「変態姉妹 ナマでお願ひ」(1995『エッチな姉妹 出張逆ソープ』の1998年旧作改題版/製作・配給:大蔵映画/監督:小林悟/脚本:如月吹雪/撮影:柳田友貴/照明:荻久保則男/編集:㈲フィルム・クラフト/音楽:東京BGM/助監督:国沢実/録音:シネ・キャビン/効果:サウンドBOX/スチール:佐藤初太郎/フィルム:AGFA/現像:東映化学㈱/タイトル:ハセガワ・プロ/協力:東京TSミュージック/出演:田村ちなみ・氷室真由美・東美由紀・吉行由美・門倉達哉・白都翔一・樹かず・港雄一)。
逃げる男と追手が四人、マルイ表の新宿にタイトル・イン。追はれるのは出張ホストの木下浩(門倉)で、追ふのは樹かずをリーダー格に、国沢実は含まない特定不能のその他三名。「チキショー、あの女の亭主がヤクザだつたなんて」と、木下の清々しい説明台詞を経て回想パートに突入。最終的には木下がチェンジを喰らつたクライアント(氷室)が、ヤクザの女房であつたとかいふ次第。動体視力のテスト級に、TSミュージック(2017年閉館)の看板を何故か瞬間的に抜いた上で、木下と、帰宅途中の女子高生・繭(田村)が交錯する。
配役残り港雄一が、四人を引き連れ木下自宅マンションの外階段踊り場に陣取る、氷室真由美の旦那で何処ぞの組長。組長自ら、堅気相手に出張んなや。白都翔一は、繭が元々二人暮らししてゐた姉の、内縁の夫か情夫・永山。姉との関係継続をちらつかせ、日々繭に手をつける。そして鬼の形相で田村ちなみと白都翔一の絡みに介入する吉行由美が、繭の姉・裕美。裕美のレイジの矛先は、永山ではなく繭に。すつかり消沈して肌を隠す繭のすぐ傍ら、裕美と永山がオッ始める一幕。頻りに繭にも伸びる永山の手を、裕美が無言で払ひ続ける人を喰つたシークエンスが堪らない。何はともあれ103cmを刻み込む東美由紀は、ヤサにも戻れない木下が頼る、ソープのユキさん。繭は裕美から脊髄で折り返した、無造作な無体さで放逐。一方ユキからも袖にされ、帰るアテも行くアテもなく途方に暮れる木下は、漏れ聞こえるハミングの野ばらに誘はれ、取り壊し予定の母校中学校校舎に忍び込んだ、繭と再会する。と、いふか。新宿にて一回交錯してゐる以上、厳密には確かに再会である筈が、繭と木下のサプライズをものの見事にスルーして済ます豪胆な大らかさが、貫禄の大御大仕事。
バラ売りex.DMMに新着する度ホイッホイ飛びついてゐるのに、彼岸、もとい悲願のハンドレッドにはまだまだ、まだまだ果てッしなく遠い小林悟1995年第三作、ピンク限定第二作。姉の男から要は日常的に犯されてゐたどころか、寝取つたと誤認した姉に追ひ出された少女と、下手を打つた大学生の出張ホストが都会の片隅にてミーツする。と掻い摘むと一応映画的な物語にも思へ、如何にもTS臭い美人ではあれ表情の乏しい女優部と、万事頓着ない小林悟の、ある意味器のデカい演出とに遮られ、情感は一向に深まらない。頑ななまでに悲壮感を拒む繭の浮き足立つた造形には、寧ろ自動なり通俗的、あるいは惰弱な感情移入を拒む、厳格なストイシズムをも覚えるべきなのか。小林悟映画の常で、たとへば久須美欽一の如く何気に長けてゐる訳でもないのに、港雄一の途方もなく長い濡れ場を通して繭がその身を捧げたにも関らず、結局一件を収束させる切札は、だから堅気のセイガク相手にエンコ。小指を失つた木下と繭が、兎も角新しい日々を迎へる的なぞんざいなラストには、最早ある種の虚無主義さへ漂ふ。
さて、豆腐に鎹でも打つか。元題は繭と裕美の“エッチな姉妹”に木下の施す“出張逆ソープ”と、実際の本篇に珍しく綺麗に即してゐる。他方新題に関しては、“変態姉妹”のグルッと一周した無味乾燥さはこの際さて措き、姉は兎も角、少なくとも妹の方は永山と木下に劇中都合二度装着を求める、明々白々なコンドーム推奨映画であつたりもする。
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