真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「痴漢電車 尻を撫でまはす」(1991『痴漢電車 通勤濡れ事師』の1996年旧作改題版/製作・獅子プロダクション/提供:Xces Film/監督:笠井雅裕/脚本:五代響子/撮影:下元哲/照明:白石宏明/編集:酒井正次/助監督:今岡信治/監督助手:国分章弘/撮影助手:小山田勝治/照明助手:市川達也/スチール:佐藤初太郎/車輌:広瀬寛巳/録音:銀座サウンド/現像:東映化工/出演:相原めぐみ・水鳥川彩・南野千夏・中村京子・杉下なおみ・中山久美子・小林節彦・田向宝史・川崎季如・岡田英一・田村日出海・高橋政則・国分章弘・山崎光典・榎本祥太・広瀬寛巳・和加山雄三・山本竜二・池島ゆたか・荒木太郎)。出演者中川崎季如から高橋政則までと、山崎光典から和加山雄三までは本篇クレジットのみ。寧ろ、特定出来るほど大きな役でないにも関らず、国分章弘が―川崎季如もさし措いて―何故ポスターに載るのか不思議。
 蝉の音鳴る境内、セーラー服のミヤコ(相原)が、「どうか一郎さんがエッチなことばかり考へませんやうに」とお参り。すると当の今村一郎(荒木)がおおいとミヤコの名を呼びポップに登場、ユニオンジャックのタンクトップに、鍔を畳んだ二つ折りを合はせた荒木太郎のファッションが眩しくてクラクラ来る。田舎を捨て上京を決意した一郎に、ミヤコも脊髄で折り返して追随。所謂ABCのCは一郎が一人前になつてからといふ条件つきでの、青姦開戦、相原めぐみの超絶オッパイが火を噴く。都心の幹線道路を横断する鉄橋のロングに、ファンファーレ的な劇伴が堂々と起動してタイトル・イン。サクッとサラリーマンになつた一郎が、ナツミ(水鳥川)に限りなく自動的な勢ひで電車痴漢。ナツミもベロチューで応じるお熱い様子に、小林節彦×山本竜二×田向宝史が憎々し気にガンを飛ばす。中途で降りた一郎を、岸本学か勉(山本)以下「痴漢卍党」が捕獲。三人がかりでボコッた上、シマ荒らしの痴漢が出来ぬやう、コバセツは一郎の右手をブロックで潰す。無闇にブルータルな界隈だといふのは兎も角、うつらうつら、もといつらつら進行する高速展開が実に心地よい。
 配役残り杉下なおみは、懲りずに一郎が電車痴漢を働く被弾要員。池島ゆたかはその現場を目撃し感心、一郎に接触を果たす、三年前に引退した痴漢一筋五十年のベテラン痴漢師・桃山才蔵。自身が七連覇も果たした、優勝すると縄張りフリーで痴漢の出来る、痴漢道チャンピオンシップに一郎の参加を促す切り口が、「お主、痴漢に人生を賭けてみる気はないかね?」、なんて鮮やかなんだ。中山久美子は、岸本がナツミと会敵する一方、コバセツと田向宝史に輪姦される被弾要員。とかくこの映画、信じられないくらゐ破天荒な濡れ場を、勿論他の、あるいは素面の乗客も乗る実車輌で大敢行してのける。南野千夏は痴漢卍党を従へる、ビザールな姐さん。四人が稽古する道場にナツミが現れ、弟子入りを直訴、認められる。中村京子は、心臓に爆弾を抱へる桃山を、看取る格好となる被弾要員。川崎季如(a.k.a.川崎浩幸/a.k.a.かわさきひろゆき)は、“新都庁完成記念杯”を冠して執り行はれる痴漢道チャンピオンシップの審判、虚仮威し具合も清々しい。国分章弘と本篇クレジットのみ隊は乗客要員といふよりも、主に選手権に参加するその他痴漢部か。凡そ三十年前ともなると当然に過ぎないがひろぽんが若く、今岡信治の髪も黒い。
 神野太の「女子大生 わいせつ集団」(1991/主演:野坂なつみ)に引き続き、チョロメで突破したエク動で笠井雅裕1991年第二作。当面、あるいは早くも。これでエク動の中に未見作はなくなつてしまつたが、何か入れて呉れたら何時でも釣られる用意はある。旦々舎なり新田栄なり、弾はなんぼでもあるぢやろ。監督デビュー後の笠井雅裕(a.k.a.カサイ雅弘)は足掛け五年でピンク十四本と薔薇族二本を残し、以降はAVを主戦場に、今なほ現役。その間『PG』―前身の『NEW ZOOM-UP』―誌主催のピンク大賞(昭和63~2018)に於いてはそれなり以上に常連でもあつたものの、当時何を以て笠井雅裕が然様に持て囃されてゐたのか、未だ半分も観るなり見られてゐない当サイトはてんで理解してゐない。
 昔気質の師を得た劣情もとい情熱と才能に溢れた若き主人公が、新興の邪道組織と対決する。オーソドックス極まりないフォーマットと、痴漢電車を何も考へず素直に直結。九月公開となると別にお盆映画といふ訳でもないのに、中村京子をもが四番手に控へるアメイジングに豪華な布陣を擁し、卍党の特訓風景は、概ねどストレートな乱交で消化。師の死といふイベントにも女の裸はガッチリ欠かさず、桃山の屍を乗り越えてなほ、最終決戦に挑まんとする一郎にミヤコがその身を遂に捧げる濡れ場は、中途で済ますのが激しく惜しいエモーションを撃ちかける。結構な人数が参加した選手権を、開始の合図で皆が―多分駅に―爆走するカットから、ザクッと岸本V.S.一郎の決勝戦に端折る大胆な繋ぎは御愛嬌。そこかしこどころか至るところ大雑把といふ面に於いては必要な手数は足らないにせよ、不用意な色気なり余計な意匠も特には見当たらない中、六十分にも幾分余した尺を、一息の勢ひで綺麗に駆け抜ける。何より、物語が痴漢電車でなくてはならない、この上ない必然性の強さが素晴らしい。消費され後には何も残さない、量産型娯楽映画の宿命に潔く殉じたといふ見方も成立しようかとはいへ、歴史の海に沈んだもしくは、より直截には塵の積もつた山に埋もれた、一度通れば忘れ難い痴漢電車の佳篇。七十二時間の視聴で四百円は決して安くはないが、かうして見られてよかつたのと、笠井雅裕を、少しだけ見直した。


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 「盗撮レポート 陰写!」(1991/製作:新東宝映画株式会社/配給:新東宝映画/監督:佐藤寿保/脚本:渡剛敏/プロデューサー:田中岩夫/撮影:稲吉雅志/照明:佐久間優/音楽:タートル・ビジョン/編集:酒井正次/助監督:梶野考/監督助手:今岡信治・須川修二/撮影助手:片山浩/録音:銀座サウンド/現像:東映化工/出演:高樹麗・杉下なおみ・深田みき・池島ゆたか・山本竜二・渡剛敏・小島邦彦・岩淵理子・田向宝史・征木愛造・今泉浩一・伊藤清美)。
 砂嵐が瞬間的に反転して、ビデオ題「となりの女子高生~ウリと覗き~」でタイトル・イン。再反転した先は、赤外線カメラで撮影したとかいふ凄まじくラフな画像。盗撮のプロ・エイジ(今泉)が、鬼のやうに青姦の盛んな公園でそこかしこを狙ふ。ファインダーから一旦顔ごと目を離した、エイジは回想に突入。正直セーラー服はキツい伊藤清美が、ストッキングで武装した男子三人(恐らく演出部)に輪姦される。その模様にも、カメラは向けられてゐた。
 配役残り小島邦彦か田向宝史は、エイジの腕を高く買ふ制作会社の多分社長。見映えするいい面相ではあれ口跡は素人かと匙を投げかけたものの、よくよく考へてみると今泉浩一も素人同然だつた。センシティブな雰囲気イケメンは兎も角口を開くと素頓狂な人ゆゑ、途端に映画がダサくなるか安くなる印象は否み難い。杉下なおみは、エイジが自室に呼ぶデリ嬢。わざわざ絡みをエイジが要はハメ撮り風に回すカメラ越しにして済ます、女優部の無駄遣ひ。そもそもそんな真似を仕出かして、嬢以前にお店から怒られないのか。岩淵理子は、エイジが制作会社氏の要請を受け撮影に向かつた、立ちんぼ部。深田みきも立ちんぼ部で、池島ゆたかが深田みきの客。盗撮映像風の不自由な画面の中でも、深田みきの爆乳は絶大な威力を発揮する。女子高生・サキ(高樹)が客(山本)を取る現場を追ひ駆けたエイジは、サキがカッターナイフを水平に一閃、男の両目を切り裂く惨劇を目撃する。佐藤寿保の硬質な演出におとなしく統べられ、山本竜二々流、もとい一流のメソッドでトッ散らかしはしないことと、伊藤清美に劣るとも勝らず、完全に大人の顔の、高樹麗のセーラー服もまあキツい。
 再度配役続き、田向宝史か小島邦彦と、梶野考の変名である征木愛造は劇中二人目と三人目の、山竜に続く被害者。画が遠いか暗いか粗いか、あるいは俯瞰を多用する画角か最終的には赤く入る目線で、客―もしくは被害者―部が激しく特定不能。改めて伊藤清美が、凌辱され壊れたマキ、サキの姉。そして、下手をすると脚本家よりも、俳優部としての仕事の方が多いのかも知れない渡剛敏は、エイジがサキに受けさせるビデオセラピーのセラピスト。
 国映大戦番外篇第二弾、佐藤寿保1991年第四作。jmdbが配給を新東宝と国映の共同としてをり、それならば正規ナンバリングの第十六戦で構はないかとも思つたが、あくまでクレジット上では確認出来なかつた。精力的、なほかつバラ売り・月額同時に国映作ないし国映系を新着させ続けるインターフィルムに、当サイトはついて行く、予定。
 奇抜な大風呂敷を、畳む手間など顧みずほしいまゝにオッ広げ倒す夢野史郎(a.k.a.大木寛/a.k.a.別所透)に対し、渡剛敏は狂気が伝播する外堀を、如何にも佐藤寿保が好き好みさうなビデオ・インスタレーション込みで丁寧に埋めて行く。結果話の判り辛さ、ないし観客の置行堀は概ね解消される反面、選りにも選つて謎解きを渡剛敏自らに委ねてしまつたのも禍し、今度はまどろこしくなつてしまふのは難しい諸刃の剣。冗長さが頂点―だか底―に達するのが、残念極まりなくもクライマックス。清々しいほどの世界の狭さが収束するのは兎も角、エイジが気づいた次の刹那、間髪入れずにズバッた方が絶対より鮮烈なのにとしか、純然たる素人考へながら思へない。


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 「野坂なつみ 本番援助交際」(1991『女子大生 わいせつ集団』の1997年旧作改題版/製作:オフィス・コウワ/提供:Xces Film/脚本・監督:神野太/プロデューサー:高橋講和/撮影:小山田勝治/照明:白石宏明/編集:金子尚樹《フィルム・クラフト》/音楽:伊藤善之/助監督:藤本邦郎・木村明生/撮影助手:小島裕二/照明助手:五十嵐丈水/メイク:信沢理恵子/現像:東映化学《株》/録音:ニューメグロスタジオ/効果:協立音響/タイトル:ハセガワプロ/協力:日本映機、オノライト、報映産業、フィルム・クラフト、サクラミュージック《SAKURA》、ラストショーカンパニー、にっかつスタジオセンター/出演:野坂なつみ・大友梨奈・渡辺千尋・秋吉貢次・足立修治・平賀貫・金丸和久・大塚秀喜・山口健三・藤本一郎・木村章)。出演者中、山口健三は本篇クレジットのみで、謎の平賀貫がポスターには普通に平賀勘一、平賀貫名義なんて初めて見た。
 ナイトランプにハモニカ音、多分今は社会に出た関口トモコ(野坂)の部屋にて、恋人の橋本トシヒコ(秋吉)が正常位挿入。中途で大きなクマさんから入る事後、橋本が関係のマンネリを棒口跡で難じるのを、トモコは寝たふりでスルーする。消灯して、おピアノが起動する雨の路地。トモコが帰宅すると、友人の白川深幸から手紙が届いてゐた。開封したところ上手い具合に飛び出て来た写真は、深幸(大友)と白川パイセン(平賀)のツーショット。トモコが頬を綻ばせ、田舎の山に“三年前”。悉く回避する気配に不安も徐々に覚えつつ、二番手・主演女優・三番手の並びで線路をほてほて歩くスタンド・バイ・ミーに、六分半漸くのタイトル・イン。子供と動物が主人公の映画は観ないマイ掟にしてゐるゆゑ、スタンド・バイ・ミー実は未見なんだけどね。
 判別する限りの配役、渡辺千尋はトモコ・深幸とトリオ的な森田チカ、深幸の旧姓は今泉。足立修治は、何処ぞの海町にある実家か別荘かよく判らん、兎も角白川の下に向かふ途中、ガス欠で車をエンコさせるユタカ、チカの彼氏。多分葵なり青井の一度きり呼称される苗字が、上手く聞き取れない。山口健三は、酔ひ潰れたか潰した深幸の破瓜を散らす、ある意味山口健三らしいハマリ役。その他男優部に、手も足も出ない。残りは橋本との関係に煮詰まつたトモコが相談の電話をかけた際の、チカが大絶賛それどころでないお相手。白川との間に生まれた因縁の詳細は綺麗に等閑視して済ます、治外法権にヒャッハーなチンピラ二人組、以下仮称ヒャッハーズ。チカのセフレ?とヒャッハーズの間に見切れる、ユタカが給油を果たすスタンドの店員までビリングに名前を連ねてゐなければ、頭数が合はない。
 IEでは見られないエッジ推奨の、エクセス公式サイトの配信動画・エクセス動画。そんな、端から敷居の高いエク動がチョロメだと突破出来ると教へて貰ひ、遠征が一時?止まつて生まれた時間に辿り着けたか手をつけた、神野太「ガッデム!!」(主演:小沢仁志)挿んで通算第三作、ピンク映画第二作。当然、少なくともex.DMMには入つてゐない。当サイトに来るアレな大人のみんなも、エクセスにお金を落とさう!ところで「喪服妻と老人 昇天奥義」(2008/主演:友田真希)以来、暫し名前を耳にしない神野太は、川瀬陽太のツイートによると制作会社が仕出かした金銭トラブルに巻き込まれ、足を洗つたらしい。
 初めて触つてみたエク動は、画面の大きさが―黒縁込みで―四分の一弱のデフォルトと、全画面の二つに一つのみなのと、十秒と一分刻みで後から前から、もとい後にも前にもスキップ可能なDMMプレイヤーに対し、ボタンが再生と一時停止しかないのが激しく使ひ勝手が悪い。上に、エッジを推奨してゐるものをチョロメで開いてゐる所為なのか、画質もどちらかといはずとも低い。それでも、みんなもエクセスにお金を落とすのよ(๑❛ᴗ❛๑)
 映画の中身に話を戻さうにも、戻すほどの中身もないんだな、これが。で終ると、それこそ実も蓋もない。倦怠期に陥りかけた、トモコと橋本の三年前。未だ性行為に慣れぬトモコに橋本が一旦匙を投げての、微妙な空気の中での小旅行。各々ヒャッハーズに犯されたトモコと深幸が、橋本と白川パイセンと改めて結ばれる人を喰つた展開を、橋本とヒャッハーズをシメに行つたユタカに惚れ直した、チカも追走する。へべれけな濡れ場トリプルクロスはそこだけ掻い摘めば流石エクセスな腰の据わつた裸映画にも思へ、回想パート中更に捻じ込む再回想の入りが結構へべれけで、時制は自堕落に混濁。正直スッカスカに薄い物語を、雰囲気ナーバスかセンシティブに矢鱈とマッタリ回す尺。挙句そこそこ以上の三本柱を擁してゐながら、絡みを何ひとつ完遂するまで描かないスカした姿勢は、激しく癪に障る。端的に、裸と映画の二兎を力なく捕まへ損ねた、デビュー当初らしいで片付ければそれまでの、桃色よりも青臭い一作。居間にてヤッたまゝ寝てしまつたチカとユタカの傍ら、白川と橋本が平然と朝食を摂る。正体不明に無造作なカットが、明後日か一昨日な琴線に触れる。何はともあれ、詰まらないのも面白くないのも、見てみないでは判らない、始まらない。

 とこ、ろで。三年前のトモコらが女子大生ぽいのは、明示はされないものの何となく通るにせよ、本番だらうと疑似だらうと、劇中“援助交際”なんて素粒子一粒ほども見当たらない件。幾ら旧作上映に際しての便宜的な新題とはいへ、一本の商業映画の公開題が内容に全く即してゐなくとも別に構はない、世界の清々しさ、プライスレス。


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 「変態姉妹 ナマでお願ひ」(1995『エッチな姉妹 出張逆ソープ』の1998年旧作改題版/製作・配給:大蔵映画/監督:小林悟/脚本:如月吹雪/撮影:柳田友貴/照明:荻久保則男/編集:㈲フィルム・クラフト/音楽:東京BGM/助監督:国沢実/録音:シネ・キャビン/効果:サウンドBOX/スチール:佐藤初太郎/フィルム:AGFA/現像:東映化学㈱/タイトル:ハセガワ・プロ/協力:東京TSミュージック/出演:田村ちなみ・氷室真由美・東美由紀・吉行由美・門倉達哉・白都翔一・樹かず・港雄一)。
 逃げる男と追手が四人、マルイ表の新宿にタイトル・イン。追はれるのは出張ホストの木下浩(門倉)で、追ふのは樹かずをリーダー格に、国沢実は含まない特定不能のその他三名。「チキショー、あの女の亭主がヤクザだつたなんて」と、木下の清々しい説明台詞を経て回想パートに突入。最終的には木下がチェンジを喰らつたクライアント(氷室)が、ヤクザの女房であつたとかいふ次第。動体視力のテスト級に、TSミュージック(2017年閉館)の看板を何故か瞬間的に抜いた上で、木下と、帰宅途中の女子高生・繭(田村)が交錯する。
 配役残り港雄一が、四人を引き連れ木下自宅マンションの外階段踊り場に陣取る、氷室真由美の旦那で何処ぞの組長。組長自ら、堅気相手に出張んなや。白都翔一は、繭が元々二人暮らししてゐた姉の、内縁の夫か情夫・永山。姉との関係継続をちらつかせ、日々繭に手をつける。そして鬼の形相で田村ちなみと白都翔一の絡みに介入する吉行由美が、繭の姉・裕美。裕美のレイジの矛先は、永山ではなく繭に。すつかり消沈して肌を隠す繭のすぐ傍ら、裕美と永山がオッ始める一幕。頻りに繭にも伸びる永山の手を、裕美が無言で払ひ続ける人を喰つたシークエンスが堪らない。何はともあれ103cmを刻み込む東美由紀は、ヤサにも戻れない木下が頼る、ソープのユキさん。繭は裕美から脊髄で折り返した、無造作な無体さで放逐。一方ユキからも袖にされ、帰るアテも行くアテもなく途方に暮れる木下は、漏れ聞こえるハミングの野ばらに誘はれ、取り壊し予定の母校中学校校舎に忍び込んだ、繭と再会する。と、いふか。新宿にて一回交錯してゐる以上、厳密には確かに再会である筈が、繭と木下のサプライズをものの見事にスルーして済ます豪胆な大らかさが、貫禄の大御大仕事。
 バラ売りex.DMMに新着する度ホイッホイ飛びついてゐるのに、彼岸、もとい悲願のハンドレッドにはまだまだ、まだまだ果てッしなく遠い小林悟1995年第三作、ピンク限定第二作。姉の男から要は日常的に犯されてゐたどころか、寝取つたと誤認した姉に追ひ出された少女と、下手を打つた大学生の出張ホストが都会の片隅にてミーツする。と掻い摘むと一応映画的な物語にも思へ、如何にもTS臭い美人ではあれ表情の乏しい女優部と、万事頓着ない小林悟の、ある意味器のデカい演出とに遮られ、情感は一向に深まらない。頑ななまでに悲壮感を拒む繭の浮き足立つた造形には、寧ろ自動なり通俗的、あるいは惰弱な感情移入を拒む、厳格なストイシズムをも覚えるべきなのか。小林悟映画の常で、たとへば久須美欽一の如く何気に長けてゐる訳でもないのに、港雄一の途方もなく長い濡れ場を通して繭がその身を捧げたにも関らず、結局一件を収束させる切札は、だから堅気のセイガク相手にエンコ。小指を失つた木下と繭が、兎も角新しい日々を迎へる的なぞんざいなラストには、最早ある種の虚無主義さへ漂ふ。

 さて、豆腐に鎹でも打つか。元題は繭と裕美の“エッチな姉妹”に木下の施す“出張逆ソープ”と、実際の本篇に珍しく綺麗に即してゐる。他方新題に関しては、“変態姉妹”のグルッと一周した無味乾燥さはこの際さて措き、姉は兎も角、少なくとも妹の方は永山と木下に劇中都合二度装着を求める、明々白々なコンドーム推奨映画であつたりもする。


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 「兄貴の嫁さん いん夢」(昭和63/製作:国映/配給:新東宝映画/脚本・監督:片岡修二/企画:朝倉大介/撮影:斉藤幸一/照明:佐久間優/編集:酒井正次/助監督:笠井雅裕/監督助手:中村和愛/撮影助手:片山浩/照明助手:田辺司/録音:ニューメグロスタジオ/現像:東映化学/出演:岸加奈子・岸本かおる・風見怜香・南野千夏・外波山文明・山本竜二・池島ゆたか・下元史朗)。
 この頃あるいは新東宝ビデオのデフォなのか、“この物語は、フィクションであり”云々断り書き。生活感丸出しの一軒屋ショットにタイトル開巻、“ウチは今時珍しい貧乏人です”と、岸本かおるのモノローグが清々しい火蓋を切る。四兄妹で暮らす野沢家、長男の俊介(三十九歳/下元史朗)を事実上の家長に、次女・悦子(二十七歳/風見怜香)と三男・コースケ(二十四歳/山本竜二)、ストーリーテラーを担ふ四女・ケイ(十七歳/岸本かおる)。遺影が遠すぎて全然判別不能な両親は、父親が玩具工場を潰した十年前の一年後に二人とも病死。以来、兄妹は一丸となつて後に残つた借金を返し、目出度く完済に近づいてゐた。両親が死に四兄妹に借金だけが遺された状況を“新派大悲劇のパターン”と掻い摘む、時代の流れに伴ひ失はれた知見。四兄妹の職業が、悦子は看護婦。苦学して一部上場の「大東商事」に入社したコーイチは、入社二年にして係長の非現実的なウルトラ出世頭。ケイはスーパーのレジと主婦兼業、高校には行つてないんだ。弟のコネで大東に臨時雇ひ後、正規雇用に漕ぎつけた俊介に、大東の戯画的、もしくは旧態依然なガッハッハ専務・戸倉(外波山)が見合の話を持つて来る。
 配役残り南野千夏は戸倉の秘書、コーイチとは打算剝き出して男女の仲。岸加奈子が、知り合ひの年頃の娘と称して戸倉が連れて来た、俊介の見合相手・江藤倫子。そして池島ゆたかは、野沢家が抱へる借金の債権者・園山。各々の役名にそこはかとなくでもなく漂ふ、獅子プロスメル。
 国映大戦再起動、第十五戦で片岡修二昭和63年第六作。四天王七福神ばかりが、国映といふ訳では必ずしもないんだぜ。
 フラットな画作りに、深町章監督作といはれても全然通るオーソドックスな俳優部。一欠片たりとて才気走るなり拗らせるでなく、なほかつ女の裸も決して疎かにしはしない。女気のない長兄の見合話を軸にしたホームドラマが、平板に進行する。かに、思はせて。悦子出生の秘密を切札に、終盤二つの超展開が十字に火花を散らす。頭数的にも、普通の遣り方ではどう見ても不可能にしか思へなかつた、二番手の濡れ場も見事に回収。流石に倫子の去就には御都合さが否めなくもないものの、よくよく鑑みるに端々に配された伏線の着弾も超絶的確に、展開の妙で見させる量産型娯楽映画の佳品。インディセントにせよナイトメアにせよ、登場人物の誰一人夢見るシークエンスさへないけれど。

 変名でも使用してゐるのか、素性なり履歴がまるで判らない人につき、中村和愛の活動を昭和末期に確認出来た点に関しては軽く驚いた。


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 「暴虐女拷問」(昭和53/製作:若松プロダクション/配給:新東宝映画/監督:若松孝二/脚本:出口出/企画:新東宝興行株式会社/製作:若松孝二/撮影:伊東英男/照明:磯貝一/録音:杉崎喬/編集:竹村編集室/音楽:出口出/効果:大和グループ/助監督:堀ノ内透/演出助手:磯村一路/撮影助手:古川丈夫/照明助手:松尾進/録音所:ニューメグロスタジオ/現像所:ハイラボセンター/協力:騒動社/出演:今泉洋・野上正義・中野リエ・高鳥亜美・宮崎あすか・浦野明香・杉佳代子・港雄一・龍駿介)。出演者中、宮崎あすかと浦野明香は本篇クレジットのみ。逆にといふか代りにといふか、野口美沙と桜マミの名前がポスターには載る、逆とか代りとは何なんだ。とかく新東宝はこの辺り、謎のフリーダム。新東宝に限らず、ピンク映画全般かも。
 明治初頭、維新のどさくさに紛れ成りあがつた金貸し・井原権之介(港)が、手篭めにした女中のふさ(高鳥)を儂様の子を産むなど罷りならんと、流産させるべく激しく責める。高鳥亜美にいはゆる電気アンマをグイッグイ捻じ込みながら、憤怒の港雄一が「流れろ!」だ「掃き出せ!」だ極悪非道なシャウトを連呼、見るも無残な開巻に眩暈がする。ふさが乳も放り出して逃げる、霧に煙つた川原にタイトル・イン。確かに暴虐極まりなく女を拷問する、公開題を早速拾つてのけた極彩色のアバンではある。
 人里軽く離れた川原に棲む研師・捨造(今泉)と留吉(野上)の掘立小屋に、ふさが転がり込む、のも通り越し殆ど倒れ込む。そこに続けて現れたのは、部下(騒動社計七名)を従へた、井原懐刀の官憲・桜井(龍)。衰弱してゐるゆゑ庇はうとする二人を排し、桜井はふさを連行。井原に改めて責めたてられたふさは、憐れ終に舌を噛む。ふさの死を桜井は乱心した末の事故として処理、井原からの謝金を受け取る。
 配役残り宮崎あすかは、井原の娘・えみ。杉佳代子が妻のときで、中野リエが新しい女中のゆき。当然といはんばかりゆきも手篭めにする井原は、乳首を口に含み回春剤だと満喫、あんた大絶賛現役だろ。浦野明香は、何故かえみに悶々とする桜井が、買ふ夜鷹・月奴。
 新東宝の新版は藪蛇に結構な速さで着弾する、地元駅前ロマンにて若松孝二昭和53年第一作。何気に、小屋で若松孝二のピンクを観るのは初めて。故天珍シネマ(2009~2010)前身の、シネテリエ天神に何か特集を観に行つた記憶は何時かも忘れた昔にウッスラあるけれど。
 真面目にやらうとするとそれなりに手間暇かゝらう、当時隆盛を誇つたロマポのSM路線に対する、要は低予算なりの対抗策であるいはあつたのか。今の傍目からするとどうかしてゐた風にしか思へない、煽情性が無闇にブルータルな方向に振れた風潮に、若松孝二の思想なり姿勢がある意味綺麗に親和。虐げられた女達と出会つた棄てられた男達が、粗暴な権力者に敢然と立ち向かふ展開はひとまづ形になる。さうはいへ頭数はそこそこ潤沢な割に、女優部は正直得点力不足。直截にいつて額面の担保か繋ぎ役が精々で、定石を覆しビリング頭に飛び込んで来る今泉洋を文字通りの筆頭に、物語の主たる動因は男優部が担ふ。ガミさんが若き熱量で直線的なエモーションを撃ち抜き、巧みに深慮を窺はせる今泉洋が丁寧に外堀を埋め、そして未だスピード感も失はない港雄一が、少々粗雑なシークエンスをも、正しく怒涛の突進力で案外無理も感じさせず押し込む。入水したゆきの処遇を巡り、いつそ死なせてやつた方がと限界のヒューマニティーを滲ませる留吉と、あくまで生を尊重する捨造の静かな対峙は、ある意味で単なる図式を超えたハイライト。拳銃を入手する段取り込みで先に始末された結果、飼主の娘に岡惚れする桜井こと龍駿介が、たとへば最期に咲かせる一花が見事に等閑視された点には幾分の後ろ髪も引かれつつ、そもそもさういふ惰弱な嗜好は、若松孝二が志向するところではなかつたのかも知れない。尤も最終的に際立つのは、矢張り如何ともし難い安普請。物置から二三本鼻毛を抜いたが如きあばら家が、ボワンと気持ち気の抜けた発火で力なく小炎上するラストは、浦野明香以外全員、しかも虫ケラ以下ゴミのやうに死んで行く無体な映画を、企図したものでは恐らくないいはば無作為の、突き放された清々しさで呆気なく締め括る。

 一旦脱稿後寝かせてゐるうちに、久保チン発石動三六経由で港雄一の訃報が飛び込んで来た。深町章2004年第二作「痴漢探偵 ワレメのTRICK」(主演:里見瑤子)を少なくともピンクに於ける最後の仕事に、近年は矢張り久保チンから、認知症により再起不能の状態にあると伝へられてゐた。享年八十四、龍駿介の存否は判らない。これからタイムマシンで改めて逐一追ひ駆けでもしない限り、大御大・小林悟の監督本数同様、港雄一出演本数の正確な記録は恐らく何処にも残つてゐまいが、量産型裸映画を粉骨砕身支へ抜いた、莫大な戦歴に敬意を表する。jmdb準拠で唯一の脚本作とされる、小林悟1993年第三作「痴漢電車 拝ませて貰ひます」(主演:西野奈々美?)を、大蔵は追悼新規配信して呉れないものか。他方、新東宝作フィルム上映企画の会場に、たかとりあみは思ひのほか変らぬ若々しい姿を見せてゐる。


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 「むつちり討ち入り 桃色忠臣蔵」(2018/制作:《有》大敬オフィス/提供:オーピー映画/音楽・脚本・監督:清水大敬/撮影:宮原かほり/照明:大久保礼司/録音:荒木俊一・西山秀明/アクション担当:永井裕久/振付師:MASAKO/ポスター:田中幹雄/スチール:中江大助/仕上げ:東映ラボ・テック/出演:海空花・水谷あおい・藍色りりか・中村京子・倖田李梨・松井理子・長谷川千紗《特別出演》・森羅万象・フランキー岡村・佐々木狂介・ケイチャン・山本宗介・野間清史・中江大珍・郡司博史・清水大敬)。出演者中長谷川千紗のカメオ特記と、中江大珍以降は本篇クレジットのみ。各部助手のみならず、編集なり助監督すらないレス・ザン・インフォメーションなクレジットは、本篇ママ。
 両脇に照明を焚いた山桜高校の教室に、女優部五本柱―ナカキョン飛ばして松井理子まで―が赤のブレザーにミニスカの制服姿で順々に大集合。ダンスを一頻り披露した上で、ポーズをキメてタイトル・イン。明けて一転、三年のお勤めを終へ仮出所する大石蔵子(海空)を、刑務官(清水)が不愛想に送り出す。山桜校ダンス部顧問の恩師・山口裕子(長谷川)に続き、何かと懇意の刑事・岡野(山本)と再会した蔵子が、来し方を振り返る。三年前、上下関係が微妙に不明なダンス部OGの池山玲子(水谷)・杉之本美樹(藍色)とともに、浅野内匠(フランキー)が社長の零細企業「播州赤穂物産」で蔵子はダンス活動も認められ和気藹々と働いてゐた。松井理子も矢張りダンス部OGで、播州赤穂に出入りする清掃員の三原山葉子、役名が何気に絶妙。ところがそこに、大取引先「吉良総合商社」の高圧的な社長・吉良上野(森羅)がダースベイダーの如く来襲、もとい来社、殆ど変らんけれど。サシでの打ち合はせと称して、吉良が玲子を凌辱。何だかんだで刃傷沙汰となつた末だか粗雑な物の弾みで、蔵子は黒マスク×スカジャンで一応素性不詳の、吉良の女用心棒(恐らく倖田李梨の二役)を死なせてしまつたものだつた。フランキー岡村に話を戻すと、ポップを履き違へた陳腐通り越して醜悪なメソッドが、どうしても看過能はず。
 配役残り、改めて倖田李梨は、美樹の伝で蔵子が草鞋を脱ぐ、亡夫(後述)の遺した昨今御馴染「グンジ印刷」を切り盛りする高見アリサ。この人も山桜校ダンス部OG、退学後ストの舞台に立つてゐた御仁。共輔・恭輔に続く、ここに来て三つめの名義となる佐々木狂介は、アリサ亡夫から付き合ひのある、グンジのクライアント・大滝、スーパーか何かの人。そして中江大珍(a.k.a.中江大助)とケイチャンが、借金を残し限りなく自殺に近い交通事故死したアリサの夫と、事実上死に追ひやつたブラック金融・鮫島。野間清史は松井理子の絡みを介錯する、葉子が勤務する清掃会社の社長・石部もとい石山金吉。同じく清水大敬2017年第一作「未亡人下宿? 谷間も貸します」(主演:円城ひとみ/佐々木共輔名義)のある佐々木狂介はまだしも、実に「愛人熟女 肉隷従縄責め」(2008/主演:沙羅樹)以来となる大復帰を遂げた中村京子は、玲子を囲ふにあたり、吉良が実質人質にとる母親・恵子。ビリングの高さに反して、不幸か幸か脱ぎはしない。そしてグンジの真の主たる郡司博史は、吉良邸に突入する浪士ならぬ赤穂女子に、脚立を持つてかれるペンキ職人。その他不明なのが、藪蛇に都合四度繰り出す痴漢電車―三番手に至つては、唯一の脱ぎ場が電車レイプ―に際しての乗客部と、鮫島の連れ含め吉良の手下部―は、中野剣友会の皆さんか―に、岡野が二人従へる刑事部。娑婆に戻つた蔵子に手を出すのは佐々狂にも見えかけたものの、蔵子と大滝が思はぬ、あるいはバツの悪いリユニオンを果たす描写はなし。気がつくと、剥げた頭に思はず目を奪はれてゐた。
 通称・前田有楽こと、六十五年の歴史に幕を閉ぢた「有楽映画劇場」(北九州市八幡東区)の、最終番組に選ばれた清水大敬2018年第三作。清水大敬は暮の薔薇族入れて、今時年四作を発表するキャリアハイの好調ぶり、あるいは重用ぶり。
 主演の海空花は、終始肩に力が入りつぱなしで過剰な熱量が清大映画のヒロインに、如何にもといふかある意味といふか、兎も角相応しいといへば相応しい。逆に、同じ戦ひ方で、他の組でもやつてゐけるのか疑問も残らぬではない。その癖いざ絡みとなるや途端にしをらしくなつてもみせるのが、当人の持ちキャラなのか、清水大敬のさういふ演技指導なり、より直截な理想の女性像であるのかは、とかく、しかもエクストリームなまでのエキセントリックが炸裂するのがこの人の映画の常につき、銀幕の此岸から観てゐるだけでは判別つけかねる。とりあへず、ダンスにせよ殺陣にしても、海空花が体はよく動く。惜しむらくは、それを絡みにも活かすアクロバティックな才覚を、清水大敬に望むべくもない点。
 一度は吉良用心棒の事件でダンス部二十周年のイベントを水泡に帰させた蔵子に、裕子は再起の拠り所にと、今度は山桜高五十周年の舞台を用意する。岡野は岡野で、正式に吉良を立件しようと尽力する。とかいふわざわざ二本立てで設けられた葛藤の種も、清々しいほど事もなげに放棄して、蔵子は一同を引き連れ吉良邸に遮二無二討ち入る。兎にも角にも忠臣蔵、そして何はなくともダンス。テーマはこの上なく明々白々ともいへ、些末にあまりにも囚はれないダイナミックすぎる作劇は、確かに清水大敬ならではの豪胆な力技。これは別に、だからといつて許されるといつてゐる訳では別にか決してない。寧ろ、もしくは挙句に。忠臣蔵とダンス―しかし途方もない二題噺だ―に総力で突つ込み抜いた結果、清水大敬にしては女の裸さへ何時しかついでに堕してゐる。五本柱の濡れ場は何れも完遂する割に、下手な頭数の多さも禍し総じて印象は薄い。各々濡れ場のある五人の赤穂女子が、憎き吉良邸に討ち入りする。死亡遊戯なトラックスーツなる飛び道具をも披露する森羅万象の大暴れ含め、極めて魅力的かつ画期的な大風呂敷ながら、良くも悪くもベタ足が精々持ち味の清水大敬にとつては、些か荷の重い複雑な趣向であつたか。有楽でかゝる最後の映画に、下手に生煮えて呉れやがるくらゐなら、いつそ派手な花火で景気よく大団円。とは流石に強弁し難い、花火といふよりも、爆散したが如き一作である。

 前述した通り本篇クレジット、ならびにポスター、ついでに予告篇に於いてもスルーされつつ、PG公式には、録音助手に勝山茂雄とある。勝山茂雄なんて、同姓同名でないならピンクに参加するのはそれこそ2005年の自身最終作以来だ。高原秀和に続く、よもやまさかの電撃超復帰とかなからうな。もしも仮に万が一、ただその場合大蔵初上陸となつた高原秀和とは違ひ、勝山茂雄には「ドキュメント 性熟現地妻」(1995/撮影:西川卓/主演:摩子)がありはする。

 以下は映画の中身とは一切関係ない、純粋な付記である。今作を観に行つた折、閉館する有楽に、岡輝男からの花が届いてゐた。敷居を跨いで真正面(テケツは真右)、飲料を冷やすオールドスクールな什器の上に置かれた花が最初に目に入り、そのまゝ木戸銭も落とさず一旦名前を確認、「マジか!?」と思はず声が出た。添へられた挨拶の文面は、原文は珍仮名、スペースで改行で「八幡有楽劇場賛江 拙作の数々かけて戴き ありがたうございます 歴史ある劇場で上映されたこと 感佩致してをります 脚本 岡輝男与利」。
 自ら身を退いたのか、干されたものかは知らないが、ピンクから離れて久しい岡輝男がなほのこと通した仁義に、胸が熱くなるサムシングを禁じ得ない。有楽更新の掉尾に、岡輝男の篤実を記録しておく所存である。


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 「制服凌辱 狙はれた巨乳」(1998/制作:大敬オフィス/配給:大蔵映画/制作・脚本・監督・出演:清水大敬/撮影:小山田勝治/照明:小川満/編集:酒井正次/美術:清水正子/音楽:サウンド・キッズ/助監督:佐々木竜彦/撮影助手:新井毅/照明助手:石部金吉/編集助手:井戸田秀行/演出助手:井戸啓吾・鵠沼武生/スチール:相沢さとる/車両部:野田基樹/制作進行:正賀内也/録音:シネキャビン/現像:東映化学/タイトル:道川昭/小道具提供:ひろちゃん工房/衣裳提供:まさちゃんオフィス/制作協力:愛光《株》、水上荘、劇団ザ・スラップスティック/出演:椎名みずき・中村京子・扇まや・浅利まこ・土門丈・大浜直樹・井戸啓吾・モト大野・山科薫・神戸顕一・羽田勝博)。
 開巻即座の清水大敬病には、もう驚かない。“生きていかなくちや・・・何があつても生きていかなくちや。愛する家族のために・・・”。手前に言ひ聞かせてんのかとか下衆く勘繰つたりするのは、寧ろ釣られた方が負けなのかも知れない。暗転して山地のロングから、山間に広がる宅地に繋いでタイトル・イン。明けた舞台は水上荘、一人娘の山口裕子(椎名)が、セーラー服にエプロンで布団干し。清大の日頃の行ひか、天候には素晴らしく恵まれてゐる。階下の玄関に母・京子(中村)が出て来て掃き掃除、後ろに回す俳優部と清水大敬以外のクレジットを消化したのち、裕子も下りて来て朝食も摂らずテニス部の朝練に、向かはうとするまでを何気に結構長く回す。チャリンコに跨る裕子に京子は義妹のアケミが、裕子が通ふ高校の教師・奥野が下着を盗まうとしてゐると思しき、不審な現場を見た旨伝へる件。闇雲なローアングルに量産型裸映画作家としての、清水大敬の真摯な姿勢が窺へる。断じてここは、正方向に評価すべき点。母の噂話に二三本陰毛を生やした程度の忠告を、「クソ真面目な先生だよ」と、裕子は口汚く取り合はない。
 配役残りてな塩梅で山科薫が、その奥野。下着ドロ教師の外堀を埋めた上で、山科薫が飛び込んで来るカットの有無をいはさぬ轟音の説得力。扇まやが、裕子からは義理の叔母にあたるアケミ。気軽に水上荘の敷居を跨げる間柄の裕子恋人・コーイチは、矢張り大野基と同一人物のモト大野。ホテルマンのコーイチと、ゆくゆくは水上荘をリゾートホテルにフルモデルチェンジ、といふのが裕子―とコーイチ―の青写真。土門丈・大浜直樹・井戸啓吾に清水大敬は、犯行を―口止めされた裕子以外に―目撃してゐたアケミの通報を受け、奥野を逮捕する刑事部。この中で清大の役職は部長、サクッと出所した奥野の報復―奥野は、証言したのは裕子だと勝手に思ひ込んでゐる―を警戒し、水上荘に常駐する谷口は大浜直樹。あと二人、幾分台詞ありが井戸啓吾、黙つてゐるのが土門丈。神戸顕一と浅利まこは、水上荘常連客の御大尽といふ設定のヒムセルフと、その愛人・ナツミ。そして羽田勝博が、京子の弟でアケミの夫・泰三。元々水上荘は泰三が継ぎたかつたものが、先代即ちヒロイン目線だと裕子祖父の遺言に従ひ、京子が継いだといふ因縁。裕子の父親あるいは京子の夫に関しては、一欠片の去就さへ等閑視される。
 前作「美尻愛欲めぐり」(主演:麻間美紀)に引き続きバラ売りex.DMMに新着した、清水大敬1998年第三作。これで目出度く、過去作は網羅出来た、目出度いのか?まづいの一番に今作の特色は、信じ難いことにあの清水大敬が一切カサベらない。映画のタイトルなり監督の固有名詞どころか、名優のスチール一枚見切らせず。しばしばある意味微笑ましく暴発、もとい発露する、プリミティブな映画愛は全く以て影を潜める。代つて奥野の逆恨みを主たる動因に、山科薫が暴れ倒すシンプルもしくは一筋縄の劇映画にして、ブルータルな裸映画が撃ち抜かれる。訳でもないんだな、これが。京子を手篭めにしたまでで、奥野はまさかの彼岸に退場。扇まやを初登場時から過剰にオッソロシく撮るのも画的な伏線に、水上荘を巡る姉弟の確執を真の軸に据ゑ、生き残る方が余程少ないみるみる死屍累々の後半が凄まじい。確かに逡巡なりミスリードするに足る尺もそもそもないとはいへ、誰しもがシャボン玉が割れるかの如くザクザク死んで行く地獄絵図は殆ど爽快。大雑把極まりない展開を、俳優部―と演出部―のアクの強さでゴリ押しする力技が見事に決まる。羽田勝博をも霞ませる大毒婦ぶりを披露する、扇まやにとつてはもしかすると代表作とさへいへるのではなからうか。加へて、否、何はともあれ。椎名みずきの、エクストリームにどエロいオッパイが堪らん!柔らかさを感じさせる豊か且つ蕩けさうな乳房に、色の薄い、大きめの乳輪が映える。私服時は頑なにレス・ザン・ブラで通す、お乳首様の自己主張もジャスティス。当然清水大敬は、いざ本濡れ場ともなると、弄ばれるオッパイから、タップンタップン音が聞こえて来さうなカットを決して忘れはしない。ナイフ通り越した短剣のやうな得物を手に迫る泰三に対し、裕子がオッパイをブルンブルンさせながら布団を乱射する、布団部屋に於ける攻防戦はクライマックスの名に恥ぢぬ見所。荒木太郎吉行由実と同じ1996年のデビュー以降、そこそこキャリアを積み重ねて来た清水大敬が、監督第六作「どすけべ家族 貝くらべ」(2001/主演:高橋りな)まで三年空く点を見るに、懲罰に値するくらゐ酷い代物であつたのかといふ事前の危惧もなくはなかつたものの、なかなかどうして、いい映画だとは口が裂けてもキーボードが爆発したとて申さないが、案外普通に面白かつた。

 但し水上荘的には、相当仕出かしてゐたのかも。屋根の下で七人、庭先に一人の死体の山を築くのは兎も角、完パケに残つてゐるだけで、羽勝は得物を三回そこかしこに突き立ててゐる。清水大敬が監督第十一作「強制人妻 肉欲の熟れた罠」(主演:艶堂しほり)で水上荘帰還を果たすには、実に十二年の歳月を要する。


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