真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「昼濡らす人妻」(1989/企画・製作:メディアトップ/配給:新東宝映画/脚本・監督:鈴木ハル/撮影:長田勇市《JSC》/照明:長田達也/編集:酒井正次/メイク:湯浅真弓/音楽:鈴木ひろのぶ/挿入歌『エンドレス』作詞作曲:原雅彦・歌:KINYA/監督助手:上野俊哉・本多直樹/照明助手:林大樹/撮影助手:紫主高秀・藤井昌之/録音:銀座サウンド/効果:サウンドボックス/現像:東映化学工業/出演:川奈忍・上野淳《友情出演》・池島ゆたか・橘雪子《友情出演》・KINYA《友情出演》・中井章二・むこー山周作・石原ゆか・下元史朗)。
 河原に停めた車を上から下に舐め、白昼のカーセックス。シチュエーション的には清々しく不自然でもあるのだが、これから小倉への出張に向かふ木島康之(上野)と、送り出す妻・洋子(川奈)の夫婦生活。頃合をみてタイトル・イン、クレジットの合間には、康之と同行する筈の佐藤課長(中井)が社内で慌てて帳簿を捲り、傍らでは専務の小林(池島)が渋い顔。ヤることも済ませた洋子がゴキゲンで帰宅すると、小林と佐藤が詰めかけてゐた。あらうことか、康之が会社の金を一千万横領し姿を消したといふのだ。佐藤は席を外させられ、洋子と小林サシの会談。専務といふよりは完全に悪代官のノリで洋子を手篭めにする小林が尺八を強要する最中、更なる来訪者が。康之がチョロ負かしたのは会社の一千万と木島家預貯金の二百万に止(とど)まらず、投資話に二百万貸したといふヒロミ(石原)が、借用書を持参して現れる。
 配役残り、御満悦にサックスを吹くファースト・カットが甘酸つぱい下元史朗は、洋子が頼る元夫・良ちやん。居酒屋を経営し、サックス―ではないかも知れんけど何かそんな金管楽器―での渡米を夢見る。二人を足して二で割ると中肉中背になる橘雪子とKINYA―橘雪子が体積がデカい方―は、良ちやんの店に見切れるカウンター客。むこー山周作は、わざわざピンで抜く必然性が非感動的に全く感じられない、後述する三人と擦れ違ふジョギング男。
 DMMのピンク映画chに、「人妻柔肌中毒」なるぞんざいなVHSパッケージで判りにくく新着した、鈴木ハル三人共同デビュー(残り二人は磯村一路と福岡芳穂)十年後の一人立ち作。加へて、再生してみると音が左からしか聞こえない、幾ら何でも商業配信なのにあんまりではある。それは兎も角、粗相を仕出かした夫が失踪、女は元夫の下に転がり込む。元夫をジャーナリスト(笑)に仕立て、強姦の示談と夫の横領を相殺したところで、何と夫が元夫宅に現れる。挙句に木島夫妻は何故か良ちやんのマンションに居つき、三人でのいはゆる奇妙な共同生活が始まる。康之捜しが本題かと思ひきや、ちやうど尺の折り返し付近で火を噴いたまさかよもやの超展開には度肝を抜かれると同時に以降への期待を掻きたてられつつ、残念ながら康之がヒロミを召喚するほかは、全く動きのない後半は完全に失速する。そもそも、自堕落なギャンブル男でしかない康之にグズグズ執着する洋子の態度が一欠片も理解し難い上に、ケロッとバレてのけるが良ちやんは何故かヒロミとアメリカに捌け、残された洋子・康之夫妻は康之が洋子の4-5で万馬券を的中させ―ついでに洋子御懐妊―ハッピー・エンドだなどといふのは、話の落とし処が適当にもほどがある。とはいへ鈴木ハル(=鈴木敬晴)がある意味面白のは、木端微塵の娯楽映画や、出来損なつた伝奇ロマン観念論詰めの惜しいサスペンスと、コッテコテの王道ピンク。観る見る毎に映画のタイプがまちまちで、全く印象が固定出来ない。ピンク映画chに全部入つてゐるので、ぼちぼち見て行かう。


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 「OL発情 奪ふ!」(2002/制作:セメントマッチ・光の帝国/配給:新東宝映画/脚本・監督:後藤大輔/企画:福俵満/プロデューサー:池島ゆたか/撮影:清水正二/編集:酒井正次/録音:シネキャビン/助監督:佐藤吏/監督助手:竹内宗一郎/撮影助手:長谷川卓也・岡宮裕/スチール:山本千里/協力:小林悟・森角威之・田中康文・小川隆史/音楽:怖(COA) “TRAFFIC MESS” “CELL VISION”・EDDIE MARCON “ブルウス”/Thnks to:J.L・Kyoko・Pocha・Jotaro・Yuta・Bill・Eddie・Mann end mary/出演:奈賀毬子・坂本ちえ・酒井あずさ・平山久能・新納敏正・江端英久・松木良方)。
 “われわれは災厄が目に入らぬやう 自分の前に何か荷物を置いたのち 気楽に災厄の中を走つていく”(スペース部で改行、原文は珍かな)と開巻、軽くググッてみてもそれらしきものが見当たらないところをみるに、オリジナルの文句なのかな。どんででででんでコーラスが起動して逆さの奈賀毬子と夢の島の風景を手短に繋げ、シェイクするタイトル・イン。金曜日、何事か一千万用意しないとヤバいらしき尻に火の点いた川田(江端)が闇雲に走り、錠剤を食べ食べ彷徨ふ自殺願望の女子高生・さゆり(坂本)は、自らスカートを捲り浮浪者(松木)を誘惑する。一方夢の島ではゴミ収集車セックスがてらマリ(奈賀)がヤスオ(平山)に、清掃員のバイトで入る会社の金庫に現存が確認されてゐる、一千万の強奪を持ちかける。その夜、マリの手引きでヤスオもビルに侵入、目指すオフィスは地下。何故か寝てゐた一般職の女子社員・圭子(酒井)を拘束し、ヤスオが電動ドリルでロッカーを開け始める。圭子の不倫相手で課長の勝呂(新納)が圭子の身を案じ社に戻るも、マリに見付かり修羅場となる、ところに、浮浪者からさゆりを奪つた川田までもが飛び込んで来る。挙句に、勝呂に加勢してマリの腕に噛みつくさゆりは、勝呂の娘であつた。ややこしさの連鎖が一息ついたのも束の間、千代田区を中心に半径六十五キロメートルを壊滅させる直下型大地震が発生。以外のライフラインは意外に健在な割に外部からの情報は途絶え、それ以前に地上への通路を閉ざされた、一同は身動きが取れなくなる。
 初陣を小屋で再見したのをいい機会に、DMMに拾ひに行つた後藤大輔ピンク映画第二作。こちらも見るのはリアルタイム以来―ネタ的に、昨今のナーバスな世知辛さを鑑みると新版公開し難いか―で、大まかな粗筋以外に覚えてゐたのは、協力の先頭に大御大の名前が並ぶ意外性。小林悟は前年十一月に文字通りの戦死を遂げてゐるゆゑ、明けて八月公開の今作がクレジットにその名が載る、最後の作品となるのかも知れない。仮にさうなるとそれはそれとして歴史的に重要な一作ではあり、清水大敬病を発症した堀禎一のことは無視する。物語に話を戻すと、結果的に極限状況に放り込まれた、全員器用に訳アリな三人づつ六人の男女。そこまでは如何にも映画的にはありがちな話として、それにしても僅かな尺に火種を盛り過ぎた上、ジャンキーにしか見えないマリとヤスオに、食生活から問題があるとしか思へない川田。頭数の半分の足がギャーギャー上滑るばかりで地に着かないとあつては、始終が悉く形にならない。といふか、今気付いたが勝呂父娘は生死すら放置されてゐる、小さな所帯なのにあんまりではある。満足にエモーションをモノにするのは、精々稚拙な一生が切ないヤスオの死に様程度か。あまりにも的確なので感服しつつそのまま引用させて頂くと、m@stervision大哥仰せの“話がパンクだから演出もパンクであるべきとは限らない”といふ簡潔にして完全な一言に尽きる。但し、川田の設定に関しては滅茶苦茶なのだが。お馬さんで組の金を溶かした大卒ヤクザが、何がどう転んだとて何処にも掠りさへしない醜聞にテンパッた官僚になるくらゐだから、そこまで聞こえなかつたのかな?あまりにも台詞が聞こえなくて小屋で匙を投げた体験ならば、個人的にもなくはないが。それと憚りながら大哥に逆らふ大罪を犯すと、最も魅力的に奈賀毬子を捉へる仕事は、既に新里猛作がやつてのけてゐると俺は思ふ。

 最後に、再度映画本体に話を戻して、非現実的なオチのほかにもう一点ツッコミ処。マリとヤスオがワーキャーするのは致し方ないにせよ、勝呂が、あるいは勝呂も実は一千万を持ち逃げし圭子と高飛びする腹であつた、といふのは些か非常識ではなからうか。いい大人がしかも二人で、人生を清算出来る額ぢやないぞ。


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 「派遣OL 深夜の不倫」(2000/製作・配給:大蔵映画/監督:渡邊元嗣/脚本:山崎浩治・波路遥/撮影:飯岡聖英/照明:ガッツ/編集:酒井正次/助監督:佐藤吏/監督助手:森角威之・斎藤勲/撮影助手:岡宮裕/スチール:佐藤初太郎/録音:シネキャビン/現像:東映化学工業/出演:黒田詩織・西藤尚・十日市秀悦・山信・ささきまこと・しのざきさとみ)。
 ドヨーンと人材派遣会社「人甲斐」の表を抜いて、度重なる大口契約の解除に悲鳴を上げる女社長の貴子(しのざき)に、人事部長の八住(十日市)は契約社員―実質的には登録者か―の数を激減させる「1/8計画」を提案する。仕方がないのでいはずもがなを蒸し返しておくが、何か「人甲斐」では、登録しておくだけで実際に派遣されなくとも何某かの賃金が発生するのか?「1/8計画」とは、簡単にいふとホワイトカラー要員を過酷なブルーカラーの現場に送り込み、退職を促すといふある意味定番の手法、悪い意味か。順調に計画が進行する中、何処に放り込まれても逞しく順応する関沢はるみ(黒田)を、最後の切札にと幽霊が出ると噂されるビルの警備員に派遣することに。そんなこんなな進行の傍ら貴子と八住二人で何時の間にか十分経過、ガードマンを命ぜられたはるみが溜息とともにへたり込んでのタイトル・インは、漸くどころでは済まない十二分前。今回渡邊元嗣は、一体総尺何分の映画を撮つてゐるつもりなんだ?
 体育教師の彼氏・昇一(山)との特訓なり一戦経て、はるみがやつとこさ業務を開始したビルには、赤いハイヒールがトレード・マークの頼りになる先輩・木村薫(西藤)が既に居た。深夜のビルでは行き場のない奴の吹溜りと自嘲するリストラお仕置き部屋で高橋(ささき)が燻り、更に重要書類を盗みはるみに重大なミスを犯させる目的の八住、彼女の身を案じるにしては、何故か全身白タイツに顔も仮面で隠す、薮蛇に不審極まりない昇一が忍び込む。二人の侵入を許してゐる時点で、全然ガード出来てないよね。
 結局非人道的な年末の繁忙期に屈し断念したのだが、二段遠征二段目の小倉で国沢実2013年第二作「女警備員 まさぐり巡回」を観る予習にと、見ておいた渡邊元嗣2000年全六作中第三作。調べてみると他に該当するのは遠軽太朗の「ミニスカ警備員 濡れる太股」(1998/主演:神崎紀夏)くらゐと、女警備員ピンクは案外見当たらない。結果的には三番手となる―但し未だオッパイのボリューム感を失はない―しのざきさとみの濡れ場で開巻十分をブチ抜く大胆な構成に、呆れかけるのは些か早計。その後も順当に三冠を達成する黒田詩織の初戦で順調に尺を消費し、三等分した序盤を通過してなほ、依然はるみは件の幽霊ビルに辿り着かない。辿り着いたら辿り着いたで、十日市秀悦によるミッション・インポッシブルは画期的なローを通り越したノー・バジェットの割には結構形になつてゐつつ、正体不明のギミックをてんこ盛る展開は右往左往に終始し、清々しくグダる。ところが、八柱を起点に予想外の真実が徐々に明らかとなるや、黒田詩織にフィットする南風薫るポジティブ・シンキングで騒動を上手く丸め込むラストは侮れぬ。終りよければ全てよしで意外と纏まつた陽性の娯楽映画を爽やかに締め括るのは、よもやの天使の微笑エンド!ことここに至ると最早、流石ナベとでもしかいひやうがない。


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 「義母昇天 家庭内SEXとは?」(1996『義母の長襦袢 淫らな匂ひ』の2013年旧作改題版/製作:プロダクション鷹/提供:Xces Film/脚本・監督:珠瑠美/撮影:伊東英男/照明:石部肇/音楽:プロ鷹選曲/効果:協立音響/編集:井上和夫/助監督:近藤英総/出演:神代弓子・青山あずさ・林由美香・野方真・竹田雅則・大星輝宗)。出演者中、野方真がポスターでは何故か加藤健二に、もう好きなやうにすればいい。
 和服の神代弓子が自ら帯を解き、クレジットに併走して適当に裸を見せタイトル・イン。いきなり群を抜く、開巻の適当さが堪らない。深夜の梓邸、会社社長の牧夫(野方)と、割烹料理屋の女将であつたのが、四番目の妻に口説き落とされた由紀(神代)の夫婦生活。屋敷に暮らすのは、ほかに昼間は予備校に通ひ大学受験を目指す、お手伝ひの岡野昌子(林)。ところで顔がパンッパンに丸く個人的な体感で最重量級の林由美香は、それ以前に杉原みさおと相沢知美を足して二で割つたやうな声のアテレコ。ある朝、女に呼び出され牧夫はそそくさと外出、入れ替りで半勘当状態にある、死去した最初の妻との間に出来た長男・真一(竹田)がプラッと梓家に戻る。牧夫を呼び出したのは、前妻のエミ(青山)。エミの携帯に電話を入れようとした牧夫が、間違へて自宅にかけてしまひ慌てて無言で切り、昌子を憤慨させる件の不完全無欠な無用さは最早感動的。真一は昌子と気軽にセックスを楽しむ一方、由紀に対しても明確に女として意識する視線を向けてゐた。
 配役残り名前のゴージャス感が名が体を表さない大星輝宗は、牧夫に捨てられたのではなく、エミの側から乗り換へたらしい新しい夫・竹内伍一。
 よくいへば並居る列強を押し退け、ピンク映画最凶ランキングの先頭に珠瑠美が飛び込んで来かねない、物語の稀薄が極限に達する一作。正直自分でどんな寝言を垂れてゐるのかよく判らないが、瑣末な体裁を繕ふ余力なんぞとうに雲散霧消した。さえ子なる昌子の母親が、実は牧夫の二番目の妻。となると要は、真一と昌子の関係は義理ながら近親相姦に当たる。竹内とホテルに入るエミは、棹に釣られて選んだといふ割に、竹内でも物足りぬと牧夫を呼び出す。展開を膨らませる種を投げるだけ投げておいて、その後は一切全く本当に完放置。結局何だかんだで―とでもしかこの際いひやうがない―由紀と真一二人きりの夜を迎へた梓家、終に義母と義息が禁断の一線を超える。“だけ”といふ起承転結の溶解した始終の果てに、締めの濡れ場も達しさへせずに中途で強制終了される始末。いつそのこと、元々八十分だか九十分だかの尺を一時間にまで―それにしても実は、二分半余してゐる―無理矢理切つたとでもいはれた方が、まだしも合点が行く。勿論、断じて納得した訳では決してない。斯様な代物がイヴちやんのネーム・バリューのみを頼りに新版公開され続ける現状を鑑みるに、かつて夢見られた未来の筈の二十一世紀とは果たして何だつたのかといふ清々しいまでの虚無感が、薄い胸板に開けられた風穴を吹き抜ける。


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 「妹・OL・人妻 すけべ丸出し」(2013/製作:幻想配給社/提供:オーピー映画/監督:友松直之/脚本:百地優子・友松直之/撮影・照明:田宮健彦/助監督:高野平/編集:酒井正次/録音:シネキャビン/監督助手:島崎真人・井澤昌也/撮影・照明助手:河戸浩一郎・川口諒太郎/ヘア・メイク:化粧師AYUMO/スチール:高橋大樹/ライン・プロデューサー:石川二郎/制作担当:冨田大策/現像:東映ラボ・テック/フィルム:報映産業/協力:池田勝る・山口通平・スタジオペルーサ/原作:『妹の甘い匂ひ』《マドンナメイト文庫》/制作協力:アウトサイド/出演:あん・希咲あや・宮村恋・倉田英明・津田篤・郡司博史・若林美保・中村剣一・前田勝弘・中江大介・染島貢・SHIN・高橋靖・たかひろ・石川真由・原口和也・土橋聞多・梅ちゃん)。出演者中、郡司博史以降は本篇クレジットのみ。
 夜の公園をホテホテ歩く希咲あやが、マスクを被り、エフェクト過多で何を言つてゐるのか正直よく判らないボイス・チェンジャーを噛ませた、月光ならぬ激昂仮面に襲はれる。犯されながらも、マスクに手をかけた希咲あやが怪人の正体に愕然としたところでタイトル・イン。タイトル明け一転、股を開かせたロリ系少女の甘い匂ひ漂ひさうな裸の下半身を、ムッサい小太りの男が凝視する、ある意味開巻を超える衝撃的なシークエンス。1ラウンドから猛然とKOを狙ひに行く、ラッシュが実に心地良い。二十五歳のフリーター・杉崎啓太(倉田)の部屋に、父親の後妻(二人とも欠片たりとて登場せず)の連れ子、義理の妹となる現役受験生の沙織(あん)が、予備校の夏期講習に通ふ目的で転がり込む。大陰唇の左右非対称に悩む沙織が、啓太に確認を求めたといふ始末。何だかんだ盛り沢山な長い長い遣り取りの末に、沙織は啓太の俗にいふ手マンで放水レベルの潮を噴く。すると何のものの弾みか啓太の運気が俄に好転、ポスティングのアルバイトに憂き身をやつす啓太はチラシを撒いたマンションに住む出産直後の人妻・桜木百合子(宮村)、バイト先(有)「ベルーサ」事務員の東条綾香(希咲)の据膳をたて続けに頂戴する。ところが直後に激昂仮面の綾香に、百合子はHATE MAN。啓太がポスティングする先々の女達が、次々にレイプされる事件が発生。百合子の証言に基き、勿論身に覚えのない啓太にお縄がかゝる。
 配役残り津田篤は、「ベルーサ」社長・横田。郡司博史以降は、啓太の部屋に現れる二人連れの刑事と、細工したライトバンが、細工したライトバンにしか見えない修羅場に集まる野次馬要員。若林美保を視認し損ねたのは口惜しいが、もしかして首から上は抜いてない?
 二年ぶりの復帰後は快調に飛ばす友松直之の、一作跨いで2013年第三作。第二作お盆公開の新東宝はその内地元駅前に来るのではないかと期待しつつ、現時点では未見。更に撮影順は知らないが封切り順だと新東宝と今作の間に、あの嘉門洋子にカモンし倒させる大仕事も友松直之はしてのけてゐる。もしかすると我々は後世の人間から、友松直之に対する評価の低過ぎた間抜けども、といふ誹りを免れ得ないのかも知れない。それはさて措き映画本体に話を戻すと、激昂仮面のアバンを置いて大股開いての一大攻防戦。濡れ場の潤沢さも交へ啓太に急遽到来した今でいふモテキと、再起動したヘイトマンを軸に繰り広げられる、顛末の落とし処は雑なサスペンス、三部構成でサクッと観させるポップ・チューンである。今回の友松直之十八番の大容量情報戦の肝は、毎度毎度の愛くるしく屈折した持論に加へ、男女双方の下心込み込みの身勝手さなり、裸映画固有の展開の大らかさに対する、絶妙な間だけでなく平等に突き放した距離感が清々しい啓太のツッコミ。殊に、主演女優のM字開脚もあるとはいへ、ほぼモノとダイア両面のローグだけで乗り切る序盤が圧巻。四の五の語弊を残しながらも、棹は立つし観音様は濡れる。さういふ人間の仕方なさを描いたものならばこれまでも幾多とあれど、豪放磊落なパブリック・イメージの陰に隠した緻密な構成力―但し、画作りに関しては十人並―で今風のコントとしても十二分に成立せしめた一作は、それはそれで断固として素晴らしい五十年一日の艶笑譚の先を行く、ピンク映画最新型の姿を想起させる。といつて、敵が友松直之である以上、ギャースカギャースカ傑作傑作と連呼するほどのことは別にない。といふのも、ここから先は純然たる正しく文字通りの私事なのだが、実際に妹が居るゆゑ、私にはいはゆる妹属性が微塵もない。重ねて、これ見よがしにロリッロリしたあんよりも、エロエロいお姉様―といふが一体幾つ年下なんだ―的な希咲あやの方が断然琴線を激弾きされる。要は性癖に鑑賞を妨げられたといふ馬鹿馬鹿しい次第でしかないが、この辺りのノレるノレないは、腰から下で観る映画は仕方がなからう。


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 「人妻エロ道中 激しく乗せて」(2013/制作:ラボアブロス/提供:オーピー映画/脚本・監督:田中康文/撮影:下垣外純/編集:酒井正次/録音:シネキャビン/音楽:小鷹裕/助監督:江尻大・小山悟/撮影助手:佐藤光・竹野智彦/メイク:ユーケファ・岩浅美津子/スチール:本田あきら/協力:小林徹哉/現像:東映ラボ・テック/出演:加藤ツバキ・桜瀬奈・佐々木基子・なかみつせいじ・那波隆史・津田篤・岡田智宏・荒木太郎・太田始・井尻鯛)。出演者中、井尻鯛は本篇クレジットのみ。音楽の小鷹裕が、ポスターには小高裕。
 狭いライトバンの車内、手篭めにするほどでもなく岡田智宏が加藤ツバキに迫り、事に及んでタイトル・イン。二日前、高速道路を西に走る、映画制作会社「映像工房どんまい!」の社有車。堀真希江(加藤)のリストラされた夫・宏(なかみつ)は父急病の報を受け、どんまいに勤める友人・金田将(太田)から借りた車で福岡を目指す。ついでで同窓会に出席する、真希江も同乗する。真希江が離婚届を準備してゐるのを、宏は知つてゐた。睡魔に抗ひかねた宏は、一旦SAで休憩を取る。ところが車外に出たところで他の車に撥ねられ、九州上陸を目前に入院を強ひられる怪我を負ふ。加へて何でか知らんが切迫してるぽい金田の強い求めに応じ、運転の出来ない真希江が、車を東京まで運ぶ羽目に。知人には断られ、業者は条件が合はず。八方塞り気味の真希江に、一仕事終へたトラック助手・刈谷(岡田)が接近。親切な好青年の風を装ふ刈谷に真希江は釣られ、二万円で交渉成立。とはいへ勿論、刈谷はポップなまでの送り狼。ヤることを済ますや、しかも山中で真希江とバンを残し姿を消し、真希江は改めて途方に暮れる。
 配役残り井尻鯛(=江尻大)は、どんまいに出入りする花井。車を借りに来た宏を、金田は不在のどんまいにて迎へる。小山悟を追ひ越してゐるのにも驚かされたが、リアリティある花井の小芝居が地味に超絶。桜瀬奈と津田篤は、刈谷に去られ動きの止まつた真希江が道を挟んで出会ふ、ヒッチハイクで東北方面を目指す菜月とトシ。互ひに渡りに舟と、トシがハンドルを握る。誰かさんを拘束する二人組の内、一人目の声は田中康文、二人目は知らん。佐々木基子と荒木太郎は、トシが目敏く拾ふ、何もない山道を絶望的な風情で進む本城夫妻・加奈子と茂。那波隆史は、茂が金を返しに向かつた街金にカチ込むアウトサイダー・江藤。江藤を追ひ弾けるやうに飛び出して来る若い衆は突破力の衰へない平川直大で、刺されて血塗れの街金が小林徹哉、平川直大も何処かにクレジットしてやれよ。
 黄金週間公開の田中康文2013年第一作、といつて、以降がお盆の薔薇族しかないのは正直寂しく物足りない。2012年末封切りの正月映画もあるとはいへ、勝手な希望としてはもう少し量産態勢をとつて貰ひたいところではある。顔の骨格がヴィン・ディーゼルとほぼ同じ主演女優を美しく銀幕に刻み込むことには成功し、本州を横断しつつ、登場人物が徐々に増え飛び道具込みで転がつて行く物語は頗る魅力的。もうひとつ忘れてならないのは、旅の往路、まだ宏が運転してゐた頃。会話のない車内に、カーラジオから流れるバンドサウンド。映画力が迸る、音楽の富の奪取ぶりがキラキラと輝いて素晴らしい。となるとここは、ヒッチハイクものといふと森山茂雄の大金星と、国沢☆実の白星が続いただけに俄然期待が膨らみかけたものの、残念ながら仏の顔は三度目を待たずにエンド。ヒッチハイク・ピンクがエンストする原因は明白、中盤以降何もさせて貰へないヒロインが、素直に何もしない激しい疑問手。菜月&トシに本城夫妻と、新しく車に乗る面々が何れもカップルゆゑ、それぞれがそれぞれのパートナーと絡みをこなしてゐる間、風呂に浸かるのが精々の主演女優が基本蚊帳の外といふのは、流石にピンク映画として致命的。実は物騒などんまい号の最終的なケリをつけるのは江藤で、そもそも菜月が開けたパンドラの函を、真希江は覗いてさへゐない。受動的極まりない真希江と何時の間にか次の仕事の決まつた宏の夫婦生活で締めの濡れ場を纏めてみせても、それは清々しく便宜的といふものだ。れいの心が世界を包む奇跡はおろか、沙紀と久美が無理矢理抜けた地平にすら遠く及ぶまい。部分的には悪くないと同時に、全体的には決してよくもない。田中康文にも、セカンドバージンは墜とせなかつた。

 それとも、あるいはこの期に及んで今更かも。池島ゆたかなり浜野佐知なり、この人の場合お目付け役のPが居た方が芳しい結果に繋がる、とかいふ考へ方も出来るのかな?


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 「白衣妻 不倫三昧」(1996/製作:旦々舎/提供:Xces Film/監督:浜野佐知/脚本:山崎邦紀/撮影:河中金美・小山田勝治/照明:秋山和夫・真崎良人/編集:㈲フィルム・クラフト/音楽:藪中博章/助監督:国沢実/制作:鈴木静夫/効果:時田滋/スチール:岡崎一隆/録音:ニューメグロスタジオ/現像:東映化学/出演:愛田るか・田代葉子・道本優里香・樹かず・小泉達也・リョウ・平賀勘一・青木こずえ)。
 深夜の南東京病院、階段の踊り場にて看護婦が入院患者(小泉)の尺八を吹く。「どんな手術や薬より、幸せなSEXの方が健康になれるのよ」と説き長瀬美加子(愛田)はそのままエッサカホイサカ挿入行為に突入、院内を見回る棚橋くるみ(青木)が、その現場に出くはし目を丸くする。フィニッシュは口内で射精を受けた美加子の、カメラ目線でタイトル・イン。日を改め病院屋上、くるみに詰め寄られた美加子は、サクッと看護婦を退職。曾祖母から受け継がれたとの薬草の処方箋と自身で培つたエンドルフィンの知識を頼りに、勤めを辞めさせた夫(樹)運転のライトバンで、知り合ひの元入院患者を訪問治療する大絶賛無資格医業を開業する。美加子によると、幸せなSEX→エンドルフィンの分泌→健康になれる、なのださうだ。性病や負担に耐えきれない心臓もエンドルフィンで治ればいいけどな、板垣恵介ばりのトンデモ理論ではある。美加子が最初に向かつた先は、大企業の部長で自宅療養中である栗山(リョウ)宅の、今や正確には“旧”旦々舎。民間療法の神秘主義だ気の流れが変るだと細君(田代)を説得力のない方便で外出させた栗山は、一人で訪れた美加子と要はイッパツ。スッキリするや「有難う、体の奥から生命力が甦つて来たやうな気がするよ」と宣ふが、何時も通りギラッギラのリョウ(=栗原良=ジョージ川崎=相原涼二)が、病を患つてゐるやうには初めから見えない。一方、美加子を放逐し意気揚々のくるみは、美加子が元患者の家々を回つてゐるといふ看護婦仲間の噂話(三人での会話、一人目の声は浜野佐知)を小耳に挟み、満ち足りて一旦は納まつてゐた闘争心を再点火される。
 配役残り平賀勘一は、栗山に続いて美加子が訪問する、関東テレビのプロデューサー・クミタ、漢字が見当もつかない。くるみに焚きつけられたクミタは、“病院を辞めさせられた元看護婦のセックス療法”を告発する番組企画を発案。道本優里香は、そんなこんなで美加子を直撃する関東テレビのレポーター、同伴するカメラマンは山崎邦紀。幻の女優といふ称号を冠して概ね語弊あるまい道本優里香であるが、脱がないその他端役でのエクセスと新東宝、そして公開順でいふと間に挟まれる三本柱の筈の大蔵(『痴漢日記 不倫を覗く』/監督:小林悟)と、一応三社を網羅してはゐる。
 随時開催、全五作からなる愛田るか映画祭。第四戦・大御大「痴漢チン入乱乳電車」(1998)、第三戦・山邦紀「超淫乱 愛田るか くはへたら放さない」(1997)に続いては、浜野佐知による初陣。DMMの設けた短いストーリー紹介に目を通してみたところ、美加子の信念として“どんな手術や薬より、幸せなSEXの方が健康になる”とある。となるとこれは、後々「ピンサロ病院 ノーパン白衣」(1997/主演:麻生みゅう)に於ける山科恒夫院長(平勘)や、「ノーパン白衣 濡れた下腹部」(2000/主演:佐々木麻由子/ともに的場ちせ名義)に於ける桃園里緒(佐々木麻由子)の信条に連なる、二作の母なる一作なのであらうか。だなどとその瞬間ときめいてしまつた、己の粗忽を俺は笑つた。目を開いてゐるか、閉ぢてゐるか。美人であることは確かに美人であるものの、基本二枚しか表情のない愛田るかは挙句に、エンドルフィンが云々と下手に長講釈を垂れさせると口跡の巧拙以前に、そもそも舌から回つてゐない。斯様に覚束ないエクセスライク迸る主演女優を狙ひ撃つは、トメに座る百戦錬磨の青木こずえ。美加子V.S.くるみの対立軸が演者の圧倒的な力量差に躓き満足に成立し得ない以上、物語的には無理矢理纏めるのが精々関の山、纏まつてはゐないのだが。ただ映画の神は、今作を見捨てはしなかつた、明後日だか一昨日な笑ひ処には妙に事欠かない。完ッ全に風俗店感覚で服を脱ぎながら登場する、ファースト・カットから笑かせる平勘が達する寸前に、「エンドルフィン!」と呻くのには『浦安鉄筋家族』かよと大笑させられた。会社まで辞めさせられて、単なる送迎といふ旦那の扱ひ自体が大概な上に、美加子が出張性感、もとい治療中、樹かずは外で待たせられる。様子を窺ふなり徐々に猜疑に駆られつつ待ち惚ける樹かず、カット変りその頃女房はといふとリョウや平勘の上でアンアン腰を使つてゐるといふ繋ぎはケッサク。どうやら映画の神が欠伸してる隙に、笑ひの神が降りて来たやうだ。挙句に、美加子の所業を樹かずに糾弾するに際してくるみ曰く「あの人はねえ、夫の貴方を外で待たせておいて、自分は余所の男とセックスしてるのよ」。快晴の空の如く一点の曇り無し、大正論極まりない、大体タイトルが既に白状してゐる。そこまではいいとして、そのままくるみが出し抜けに樹かずを誘惑したかと思ふと、御丁寧にもドアを全開にした上でライトバンでのカーセックスを敢行することに対しては、突つ込むのが野暮といふもの。それでは何か、貴兄は青木こずえの裸が見たくないと仰せか。ここでくるみの濡れ場を無理矢理にでも捻じ込むのは、プログラム・ピクチャーのプログラムされた部分ではない、ジャスティスだ。


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 「喪服不倫妻 こすれあふ局部」(2001『喪服の女 崩れる』の2013年旧作改題版/制作:セメントマッチ・光の帝国/配給:新東宝映画/監督・脚本:後藤大輔/原案:堪忍/企画:松盛健二・福俵満/プロデューサー:池島ゆたか/撮影:飯岡聖英/編集:酒井正次/音楽:大場一魅/助監督:佐藤吏/監督助手:小川隆史/撮影助手:末吉真・馬場元/応援:下垣外純/出演:佐々木麻由子、木村圭作、松木良方、中村方隆、螢雪次朗、新納敏正、かわさきひろゆき、神戸顕一、水原香菜恵、河村栞、森久美子、手塚美南子、あおい・かやの、山咲小春)。出演者中、手塚美南子とあおい・かやのは本篇クレジットのみ。
 親戚縁者の香苗(水原)と娘二人(あおい・かやの/どちらのお嬢さん?)、章(中村)と秋男(新納)、弘之(かわさき)とくみ子(森)に豊(螢)が順々に、故人を偲びながら焼き上がつた骨を箸で拾ひ集める。呆然と一人蚊帳の外気味の喪主代理・立花富子(佐々木)が促され、拾つたお骨を骨壷に入れてタイトル・イン。富子が戻つたのは、零細印刷会社「ローズ社」。葬儀は富子の姑・きぬゑのもので、本来ならば喪主を務める筈のきぬゑの息子、即ち富子の夫・守(松木)は事故で足と脊髄を損傷し、下半身不随で寝たきりの身であつた。足は兎も角脊髄をヤッた割に、上半身は屈強な若い男にスリーパーを極められるほど元気でもあるのだが。さて措き鬱屈と死の気配漂ふローズ社を、喪中の案内を気にしながらも、工員募集の貼紙を目にした坂田隆三(木村)が訪ねる。元々夫婦二人きりで回してゐた仕事は富子一人の手には余り、そのまま坂田は住み込みで厄介になることに。汗の滴る作業場、印刷機の奏でる爆音と、元々は音楽を志してゐたといふ守が指揮者気取りで聴くクラシックのLPレコードに紛れ、坂田は富子を犯す。初めこそ拒んでゐたものの、直ぐに精悍な坂田を受け容れた富子は、やがて閉塞した今の生活を捨てることと、新しい人生とを坂田に求める。
 登場順に配役残りトメの山咲小春は、守の担当医・矢野杏子。富子とは同性愛の関係にあり、男にも抱かれる両刀の富子に対し、杏子はガッチガチのレズビアンであると思はれる。手塚美南子は、一人で見切れる看護婦。神戸顕一と河村栞は松葉杖の患者と、神戸顕一を介助しつつ院内で煙草を吸ふ富子を注意する看護婦・佳織。きぬゑの遺影の主と、富子を坂田が後ろから突くのが戸の隙間から覗くのにも気付かずに、器を回収する出前持ちは不明。
 あのm@stervision大哥が明らかに平衡を失して激賞すらしてをられた、後藤大輔のピンク映画第一作。個人的には清々しくリアルタイム以来で、旦那が片端の工場に流れ者が転がり込む、粗筋中の粗筋しか覚えてゐなかつた。要は、限りなく殆ど初見と変らない。さうしたところ、あらうことか濡れ場に至つても細切れの酷いプリントに妨げられてか、幸か不幸かピンク映画の観方に影響が及ぶほどの衝撃は受けなかつた。ベタ足で作品世界を積み重ねて行く重低音の語り口の中で、富子と杏子が突発的に百合の花を咲かせる浮き足がまづ際立つ。加へてもうひとつの更なる根本的な唐突が、終盤に加速する。普通の映画でも事前に上映時間を調べれば同じことなのだが、尺の尽きるのが予め実感し得るプログラム・ピクチャーにあつて、着地点の明白なラストへの足取りは性急に過ぎる、呆気ないのを通り越した粗雑なものと映つた。中村方隆・螢雪次朗・新納敏正ら地味に潤沢な布陣も、焼き場を都合二度通り過ぎるのみ。となると、らしくない以前に大雑把極まりない与太を吹くやうだが、あともう十分戦へる、ロマンポルノ向きの企画であつたのではと思へなくもない。


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 「和服女将の乱れ髪」(2013/製作:関根プロダクション/提供:オーピー映画/脚本・監督:関根和美/撮影:下元哲/照明:代田橋男/助監督:金沢勇大/編集:有馬潜/監督助手:江尻大/撮影助手:大前明/照明助手:榎本靖/協力:ステージドアー/効果:東京スクリーンサービス/出演:波多野結衣・山口真里・小倉もも・なかみつせいじ・竹本泰志・森山翔悟・那波隆史)。
 タイトル開巻、マンションの外景を一拍抜いて、なかみつせいじが山口真里に寄り切られる形が、実に安定したリアリズムを醸し出す元木(なかみつ)とその妻・典子(山口)の夫婦生活。達するすんでで元木は馴染みのスナックのママ・摩子の名前を呼んでしまひ、当然典子は臍を曲げる。ううん、山口真里の臍を曲げさせて、あたふたしたい(笑
 部下の河瀬(竹本)との外回りが空振つた元木は、そのまま厄払ひにとスナックその名も「摩子」(元店舗はステージドアー)に。ママの摩子(波多野)以下、観る度にオッパイが大きくなつてゐる気がする小倉ももが女子大生アルバイト店員の美穂で、美穂の上がりを迎へに来る森山翔悟が、彼氏の太田。プラッと寄つた―即ち最終的には帰社しなければならない―筈なのに、森山翔悟が顔見せする頃には河瀬がすつかり潰れてゐたりするのは、細かいことは気にするなな御愛嬌。もしかして端折つただけで、元木と河瀬は出直したのか?寝こける河瀬の傍ら、摩子は翌日のデートに元木を誘ふ。てれんこてれんこしたプチ・ハイキングの末に摩子が切り出した本題は、DVに耐へかね逃げたものの、居場所を突き止めた夫が店に現れたといふ相談だつた。
 そんな訳で那波隆史が、黒縁メガネに凶暴性を忍ばせる―未だ離婚が成立してはゐない―摩子の夫・沢田、女の腹にフルスイングのフックを叩き込むバイオレントな悪漢。役に立たない元木と手をこまねく摩子は自宅に留まり、ママ不在につき美穂が孤立無援でてんてこ舞ひする「摩子」―たまたま一人で来店した河瀬がヘルプに入る―店内に、下元哲ともう二人客要員に見切れる。
 小倉名画座にて観た関根和美2013年第三作。同じ週八幡の前田有楽劇場には、三ヶ月前に小倉を通過した前作にして同じく主演を務める波多野結衣にとつては初陣となる、「浮気調査 情欲裏ファイル」が来てゐたりもする。狙つたものか偶々なのかは知らないが、小倉と八幡を股にかけた波多野結衣×関根和美映画祭ぶりが実に正月らしく賑々しい、ウチは喪中なのだが。それはさて措き、綻びや澱みもなければ工夫や捻りにも欠く物語がテローンと流れる尺を、三花繚乱の濡れ場で執拗に埋め尽くす。三本柱も磐石に誠麗しき安定した裸映画ではありつつ、さうなるとお話本体に面白さがない分、目につくのは流石にあんまりなロケーションの貧しさ。撮影のインスタント感を鑑みれば無理からぬともいへ、始終は概ね屋内に引きこもり、僅かに陽の光を浴びても寄つた画に終始する。裸映画とはいへ貴重な35mm主砲を持ち出しての映画なのだから、せめてワン・カットくらゐは深みなり拡がりなり凝つた構図なりで感嘆させる、映画的なショットが欲しいところではある。もうひとつ目もとい耳についたのが、締めの波多野結衣V.S.なかみつせいじ戦のバックに流れる、変にお上品な劇伴。この期に気取つてみせるタマでもなからうに、関根和美映画の肌触りには、もつと泥臭く耳馴染みする二三十年一日音楽の方が、よりフィットするのではと一ファンとして首を傾げたところではある。主演女優の裸を銀幕に載せるに際して、妄想ないしは夢オチを臆する素振りなど欠片も窺はせぬ貫禄は関根和美一流。実は結局、劇中現在時制に於いて摩子の絡みはおろか裸さへないことに、気付くと何気に驚かされる。

 出し抜けにジャカジャカ披露されるエンディング・テーマは、何か森山翔悟か誰かのバンドのトラック?仮にだとすると、お爺ちやんと孫みたいだ。


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 「不倫OL びんかん濡れ白書」(2013/製作:加藤映像工房/提供:オーピー映画/監督:加藤義一/脚本:鎌田一利・加藤義一/撮影監督:創優和/編集:有馬潜/助監督:小山悟/監督助手:江尻大/撮影助手:酒村多緒/音楽:小鷹裕/出演:美杉あすか・山口真里・あずみ恋・久保田泰也・柳東史・津田篤・岡田智宏・荒木太郎)。あれ、音響効果の山田案山子てクレジットあつたか?
 求人広告の「アドサーチ」社、営業部デスクの並びは画面奥の黒井部長(柳)を起点に、時計回りに大卒新入社員の緑川不二子(美杉)、不二子の隣に小山義利(小山悟?)。小山の正面がトップの座を虎視眈々と狙ふ烈女・砂山サチ(山口)で、最後に不二子の対面が、営業部エースで社長の娘(親爺ごと一切登場せず、ラストに登場する新生男児は何処の赤ちやん?)とも結婚した増村保雄(岡田)。壁の営業成績棒グラフを見るに、もう一人大道寺勇人なる名前負け感を漂はせる部員(後に一人謎のオッサンが見切れはする)がゐる模様。仕事もそつちのけに、不二子は実は不倫関係にある増村に見惚れる。室内なのに増村の髪が風にそよぐ、加藤義一一流のハンサムなイメージ―とはいへ今回、岡田智宏が少々太り気味、サーモン鮭山に気持ち被つてる―は、まさかの裸ネクタイに発展。我に返つた不二子が、溜息ひとつついてタイトル・イン、最初の裸が男の裸かよ。
 全ッ然上手くは行かない営業と、ゾッコンとはいへ所詮は人のもの―しかも相手は大分分が悪いぞ―に過ぎない増村との恋路に塞ぎがちな不二子に、幼馴染でこちらはしがない派遣稼業の高崎純(久保田)は、変らず温かく接する。そんな純の部屋には未だ大学に留まる悪い先輩の早川健(ズバットか/津田篤)が、彼女・水木レイ(あずみ)とのヤリ部屋代りに入り浸り、一方増村と不二子の無用心にもほどがあるオフィス・ラブの現場を目撃したサチは、山口真里十八番のメソッドでほくそ笑む。
 配役残り荒木太郎は、アドサーチの顧客にして格安牛丼チェーン「三木フーズ」の三木社長。動物といふかピンポイントで蛙が大好きらしく、応接室を埋め尽くす加藤組定番の大量のカエルさんグッズに止(とど)まらず被り物まで装着し、語尾と合間合間にケロを多用も通り越して乱打するケロ言葉とで出向いた不二子を迎撃する、最早奇矯の一言では片付かない御仁。昨今人の映画で、エキセントリックに弾け倒す荒木太郎の闇雲な充実ぶりは異様な光芒を放つ。
 何があつたのか何を考へてゐるのかゐないのか知らないが、岡輝男との―ほぼ―コンビを解消して以来順調に迷走を続ける加藤義一の2013年第二作。不倫と仕事に悩むヒロインが、ずつと側に居て呉れた幼馴染とシャボン玉をキー・アイテムにやがて結ばれる。正調の恋愛映画を志向した正攻法は酌めるものの、何ともかんとも物足りない。体脂肪率からキレのない主演女優をカバーするどころか、そもそも中身自体平板な展開の逐一はメリハリにも乏しく、始終は乳と、もとい遅々と進行するばかりで一向盛り上がらず。諦めるな、第一の矢が折れたとて、ピンクは未だ二本の矢を残すではないか。尤も、ケロケロ一人気を吐く荒木太郎のハイテンションは孤軍奮闘楽しませる反面、二番手・三番手の裸を量的にさへ満足に見せないのは些かならず如何なものか。とりわけ、殆どレコードを割るためにだけ出て来たに等しい、あずみ恋の勿体なさは止め処なく迸る。形的にはハッピーなエンディングも波乱万丈の末に訪れた安定感といふよりは単なる安直さが先に立ち、派手な破綻といふツッコミ処すら欠く分、万事が清々しく右から一昨日へと流れ去る始末。唯一の得物の叙情性をも空振りするとなると物理的には脆弱極まりない、正しくシャボン玉の如く覚束く心許ない一作。加藤義一と竹洞哲也が、各々別個の結果的にせよ仲良くマッタリしてゐるのは全く困つたものだ。そろそろ下は見当たらないが上も同世代も全員ブッ潰す勢ひで、鎬を削つて大暴れしてゐて欲しい頃合ではあるのだが。

 本来ならば、締めの濡れ場に際して事の最後まで不二子がメガネを外さない点―あるいは外させない演出―は俄然評価せねばならないところでありつつ、元々の訴求力がなあ・・・・(´・ω・`)


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 「絶妙色洗ひ 玉までしやぶれ!」(1992『《秘》性感逆ソープ』の2013年旧作改題版/製作:旦々舎/提供:Xces Film/監督:浜野佐知/脚本:山崎邦紀/撮影:河中金美・植田中・松本治樹/照明:秋山和夫・上妻敏厚/音楽:藪中博章/編集:㈲フィルム・クラフト/助監督:高田宝重/制作:鈴木静夫/ヘアメイク:小川純子/スチール:岡崎一隆/録音:銀座サウンド/現像:東映化学/出演:柴田はるか・森山美麗・小林理香・平本一穂・芳田正浩・栗原良)。
 嬌声込みのタイトル開巻、トルコ風呂もといソープランドに於けるのと同趣向のサービスを男が女に施す、といふ次第で“逆”ソープ。逆ソープを取材するフリーライターの峯村リエ子(柴田)が従業員の橋口美幸(森山)と、美幸がモデルとなり仮面をつけた泡姫ならぬ泡王子にサービスを受けるVTRに固唾を呑む。後々登場する、帝東スポーツの北原デスクから紙面枠を貰つた編集プロダクション「ウィンド・ミル」社長の益田豊(栗原)の依頼で、リエ子は女目線による逆ソープの連載記事を書くことになつたものだつた。登場順を前後して二宮和也似の芳田正浩に続きよく見てみると井ノ原快彦似の平本一穂は、「ウィンド・ミル」社員・海原純一。大仕事に功名心を燃やすリエ子に対し、彼氏の秋山高志(芳田)はエロ企画であると難色を示す。兎も角リエ子が書き上げた第一稿を、益田は当り障りがないと大酷評。出直す形で、リエ子は再び美幸が仮面男に抱かれる模様を、VTRではなく今度はその場に同席し直接取材する。
 直接取材の成果が評価されたリエ子は、更にもう一段取材のギアを上げる。予想通りの内トラ除き配役残り小林理香は、リエ子が第二次美幸に続き実際の現場を取材する、純然たる逆ソープの顧客・佐藤明美。三番手ながら見事な釣鐘型のオッパイとキリッとした美貌とを誇る、なかなか以上の上玉。
 久し振りなので改めて整理すると、jmdbに抜けがなければ浜野佐知による逆ソープ看板シリーズは全五作。三作前の「《秘》潜入 男子禁制逆ソープ」(1992)が好評を博したのか、第二作が今作。薔薇族一本挿んで四作後の第三作「《秘》潜入逆ソープ天国」(1992/主演:藤小雪)に、1993年第十作の第四作「《秘》回転逆ソープ」(1993/主演:小沢なつみ)と続いて、最後が1994年第二作の「逆ソープ 究極の48手」(1994)。因みに、平賀勘一が今作で惜しくも皆勤賞を逃し、第一作に関して記載漏れの可能性を考慮すると、栗原良(=リョウ=ジョージ川崎=相原涼二)は微妙。「《秘》潜入 男子禁制逆ソープ」と「逆ソープ 究極の48手」はDMMにも見当たらないので、今後の新版公開を願ふしかない。話を本作単体に戻すと、リエ子と秋山の絡みの最中に投げた、リエ子が絶頂に達すると相手の首筋に噛みつく噛み癖を鍵に、底の浅い姦計が露呈し頭を抱へる男を尻目に、女達が意気揚々と闊歩する姿は旦々舎鉄板中の鉄板の十八番展開。三本柱の粒もピシャッと揃ひ、女性主義的にして商業裸映画としての要請もキッチリ果たす、浜野佐知らしい安定と貫禄の一作である。

 終盤ワン・カットのみ登場する帝東スポーツの北原デスクは、案の定山﨑邦紀。但し、後ろ髪を束ねてゐたのには軽く驚いた。


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 「超淫乱 愛田るか くはへたら放さない」(1997/製作:旦々舎/配給:大蔵映画/脚本・監督:山邦紀/撮影:千葉幸男・島垣弘之/照明:上妻敏厚・新井豊/編集:酒井正次/音楽:中空龍/助監督:松岡誠・飯塚忠章/制作:鈴木静夫/スチール:岡崎一隆/録音:福島音響/現像:東映化学/出演:愛田るか・田口あゆみ・甲斐太郎・樹かず・中村和彦・真央はじめ)。
 飛行場近くから飛行機を抜いて、カメラが引くと愛田るか、出し抜けにジャン!と劇伴が不意を討つタイトル・イン。愛田るかが、M1ジャンパーが爆発的に似合ふ甲斐太郎から階段を逃げる。踊り場で捕まつた愛田るかは犯されかけるも、一瞬の隙を突き後背位から騎乗位に移行するや攻守逆転、甲斐太郎は逆に搾り取られる。のは、浜野佐知にグラサンを借りた―与太ですd(*´∀`)b―真央はじめカントクが撮影中の、“平成の淫乱女優”愛川りら(愛田)と“天下のレイプ男優”立花か橘(甲斐)による一幕。ここで、ゆめゆめAVかなどと思ふこと勿れ、爆音を奏で35mm主砲が回つてゐる。但し、後々の真央カントクの発言で企画が頓挫した場合の損害が最終的には一千万といふに、どうやらピンク映画ではない模様。え、PINK‐X?いやこれ大蔵だし。その場に姿を見せる田口あゆみと樹かずは、愛川りら所属事務所の社長・中里か仲里レイコと、マネージャーの原嶋か原島。何の機器なのかよく判らない、飛行機の発着情報が聞こえるトランシーバー状のガジェットと双眼鏡で中村和彦が飛行機をウォッチしてゐると、りらが現れる。一方レイコと原嶋は、レイコが話題作りにと仕掛けた愛川りらの営業淫乱疑惑に対し、りらが取材を受ける毎にまるで正反対に回答してゐることの対応に苦慮する。話題を仕掛けるだけ仕掛けておいて、当のタレントは躾けておかなかつたのか。それは兎も角、疑惑を否定するインタビューの中で、りらが芝居が出来れば本番女優にならないとしてゐるのがさりげなく清々しくて笑かせる。さうかうしつつ、劇中二度目の遭遇で中村和彦に接触したりらが集合場所にやつて来ず、真央カントク以下一同は頭を抱へる。
 里見瑶子のデビュー作で相沢知美が声をアテる、地味に歴史的な「痴漢チン入乱乳電車」(監督・共同脚本:小林悟)を見た余勢で、調べてみるとDMMが出演全五作を網羅してゐるといふので俄に随時開催を思ひついた愛田るか映画祭。「痴漢チン入乱乳電車」が第四戦で、今回の山邦紀1997年第一作は第三戦に当たる。小林悟と山邦紀を並べたところ面白いのが、大御大の大らか過ぎる作品世界の中では気にならなかつたものが、センシティブであることを要請される物語にあつては途端に露呈する、愛田るかの綺麗な棒大根ぶり。主演女優の御愛嬌に素直に連動し、機体もとい映画全体も空中分解。飛行機に涙を落とすりらが理由を尋ねられると“空から降つて来る天然の悲しみ”に触れるだとか、為にするアイデンティティ・クライシスは覚束ない口跡に引き摺られ全く地に足が着かない。撮影をスッぽかしたりらに代り、何故か三番手不在の布陣の中田口あゆみが真央はじめと樹かずを相手に二連戦を正しく孤軍奮闘する中盤も、煌くやうに便宜的。そもそもが、レイコ曰く“セックスの怪物”だの“モンスター”といふ割には、相手が悪いといへばそれまでにせよ豊丸の偉大なる雄姿ならぬ雌姿を想起するに、愛田るか自体が決定的に弱い。邪気もなくバレてみせるが、結局ナニするほかは中村和彦と何を深めるでもなく、りらはケロッと現場復帰。とはいへ立花はバラしてしまつた故、レイコの発案と社長命令でカントクと原嶋が相手を務める巴戦に。りらりらに双頭ディルドーで責められるカントクを、ベッドの頭から原嶋が体操座りで見てゐる。画期的な間抜けさがともあれ心に残る画から、原嶋もりらに招かれ先頭のマオックスの受けが素晴らしい三穴連結。それなりのエクストリームを見せた上で、飛行機を三十秒強途方もなく追つたかと思ふとこの頃何作かで耳にした覚えもある、ラスト・クリスマスを丸パクリしたスコアに乗せクレジット。全体何がしたかつたのかサッパリ判らない、別の意味でスカッとしたラストが胸に風穴を開ける。


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 「絶倫海女 しまり貝」(昭和60/製作配給:株式会社にっかつ/監督:藤浦敦/脚本:池田正一/企画:植木実/撮影:水野尾信正/照明:内田勝成/録音:福島信雅/編集:鍋島惇/美術:中澤克己/音楽:ジミー時田/助監督:北村武司/選曲:山川繁/製作担当:作田貴志/協力:神津島観光協会/出演:清里めぐみ《新人》・伊藤久美子・永野真大・よしのまこと・野上正義・橘家二三蔵・大谷一夫・章文栄・萩原賢三・藤ひろ子・志水季里子・小川亜佐美・立川談志《特別出演》)。配給に関しては事実上“提供:Xces Film”か。
 こんちこれまた別に明示はされないけれども神津島、網元の娘で東京の女子大から帰省中の由美(清里)が、後に海女頭のよし乃(藤)が営むスナック「よこ路」―何て洒落た店名なんだ―のサービス・タイムでは蛤にジュースを含んで、千円のチップを払つた客に噴きつける荒業も披露する奈津(よしの)、同じく蛸やスルメイカを入れる―ついでに感電する―愛子(志水)らと海に潜る。ノーヘルの原チャリで帰宅する由美は旅行者と思しき修司(永野)と出会ひ、宿まで二尻で乗せる、何と大らかな時代よ。島の観光開発を狙ふ東西観光開発の現地先兵「松永不動産」社長・松永(野上)以下、部下で元漁師の順平(大谷)や殆ど登場しない文三(橘家)が暗躍する一方、ある日一仕事終へた由美らは、崖から花束を海に投げる修司の姿を遠目に目撃する。
 配役残り伊藤久美子は、海女で順平と以前は恋人同士であつた芙佐。疲労困憊しながらも奈津や愛子を篭絡し、何のかはよく判らない白紙委任状を掻き集める順平と度々衝突する。因みに文三はといふと松永の腰巾着に止(とど)まり、劇中特に仕事しない。萩原賢三は、この男のグズさが一件の元凶と思へなくもない、借金持ちの網元・剛三。小川亜佐美は―萩原賢三との―絡みは設けられないものの剛三の再婚相手の座に躍り出る、島に長逗留する外地の女・香織。立川談志が東西観光開発社長で、章文栄はその秘書・ナミ。この人は脱がない、藤ひろ子もな。
 連続テレビ小説のヒットに便乗して注目される、藤浦敦による海女ンポルノ最終第五作。風光明媚で本来のどかな小島が、大手開発業者によるインベイジョンに揺れる。但し地上げの手口といふのが女は棹で誑し込み、男は鰒で誑かす。プログラム・ピクチャーが最も得意とする豊潤な方便に従ひ、これは劇中島民性と捉へればよいのか床の中よりも島内をフル活用する色んなとこでの濡れ場がつるべ撃たれる中、ベーシックな惚れた腫れたや血縁の因縁も絡められる。騒動がいい塩梅に熟したところで、正しく真打登場とばかりに談志師匠投入。万事を丸く収める完璧な構成と、誰一人不幸にしない見事な大団円には全力で感動した。あまりにも整ひ過ぎて一歩間違へば平板なルーチンと錯覚さへさせかねないのかも知れない、綺麗な綺麗な娯楽映画。ところで主演の清里めぐみは、その後現場で出会つた滝田洋二郎と結婚、現在に至るとのこと。古参の先輩方にとつては、いはずもがなな周知の出来事なのであらうが。


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 平成26年映画鑑賞実績:215本 一般映画:11 ピンク:197 再見作:7 杉本ナンバー:66 ミサトナンバー:8 花宴ナンバー:7 水上荘ナンバー:17

 平成25年映画鑑賞実績:242本 一般映画:20 ピンク:214 再見作:8 杉本ナンバー:75 ミサトナンバー:4 花宴ナンバー:4 水上荘ナンバー:9

 再見作に関しては一年毎にリセットしてゐる。その為、たとへば三年前に観たピンクを旧作改題で新たに観た場合、再見作にはカウントしない。あくまでその一年間の中で、二度以上観た映画の本数、あるいは回数である。二度観た映画が八本で三度観た映画が一本ある場合、その年の再見作は10本となる。

 因みに“杉本ナンバー”とは。ピンクの内、杉本まこと(現:なかみつせいじ)出演作の本数である。改めてなかみつせいじの芸名の変遷に関しては。1987年に中満誠治名義でデビュー。1990年に杉本まことに改名。2000年に更に、現在のなかみつせいじに改名してゐる。改名後も、旧芸名をランダムに使用することもある。ピンクの畑にはかういふことを好む(?)人がままあるので、なかなか一筋縄には行かぬところでもある。
 加へて戯れにカウントする“ミサトナンバー”とは。いふまでもなく、ピンク映画で御馴染みプールのある白亜の洋館、撮影をミサトスタジオで行つてゐる新旧問はずピンクの本数である。もしもミサトで撮影してゐる一般映画にお目にかかれば、当然に加算する。
 同様に“花宴ナンバー”は、主に小川(欽也)組や深町(章)組の映画に頻出する、伊豆のペンション「花宴」が、“水上荘ナンバー”は御馴染み「水上荘」が、劇中に登場する映画の本数である。


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 一親等ともなると身内中の身内の不幸や非人道的な繁忙期に感け、すつかり忘れてゐた私選ピンク映画2012年ベスト・テンその他与太である。本当の本当に率直なところをいふと、一昨々年森山茂雄のヒッチハイク・ピンクや昨年のセカンドバージンに匹敵する、群を抜く圧倒的な一作には乏しい一年、といふ面に最も足を引かれたところではある。

 そんなこんなで簡略に、12年(昭和換算:79-8年)ピンク映画ベスト・テン

 第一位「おねだり狂艶 色情いうれい」(オーピー/監督:渡邊元嗣)
 ナベシネマの“強さ”に、ベタなメッセージにも関らず涙腺が決壊する。
 第二位「感じる若妻の甘い蜜」(オーピー/脚本・監督:田中康文)
 随一の映画力、撮影賞は飯岡聖英。
 第三位「新婚妻の性欲 求める白い肌」(オーピー/脚本・監督:吉行由実)
 偽装三番手が引つ繰り返す大どんでん返し。松浦祐也・沢田夏子・亜希いずみら―あと色華昇子も―錚々たる面子を押さへ、復帰賞は上加あむ。
 第四位「いんび巫女 快感エロ修行」(オーピー/監督:渡邊元嗣)
 オッパイの名作。
 第五位「お色気女将 みだら開き」(オーピー/監督:竹洞哲也)
 松浦祐也が三年ぶり奇跡の大復活、物語本体もエモーショナル。
 第六位「変態女課長 陵辱ぶち込む」(オーピー/監督:国沢☆実)
 前半のピンクと、後半の映画。
 第七位「乱交白衣 暴淫くはへ責め」(オーピー/監督・脚本・出演:荒木太郎)
 正体不明のパワー溢れる快作。
 第八位「発情バスガイド おしやぶり巨乳」(オーピー/出演・振付・小道具・殺陣・音楽・制作・脚本・監督:清水大敬)
 案外手堅く纏まつた、いい塩梅に愚直な娯楽映画。
 第九位「人妻娼婦 もつと恥づかしめて」(オーピー/監督:池島ゆたか)
 黒い津田篤がカッコいい、ソリッドな裸映画。
 第十位「どスケベ検査 ナース爆乳責め」(オーピー/監督:加藤義一)
 賑々しい周年作、最後の本格旧館映画か。

 更にサクッとワースト・スリー

 第一位「悩殺セールス 癒しのエロ下着」(オーピー/監督:渡邊元嗣)
 第二位「人妻の恥臭 ぬめる股ぐら」(オーピー/脚本・監督:山邦紀)
 伊沢役が致命傷、吉行由実は超絶。
 第三位「若未亡人 うるむ肉壺」(オーピー/監督・脚本:関根和美)
 関根和美が次なる御大の称号に手を届かせかねない、ネガティブな衝撃作。

 評価に窮して裏一位、「さみしい未亡人 なぐさめの悶え」(オーピー/出演・脚本・監督:荒木太郎)
 相ッ変らず東京物語では仕出かしつつ、石巻に届けたエモーションは買へる。
 殆ど定位置の裏二位は「美女家庭教師の谷間レッスン」(オーピー/監督:小川欽也)
 箱根経由花宴行き貫禄の伊豆映画。
 裏三位は「人妻家政婦 うづきに溺れて」(オーピー/監督:竹洞哲也)
 シリアスなメロドラマの進行もそつちのけに、キャストの過半数がコミック・リリーフといふある意味画期的な布陣の一作。


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