真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「性愛スキャンダル コケシと花嫁」(2016/制作:セメントマッチ/提供:オーピー映画/監督:池島ゆたか/脚本:五代暁子/撮影監督:清水正二/撮影:海津真也/録音:大塚学/編集:山内大輔/音楽:大場一魅/効果・整音:AKASAKA音効/助監督:北川帯寛/撮影助手:榮穰/照明助手:広瀬寛巳/編集助手:RIM/スチール:津田一郎・だいさく/現場応援:佐藤吏・野間清史・松井理子/仕上げ:東映ラボ・テック《株》/協力:ステージ・ドアー、栗原啓、飯塚ヨチノリ、入深かごめ、河合亜由子/出演:めぐり・川越ゆい・沢村麻耶・那波隆史・竹本泰志・松井理子・山ノ手ぐり子・野間清史・太三・和田光沙)。出演者中、松井理子と山ノ手ぐり子は本篇クレジットのみ。それと佐藤吏の―クレジットに名前の載る―ピンク参加は、後藤大輔大蔵上陸作「となりの人妻 熟れた匂ひ」(2011/主演:なかみつせいじ・冨田じゅん)以来。
 ここ二作使用したセメントロゴ封印、こけしがフェードアウトしてタイトル・イン。マンション外景を一拍挿んで、沢村麻耶―と那波隆史―の重量級の濡れ場で本篇開戦。三番手が開巻に飛び込んで来る奇襲が、鮮やかに決まる。事後、住んでる部屋はさうは見えないが自動車修理工の本間弘(那波)は、三年間月二回懇意にしてゐたデリ嬢・マオ(沢村)に別れを告げる。見合パーティーに参加した本間は上条ゆりえ(めぐり)と出会ひ、結婚を前提に交際。ゆりえが花嫁修業の料理学校に通ふ費用の二百万も、本間が出してゐた。ある日の公園飯後、熟年離婚トークに花を咲かせる主婦二人(松井理子と山ノ手ぐり子=五代暁子)に眉をひそめた本間は、ジョガーに足蹴にされ泥塗れのこけしを拾ふ。本間がこけしを洗ひ綺麗にしてやると、「有難う」と何処からか声が聞こえた気がした。その夜、本間宅に前作「淫欲開花! 魅惑のラブハウス」主演は兎も角、2014年第二作「官能エロ実話 ハメられた人妻」(主演:愛田奈々)三番手の初陣は完全に忘れてゐた川越ゆいが現れる。民俗学的には出典の見当たらない俗説らしいが、兎も角“子消し”と書いて間引いた水子の供養に供したこけしには、数万体に一体人間の魂が宿るものがあり、川越ゆいは昼間本間に拾ひ清められたこけしで、どの神様かよく判らん神の命を受け人間の姿で恩返しにやつて来たとのこと。ひとまづ、結婚を控へた本間は“子消し”では縁起が悪いゆゑ、川越ゆいをコノミと名づける。
 配役残り竹本泰志は、実は本間をカモる気満々の、ゆりえが略奪する腹の本命不倫相手・棚橋順一。二人して本間を嘲笑する、遣り取りがまあ悪い悪い。和田光沙は、画も抜かれるニュースキャスター。そして野間清史と太三がマッドでバッドなエンドの呼び水となる、杉並署の刑事・佐々木と岡部。令状も持たずに家探しし、岡部がお目当ての物証を発見するや佐々木が「やつたな」とグッジョブするガバガバな造形は大いに考へもの。その他こけし周りを都合三名取り巻くのは、何れも足元か手元しか基本映らない以上当然全然特定不能。折角なので、佐藤吏を久々に城定秀夫と見紛ひたかつた、何が折角なのか。
 以前とは本数を絞りながらも、ローテーションに復帰した池島ゆたかの2016年第二作。巨乳部を三枚揃へ、裸映画的にはガンッガン攻め込みつつ、コノミが実も蓋もない名探偵ぶりを邪気もなく披露するコケシの恩返しが、一通り大人しく流れ去つて行くものかと、思ひきや。ノー・モーションで振り抜かれる正しく衝撃の結末には、確かに驚いた。那波隆史の稚拙な口跡を狂気に直結させるアイデアはそれなりに秀逸にせよ、要は男優部が三枚とも脆弱な一幕は如何せん成立に厳しく、何より後味の悪さはこの上ない。挙句また次の誰かがこけしを拾ふオーラスはオーラスで、結局因果をどちらに振りたいのだかキレを欠き、オッパイの印象だけ脳裏に刻み込んで幸福な帰途に就く筈が、別の意味でモヤモヤして小屋を後にする羽目になる。それも狙ひの内であつたのかも知れないが、何とも釈然としない一作ではある。
 マッドでバッドなエンド< ゆりえと棚橋の事故死は、本間がブレーキに細工、佐々木と岡部に踏み込まれた本間は壊れる


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 「熟女藤本聖名子 悶絶色狂ひ」(1992『女医聖名子 私をベッドに連れてつて』の2000年旧作改題版/製作:CARNIVAL カーニバル/提供:Xces Film/監督:林功/脚本:林功/プロデューサー:熊谷博史/キャスティング・プロデューサー:鳥海雅明/撮影:伊東英男/照明:柴崎江樹/録音:銀座サウンド/現像:東映化学/美術:今井英明/編集:金子尚樹/メイク:酒井智恵子/音楽:姫田伸也/スチール:池之平昌信/助監督:高田宝重/制作進行:沖本健一/主演:藤本聖名子/出演:水野ありさ・中西弓子・牧村耕治・木下雅之・野沢明弘・玉井謙介)。出演者中牧村耕治と野沢明弘が、ポスターには牧村耕次と野沢明宏。
 室内を軽く舐めて、ベッドの上では藤本聖名子が木下雅之に抱かれてゐる。これで伝はり易いのかにくいのか我ながらよく判らない物言ひで恐縮ではあるが、男女の結合部とカメラの間に花瓶等を置くのにちやうどいい中間距離を定位置に、適宜寄るのが―主演女優の―絡みに際して全篇を貫く顕著なカメラワーク。良質の撮影と端正な演出とに支へられた、ねつとりと綺麗な絡みは女の喘ぎ声と男の呻き声のほか一言の台詞もなく五分突破、ところがいざ挿入してからは案外早く、女医の聖子(藤本)は同業者の交際相手・沢村(木下)に不平を垂れる。聖子の勤務先は、大先輩の戸田(牧村)が開業する歯科医。大学で教鞭も執る戸田は週三日医院を空けざるを得ず、その間は聖子が診察してゐた。その間はといふか、半分以上ぢやないか。ある日忘れ物を取りに戻つた聖子は、閉院後の院内にて受付兼歯科助手(ビリング推定で水野ありさ)と出入りの製薬会社セールスマン・湯浅(野沢)が致す現場を目撃。未だ絶頂を知らない聖子は、ノジーに抱かれ達する受付嬢の姿に、元々募らせる不満を一層拗らせる。
 配役残りjmdbにも記載がない―最後に記載されてゐるのは昭和60年の加藤文彦ロマポ―ゆゑ、もしかすると今作がラスト・アクトとなるのかも知れない玉井謙介は、大して悪くもないのに病院に入り浸る入れ歯爺。もう三名見切れる患者要員には手も足も出ないが、その中に一瞥といふか一撃でその人と知れる高田宝重はゐない。不完全消去法で中西弓子が、膳を据ゑる気満々で聖子が戸田に連れられた、クラブ「アデン」のママ。結構な美人であるのに脱ぐ気配がなかなかどころかまるで窺へず、時機を失した投入が展開を散らかす危惧を徐々に膨らませてゐたところ、結局三番手を温存もしくは封印したまゝ済ますそれはそれとしての賢慮には、グルッと一周して感服した。出すと決まつてゐる、あるいは普通出るものを、あへて出さない勇気。
 ロマポ終焉後は二作早志宏二の変名も使用してゐた、林功の名義を戻した1992年第一作にして、純正ピンク第三作。恋人の拙いセックスに飽き足らない女が、年長者の熟達した性戯にうつゝを抜かす。話としては如何にも量産型裸映画らしいお話とはいへ、丁寧な画作りだけで一時間をそれなりにサクサク見させるのが逆に凄いともいへるのか、“うつゝを抜かす”と掻い摘んだそこから微動だにしないスッカスカの物語には寧ろかある意味、裸映画に裸以外のものを求める色気を許さない強い意志が感じられなくもない。沢村の下手は下手なりの努力ないしは、聖子が妻子ある戸田と関係を持つことに対してのアデンのママの忠言。展開の舵を切る契機なりタイミングが必ずしもない訳ではなかつたにも関らず、聖子はといふと戸田との情交に喜悦するに一貫して終始。締めの濡れ場で振り逃げるまで、一直線に駆け抜けるラストは清々しいといへば清々しいものの、となると根本的な問題を残すのが、聖子の対沢村と戸田とで、濡れ場のトーンが特にどころか全然変らない点。戸田と沢村の上手下手が観客にも判る形で描かれてゐないではそもそも聖子が来す中毒症状が成立しないのだが、ホケーッと藤本聖名子の痴態を眺めてゐる分には、別に困りはしない些細な難癖であつたりもする。それと間違ひなくいへるのは、玉井謙介を起点に投げる、高齢化社会もしくは老人医療に関して口先で転がす程度の時事意識は、枝葉が繁る幹が存在しもしないのに確実に要らん。

 咥へて、もとい加へて。エクセスの―特に―新題にツッコミを入れるのも大概大人げないのは重々承知の上で、それにしても劇中二十五歳のヒロイン―因みに藤本聖名子は公称昭和45生―を捕まへて、“熟女”と称する熟女の低年齢化。あるいは、筋金入りの幼児性愛視点からだと、二十五歳なんてとうに熟女の領域に突入してゐるとかいふのか。尤も、その昔のAV畑では逆に、十分に成熟してゐる女でも、“美少女”一点張りの風潮があつたやうな気もする。


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 「巨乳水着未亡人 悩殺熟女の秘密の痴態」(2016/制作:《有》大敬オフィス/提供:オーピー映画/監督:清水大敬/脚本・音楽:清水大敬/脚本協力:中村勝則/撮影:井上明夫/照明:ジョニー行方/録音:小林研也/助監督:御殿場太郎/アクションコーディネーター:永井裕久/ポスター写真・現場スチール:宮田将/編集:高円寺スタジオ/仕上げ:東映ラボ・テック/撮影助手:宮原かおり/照明助手:J・下石原/監督助手:ジョナサン萩山・松木祐輔サンタマリア・安藤健太郎/車輌:花椿桜子/出演:一条綺美香・京野美麗・あやなれい・円城ひとみ《特別出演》・倖田李梨・青山真希・なかみつせいじ・森羅万象・山科薫・野村貴浩・清水大敬・田山みきお・中野剣友会・生方哲・鎌田金太郎・東京JOE・土門丈・星野周平)。ビリング頭二人に、ポスターでは新人特記。出演者中、中野剣友会以降は本篇クレジットのみ。中野剣友会成員計六名の固有名詞と、クレジット後半に完敗する。
 プールサイドに水着の一条綺美香・京野美麗・あやなれい・倖田李梨・青山真希が大集結、てれんこてれんこ軽く体を動かしてみせて、揺れる水面にタイトル・イン。一仕事終へた未亡人家政婦の三田キミカ(一条)が給料を貰ひに市原家政婦紹介所―但し画面に映る表札は家政婦協会新宿支部―を訪ねると、所長の市原ひとみ(円城)は何故か水着で盛り上がつてゐた。目を白黒させるキミカに、ひとみは水着着用で給料は通常の五倍とかいふ、聞くから怪しげな現場を紹介する。大丈夫なのか、この業者。キミカが新しい仕事を亡夫・武男(清水)の遺影に報告してゐると、恐らく武男が遺した借金の集金に、鮫島金融の若旦那・鮫島京介(野村)が現れる。キミカの新しい仕事先の主が大阪から来たと聞くや、京介は静かに顔色を変へる。
 配役残り山科薫と京野美麗が、キミカが入る屋内プールつきの豪邸のホスト・中村誠と、内縁の妻・亜衣。デフォルトの持ちキャラ通りほぼゼムセルフの倖田李梨と青山真希は、先輩水着嬢・リリーとマキ。要は中村邸(仮)はプールのある売春宿といふ寸法なのだが、この二人は絡みレス。といふか、実は三本柱も客とは絡まない。そしてなかみつせいじが、豪邸の真の所有者・大田原衛、きれいな悪党。元々中村ら四人は大田原邸の清掃員で、中村が大田原を刃傷沙汰から救つたのを契機に、一年間借り受けたものだつた。あやなれいは京介が打つたネット広告を頼りに、間借人風に三田家の敷居を跨ぐ、成田で身包み剥がれたとのルイ、当然キミカに連れられ中村邸(仮)に加はる。これで本職俳優部の田山みきおは、出勤途中のルイとぶつかり、シメられる歩きスマホ男。如何様な役柄でも固定してのける重量感が圧巻な森羅万象は、京介父兼、在阪の鮫島金融首領・権三。中野剣友会が、鮫島金融戦闘員の皆さん。V.S.ルイ・リリーでちよつとしたか藪蛇な見せ場の大乱闘を繰り広げ、手を大きく振る程度の相手のアクションに合はせ、前転して投げられる等々の大立回りを披露する。生方哲以降はプール売春顧客要員にしては、実際劇中に見切れるのはの三人まで、イコール鎌田一利の鎌田金太郎しか確認出来なんだ。
 ピンク映画史上初めていはゆる“例のプール”で撮影した、ど頭にクレジット大書される清水大敬監督20周年記念作品。因みにチラシでは監督20周年と並行してOP映画20本記念作品も謳はれ、それでは清水大敬の外征はといふと、昔日のカオスな破壊力を一時的に取り戻したデジエク第一弾「人妻禁猟区 屈辱的な月曜日」(2013/主演:北条麻妃)と、第二弾「女教師と教へ子 ‐罪名、婦女暴行なり‐」(同/主演:香西咲)の二本。いくらAVとの連動も視野に入れてゐたとはいへ、新時代に突入するデジタル戦の大事な先発に、デストロイ・モードの清水大敬を連れて来たエクセスつたら、改めて何てお茶目さん。
 閑話休題、2012年第一作の通算第十五作「巨乳理髪店 乱れ揉みくちや」(主演:中居ちはる)で遂に開眼した王道娯楽映画路線の中、近作が案外ドラマの進行に重きを置く傾向が見られなくもなかつた反面、今作の特徴はある意味裸映画の原点に立ち返つたともいへるのか、小屋でマスをかけといはんばかりの即物的な実用性に徹し抜いた、濡れ場濡れ場また濡れ場の圧倒的な質量。映画的な色気には一瞥だに呉れず、ひたすらに女の裸を、エロスではなくしてあくまでエロを凝縮して観客の金玉に叩き込まうとする真漢の姿勢ないしは至誠は、真綿色したシクラメンよりも清しい。となると当然のことながら、棚牡丹展開もものともしない物語は最小限にも満たないのではあるまいかと思はれる残り尺をタイム・アタック感覚で駆け抜け、力技で捻じ込む大団円は、スクリーンの中の清水大敬その人を思はせる豪快さ。円城ひとみを除いて、女優部がズラッと水着で勢揃ひするポスター背景に堂々と採用してゐるにも関らず、使用料の問題かそもそも水に入りもしない、折角のピンク初“例のプール”のまるで活用しなさぶり。大阪から来たといふ一点から、京介が中村の尻尾を掴む大概な超飛躍。一条綺美香に「オシッコ」といはせたいだけの、オーラスまで連打する割に全く意味もなければ、ピクリとも機能しやしない木に竹すら接ぎ損なふ無駄な小ネタ。減点法的なツッコミ処には事欠かないものの、然様は些末とこの際さて措いてしまへ。一体何十年失へば気が済むのか万事がフン詰まつたクソ極まりない昨今だからこそ、一欠片の曇りなく何処までもポジティブな思想に裏打ちされた、一見アナクロの極致に見えかねない清水大敬の人生応援歌映画が、グルッと一周したアクチュアリティを持つに至るのではなからうか。清水大敬にはたとへばジョン・レノンにも似た、馬鹿は馬鹿でも百パー本気の、馬鹿にならない馬鹿さ加減を感じるものである。そんな清水大敬は、今回俳優部としても大活躍。仏前にてキミカが京介と事に及びさうになるや、愕然とする表情に遺影が変るのは、殆ど唯一クリーンヒットするギャグかつ、画期的に愉快な濡れ場の導入。三角頭巾に白装束の伝統的なジャパニーズ幽霊かと思へば無闇に大きな十字架もぶら提げ、最終的には天使の羽根を生やし―だから三角頭巾の―頭上には輪つかまで戴く武男の造形は、無邪気に盛り過ぎたポップ・センスの過積載とチャームポイントのひとつに数へ得よう。武男が中村の肉体を借り夫婦生活を再開する件に際しては、デジタルの果実をケロッと享受してのけてゐるのも麗しい。


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 「痴漢電車 濡れるまで待てない」(1998/製作・配給:大蔵映画/監督:渡邊元嗣/脚本:波路遥/撮影:下元哲/照明:伊和手健/編集:酒井正次/助監督:高田宝重/監督助手:片山圭太/撮影助手:小山田勝治/照明助手:小田求/スチール:佐藤初太郎/録音:シネキャビン/現像:東映化学/出演:しのざきさとみ・西藤尚・熊谷孝文・久須美欽一・小西綾花)。
 特に意欲も感じさせない住宅街遠景を噛ませた上で、塚原雅哉・千晶の表札。千晶(西藤)がシャワーを浴び、リストラされた雅哉(熊谷)は求人誌とにらめつこ。風呂上がりの嫁に欲情し、飛びつくも出勤する千晶にケロッとかはされた雅哉が、クローゼットに激突してタイトル・イン。額に間抜けに絆創膏を貼つた雅哉は、まんまと面接に撃沈。雅哉が求人誌を放つた川に、花飾りの添へられた灯籠が流れて来る。流れて来るや辺りは日が暮れたが如く俄かに暗くなり、雅哉が灯籠を川の流れに戻すと、日もまた元に戻つた。そして漸く電車、かと思つたら。家計をイメクラ「ドリーム☆ルームス」で働き支へる千晶と、風俗遊びを経費で落とす常連客・藤崎宏(久須美)の電車痴漢プレイ。一方、雅哉が揺られる本物の電車。雅哉は当時と変らないセーラー服姿の、“故郷の初恋の人”落合真樹(小西)と再会、吸ひ寄せられるやうに軽く絡む。
 配役残りしのざきさとみは、転居の理由が別段見当たらないが何と塚原家の隣に越して来た、藤崎が夜な夜なの直線的な夫婦生活の求めに往生する妻・香織。乗客要員の中に、高田宝重は確認出来ず。
 DMMの新機能に薦められるまゝに、洒落てるのかぞんざいなのかよく判らないタイトルに惹かれて見てみた渡邊元嗣1998年第三作。前年に初上陸を果たしての、大蔵三戦目に当たる。ついでに西藤尚のみに注目すると1998年といふのはルーキーイヤーながら、実はその以前に田中真琴としての活動時期があつたりもする。
 話を戻して、勧められては、みたものの。デビュー当初の第一次と、2006年に火蓋を切つて以来、今なほワン・アンド・オンリーに快走する第二次黄金期。要はその間の大体二十年を、渡邊元嗣が長く概ねマッタリしてゐたイメージの枠内から時には出て呉れて全然構はないのに、出かけて出損なふ漫然とした仕上がり。最初のアップでは左半分をフレーム外に隠した―直前のロングでは、ギッリギリ見切れなくもない―姉妹のスナップを改めて抜き、完全に油断してゐただけなのかも知れないが、全く予想外の世間の狭さが明らかとなつた瞬間。ナベが猛然とアクセルを踏み込んで来る気配は、確かになくはなかつた。とはいへ、あるいはそもそも。吉村すももに劣るとも勝らず、口元から下がぎこちない主演―の筈の―女優のエクセスライクに関しては、いふてもせんないことと一旦さて措くにせよ。土台が想ひ人に姉を抱かせて成仏する妹の気持ちが、光の速さでも何年かゝるか見当もつかないほど理解に遠い。未練を残して死んだ女が兄貴に抱かれてゐたとなると、多分俺なら猛烈に地団駄を踏む。といふか、姉とか兄といふ問題ですらないな。雅哉にとつて千晶の風俗勤めはよもやか何時の間にか既知の事柄で、挙句に成仏したんぢやなかつたのかよ!なキュートでポップな狙ひが、グダッた右往左往にしか帰結しないラスト。そこかしこがボロッボロで、凡そ物語の体を成してゐない。結局最も心が動いたのは、西藤尚でさへなく、まさかのしのざきさとみがど頭に飛び込んで来るビリング。クレジットが最大のチャームポイントといへば、なかなか珍しくはある一作といふのが、当サイトに吹かせられる限りの与太、もとい南風。


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 「愛欲の罠」(昭和48/製作:天象儀館/監督:大和屋竺/脚本:田中陽造/企画・製作:荒戸源次郎/撮影:朝倉俊博/照明:鈴木道夫/編集:中原淳己/音楽:杉田一夫/音響:河内紀/効果:福島効果グループ/演奏:八百谷啓人クインテット/助監督:白川健/制作主任:櫻木徹郎/人形美粧:かとうよしえ/記録:入山幸子/録音:杉崎喬/監督助手:藤中秀紀/撮影助手:小水一男・遠藤正史/照明助手:牛場賢二・中奥隆司/結髪:エンゼルビューティーサロン/車輌協力:国立土建 K・K/銃器提供:シブヤ・YMC/録音現像:東京録音現像所/主題歌 ・朝日のやうにさはやかに・ 作詞:上杉清文 作曲:杉田一夫 唄:宗像笙/挿入歌 ・センチメンタルヴギウギ・ 作詞:熊倉正雄 作曲:杉田一夫 唄:ビビクチンスカヤ&ダイナミックエンゼルス/出演:荒戸源次郎、絵沢萠子、安田のぞみ、中川梨絵、山谷初男、大和屋竺、アンドレ・モアジー、港雄一、山本昌平、櫻木徹郎、神宮ガィラ、山本英明、岩淵進、天野照子、マビー・D・ナダ、アベ聖、桃谷操、ビビクチンスカヤ&ダイナミックエンゼルス、道岡光昭、吉川信吾、長倉健次、太田篤哉、鈴木竜一郎、伊藤和齢、川村正広、松浦鉄平、小松原茂、小野寺照夫、牛場賢二、竹田賢一、山本久行、川本武、大村光広、川口和子、金井勝、夢村四郎、大久保小次郎、伊藤元気、杉田一夫、秋山ミチヲ)。
 天象儀館1973年度第一回製作作品クレジット、タイトル開巻、劇伴は有り物。クレジット背後にうつすら映るのが、最初はフィルムの傷か何かかと思つてゐたら街景、カツンカツンと鉄梯子を上るシルエットに監督クレジット。建設中のビルから殺し屋の星(荒戸)が標的(山本英明?)をスナイプ、一発で仕留める。銃声も、拳銃だらうとライフル銃だらうと変らないバキューン。電話越しのクライアントとの短い遣り取り挿んで、星は車で女房の眉子(絵沢)を拾ひ帰宅、とりあへずな絡み初戦。サウナに星を呼び出したクライアントの高川(大和屋)は、来日する“組織”の大物殺しを依頼。星はアメリカから来た副社長(アンドレ・モアジー)の狙撃にも成功するが、狙撃に使つたトラックに眉子を乗せ現場付近のインターチェンジを通過した軽弾みから足がつき、高川は逃亡を指示、眉子は姿を消す。今度は銭湯に呼び出した星に、高川は眉子を殺れと命ずる。星は高川の言葉に従ひ、小粒の弾丸で眉子のハートを撃ち抜く。報酬とともに与へられた三人の女(アベ聖と桃谷操にもう一人?正直手も足も出ない)と乱痴気騒ぎに明け暮れる星が、戯れに自宅窓からスコープで覗くのが日課のゴルフ練習場を覗いてみると、何とそこに眉子が。生きてゐた眉子を、星は追ふ。
 辿り着ける範囲の配役残り、特に何するでもない中川梨絵は、副社長に宛がはれる女・真美。イコール小水一男の神宮ガィラと秋山ミチヲ(a.k.a.秋山道男)は、“組織”の金に手をつけた高川を狙ひ隠れ家に現れる、“組織”の殺し屋・西郷とマリオ。因みに星は高川がゼロから育て上げた秘密兵器で、必ずしも“組織”の人間ではないとかいふ寸法。港雄一と山本昌平は、星のヤサに貼り込む“組織”の殺し屋・呉と林。星がこの二人を片付けるシークエンスは、三人の位置関係とか動きが全然要領を得ない。行き場をなくした星は、売春宿に転がり込む。天野照子がいい感じの遣手婆で、安田のぞみはそこで星が出会ふパン女・夢子。櫻木徹郎は、星に空気銃を使つての対決を仕掛ける、描写上は刺客中最強の凄腕・木谷。西郷とマリオは異者風味を拗らせるばかりで、実際強いのか見かけ倒しなのかよく判らん。ビビクチンスカヤ&ダイナミックエンゼルスは、木谷に左目を潰された星が逃げ込んだ小屋にて、一曲披露するゼムセルフ。度肝を抜かれたのがヌードも披露するビビクチンスカヤが、ルックスもプロポーションもモデルばりの箆棒な上玉。そして山谷初男が、ラストにチョロッとだけ出て来る“組織”のボス。その他大量の頭数の多くは、羽田に集結する“組織”の黒服要員か。話を戻して、シネフィルは兎も角ピンクスにとつて通り過ぎ難いのが出番は短いけれど港雄一。我々が知る90年代から今世紀初頭の港雄一と、この時点で見た目も口跡も吃驚するくらゐに変らない。
 脚本と助演男優賞級の活躍が光る「発禁 肉蒲団」(昭和50/監督:白井伸明/主演:谷本一・益富信孝)が滅法面白くて、DMMピンク映画chに新着したのを喜び勇んで見てみた大和屋竺最終第五作。いはゆる買取系ロマポなのだが、この時荒戸源次郎らが起ち上げた劇団である天象儀館は日活と如何に話をつけたのか、それとも出来上がりに愕然とさせたのか、結構好き勝手してゐる。女の裸もそれなりになくはないものの、絵沢萠子の濡れ場は意図的にブッツブツ切りおとなしい眼福を妨げ、対夢子戦では星が勃たず、劣情を刺激されるといふよりは、居た堪れない気持ちばかりが先に立つ。眉子にせよ夢子にせよ後味の頗る悪い死に方で、萎えさせられることこの上ない。尤も、絵沢萠子や安田のぞみはそれでもまだマシ。副社長の傍ら狂騒的に空騒ぐ程度で、アンドレ・モアジー共々アッといふ間に、しかもかそもそも脱ぎもせず退場する。折角回した―当時専属の―中川梨絵の持ち腐れぶりは、大概日活を怒らせたのではなからうか。裸映画としては本当に方便程度で、今作の主眼は殺し屋映画。殺し屋映画としては副社長狙撃の凝つたポイント取りや木谷との死闘、そして斬新極まりない画期的なラスト・カットと、ワーキャー騒ぐほどでもない程度には楽しめる。結局成人映画館では封切り当時上映されたきりと、一旦蔵入り後、今になつて津々浦々を巡る「白昼の女狩り」(昭和59/監督:曽根中生/脚本:森下馨/主演:加来見由佳)とある意味対を成すやうな一作である。


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 「挑発美容室 人妻の匂ひ」(1994『人妻変態美容師』の1999年旧作改題版/製作:獅子プロダクション/提供:Xces Film/監督:佐藤寿保/脚本:五代響子/撮影:稲吉雅志/照明:小川満/編集:酒井正次/助監督:今岡信治/監督助手:榎本敏郎/撮影助手:片山浩/照明助手:堀直之/スチール:西本敦男/録音:銀座サウンド/現像:東映化学/出演:鈴川玲理・石原ゆり・しのざきさとみ・池島ゆたか・小林一三・広瀬寛巳・今泉浩一・征木愛造・中島裸茂・柳蜂逸男・紀野真人)。出演者中、広瀬寛巳がポスターには広瀬寛己で、今泉浩一から柳蜂逸男までは本篇クレジットのみ。
 深夜の美容室、百合の花が咲き乱れる。話を聞くに真性ビアンの石原ゆりがタチで、バイと思しき鈴川玲理がネコ。カメラがパンした先の鏡の中、鈴川玲理が果ててタイトル・イン。クレジット中は美容室「POWDER」に、今と比べると流石に全然髪があるひろぽん来店。下着ではないにせよ水着みたいな服の上に、霞並みにスッケスケのシースルーを羽織つた―だけの―扮装で客を出迎へた「POWDER」オーナーの吉永真理江(鈴川)は、カットしながら谷間も露な胸を押しつけるどころか、最終的にはガンッガン跨る。そんな店内の痴態を窺ふ紀野真人の視線に、アシスタントの麗子(石原)が気づく。主に嫉妬心から、破廉恥接客に関して麗子が呈する苦言をまるで意に介さない真理江に、元夫の葉山俊次(池島)から下心込みの事務的な電話が入る。「POWDER」は真理江の度外れた性欲に白旗を揚げた葉山が、慰謝料代りに持たせた店だつた。
 配役残り樹カズの本名である小林一三は、街に出た真理江に声をかける男前ナンパ師。街頭ロングで真理江は一旦拒絶してゐるにも関らず、カット跨ぐとラブホにて濡れ場に大絶賛突入してゐたりするザクザクした繋ぎが麗しい。紀野真人は評判を聞きつけ真理江に接近する漁色家・シノミヤで、しのざきさとみはシノミヤ馴染の人妻ホテトル嬢・ユカリ。シノミヤに呼び出された真理江がホテルに向かふと、既にユカリが裸で寝てゐたりする三番手の投入は地味に輝かしくスマート。今泉浩一・征木愛造(a.k.a.梶野考)・中島裸茂・柳蜂逸男は、オーラス「POWDER」に行列を成すひろぽん以下の助平客要員。中島裸茂と柳蜂逸男が誰々の変名なのかまでは辿り着けないが、どちらか片方は今岡信治、の筈。
 次作の非本流「痴漢と覗き」・「痴漢と覗き 婦人科病棟」(脚本:五代響子/主演:石原ゆり)が画期的に見たい、佐藤寿保1994年第一作。軽く鼻も胡坐をかきつつルックスは垢抜けないものの、ボガンボガンしたオッパイの破壊力は抜群の主演女優と五代響子の脚本を擁した上で、佐藤寿保の名前から自動的に予想されるマッドネスなり残虐描写は、今回一切鳴りを潜める。真理江がユカリを交へた巴戦を嫌つた所以といふのが、ただ単に棹を独り占め出来ないからとのショート・レンジな即物性も鮮やかに、真理江を巡る麗子とシノミヤの鞘当ても所詮は小賢しくすらない些末とばかりに、ヒロインの底なしの貪欲が劇中世界を人類補完計画ばりに埋め尽くして行くグルーブ感は圧巻。男根を原初的に誇示するシノミヤと、撃てばお終ひの男を押し退け、颯爽とペニパンを装着する麗子。三番手が慎ましくヒット・アンド・アウェイに徹する一幕が対照として活きて来る構成が改めて秀逸な、シノミヤ×真理江×麗子の、今度は真理江が望んだ第二次巴戦。結局ともに精魂尽き果てたシノミヤと麗子を余所に、なほも真理江が自慰に狂ふウィナー・テイク・オールは天晴の一言。要求される商品性に、佐藤寿保が脇目もふらず突つ込んだ結果が見事に実を結んだ、極めてシャープでストレートな高水準裸映画である。

 オーラスは完全に振り切れた「POWDER」乱交、首から上を麗子、左乳ひろぽんに右乳征木愛造(a.k.a.梶野考)、観音様シノミヤ、左足今岡真治に右足今泉浩一。六人で一人の女を凌辱するといふよりも、寧ろ皆で真理江に奉仕してゐる画は、当然の話に過ぎないといへばそれまでなのだが、面子の組み合はせが現在では考へられない凄いショット。
 ところでたつた今気づいたのが、旧題も新題も、だから真理江は人妻ではない件。


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 「色慾怪談 ヌルッと入ります」(2016/制作:多呂プロ/提供:オーピー映画/監督・脚本・出演:荒木太郎/原作:瞿宗吉『牡丹燈記』・三遊亭円朝『怪談 牡丹燈籠』/撮影・照明:飯岡聖英/編集:酒井正次/撮影助手:宮原かおり・志田茂人/照明応援:広瀬寛巳/演出助手:三上紗恵子/音楽:安達ひでや・首里音楽研究会/メイク:ビューティ☆佐口・イム/ポスター:本田あきら/応援:榎本敏郎/進行:佐藤選人・小林徹哉/協力:花道プロ/録音:シネキャビン/仕上げ:東映ラボ・テック《株》/出演:南真菜果・水野朝陽・神納花・那波隆史・野村貴浩・河内哲二郎・春風亭伝枝・天才ナカムラスペシャル・淡島小鞠・牧村耕次《特別出演》・稲葉良子)。
 制作に変更された二代目多呂プロ立体ロゴから、タイトル開巻。特製チラシに謳はれる、“多呂プロ20周年記念作品”の文言が本篇中には見当たらない。
 夏祭りの風情も賑やかなお盆前、私財でこども食堂を開く有徳の教師・萩原喬生(那波)の下を、元教へ子の人妻・飯島美麗(南)が女中の夜音(稲葉)を伴ひ訪れる。一切登場しない夫の暴力と継母の苛めに苦しむ美麗は、かねてから想ひを寄せてゐたらしい萩原に、盆期間限定で夫婦の契りを求める。初めは固辞してゐた萩原も、何だかんだで据膳を喰ふ。美麗と逢瀬を重ね、何故か徐々どころでなくみるみる消耗する萩原の話を、萩原の叔父にして、穀潰しゆゑ甥の下男的に生計を立てる伴潤一郎(河内)から聞いた占ひ師の白翁堂幽斎(春風亭)は、二丁拳銃を振り回す美麗の義父に踏み込まれる悪夢から跳ね起きた萩原に、衝撃的な事実を伝へる。飯島家の環境に耐へかねた美麗は既に自死、夜音も後を追つてゐるといふのだ。
 配役残りex.管野しずかの神納花が件の凶悪な継母・くに子で、野村貴浩はくに子に仕向けられ美麗を手篭めにする間男・源次、二人して飯島家の財産を狙つてゐるとかいふ安い寸法。牧村耕次が美麗義父の喜一、何でくに子のやうな悪女と再婚したのか不思議な人徳者。何時まで経つても出て来ないやきもきを、まんまと的中させる水野朝陽は伴の女房・峰子。天才ナカムラスペシャルとwith二人目?の淡島小鞠は、幽斎指揮下萩原の無事を祈願し祈祷する引きこもり要員。皆さん籠もつてた期間は紹介順に三ヶ月の佐藤選人と六ヶ月の榎本敏郎でもない誰か判らん人に、一年の淡島小鞠が前列左から。後列は右から五年の小林徹哉、十年の荒木太郎と、三十八年の天ナス。大トリの破壊力は、作中僅かに命中する。新顔の女優部に話を戻すと、オッパイの破壊力は申し分ないもののお芝居の方は御愛嬌に心許ない南真菜果が誰かに似てゐるやうな気がしたのは、軽く千葉尚之。一方負けず劣らずのオッパイを誇る水野朝陽は、前回の塚田詩織同様肩の力を抜いた演出が功を奏したのか、軽快な突破力を発揮する。
 大概な土壇場に至つて二番手が飛び込んで来たり、旧態依然とした荒木調ならぬ荒木臭がガッチャガチャ空騒ぐ中を、深町章の「熟母・娘 乱交」(2006/脚本:河西晃/主演:藍山みなみ)以来の牡丹燈籠が辛うじて通り一遍進行する。国沢実は高橋祐太とのコンビでこの期に及んでの好調を死守する反面、荒木太郎2016年第三作は2012年に復活した大蔵時代の恒例夏の怪談映画枠を頂戴しておきながら、黒澤明の「生きる」を翻案した割にはちつとも生きてやしない謎が暗黒よりも深い前作に引き続き、逆の意味で見事に失速し力なく二連敗。水野朝陽投入が遅きに失した、即ち劇映画としての全体的な構成の崩壊は、神納花V.S.野村貴浩が妙に費やす尺とも加へて、裸映画としては全般的な濡れ場の総量確保と引き換へといつていへなくもなく、さういふ肉を斬らせて骨を断つ戦略を採用したと最大限好意的に曲解するならば、漸く発見しかけたせめてもの立つ瀬を。泰然と水泡に帰してのけるのが、今も昔と変らなかつた荒木太郎といふ御仁。スッカスカの始終を仕方なく通過したのちの、二組に別れた俳優部が例によつて無駄にてれんこてれんこ呑気に踊り呆けてみせるオーラスが、力尽きて寝た子も起こして癪に障る。果たして周年記念に本気で挑む気概が本当にあつたのか出任せた方便か、斯様なザマでは三十周年なんぞ来はせんのではなからうか。

 ところでといふか、ところがといふか。改めて復活後の大蔵恒例夏の怪談映画を振り返つてみると、「おねだり狂艶 色情いうれい」(2012/監督:渡邊元嗣/脚本:山崎浩治/主演:大槻ひびき)は、今も深く心に染み入る。因みに最後の水上荘映画でもある「愛欲霊女 潮吹き淫魔」(2013/監督・脚本:後藤大輔/主演:北谷静香)、手応へさへ感じられない「怪談 女霊とろけ腰」(2014/監督:加藤義一/脚本:鎌田一利/主演:水樹りさ)と来て、レス・ザン・イントロダクションで飛び込んで来る倖田李梨が大草原の「色欲絵巻 千年の狂恋」(2015/竹洞哲也/脚本:当方ボーカル/主演:伊東紅)。折角ナベが、最高のスタートを切つた、のに。真に恐ろしいのは、怪談映画の中身ではなく、映画そのものが実は何気に現在四連敗中といふ死屍累々。呪はれたシリーズの連鎖を断ち切るには、今年は必殺を期して城定秀夫でも連れて来るしかあるまいぞ。


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 「痴漢電車 後ろから揉ませて」(1992/製作・配給:大蔵映画/監督・脚本:小林悟/撮影:柳田友貴/照明:小野寺透/編集:フィルム・クラフト/助監督:青柳一夫/スチール:大崎正浩/監督助手:杜松蓉子/録音:銀座サウンド/現像:東映化学/フィルム:AGFA/出演:高橋めぐみ・冴木直・美里リナ・山本竜二・板垣有美・白都翔一・芳田正浩・港雄一)。
 板垣有美が高橋めぐみと冴木直に、電車で痴漢して来た男のポケットにチラシを撒くやう促す。結果論的な視点からボッロボロに情報量の不足する唐突なシークエンスを補完すると、出張性感マッサージ「宅配便」の社長・唐沢(板垣)が、昼間はOLの嬢・霧子(高橋)と真弓(冴木)にその旨指示、鉄橋を通過する電車にタイトル・イン。アバンの電光石火を誇る新田栄とはまた違つた意味で、小林悟が開巻から早速飛ばす。飛ばすといふか、スッ飛んでゐるといふか。
 兎にも角にも、あるいはとか何とかで二人の通勤電車、霧子は山本竜二と開戦。硬いといへばいいのか乏しいのか、何れにせよ表情に難がある高橋めぐみと並べてみるとなほさら一層、トゥー・マッチに豊かな山竜の顔芸が際立つ。感じてミッションをすつかり忘れてしまつた霧子に対し、真弓はカガミ(白都)のポケットに首尾よくチラシを潜り込ませる。その夜、電車セットと一スタジオで二度美味しい御馴染摩天楼。左から先輩の山竜・芳田正浩・カガミの順でカウンターに陣取り、山竜が対霧子電車痴漢の武勇伝。後ろからソッと揉み、頭の中で女が悶えるのを想像する。想像によるセックスの至高を説く山竜パイセンに理解の難いカガミと芳正は、“後ろから揉ませて”を俺達も試してみるかと盛り上がる、それキーワードだつたんだ。
 配役残り石川恵美アテレコの美里リナは、この人はOLを既に退職した「宅配便」嬢・ミミ。となると高橋めぐみの声も軽く声色を変へた吉行由美に聞こえなくもないが、この時未だデビュー前。港雄一は、この御仁も三馬鹿と同じ会社の遠山部長。痴漢された女優部の傍らでこれ見よがしに顔を隠した新聞紙の陰から、チョイチョイ降臨する小林悟は今回不発、新聞氏は何時も通り見切れる。
 大御大・小林悟、1992年薔薇族五本込みで全十八作中第六作。因みに、あるいは改めて。頑なに当サイトが小林悟に大御大の尊称を冠する所以は、小川欽也が御大と称される昨今。そのこと自体に異を唱へるつもりは特段ないものの、小林悟が小川欽也と同格ではマズいだらうといふ配慮である。
 山竜が木に竹を接ぐ痴漢の精神性を軸に、一風毛色の変つたアプローチを試みる、ものかと思ひきや。結局三馬鹿+遠山部長は撒かれたチラシにまんまと釣られ、宅配風俗に垂涎狂喜するに終始。抜けた底が時空を超えてドリフ桶よろしく頭上から降つて来さうな展開は、紛ふことなき大御大仕事。いや別に、時には見紛はせて呉れて全然構はないんだけど。霧子V.S.山竜電車痴漢戦中地味に画期的に飛び込んで来た、意図的に通り過ぎた注目点が、アップの山竜の眉間で、高橋めぐみが小さく悶える謎合成。一旦見通したのち初めて気づいたが、これこそ山竜パイセン曰くの「後ろからソッと揉む、そして頭の中で女が悶えるのを想像するんだ」との、“後ろから揉ませて”を視覚化したショットであつたのだ。にも、関らず。そこまで滅多に踏まない一手間踏んでおいて、それなのに、嗚呼それなのに。正体不明の三番手ながら、首から上も下もとびきりの美里リナ。「宅配便」の嬢は、出撃もとい出張する際グラサン白衣に杖をつき按摩偽装。三馬鹿に取り囲まれた霧子が、座頭市ばりにまさかの仕込杖を抜いてみせる藪蛇な大立ち回りだとか、ちらほら見所もなくはない、にせよ。消費され後には記録はおろか記憶も残らない、ポップ・カルチャーの極北としての量産型娯楽映画の宿命を甘んじて引き受けたとでも受け取るべきなのか、一旦掲げたテーマをも何処吹く風に流して平然と済ます、常人には与り知り得まい―俺も知らん―小林悟の乾いたダンディズムに、この期に及んで感服した次第である。


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 「悶える義妹 遺影の前で抱いて」(2016/制作:Blue Forest Film/提供:オーピー映画/監督:竹洞哲也/脚本:当方ボーカル/撮影監督:創優和/録音:山口勉/編集:有馬潜/音楽:與語一平/整音:高島良太/助監督:小関裕次郎/監督助手:林有一郎/撮影助手:酒村多緒・柳田純一/スチール:阿部真也/仕上げ:東映ラボ・テック/制作進行:植田浩行/協力:嬬恋村フィルムコミッション/出演:朝倉ことみ・星野あかり・倖田李梨・世志男・ダーリン石川・イワヤケンジ)。
 タイトル開巻、開口一番はイワヤケンジのモノローグで、「私は、突然死にました」。適宜ツッコんだりボケてもみたり、そのまゝイワヤケンジの軽妙な喋りで話を進める、竹洞組でよくある手法。家族で居酒屋「美蔵」を営む箕島家、長女・延子(星野)の入婿・ミツル(イワヤ)が自宅の階段から落ちて突然死、しての四十九日。身内だけの法要に参列したのは、両親はすでに死去してゐるのか延子のほか、家を出た役立たずの長男・長男(世志男)とその嫁で意地汚い実和子(倖田)に、何故かミツルにしか心を開かなかつた次女の和歌子(朝倉)。和歌子の好意を意識し、延子とは五年レスの状態にあつたミツルもよからぬ劣情を拗らせないでもなかつたが、あくまで一線は越えずにゐた。配役残りダーリン石川は、五十日と一日勘違ひして洋菓子持参でのこのこ箕島家にやつて来る、延子の浮気相手・真倉義経。オーラス間際に二人見切れる、飲食客要員には手も足も出ない。
 ピンク四戦目にして朝倉ことみが初めて山内組から外征した、竹洞哲也2016年第三作。一方通算第六戦の星野あかりは、国沢実2016年第一作「陶酔妻 白濁に濡れる柔肌」(脚本:高橋祐太/主演:美泉咲)に続く五年ぶり復帰第二戦。尤も残念ながら星野あかりは六月で無期限活動休止してしまつてゐるゆゑ、七月終盤公開の今作が打ち止めとなる模様。
 恐らく意図的にミスリーディングを狙つたと思しき、朝倉ことみが美しく亡き義兄への思慕を募らせるリリカルな予告には全く反し、本篇が現代的にコッテコテしたコメディである奇襲には、ひとまづ完全に意表を突かれた。ひとつひとつのギャグの精度、イワヤケンジの話術ともに申し分なく、序盤は箕島家の面々だけで通過、中盤に至つて真倉を投入し加速を図る展開も手堅い。そして、卓袱台が派手に引つ繰り返る終盤。とこ、ろが。二転のどんでん返しが綺麗に決まるとはいへ、如何せん二転目のレス・ザン・目新しさは否めず、最後まで見通してしまふと却つて七十分も費やすほどのネタかといふ疑念を正直拭ひきれない、粒の小さな物語といふ印象が強い。裸映画的にも締め以外濡れ場は何れも散発的なものに止(とど)まり、倖田李梨に至つては乳すら見せない不義理。折角五年の間に色香を爆増させた星野あかりを擁しておいて、どうしてもつとゴリゴリ観客の金玉、もとい琴線を激弾かうとしない、とかいふ明後日だか一昨日な不満も残る。完成度が低くはない割にインパクトは弱い一作の中、地味に特筆すべきはクレジットを見るに嬬恋まで出張つてゐる筈―現に舞台は美蔵だ―なのに、俳優部どころか表からの忌中ショットを除けば撮影部も建物の中から一歩たりとて外に出ない、師匠の伊豆映画と真逆のアプローチには軽く驚いた。ここから先は純然たる素人の浅墓な邪推に過ぎないが、2016年も竹洞哲也はただ一人今時驚異の全五作を量産する大車輪状態で、今回は前作から二ヶ月強、次作までは二ヶ月弱といふハイペース。もしも仮に万が一、モノローグ主導の構成も現場の負担を軽減するための戦略的選択であつたとするならば、よもや三日さへかけてゐなかつたりする省力撮影なのかしらん。その場合、城定秀夫みたいに名義でカミングアウトして貰へると判り易いのに、紳士服のザザホラヤよろしく竹洞也とか   >福岡にしかねえよ

 最後に、イワヤケンジが“どういつた類”といふ箇所を、普通“たぐひ”とならうところを、“るい”で読んでゐたのが耳についた。“るい”でも間違ひとは必ずしもいへない上に、そもそも後付けのモノローグにつき、わざッと“るい”で読ませたのかも知れないけれど。
 どんでん二転の備忘録< 寿司を食ひ大笑する四人を昏倒・拘束、更に灯油を撒いた和歌子が「今、逢ひにいきます」とライターで点火する修羅場は、実際にはまるでダメ子な和歌子の小説中の出来事


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 「愛獣 熱く凌す」(昭和59/企画・制作:AMI企画/配給:株式会社にっかつ/監督:和泉聖治/脚本・プロデューサー:木俣堯喬/撮影:伊東英男/照明:金沢正夫/編集:菊池純一/助監督:西沢弘己/音楽:新映像音楽/ヘアーメイク:中村出雲/スチール:津田一郎/効果:小針誠一/録音:ニューメグロスタジオ/現像:東映化学/出演:沢田和美、中川みず穂、峰沢千明、泉ゆり、山田桂司、牧村耕次、北村大造、ビル・ドロシィー、坂本昭、左陣太、池島ゆたか、岡竜太郎)。出演者中、牧村耕次とビル・ドロシィーがポスターには牧村耕二とビル・ドロフィーで、池島ゆたかと岡竜太郎は本篇クレジットのみ。企画・制作のAMI企画と、御馴染プロ鷹は同一組織。
 幼い姉妹のスナップ写真に、妹の父親を邪推する下衆い噂話。適当な湖と山々の画に過疎の集落が夏だけ民宿で賑はふ西湖村のイントロダクションを、プロ鷹他作でも聞き覚えある声ゆゑ、もしかすると木俣堯喬によるものなのかも知れないナレーションで投げた上で、枯れ木を集める北村大造にタイトル・イン。オープニング・クレジットはAMI企画と木俣堯喬に、和泉聖治のみ。
 宿を求め声をかけて来た単車三尻の若者を、桑山藤二郎(北村)が邪険に追ひ返す。すつかり日も暮れたのち、長女の奈津子(沢田)が役場の寄合より帰宅。近隣に宿泊客を奪はれぬやう、村ぐるみで再三勧められる民宿の開業を、藤二郎は頑なに拒む。藤二郎の妻・妙子(泉)は村にやつて来た余所者に輪姦され、奈津子の妹・可奈子を生む。その後藤二郎の冷酷な仕打ちに耐へかね、妙子はスーサイド。下衆い噂話に曝され育ち、順調にグレた可奈子(中川)も、十八の時家を捨てる。双方の親も公認する恋人・村野保(牧村)に、可奈子がグラビアを飾るエロ本を見せられた奈津子は、藤二郎には詳細を黙したまゝ可奈子に会つて来るとだけ言ひ残し上京する。
 配役残り左陣太は、奈津子が最初に頼る編集者、山田桂司はその場に顔を出すフリーライターの香取正之。坂本昭は香取経由で奈津子が続けて会ふ、グラビア撮影時に可奈子が在籍してゐた脱ぎ専プロダクションの社長・間辺。峰沢千明は間辺から紹介された、可奈子ことジェシーと仲のよかつた怜で、池島ゆたかが怜が出演する裏ビデオの監督。先に現場に来てゐた香取と再会した奈津子は、以来香取の下心主導で行動を共にする。ビル・ドロシィーは、横田で可奈子が同棲する米軍整備員のヒムセルフ。岡竜太郎が正直よく判らん、岡竜太郎が単独の個人なのか、あるいはa.k.a.岡柳太郎の二人存在するのか。一旦ケリをつけたつもりが、再燃したオカリュー問題に改めて頭を抱へる。
 今をときめく和泉聖治昭和59年、間に一般一本挿んで裸映画第二作は実父の脚本を得た買取系ロマポにして、山内大輔が「欲望に狂つた愛獣たち」(2014/主演:みづなれい)でリブートするまで、ロマンポルノで計六作ランダムに製作された愛獣シリーズの一旦最終作。といつて、早々に上京して以降はオーソドックスな人捜しに暫し終始。奈津子役の沢田和美がワイルドにもソリッドにも欠き、“愛獣”だの“熱く”だの“凌す”と煽つてみせるほどの、猛々しさには終に遠い。とりあへず、和泉聖治の少なくとも裸映画を見るのは初めてなのだが、フェードアウトになる毎に妙にドキドキしてしまふのは我ながら如何なものか。義母である以上、血は繋がつてゐないのだから余計な心配するな。実は母娘二代揃つてレイプ体験のある奈津子が、しかもその際感じてゐたことを想起し―父親が忌避した余所者の―淫らな血は―可奈子ではなく―寧ろ自身に流れてゐると思ひ至るラストは、前述した主演女優の突破力不足―と男主役たる山田桂司の不甲斐なさ―に遮られ、ひとまづ出来上がつたお話といふ程度の印象に止(とど)まる。諸刃の剣的に手堅く纏まり派手にブッ壊れもしない反面、平板な始終で一際目を引くのは、奈津子が自らのレイプ体験―劇中何時時点の事件なのか、同じ日焼け跡―を想起する件から、エンド・クレジット時のストップモーションまで都合四度、いはずと知れた「地獄の黙示録」(日本公開は昭和55)に於けるウィラード大尉が沼からヌマーッと顔を出すアレを、堂々と丸パクr・・・もとい触発された心象ショットを撃ち抜いてみせるチャーミング。全体奈津子の如何なる心境を表現しようとしたものか、明示的な意味はまるで伝はらないながら、それは迫力勝負のオリジナルからさうなのだから気にするな。「うは、ウィラードだ!」、その底の抜けた衝撃こそが全てでいゝではないか。

 最後に、奈津子を犯す二人組の片方が、公開当時二十七歳の山科薫、となると今年還暦か。クレジットがあらうとなからうと、一発で山科薫と知れる今と本当に全く一欠片たりとて変らなさが明後日だか一昨日に感動的、この人幾つの時点で完成してたんだ。


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