真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「残虐SEX 恥かしめ」(昭和53/製作:ユニバースプロ/提供:東映セントラルフィルム株式会社/監督:中村幻児/脚本:小水一夫/製作:向江寛城/撮影:久我剛/照明:近藤兼太郎/助監督:平川弘喜/編集:田中修/音楽:東映撮影所/記録:前田郁子/演出助手:内村助太/効果:東映効果/制作:宇井誠/録音:東映録音部/現像:東映化学/協力:クインエリザベス石庭/出演:日野繭子、楠正通、下元史郎、浦野あすか、ミレーヌ・みゆき、丘みどり、依田朋子、椙山拳一郎、吉田純、阿木貴志、横井政治、三沢ユキ、山本明子、中山正、石田和人)。出演者中依田朋子と、阿木貴志以降は本篇クレジットのみ。製作の向江寛城は向井寛の変名で、脚本の小水一夫はイコール小水一男。提供の東映セントラルフィルムに関しては、実際にはエクセス。
 開巻即座取り立て屋コンビの吉田(下元)とサトル(楠)が、亭主の借金の形に浦野あすかを犯すスピード感弾けるアバンに、威勢のいい大書で叩き込まれるタイトル・イン。二人の次なるターゲット・相沢良夫の下には直訴したサトルが一人で出撃する一方、吉田は草鞋を脱ぐ格好のサラ金「丸田金融」のオーナー(吉田)から仕事ぶりに関してお褒めを頂戴しつつ、丸田の芸者上がりの妻で丸田金融を任されたアキエ(丘)とは、実は男女の仲にもあつた。サトルはまんまとガキの使ひぶりを露呈、結局吉田が墜とした相沢(椙山)は全てを失ひ、娘のサチコ(日野)の眼前電車にダイブする。話を少し戻して、サトルが相沢とサチコに門前ならぬ玄関払ひを喰らふ一幕と、吉田とアキエの一戦が並走。一絡み完遂したところで、バツの悪さうなサトルが丸田金融に帰還してゐて二人を驚かせる展開の繋ぎが、後々着弾する魚雷伏線の発射含めピンク映画的に何気に完璧。
 配役残り純然たる濡れ場要員のミレーヌ・みゆきは、浦野あすか同様吉田と悟に輪姦される大体ハーセルフ。手篭めにされた挙句に、二人口を揃へてスカスカだと連呼されるあんまりな役。問題が、本篇クレジットのみ俳優部。男優部は丸田の手下―か吉田にサチコを取られたサトルに八つ当たりされる髭―辺りとしても、それらしき女優部が本格的に見当たらない。とりわけ椙山拳一郎よりも高い、謎ビリングの依田朋子が最大の謎。よもやまさかもしかして、ラブホも嫌公園も嫌とサチコがサトルの誘ひに首を横に振る件の直後、カメラ前をザクッと横切るのが依田朋子!?正直そんなの全然判らないし、それ以外には、どんなに瞬間的であつたとて満足に抜かれもしないほんの通行人程度しか見切れない。
 八幡は通称前田有楽で第三弾「痴漢女教師」(昭和56/監督:滝田洋二郎/脚本:高木功・滝田洋二郎/主演:竹村祐佳)がかゝるのと、同じタイミングで地元駅前ロマンにやつて来たエクセス提供東映ナウポルノ第五弾。第四弾の「聖女地獄絵図」(昭和55/監督:佐野日出夫/脚本:梅沢薫/主演:吉田さより=風祭ゆき)は、来月有楽にて上映される。デジエク新作が正月と黄金週間で二本とそれなりに順調な反面、第六弾の情報が未だ入つて来ないのは、それはそれで矢張り寂しい。津々浦々レベルでは兎も角、評判は決して悪くなかつたのではあるまいか。因みに中村幻児的には、昭和53年最終第十二作。今や完全にレッスンプロだが、この頃は量産型娯楽映画を本当に量産してゐた。
 男優部の識別を意図的に阻んだアンフェア込みで、寧ろアンフェアに頼らざるを得なかつた飛躍頼みの物語は、オーラスのうのうと自嘲してみせる通りに、然程ワーキャーワーキャー騒ぐほど面白い訳では、別にない。それはさて措き、あるいは兎にも角にも。昭和52年度後半2クール本放送された、今でも馬鹿でも知つてゐる「傷だらけの天使」の影響を濃厚に直撃してゐるものと目してさうゐない、修と亨よろしくな吉田とサトルの造形が今なほ全然大絶賛出色。然程でもない下元史朗との相対的な効果込みで、タッパは映えるものの何処まで行つても気のいいアンチャン止まりの楠正通に対し、史郎名義なのはポスター・本篇クレジットまゝの下元史郎がどうかした勢ひで、硬軟自在、天衣無縫にカッコいい。長く回す間瞬きもせず、脚本の勝利で超絶的確なレトリックと、凄味も色気も何もかんも圧倒的な目力とで、サチコを寄こせとサトル―と観客―に迫るカットには身震ひさせられるのも通り越して度肝を抜かれた。昔話は柄ぢやなければ積極的にするべきではないといふ意味で好きでもないが、現有戦力に、果たしてこれだけの芸当をやつてのけられるタレントがゐるのであらうか。


コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )




 「変態盗み撮り ‐生々しいSEX‐」(1992『盗撮《生》ラブホテル』の1999年旧作改題版/製作:新映企画株式会社/提供:Xces Film/監督:新田栄/脚本:亀井よし子/企画:伊能竜/撮影:千葉幸男/照明:渡波洋行/編集:酒井正次/助監督:高田宝重/撮影助手:新川四郎/照明助手:石井克男/監督助手:高橋ルナ/音楽:レインボー・サウンド/効果:時田グループ/録音:銀座サウンド/現像:東映化学/出演:北野まりも・水沢亜美・須藤静香・坂入正三・吉岡市郎・石神一)。企画の伊能竜は、向井寛の変名。
 アトラスと並んで御用達のラブホテル「アラン・ド」の看板抜いて、301号室。ホテトルを呼んだ常連客の野村(坂入)がイメージ・トレーニング風に腰をヘコヘコ振つてゐると、嬢到着。ホテトル「ニャンニャン」に入つて一週間との源氏名エル(北野)に野村は狂喜、気前よく弾みつつ、プレイの方は有無もいはさず手篭めにする。その模様、カット跨ぐやガラッと画面のルックが変るのが、また無頓着な映画だなあと呆れかけてゐると、隣室の覗き窓視点、すまなんだ。フロント係の佐川ミサオ(石神)が、社長の趣味で盗撮カメラを回し始めてタイトル・イン。幾分焦点のボケた新題に対し、直球勝負の旧題はピシャッとハマる開巻に、新田栄の馬鹿にならないシャープな手腕が光る。この際だから―どの際だ―どエラい筆禍をしでかしてのけると、m@stervision大哥の功罪最大の後者は、新田栄の過小評価だと思ふ。
 エルこと典子(改めて北野まりも)はニャンニャンの同僚兼、一軒家を二人で借りる同居人の金井ミミ(終盤幾許かのドラマも担ふクレジット序列推定で水沢亜美)に男が出来たと出て行かれ、一人では家賃を払へぬと頭を抱へる。ところが帰宅したところ、人の気配に典子が一室のドアを開けてみると、「今日からここに住むんだヨロシク」と超絶気軽に佐川がゐた。ミミの代りに―多分不動産屋が―捕まへて来たのが佐川で、ホテトル日勤の典子と、フロント夜勤の佐川とは生活が被らないだとか何とか、ミミには適当に言ひ包められる。因みにエルと佐川が既に覗き窓越しに交錯してゐる点に関しては、典子はエル時にはショートのウィッグで変装してゐるとかいふ大らかな方便。徹頭徹尾、髪が短いだけなんだけど。
 配役残り不完全消去法で須藤静香と吉岡市郎は、見られてゐないと興奮しないとエルを呼ぶ、面倒臭い不倫カップル。「最近変つたのは撮れたか?」とザックリした電話を佐川に寄こす、社長の声は新田栄。
 物の弾みで始まる男女の共同生活、と掻い摘むと案外どストレートなラブコメにも思へて来る新田栄1992年第四作。どストレートなラブコメがとてもさうは見えないのは、ラスト十分に突入するまで満足に本筋らしい本筋が起動すらしないのんびり屋さんの展開に加へ、専ら俳優部の面子。男優部が否応もない量産型娯楽映画スメルを爆裂させるのはまだしも、折角北野まりもがプリップリの肢体で、正体不明奇々怪々な主演女優が木に馬の骨を接ぐ、エクセスのよくある悲劇を華麗に回避したかと安堵しかけたのは、正しく束の間。縦に長いブスと横に広いブスの二番手三番手は、幾ら初頭とはいへ九十年代の商業映画でこれはない。逆からいふと、ビリング頭だけで油断するな、エクセスライクは何処からでも撃てるんだぜ的な、ボクシング漫画の如き例証ともいへるのかも知れないが。何れにせよ、終盤に至つて漸く重い腰を上げた物語をアバン同様手際よく捌き、一度は別れた恋人達が、再び巡り会ふ。煙に巻かれてゐるやうな気もしないではないにせよ、意外と正攻法のラブストーリーをそれはそれとしてそれなりに形にしてみせる辺りに、改めて新田栄の何気な堅実さが窺へる。


コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )




 「痴漢女教師」(昭和56/製作:獅子プロダクション/提供:東映セントラルフィルム株式会社/監督:滝田洋二郎/脚本:高木功・滝田洋二郎/企画・製作:沢本大介/撮影:志賀葉一/編集:酒井正次/照明:守田芳彦/録音:東音スタジオ/効果:秋山実/助監督:西田洋介/監督助手:渡辺元嗣・池田文彰/撮影助手:宮本良博/照明助手:森久保雪/現像:東映化学/音楽:谷山三朗・宮本淳・坂崎孝之介《アルフィー》/出演:竹村祐佳・蘭童セル・今泉厚・青野梨魔・竹岡由美・港雄一・楠正通・堺勝朗・北村淳・嶋田隆宏・仁科ひろし・野上正義・久保新二/友情出演:沢木みみ・香川留美・佐川二郎・後藤友平)。出演者中、仁科ひろしと後藤友平は本篇クレジットのみ。実際のビリングは、仁科ひろしとガミさんの間にカメオ勢を挿む。照明助手・森久保雪の“一”が脱けてゐるのは、本篇クレジットまゝ。提供の東映セントラルフィルムに関しては、実際にはエクセス。
 蝉の声と校舎遠景、並木道を歩く竹村祐佳の足元に、サッカーボールが転がつて来る。ネーチャンと声をかけられ腹を立てた竹村祐佳が、威勢よく蹴り返さうとして、見事に空振りするショットにタイトル・イン。校長に用のある高校教師の竹村友子(竹村)が夏休みの校舎に顔を出してみると、当のチョビ髭校長(野上)以下一同は、何と視聴覚室にて―しかも―洋ピンに垂涎してゐた。生を通り越し糞真面目な友子がその場に闖入しどさくさする中、友子は生徒の非行を防がうと、夏休み中の家庭訪問の許可を校長から得る。
 配役残り、現在は青空キュート―青空球児・好児に弟子入りし青空一門―として司会業で活躍する嶋田隆宏は、ガリガリ受験勉強に励むシンイチ。青野梨魔は、ノーパンエプロンで息子のシンイチに洋菓子を持つて来たかと思ふと、そのまゝ肉奉仕するPTA副会長、早速友子の度肝を抜く。蘭童セルと今泉厚は、妊娠四ヶ月と判るや、ライトに心中を決意する高校生カップル・浜子と悟。二人して白装束に身を固め、いよいよ首を括らうかとした段に、友子が飛び込む。悟と浜子の結婚を成立させるべく、未決拘留中の悟父親を保釈するのに必要な百万円を作るため、浜子は悟の仕切りで美人局する羽目に。然程の無理も感じさせず、矢継ぎ早かつ軽快に走る超展開が堪らない。楠正通は、友子と結婚を約束した体育教師。竹岡由美は、シンイチがミーツするスケバン・お柳かお竜。堺勝朗と久保新二が、家の外で待機する悟に、友子がパトランプを点灯させ飛び込むタイミングを報せる仕掛けが洒落てゐる、美人局のカモ。三千円しか持つてゐない坊主と、往診鞄の中に札束をゴロゴロ持ち歩く医者。贅沢をいふと、同一フレーム内に勢揃ひしたガミさん×堺勝朗×久保チンが大暴れを繰り広げる、ジェット・ストリーム・アタックが観たかつた、メガホンで捌くのが相当大変さうだけど。そして港雄一が、久保チンから毟り取つた百万で娑婆に出て来た、悟の前科十五犯の―その内またひとつふたつ増える―父親・池田亀造。a.k.a.新田栄の北村淳は、友子と亀造を媒酌人に目出度く三々九度の済んだ池田家に、久保チンの手引きで乗り込む刑事、連れの若いのが多分仁科ひろし。香川留美がガミさん周りに見切れてゐたやうな気もしつつ、友情出演組は、暗いか遠いかでその人と識別可能な形では抜かれてはゐない。
 第一弾「夜のOL 舌なぶり」(昭和56/監督・脚本:宗豊/主演:朝霧友香)・第二弾「武蔵野夫人の唄 淫舞」(昭和53/監督:渡辺護/脚本:高橋伴明/主演:北乃魔子)に続くエクセス提供東映ナウポルノ第三弾は、ピンク畑で初めて紫綬褒章を受賞した滝田洋二郎のデビュー作。処女と童貞同士の、友子と体育教師の青姦。なのに友子ではなく、楠正通がチンコから出血した謎が放置されるのをさて措けば、トッ散らかつた物語が超絶手堅く纏まつてゐる以外には、寧ろ纏まり過ぎてゐて、面白みに欠くきらひもなくはない。そんな中でも、亀造が体を張り、倅と倅の嫁と友子を逃がす件。ここぞといふ場面では出し抜けなり木に接いだ竹であらうとなからうと、重量級のエモーションを見事に撃ち抜いてみせる辺りには、初陣にして既に流石の地力に感服した。

 滝田洋二郎に関して、“ピンク畑で初めて紫綬褒章を受賞した”と戯れに筆を滑らせは、したものの。何も御上や世間様に認めて貰ふばかりが、華といふ訳でもあるまい。人知れず、歴史に残る残らないどころかネガさへ現存しない膨大な作品群を、移ろひ変りやがてかぢきに消えてしまふ時代の泡(あぶく)の中にだけ落し、猥雑に戦ひ抜いて、サクッと通り過ぎて行く。さういふ、三番手濡れ場要員の如きある意味潔い姿の方に、より量産型娯楽映画作家らしさを覚えてみたりもするものである。


コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )




 「欲しがる女5人 昂奮」(1990/製作:メディアトップ/配給:新東宝映画/監督:深町章/脚本:周知安/企画:伊能竜/撮影:稲吉雅志/照明:守田芳彦/編集:酒井正次/助監督:瀬々敬久/監督助手:広瀬寛巳/撮影助手:佐久間栄一/照明助手:恵応泉/録音:銀座サウンド/現像:東映化学/出演:橋本杏子・川奈忍・しのざきさとみ・風見怜香・中島小夜子・池島ゆたか・山本竜二・荒木太郎・芳田正浩)。脚本の周知安は、片岡修二の変名。クレジットにはないが、スチールは津田一郎の筈。
 タイトルからイン、俯瞰の並木道に、主人公の自己紹介モノローグ。二部上場商事会社の総務課に勤務する園山タカシ(池島)は、三年前係長昇進と同時に同じ課の妻と結婚。マイホームも買ひ、順風満帆な日々を送る園山の目下満更でもない悩みの種は、部下からの公私に亘る相談であつた。と、ロイホ窓越しの結構なロングからカメラがグーッと寄ると、轟(荒木)が園山に、矢張り総務課の江藤サンへの恋の悩みを打ち明ける。童貞の轟に押しの一手とやらを教授すべく、園山は轟の部屋にホテトル嬢のユウ(風見)を呼ぶ。
 配役残り川奈忍が、そんな訳での江藤倫子。山本竜二は、園山らが勤務する会社の佐伯専務。何だかんだで事は上手く運び、轟と関係を持ちつつ、倫子は実は元々佐伯の愛人であつた。しのざきさとみは、この人は恐らく社外の佐伯愛人―劇中―二号。しのざきさとみの濡れ場に際して佐伯がバイブを持ち出す件、山竜がバイブを口に咥へて責めるのが、ジョイトイとクンニが融合したサイバーパンクの趣で斬新に映つた、何がサイバーパンクだ。閑話休題―与太を吹くにもほどがある―橋本杏子は、倫子の悲運に秋田から園山を訪ね上京する、ホステスの姉。一旦ピリオドが打たれての一年後、芳田正浩は、総務課の新しいヤリ手部下。そして中島小夜子が、芳正が係長に自慢気に語るテレクラ武勇伝中に登場する、二十代半ばの人妻。中島小夜子が芳正と絡んでゐるのを見ると何故か無性に腹が立つ、この正体不明の感情は一体何なのか。これこそ正に、知らんがな(´・ω・`)
 深町章1990年第二作は、残りの四作は瀬々の第一作第二作と佐藤寿保といふ伝説の絶対美少女・中島小夜子にとつて、唯一のオーソドックス・ピンク。尤も、公開当時前月に封切られた「半裸本番 女子大生暴行篇」(監督:佐藤寿保/脚本:夢野史郎)ではエターナルを撃ち抜く鮮烈な輝きを放つた中島小夜子が、案外今回豪華五枚並ぶ綺麗処のワンノブゼンに大人しく畏まつてもしまふのは、物語なり撮影部なり深町章と佐藤寿保の演出の相違云々も兎も角、寧ろ登場順に川奈忍としのざきさとみに、当時女王として君臨する最初の“最後のピンク女優”橋本杏子。何処からでも頭を狙へるビリング―後述する構成上、今作のビリングに然程意味はないが―に名を連ねた、如何せんな分の悪さが否応なく影響してゐるやうに思へる。オッパイで先頭打者に飛び込んで来る、風見怜香にも言及せえよ。
 係長風情がザクザク部下の首を刈れる、件の商事会社のワイルドな社風はさて措き、轟の相談を起点に、新規俳優部の投入と御役御免に連動して、話がつらつら連なつて行く展開は実に秀逸。芳正が的確な読みを開陳する時点でサルにも明らかとはいへ、狙い澄ましたオチもピシャッと決まる。小一時間女の裸を心豊かに楽しませた上で、気がつくと何気に完成してゐる、開巻も回収した起承転結。一見何てことない裸映画に見せて、深町章と片岡修二の両輪が見事に噛み合つた地味ながら、量産型娯楽映画の佳品である。


コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )




 「失恋乱交 ツユだく姉妹どんぶり」(2016/制作:Blue Forest Film/提供:オーピー映画/監督:竹洞哲也/脚本:当方ボーカル/撮影監督:創優和/録音:山口勉/編集:有馬潜/音楽:與語一平/整音:高島良太/助監督:小関裕次郎/監督助手:林有一郎/撮影助手:柳田純一・福島沙織/スチール:阿部真也/仕上げ:東映ラボ・テック/制作進行:植田浩行/協力:嬬恋村フィルムコミッション/出演:友田彩也香・和田光沙・葉山美空・可児正光・橘秀樹・イワヤケンジ)。
 タイトル開巻、後々語られる両親は淡路島に殆ど移住、ロッジ風の一軒家に三姉妹で暮らすサナダ家。朗報と思しきメールが着弾しウキウキで目覚めた次女のユキ(友田)は、占ひに従つた結果出鱈目なコーデの靴で出勤する。奥手で日々些末に一喜一憂するユキに対し、上級者を自負する長女のカツコ(和田)が素頓狂な恋愛指南を垂れ続ける一方、いはゆる腐の三女・タマミ(葉山)は、二人の姉にも姿を見せないレベルで自室に引きこもつてゐた。
 配役残り橘秀樹は、かつて客のカツコを喰つた糞マスター・キタノシュン。同様に回想パート要員の可児正光は、ダニ体質のユキ元カレ・マスカワエイゴ。竹洞哲也二作前のピンク初陣、「大人志願 恥ぢらひの発情」(脚本:小山侑子/主演:若月まりあ)の印象は全く薄い可児正光は今回は今回で固定された芝居を強ひられつつ、この人、強ひていふならばRefined太田始か。そしてイワヤケンジが、ユキ意中の職場同僚・ミノシマミツル。その他カツコの武勇伝中に見切れるのは、小関裕次郎がゐたやうな気がするから多分演出部動員。
 大蔵からの優遇ぶりが窺へる、制作ペース―だけ―は順調な竹洞哲也の、年内にもう一本残す2016年第四作。師匠に反旗を翻すアンチ伊豆映画級の前作ほどではないにせよ、相変らずわざわざ嬬恋にまで出張つておいて、絶好のロケーションを無駄遣ひさへ殆どしない粒の小さな会話劇に終始。友田彩也香と和田光沙の気が利かなくもない丁々発止は通して楽しく見させ、扉越しにLINEを介したユキとタマミの遣り取りは、地味に胸に染み入る。のは、結果論として精々焼け石にかける水。終盤力技か無理からな大展開も控へてはゐるものの、最終的には「だから何?」といつた程度の突き放した感興に止(とど)まる。2009年頃から2013年初頭辺りまで長く戯れた、学芸会じみたキャラクター主体の、といふか体をなした物語が存在せず粗製されたキャラクターくらゐしか見当たらない凡作群よりはまだしもマシとはいへ、如何せんことこの期に及んでなほ何処にも抜ける気配すら感じさせない、既視感ばかりを拗らせる薬籠を狙つたつもりの自家中毒は如何なものか。今作中唯一にして当然最大の切札は、タマミに用意した食事にユキが添へた手書きの顔文字が激越に可愛らしい、真心溢れるメモの数々。一撃必殺、正攻法のエモーションを撃ち抜くチャンスも、決してなくはなかつた筈なのだが。


コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )




 「恋するプリンセス ぷりんぷりんなお尻」(2016/制作:オフィス吉行/提供:オーピー映画/監督:吉行由実/脚本:吉行由実・北京八/撮影:小山田勝治/録音:小林徹哉/音楽:柿崎圭祐/編集:中野貴雄/助監督:江尻大/整音:西山秀明/効果:うみねこ音響/監督助手:村田剛志/撮影助手:染谷有輝/スチール:本田あきら/劇中画:小林まいこ/ポストプロダクション:スノビッシュプロダクツ/仕上げ:東映ラボ・テック/協力:他一社、スマイルカフェアーツ/出演:羽月希・加納綾子・ジョリー伸志・和田光沙・マサトキムラ・白石雅彦・織田歩・鎌田一利・草刈香乃、他・岡元あつこ《友情出演》・ピン希林・吉行由実・老田亮)。出演者中、ピン希林がポスターにはさらだたまこ、変名の意味ないぢやん。再度出演者中、織田歩(AYUMU ODA表記だつたかも)から他若干名までは本篇クレジットのみ、何だかんだな情報量に屈する。
 アジア系民族が公用語は英語を使ふナバリア王国、国王が決めた結婚相手(鎌田一利/見合風写真のみ出演)に絶望した王妃のマルゲリータ(羽月)は入水自殺を決意、波打ち際にて、漂着した一冊のレディースコミック『堕ちてゆく私』を拾ふ。初めて触れるレディコミの甘美な世界に感銘を受けたマルゲリータは、日本へのマンガ留学を国王に直訴、娘に甘い国王が折れる一幕はマンガで処理してタイトル・イン。それにつけても「恋するプリンセス ぷりんぷりんなお尻」、担当者一世一代のピークをも感じさせる、この圧倒的な下らなさと同時の強度よ。ぴんくりんく主催により何と映画を観ずとも投票出来る、公開題が秀逸なピンク映画を決定する「ピンキータイトル賞」は今作で間違ひあるまい。実際、羽月希の尻を然程ですらなくフィーチャーしてはゐない些末如き、東の風に流してしまへ。
 日本名といふか偽名の鈴木マリアで身分を隠し、『堕ちてゆく私』の作者・橘さゆり(吉行)のアシスタントに入つたマルゲリータは仕事ぶりが認められチーフに昇格、ピース出版ラブリーコミックの編集者・八木伸也(ジョリー)が担当につき、一本マンガを描いてみる運びとなる。
 配役残り、事実上専属の吉行組四戦目で安定する加納綾子は、護衛役としてマルゲリータと同居する、ナバリア王国諜報機関「NIA」所属のスパイ・エミリ。俳優部以外にガンエフェクトでも活動するマサトキムラは、ファースト・カットから加納綾子が猛然と飛び込んで来る洋ピンテイストの絡みを介錯する、この人も多分「NIA」所属のアレックス、捌け際無駄にリボルバーを振り回す。白石雅彦はマリアと八木が打ち合はせするバーのマスターで、老田亮が、そこで話題に上るマルゲリータ公務の地雷撤去作業を茶化す、八木とは旧知の戦場カメラマン・西原達也。瞬間的な出番―物理的時間の比較だけでいふと、後述するピン希林よりも全然短い―を駆け抜けて行く高速濡れ場三番手の和田光沙は、かつて八木・西原と三角関係を形成した京子。メイド服よりも割烹着が似合ふピン希林は、身許バレしたマルゲリータを逃がす―マンションに詰めかける報道陣中に、EJDが見切れる―隠れ家に、エミリが用意した家政婦の吉田さん。心を込めたカレーの件は、一撃必殺の泣き処。本職演出部の織田歩は、マルゲリータの功績でマンガが浸透したナバリア王国を取材するBCN局の記者で、吉行由実とは大学の先輩後輩といふ間柄の岡元あつこと、こちらはどういつた繋がりなのかex.煩悩ガールズの草刈香乃は、街頭でマイクを向けられる鈴木マリア新作の読者。
 清水大敬のやうにど頭でクレジット大書こそしない―記念のトークショーは開いた―ものの、荒木太郎とともに監督デビュー二十周年を迎へた吉行由実の2016年第二作。一歩間違ふか気を許せば、今でもヒロインが白馬に乗つた王子様の登場を待つてゐたりなんかする類の物語を撮りかねない吉行由実の、いよいよガチお姫様が主人公の映画と来た日には、これはもしかすると、ノーマーク気味だが地味に2016年最注目の一作ではなからうかと前のめりに小屋の敷居を跨いだものである。
 プリンセスの豪奢な生活の表現なり、気持ち片足突つ込みかけられなくもない、一国の王位継承者ともなるとVIP中のVIPを巡る国際サスペンスを繰り広げる袖などもとよりないことなど、この期に及ばずともいふても仕方がない。とはいへ、羽月希の確かにぷりんぷりんな裸をお腹一杯に見せるでもないまゝに、小粒な展開を堂々巡り漫然と尺を持て余したきらひは否み難く、重ねて、ただでさへ樹カズも岡田智弘も不在の脆弱な男優部だといふのに、ダーク系ライダーにでも変身しさうな大体今時のイケメンながら、ワイルドな王子様たる老田亮の、表情から欠落したレス・ザン・目力が致命傷。お姫様と王子様が、見詰め合ふショットが成立し得ないでは、満を持した吉行由実の一大直球勝負も、棒球をティー感覚でスタンドに運ばれて終りといふもの。あれだけ繰り返し繰り返し執拗にインサートしておいて、マルゲリータが『堕ちてゆく私』を読み耽り寝落ちた夜の、夢か現かなキスの主は結局ある意味綺麗に等閑視。エミリが八木を拉致る大技まで繰り出したにも関らず、スカッとスルーされる背後の黒幕。岡元あつこの公式ブログによると存在するらしい、OPP+版との兼合ひ―だとしても、何度でも繰り返すが本体ピンクが割を喰ふのは本末転倒―があるのかも知れないが、何気にでもなく粗雑な作劇も目につく。象徴的なのは、ナバリアに帰るマルゲリータと、西原の別れのシークエンス。長々と抜く西原が構へたカメラのファインダーの中のマルゲリータが、微笑みかけてゐるのか、それとも今にも泣きだしさうなのか。恐らくそれを狙つた絶妙にどつちつかずな羽月希の表情に、周年記念の勝負作を戦ひきれなかつた、撃ち抜き損なつた不覚悟を看て取つたものである。何れにせよ、あくまで個人的な希望としては、二十周年の目出度さと昨今の御時世に対するカウンター込み込みで、吉行由実には羽月希に世界の果てまで照らさん勢ひで満面の笑顔を輝かさせて欲しかつた。


コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )




 「ねだる人妻たち ひわいな悶え」(1993『本番 恥知らずな人妻たち』の2000年旧作改題版/制作:アットホームプロダクション/提供:Xces Film/監督:林功/脚本:林功/プロデューサー:沖本健一/キャスティング・プロデューサー:今井英明/撮影:伊東英男/照明:井和手健/音楽:ミッシェル・P/編集:フィルムクラフト/助監督:高田宝重/監督助手:広瀬寛巳/色彩計測:余郷勇治/照明助手:加藤美明/メイク:樚本豊子/制作主任:蛭田唯詩/スチール:会田定広/現像:東映化学/録音:銀座サウンド/効果:東京スクリーンサービス/制作進行:大楽智久/出演:姫ノ木杏奈・南奈美・三崎セリナ・牧村耕次・木下雅之・武藤樹一郎)。広瀬寛巳と余郷勇治のクレジットが、背景に埋もれ本格的に読めねえ(笑
 今作がピンク映画初陣の姫ノ木杏奈と、脱けの可能性も大いに残しつつ、jmdb準拠ではラスト二作目の武藤樹一郎―最終戦は小林悟の「強制わいせつ姉妹」(1994/主演:工藤ひとみ)―の絡みで開巻。前髪を下した武藤樹一郎に否応なく迸る違和感が、結果論的には最大の琴線の振り幅。三分通過して挿入、「いゝ、いゝ」と喜悦する姫ノ木杏奈のショットにタイトル・イン。「私、何かモヤモヤして街をブラついてたんです」、「そしたらほら、ナンパつていふんですか」。外出した人妻の本山杏子(姫ノ木)は、河合五郎(武藤)のキャッチに捕獲。「これもインポの主人を持つた因果でせうか」なる、実も蓋もないモノローグが涙を誘ふ、泣かんけど。杏子がホイホイついて行つた雑居ビルの一室では、晴れやかに人妻には見えないエミコとサエ(特定不能の南奈美と三崎セリナ)が既に待機してゐた。すると河合が杏子に投げた一言が、「この人達今日から君のお友達」、ザクザクした世界観がグルッと一周して清々しい。とか何とかだか何が何だか、兎も角詳細が全然要領を得ないまゝシークエンスは勝手に進行し、杏子は河合が運営するデートクラブに参加。早速“特訓”とやらで、河合は三人を各々抱く。
 配役残り牧村耕次はサエの常連客にして、実は杏子の旦那、げに狭き世間。木下雅之はエミコの常連客だが、エミコの貪欲に音を上げ杏子への鞍替へを希望する。
 林功純正ピンク第五作は、四年後にVシネを一本残すのみの大体最終作。二作前の「女医聖名子 私をベッドに連れてつて」(1992/主演:藤本聖名子)ではお話はスッカスカにせよ、それでも窺へた撮影の丹念ささへすつかり見る影もなく、画面のルックはエクセス作標準的に白々しい。物語的にも何やかや持て余す人妻が人妻専科のデートクラブに足を踏み入れるまではいゝとして、件の業者が嬢を劇中用語ママで“恋人”と称し、最終的には顧客に結婚まで斡旋するのを辞さないとなると、ほんなら何か?河合は嬢だか“恋人”を今の配偶者とは離婚させる気なのか!?といつた終ぞ顧みられかけもしない巨大かつ、根本的な疑問点。杏子の旦那は不能ぢやなかつたのかよ、といふ脇の甘さがある意味微笑ましいツッコミ処と、スッカスカどころかボッロボロ。撮影部と演出部が共倒れたとしても、生命線たる女優部が残つてゐるぢやないか。ところがこゝも、特定すら難い二番手三番手が何処から連れて来たのか感を爆裂させる脆弱ぶりで、一縷の望みも絶たれ完全に万事休す。序盤と締めの都合二回繰り広げられる、河合が杏子とエミコとサエを一人づつ相手にする一幕。あぶれた二人も遊ばせてはおかず、百合の花を咲かせる周到さなり執拗さには裸映画に込めた鉄の信念が透けて見えなくもないにせよ、正直時間くらゐしか潰せない寂しい一作である。


コメント ( 2 ) | Trackback ( 0 )




 「好色 花でんしや」(昭和56/製作:ピンクリボン賞映画製作実行委員会/製作協力:現代映像企画/配給:株式会社にっかつ/監督:渡辺護/脚本:藤本義一・小水一男・阿部桂一/原作:藤本義一『好色つれづれ』より/企画:奥村幸士・岩淵輝義/制作:斎藤雅則/撮影:鈴木史郎/照明:近藤兼太郎/編集:田中修/助監督:広木隆一/監督助手:阿部嘉之・佐々木精司/撮影助手:遠藤政史・下元哲/照明助手:森久保雪一・佐久間守正/製作進行:松崎信/記録:立花あけみ/結髪:東律子/宣伝:仁木秀雄・井戸幸一/スチール:田中欣一/音楽:とべないアヒル/効果:原田千昭/録音:ニューメグロスタジオ/現像:東洋現像所/衣裳:東京衣裳・富士衣裳/撮影協力:阪堺電鉄株式会社、キネマ・ハウス《大阪》、ホテル・ハイプレー《南紀白浜》、ホテル・浦島《南紀勝浦》/出演:鹿沼えり・麻吹淳子・青野梨魔・露乃五郎・橋本智子・立花ジャンプ・堺勝朗・チャンバラトリオ 南方英二・山根伸介・伊吹太郎・結城哲也)。出演者中、橋本智子から堺勝朗までは本篇クレジットのみ。配給に関しては事実上“提供:Xces Film”。
 海沿ひの駅、鹿沼えりのスナップを手に小男が「丸子・・・・」としやがみ込んで、ドーンとした通天閣のローアングルにタイトル・イン。倅の兵太郎(伊吹)が借金を残し蒸発、卒倒した兵助(南方)が兵太郎の嫁・丸子(鹿沼)とグダグダ途方に暮れてゐると、宝島金融の北川(山根)と佐山(結城)がドヤドヤ病室に乗り込んで来る。そのまゝ宝島金融社長・浦島(霧乃)の下に引つ立てられた丸子と兵助は、どさくさしたその場の勢ひで温泉地を白黒ショーでドサ回る羽目に。
 出演者中橋本智子は、北川・佐山に踏み込まれた窮地を意に介するでもなく、病状は大したことない兵太郎をザクザク病室から追ひ出す看護婦。青野梨魔は、兼秘書的な何かかも知れない浦島の情婦・ユリ。丸子と兵助の旅が始まるや自然か勝手に飛び込んで来てた麻吹淳子は、丸子と兵助に、北川&佐山を加へた五人で一座を組む格好のもう一人・みよる。丸子と兵助の前座に、みよる・北川・佐山の三人でコント仕立ての白黒ショー。佐山にビールを振る舞ふ客が、結城哲也との遣り取りを聞くにこの人も芸人と思しき立花ジャンプか。
 有志で金を出し合つて渡辺護に映画を撮らせるといふと、あるいは撮らせたのかと思ひ、十二年ぶりのピンク復帰年を跨いで第二作「義母の秘密 息子愛撫」(2002/脚本:六田耕=太田耕耘キ・樫原辰郎・渡辺護/主演:相沢ひろみ)なり、「色道四十八手 たからぶね」(2014/企画と原案/監督と脚本は井川耕一郎/主演:愛田奈々)に先行する類の話かと連想しかけつつ、伝説のお色気深夜番組「11PM」と連動とのことだけはあり、流石にもう少し大きな企画の渡辺護昭和56年第八作。この年渡辺護は買取系ロマポと新東宝に、今は亡きミリオンまで股にかけ全十五作。常々死んだ子の齢を数へるが如き繰言を蒸し返して恐縮ではあるが、量産型娯楽映画が実際に量産されてゐた、時代の麗しさよ。
 昔はよかつただなどとクズにでもいへるにつき昔の映画と正対すると、ヒロインと義父が白黒ショーでドサ回りといふと結構大概な超展開ながら、全く意味不明な―しかもアップでの―台詞が散見する点をみるに、当時のチャンバラのネタもちらほら織り込まれてゐるのか、一幕一幕妙に尺を喰ふ割に、物語的には掻い摘まうと掻い摘むまいとこの程度。何処ででも煙草が吸へた昭和の猥雑なフリーダムに対する郷愁をさて措けば、チャンバラwith鹿沼えり・麻吹淳子が景勝地をウロウロするばかりの漫然とした御当地映画といつた印象から、大きく羽ばたく飛翔力を有した映画では別にない。正直なところ一旦寝落ちてしまひ、仕方なく三本立てを二周して再度今度はまんじりともせず観たものなのだが、となると最後に残る大問題が、あの顔がフレーム内にあつて気づかない筈がないのに、高橋役とされる堺勝朗が何処に出て来たのか本当に完全に判らない。

 初見の鹿沼えりの溌剌とした容姿に既視感を覚えたのは、さうか、織田真子が平成の鹿沼えりだ。


コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )




 「半裸本番 女子大生暴行篇」(1990/製作:メディアトップ/配給:新東宝映画/監督:佐藤寿保/脚本:夢野史郎/撮影:下元哲/照明:加藤博美/音楽:サイキックローズ/編集:酒井正次/助監督:瀬々敬久/監督助手:広瀬博巳・佐野正光/撮影助手:佐久間栄一/照明助手:松本キヨシ/協力:橋爪達成/録音:銀座サウンド/現像:東映化学/出演:中島小夜子・新藤愛子・伊藤清美・香園寺忍・荒木太郎・中根徹)。
 「連続OLレイプ餌食」のVHS題開巻、レトロなパソコン通信の画面に、“ROSE BUDからの暴行招待状”と称して、OL・星川十紀子(伊藤)の勤務先住所等が記載された履歴ファイルが着弾する。シャワーを浴びる十紀子が、マスクを着けた黒尽くめの暴漢に強姦される。帰還後パソコン画面を覗き込み、マスクを外した中根徹は我に帰る。OA機器セールスマンの水野真(中根)が、交際する女子大生・一子(中島)の部屋でセックスする。優しくしてとの一子の要求にその場は従ひながらも、水野はまともなセックスなんて詰まんねえんだよなと、ローズバッドからの新たなるデータを待ち侘びる。
 配役残り新藤愛子は、赤の他人の女子大生と女子高生が二人暮らしする不自然さはさて措き、一子のルームメイト・ハナワ望。何時でもカメラを持ち歩き、目下の愛機は高校の写真部備品のキヤノンRC-250(昭和63年発売)。水野は自らに近づいて来る望を利用しての、ローズバッド捜しを思ひたつ。荒木太郎はその過程で浮上する、望が面識はある程度の今でいふギーク・ササハラケイジ。そして香園寺忍が、念願叶つて水野に劇中二人目のデータが送られて来る、この人もOLの宮本悠子。水野と一子の長電話に、電話ボックスの外で無防備にキレる丸顔のオッサンは、佐藤寿保でも瀬々でもなく不明。排斥された格好の水野が踵を返して男にパンフレットと名刺を渡す件は、デフォルトの中根徹からそこはかとなく香る殺気に、てつきり全殺しにでもするのかと思つた。
 “メカと心霊の不可解な結合!”だの、“恐るべきパソコン犯罪!”だのと、VHSジャケには例によつて箍の外れた惹句が狂ひ咲く佐藤寿保1990年第一作。となるとシテンノーには距離の遠い当サイトが踏んで来た道としては、“BRAIN SEXが股間を爆裂する”ジャンピン・ジャック・パイレーツ殺人実況「ロリータ恥辱」(昭和63/主演:藤沢まりの)や、“夢野史郎のサイキックなシナリオを俊英・佐藤寿保監督がシュールな演出で描”きはしたが“サスペンス調の傑作”ではない「レズビアンレイプ ‐甘い蜜汁‐」(1991/主演:高樹麗)なり、清々しいほどの電波映画「《生》盗聴リポート ‐痴話‐」(1993/主演:伊藤清美)といつた、佐藤寿保が好き勝手をし倒した死屍累々の荒野を想起しかけた、ところが。同じものを手に入れたのか、そもそも何故Q-PICが水野の手許にあるのかが要領を得ない、宮本悠子暴行現場写真が―手作り感香る―雑誌に掲載され焦燥する水野が、苛立ち紛れに自身の凶行をどさくさ暴露してのける無防備な作劇には万歳しつつ、確かに伏線は明確に匂はされてゐなくもないとはいへ、それにしても予想外の切り口からローズバッドの正体が明かされるクライマックスには正方向に度肝を抜かれた。兎にも角にも、サイキックな大風呂敷をも魅力の下駄で無理を感じさせず定着せしめ得る、中島小夜子の絶対美少女ぶりが圧倒的。恥づかしながら初見だつたのだが、本当に驚いた。もしかすると、一歩間違へば当時的には早過ぎたのかも知れないアイドル風の容姿も勿論素晴らしいが、セーラー服がこんなに似合ふ人を見たことがないとさへ思へる、少女と大人の女との境界線上で妖しく揺れ動く、尻から太股にかけてのラインが超絶、本当に心の底から堪らない。俺は何を堂々と、鼻の下を伸ばしてみせてゐるのだ。今の目にも一欠片たりとて古びない、ハードかつ煽情的な十紀子と悠子のレイプ・シークエンス。序盤をじつくり攻める中島小夜子と中根徹の普通の絡みに、生理が来た一子が見る悪夢と、正直意味はよく判らないが比類なく鮮烈なオーラスの、一撃必殺を都合二度撃ち抜く中島小夜子のいはゆる野外露出ショット。サイキック・サスペンスが今回は見事に完成したのに加へ、裸映画的にも申し分ないどころでは済まない出来栄え。尤もさうなると、三番手四番手のものと比べ遜色ある訳では全くないものの、ササハラケイジの扱ひにも詰めの甘さを残す、新藤愛子の濡れ場は展開的に蛇足と思へなくもない辺りがピンク映画の、表裏一体の作る側からは難しさで、安穏と見る側にとつては奥深さ。

 改めて、公開題―凄い映画あんだから新版公開すればいいのに、新東宝―は「半裸本番 女子大生暴行篇」。“半裸本番”なる中途半端かそれがどうしたな用語は兎も角、勿論といふか何といふか、女子大生暴行以外の他篇は別に存在しない。


コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )