真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「三十路の女 巨乳はじける」(2011/製作:Blue Forest Film/提供:オーピー映画/監督:竹洞哲也/脚本:小松公典・山口大輔/原題:『センチメンタル女子』/撮影監督:創優和/助監督:山口大輔/編集:有馬潜/録音:シネキャビン/監督助手:菊嶌稔章/撮影助手:丸山秀人・酒村多緒/音楽:與語一平/スチール:本田あきら/現像:東映ラボ・テック/協力:加藤映像工房・江尻大/出演:櫻井ゆうこ・倖田李梨・若林美保・津田篤・久保田泰也・岡田智宏・岩谷健司)。
 カーラジオからスローバラード、ではなく、録音なのか、ラジオ番組「ミッドナイト・クラシック」。車の中では矢尽き刀折れた風情の、「ミッドナイト・クラシック」DJの大谷加奈(櫻井)とディレクターの多摩田鉄也(岩谷)が作為的に韻を踏んだ遣り取りを経て、一応今将に事に及ばんとしてゐる。「どんな顔すればいい?」と、無表情の加奈が文字通り投げた台詞に合はせてタイトル・イン。タイトル明けると一転、手で腰を支へY字に倒立した加奈の姉・森井美雪(若林)の股間に据ゑた容器に、下方向に歳の離れた夫・順一(久保田)が酒を注ぐ。解釈を違へたワカメ酒から、懲りずに順一がスマホで調べた、開運体位とやらの四十八手の宝船―簡単にいふと斜め騎乗位―での夫婦生活。カット変り美雪と、加奈の友人・天屋渚(倖田)が、互ひに愚痴と嘆きを五時間コースでぶちまける旨携帯で通告しながら、ズンズンとした勢ひで加奈宅を目指す。先に仔細を整理しておくと、「ミッドナイト・クラシック」が打ち切られた加奈は郷里の山間の田舎町に引き込み、両親は既に没した実家なのか一人暮らしには不釣合ひな戸建の二階屋にて、貯へを頼りにマッタリしてゐた。話を戻して、美雪の愚痴の種は、順一が結婚生活に際して妻の個別的具体性への関心ではなく、単に“熟女”と一緒になつたことを平然と喜んでみせる思慮不足。他方渚の嘆きが、少々ややこしい。まづは、①東京に遊びに行つたところスカウトに声をかけられ、文字通り掻き捨てた旅の恥に一万円でオッパイを露出した写真を撮影した挙句に、それを無断でデリヘルのピンクチラシに使用される。②美雪に片想ひする、頭が弱く親からも徒名の“バカシ”と呼ばれた野宮孝(津田)が、行き先は月ではなく東京の農協旅行で美雪の恥づかしいチラシを発見、宝物と持ち帰る。③逆の意味で流石に“バカシ”の異名は伊達ではなく、孝は馬鹿なので落とした美雪のオッパイ写真が、あらうことか町内の掲示板に晒される、とかいふまどろこしい顛末。掲示板前、愕然とする美雪の左右でしげしげとお握りを頬張る二人組の内、向かつて左の小松公典は御馴染みとして、右の地味なイケメンが山口大輔なのか?一方、ディレクターの職を辞した多摩田は、死別した両親が仕方なく一人息子に継がせた孝の牧場に、加奈を追ひ駆け転がり込んでゐた。ここで再び小松公典は小町・ルダ・メイとして、劇中多摩田が度々聴くラジオのDJも担当。そんな最中、燻る妹を見かねた美雪は、役場観光課に勤める町のアイドル・木野直也(岡田)を加奈に引き合はせる。木野は元々、「ミッドナイト・クラシック」のリスナーであつた。
 竹洞哲也2011年第一作は、翼の折れたヒロインが男の粘り強い求愛と尽力とによつて再起する、しつとりとした大人の物語。と、簡単に掻い摘めばならうところ、ではあるのだが。最早これは小松公典の悪癖ともいふべきか、全篇隈なく芝居がかつた言葉遊びに戯れ倒したついでに、本来ならば横道の筈なのに不用意に充実してしまつた、本来ならば添へ物である筈の渚とバカシの恋路にも寄り切られ気味なのは否めない、本丸の強度は決して十全であるとはいひ難い。改めて気づいてみると、自身は微動だにせぬまゝに、あれも彼も向かうから随時自動的に運ばれて来る、加奈の甘やかされぶりに関しては大人の娯楽映画としては、斯様な自堕落に子供も騙されまいと世知辛さを拗らせた、反目に近い疑問も覚えぬではない。さうかう難癖をつけつつも、最終的に雌雄を正方向に決するのは、壮絶な純愛映画の大傑作「妖女伝説セイレーンXXX 魔性の悦楽」(2010/監督:芦塚慎太郎/脚本:港岳彦/主演:まりか・西本竜樹)中盤の猛加速を起動した戦績も記憶に鮮やかな、今回が初主演作となる櫻井ゆうこのアツさ。多摩田に対して、ラジオスター、にすらなれなかつた悲劇と孤独を振り絞る加奈の姿は、一撃必殺のエモーションを真正面から撃ち抜く。微笑を取り戻した着地点に於ける加奈の表情が、正直あまり魅力的なものではないのは、この際致し方ないと諦めてしまへ。加奈の、対木野戦ではメランコリックなギターが唸り、締めの多摩田戦では美しいピアノが戦ぐ力ある與語一平による劇伴も、大いに映画的な聴き処。しかも後者に際しては、一欠片の衒ひなくスローモーションに火を噴かせてみせる、思ひ切つたメガホンもといアクセルの踏み込み具合も素晴らしい。全般的な完成度でいへば然程でもないやうにも思へ、胸を強く押し込むサムシングを有した一作である。

 ここから先は、今作本体からは全く別個の事柄ではあるのは恐縮ながら、さりとて趣のある余談を。北九州市八幡は前田有楽劇場の、当該週三本立て残り二本の一本は、性的にも腐敗したテレビ局を舞台に看板女子アナが色んな方向に乱れる、佐々木乃武良の「女子アナ 盗撮下半身」(1999/主演:水原美々)の、2011年旧作改題版。即ち、ラジオの映画とテレビの映画を並べてみせた格好になる、何て洒落た番組なんだ。因みに残る一本は、残念ながら新聞や雑誌の映画ではなく、深町章の「ハイミス本番 艶やかな媚態」(1991/脚本:周知安=片岡脩二/主演:橋本杏子)の、旧題ママによる矢張り2011年新版。何れにせよ、三本立て三安打のラックに変りはない。


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 「ノーパン女子 股間開放」(1999『女子アナ 盗撮下半身』の2011年旧作改題版/製作:フィルムハウス/提供:Xces Film/脚本・監督:佐々木乃武良/企画:稲山悌二/プロデューサー:伍代俊介/撮影:佐藤文男/照明:小野弘文/編集:金子尚樹《フィルム・クラフト》/助監督:高田亮・奥渉/制作担当:真弓学/撮影助手:竹俣一/照明助手:藤塚正行・岩田義郎/ヘアメイク:パルティール/タイトル:道川昭/出演:水原美々・岡田謙一郎・佐倉萌・里見瑶子・山内健嗣・熊本輝生・久須美欽一)。
 全裸で左右に立ち、手と手を合はせる山内健嗣と水原美々。水原美々の「お願ひ、私を淫らにしてえ」といふ、出し抜けといふか直截には底の抜けた哀願から、ガバッと跳ね起きる様子を三方向から抜く野暮つたい夢オチに、夜の東京タワーの画を噛ませてタイトル・イン。爆裂するセットの安普請に関しては寛い態度でさて措き、KCテレビ―KCといふのは何の略だ?講談社コミックスでもあるまいし―の人気番組「NEWS21」の収録風景。アンカーマンの牛尾宗介(久須美)をも脇に従へるかのやうに、看板女子アナの岩井可奈江(水原)が凛とした風情でニュース原稿を読み上げる。一方、薄暗い部屋。可奈江の友人でOLの樋口芳美(里見)と同棲する、どうも仕事をしてゐるやうには見えない武田光彦(山内)が、スナック菓子をムシャ食ひしながら虚ろな表情で可奈江が映るテレビ画面を注視する。そこに帰宅した芳美と一戦交へつつ、光彦は可奈江の熱烈も通り越したファンであつた、ファンも通り越してゐるか。遮る机もなく少し高目の椅子に座つた状態で、どう見ても短過ぎるタイト・スカートから肉感的な太股も露に、可奈江の先輩女子アナ・八木沼淳子(佐倉)が担当する、「NEWS21」締めのコーナー「NEWS最終便」。所々で言葉も詰まらせながら、モジモジと不審な様子の淳子の股間には、スタジオの端から現場を見守る、プロデューサーの前田哲也(岡田)の手によりレーザーポインターの赤い光が秘かに当てられてゐた。淳子が駆け込んだ女子トイレに、追ふやうに前田も現れる。淳子のパンティの中には、リモコン式のピンク・ローターが仕込まれてゐた。すつかり前田の手に落ちた風情の淳子が、大胆にもその場で抱かれる衝撃的な痴態を、可奈江は目撃する。一方、アルバイトで風俗業界に足を踏み入れる、昼間は普通のOLを採り上げる特集を組まうとしたものの、上手く取材対象を見付けられなかつた「NEWS21」は、可奈江と親しい芳美をランパブ嬢役に仕込み、いはゆる“やらせ取材”を敢行することに。一行と共に芳美宅を訪れた可奈江は、今作中一歩も外に出ない光彦―芳美からは、親戚と紹介される―と、この時点ではさういふ方向に後々転んでみせるなどとはよもや思へなかつた、兎も角運命的な出会ひを果たす。
 配役残り熊本輝生は、ディレクターの剣城誠。主役級にカッコいい名前ではあるが、濡れ場の恩恵には与れず。可奈江・牛尾と四人で、OL風俗嬢特集の打ち合はせに参加するAD二人の内、キャップの方は奥渉。もう一人の坊主頭は時間差ともいへ先に登場するところをみるに、多分高田亮か。二人とも幾許かの台詞も与へられ、全くこなれた内トラぶりを披露する。もう少し見切れる収録スタッフは、実際の撮影部か。
 主演に、当時―の少し前まで―深夜テレビの大エロ・ニュース&天気予報コーナーで人気を博したローバー美々こと水原美々を擁し、しかもテーマは性的にも腐敗したテレビ局を舞台とする女子アナもの。といふダイレクト極まりない趣向で挑んだ、年末に封切られた佐々木乃武良1999年―第二作との間にVシネ五本挿んで ―最終第三作、即ち、2000年を迎へるに当たつてのエクセス正月決戦兵器といふ寸法になる。とはいへ、さういふ生物(なまもの)感については、既に鮮度を失してもゐるであらうことと、現在も活動を続けるローバー美々は、元々はAV女優であつた水原美々時代の仕事はどうやら概ね黙殺してゐさうな気配も鑑み、ここではこの際通り過ぎる。岡田謙一郎の傍らに、当然の如くやがて飛び込んで来るのは久須美欽一。二大巨頭とすら称へ得よう、重量級の好色漢の毒牙に何れ菖蒲か杜若、二人の美人女子アナが堕ちる物語は、本来ならばストレートなエロ映画として磐石の完成度を誇つて、ゐてもおかしくはなかつたところなのだが。企画自体の直球勝負の反面、別の意味で感動的に不可解なのが、中盤激しく火を噴く佐々木乃武良怒涛の謎作劇。正体不明の開巻を律儀に回収し、見ず知らずの男女が同じ淫夢を見るだなどと、展開がスピリチュアルに振れた瞬間には度肝を抜かれたが、結局その無茶苦茶な大技は純粋にその一幕限りで綺麗に遣り過ごされてしまひ、その後には本当に全く一切関らない破天荒には、逆の意味で更に驚かされた。無茶かつ無駄な大振りを仕出かす尺を使つて、テレビ局の虚飾でも掘り下げてゐた方が、余程劇中世界の順当な完成も図れたのではあるまいかといふ、平板な疑問は矢張り強い。演出部からの増援部隊まで含めた穴のない俳優部にも支へられ、裸映画として些かの遜色もなかつた筈なのに、伏線も敷設済みとはいへ藪から棒にやらかされ挙句に放り捨てられた大粗相に、却つて結実し得なかつた佐々木乃武良本意の残滓が、妙な濃度で感じられるやうでもある。腰から下の昂ぶりとは別に、何とも形容し難い正しく釈然としなさが、それはそれとして心に残るチャーミングな一作ではある。

 定番ネタと仮した感も漂ふが、旧題に見られる“盗撮”要素は作中に、特にも何も、気付くと吃驚させられるくらゐに一欠片たりとて存在しない。貫禄のエクセス仕事、ゴキゲンだぜ。


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 「背徳義母とふしだら娘 狂喜乱舞」(2003『疼く義母と娘 猫舌くらべ』の2011年旧作改題版/製作:フィルム・ハウス/提供:Xces Film/脚本・監督:山内大輔/企画:稲山悌二《エクセスフィルム》/プロデューサー:五代俊介/撮影:創優和/照明:野田友行/編集:金子尚樹/助監督:加藤義一/監督助手:今村昌平/撮影助手:山口大輔/照明助手:谷田守/スチール:本田あきら/音楽:はなちゃん/録音:シネキャビン/現像:東映ラボ・テック/制作:フィルムハウス/出演:立花りょう・林田ちなみ・ゆき・しらとまさひさ・岡田智宏・サーモン鮭山・野上正義)。出演者中、しらとまさひさがポスターでは漢字の白土勝功。プロデューサーの五代俊介といふのは、伍代の誤記か。
 リンプ・ビズキットのリミックス・アルバム、「ニュー・オールド・ソングス」(2001)のポスターが喧しく貼られた男の部屋。成瀬小百合(立花)と、彼氏・岩崎(岡田)の情事。事後「今日は家の用事があるの」と、小百合は岩崎宅を辞す。猫の鳴き声が添へられたタイトル・イン明け、狙つた唐突が綺麗に決まる、小百合の父・和弘(野上)突然の再婚宣言。実母の消息に関しては、一切触れられず。同時に紹介された和弘のお相手は、小百合と然程歳の変らぬ零二(しらと)も連れた、直截に“夜の蝶”スメルを爆裂させる華美な女・志津江(林田)。黙つて観てゐる分には流れに騙されかけつつ、実際に我が身に起こつた出来事だと思つてイマジンしてみると、再婚宣言までは兎も角既に家にゐる後妻with連れ子と即同居開始、などといふのは、また随分とぞんざいなシークエンスではある。和弘も和弘だ、とでもしか最早いひやうもないのだが、志津江が早速フル・スイングの嬌声を撒き散らす中、食傷気味に台所で発泡酒を開ける小百合に接触した、零二は出し抜けを畳みかける事実を打ち明ける。十五で夜の仕事を始め、男を取つ換へ引つ換へして来た志津江と、零二が実の親子関係にはなかつた。零二は何時かに志津江が関係を持つた男の息子で、志津江に引き取られる形になつて以来、零二は毎晩男々に抱かれる―正確には“義”―母の声を聞いて育つた。翌日、早速早速和弘の預金通帳と印鑑をくすね志津江は外出。一方、小百合は電話で親友の栞(ゆき/但し佐倉萌のアテレコ)と連絡を取る。結婚予定といふ栞の婚約者は、小百合も話だけならば知るクラブで捕まへたとかいふ学生ではなく、同僚とのこと。他方、岩崎の部屋には、何と志津江が。小百合と二股で岩崎は志津江の要は若いツバメで、真面目に求職してゐる気配も窺へないものの兎に角無職の岩崎に、志津江が貢ぐ状態にあつた。
 当然といふか何といふか、栞がクラブで捕まへた学生といふのも実は零二で、留守中に零二が自室でマスをかいてゐた粗忽に、こゝは掛け値なく臍を曲げ成瀬家を出る腹を固めた小百合は、ひとまづ転がり込んだ岩崎の部屋にて、志津江と額面通り衝撃的な対面を果たす。リアルに壊滅させられた撮影現場を、超人的な努力で立て直した前作にしてピンク映画第一作、「夢野まりあ 超・淫乱女の私性活」(2002/主演:夢野まりあ)に於いて秘かに発揮された山内大輔の強靭な構成力は、今作の箱庭のやうな劇中世間の狭さにも、然程どころか殆ど躓かせない。たゞし、正しく一転、義母に彼氏を寝取られたヒロインが、仕返し混じりに連れ子を寝取る。ハチャメチャな逆襲に転じるに至つては、二番手・三番手に残念ながら劣るとも勝らない―新田栄映画がしばしば仕出かす惨劇ほどではないにせよ―エクセスライクなビリング頭の決定力不足が、展開全体の求心力不足に直結するきらひは否めない。強ひていふならば、二作続けて山内大輔は主演女優に祟られた格好にもならうか。尤も、一旦抜けた底を力技で引き戻さん勢ひの、漂白する志津江と零二がまるで可哀相な風に描かれるちぐはぐなラストは、端的には木に竹を接ぎかねない筈なのに、妙な余韻を残す。となると、素直な説得力を有し得るのは少し戻つて、新しい妻と息子に二日で出て行かれた、和弘の呆然ばかり。因みに、三ヶ月後に封切られる、工藤雅典の「寝乱れ義母 夫の帰る前に…」(脚本:日下由子/主演:麻田真夕)が、ほゞ同様の着地点をトレースしてゐる、そこでは実息がしらとまさひさ。更に因みにそちらにも、ゆきは矢張り濡れ場要員として一枚噛む。清々しい量産ぶりが、今となつては麗しくさへなくもない。
 配役残りサーモン鮭山は、結婚後も男遊びを止めるつもりはなからう栞の、保険感覚のフィアンセ・小金井。待ち合はせた栞に、「オーイ」と駆け寄る間抜けなファースト・カットである意味華麗に登場するや、絡みの恩恵に与るでなく、二つ目にして最後の出番はロングで抜かれる、食事後に栞と歩くガード下。長身のゆきに巨漢のサーモン鮭山が綺麗に決めるベア・ハッグは、本筋とは感動的に関らない純然たる繋ぎの一幕ながら、無駄にもとい実に素敵なショット。

 どうでもいゝけれど旧題ないし元題は、猫舌比べてどうすんだ。本当に、エクセスの仕出かすことは面白いなあ。


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 「いんび快楽園 感じて」(2011/制作:セメントマッチ/提供:オーピー映画/監督:池島ゆたか/脚本:五代暁子/撮影:清水正二/編集:酒井正次/音楽:大場一魅/助監督:中川大資/監督助手:北川帯寛/撮影助手:海津真也/照明応援:広瀬寛巳/編集助手:鷹野朋子/タイミング:安斎公一/挿入歌:『暗い海の底に』詞・曲:桜井明弘 歌:斑鳩洋子/出演:琥珀うた・酒井あずさ・望月梨央・野村貴浩・なかみつせいじ・竹本泰志/special thanks:日高ゆりあ)。クレジット終盤に力尽きる。
 御馴染み東映のカンパニー・ロゴ、いはゆる“三角マーク”から手前の岩を差し引いた如き波頭の画から続いて、一応モノクロの劇中映画。桟橋にて、仁義を通した結果刃傷沙汰を仕出かし、三年の臭い飯を喰つてゐたらしいヤクザ者のハルキではなくノブハル(竹本泰志の二役)と、御丁寧にも真知子巻きをも披露する、明和建設社長令嬢のマチコ(琥珀うたの二役)とが道ならぬ恋を燃やす。「君の名は」テイストの大時代的なメロドラマがエンド・マークを迎へると、カラカラ火を噴く35mm映写機のショットを挿んでタイトル・イン。結果論からいふと、この冒頭「キミのニャは」(仮称)に、何の意味があるのかはサッパリ判らない。
 タイトル明け、上野の不忍池からカメラがパンした先には、小出しの情報を総合すると四ヶ月前に十三年勤務した明和物産(最終所属は営業二課)をリストラされ、再就職活動には三十連敗、挙句にアパートも追ひ出され無職に加へ目下無宿の秋本真一(野村)がトボトボと歩く。公園に棲息する野獣ホームレス(広瀬寛巳)に、その場所での仲間入りをおづおづと申し出るも脊髄反射で猛撃退された真一は、最終番組「地球最後の日 静かな海」を上映した後閉館した形跡を漂はせる、上野オークラ旧館へと漂着する。冷たい雨の降る中、当然施錠さてれゐる建物内には入ることも出来ず、真一は軒下で疲れた心身を休める。最初の夢オチに登場するspecial thanksの日高ゆりあは、転落した真一に手の平を返す元カノ・めぐみ。少し見ない内に、この人随分と痩せた。一眠りした真一が目を覚ますと、先刻は閉ざされてゐた筈の入り口が、不思議なことに開いてゐる。誘き寄せられるかのやうに足を踏み入れ、初めて映画館を訪れた人間のやうな感嘆を劇場の広さに漏らした真一は、とりあへず一晩を無人と思しきオークラ旧館で過ごさせて貰ふことに。まさか観客用ではないにせよ、実際にさういふ設備の有無は判らぬが一風呂浴びてサッパリした真一に、ナオミ(望月)とその夫・和彦(竹本)が視線を投げがてら、劇場内での座席プレイを披露する。「人妻痴情 しとやかな性交」(2009/主演:大貫希)以来久々ともなる望月梨央は、ピンク映画デビューは2003年―本戦たる「ノーパン秘書2 悶絶大股びらき」(新東宝/脚本:五代暁子/主演:西園貴更)の前に、「ノーパン秘書 悶絶社長室」(脚本:森角威之/主演:まいまちこ)にも見切れる―なので地味な息の長さを誇るに止まらず、今回は良コンディションも窺はせる、衰へぬどころか加速した美貌を輝かせる。翌日、セーラ服姿のミオ(琥珀)が戯れにストローを通して落とすミネラル・ウォーターに、真一は起こされる。真一がミオを追ふと、上階の畳間の一室では、麦藁のテンガロンをカッチョよく決めたミオの父親・隆也(なかみつ)と、母・しずか(酒井)がうどんの食事を摂らうとしてゐるところであつた。因みにミオは隆也の次女で、長女が先行したナオミ。閉館後の劇場を管理してゐると称する隆也一家と真一との、濡れ場も含め絡みを次々と夢でオトしつつ、実はミオ・しずか・隆也・ナオミ・和彦が主人公の「地球最後の日 静かな海」劇中映画パートが併走する構成の中、真一は偶さか辿り着いた安穏に微睡む。
 彗星が衝突し滅亡する運命の地球を舞台に、五人の家族の最後の一日を描くのが、「地球最後の日 静かな海」のストーリー。挿入歌の「暗い海の底に」は、荒廃する世界の中最後まで放送を続ける、ラジオ番組「ジュンペイ《表記と、声の主不明》の絶望アワー」が流す最初の一曲、選曲の複合的な心憎さが堪らない。
 池島ゆたかの2011年第一作は、「癒しの遊女 濡れ舌の蜜」(2010/監督・脚本・出演:荒木太郎/主演:早乙女ルイ)、「奴隷飼育 変態しやぶり牝」(2011/脚本・監督:山邦紀/主演:浅井千尋)に続く、新館建設に伴なひ前年八月一日に閉館した、上野オークラ旧館を舞台とした一作。ロケーションとしての小屋の重要度から然程高くはない―荒木太郎は、今作を間に挿む次作「淑女の裏顔 暴かれた恥唇」(2011/監督・出演:荒木太郎/主演:星野あかり)に於いても、更に僅かにロケ地として使用―第一弾、劇場内部を縦横無尽に撮り倒すものの、映画自体は画期的な木端微塵に終つた―あるいは、“終れなかつた”―第二弾に続く文字通り三度目の正直は、戦ひ抜いた老ピンク映画監督の生涯を描いた壮絶な感動作「超いんらん やればやるほどいい気持ち」(2008/新東宝/脚本:後藤大輔)も容易に想起させる、手放しの映画愛を真正面から撃ち抜いた渾身の一作。ひとまづ、真打登場の感興は強い。大傑作「超いんらん~」と比べると、本作に際して池島ゆたかと五代暁子が採用した戦術は全くミニマム且つプリミティブなもので、いはば棒球に近いどストレートではある反面、其れなればこその愚直なエモーションも感じられなくはない。屋上からミオに見送られ、新たな、そして強い気持ちを胸に上野オークラ旧館を後にする真一が、雑踏で再びひろぽんと交錯するラストが、陽性の人生応援歌映画を磐石に締め括る。と、称へて済ます訳には、残念ながら相談が通らない。
 対世間戦に敗色濃厚の真一にミオは、「たとへ厳しくつても、現実を生きるのつて憧れちやふなあ」と奇怪な一言を何気なく漏らし、後に上野オークラ旧館での隆也一家との生活を望むことに対しては、「元気になつた貴方は、外に出て行かなきや!」と背中を押す。小生の頑迷な偏狭が、今作の何処にアレルギー反応にも似た拒絶を示さざるを得なかつたのか、お察し頂けたであらうか。ミオいはく、“現実と映画の、ちやうど真ん中”の小屋にて、生きつぱぐれた観客は映画に触れることにより得た感動を心の糧に、再び現実へと胸を張つて小屋の敷居を外側に跨いで行く。さういふ図式そのものに関しては、少なくとも理想的な現状認識としては一旦は否定しない。ただ、劇映画自体がそこに落ち着いてしまふことには、果たして許されるのかとすらいふのは筆の滑りも過ぎるにしても、果たして如何なものかといふ激しい疑念を抑へ難い。何がいひたいのかといふと、これでは、映画が最終的には現実を生き抜く為の出汁に過ぎないのではないか、目的としてではなく、映画ないしは物語が手段に堕してしまつてゐるのではないのかと感ずるからである。サルでも知つてゐる江戸川乱歩が提唱した名定立“現し世は夢であり、夜の夢こそ誠”を、天からではないから地啓の真理と奉ずる立場からは、オークラ旧館に終なる温かな安住の地を手に入れた真一が、実際には上野の片隅で冷たくなつてゐるところを発見される。たとへばそんな、一見救いのない無体な着地点にこそ、より一層純化された美しさを見出すものである。

 蛇足に、底意地の悪い瑣末をツッコんでおくと、一々35mm主砲を持ち出しておきながら、「キミのニャは」と「地球最後の日 静かな海」劇中二作の海辺シーンは、何れもキネコである。


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 「OL金曜日の情事」(2000/製作・配給:新東宝映画/監督:深町章/脚本:岡輝男/企画:福俵満/撮影:清水正二/編集:酒井正次/録音:シネキャビン/スチール:津田一郎/助監督:佐藤吏/監督助手:下垣外純/撮影助手:岡部雄二/現像:東映化学/出演:岡田智宏・かわさきひろゆき・池島ゆたか・山崎瞳・佐々木麻由子・時任歩)。男優陣が先に来るビリングは、本篇ママ。
 三田村香織(山崎)が支部長の唐沢(かわさき)に茶を出す、佐田物産のオフィス。徐々に与へられる情報も込みでデスクの並びを整理すると、画面中央奥扇の要に唐沢。向かつて左列が奥から福俵満・八神純平(岡田)、そして三田村。右列は同じく、同時進行時期の有無まで含め前後は不明なものの、純平年上の元カノ、兼現唐沢不倫相手の伊勢志摩(佐々木)。真ん中が実家は坊主頭から連想させる、お寺ではなく教会の岡輝男で、右列一番手前は佐藤吏。下垣外純も、後にワン・カット見切れる。香織と純平は、周囲には内緒で毎金曜日純平の部屋にて逢瀬を重ねる仲にあつた。事後、純平は香織に、唐沢に仲人を頼む心積もりである旨をシレッと伝へる。事実上の、プロポーズである。感激する香織に純平は、祖母の形見である手鏡を贈る。香織の、幸福な帰途。手鏡を覗き覗き歩いてゐた香織は、ただならぬ気配に身を固くする。歩道の上を歩いてゐたにも関らず、後ろから突進して来た何者かの車に轢かれ香織は絶命。身寄りのない香織の葬儀を、同僚一同で済ませた週明けの月曜日。唐沢以下、佐田物産の面々は驚愕する。少し遅刻したとはいへ、死んだ筈の香織が普通に出社して来たからだ。香織には足もあり、特段変つた様子は認められない。一人平然とした香織を余所に、誰も事態を呑み込めない中、復縁を図る志摩が純平を女子トイレに連れ込み喰ふ一幕も挿み込みつつ、唐沢は佐田物産会長の佐田(池島)にお伺ひを立てに行く。佐田いはく、香織は自分が死んだと認識出来てゐないのではないか。四十九日を経過すると成仏するかも知れないので、それまでは様子を見るやう佐田は唐沢に提案する。捻くれ口を叩くと、如何にも日本の経営者のいひさうな舌先三寸ではある。ここでアーパーな造形の時任歩は、佐田の孫娘、ではなく愛人の和美。唐沢をチャッチャと追ひ返した佐田が、和美を卓上に載せ事に及ぶのはいいとして、灰皿の煙草の火をキチンと始末してゐない点には不必要にハラハラさせられる。佐田鶴の一声を受け、とりあへず静観する形―然しその間、佐田物産は給与は支払ふのか?―で平穏を取り戻した日常が香織の死から四十日を経過した時、純平は意を決する。たとへ幽霊であつたとしても、香織への想ひを確かなものとするために、改めて彼女と結婚することを。
 岡田智宏の二枚目ながら何処か朴訥とした持ちキャラが、常識的には頓珍漢に思へる決意にも強く力を与へる、意外と美しいラブ・ストーリー。かわさきひろゆきと池島ゆたか―と時任歩―が主に牽引する序盤のコメディ基調から、純平の決意を起点に俄にロマンティックな純情物語へと変貌する、中盤の転調がまづ力強く決まる。なほも失速することなく、濡れ場も踏まへ周到に積み重ねられた焦燥と、小道具の巧みな使用法とで一件を決着させるクライマックスは実に鮮やか。サスペンス要素の結実も果たし始終が着地した末に、向かふ先は香織の郷里か、純平はローカル線に揺られる。回想を通し改めて山崎瞳の裸を情感も豊かにタップリと見させた上で、岡田智宏の安らかな表情が、裸映画としても、裸の娯楽映画としても充実した一作を、穏やかに締め括る。量産型娯楽映画の底力をも感じさせる、スマートな逸品である。

 最後に、観てゐて躓いた数字に関する瑣末を一点。香織が命を落としたのは金曜深夜につき、翌土曜日からの起算としても、純平が腹を固める四十日目は水曜日。二度目の求婚が、純平宅でなされるゆゑ矢張り金曜日だとすると四十二日目。唐沢に正式に仲人をお願ひするのが、最速でも週末挟んで四十五日目。となると、そこでの話の流れ通りに日曜日の挙式では、佐田が適当に言ひ出した方便ルールともいへ、四十九日を二日通り過ぎてるぞ。そこは慌てとけよ、純平(´・ω・`)


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 「いぢられ好きな人妻 すけべな性感帯」(1997『すけべ妻の異常体位』の2007年旧作改題版/製作:サカエ企画/提供:Xces Film/監督:新田栄/脚本:岡輝男/企画:稲山悌二《エクセス》/撮影:千葉幸男/照明:高原賢一/編集:酒井正次/助監督:井戸田秀行/音楽:レインボー・サウンド/監督助手:北村隆/撮影助手:島内誠/照明助手:原好司/効果:中村半次郎/出演:飯島恋・杉原みさお・しのざきさとみ・芳田正浩・久須美欽一・丘尚輝・藤澤英樹)。照明助手の原好司は、原康二の誤字か。それと、凄まじいことに本篇クレジットでは出演者から、ヒロインの介錯も務める樹かずが抜けてゐる。濡れ場の恩恵にすら与らない、丘尚輝(=岡輝男)の名前もあるといふのに。
 何処(いづこ)かの山中、山篭りしながら狙ひ続けた、珍しいらしい野鳥の番が人間でいふとキスするやうに互ひの嘴を合はせる瞬間を、終に捉へた脱サラ・カメラマンの豊田隆史(芳田)は驚喜する。喜び勇んで帰りがてら、隆史は松田志麻(杉原)と日野政信(藤澤)のカップルが、赤いオープンカーの外車―初戦は幌を仕様、車と前出の野鳥の種類は共に門外漢につき不明―でカーセックスに耽る現場に遭遇。仰天しつつ、二人の痴態もカメラに収める。その頃豊田家、隆史の妻・里緒菜(飯島)はといふとすつかりお冠。一度撮影に飛び出すと何時戻つて来るのか判らない、夫を待つ日々に愛想が尽きたのだ。そこに隆史が愛車のランドクルーザーで帰宅、妻の不機嫌の原因は―性的に―放たらかしにしておいたことにあるのかと、御誂へ向きに曲解した上での夫婦生活。新田栄映画実は超絶の、展開の流麗さが堪らない。これでお話にもう少し中身があれば、一歩間違ふと日本映画の勢力図は今とは全く異なつたものにも、多分別になりはしないか。話を戻して、外れた障子と何とやら、罪滅ぼしの夫婦旅行の提案も受け、里緒菜の機嫌がケロッと直つたところに、写真雑誌の編集長からの電話が掛かつて来た為、隆史は再び一時外出する。それなりのオフィスを用意する、手間を惜しんだか袖が振れなかつたものか、兎も角隆史と編集長(丘)とがそこら辺の児童公園で会ふ、ルーチンさが爆裂する便法には最早清々しささへ漂ふ。編集長から隆史に、正しく愕然とする報告が。苦労して押さへた野鳥の貴重なショットが掲載予定の、写真誌が時勢に抗へず廃刊されてしまつたといふのだ。代りにと編集長が隆史に持つて来た金になる企画は、『日本全国車性<カーセックス>地図』。何といふか、懐の深い出版社ではある。落胆と、妻には本当のことをいへぬ引け目もあり、隆史は出発機運全開の里緒菜を家に残し、再び一人撮影旅行へと向かふ。完全に臍を曲げた里緒菜は、本多あづさ(しのざき)がママのスナック「美風」に呑みに行く。あづさの夫・明夫(久須美)も、店に来たプロゴルファーにおだてられて以来、すつかりその気になつてイイ歳からプロゴルファーを目指す、困つた男であつた。いはば似た境遇にある里緒菜と意気投合したあづさが、店を閉め二階の自宅で改めて呑まうとしたところ、プロテスト用のクラブを買ふ金の無心に、明夫が久々に帰つて来る。あづさと明夫がオッ始める気配を察した里緒菜は、「美風」を後に。帰路、道路の真ん中で大の字の、鈴木一郎(樹)を里緒菜のセダンが轢きかける。一応そこはいはゆるナンパ街道で、鈴木はさういふ手口のナンパ師だといふエクスキューズも設けられるものの、実に岡輝男×新田栄ならではといへる底の抜け具合である、称へるつもりも特にはないが。一方、編集長からの業務連絡を受け、ナンパ・スポットにとりあへず急行した隆史は再び愕然とする。どうも見覚えのある車の中では、あらうことか妻が他の男―いふまでもなく、鈴木である― に抱かれてゐたのだ。
 里緒菜と家呑みする腹のあづさに追ひ出される、「美風」にて酔ひ潰れるたまのランニング風の男は、太つた加藤義一、ではなく井戸田秀行。夜の自販機前で鈴木とたむろするナンパ師仲間に、新田栄が見切れるのは流石にあんまりだらう、親子かよ。この人意外と、地味に出たがりなのか。
 男女―に限る必要はないが―が自動車の車内で事に及ぶ、カーセックスを主モチーフとした、結構例を見ないさしあたり意欲作。尤も、少なくとも今作に限定しては、見せるプレイとして間違つても強力ではなく、世に「カーセックス映画!?絶対観に行かなきや!」といふ御仁が果たしてどの程度存在するのか、属性自体の訴求力にも疑問を残さずにをれないところではある。リアルタイム当時から、この人の何処が飯島愛のソックリさんなのか個人的にはまるでピンとは来なかつた、主演女優の飯島恋―然し、愛の二番煎じが恋とは、究極的な芸名センスである―に関しては、本家も凌駕する爆発力を輝かせる肢体は、銀幕のサイズに載せると一際映える。殊更難も見当たらないとはいへ、総じては覚束ないお芝居も、映画全体がスッカスカでもある故、逆説的、あるいは消極的に責任を回避する。“全国地図”を謳ふ反面、志麻と日野が幾度と繰り返し、挙句に同じロケーションで登場する半ば仕方もない安普請に対しては、単なる特定マニアさんの写真集ではないかと脱力した苦笑も禁じ得ない。等々と、概ね漫然とした一作ではありながら、あづさと明夫、即ちしのざきさとみと久須美欽一の安定感を軸に、強引にでも始終をそれぞれ改心した妻と夫が絆を取り戻す、定番の夫婦物語に落とし込む終盤は、在り来りさまで含めてなだらかに磐石。決して観客に緊張を強ひることのない、微温のエモーションを湛へる。その湯加減を心地良いと思ふかこれでは寒いと首を横に振るのかは、この際個々人の好みに押し込めてしまへ。それでゐて、ラスト・ショットは正体不明。都合三度目に“車性”に励む志麻と日野の姿を激写する隆史は、不意に二人を、里緒菜と鈴木に見紛ふ幻想に囚はれる。そのまま現実に立ち返ることはなく、カメラも動かないまま、里緒菜と鈴木が自ら車体の陰に身を沈めるプリミティブなフェードに、直結する形でエンド・マークが被さる。妙なモヤモヤ感ばかり残す幕引きは、新田栄平素の、ひとまづ正攻法の娯楽性からは地味に大きくらしくない。

 ところで、意図的に回避した巨大なツッコミ処の存在に、お気付き頂けたであらうか。里緒菜は「美風」への往き来に際し、

 車を使ふなよ!

 多分、今ではまづ通らないプロットではなからうか。それをシレッと新版公開してみせるといふのも、如何なものかといふ話でしかないのだが。公然猥褻に関しては、当然等閑視する。


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 「真昼の切り裂き魔」(昭和59/製作:国映/配給:新東宝映画/監督:滝田洋二郎/脚本:夢野史郎/企画:朝倉大介/撮影:志賀葉一/照明:金沢正夫/編集:酒井正次/助監督:片岡修二・笠井雅裕/照明助手:井上英一/現像:東映化学/録音:銀座サウンド/出演:織本かおる・麻生うさぎ・青木祐子・池島ゆたか・伊藤清美・中根徹・下元史郎)。出演者中、青木祐子がポスターには青木裕子。二名クレジットされる撮影助手に力尽きる。
 走行中の新幹線から、中根徹がシャッタースピード1/4000秒で連続写真を撮影する。自分で現像までするその中の一枚は、暴漢が女に刃物を振り下ろすと思しき瞬間を捉へてゐた。夜の公園、写真週刊誌『パララックス』編集員の奥村紀子(織本)とフリーキャメラマン―“カメラマン”でなくしてあくまで“キャメラマン”と表記するのは、劇中下元史郎の口跡に従ふ―の梶井(下元)は、如何にして桜の代紋を出し抜いたのか、半裸の伊藤清美が惨殺された現場に到着、凄惨な死体写真を押さへる。ヒット・アンド・アウェイといはんばかりに離脱する車中、四の五の煩い注文に臍を曲げた梶井は、紀子と喧嘩別れる。全篇を貫き煌く、若き下元史郎のギラついた色気が堪らない。懐古主義など趣味ではないつもりだが、かういふ人は、今では俄には見当たらない気がする。帰社した紀子は、梶井の腕を買ふキャップの北橋(池島)から上手くやるやう窘められる。半熟の目玉焼きの黄身、カウンセリングか、「するとその時あなたは、自分が青色の竜だと思ふんですね」とかいふ素頓狂な内容の静かな声に続き、黄身にナイフが突き立てられる。そんなイメージ・ショット噛ませて、梶井と、同棲相手の麻生うさぎの情事。左右にパンするカメラが、柱の影を跨ぐ度に体位が変る繋ぎは、オーソドックスな手法ながらピンクで映画的。三十までには一旗あげると強く心に期する梶井ではあつたが、残り一年しかない旨を、麻生うさぎに何気なく揶揄される。作中最も正攻法の美人である青木祐子は、『パララックス』編集員、兼北橋の彼女でもあるマキコ(苗字は呼称されないため不明)。都合のつかなくなつた北橋に乞はれた紀子と、二人で「地獄の七人」を観に行く、なかなか豪快なデート・ムービーではある。一方、写真雑誌に掲載された1/4000秒写真に注目した梶井は、投稿したアマチュアキャメラマン・辰川瞬(中根)に接触。梶井経由で紀子も辰川に興味を持つが、逆に辰川からストーキングされる中、紀子宅を訪ねた直後のマキコが殺害される事件が起こる。梶井は、麻生うさぎに辰川を尾行させる。
 『パララックス』編集部要員に、他に男二名女一名が見切れる。その中で梶井と遣り取りする若干の台詞も与へられるのは、片岡修二あるいは周知安。オーラスに登場する、今でいふと小雪似のショート・カットは内トラでなく本職の女優部ではないかとも思へたが、クレジットがないゆゑ確認能はず。
 かのm@stervision大哥も、「連続暴姦」(昭和58/脚本:高木功/主演:織本かおる・大杉漣)と共に“サイコサスペンスの2大傑作”と讃へた、兎にも角にも世評の高い一作。尤も、そこで素直にノッて行けない始末に終へぬ臍の曲がりぶりには、我ながら食傷するほかない。功を焦り、終に一線を越える間際の梶井の姿には、強い緊張と激しい興奮とを覚えた。とはいへ、その展開上いふならば八合目辺りが、最も高い地点になつた印象は否めなくもないのではなからうか。敵がサスペンスにつき、服の上から痒いところを掻くやうな物言ひに止(とど)めざるを得ないのは如何せん御容赦頂くとして、出し抜けに飛び出して来た本当に例外的な特異体質にて、事件の謎を解くといふよりはいはば片付けてしまふ遣り口は、如何せんアンフェアな横紙破りにも思へたのだ。牽強付会を爆裂させ、無理から自陣にお門違ひな名作を引き摺り込むならば、リアルタイムで御馴染み関根和美ならずとも、滝田洋二郎にしてすら極めて頭数の限られたピンク映画に於いての、犯人探しには苦しいものがあつたともいへるのではあるまいか。しかもある一名は、その点に関しては殆ど全く有効に機能してはをらず、最も怪しいもう一名は、よくよく考へてみると開巻時点で既に的からは除外されてゐる。繰り返し放られる留守番電話のディスコミュニケーションも、こと凡そ三十年後の感覚からは時代を越え得るまでの鮮度は認め難く、とかく傑作傑作と諸手を挙げ騒ぎたてるほどの強度は、桃色に曇つた節穴を通しては感じられなかつた。

 主眼も疎かに、今作の内容とはウルトラ関係ないディテールに関して恐縮ではあれ、梶井と麻生うさぎの絡みの背景には、広島(東洋カープ)から十ゲーム差をつけられた巨人戦の中継(相手は中日)が流れる。巨人が広島に十ゲームの差をつけてゐるのではない、首位の広島が巨人の十ゲーム前を走つてゐたのだ。隔世の感に慄きつつ改めて調べてみたところ、昭和59年といふと、御歳七十五歳となる今も東京国際大学野球部監督としてユニフォームを着る、名将・古葉竹識の下で広島が四度目のリーグ制覇(巨人は三位で二位が中日)を果たした上、上田利治率ゐる阪急を四勝三敗で破り三度目―にして現時点最後―の日本一に輝いた年であつた。しかも、これは完全に忘れてゐたが、日本シリーズの最高殊勲選手賞は長嶋清幸。日本球界に於いて、初めて背番号0を背負つた男である。ところで長嶋清幸の現在は、ロッテ二軍打撃コーチ。今度は更にロッテ二軍といへば、監督は同じく元広島の高橋慶彦。監督が慶彦で打撃コーチは長嶋(清)、即ち、当時の広島のトンパチ2トップ。何といふか、実にアパッチな野球軍ではある、だから映画の話しろよ間抜け。


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 「となりの人妻 熟れた匂ひ」(2011/制作:セメントマッチ・光の帝国/提供:オーピー映画/脚本・監督:後藤大輔/原題:『鰊とロザリオ』~落語『芝浜』より~/プロデューサー:池島ゆたか/撮影監督:飯岡聖英/音楽:大場一魅 with 藤井良彦《g》/助監督:佐藤吏/脚本協力:小川隆史/編集:酒井正次/録音:シネキャビン/タイミング:安斎公一/現像:東映ラボテック/監督助手:菊嶌稔章/撮影助手:海津真也・玉田詠空/編集助手:鷹野朋子/スチール:津田一郎/応援:田山雅也/出演:なかみつせいじ・冨田じゅん《新人》・松井理子《新人》・瀬名りく《新人》・世志男・沼田大輔・薫・久保新二)。三女優の“(新人)”は、全て本篇クレジットのみ。
 フルスイングでギターの哭く中、照子(冨田)がいそいそと弁当作りに精を出す。といふのに、酔ひ潰れた亭主・作造(なかみつ)は派手に階段から転げ落ちる。階段の柱には、子供の成長を記したいはゆる“柱の傷”が。但しそれは、五歳のもので止まつてゐた。徐々に語られる顛末を整理すると、作造は、かつては芝浜一と称へられた漁師であつた。小学校入学を控へた子供・弘美(の写真役が薫、どちらのお子さんかは不明)を、記念に作造は海へと連れて行く。ところが、弘美が波に浚はれ行方不明、以来、漁を辞めた作造は酒に浸る日々を送つてゐたものだつた。後述する蛇足な導入からの夫婦生活を経て、兎も角作造は仕方なく浜に出る。とはいへ、魚を獲るには時期が悪く、舟の手入れもしてをらず、挙句に漁の仕方を忘れたと逆向きに豪語する作造は早速砂浜にて不貞寝。そんな作造を遠目に見やる、ライトバンで煙草を売り歩くといふ造形がまるで荒木太郎映画のやうな、煙草屋の爺さん(入れ歯をパイルダー・オフした久保新二)に、煙草はハイライトの謎の女・弘美(松井)が接触する。弘美といふと作造・照子の子供と同じ名前ではあつたが、「あり得ねえ」と久保チンは即座に否定する。芝浜には仕事で訪れたといふ弘美は、尺八一吹き久保チンを抜くと、ハイライトを1カートンくすねて―実に絶妙な費用対効果だ―姿を消す。弘美のサングラスに、無修正風に映り込む張形。出来れば逆ver.の方がより望ましいやうな気もしないではないが、その場合には、御上が首を縦には振らないのかも知れない。そんな最中、作造は一杯一杯だと一体幾ら分入るのか、万札の詰まつた蛸壺を―重さも相当な筈だが―砂の中から掘り出す。五百万溜め込んだ、漁協理事長・蒲生捨吉(世志男)からの借金もこれで完済だ、ディズニーランドならぬ芝浜ランドの建設だと息巻く作造に、照子は困惑する。カット変り、ムチムチ透け透けの白レオタード、あるいは水着のサポーターか。異界の魔物に狙はれぬやうに、と付けられたであらう名前を、当人は当然の如く好まぬ捨吉はその頃、漁協事務員の座を餌に、二十歳で就活中の晴奈(瀬名)とラブホテルにて四十八手も計五手繰り出す一戦。事後、部屋に残された晴奈を急襲した弘美は、百合の花を咲かせる。翌日、一計を案じた照子に拾つた筈の金壺は夢だと言ひ包められた作造は、自暴自棄紛れに女房を抱く。ところに、捨吉が訪ねて来る。その場は一旦作造の急死を偽り切り抜けようとしつつ、照子に言ひ寄る捨吉と、自身の弱さを看破した言葉に辛抱堪らず跳ね起きてしまつた作造は、死を決意し海へと向かふ。そんなそんな最中、見た目は東洋人の青年ながら、スペイン語しか話せないらしきカトリック宣教師のアントニオ・ロドリゴ(沼田)が、人を探してゐると思しき必死の風情で芝浜に現れる。あ、アントニオ・ロドリゴ?何だこの超展開。
 酒に溺れる駄目亭主が拾つて来た大金を、女房は夢でも見たのだと隠し、更正を期する。新東宝が事実上ピンクから撤退状態にある流れも受け、純然たるピンク映画としては「妻たちの絶頂 いきまくり」(2006/主演:千川彩菜/ex.谷川彩)以来実に五年ぶり、他に一般映画を撮つたといふ話も聞かないので、「新・監禁逃亡」(2008/高木裕治と共同脚本/主演:亜紗美)からでも三年ぶりとなるオーピーに越境しての後藤大輔新作は、古典落語の演目『芝浜』を忠実に物語の骨子に戴いた一作。それはそれとして、筆の憚りを捨てるならば主演女優は二十一世紀の愛染塾長で、二番手は量産型望月梨央、三番手はただのムッチムチ。新人・ジェット・ストリーム・アタックを華麗にではなく決めた女優三本柱は、正直訴求力には如何せん乏しい。後藤大輔の名前から期待したい硬質に世志男は幾分遠く、沼田大輔のことは気にしないとしても、あちらこちら布陣に弱さは否めない。なかみつせいじにしたところで、終始がなり気味の作造の口跡は、そこかしこで聞こえ辛い。最初の絡みの口火を切るのに、映画的なアクションも噛ませたかつた節は窺へぬでもないが、開巻の階段式フランケン(シュタイナー/この場合より正確にはウラカン・ラナ・インベルティダか、実際は単なる首四の字なのだが)は、繋ぎの不手際に加へて、照子の体が表返る動作が完全に欠けてゐる。重ねて、米を尻に敷くとは言語道断。斯様なもの子供には観せられぬぞ、成人映画だバカヤロー。閑話休題、一旦は、よく出来たお話ではあれ、然程の魅力は感じさせなかつた。ところが、「また夢になるといけねえ」、なかみつせいじの千両役者ぶりがここぞと火を噴くサゲの一言が見事に撃ち抜かれた瞬間に、それまでは弛目に思へなくもなかつた始終が、一挙に求心力を取り戻すマジックが鮮やかに決まる。ある意味ピンク的ともいへる、弘美に関するミスリードも改めて秀逸に、空いた間隙に飛び込ませたアントニオ・ロドリゴは、決して奇矯な木に竹を接ぎ要員には止まらないばかりか、娯楽映画らしい落とし処の水も呼ぶ。古典をアレンジするに際しての妙も冴え渡り、何よりも決定的なのは前述した名台詞も含め三年後のオーラス。女房が亭主に詫びる段に、御自慢の高身長も初めて正面から捉へた冨田じゅんの裸を放り込む、物語的な頂点と、濡れ場のピークを直結させたピンク映画として完璧な構成が猛烈に素晴らしい。作造が手入れ途中の魚網を、ウェディング・ブーケを模して照子に優しく被せてみせるのも深く胸に染み入る。勧善懲悪込み込みで磐石のハッピー・エンドが小屋を後にする足取りも軽やかに、エモーション豊かな人情ピンクの秀作である。


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 「破廉恥願望 丸見え下半身」(2002『夢野まりあ 超・淫乱女の私性活』の2011年旧作改題版/製作:フィルム・ハウス/提供:Xces Film/監督・脚本:山内大輔/企画:稲山悌二《エクセスフィルム》/プロデューサー:伍代俊介/撮影:創優和/照明:野田友行/編集:フィルムクラフト/助監督:城定秀夫/監督助手:江利川深夜/撮影助手:山口大輔/照明助手:増田勝/ヘアメイク:小川幸美/効果:梅沢身知子/タイトル:道川タイトル/出演:夢野まりあ・山咲小春・ゆき・しらとまさひさ・平川直大・野上正義・サーモン鮭山・柳東史)。ビリングが、オープニングとエンディングとで異なる。オープニングでは後ろ三人の順番が、サーモン鮭山・柳東史・野上正義。
 崩れたX字型に拘束された主演女優、ファースト・ショットの破壊力は申し分ない。人工臭が否めなくなくもない超絶ボディを陵辱する、余程これまで不幸な一生を送つて来たことも偲ばせる、すつかり拗らせた女一般への憎悪を振り回す監禁犯の正体は、服装は繋ぎの作業服、首から上は目出し帽の上からガスマスクを装着した怪人物―以降ガスマスク氏と仮称―であつた。ガスマスク氏は、事ここに至る顛末を回想する。撮影は三日目と思しき―後述する―三年前、ここでは一貫して胸元から下しか抜かれないガスマスク氏は、高校の掃除夫として働いてゐた。しらとまさひさと平川直大は、イケメン高校生のカオルと、大胆にも金髪の同級生・石川。石川の不敵な造形も、恐らくは後述する要因によるものなのであらう。ガスマスク氏唯一の心の潤ひは、生徒から軽んじられる自分にも温かく接して呉れる、美しい美術教師・梶浦ケイ(山咲小春/ex.山崎瞳)の存在のみ。ところがケイは、気に入つた男子をモデルと称して美術室に連れ込んでは、絵も確かに描きつつ後に喰ふと事後赤ラークを気怠くキメる、大したタマの淫乱女であつた。日頃の感謝と愛情の印にと、コッソリ美術室を掃除しようとしたガスマスク氏が、ゴミ箱から出て来た使用済みのコンドームに愕然としたところに、カオルに続きその日は石川を伴つたケイが戻つて来る。平素の優しい顔をかなぐり捨てたケイから口汚く罵られ、石川にもシメられたガスマスク氏の、普段から傷めた心は完全に壊れる。ガスマスク氏は目出し帽とガスマスクで武装し、ケイを襲ふ。
 ケイ篇まで通過して初めて登場する柳東史が、ガスマスク氏の正体。ケイの一件で傷ついた柳東史は、ランパブに救ひを求める。ここでこちらはex.横浜ゆきのゆきは、柳東史の素顔でガスマスク氏が執心する、ランパブ嬢・リョウ。サーモン鮭山は、実家から届いたゴーヤを贈つたガスマスク氏が呆気なく袖に振られるのに対し、同じく実家からでもこちらは松茸をプレゼントしリョウをモノにする小金井。ゴーヤは論外として、松茸ならばランパブ嬢がオトせるのかといふのも、よく判らない話ではあるが。兎も角ガスマスク氏は、再びリョウにも狂気の矛を向ける。
 ケイとリョウに連敗した柳東史は、今度は売れつ子ソープ嬢の伊藤深雪(夢野)に辿り着く。そこに学習能力を欠くとのツッコミ処を見出すのは、だから後述するのでもう少し待たれたし。果てには同じソープ店で働き始め偶さかの平定を見出すガスマスク氏ではあつたが、実は就職の決まらぬ大学四年生でもあつた深雪は、上客の一流企業社長・矢崎(野上)の秘書の座を射止め、店も辞めることに。例によつて深雪から悪口雑言を浴びせられかけた柳東史は再々度ガスマスク氏に変貌し、漸く展開は開巻に連なる。
 それまでは残虐Vシネで名前を売つた山内大輔の、大難産の末に何とか撮り上げられたピンク映画第一作。盟友・山内大輔と共に、今作がピンク映画初陣となるサーモン鮭山が御自身のブログで明らかにしてゐる騒動の内幕を、書ける範囲で改めて整理すると。諸事情につき、撮影初日が壊滅。文字通り夜を徹した、山内大輔と城定秀夫による脚本の大改稿を経て、演者には物語の全体像が全く見えないまま撮影再開。挙句に柳東史の拘束が二日目で解けてしまふ為ガスマスク氏役に、最終的には平川直大と城定秀夫に江利川深夜まで含めた、驚愕の四人一役いふならば“クォーター・ロール”を敢行したといふもの。本来ならば常々、小屋に木戸銭を落としただけの素面の観客として、裸の裸映画に相対することを宗としてゐるところではあるのだが、今回はさういふ裏逸話を事前に知つてゐたこともあり、あはよくばシーン毎のガスマスク・マシーンズの特定をも試みんと、下世話な色気も抱いて観戦に挑んだものである。したところが、各ガスマスク・マシーンの特定はおろか、壮絶な悪戦苦闘の存在すら微塵も感じさせない。エクセスの惨劇を―表面的には―回避した抜群の三女優に、社会不適応のダメ主人公がルサンチマンを暴発させる。女々を捕まへては犯し捕まへては犯す、純然たるハード系のピンク映画におとなしく仕上がつてゐることには、大いに驚かされた。既に柳東史は現場に存在しない、三日目をタップリと使ひボリュームを稼いだと思しき、ケイ篇に於いてガスマスク氏の表情が執拗に回避されることに関しては、強ひていふならば不自然と思へなくもないものの、ガスマスク・マシーンズの識別は、素人目にはまづ不可能と思はれる。山内大輔の名前以外には何も知らずに観る分には、逆に平板な出来栄えに見えかねないのかも知れないが、その頑丈な論理性が、人知れず火を噴いたステルスな一作。端的には単純なエロ映画に過ぎない以上、名作だの傑作だのと騒ぎ難いのは心苦しいところではあるが、何れにせよ、秘かに日本商業映画史に残り得る、凄い仕事であることは疑ひあるまい。


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 「老人の性生活 愛人はベットの上で…」(2004『新・老人の性 愛人いぢり』の2011年旧作改題版/製作:フィルム・ハウス/提供:Xces Film/監督:勝利一/脚本:国見岳志/企画:稲山悌二/プロデューサー:伍代俊介/撮影:小山田勝治/編集:金子尚樹/助監督:白石真弓/撮影助手:飯岡聖英・原伸也、他二名/小道具協力:アウトローカンパニー/スタジオ協力:カプリ/出演:水沢梨香・水原香菜恵・美里琉季・岡田智宏・麻田希美、他一名、中山正幻・久須美欽一・坂入正三)。出演者中、他一名は本篇クレジットのみ、思ひのほか多い情報量に屈する。
 エクセス的には久し振りに観た気もするが、見るも鮮やかではない、今作は全篇キネコ物件である。ただ、事この期に至ると、キネコでも、キネコなりのフィルムの色がそれでも愛ほしい。
 シルバー人材派遣の登録に向かふ、元会社社長で“曽”抜きの中根康弘(坂入)は横柄に道を尋ねた、男勝りのスーツ姿の水沢梨香と同行する形に。とりあへず会社到着、潤沢にも四番手かとも事前には思へた、台詞は幾分与へられど脱ぎはしない、若くはあるが容姿は全く十人並みの石原美保(麻田)と、山科薫から一切の臭味を抜いた如き他一名は、ここでの社員要員。登録者の病欠につき、社員二人が現場に出る中、面接に水沢梨香が当たらうとすることに、旧態依然とした男尊女卑観も振り回す中根は臍を曲げる。尤も彼女こそが、シルバー人材派遣会社「バイオレット」社長の横山玲子(水沢)であつた。面接がてら、役に立つのか立たないのか、玲子が中根に跨り確かめる感動的な先制弾を叩き込みつつ、他の面子も見当たらない為、上客のネット小説家・黒川みずほ(水原)の家に中根が家政夫として急遽出撃することに。ところで、みずほの造形に際し、わざわざ小説家の頭に“ネット”を被せる意味は、無論特段も何も全く無い。妻に先立たれて以来一人暮らし二十年、調理師免許も持つといふ中根は案外順調に家事をこなすものの、さういふライフスタイルだといふ、居間にてみずほが夫の誠(岡田)と、何ひとつ憚ることなく全裸でオッ始めた夫婦生活には度肝を抜かれる。同居する―多分みずほの―祖父の部屋に、逃げるやうに茶を届けた中根の顔を見た、祖父・喜一(久須美)は驚く。大東亜戦争当時、陸軍歩兵大隊百二十四連隊の喜一が二等兵で中根が上等兵といふ、二人は戦友の関係にあつた。現在は上下が逆転してゐるとはいへ、喜一と再会を果たしたことがそれはそれとして心強い中根は、みずほ夫婦のヌーディスト属性について行けず、これまで中々人が居つかなかつた黒川家での仕事を続け、玲子をひとまづ安心させる。ところがそんなある日、中根が無断欠勤する。美保が無責任に振り回す不謹慎に内心怯えながらも、玲子は中根宅へと恐々様子を見に行く。さうしたところ、風呂場で転倒してゐた中根は、一時的に身動きの取れない状態に陥る。仕方なく、その日は玲子が自ら黒川家へと赴く。
 見た目だけから自信を持つて、女優陣最高齢の美里琉季は、自宅療養中の中根を訪問を装ひ襲撃する、かつての愛人・水島京子。頃合を見計らひ乗り込む中山正幻は、ヤクザ風の京子情夫。巨漢からは予想外の身体スペックの高さを活かし、実際の嗜みの有無は正直微妙な、玲子の合気を身軽に受ける。
 ビリングトップの水沢梨香は、ヅカ時代には蓮城ルナの芸名で花組所属であつたといふ、元タカラジェンヌ。成程、均整の素晴らしく取れたプロポーション―臍ピアスは目障りだが―に、凛々しいルックス。カメラを前にした貫禄も申し分なく、全く磐石の主演女優ぶりを披露する。それと、このことは本作からは未来の出来事につき当然別の話にもなるが、水沢梨香から三度目の改名―蓮城ルナからの最初の改名は更紗といふらしい―を経た平仮名三文字の“ゆずな”名義で、2012年現在もショー・ビジネスの舞台に立ち続けてゐるのは何気に偉い。お話的には、開巻の玲子と中根の濡れ場で軽快に抜いた映画の底を、みずほ夫婦の特殊性癖で順調に加速した上で、玲子が中根のヘルプで黒川家に参戦しての一幕。俄にスランプに見舞はれた作家先生の要は出鱈目な我儘におとなしく従ひ、誠×玲子×喜一のシチュエーション・プレイを、こちらも半裸のみずほの前で繰り広げる羽目に。いふまでもなく、ほどなく怒涛の4Pに雪崩れ込むに至つて、四の五の無い知恵を絞つた講釈を試みる労力は、全て文字通りの徒労でしかないことを思ひ知らされる。劇映画としての体裁も、映画作家としての野心も、女の裸を銀幕に載せる本義の前には余計な邪心でしかないといはんばかりの、誠麗しき裸映画・オブ・裸映画である。寧ろ、物語がこれだけスッカスカである反面、間延びすることも微睡ませることもなく、流麗に観せきる勝利一の語り口は実は超絶なのではないのかと、称へすらするべきではあるのやも知れぬ。何れにせよ明らかにいへることは、最終的に何が何だかよく判らない内にとはいへども、兎も角玲子と中根が何時の間にか手放しでイイ仲になるフィナーレは、何はともあれピンク映画の主要客層の、穏やかな下心をダイレクトに激弾きするものに違ひない。作品としては兎も角、商品としては完成形。量産型娯楽映画としては、それもひとつの偉ぶらない到達点なのではなからうか。

 最後に、それにしてもたつた今気付いたが、愛人から攻める新旧題はどちらも如何なものか、所詮は三番手だぞ。ここは素直に、女社長属性からのアプローチでよかつたのではないか。それと、わざわざ“新”を謳ふ以上、それでは旧“老人の性”はなんぞやといふと。また随分と遡るが、リョウ×久須美欽一×甲斐太郎からなる“ゲートボール・ゲーターズ”が大暴れする痛快作、「老人の性 若妻生贄」(1996/監督:浜野佐知)のことで正解なのか?世紀を跨いで勝利一が浜野佐知と連なるのかと思へば、それはそれで感慨深いものもある。純然たる、エクセスの方便に過ぎまいが。


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 「淑女の裏顔 暴かれた恥唇」(2011/製作:多呂プロ/提供:オーピー映画/監督・出演:荒木太郎/脚本:西村晋也/原題:『エマニエル2011』/撮影:飯岡聖英/編集:酒井正次/音楽:宮川透/助監督:三上紗恵子・遠藤聡/撮影助手:海津真也・玉田詠空/編集助手:鷹野朋子/協力:上野オークラ劇場、静活、ビ・ス・ク、佐藤選人/タイミング:安斎公一/出演:星野あかり・美咲恋・淡島小鞠・岡田智宏・野村貴浩・太田始・平川直大・津田篤・那波隆史)。ポスターのみ、出演者として更に別所万伸の名前が並ぶ。
 “最近、しつくり行かない妻と、仕事の見つからない自分に苛立ち、早朝のアメ横を歩いた”町井智治(那波)は、薔薇を携へた伊達男(津田)に手を引かれる、金髪ショートのウィッグを着けた華美な女(星野)に目を留める。ビルとビルの隙間にて、「エマニエル、このドスケベ女め」と吐き捨てた津田篤は、華美な女・エマニエルと乱暴に事に及んだかと思ふと、何と事後は両腕を拘束した半裸のエマニエルを放置し立ち去る。慌てて助けに駆け寄つた町井が車を探す隙に、エマニエルは姿を消す。所変つてバーのテーブル席、向かひ合つて座る画面左から岩尾浩二(野村)と牧田重雄(岡田)が、エマニエルに関する噂に花を咲かせる。二人の話に耳を傾ける、正面に並んだ三人組の内、中央は荒木太郎映画常連の画面片隅を飾るイイ顔要員・ドンキー宮川(=宮川透)で、一番右は別所万伸。普通のプレイでは相手にして呉れないエマニエルは、刺激的な状況下では幾らでも男にその身を任せた。一旦袖に振られかけた牧田が、四人連れの浮浪者(エース格に太田始、残り三名、と前述三人組の一番左は不明)に犯させたエマニエルを、自身は公衆トイレで抱いた武勇伝を語る。二人の話に、初老の紳士・須山恭三(荒木)が興味を示す。エマニエルの連絡先を教へませうかと水を向けられた須山は、胸が悪いことを理由に固辞する。太田始は、後にエマニエルに身を持ち崩したスーツ姿の男役でダブル・ロールも披露。
 とりあへず―ピンク映画的にも―夫婦関係を持つも、妻・葉子(淡島)との間には溝を否定し難い町井に、札幌在住の友人・樫原(電話越しの声のみ、声の主は矢張り不明)から連絡が入る。図書館司書の妹・なつきと連絡が取れない故、様子を見て来て欲しいといふ。須山がメールに貼付して寄こしたなつきの写真は、印象は大きく異なれど、エマニエルと同一人物だつた。ひとまづ町井がストーキングしてみたなつき(無論星野あかりの二役)は、全く普通の暮らしぶりで、勤めにも出てゐた。但しここで岩尾が、強引に蔵書整理中のなつきに言ひ寄る同僚役で再登場を果たすのは、些か不用意に思へなくもない。ところが、客からの呼び出しを受けたなつきは、アミューズメント・パークの手洗ひで人格レベルからエマニエルにお色直し、華麗に出撃する。赤い革のジャケットをカッチョよく決めた平川直大は、北原美奈(美咲)をエマニエルに引き渡す形で3Pに興じる盛屋亮。美奈のことを初めてのヨゴレ役に挑むと紹介するところから見ると、女を喰ひ物にする歓楽街の男にでもしか見えない造形ながら、演出家か何かのやうだ。一方、なつきが須山を訪ねる。恩師なのか主治医なのかは微妙だが、なつきのエマニエルとの二重生活は、なつき本体の精神の平定を保つ目的で、そもそも須山により勧められたものであつた。つらつらと展開は連なり、さしたるエキサイトを用意するでもないままに、町井はエマニエルとの情事に漕ぎつける。いよいよ葉子との距離を遠くする町井はエマニエルに溺れ始め、なつきもなつきで、これまではそれなりに安定してゐた、自身とエマニエルとの間に動揺を覚える。
 目出度くなくも南映こと南映画劇場の最終番組にも選ばれた今作は、残存する南映公式サイトによると、“多呂プロ15周年記念大作”の第二弾とのこと。確かにといふか何といふか、美奈絡みの濡れ場の舞台が上野オークラ旧館であることに対し、殺風景なビル屋上に遺された小さな天文台風の廃屋―かつてはプラネタリウムであつたらしい―が印象的なエマニエル隠れ家のロケーションは、残念ながら南映の四ヶ月後(あと)を追ひこちらも閉館してしまつた、静岡小劇場跡地である。即ち、この御時勢に豪気にも東京での主要な撮影に加へて、一部静岡ロケも敢行してみせた格好になる。それは兎も角、肝心の物語自体の出来栄えは如何なる塩梅なのかといふと、これが逆の意味で感動的な、物の見事ではない清々しいまでの支離滅裂。案外底は浅かつたなつきのエマニエル変身ギミックをひとまづ軸に、町井となつき乃至はエマニエルの道ならぬ恋模様、町井と今度は葉子との夫婦物語、エマニエルに引き摺られる形でなつきの中で次第に混濁する、夢と現(うつつ)。拡げられるだけ拡げ散らかされた無駄風呂敷は、別の意味で綺麗に放り捨てられる。葉子は捨てる腹の町井を待つなつきの部屋に、飛び込ませた須山に刃物を振り回させる修羅場まで設けておいて、結局始終の一切は明後日あるいは一昨日に何処吹く風。町井は葉子と安寧にヨリを戻し、他方エマニエルをいはば便宜的なイニシエーションに、なつきはなつきで一人の女性として成熟する。だなどといふ着地点には、あまりの無造作な仕打ちに素面で吃驚した。幾分語り口が丁寧な、あるいは叙情的であるだけで、往年の小林悟をも髣髴とさせる無法な破壊力である。挙句に、荒木太郎らしいダサさを発揮した盛屋が性急に止めを刺すに至つては、塞がらぬ筈の開いた口も閉口する。腹を立てるだけの気力も萎え、そしてピンクスを途方に暮れさせかねない一作。最大出力で好意的に捉へる無理難題に挑むならば、偶然にも矢張り御大を想起した木端微塵の初陣「THEレイパー 暴行の餌食」(2007/監督・共同脚本:国沢☆実)に始まり、照明から貧しい第二戦「お掃除女子 至れり、尽くせり」(2010/監督・脚本:工藤雅典)と続き、三作何れも劣るとも勝らない今回の惨状。要は、星野あかりといふ人は、ピンク映画に際しては画期的に作品に恵まれぬ、余程特殊な星の下に生まれた悲運のヒロインなのではなからうか。最早さうとでも思つてゐないと、とてもではないがやつてゐられない。

 大体が、事この期に―しかも荒木太郎が―何で、あるいは何がエマニエルなのだかサッパリ判らない辺りも、既に消えた火に油を注ぐ。下元哲が、海外ロケ×国内アテレコを観光、もとい敢行した「淫婦義母 エマニエル夫人」(2006/脚本:関根和美・水上晃太/主演:サンドラ・ジュリア/声:持田さつき)の方が、まだしもエマニエルといはれてしつくり来る、主演が外国人ではあるし。


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 「紬<つむぎ>未亡人 ‐よがり責め‐」(1998『和服未亡人 ‐じらし責め‐』の2005年旧作改題版/製作:IIZUMI Production/提供:Xces Film/脚本・監督:北沢幸雄/企画:稲山悌二《エクセス・フィルム》・業沖球太/製作:北沢幸雄/撮影:千葉幸雄/照明:渡波洋行/編集:北沢幸雄/音楽:TAOKA/助監督:堀禎一/監督助手:三輪隆/撮影助手:池宮直弘・嶋垣弘之/照明助手:小倉正彦/着付け:野原由子/生花指導:堀弘子/ヘアメイク:リエ/タイトル:道川昭/効果:東京スクリーンサービス/車輌:チームTATHUMI/出演:風間由衣・風間晶・槇原めぐみ・神戸顕一・前川勝典・濱本康輔・本多ハル・杉本まこと)。
 看板を偽らず、着衣時は全篇を和服で通す篠崎玲(風間由衣)の夫で日照証券専務が半年前に、愛人(二人とも一切登場せず)と交通事故死したことが、サックリと触れられる。事件性も囁かれる事故は、世間をゴシップ誌に載る程度には騒がせてゐた。そこそこ以上のお屋敷から所変つて安アパート、よくいへばルポライターの森下三郎(杉本)が、ソープ嬢の情婦・菊川理恵(風間晶)を抱く。これは個人的な粗忽に過ぎまいが、特に姉妹といふ訳でもないとは思しき、ビリング頭二枚でW風間を構成する風間由衣と風間晶とが、どちらも男顔でショート・カット―厳密には風間由衣はセミロングだが、平素は纏めてゐる―といふ容貌に関する共通項から、同一人物と誤認し一瞬生活水準の落差に混乱する。話を戻すと、森下は事実上、理恵のヒモの立場にあつた。一方、情報研究所を謳ひながら、どう見ても堅気には見えない「東洋情報研究所」。オールバックに決めた黒ver.の神戸顕一が、一応所長の大島徳治。事務所内では他に前川勝典と本多ハルが所長室の画面手前で花札に興じ、線の細いイケメンの濱本康輔は、薬を飲む水を普通に届けただけなのに、大島からネチネチとヤキを入れられる。電話越しの“会長”から日照証券に喰ひ込むことを指示された大島は、手駒の森下を使ふことを思ひたつ。玲が嗜む生花の発表会場での再会を装ひ、森下は玲に接触。実は、玲は大学時代先輩の森下と交際してゐた。森下の突然の米国留学に伴なひ関係は終息したが、そもそもそれは、二人の仲に反対した玲の父親が金を渡し、森下を要はアメリカに追ひ払つたものだつた。元々死亡した夫とも政略風味全開で結婚した玲は、森下と極々自然に焼けぼつくひに火をつける。森下も森下で、現況に忸怩たるものも抱へ、玲と二人逃げることを決意する。ところがそんな森下が玲と二人で連れ添ふ姿を目撃し、嫉妬の激情に駆られた理恵は大島に密通。大島らに捕らへられた森下は自身の死は覚悟するものの、その場に理恵に騙られた玲がのこのこ連れて来られる。この件の、カッコよく見得を切つた森下の、即座に奈落の底への突き落とされぷりは絶品。
 序盤で仕事を済ませる槇原めぐみは、廃倉庫かはたまた地下室か、兎も角素晴らしくフォトジェニックならぬシネジェニックに荒れた空間にて、大島から直腸に薬物を塗り込まれた上で、四人がかりで代る代る陵辱される女。三番手の濡れ場要員を、終盤見せ場のイントロダクションに配する起用法はさりげなく頑丈な論理性が麗しい反面、映画的ではありつつ基本引き気味のカメラが、もう少し寄ればいいのではといふ不満も覚えぬではない。直截な煽情性に関しては更に踏み込み得たであらう余地も残し、どちらかといふとピンクよりも、映画寄りの一幕といへるのではなからうか。
 黒い欲望に翻弄される、かつての恋人達。槇原めぐみが温めたフィールドに以外の七人が揃ふまでの流れは、全く磐石。尤も、以降は新たなる展開なり意外な落とし処が用意されるでもなく、平板といふ印象も拭ひ難い。後輩位に徹する槇原めぐみ戦と比して、吊りも繰り出す東洋情報研究所の面々から玲が嬲り尽くされるクライマックスに際しても、素といふ意味での裸の劇映画としての画作りを優先した、即物的な裸映画としては詰めの甘さを感じさせる、最大の特徴は共通する。槇原めぐみに対してはナイーブな逡巡も見せた濱本康輔が、玲には安い獣欲をフルスイングして来る無造作には奇異であるとも思へたが。結局は、薬漬けにされた玲と森下が篠崎邸に於いて愛欲に溺れるラスト・シーンが、ありがちなバッド・エンドをそれはそれとして綺麗に締め括る。そつのないともいへ、直截には一本調子の一作ではある。


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 平成24年映画鑑賞実績:283本 一般映画:17 ピンク:247 再見作:19 杉本ナンバー:69 ミサトナンバー:7 花宴ナンバー:5 水上荘ナンバー:15

 平成23年映画鑑賞実績(確定):272本 一般映画:16 ピンク:229 再見作:27 杉本ナンバー:67 ミサトナンバー:10 花宴ナンバー:8 水上荘ナンバー:13 >一般映画に関しては基本的に諦めた

 再見作に関しては一年毎にリセットしてゐる。その為、たとへば三年前に観たピンクを旧作改題で新たに観た場合、再見作にはカウントしない。あくまでその一年間の中で、二度以上観た映画の本数、あるいは回数である。二度観た映画が八本で三度観た映画が一本ある場合、その年の再見作は10本となる。

 因みに“杉本ナンバー”とは。ピンクの内、杉本まこと(現:なかみつせいじ)出演作の本数である。改めてなかみつせいじの芸名の変遷に関しては。1987年に中満誠治名義でデビュー。1990年に杉本まことに改名。2000年に更に、現在のなかみつせいじに改名してゐる。改名後も、旧芸名をランダムに使用することもある。ピンクの畑にはかういふことを好む(?)人がままあるので、なかなか一筋縄には行かぬところでもある。
 加へて戯れにカウントする“ミサトナンバー”とは。いふまでもなく、ピンク映画で御馴染みプールのある白亜の洋館、撮影をミサトスタジオで行つてゐる新旧問はずピンクの本数である。もしもミサトで撮影してゐる一般映画にお目にかかれば、当然に加算する。
 同様に“花宴ナンバー”は、主に小川(欽也)組や深町(章)組の映画に頻出する、伊豆のペンション「花宴」が劇中に登場する映画の本数である。


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 「女囚701号 さそり外伝」(2011/製作:株式会社竹書房・新東宝映画株式会社/配給:新東宝映画株式会社/監督・脚本:藤原健一/原作:篠原とおる『さそり』《小池書院刊》/企画:加藤威史・衣川仲人/プロデューサー:福原彰・一力健鬼/音楽:與語一平/撮影・照明:田宮健彦/録音・音響効果:高島良太/ヘアメイク:ユーケファ/スチール:中居挙子/編集:石井塁/アクション指導:江藤大我/衣装協力:野村明子/ガンエフェクト:近藤佳徳・山崎信幸/撮影・照明助手:降矢徹・長谷川玲子/メイク助手:大橋茉冬/助監督:躰中洋蔵・能登秀美・松林淳・布施直輔/編集応援:内藤慈/制作応援:貝原クリス亮・西谷雄一・渡邊利枝/制作協力:ANGLE/協力:杜方・ネビュラ/出演:明日花キララ・龍坐・紗奈・里見瑤子・倖田李梨・ほたる・しじみ・友咲ナミ・富士川用宗・伊藤紀博・田中尚仁・成川友里子・横手瑞香・大江直美・村田拓真・江藤大我・松林慎司・清水大敬・川本淳市)。出演者中、成川友里子から村田拓真までは本篇クレジットのみ。
 新東宝カンパニーロゴの直後、“リアリティを重視”したとかいふ演出意図により“最低限の照明による撮影を敢行”したことが謳はれ、そのことに基き詫びる旨が本篇に入る前に字幕を通して述べられる。事実上の、チェック・メイトである。
 こんちこれまた御馴染みの、清々しく非人道的な女囚刑務所。元居た刑務所からは二度の逃亡を企てた、殺人未遂の罪で服役中の松島ナミ(明日花)が移送される。ナミが収監されるのは、これまで何人もの囚人が不審な死を遂げた、これ見よがしないはくつきの第二雑居房。ここでほたるとしじみと友咲ナミは、イントロダクションの噂話を投げる別房の女囚要員、後に第二雑居房の面々と共に1シーン裸も一見せ披露する。下着まで剥かれた上で壁に手をつかされ、乱雑な放水を浴びせる刑務官・金田(江藤)にまるで車か何かのやうに身を清められるナミの、決して全てを肯んじはしない、不屈のエモーションを燃やす眼差しを押さへてタイトル・イン。房に放り込まれたナミを、傷害事件を仕出かしたヨット・スクール教官、だなどといふ設定も、二昔前の悪役女子プロレスラーのやうな闇雲な造形も揃つて古式ゆかしくはなく底の抜けた牧田重子(里見)と、重子を“先生”と呼び付き従ふ美雪(倖田)が襲ふ。かと思ふと深夜には、同性愛者の福島タツコ(紗奈)がナミに迫る、コース料理かよ。矢継ぎ早に、再度重子と美雪の襲撃を受け、舐めることを強要された重子の左足小指を喰ひ千切つたナミは、懲罰房に叩き込まれる。一方、最終的に人物が深く掘り下げられることもなければ然程の活躍も見せないものの、画になる不気味な雰囲気は悪くない、第二雑居房を担当する跛引きの刑務官・林清彦(龍坐)は、ナミに金を産む醜聞の匂ひを嗅ぎつけ刑務所所長の神崎(清水)に探りを入れる。不穏な空気の立ち込める中、懲罰房のナミはこれまでの顛末を回想する。新興IT企業「SSエージェント」で派遣社員として働くナミは、青年社長の杉見真司(川本)とは同時に男女の仲にもあつた。ある日、社長直々重要な一席に連れ出されたナミは利権と引き換へに、杉見の大学時代同級生でもある二世議員・倉田(松林)に引き渡され陵辱される。憐れ裏切られたナミは、事後隠し持つた万年筆を杉見の顔面に振り下ろしたのであつた。事件以降、依然権力は維持しつつも表舞台からは姿を消した杉見は、完全に上からの態度で清水にナミ殺害を急かす。清水は清水で、半年での出所も仄めかし、子飼ひの美雪―と重子―にナミを消すことを孫請けさせる。
 後述するが、不可視といふレベルから攻め難い残りの出演者は、清水役とされる伊藤紀博は、その他刑務官。井上役とされる田中尚仁も、恐らくは短躯・サングラスの刑務官か。成川友里子は、杉見に重用されたナミに幸運にも出し抜かれる、SSエージェント社員・田代。名義から正体不明の富士川用宗と、クレジットにのみ名前の載る中で成川友里子以外の三名に関しては、正直手も足も出しやうがない。劇中更に見切れるのは食堂―と野外作業―のカット、美雪の右隣に座るショート・カットと、タツコとナミの後ろに二人並んだ女囚要員が計もう三名、SSエージェント社員と倉田配下の黒服がそれぞれ二名。となると、頭数は合はないが。
 藤原健一にとつては「ゼロ・ウーマンR 警視庁0課の女/欲望の代償」(2007/田中貴太と共同脚本/主演:三浦敦子)以来四年ぶり二度目となる、日本―主に量産型娯楽―映画界謎の定番ジャンル・篠原とおる物件である。黙つて観てゐる分には何時もの、他人に脚本だけ提供する際には時に輝きもするのに、何故か自身にメガホンも取らせると大概薄味で底の浅い、如何にも良くなくも悪くも藤原健一らしい一作に過ぎないとはいへ、タイトルから激しく腑に落ちない不可解が一点。劇中での順序は前後してナミが臭い飯を喰ふやうになる因縁から、定番のピンキーバイオレンスな刑務所を舞台とした、全裸身体検査、同房の女囚によるリンチと百合。今回はレイプまでは描かれないが、当然刑務官からも暴行。やがて脱獄、そして復讐。即ち、始終はとうの昔に出来上がつた「さそり」シリーズのフォーマットを通り一辺倒にトレースしてゐながら、何が“外伝”なのだか非感動的に理解に苦しむ。正伝の、劣化コピー以外の何物でもない。斯様な拍子しか抜かない展開に止めを刺すのは、名実共に開巻以前の敗北宣言を偽らない―後生だから騙して呉れ―“敢行”せねばならぬ程の撮影の、当たり前の結果といつていへなくもない暗黒画面。夜の刑務所所内シーンを中心に、照明不足でウルトラ見えない、本当に全く見えない。商業映画がこんなにも見えないものかと、驚かされるほどに見えない。確かに地元駅前ロマンのプロジェク太スペックも大したものではあるまいし、キネコ処理したものを更にDVDに落とした、新東宝から小屋に渡される原版自体も、酷い代物にはさうゐない。ただそのやうなことは、素人がいふのも何だが想定の範囲内にあつて然るべきことでもないのか。要は、頓珍漢な志向で照明を最低限にするのは構はない―いや、矢張り構ふ―が、それを上映する小屋の映写環境が “最低限”を満たしてゐるとは必ずしもどころではなく限らないのだ。苛立ち紛れに憚ることなく筆を滑らせるならば、きのふけふの国映系でもあるまいし、藤原健一は本物の間抜けなのか?リリースされた皿が、家庭で綺麗に視聴出来てゐればそれでよし。さういふ、木戸銭を落とした観客を小馬鹿にした態度であるならば、懐古主義を拗らせた偏狭なピンクスの立場からは、それは映画作家の姿勢としては断固として認められない。ただでさへドッチラケた物語を塗り潰す漆黒の空虚、言葉は甚だ汚いが、事この期に至つては論外の無駄弾と難じざるを得ない。重ねて情けないのが、娑婆に戻つたナミが街を闊歩する際のさそりルックの、サイズさへ合つてゐない不始末。主演女優の素材には問題がない筈なのに、スタイリッシュも売りのさそりがそんなにモッサリモッサリしてたら駄目だろ。唯一の見所は、倉田に犯されグッタリしたままのナミが、突如跳ね起きるや否や杉見の右目を潰すシークエンス。明日花キララが、白から黒くなる瞬間には鋭く光るものがあつた。


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 「艶剣客2 くノ一色洗脳」(2011/製作:株式会社竹書房・新東宝映画株式会社/配給:新東宝映画株式会社/監督:藤原健一/脚本:能登秀美/企画:加藤威史・衣川仲人/原作:八神淳一『艶剣客 妖忍の里』《竹書房刊》/原作担当:大澤穂高《竹書房刊》/衣装原案:高橋撰功/プロデューサー:福原彰・一力健鬼/音楽:與語一平/撮影・照明:小山田勝治/録音・音響効果:高島良太/衣装:野村明子/ヘアメイク:ユーケファ/スチール:中居挙子/編集:石井塁/アクション指導:江藤大我/撮影・照明助手:藤田朋則・武井隆太郎/助監督:躰中洋蔵・松林淳・布施直輔/演出応援:能登秀美/制作応援:貝原クリス亮/ロケコーディネーター:田中尚仁/制作協力:ANGEL/出演:吉沢明歩・佐藤良洋・木下柚花・しじみ・ホリケン。・稲葉凌一)。ポスターにのみ、現像は東映ラボ・テック。
 妖しい煙の漂ふ地下牢、忍兜で顔を隠した男が、旅芸人の扮装で、両手を吊られた若い女を責める。女は、先に潜入したものの姿を消した間宮真一郎を追ひ彦根藩に入つた、江戸幕府の隠密機関・隠れお庭番の楠木結衣(木下)。既に正気を失した結衣は頻りに一物を求め、男はその条件に、結衣が彦根に潜入した目的を吐くことを強ひる。力なく間宮の名前を白状した結衣の、縄が解かれる。足下に横たはる男の体から男根を貪らうとする結衣ではあつたが、それは、既に息絶えた間宮の無惨な亡骸(遺体役不明)であつた、といふショック描写からタイトル・イン。
 カット明けると、弥三郎(佐藤)が草叢の中をのほほんと江戸を目指す。タイトル挟んだ対照は、実に鮮やか。剣術修行の旅を一旦切り上げ、下総で稽古と並行する農作業に勤しんでゐた弥三郎は、冴島凛(吉沢)からの手紙を受け取り喜び勇んで旅路に就く。とはいへ、文字の読めぬ弥三郎は、立ち寄つた甘味処の主人(付近まで含めて計四名、後に街道にも一名見切れる、こちらも全員不明)に読んで貰つたところ、何とけふが指定された期日の卯月十日であるといふ。慌てて再出発、凛が師範を務める真陰一刀流の道場に滑り込んだ弥三郎を、待ち伏せてゐた凛の不意討ちが正しく迎撃する。止められねば帰すつもりであつた、とかいふ豪快さんな凛と、弥三郎は結衣探索の為に武家夫婦を装ひ、甲賀忍者残党が暗躍する気配の窺へる彦根藩へと旅立つことに。凛にとつては隠れお庭番としての任務でしかないとはいへ、弥三郎は凛との夫婦設定が嬉しくて嬉しくて仕方がない。ともあれ彦根に入る関所も通過、凛が弥三郎から今回の一件を指揮する幕府要人の名を訊ねられたタイミングで、山道を里の娘・美緒(しじみ)が通り過ぎる。用を足す弥三郎が席を外すと、美緒の悲鳴が。山賊の辰造(ホリケン。)に、美緒が襲はれてゐた。結局例によつて肝心のところでズッコケる弥三郎は役に立たない中、凛が仕込み杖の峰打ちで辰造を半分仕留める。お礼にと、美緒の家が営む宿屋に二人は招かれる。他に客も居ない宿には老父が病に臥せり、その為薬草採りに美緒は山に入つてゐたものだつた。その夜、一人で風呂を浴びた弥三郎は、錯乱し凛の命を狙はうとする。ひとまづ凛に制せられた弥三郎は、翌朝風呂に入つてからの始終を何とか振り返る。美緒に背中を流される内に何故だか弥三郎は前後を失ひ、命ぜられるままに凛を襲撃したものであつた。不穏な空気に周囲を探ることにした凛と弥三郎は、隠された地下室へと入る。と、そこに、変り身も見事に美緒がくの一装束で飛び込んで来る。美緒といふのは世を偽る仮の姿、その正体は甲賀残党のくノ一・椿であつた。
 ところで、誰も気付かつたのか気にしなかつたのか、弥三郎を篭絡する際の、美緒の珍台詞。浴場にて、恐縮する弥三郎に美緒は裸で哀願し、「私は 天涯孤独の寂しい女です、せめて真似事でも、夫婦のやうに殿方の背中を流させて下さいませ」。つい先刻まで寝てた、病気の親爺は早くも亡くなつたのか?
 前年の第一作「艶剣客 くの一媚薬責め」が素直に好評を博したか、それとも単なる企画の枯渇か。ともあれ艶剣客シリーズ第二弾は、前作の―特に画を割ることに意味の全くない―分割画面を上回る箆棒なチャーミングも火を噴きつつ、そこかしこの細部がそこそこ手堅く押さへられた、相変らず新味の欠片もない物語ながらに、案外満更でもない好印象の水準作。兎にも角にも最早素晴らしいとでもしか称へやうがないのは、まんまと捕らへられた凛と弥三郎の前に、美緒改め椿と案の定一味であつた辰造に続き、いよいよ現れた僅か三人ばかりとはいへ甲賀残党の首領・幻斎。これまで勿体つけた忍兜を終に外すと、中から出て来たのは前回も矢張り黒幕の同心・影山を演じた稲葉凌一、あれ?影山のフラッシュバックも絡め驚く凛の表情を咬ませた上で、幻斎堂々といはく「真陰一刀流師範冴島凛、弟の訃報と共に届いたその名を、決して忘れはせなんだ」・・・・・

 兄貴かよ!

 「Gメン'75」香港スペシャル版に於けるヤン・スエか、久々に繰り出された気もするブラザー方便には、正直油断してゐて度肝を抜かれた。次は長兄が下二人の敵を討ちに来てももう驚かないぞ、といふかここは毒を盛らはば皿まで、来て呉れ寧ろ来るべきだ。大体隠れお庭番は、お前の弟の影山が束ねてゐたのではないのか?あるいは、甲賀の血を引く者に要職に喰ひ込まれてゐては幕府の一大事だろよ、等々といつた瑣末な―瑣末か?―ツッコミ処は、痛快に底を抜き倒した破壊力の前には欠片の意味も成すまい。見方によつては憐れな醜男の辰造が、伸ばした鼻の下に自滅する様は観客の身につまされた涙を誘ひ、甲賀秘術の粋を尽くした―また随分と他愛ない到達点だな、甲賀よ―媚薬に屈しかけた弥三郎が、凛が地面に棒で書いた御側用人・加納久通の名前が文盲ゆゑ読めずに、口を割らうにも割りやうがないといふのは気が利いてゐる。結衣や凛を貫く幻斎が、要は薬の力でチョロ負かした女を手篭めにしてゐるだけにも関らず、甲賀一族積年の大義を振り回すが如く徒に大仰なのも激しく馬鹿馬鹿しくて可笑しい。刀を持たぬ相手を平然と斬つて捨てる凛の態度には、真陰一刀流師範として如何なものかと思はぬでもないが、二作目にして安定感の増した吉沢明歩と佐藤良洋の2ショットは、結構綺麗に始終を締め括る。要は、初作が設定した期待度の低さによるラックでしかないのでは、といふ真相を突き得てゐるやも知れない疑問に関してはここはさて措き、続篇企画のジンクスを意外と軽やかに覆した一作。印象的かつ、素直に画を補強するギター・リフがベスト・ワークを思はせる、與語一平の劇伴も光る。


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