体を鎮めてゐたと恨み節を垂れるのにユリイカ!どうせ役所的なロケーションの工面を回避したにさうゐないが、池ノ上はわざわざ神社の境内に助役を呼びつけ、一ヶ月の東京出張を藪から棒に厳命。独り身をワンマンショーで慰めてゐる女の個人情報を助役にファックスで送らせた上で、集団見合の案内状を送りつける。とかいふのがオサネとの遣り取りを通して、池ノ上が閃いたミッション。深町章にしては秀逸すぎるやうにも思へて来るのは、何も当サイトが勘繰らせた邪推といふばかりでは必ずしもなく、他人に書かせた脚本を、さんざ剽窃してゐた報ひと解して頂きたい。
 いざ上京、右も左も判らない助役が、往来にて靴を飛ばしとりあへずの行き先を決めるのに、いきなり爪先が向いた方向とは逆に向かつてみたりする、早速底の抜けた珍道中。辿り着ける限りの配役残り、声で判る南野千夏が、最初の東京部。といつて、居室はオサネ宅同様、毎度御馴染津田スタで撮影してゐる点に関しては、改めて断るまでもあるまい。深田みきは何某かの理由で、中華まんとファンタグレープを暴飲暴食する二人目。のちに登場するナカキョンをも圧倒する、まるで風船みたいな爆乳が凄え。加賀恵子は、AVとバイブを使用する三人目。東京部中唯一役名の判明する伊藤清美が、風呂場で自慰に励む伊藤光子。この辺りから、確かに映画が窮屈にはなる覗き視点を放棄、截然と開き直り始める。女のつもりで覗いてゐたところ、男だつた美青年は綺麗に抜いて呉れないが、恐らく橋井友和。中村京子は、五人目の東京部(不明)と百合の花咲かせる六人目。後述するウェルカム落目村の狂宴に参加してゐるゆゑ、二人ともバイの模様。井上真愉見は生理中の看護婦、生理中にも看護婦にも、別に意味はない。助役が一人一人追つて行くのは、八人目となる北条杏子似の和服女まで。
 一月封切りの今作がもしかすると対正月戦線用の目玉で、矢張り深町章の五作後、八月公開の「激撮!15人ONANIE」(脚本:周知安/主演:岸加奈子)は多分盆。十二月の「実体験リポート ★13人★SEXパーティー」(構成・演出:業沖九太=北沢幸雄/ビリング頭は芹沢里緒)も、また年が明けての正月映画か。新東宝がこの頃余程景気がよかつたのか、ともおいそれと思ひ難いところではあれ、兎も角闇雲な女優部大量投入を一年に三度も繰り出してゐた、一の矢たる深町章1990年第一作。げに賑々しく、麗しき昔日よ。
 嫁の貰へぬではやがて男も郷里を捨てる、落目村存亡の危機の打開を図る破天荒な奇策。裸映画的にも勿論狂ほしく相応しい、見事な展開には「さう来たか!」と確かにときめいた。さうは、いへ。七組計八人を助役が順々に出歯亀して回る件が、気づかれては他愛ない小ネタで誤魔化し―損ね―て、気づかれてはまた誤魔化し―損ね―ての結構か大概な一本調子。折角の奇抜なプロットが膨らむ訳でも特にも何も全くないまゝに、池ノ上と助役にオサネ、東京からの参加者は南野千夏から和服まで全員出動の八人。“歓迎落目村”の手書き画用紙も踊る、十一人詰め込むと流石に手狭な、例によつての津田スタ和室。ところが現地隊の青年団が、前祝ひに羽目を外した挙句食中毒で壊滅。池ノ上はすたこら逃亡する中、さりとて池ノ上が盛つた媚薬にキマッた女達の渦に、山竜が呑み込まれる勢ひ任せのラストは、正直人海に胡坐を掻いた振り逃げ勝負と片づけて片づけられなくもない。女体に埋れた山竜が見えなくなるほどのある意味壮観を、エロスの霧散と難じるか、グルッと一周した一種のスペクタクルと称揚するかで、評価の大いに分れよう一作である。

 意図的に通り過ぎたが、改めて今作のコンセプトを再確認しておくと、レス・ザン・ブライドに悩む落目村に、東京から男日照りと思しき女達を捕まへて来る。ぞんざいな方便の是非に関しては一旦かこの際兎も角、だからさういふ趣向だといふのに、ビデオ化に際して“人妻13人”とか素頓狂なタイトルをつけてのける新東宝のセンス、いゝ加減な仕事にもほどがある。土台が何が黙示録か、バチカン怒つていゝぞ。
 最後に、見合会場に於ける東京から参加者八人の並びは、画面手前から時計回りに、和服・深田みき・南野千夏・ナカキョンのパートナー。上座の池ノ上と助役にオサネ挿んで、井上真愉見・加賀恵子・光子・ナカキョン。女達が池ノ上から送られて来た手紙に目を通す件に―のみ―登場する、不脱の謎美人入れてなほ名前が二人分余るやうな気がするのは、よもや加賀恵子がオカズにするアダルトビデオに出てゐる女と、電話帳記載の住所から光子に辿り着く前段、助役が話を訊く煙草屋のex.看板娘まで含まれてゐるのか?


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 「満員通勤電車 集団痴漢」(昭和63/製作・配給:新東宝映画/監督:深町章/企画:伊能竜/撮影:稲吉雅志/照明:守田芳彦/編集:酒井正次/助監督:幡寿一/監督助手:中村和愛/撮影助手:青木克弘・林憲志/照明助手:小田久/スチール:津田一郎/録音:銀座サウンド/現像:東映化工/出演:相原久美・中村深雪・秋本ちえみ・川奈忍・橋本杏子・ジミー土田・成田誠・山本竜二・池島ゆたか)。助監督の幡寿一は、佐藤寿保の変名。jmdbは深町章とする脚本がスッ飛んでゐるのは、本篇クレジットまゝ。
 サンヨーのCDラジカセ点火、ゴトンゴトン鳴り始める電車音を追つてクレジット起動。老けメイクの池島ゆたかが神妙な面持ちで耳を傾け、日に焼けた相原久美が、えつちらおつちら危なかしくガラス戸を運ぶ。「幾ら昔電車の中の掏りで財を成したからといつて」とか、清々しい説明台詞でユミ(相原)が不満を垂れつつ、表だけ適当に抜く豪邸にタイトル・イン、中は何時も通り津田スタ。小出しされる設定を整理すると電車スリ長者―実に奮つてゐる―の仙三(池島)は、今や男性機能も失し侘しい独居。女優志望の女子大生であるユミを仙三がバイトで雇ひ、ユミと同居する、脚本家志望のミカが書いたシナリオを元にした電車痴漢プレイで回春を図る。だなどと、凝つてゐるのか矢張りいゝ加減なのかよく判らないコンセプトの上、例によつて互ひに全く連関しない、無頓着なオムニバスが出発進行するといふ次第。
 配役残り、成田誠は他三名と公開題を偽らぬ集団痴漢を敢行する痴漢師で、川奈忍がその獲物。問題が、他三名のうち二名が識別不能。川奈忍を囲む時計回りで最後が模造山宗的な成田誠、三人目は恐らく、現状確認し得る、二番目に古いキャリアとなる中村和愛。最古は今作の二週間前に封切られた、片岡修二同年第五作「人妻ワイセツ暴行」(脚本:瀬々敬久/主演:風見怜香)。最初の男がどう見ても佐藤寿保には見えず、佐々木浩久似の二番目も心の底から誰だこれ。川奈忍が痴漢させた男から掏るスリ師で、手業込みで一番気に入つた成田誠を、現行犯逮捕を装ひ連れ込みに拉致るオチ、川奈忍のオッパイがヤベえ。そして綱島渉か蘭汰郎、あるいはより時代的に近いところだと、頂哲夫にそつくりな逸―脱した素―材である中村深雪が件のミカ、ユミとは男女ならぬ女女の仲。橋本杏子とジミー土田は、向日葵の髪飾りをつけてゐる女と、向日葵の髪飾りを目印にした、デートクラブの嬢と車内ランデブーする手筈の男。偶々向日葵をお召しになつてゐただけのハシキョンにジミ土が誤爆する、自脚本にしては複雑であるやうに、思へなくもない一幕。凄まじいアイシャドウ―が地味に秀逸な造形―の秋本ちえみと山本竜二は、クリームまで持ち出し菊門責めを所望する秋本サキコと、捕獲されるヒムセルフ。サキコがアテレコ主不明―の男声で―でチョイチョイ顕す本性に、ネタが割れるパンチライン。
 未見作が結構ex.DMMに残つてゐるぽい、深町章昭和63年第五作。当サイトの通過本数的にナベなり浜野佐知を躱すのは確実、新田栄にも届くのかな?さう来た日にはエク動に、ジャンジャン気を吐いて貰ふほかない。
 何れもとりあへずオトしてみせるだけまだマシな部類、といつた三篇の連なりに然程どころでなく面白味なり趣があるでなく、セコい影絵で仙三―の逸物―が徐々に回復を果たす、他愛ない本筋にしても同様。悪い意味での男顔に劣るとも勝らず、壮絶にダサいヘアバンドに失神しさうになる中村深雪と、百難隠す命綱をも、日焼けで失した主演女優。ただでさへ心許ないビリング頭二人が、普通にクリンナップとして成立し得る後ろ三人に爆殺されるしかない、そもそも頭数自体藪蛇な布陣が如何とも切ない一作。一応二番手であるにも関らず、中村深雪にとつて唯一かつ五人中最も束の間な濡れ場となる、ユミと咲かせる百合をあまりにも唐突すぎて吃驚させられるド中途でブッた切つての、橋本杏子パートに移行する無造作極まりない繋ぎの衝撃が、琴線の触れ具合に於ける、この際正負は問はない最大値であつたりもする。


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