真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「人情フェロモン もち肌わしづかみ」(2018/制作:Blue Forest Film/提供:オーピー映画/監督:竹洞哲也/脚本:当方ボーカル/撮影監督:創優和/録音:山口勉/編集:三田たけし/音楽:與語一平/整音:吉方淳二/助監督:江尻大/監督助手:村田剛志/撮影助手:比留間遼・赤羽一真/スチール:阿部真也/仕上げ:東映ラボ・テック/協力:スナックRiz、スナック マ・ヤン、スナック マダムシルク/出演:友田彩也香・加藤ツバキ・工藤翔子・山本宗介・イワヤケンジ・安藤ヒロキオ・ダーリン石川・東中野リズ子・森羅万象)。
 アッサリしたフォントでスタイリッシュなタイトル開巻、日本語を解さない者に見せたなら、凡そ商業ポルノグラフィーとは思はないのではあるまいか。
 JR東中野駅東口を出た主観カメラが、徒歩すぐの飲食店街「東中野ムーンロード」(正式名称:東中野駅前飲食店会/ex.飲食店街住吉小路)入口近くのスナック「マ・ヤン」に。カウンターに東仙(友田)とママの丸高歌子(工藤)が入り、常連客の桜田(森羅)らで賑はふ店内、雑誌の取材が入つた体。加藤義一2017年第二作「愛憎の嵐 引き裂かれた白下着」(しなりお:筆鬼一/主演:佐倉絆)のナレーターを除けば、工藤翔子(歌舞伎町の居酒屋『寺子屋』女将)が案外空いてて同じく加藤義一2015年第二作「巨乳狩人 幻妖の微笑」(脚本:筆鬼一・加藤義一/主演:めぐり)以来。それと、我等が旗艦館前田有楽は画面が暗いのが弱点につき断定はしかねるが、ここで森羅万象の隣に座つてゐるのが竹洞哲也に見えたのは気の所為か。その日の「マ・ヤン」が閉店したのは、完全に日も上つた翌朝。お姉さん的な幼馴染で、亡夫の遺した店を守りつつ、早朝バイトに向かふ長田美鈴(加藤)を見送り、桜田と別れた辿は、同世代の幼馴染、なのに、今は町の地上げの片棒を担ぐ竹原馨(山本)と交錯する。端からオッカナイ剣幕の仙に、煙草のポイ捨てを咎められた薫は、「ゴミ箱だろ、こんな町」。櫛の歯を欠く再開発と桜並木の伐採が、界隈を揺らしてゐた。
 配役残り、イワヤケンジは辿の夫・秀、官能小説家か何か。小林悟の未亡人かつ、ゆかりの店「リズ」を継いだ端唄歌手・雅仙よしの変名である東中野リズ子は、ムーンロード外堀担当のほぼほぼハーセルフ、友田彩也香とは二度目の共演。安藤ヒロキオは、ナリはラフながら馨らよりも大手の地上げ屋尖兵・轟真澄。台詞の与へられるダーリン石川(新宿ゴールデン街町会長)のほか、「マ・ヤン」客要員がノンクレジットで十人前後投入される。
 秀が脱稿した画面越し、OPP+タイトル「ムーンロードセレナーデ」が本篇ラストの、竹洞哲也2018年第三作。東中野のアクチュアリティーを主軸に据ゑた正攻法の人情劇は、腹が立たない程度には観てゐられる。余計な御託の多さをさて措けば主演女優は濡れ場の手数を自然数最小に稼ぎ、二番手三番手はドラマの下駄を履く。徳俵一杯一杯で、裸映画に辛うじて踏み止まりもする。マダムシルク相手に、桜田がパラノーマルな飛び道具の火蓋を切るカットは、掛け値のない出来映えを撃ち抜く。さうは、いへ。友田彩也香の厚塗りに胸焼けするのはパーソナルな好みの範疇で片付けるとしても、三本柱各々に見せ場を振つたのが却つて禍してか、小さく纏まつた展開は特段面白くも何ともない。今回この期に初めて辿り着いた、竹洞哲也×当方ボーカル=小松公典コンビ最大の諸刃の剣が、名あり登場人物の全てが日常会話に於いて―しかも最終的には同種の―レトリックを駆使する世界に対する違和感。東中野はどんな―人間ばかりが住む―町なんだ、ブランキー・ジェット・シティか。無駄口で薄めるくらゐなら女の裸をもつとひたすらに撮らんかと、大御大には弟子の枕元に立つて欲しい。御当地映画といつたところで所詮買取である以上、映画の出来は最早さて措き、世間一般のやうに旨い汁だけ吸ひ逃げられる訳でもなからう。オーラスで混濁するものの、森羅万象が一旦は撃ち抜くファンタジーで最低限形になつてゐなくもないにせよ、加藤ツバキの前戦「弱腰OL 控へめな腰使ひ」(2016/主演:辰巳ゆい)同様ナッシングレフトな一作。いまおかしんじや城定秀夫のやうに、殆ど変らない―らしい―ストロングスタイルで挑むならばまだしも。全く別物とさへ伝へ聞く、下手にプラス戦線に色目を使つた結果、R18版はピンクス強硬派からそつぽを向かれ、反面R15+版もR15+版で城定秀夫はおろか、横山翔一が商業デビュー作で辿り着いた単騎公開にも手が届かない。要は、ものの見事に二兎を得られないでゐる現状を、全体当人達なりオーピーは如何に見るのか。


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プラス戦線に色目を使った挙句モヤモヤした作品に (横浜のロマンポルノファン)
2019-02-05 22:29:17
小松さんは脚本を渡すまでが脚本屋の仕事と割り切ってるようで、そうすると竹洞演出の問題なのか?「プラス戦線に色目を使う」というのは絶妙な表現で(これから私も使わせてもらおうっとw)色目を使うと最後は気持ち悪がって逃げるのが男心というもの。小松脚本のテーマがセックスにどうにも結びつかない政治ネタで竹洞さんも頭を抱えたのかもしれないけど、じゃあ、お金持ち出しでも自主でご当地映画で撮ってポレポレ辺りで上映すればよかったのに、と何かモヤモヤした印象の作品です。
 
 
 
このコンビ (ドロップアウト@管理人)
2019-02-06 17:46:07
 竹洞哲也の顔が見えないんですよね、逆に量産型娯楽映画にそんな我必要もない気もしつつ。
 
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