真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「若妻トライアングル ぎゆつとしめる」(2019/制作:VOID FILMS/提供:オーピー映画/脚本・監督:山内大輔/撮影監督:田宮健彦/録音:大塚学/編集:山内大輔/音楽・音効:project T&K・AKASAKA音効/特殊造形・メイク マトリョーシカ製作:土肥良成/ラインプロデューサー:江尻大/助監督:菊島稔章/ポスター:本田あきら/撮影助手:荒金聖哉・赤羽一真/仕上げ:東映ラボ・テック《株》/出演:きみと歩実・桜木優希音・真木今日子・泉正太郎・安藤ヒロキオ・森羅万象)。
 タイトル開巻、マトリョーシカの画に、三本柱と山内大輔のみとりあへずクレジット。普通に長く聴いてゐたい、テクノが心地よい。戸建の外観一拍挿んで、結婚四年の佐藤マリカ(きみと歩実/ex.きみの歩美)が仏頂面で料理。妊娠検査は、恐らく外れ。役所の観光課に勤める夫・那津男(泉)が出張帰りぽく帰宅、四本ローソクの立つた結婚記念日ケーキを囲むに及び、二人は漸く笑顔を取り戻す。そのまゝ熱くチューしたカット跨いで、騎乗位で轟然と夫婦生活の火蓋を切るジャスティス。外様作が続き、数週間ぶりに触れた全うなピンクに安堵する。些か暗くもあれ、大正義正常位を大完遂。但しマリカは那津男の早さと、二回戦を戦へない不甲斐なさとに含みを残す。中略、翌朝那津男を送り出した“豊島区高尾 3-29-3”となるとフェイク住所―高尾は八王子市―の佐藤家を、フェルトの中折れまで黒尽くめの安藤ヒロキオが笹蒲鉾を手土産に来訪。呼鈴の反応がないと、安ヒロはマトリョーシカのキーホルダーのついた鍵で玄関を平然と突破。ワンマンショー後で寝落ちてゐたマリカの前に、一年前仙台で再会を約した男・田中を名乗り現れる。田中の記憶が全くないマリカに対し、証拠の仙台で撮つた写真と称する田中の隣で微笑む女はマリカver.2の茉莉花(真木)で、佐藤家のリビングに最初から飾られてゐた旅行先の仙台にて田中に撮つて貰つたスナップの、那津男の隣で微笑む女も真木今日子に代つてゐた。
 配役残り、髪型と画角如何では井上真愉見似に映る知見を今回得た桜木優希音は、茉莉花と田中が佐藤家リビングでオッ始めたその頃、那津男がラブホで矢張り一年ぶりの逢瀬を交すまりか、この二人の経緯は不明。のち田中の訪問を受けた茉莉花から最スイッチする形で、マリカver.3。そして今や御馴染マリカールもといマリエールに飛び込んで来る、森羅万象はデウス・エクス・牧男、でなくてマリカが雇つた探偵の三沢。茶店で三沢が平然と煙草に火を点ける光景に、禁じ得ない隔世の感。はさて措き、イズショーは出て来ないマリエールに於ける二役は、桜木優希音と真木今日子がカウンター席でホットドッグに舌鼓を打つ二人連れ、安藤ヒロキオはマスター。マリカの左背中にもう一人見切れるのは、見切り損ねたが多分EJD、背格好が菊りんとは明確に違ふ。
 一言で事済ますならば、所謂“かういふのでいいんだよ”な山内大輔2019年第一作。公務員の夫と結婚し、一軒家に住む専業主婦。にしては今時贅沢な寂寥を抱へるヒロインを訪ねる謎の男と、そもそもトライアングルに安定しない若妻の人格。とかいふ趣向は、女の裸を三人分効率的に見せる方法論として以外には、この際どうでもいい。兎にも角にも度肝を抜かれたのが、磐石の濡れ場初戦を綺麗に振り抜いた翌朝。好物らしく、毎朝の朝食と思しきマリカお手製の、本当に美味しさうな魚肉ソーセージのホットドッグを頬張る那津男を、まりかは相変らずぼんやり見やる。いよいよ出ようとする那津男を引き留め行つてらつしやいのキスまでは兎も角、跪きスラックスのチャックを下したかと思ふと、転び出て来たのはよもやまさかそのまゝな魚肉ソーセージ。を、射精に至るまで吹くのは一旦白日夢で片付けた上で、出勤後に魚肉ソーセージをマリカ―とその朝をループする茉莉花も―が一物そのものにガチ造形。ブッシャブッシャ豪快に潮を噴くに至るまで改めて吹く、超絶怒涛の張尺―張形を用ゐた尺八―ならぬ魚ソ尺が圧巻。フルコンの煽情性がバクチクする魚ソ尺―正直語呂は悪い―さへ吹かないものの、ほかの二人よりお胸は控へめな反面、好みにもよらうが表情ないし雰囲気は一番エロい桜木優希音の絡みも、何れも遜色ないどころでない満足と完成度。常々当サイトが性懲りもなく垂れて来た、撮らうと思へば幾らでも撮れる腕があるのだから、ここいらで山内大輔は割り切るか覚悟を極めた裸映画を撮つてみせろよ。とかいふ意識の低い不平も、有無をいはさず捻じ伏せる超実戦的な一作。これよこれ、これこそ“かういふのでいいんだよ”。唯一の不満は、現し世と夜の夢の境界と、田中以前に、そもそも自分は誰なのか。茉莉花が背面騎乗の最中全てを失するスローモーション。悩ましく躍る爆乳の一歩手前で、ティルトダウンが立ち止まる正しく寸止めが、強ひて論ふ欠けた竜の睛(ひとみ)。牧男(仮名)が種を明かしたところでスカッと切り抜けないのは、それは最早望んでも仕方あるまい。山内大輔は、たとへば片岡修二ではない。丁寧な語り口に騙されかねないが、実は物語といふほどの物語も別に存在しない辺りも実に潔い。といふか三本柱が泉正太郎か安藤ヒロキオとセックスして、更にきみと歩実と桜木優希音は二次加工品であるのを方便に、ノー修正でチンコを咥へる。要はそれしかないシングルイシューな代物を、何処をどう編集すれば、あるいは何をどれだけ撮り足せば一般映画に仕立て上げられるのかといふのが、残される巨大か根本的な疑問。流石に今回ばかりは、タス版の円盤でも出るやうなら食指を伸ばしてみるかな。


コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )