真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「盗撮!!逆ナンパLive ~B98の誘惑~」(1993/受審:新東宝ビデオ株式会社、の筈/監督:浜野佐知、の筈/出演:君矢摩子)。
 芋を洗ふ海水浴場、かと思つたのは人工的に波を作り出した大規模プール。ヴィヴィッドなハイレグ水着の君矢摩子が漫然とほつゝき歩いて、ゐる画が凄まじく唐突に暗転、君矢摩子のみクレジット。再度ほつゝき歩きロングに戻した上で、改めて暗転タイトル・イン。以降あちこちに繰り出す―後述する―オープンの画質が、結構壮絶。
 明けて本篇が突入した先はこれ見よがしに撮影機材の転がる、控室に模した旧旦々舎の煉瓦部屋。ハーセルフの君矢摩子がヒムセルフの栗原良に、尺八をソファーに横たはつて吹く。自らの左腕で半分隠す、栗原良の左太股で潰れた横乳がエクストリーム。最も大事な点ゆゑもう一度いふ、横乳エクストリーム。リョウ―君矢摩子の呼称は栗ちやん―が零す悩みといふのが、セックスを生業にする割と根源的な問題。性のマンネリ化を覚え刺激を求めたリョウは、摩子ちやんが逆ナンパして―旧旦に連れて―来た男との一戦を盗撮する。なる画期的か頓珍漢コンセプトを、空前絶後の我田引水ぶりを爆裂させ発案、摩子も二つ返事で乗る。騎乗位の体勢から仰角に抜いたオッパイが殊更エモい、君矢摩子の超絶裸身に次ぐ二番目の見所は、この件の眩い無造作か無防備なドラマツルギー。三番目の飛び道具に関しても、後述する。
 兎も角、とかいふ方便での配役残り。アバンのプールにて、摩子が捕獲する特徴のないジージャンは森純。モリジュンに遡る、何故か摩子からの接触を断る頭のおかしな奇人は知らん。あと少し遡つて控室の二人を呼ぶ、助監督の声の主も。ボディコンを着装した摩子が、車で送つて貰ふ形で捕まへるゲーターズならぬゲッターズ―ジュリアナ東京の表に駐屯したナンパ師の集合名詞―は樹かず。そし、て。リョウが遂に到達する極北の趣向が、自らと摩子、に摩子が連れて来た素人を交へた巴戦のAV撮影。モリジュンとかずに関しては、一応撮つてゐるだけといふ体。さういふ次第で―実は無駄に出張つた有難味のない―水族館は素通りした摩子に、公園で声をかけて来る関西人は終始首から上にモザイクがかけられて、はゐるものの。モザイク越しの正体が、神戸顕一であるのはすぐに看て取れる。ところで旦々舎と神戸顕一の接点といふのが俄かには記憶になく、調べてみると浜野佐知1993年第五作「変態妻 わいせつくらべ」(脚本:山崎邦紀/主演:小林亜樹)に、内トラで全然事済む程度の、男優部おまけの五番手で出演してゐた。
 確認し得るだけで浜野佐知1994年第一作「本番授業 巨乳にぶつかけろ!」(脚本:山崎邦紀)と、未見未配信の第四作「本番熟女 巨乳わし掴み」(同)主演の君矢摩子を擁した一作、発売日は八月二十五日とされる。
 正直嬌声が些か姦しいのは議論の分れる点かともいへ、スタンダードなプレイに終始する君矢摩子の裸を大人しく愛でてさへゐれば、十二分にも十三分にも満たされる。の、だけれども。その先の荒野に、埋もれた果実を見つけてしまつた、地雷の起爆装置かしら。要は君矢摩子が素人を逆ナンすると称して、思ひきり普通にネームド男優部を集める。よくいへばモキュメンタリー形式は、わざわざツッコミを入れるのも面映ゆいほど限りなく透明に近い。問題は、今日の雨ではなくその面子。改めて整理すると、登場順に森純と副将格の樹かず、そして、御大将・神戸顕一。即ち、当年の第六回ピンク大賞で特別賞に輝いた、神戸顕一率ゐる男優スーパーグループその名も神戸軍団(神戸顕一・樹かず・真央はじめ・山本清彦・森純)から、残念ながら真央元とやまきよは欠いた三枚揃ふスリーカードが、見えないところで火を噴くゼロ番目の切札。君矢摩子×3/5神戸軍団×栗原良(a.k.a.リョウ/a.k.a.ジョージ川崎/a.k.a.相原涼二)、何だこの、闇雲か藪蛇に豪華な布陣。量産型裸映画に於ける、神戸軍団共演作で話を進めると。最も肉迫したのが本名の小林一三名義で樹かずがセカンド助監督についてゐる、池島ゆたか1995年薔薇族込みで第五作「咥へる人妻たち」(脚本:五代暁子/主演:岩下あきら/山・神・真の共演)。次に惜しいのが、本篇には影も形も出て来ないにも関らず、真央元の名前が何故かポスターには載つてゐる深町章1994年第六作「痴漢電車 いたづら現行犯」(脚本:双美零/主演:青木こずえ/樹・神・山の共演)、別に惜しくない。神戸軍団総員出演どころか、カルテット作からどうしても見当たらない。とは、いへ。今作同様のスリー・オブ・ア・カインドとなると、封切り順に池島ゆたか1993年薔薇族込みで第四作「新痴漢電車 指師で開きます!」(脚本:切通理作・五代響子/主演:木戸原留美/神・真・小林一三=樹の共演)と、続く第五作「女子大生 後ろから突き上げて」(脚本:五代響子/主演:岡崎結由/森・真・神の共演)。小林悟1994年薔薇族込みで第五作「スチュワーデス みだらな私生活」(主演:吉行由美/樹・森・神の共演)に、勝山茂雄第二作「ドキュメント 性熟現地妻」(1995/主演:摩子/神・樹・山の共演)と小川和久1995年第七作「最新ソープテクニック ねつとりご奉仕」(主演:早川優美/真・山・神の共演)。野上正義1996年第一作「浮気妻 淫乱同窓会」(主演:貴奈子/真・神・山の共演)と、池島ゆたか1996年薔薇族込みで第三作「わいせつ秘書 肉体ご奉仕」(脚本:五代暁子/主演:神無月蘭/神・真・山の共演)まで、探せばそこそこ見つかりもする。かうして見た限りでは、神顕・マオックス・やまきよの組み合はせが一番多いのと、畢竟、これで全部といふ訳でもないだらう。と、いふか。おかしいな、確か浜野佐知のアダルトビデオを見てゐた筈なのに。


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 「人妻一番! 二人きりトゥナイト」(2021/制作:ラブパンク/提供:オーピー映画/監督・編集:髙原秀和/脚本:宍戸英紀・髙原秀和/音楽:野島健太郎/撮影:下山天/照明:田宮健彦/録音:田中仁志/助監督:森山茂雄・福島隆弘/協力:末永賢・能登谷健二/スチール:本田あきら/仕上げ:東映ラボ・テック/出演:希島あいり・七菜原ココ・長谷川千紗・東野良平・重松隆志・小田飛鳥・酒井健太郎・安藤ヒロキオ・直樹フェスティバル・山岡竜生・森川凛子・加藤絵莉・三森麻美・西坂伊央里)。
 トロリーバッグを引き引き、希島あいりが土手を画面奥に進む。振り返り、左手の指輪を抜き放り捨てかけ、思ひ直してタイトル・イン。先走ると当然、アバンを引つ繰り返し手前に歩いて来るのがラスト。そこだけ掻い摘むと、まあ綺麗な構成を採つてはゐる、そこだけ掻い摘むと。
 劇中明示はされないものの、まづ間違ひなく新宿のロックバー「VELVET OVERHIGH'M d.m.x」、屋号の闇雲さが何か象徴的。映画監督で雇はれ店長の和田黎明(重松)が、育成中の若手脚本家・奥野一平(東野)に書かせたホンをVer.Ka,Ver.Ka、もといバーカバーカ木端微塵に酷評するプチ修羅場に、上京して和田を訪ねて来た人妻・相澤か相沢真夏(希島)が闖入。映画を十年発表してゐない和田にとつて、目下の監督らしい仕事は精々地方で開催される映画祭の審査員くらゐ。その出先、戯れに和田からスマホを向けられ女優に口説かれた真夏が、何と家を出て来たものだつた。さうは、いへ。その場の軽口を真に受けた間抜けを、ただでさへ尊大な和田が相手する訳もなく。ぞんざいにあしらはれ激昂した真夏は、珍グダムのジャリタレ主人公なんぞより余程腹から出る見事な発声で、バカッ!と叩きつけ「d.m.x」を飛び出す。後述する一旦中略、橋の上にて一平と再会した真夏が、福本桃彦(酒井)が大将の居酒屋を経て、完全に酔ひ潰れた状態から目覚めるとそこは一平のアパートで、しかも―お乳首をチラ見せする―下着姿。フィクションの嘘を煌めかせそのまゝ居ついた真夏は、二人で和田の鼻を明かさんと一平の尻を叩く。
 「d.m.x」を飛び出したガチのマジで次のカットで、バットマンみたいなラバーマスクで「ワン」と鳴く奴隷男に真夏が引く。凄まじく唐突な木に接いだ竹には面喰ふのも通り越し、普通に度肝を抜かれた。上映素材がフィルムのプリントといふならまだしも、円盤なのによもやまさか飛んでゐるのではあるまいなとか本気で不安になつたぞ。気を取り直して配役残り、山岡竜生のゼロ役目が犬以下の犬もとい豚で、髪をアップにすると令和の早乙女宏美ぽく映らなくもない、七菜原ココが女王様の斎藤華香。マキシワンピとスクエアがエモい小田飛鳥は、一平が橋で待ち受ける中学からの同級生・新山由佳、実は杉原みさおと同じメソッド。小田飛鳥が裸仕事も辞さない御様子につき、ピンク本格参戦して呉れないものか。インティライミに肖つたのか直樹フェスティバルは、一平のバイト仲間・田辺謙司。カウンター下で和田に尺八を吹いてゐる、元カノ・井原未来(長谷川)の露を払ふ背中しか拝ませないロン毛男は、多分能登谷健二。この御仁が一番最初に組んでゐたか入つてゐた、バンドに辿り着けない。過剰気味の前髪が絶妙にオタクみ漂はせる安藤ヒロキオが、真夏捜しに奔走する夫・高志。高志が最初に「d.m.x」の敷居を跨ぐ折、カウンターにもう一人ゐるのは末永賢。改名したのか何となく併用してゐるのか、凜子と名義が二つあるのが紛らはしい森川凛子以下四名は、SMクラブに劣るとも勝らない壮絶なノーモーションで真夏が参加する、スピリチュアルに片足突つ込んだ劇団「キズナアヤトリ」のワークショップ要員。但し、七菜原ココ込みでもなほ頭数の方が一人多い。逆からいふと名前が一人分足らないのは、この際解けなくとて別に困らないミステリー。あと山岡竜生が、キズナアヤトリ主宰。
 驚愕の電車痴漢トリプルクロスを構築した、当サイト選城定秀夫最高傑作「痴漢電車 マン淫夢ごこち」(2016)。工藤雅典の大蔵第三作にして、実に十二年ぶりともなる久々の白星「人妻の湿地帯 舌先に乱されて」(2020/橘満八と共同脚本)。ピンク三戦目の希島あいりを主演に据ゑた、髙原秀和大蔵第五作。しかし最早ヤケクソなのか、とかく昨今、キマッた公開題が散見されるやうに思へて仕方ないのは気の所為か。二人きりトゥナイト、グルッと一周したカッコよさはあるけどさ。
 魔法使ひ昇格を目前に控へた童貞男の部屋に、スレンダーでクッソ美人な人妻が転がり込んで来る。ナベならば脇目もふらず全身全霊を注ぎ込み、好調時の加藤義一でも猛然と突つ込んで来るであらうエクストリームなファンタジー。に、潔く全てを賭ける賢慮を、髙原秀和に望むべくもなく。不用意に色目を使つた各々のドラマに尺を割く、以前に男主役たる筈の東野良平が―無駄に鈍重な割に―甚だ突進力に欠き、本丸の―筈の―エモーションは逆の意味で力強く心許ない。こゝの変貌ぶりは確かに素晴らしい、姿形を変へ要は二番手が二度飛び込んで来る、件の舞台がSMクラブと演劇ワークショップ。何れも結構突飛なシチュエーションであるにも関らず、殊に最初の女王様パートの導入、といふか突入は本当に衝撃的であつた。その、都合二回火を噴く暴力的に無造作な繋ぎを除くと、在り来りな焦燥に端を発する、気紛れな自分探しのアバンチュールに繰り出した人妻が、適当に羽目を外したのち臆面もなく家に戻る。屁より薄く他愛ない、もしくは女優と童貞を強迫的に連呼する痛々しい物語は石川欣が復活した怪我の功名―怪我なのか―で、腹は立たない程度に途方もなく面白くはない。東野良平と重松隆志に、忘れてならない山岡竜生。安藤ヒロキオ以外根本的に場数不足の絡み素人が介錯役に居並ぶ、大根男優部に後ろから撃たれる裸映画も、如何ともし難い女優部の持ち腐れ。といふか誰を連れて来るのも髙原秀和の勝手にせよ、最も肝要なシークエンスである以上演技―ないし艶技―指導くらゐ満足に施して欲しい、仕事しろよ。反面、明後日か一昨日で爆裂するインパクトがex.マギー直樹(マギー一門九番弟子/但しのちに一門系図から削除)といふ、異色の経歴を誇る逸材・直樹フェスティバル、の面構へ。出て来た瞬間目を疑つたのが、フェスティバル齢が若い―のと髪型がマッシュルームな―のを差ッ引くと荒木太郎とほぼ全く同じ顔。と、なると。逆に直樹フェスティバルが出演してゐる体で、荒木太郎を紛れ込ませる復権か復縁の奇策も十二分に画策可能。何なら直フェスの父子二役を騙り、父親役はシレッと荒木太郎。関係の拗れたサラブレッドでなく、あくまで直樹フェスティバルですといふ形にしておけば、ある意味大蔵の体面も保たれる。そもそも、梯子を外した方が悪いにさうゐないのだが。兎も角当然ゆくゆくは、直樹フェスティバル第一回監督作品。本物フェスティバルに対しては、今上御大経由で兄弟子の青木和彦を連れて来て説得して貰はう。

 頑なに中途で端折り続ける中、締めの濡れ場をも遂に挿入、しこそすれ。筆下しの一平が、終に射精には至れず仕舞ひに終るギッリギリの未遂は、真夏の犯した不貞を薄皮一枚軽くする、それはそれとしてそれなりの論理性、あるいは自堕落な免罪符と解したい。に、してもだな。肥大した体躯でモッソモソ不格好に蠢くしか能のない、東野良平の絡みがどうしやうもなく酷くて見てゐられない。つ、いでに。和田黎明の、傲岸不遜な造形が鼻につくばかりでてんでサマにならない重松隆志も、そこは大人しくなかみつせいじの役なやうな気は否めず。


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 「女体サーカス奇譚 囚はれの乳姫」(1992/受審:新東宝ビデオ株式会社、の筈/監督:浜野佐知、の筈/出演:立花未沙・栗原良・平本一穂・杉本まこと)。
 檻の中に、黒パンティと首輪しか身に着けてゐない立花未沙が、鎖に繋がれ寝てゐる。物語らしき物語こそないものの、設定は明確。団長(栗原)と調教師(平本)から主にも何も、全力性的なトレーニングを受け倒す踊り子(立花)を、本格的にメイクしたピエロ(杉本)が心配さうに見守る。通して見終つたのち気づいたのが、よほど口跡に難があるのか嬌声以外、踊り子には一言の台詞も与へられない。いはゆる衝撃のといへば確かに衝撃的な、ラストから逆算した案外論理的な造形であるのかも知れないけれど。
 パケには“変則体位”に“変形結合”、“サーカスFUCK”といつた仰々しい惹句、のみならず。危険行為を真似ぬやう厳禁する注意書きまで躍る、割に。実際行はれるアクロバットといへば、リスクを負ふのは棹、即ち急所を鉄に触れさせる、寧ろ男の方にも思へて仕方のない鉄格子越しの尺八なり後背位なり、体の柔らかさを活かした大開脚程度と虚仮威しぶりのなかなか清々しい一作。立花未沙は八月八日のARZON発売日とjmdb封切日との比較で、五ヶ月弱先行する新田栄の「痴漢と覗き」第九作、「痴漢と覗き ‐下着マニア‐」(1992/脚本:亀井よし子)にも主演。二三番手で何処かに紛れ込んでゐる可能性も否み難いが、現状、確認能はず。
 実は至つて直球勝負に徹するプレイの間隙を縫ひ執拗に挿入される、多分旧旦々舎の庭を原野に模した、低い視点で草木の間を駆けるショット。男優部と絡んでゐなければ基本檻の中で寝てゐる踊り子に、ピエロが忘れぬやう思ひだすやう再三再四促す故郷“ふるさと”。もしかすると何某かの元ネタでもあるのか、踊り子が文字通り獣性を取り戻す、木にバオバブを接ぐオチは流石に読めなかつた、普通に接ぎ木してんぢやねえか。といふか、動物スチールのインサートで事済ます安普請は仕方もないにせよ、些か判り辛い食肉目の足跡は、くどいくらゐ顕示的であつても罰は当たらなかつたのではなからうか。切れ味鋭いのか、鋭すぎて切られてゐるのに気づかないのかは兎も角、弾力感に富んだ乳尻が頗る魅惑的な、立花未沙を実直に嬲るストロングスタイルの濡れ場以外の見所といへば、正直お芝居もしくは目力の全く伴はない立花未沙の起動、ないし回帰に対し、馬鹿馬鹿しいズーム込みで栗原良と平本一穂が戯画的に慄く、微笑ましいオーバーアクト。と、本来踊り子的には本分でもある、カットを跨ぐや否やズンドコ意表を突く、劇的ではないが激越にチャチい激安劇伴を鳴らした上で、適当に煽情的な扮装で立花未沙が踊るシークエンスに於いての、プリミティブか無造作なエロチシズム。反面、耳を塞ぎ難い最大のアキレス腱は、物音をガッチャガチャ拾ふどころか演者の台詞さへバッキバキに割れる、ぼろぼろの録音はもう少し―でなく―どうにかならなかつたものか。


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 「おマタせ!ピザ宅配 特注!スペルマトッピング」(1992/受審:新東宝ビデオ株式会社/監督:浜野佐知、の筈/出演:柴田はるか・栗原良・平本一穂)。
 間違つても美味しさうには見えないピザをカメラが舐め、往来をラッキーピザの配達員(柴田)が、小走りで配達する無造作か原初的なファンタジー。斯くも呑気なピザ屋見たことない、昭和の出前でもチャリンコに岡持ちくらゐ積むぞ。さて措き配達員の固有名詞は劇中呼称されないゆゑ、便宜上、以下ハーセルフの仮名で通す。はるかがミニスカで歩道橋を上がるロー・アングルと、案外斬新なのかも知れないピザの女体盛り、尺八を吹く様をピザの画とのカットバックで連ね、最後は改めてピザにタイトル・イン。タイトルも入れるのに、ピザをもう少し、旨さうに撮れないのかといふ釈然としなさは正直否めない。
 兎も角はるかが辿り着いた配達先が、並のAV部ではまづ撮らせて貰へまい、よもやまさかの東映化学(a.k.a.東映ラボ・テック)。但し、玄関左手の受付は無人。なる状況を、休日出勤した人が云々、はるかの滔々とした説明台詞で語らせる。ピザが不味さうなアバンに続き、てんで技巧を凝らさない導入にも苦笑―と疑問―を禁じ得ない。これ、山﨑邦紀の脚本なのかな。はるかがイマジンする、雷を落とすノーブロック店長役が覚えのない顔だが、もしかして森田一人?位置情報の詳細を頭に入れて来なかつた、はるかが勝手に中に入つて注文主である山田を捜してゐると、思ひきりカジュアルな管理人(栗原良/a.k.a.リョウ/a.k.a.ジョージ川崎/a.k.a.相原涼二)に呼び止められる。配役残り、一段落して登場する山田は平本一穂。東化の四階が、社員寮になつてゐるとかいふワンダーな設定。だからこれ、山﨑邦紀の脚本なのかな、如何せん逐一短絡的か即物的にすぎる気もしなくはない。
 手前味噌で恐縮だがjmdbのデータを別館が凌駕する、確定分だけで浜野佐知1992年第六作「《秘》性感逆ソープ」を皮切りに、同じく浜野佐知の1993年第八作「お姉さんのONANIE」(主演:国見真菜)と、今度は珠瑠美1994年第四作「過激!!同性愛撫 蜜の舌」。更に矢張り珠瑠美の1995年、第一作「痴漢電車 長襦袢を狙へ!」(主演:神代弓子《イブ》)・第二作「出張ONANIE 女課長の携帯バイブ」(主演:赤木佐智=赤木佐知)、そして第三作「人妻痴漢体験-まさぐる-」と、地味に驚愕のジェット・ストリーム・三作連続出演。何気に息も長く、最低六本はピンクに出てゐる―そのうち半分で主演―柴田はるかを擁したアダルトビデオ。なるほど没個性的なルックスが印象こそ薄い反面、口跡はまあまあ手堅い。底の抜けた、台詞しか宛がはれてゐない割に。ちなみに今作、アダルトビデオ通販サイトのARZONによると、発売日は92年の五月二十三日とされる。
 何れも実際に絡みが撮影されるのは旧旦々舎の、管理人はデリバリーを装つた窃盗事件、を口実にしての身体検査。山田も山田で、注文後三十分の制限時間をオーバーした埋め合はせに、「君の―オッ―パイも一緒に食べさせて」。創造性でチンコが勃つのかと開き直らんばかりの、各々清々しく類型的な方便ではるかに手をつける。女の主体性なんぞ正しく何処吹く風、管理人と山田にはるかが体よくヤラれた上、実はハゲ店長がはるかを売つてゐた無体でもあれ、人を食つたか小馬鹿にしたやうな他愛ないオチで締め括る。寧ろ、ミニマムな展開で首の皮一枚物語の体裁を整へると、平素のマシーンもといレイジ・アゲインスト・ザ・マンは一旦棚になほして、直情的な絡みをただひたすら直線的に叩き込み続ける。商業的な実用性に全てを賭けた、それはそれとして誠実な一作。AVにもAVなりの流儀があるのか、オノマトペを多用するほか、まるで脱力しきつた久須美欽一の如くへべれけに惰弱な貌を覗かせる。ピンクで見た覚えのない、栗原良初見のメソッドもそれはそれとして新鮮。単に、忘れてゐたに過ぎなくとも。柴田はるかの裸以外で最も琴線に触れたのが、はるかが山田も抜いた二段落ついたところで、白ブリーフ一丁の管理人が山田の部屋に、堂々とか極々平然と入つて来ては開口一番「君はピザの配達だけでなくて他に何を配達してゐるんだ?」。ど、どわはははは!他人の居住空間に下着一枚で現れる時点で既に大概な狼藉をも、栗原良の漲らせる徒な重厚感で頑丈か無理から固定。よしんば明後日か一昨日なシークエンスであつたとて、形にしてのける強靭な役者力に震へる。それにつ、けても。幾ら何でも底の抜けるどころか、尻子玉を抜く勢ひの超絶下らない言ひ草は、流石に山﨑邦紀の筆によるラインとは思ひ難い。これが、たとへば岡輝男辺りであつたなら逆に全くしつくり来るものの、当時の旦々舎と岡輝男に接点があつたのか、といふ以前に。目下確認可能な岡輝男のキャリアは、そもそも翌1993年以降である。


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 「たわゝなときめき あなたの人生変はるかも」(2021/制作:不写之射プロ/提供:オーピー映画/脚本・編集・VFX・監督:古澤健/撮影:山田達也/照明:玉川直人/録音:臼井勝/音響:川口陽一/音楽:宇波拓/ヘアメイク:堀たえこ/スチール:平野敬子/助監督:島崎真人・菊嶌稔章/撮影助手:髙嶋正人・及川玲音/制作協力:中里友樹/美術協力:國領正雄/協力:金魚事務所・株式会社バイハート・クリッパーエンターテイメント株式会社・日本照明株式会社・サボロッカ・123RF・國領正行・梅宮不動産・佐川絹子/仕上げ:東映ラボ・テック/出演:松本菜奈実・あけみみう・山科圭太・川瀬陽太・千浦僚・並木塔子)。多分、千浦僚は「姉妹 淫乱な密戯」(2006/監督:榎本敏郎/脚本:井土紀州/主演:麻田真夕)以来十四年ぶり二本目のピンクで、だとした場合の偶さか、またしても川瀬陽太と共演してゐるのは地味ながら激高難易度の大奇縁。
 星の海のCGに、今時のシティポップ的な感覚を狙つたのか好意的に捉へるならファンシーな、直截にいへば屁みたいな書体で気の抜けるタイトル・イン。結論を先走ると映画全体の非力を、象徴してゐなくもない、先走るにもほどがある。
 ワイプのバストショットで、下着姿の三留綾(松本)が登場。ライターはライターでも、風俗以外に手広く守備範囲を広げてゐる。とかいふ近況と、尊敬する友人である―自主―映画監督・篠原カレンの身に起こつた、不可思議な事件を述べる旨主旨を開陳するのが、タイトルを通り過ぎてゐるにせよ、背景は依然銀河のまゝの実質アバン。カレンもカレンで、風俗からは足を洗つた模様。目下何で食つてゐるのかは、等閑視される以上知らん。
 専ら天候に恵まれない小雨の中、公園に急いだカレン(あけみ)は幼馴染で、メキシコから帰国した商業映画監督・須藤優作(山科)と再会。カット跨いで早速パツイチキメた事後、ネットに上がつてゐる監督作にプロデューサーが興味を示してゐると、須藤はカレンをメキシコに誘ふ。
 配役残り、川瀬陽太は篠原組で綾含め三人で活動をともにする、現職全く不明の田中一郎。続けてゐるかも知れないが以前は、零細出版社「破瓜出版」の編集者。後述する前々作に、さういふ描写はなかつたやうにうろ覚える―母親(加藤ツバキ)のセフレではあつた―がカレンの元カレ、かつ綾の元セフレと須藤に対して紹介される。千浦僚は、篠原組が撮影現場に調達した空家の一軒家、の隣のアパートから出て来る如何にも訳アリ風情の禿にして、正体は東西荻市市会議員の三浦徹。並木塔子が、その部屋の住人・倉科千代子。千代子のアパートと隣のロケ家は前作「怪談 回春荘 こんな私に入居して」(2020/主演:石川雄也)舞台の回春荘と、大家(矢張り加藤ツバキ)宅と同じ物件。を、取り扱つてゐるのが梅宮不動産(福島県郡山市)なのかしら。
 以前は確かレッスン・プロをしてゐた筈が、今は無職らしい古澤健のピンク映画第三作は、第一作「たわゝな気持ち 全部やつちやはう」(2019)の正統続篇。四ヶ月先行してOPP+の「たわゝなときめき」―十分長い―がフェス公開されてゐるゆゑ、実際には2020年制作にあたる。
 「たわゝな気持ち」に於いて、カレンが綾をモラハラ同棲相手(古澤健)の軛から―何時の間にかか何となく―解放した構図を綺麗に引つ繰り返し、今回は綾がカレンをマウント彼氏の縛めから解く。どうせピンク映画版、あるいは本末転倒ver.では端折られてゐる件―“ポゼ”の木に竹を接ぎぶりも?―があちこちあるのか、タワキモに劣るとも勝らず、カレンが吹つ切れる過程は大いに心許なく、力強いエンパワメント映画として、心揺さぶられることは限りなく全然に近く特にない。カレンが颯爽と千代子の映画を撮り始める、件では最大瞬間風速的な勢ひが出し抜けに弾けた、とはいへ。但し、古澤健が至らぬ役得で自作を木端微塵に爆砕しない分、腹を立てさせられはしなかつた。とも、行かないんだなー、これが。徒に分厚いたわゝ第一作と比べると殊更、前二作に比して頭数から明らかに萎んだ如実に脆弱な布陣にあつて、演出部と俳優部、何れが本職なのかよく判らない山科圭太は絡みを割と卒なくこなしつつ、今作の致命傷は映写技師上がりの、要は素人に過ぎない千浦僚。キッチンにて三浦が千代子を後ろから突きがてら、冷めたコーヒーをコーヒー牛乳に作り替へさせる。下手糞を下手に動かすどうしやうもない濡れ場には、あまりの酷さに滅多にない強度で愕然とした。脊髄で折り返して筆を荒げると、あのさ、こゝの後背立位の壮絶な腰遣ひ、木戸銭落とした客に見せ―られ―る代物かいな。企画段階からあれこれ介入するより、大蔵には買取拒否といふ最終最大の強権を本気で検討して欲しい。外様なら、何をやつても許されるだなどと思ふなよ。そもそも古澤健―の名前―に、然程の世間一般に対する訴求力があるのか否か疑問に思へて仕方ないのは、単に当サイトが料簡の狭さをひけらかしてゐるだけなのであらうか。買拒強権に話を戻すと、かといつて、平常にゴーを出した封切り、の前日。土壇場・オブ・土壇場に及んで盛大に梯子を外してみたり、あまつさへ一旦封切り後、今なほ理由すら一切開示しないまゝ謎封殺してのけるのは大蔵の度を越した、度し難い蛮行である。
 閑話、休題、明後日か一昨日にキリがない。前回不発に終つた、松本菜奈実とあけみみうの百合を遂に、しかも締めで咲かせ、はするものの。土台古澤健に要求したところで仕方のないハードルなのか、てれんてれん茶を濁すのが関の山。踏み込みは甚だ甘く、却つてフラストレーションがやきもき募る始末。寧ろ、傍観させた千代子を最初抜く画角の案外斬新な、豪快なVFXで最終的には大宇宙と同化する―ギターウルフみたいだ―綾と田中の対面座位こそが、クライマックスに相応しい大外連。壮大に抜いた底をも、松本菜奈実の偉大なる爆乳が堂々と支へきる。あと、“終らない現場”が実はあつたりもするのは、何気に狙ひ澄ました上で、川瀬陽太にサラッと撃ち抜かせるさりげない妙手。


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 「SUPER逆レイプ 令嬢男狩り」(1992/受審:新東宝ビデオ株式会社、の筈/監督:浜野佐知、の筈/出演:美崎優衣)。
 掴み処のない顔つきの美崎優衣が、ウエディングドレス姿で自らを漫然と乳繰る。暗転して、美崎優衣唯一人クレジット。新東宝テイストな虹色のラメに彩られた、オペラグローブとブラにパンティのみ身に着けた半裸と、とりあへず羽織つてみました的な和服。装ひを換へ適当に乳尻を繋げた上で、再び暗転してタイトル・イン。一応それなりの美人で、均整のとれた美しい肢体は十二分に悩ましい。口跡も決して壊滅的と匙を投げるほどでもない、ものの。微笑みを湛へるといふよりも、単なる薄ら半笑ひ。美崎優衣の凡そ確たる意思を感じさせない、表情がどうにも心許なくてモヤモヤする、性的ではない意味で。
 旧旦々舎和室、和装で花を生ける多分苗字も美崎の優衣(ハーセルフ)に、執事の羽生(平賀勘一)が「もう間もなくですね」。ドラマらしいドラマ―と脚本―の存在に、何となくホッとする。両親を航空機事故で喪ひ五年、当時高校生であつた優衣は、結婚を間近に控へてゐた。優衣と羽生のマッタリした幸福感に水を差すが如く、美崎家の書生(平本一穂)が血相を変へ飛び込んで来る。優衣の祝言に愕然とする平一の脳裏に浮かぶ、座椅子に扮した平一と優衣お嬢様の一戦は、果たして想起した回想なのか、それとも蒸し返した妄想に過ぎないのか。
 クレジット的に全員等閑視される男衆残り、華麗なる第一声が「結婚するつて本当ですか!?」。鮮やかなダ・カーポ感を爆裂させ矢張り飛び込んで来る杉本まことが、平一先輩格の書生・大野。平一同様愕然とする大野いはく、優衣に対し「僕達はどうなるんですか!?」。
 “女はヤサシイだけぢやない!”、“女はヤラセルだけぢやない!!”―原文は珍かな―と、如何にも旦々舎らしい惹句のパケに躍る一作。今後、小屋にて対峙する初見の旧作ないし、新規配信に二番手以降で出て来れば別だが、美崎優衣に、ピンクの出演作はザッと探してみたところ見当たらない。
 平一と大野―は机―が家具であるのに対し、羽生の場合は馬、の役割を交互にスイッチ。執事ならび二人の書生、天涯孤独の令嬢と、屋敷に暮らす男達との情事がひたすらに連ねられる。羽生の口からは“女王様”の呼称が明確に聞こえつつ、“SUPER逆レイプ”とか煽情的に謳ふほど苛烈なプレイが繰り出される訳でもなく、兎にも角にも最も尺が割かれるのは、尺を吹く時間であつたりもする。端から浜野佐知の苛烈な女性主義を担はせるには主演女優が甚だ覚束ない中、さりとていざ絡みとなると美崎優衣の足も漸く地に着き、安定した男優部に品のないメソッドで興を殺がれるでなく、安心して女の裸を楽しんでゐられる安定した一作。絶妙に判然としなくもなかつた、優衣が昼夜で様相を全く異ならせる虚実の別も、同室に四人全員揃つてゐるにも関らず、何故か羽生は参加しない締めの巴戦。白転大乱撃でザックザク雑に繋ぎ倒すエクストリームの果て、羽生が優衣の幸福を祈願する台詞で決着する。それも、兎も角。今回の収穫―かも知れないの―が濡れ場の最中平勘が洩らす、ピンクでは耳覚えのない喘ぎだか呻きを聞くにつけ、さうか、もしくはそれが、いはゆる本番撮影の証左なのであらうか。何れにせよ、甚大なモザイクに粗く塗り潰された向かう側、本番と疑似を見極めるメソッドを未だ当サイトは獲得してゐない。別に、然程ですらなく本気で希求してもゐないけれど。


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 「い・ん・び」(昭和62/製作:にっかつ撮影所/提供:にっかつ/監督:三河周/脚本:横倉晶郎/プロデューサー:半沢浩/企画:作田貴志/撮影:猪木猛/照明:大内成雄/美術:森田正信/編集:川島章正/録音:福島信雅/選曲:山川潔/色彩計測:猪本雅三/助監督:佐藤敏宏/映像技術:pavic/現像:IMAGICA/製作担当:渡辺康治/出演:小川真実・星ひとみ・麻未ゆうか・加賀恵子・丸山秀也・ミッキー柳井・田中健一・中野千秋・倉岡恭平)。さあて、早速大変だ。監督の三河周以下、脚本の横倉晶郎と撮影の猪木猛に照明も大内成雄、あと美術の森田正信が、それぞれ藤浦敦・斉藤猛・野田悌男・内田勝成・内田欣哉の変名。どいつもこいつも、そんなに後ろめたいのか。気持ちの、酌めなくもないけれど。更に出演者中丸山秀也と、田中健一・中野千秋は本篇クレジットのみ。代りに、ポスターには長沢修二とかいふ正体不明の名前が載る。収拾つかない、ドンキでももう少し整頓されてるぞ。
 黒バックに嬌声鳴らして、開巻五秒でチャッチャとタイトル・イン。弁護士の菊池森男(倉岡)と、婚約者・小橋由香(星)のラブホテルでの婚前交渉。倉岡恭平が清々しく法律家には映らないのと同時に、広大な額と一度瞼を開いたが最後、常時目をヒン剝いてゐる二番手のルックスも大いに難あり。そして、よしんば諸々勝手の違ふ撮影に足を引かれたにせよ、藤浦敦が斯くも下手だつたとは認識に遠い、体位の移動がとかくへべれけか落ち着きのない散々な絡み初戦を、タイミングの問題なのかカットを雑に飛ばした顔射で兎に角フィニッシュ。結局、そのぞんざいさが初戦に限らないのはひとまづ兎も角、擦り硝子に紙を貼つゝけただけの「菊池法律事務所」。秘書兼男女の仲にもある、桜庭道子(小川)の誘ひを菊池が断つた画期的なタイミングで、由香が事務所を来訪。藪から棒にフィアンセを紹介された、道子は狐につまゝれる。
 配役残り、事務所に菊池を訪ねる多分顧客が、この時何があつたのかギブスで右腕を吊つてゐる藤浦敦。出し抜けな別れ当日、道子が一人酒を呷る、バーに十余名のノンクレ部隊が投入。そのうち、ボックス席にてハプニング感覚でディープキスを交すカップルの、女が井上真愉見ぽく見えたのは気の所為かしら。後述する加賀恵子の相続財産である筈なのに、菊池が何故か自由気儘に管理してゐる億ションの一室。道子を伴つた菊池と、エレベーターの乗降口で擦れ違ふ初老の男は不明。よもや、純然たる単なるその場に居合はせた御仁ではなからうな。丸山秀也は、億ションにて菊池が道子を“接待”するかに思はせ、湯を浴びて来た道子を待ち受ける、菊池とタメの関係なのが謎の凡そ堅気らしからぬ男・フジカワ、中野千秋はフジカワの連れ・南。こゝで、「中沢慶子 ザ・昂奮」(昭和63/監督:小路谷秀樹/脚本:山中秀男/主演:中沢慶子)を既に通つてゐるにも関らず、どうして気づかなかつたのか己の不明を恥ぢるほかないが、中野千秋は南城千秋と同一人物。南城千秋での活動が確認出来るのは1989年以降につき、恐らくex.中野千秋で南城千秋(a.k.a.南条千秋)となる格好。ついでに目下、今作を遡る中野千秋出演作はザッと探したところ見当たらない。改めて加賀恵子は、何でか知らんけど菊池に優位を握られる未亡人、木に竹も接がない濡れ場要員。億ションの所有権なんて、別にどうでもいゝ。中盤、一切の意図も動機づけも脈略その他何もかも華麗か豪快にスッ飛ばし、道子は億ション―と称した劇中要はヤリ部屋―を内覧させた、男々を食ふ。田中健一が内覧氏の比較的ジェントルな方で、ミッキー柳井は徒にバイオレントな方。蹴倒すは放り投げるは、ミッキー柳井が道子を乱雑に扱ふ都度、一々入るチープな音効もどうしたものか。別に、全部安くしなくて困らないんだよ。同居人の存在は特に描かれず、一人で住んでゐるとしたら不可思議な麻未ゆうかは、洩れ聞こえる嬌声にマントルを営業してゐるものと勘違ひ、道子に接触を図る億ション隣人・森下。
 近年新事実の明かされた「落陽」(1992)を等閑視した場合、二ヶ月前の「痴漢サギ師 まさぐる指先」(脚本:池田正一/主演:高樹陽子)が一旦のラストかと思ひきや。改名して茶を濁した、といふか変名祭りで泥水状態のロマンXXがあつたとは。寡聞にして知らなかつた藤浦敦シン・暫定最終作、最早何が真実なのかよく判らない。返す刀で、堀内靖博のロマポ最終第五作「制服くづし」(脚本:藤長野火子/主演:岬まどか)を、最初で最後一本きりのロマンXXと思ひ込んでゐた、浅学を極めた当サイトの粗忽な早とちりも崩れる、極めるな。ロマンXXの最初で最後は確かにさうなのだが、同日に封切られた二本きりとなる。
 心新たにダブルエックスそのものに関しても振り返つておくと、新興するアダルトビデオの大攻勢を受け起死回生を図つた苦肉の策、あるいは矢尽き刀折れた断末魔。ビデオ撮り・本番撮影といふまんま相手の土俵で討つて出た「ロマンX」、並びに上級の―つもりの―「ロマンXX」レーベルについて。公式サイトに文面が掲載されてゐる当時のプレスを大雑把に意訳すると、映像の過激さに偏重した結果、本義である筈の映画が疎かとなつてしまつたエックスの反省を踏まへ、更にエクストリームな性的描写を、映画的興奮と両立させた上で表出せんと目論んだのがダブルエックス。とかいふ、二兎を追ふどころかまるで火に油を注ぐことしか考へてゐない、蹴躓いたのが切り株ですらなく、地雷であつたかのやうな爆死必至のコンセプト。死人を鞭打つにもほどがある、慈しみといふ言葉を知らんのか。
 道子が菊池をヤリ部屋に呼び、待機させてゐた森下に捕食させる。そこに続けてフジカワも招き入れ、最後に由香を誘き寄せ大乱交に突入するクライマックスの構成は、案外普通によく出来てゐる。フジカワと森下に制圧されたかに思へた由香が、実は完全に沈黙してはをらず、昔の女と新しい逆玉がヤリチン弁護士を<共有するに至る>、女性上位のパンチラインは突かれた不意も含めそれなりに鮮烈。さうは、いふてもだな。バツ印、もとい“X”の数が一個でも二個でも素人目にはてんで見分けがつかない、ロマネスク・シリーズ(適当な仮称)の本質的な欠陥に、今回この期の間際に及んで漸く到達。とうに、既出の周知にさうゐなくとも。それは何ぞやといふと壮絶なキネコ画質と、そこまでAVに寄せる必要も端からない、80年代を結晶化させた趣すら漂ふ、何処までもダサく途方もなく適当なゴミ劇伴、以前に。そもそも、所詮は画面を覆ひ尽くす巨大なモザイクに有難味の有無から甚だ疑はしい、本番撮影の限りなく逆刃に近い諸刃の剣で一見顕著な男優部の影に隠れ結構女優部も、即ち俳優部が総じて絶望的に弱くなる、壊滅的に酷くなる。お芝居の得手不得手どころか、素立ちさせた状態に於ける面相すら覚束ない始末。倉岡恭平に劣るとも勝らず、丸山秀也もミッキー柳井も、よくいつてAV男優くらゐにしか見えないルーズな画の貧しさは如何ともし難い。寧ろ布地の面積の方がより小さい、さういふ網の如く穴だらけの布陣では歴戦の藤浦敦を以てしても、流石に映画として成立し得てゐまい。

 オーラス、エンドマークを従へる形でタイトルが再度入るのが、斬新といへば斬新。


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 「巨乳拷問 人犬獣倫」(1991/受審:新東宝ビデオ株式会社、の筈/監督:浜野佐知、の筈/出演:真理子・仁村ひとし・吉田正浩)。エンドマークは“FIN”で、薮中劇伴も多用される。
 中折れと広大な面積のウェリントンに、赤いタイを巻いた黒シャツ。全てのアイテムが逆の意味で見事に似合つてゐない、壮絶なスタイリングの主演女優―助演女優がゐるのかといふ話ではある―が、今でいふドヤ顔で廊下を闊歩する。右手の鞭を振り上げた、ストップモーションに真理子とクレジットを入れられ、たところで。三十年以上昔のAV部がノー苗字の真理子だけでは、余程一世を風靡でもして呉れてゐない限り、正直この期に外堀の埋めやうもない。対照的に顔射を浴びたしほらしいアップ挿んで、真理子が二人の男優部に犬の如く引かれるのを尻側から捉へる。改めての、顔射アップが暗転ならぬハレーション転してタイトル・イン。網タイツ越しのオッパイを―サブ―タイトルバックに、“秩序ある生活”。真理子御主人様が、犬男(吉田)と豚男(仁村)を家畜として飼ふ関係性を提示。犬男に持つて来させた、ジョイトイで真理子がワンマンショーに耽る“家畜たちの奉仕”と適当に続いての、“家畜たちの叛乱”。何れかを選ぶやう御主人様に懇願したところ、一笑に付されたのに男優部激おこ。逆上し二人がかりで犯す際、犬男の「女の体はヤラれて感じるやうに出来てるんだよ!」なる台詞には、浜野佐知が全体どんな顔で撮つてゐたものやら、苦笑がてら軽く首を傾げさせられる。
 以降、尺八を吹かせる“女王様の舐め奉仕”。卵を用ゐての所謂WAMを展開する“全身卵黄パック”と、何処に作家の痕跡を望めばよいのか困惑も否み難い、即物的なプレイの数々が漫然と進行。“焦熱の菊座”で熱ロウ責めとアナル×尺八の二穴責めを、しかも豚男と犬男が交互の二連撃。といふエクストリームをも一旦繰り出しつつ、続く次章が“肉壁ワイン洗浄”。割と劇的にパワーダウンもしくはチルアウトしてのける、頓珍漢な構成には祝賀でなく、降伏の意で万歳、それはホールドアップといふ奴だ。そし、て。賽の河原感覚で女体に氷を盛る、“凍える花びら”パートをまるで一時停止感覚で豪快にブッた切り“調教済の女王様”に突入する、凄まじくぞんざいな繋ぎが今作のハイライト、明後日か一昨日にもほどがある。こゝでは真理子が口内に出された精液を、犬男即ち芳正には口移しで返す。最終章が“ある予感”、つげ忠男―次兄が義春―の『ある予感』は昭和61年につき、もしかするとフィーチャーしてゐたのかも知れない。投げ寄越されたウインナーを床で食べた真理子の、何某かが目覚めた気配を感じさせる確かに強い眼差しと、戦慄する犬男と豚男を各々―間抜けな―ズームで抜いた上で、尻は捲られた四つん這ひのチャイナドレスで真理子が不敵に笑ふ姿を最後のカットに暗転、俳優部のみのクレジット起動。豚男と犬男がそれぞれ曰く、「女は矢張り女さ」、「男が主人、女が奴隷」とする歪んだ世界観を再度ブチ壊す物語的な兆しを、一応最後の最後に感じさせはする。ものの、逐一邪魔臭い軽口を叩くのに、わざわざ声を裏返らせる仁村ひとし(=二村ヒトシ)の煩はしいメソッド、以前に。“巨乳拷問”をタイトルで劣情的もとい煽情的に謳ひながら、乳責めらしい乳責めが一向繰り広げられず仕舞ひに終るレス・ザン・画竜点睛、あるいは羊頭狗肉が最大のアキレス腱。


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 「エロ本DX 超お下劣!!練磨変態倶楽部」(1991/受審:新東宝ビデオ株式会社、の筈/監督:浜野佐知、の筈/出演:沢田未菜子・森下亜弥・早瀬理沙・島袋浩・花岡ジッタ)。男優部のクレジットがあるだけ、まだマシなのかも知れない極北感。といふか映像作品に、演出部や撮影部のクレジットがつかない世界。つかなくとて、別に困らない世界に軽く慄く。尤も、受審の新東宝ビデオ株式会社クレジットの有無に関しては、単なる配信に際しての切り具合に過ぎないのかも知れない。あと、何故かといつては語弊もあるが、VHSのパケでは沢田未菜子と早瀬理沙のビリングが入れ替つてゐる、のが何気に理解に難い。
 パイズリを施す沢田未菜子と、ローションを大量に使用しての巴戦を戦ふ森下亜弥に、バイブでワンマンショーする早瀬理沙。クレジットで区切る女優部のハイライトを並べた上、わざわざ“IN”を挿む小癪さはこの際さて措き、これ実は唇?何処なのかよく判らない、人体の極接写にタイトル・イン。物語の予感を一欠片たりとて覗かせるですらなく、淡々と吹き荒ぶ純粋な即物性に震へる。
 “巻頭特集[パイズリ・女上位]”とか、プレイの概要を副題として入れてみせるのはエロ本風味、一々入れてこそのエロ本風味。必要不可欠にして唯一無二、絶対のコンセプト。そこに神が宿るのか否かは知らないし、「見れば判るよ」だなんて、潤ひを欠いたツッコミを脊髄で折り返すのは野暮といふ奴にさうゐない。さうは、いへ。続くパートが“[パイズリ・座位]”といふのに首を傾げてゐると、要は単に男が座つてゐるだけ。更にその次の“[パイズリ・正常位]”に至つては、当然女が下に寝てゐるだけ。木に竹も接ぎ損なふ間抜けなサブタイトルには腰も砕けつつ、沢田未菜子が確かに棹を挟み込み得るポロンポロンのお胸のみならず、御々尻も素晴らしい。表情は・・・まあ、割と覚束ないけれど。正直、ピンクに出てゐないと途端に手も足も出なくなる男優部に関しては、エンド・クレジットが拾つて呉れて助かつた、普通拾ふがな。
 旧旦々舎は世田谷区(経堂三丁目)につき、練馬の所以が謎な純然たるアダルトビデオ。二番手の森下亜弥は浜野佐知1991年薔薇族込みの最終十一作「ザ・虐待 奴隷秘書」(脚本:山崎邦紀)に、早瀬理沙は同じく第二作「痴漢電車 無理やり奥まで」(同)にそれぞれ主演してゐる。
 端的に日程ないし拘束の問題か、百合をも咲かせる森下亜弥と早瀬理沙に対し、沢田未菜子は完全に退場する後半。“Hな「モノ」語り[タマゴ]”と火蓋を切る、まづ普通に服を着た早瀬理沙がTVショッピング感覚でジョイトイ―パケに於ける扱ひは“各種変形小型器具”―を紹介、その後実際に使用してみる。次々都合四品採り上げる件の素頓狂な可笑しさが、精々関の山、にも満たない関の丘。サブタイで仕切る強制操作で、全般的な構成をとりあへず整へはするものの、結局一摘みの挿話さへ終に起動するでなく。半ば動物的なプレイの数々が、漫然と連ねられるに終始する始終は面白くない以前に詰まらなくもない。さうなると、せめてもの救ひは女優部、最後の砦は女の裸、と行きたいところが。首から上も下も覚束ない三番手は兎も角、劇中唯一もしくは辛うじて女優の顔をしてゐる森下亜弥が、乳尻もパンチの効いたポイントゲッター。を、大人しく愛でてゐさせて呉れないのが、ひたすらに安く、兎にも角にも品のないポンコツ男優部。島袋浩がオッパイで挟んで貰ひ、花岡ジッタはハモニカを吹く[パイズリ3P]。花岡ジッタの鼻先であるにも関らず、島袋浩が自らの尻をピシャンピシャン誇示的に叩く、全く以て不要のメソッドが清々しく癪に障る。よしんば浜野佐知がAVを撮る時はAVなりの流儀に沿つたにせよ、二人が間断なく垂れ続ける下卑た無駄口含め、もう少し腐れ男優部に演技指導して欲しい。こんならの自己主張なんて要らねえよ三一、当サイト―の節穴―にはさういふ風にしか映らない。


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